(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179337
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ケイ素酸化物の製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 33/113 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
C01B33/113 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044367
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】110118078
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】509183338
【氏名又は名称】中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林煌偉
(72)【発明者】
【氏名】楊瑜民
(72)【発明者】
【氏名】許松林
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA24
4G072GG04
4G072HH01
4G072HH14
4G072MM21
4G072MM36
4G072RR13
4G072UU30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケイ素酸化物の産量を高めるケイ素酸化物の製造装置を提供する。
【解決手段】ケイ素酸化物の製造装置は、加熱炉、加熱装置、坩堝40、析出ケース50、排気ダクト60、及び、抽気装置70を含み、加熱炉は、断熱素材で囲んで形成された加熱炉室を内部に有し、加熱装置、坩堝及び析出ケースは、加熱炉室に設置され、析出ケースは、吸気口50a及び排気口50bを有し、析出ケースは、析出ケースの内部空間に設置される少なくとも一つの仕切り板80を含み、少なくとも一つの仕切り板が析出ケースの内壁と少なくとも一つの通路Cを形成し、少なくとも一つの通路がそれぞれ吸気口及び排気口に連通し、排気ダクトは、坩堝の上方開口と近づく位置に設置される第一端60a及び析出ケースの吸気口に連通する第二端60bを有し、抽気装置は、析出ケースの排気口に連通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱素材で囲んで形成された加熱炉室を内部に有した加熱炉と、
当該加熱炉室に設置される加熱装置と、
当該加熱炉室に設置され、二酸化ケイ素及びケイ素を含む固体の原材料を受容するための坩堝であって、当該加熱装置により当該坩堝を加熱して当該固体の原材料に気体のケイ素酸化物を形成させ、上方開口を有した坩堝と、
当該加熱炉室と当該加熱炉の内炉壁との間に設置され、吸気口及び排気口を有した析出ケースであって、当該析出ケースの内部空間に設置される少なくとも一つの仕切り板を含み、当該少なくとも一つの仕切り板が当該析出ケースの内壁と少なくとも一つの通路を形成し、当該少なくとも一つの通路がそれぞれ当該吸気口及び当該排気口に連通する析出ケースと、
当該坩堝の当該上方開口と近づく位置するように設置される第一端、及び、当該析出ケースの当該吸気口と連通する第二端を有した排気ダクトと、
当該析出ケースの当該排気口に連通する抽気装置であって、当該気体のケイ素酸化物を当該析出ケースの内壁及び当該少なくとも一つの仕切り板の表面と接触させて固体のケイ素酸化物を析出させるように、当該気体のケイ素酸化物を当該坩堝から抽出する、抽気装置を含む、ことを特徴とするケイ素酸化物の製造装置。
【請求項2】
当該少なくとも一つの通路の全体の長さは、当該吸気口と当該排気口との間の最小距離よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項3】
当該少なくとも一つの仕切り板は、少なくとも一つの横方向仕切り板を含み、当該少なくとも一つの横方向仕切り板は、当該析出ケースの内部空間において横方向に設置されると共に、当該吸気口と当該排気口の間の軸線と交差する、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項4】
当該少なくとも一つの仕切り板は、数が複数であり、当該析出ケースの内部空間において縦方向に設置されると共に当該少なくとも一つの横方向仕切り板に接続される少なくとも一つの縦方向仕切り板を含む、ことを特徴とする請求項3に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項5】
当該少なくとも一つの縦方向仕切り板は、一方端が当該少なくとも一つの横方向仕切り板の板面に接続されると共に、他方端が当該析出ケースにおける当該吸気口の方向へ延びる、ことを特徴とする請求項4に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項6】
当該少なくとも一つの縦方向仕切り板は、当該軸線を通過すると共に当該吸気口との間に最小距離を有し、当該最小距離は、100mm以上であり、かつ、190mm以下である、ことを特徴とする請求項5に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項7】
当該析出ケースは、第一析出部及び第二析出部を有し、当該第一析出部は、当該第二析出部に対して、当該加熱装置と近づく位置に設置される、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項8】
当該第一析出部又は当該第二析出部のうちの少なくとも一つの外壁に設置される少なくとも一つの断熱部を含む、ことを特徴とする請求項7に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項9】
当該少なくとも一つの断熱部は、数が複数であり、当該第一析出部の外壁に設置される第一断熱部及び当該第二析出部の外壁に設置される第二断熱部を含み、当該第一断熱部と当該第二断熱部は、異なる熱伝導率を有する、ことを特徴とする請求項8に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項10】
当該第一断熱部と当該第二断熱部は、熱伝導率が0.13~0.5W/m.Kにある、ことを特徴とする請求項9に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項11】
当該少なくとも一つの断熱部は、数が複数であり、当該第一析出部の外壁に設置される第一断熱部及び当該第二析出部の外壁に設置される第二断熱部を含み、当該第一断熱部と当該第二断熱部は、異なる厚さを有する、ことを特徴とする請求項8に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項12】
当該少なくとも一つの仕切り板は、熱伝導率が16W/m.K以上である、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項13】
当該坩堝を覆い開孔を有したカバーを含み、当該開孔は、当該排気ダクトの当該第一端及び当該坩堝の内部に連通する、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項14】
当該析出ケースと当該断熱素材との間に設置され、当該析出ケースと当該断熱素材との間に距離を空けるための断熱部を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項15】
当該抽気装置は、サイクロン集塵機である、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項16】
当該析出ケースは、側方開口を有したケース本体及び当該側方開口を閉鎖するためのケースカバーを含み、
当該少なくとも一つの仕切り板は、その数が複数であり、それぞれ、当該ケース本体の内壁及び当該ケースカバーに接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【請求項17】
当該ケースカバーが当該側方開口を閉鎖した場合には、当該ケース本体の内壁に接続される仕切り板と当該ケースカバーに接続される仕切り板同士が千鳥状に並ぶ、ことを特徴とする請求項16に記載のケイ素酸化物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素酸化物の製造装置に関し、特に、ケイ素酸化物の産量を高めるケイ素酸化物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池などが知られる。また、リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比べると、エネルギー密度が高く、作動電圧が高く、記憶効果が小さく、また、急速充電も可能であるなどの特性を有することから、例えば、タブレット、スマートフォン、ノートパソコンやゲーム機などの電子機器に幅広く適用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、内部の反応において、主に、リチウムイオンが正極と負極との間を往復運動することにより、正極と負極との間に電位差を生じさせるものである。一般的なリチウムイオン二次電池は、グラファイトを負極素材として用いることが多い。しかし、この負極素材が用いられたリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が極めて低い。従って、エネルギー密度を高めるために、産業において、新たな負極素材が多種類開発されてきた。そのうち、ケイ素酸化物をリチウムイオン二次電池に負極素材として用いる場合には、電圧が高く、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を取得することができる。
【0004】
よく用いられるリチウム二次電池の負極素材を製造するためのケイ素酸化物の製造装置は、一般的に、原材料容器、加熱装置、析出室及び抽気装置を含み、ケイ素酸化物を含んだ粉末を当該原材料容器に入れて、気化させるように加熱してから、当該抽気装置を介してケイ素酸化物の気体を当該析出室を流れるように抽出して、固体のケイ素酸化物を当該析出室の内壁に析出させる。しかしながら、よく用いられるケイ素酸化物の製造装置は、その抽気装置がケイ素酸化物の気体を急速で当該析出室から抽出し易いことから、当該析出室により集まれる析出のケイ素酸化物の産量が良くない。そして、良く用いられるケイ素酸化物の製造装置は、構成について設計がまだ完璧でなく、改良されるべきところが存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このことに鑑み、ケイ素酸化物の産量を高めるケイ素酸化物の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明が提供するケイ素酸化物の製造装置は、加熱炉、加熱装置、坩堝、析出ケース、排気ダクト及び抽気装置を含み、当該加熱炉は、断熱素材で囲んで形成された加熱炉室を内部に有し、当該加熱装置は、当該加熱炉室に設置され、当該坩堝は、当該加熱炉室に設置され、二酸化ケイ素及びケイ素を含む固体の原材料を受容するためのものであり、当該加熱装置は、当該坩堝を加熱して当該固体の原材料に気体のケイ素酸化物を生じさせ、当該坩堝は、上方開口を有し、当該析出ケースは、当該加熱炉室に設置され、吸気口及び排気口を有し、当該析出ケースの内部空間に設置される少なくとも一つの仕切り板を有し、当該少なくとも一つの仕切り板は、当該析出ケースの内壁と少なくとも一つの通路を形成し、当該少なくとも一つの通路は、それぞれ当該吸気口及び当該排気口に連通し、当該排気ダクトは、当該坩堝の当該上方開口と近づく位置に設置される第一端及び当該析出ケースの当該吸気口に連通する第二端を有し、当該抽気装置は、当該析出ケースの当該排気口に連通し、当該気体のケイ素酸化物を当該坩堝から抽出し、当該気体のケイ素酸化物を当該析出ケースの内壁及び当該少なくとも一つの仕切り板の表面と接触させて固体のケイ素酸化物を析出させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明による効果は、当該少なくとも一つの仕切り板を設置することにより、気体のケイ素酸化物の接触面積を増やし、気体のケイ素酸化物の流れ経路を伸ばし、ひいては、析出するケイ素酸化物の産量を高めることにある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の好ましい実施例によるケイ素酸化物の製造装置の模式図である。
【
図2】上記の好ましい実施例による一部の構成の模式図である。
【
図3A】上記の好ましい実施例による析出ケースの模式図である。
【
図3B】上記の好ましい実施例による析出ケースの模式図である。
【
図4】本発明の好ましい他の一実施例による析出ケースの模式図である。
【
図5】本発明の好ましい他の一実施例による析出ケースの模式図である。
【
図6】本発明の好ましい他の一実施例による一部の構成の模式図である。
【
図7】本発明の好ましい他の一実施例による一部の構成の模式図である。
【
図8】本発明の好ましい他の一実施例による一部の構成の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明をより明確に説明するために、好ましい実施例に基づいて図面を参照しながら以下のように説明する。
図1~
図3A、3Bは、示されるように、本発明の好ましい一実施例に係るケイ素酸化物の製造装置1である。当該ケイ素酸化物の製造装置1は、加熱炉10、載置台20、加熱装置、坩堝40、析出ケース50、排気ダクト60及び抽気装置70を含む。
【0010】
当該加熱炉10は、断熱素材12で囲んで形成された加熱炉室Rを内部に有する。当該載置台20、当該加熱装置及び当該坩堝40は、当該加熱炉室Rに設置される。当該坩堝40は、当該載置台20に設置される。当該坩堝40は、上方開口40aを有する。当該坩堝は、二酸化ケイ素及びケイ素を含む固体の原材料を受容するためのものである。当該加熱装置は、それぞれ、当該坩堝40を取り囲む外側壁及び当該坩堝40における上方の位置に設置される複数のヒーター30を含み、当該坩堝40を加熱して当該固体の原材料に気体のケイ素酸化物を生じさせるためのものである。本実施例では、当該加熱装置は、当該加熱炉室Rにおける内部の温度を1300~1350度に維持することが可能である。
【0011】
当該析出ケース50は、当該加熱装置と近づく位置において、当該加熱炉室Rと当該加熱炉10の内炉壁10aとの間に設置され、当該析出ケース50と当該加熱装置との距離を調整することにより、当該析出ケース50の温度を200~600度に維持するように制御する。本願では、当該析出ケース50と当該加熱装置との距離を調整することにより、当該析出ケース50の温度を制御することから、例えば、チラーなどの冷却装置を追加して設置する必要が無くなり、そして、生産コストを効果的に削減することができる。当該析出ケース50は、吸気口50a及び排気口50bを有する。当該析出ケース50は、当該析出ケース50の内部空間に設置された複数の仕切り板を含む。これらの仕切り板は、複数の横方向仕切り板80を含むと共に、これらの横方向仕切り板80が当該吸気口50aと当該排気口50bとの間の軸線Xと交差する。これらの横方向仕切り板80は、当該析出ケース50の内壁と通路Cを形成している。当該通路Cは、それぞれ、当該吸気口50a及び当該排気口50bに連通すると共に、全体の長さが当該吸気口50aと当該排気口50bとの間の最小距離よりも大きい。本実施例では、これらの仕切り板の熱伝導率が16W/m.K以上であり、融点が1200度よりも高い。例示すると、これらの仕切り板がステンレス鋼又はグラファイトの素材で製造されたものであってもよいが、その限りではない。また、本実施例では、当該通路Cは、その数が一つであるということを例示的に説明したが、他の実施例では、これらの仕切り板80を設置する位置によって一つ以上の通路を形成してもよい。
【0012】
なお、本実施例では、当該析出ケース50は、六面体とされ、その長さと幅がそれぞれ350と300mmであり、高さHが350mmである。当該析出ケース50は、高さHが当該加熱炉室Rから離れた方向における当該析出ケース50の高さである。そのうち、当該析出ケース50について高さHを350mmとして選ぶことは、当該析出ケース50の温度を200~600度に維持するためである。なお、他の実施例では、利用者が、場合に応じて、当該析出ケース50について長さと幅を伸ばしてもよい。例えば、当該析出ケース50について、長さと幅をそれぞれ600mmに伸ばして気体のケイ素酸化物との接触面積を増やし、ひいては、析出する固体のケイ素酸化物Sの産量を高める。再度説明するのは、
図3A及び
図3Bを参照すると、本実施例において、当該析出ケース50がケース本体52及びケースカバー54を含み、当該ケース本体52が左側板521、右側板522、頂板523、底板524及び側方開口525を有し、当該頂板523が当該排気口50bを有し、当該底板524が当該吸気口50aを有する。当該ケースカバー54は、当該側方開口525を閉鎖するためのものである。これらの横方向仕切り板80は、それぞれ、当該ケース本体52の内壁及び当該ケースカバー54に、同士がほぼ平行するように接続される。そのうち、当該ケース本体52の内壁に接続される横方向仕切り板80のうちの一つは、当該左側板521に接続されると共に当該右側板522と間隔距離を空けるという形態で設置されたものであり、当該ケース本体52の内壁に接続される横方向仕切り板80のうちの他者は、当該右側板522に接続されると共に当該左側板521と間隔距離を保持するという形態で設置されたものである。当該ケースカバー54が当該側方開口525を閉鎖する場合には、当該ケース本体52の内壁に接続される横方向仕切り板80と当該ケースカバー54に接続される横方向仕切り板80とが互いに千鳥状に並ぶことになる。また、
図3Aに示すように、当該ケース本体52の内壁に接続される横方向仕切り板80は、それぞれ、当該左側板521及び右側板522との間に第一距離D1を有し、また、当該ケース本体52の内壁に接続される横方向仕切り板80は、当該頂板523との間に第一間隔距離H1を有する。そのうち、当該第一距離D1が15mm~25mmであってもよく、当該第一間隔距離H1が20mm~50mmであってもよい。上記の横方向仕切り板80を設置する形態により、当該通路Cの長さを伸ばすだけでなく、これらの横方向仕切り板80を当該ケース本体52及び当該ケースカバー54に千鳥状に設置する設計により、産出された固体のケイ素酸化物を利用者が取り出すことに役立つことができる。また、本実施例では、当該第一距離D1を15mm~25mmに選ぶことは、当該第一距離D1が25mmよりも大きいと、当該ケース本体52における気体の流れ速度が比較的速く、反応の時間が比較的短く、ケイ素酸化物の産出率が低くなりやすい一方、当該第一距離D1が15mmよりも小さいと、当該横方向仕切り板80と当該左側板521又は右側板522との間に産出されたケイ素酸化物により、当該通路Cが塞がれて産出率が低くなりやすいためである。また、当該第一間隔距離H1を20mm~50mmに選ぶことは、利用者が固体のケイ素酸化物を取り出すことに役立つという効果がある。
【0013】
図1を参照すると、当該排気ダクト60は、第一端60a及び第二端60bを有し、当該第一端60aは、当該坩堝40の当該上方開口40aと近づく位置に設置され、当該第二端60bは、当該析出ケース50の当該吸気口50aと連通する。当該抽気装置70は、当該析出ケース50の当該排気口50bと連通する。このことにより、当該抽気装置70を介して当該気体のケイ素酸化物を当該坩堝40から抽出し、当該気体のケイ素酸化物を当該析出ケース50の内壁及びこれらの横方向仕切り板80の表面に接触させて
図3Aに示される固体のケイ素酸化物Sを析出させる。そして、これらの横方向仕切り板80を設置することにより、気体のケイ素酸化物との接触面積を増やし、気体のケイ素酸化物の気体の流れ経路を伸ばし、ひいては、析出する固体のケイ素酸化物Sの産量を高める。本実施例では、当該抽気装置をサイクロン集塵機として例示的に説明したが、当該サイクロン集塵機により、気体のケイ素酸化物を当該サイクロン集塵機において析出させることができ、そして、固体のケイ素酸化物を集める収集率を高めることができる。
【0014】
図2を参照すると、再度説明するのは、本実施例において、当該ケイ素酸化物の製造装置1がカバー90を含み、当該カバー90は、当該坩堝40における当該上方開口40aを覆うと共に、開孔90aを有する。当該開孔90aは、当該排気ダクト60における当該第一端60a及び当該坩堝40における内部に連通することから、当該カバー90を設置することにより、気体のケイ素酸化物の流れ領域を制限して、固体のケイ素酸化物Sの収集率を高めることができる。
【0015】
なお、本実施例では、仕切り板について数が複数であるということを例に説明した。しかしながら、実際に、仕切り板の数について、
図4に示すように、以下のようにしてもよい。一つの横方向仕切り板80を当該析出ケース50の内部空間に設置し、当該横方向仕切り板80を当該右側板522に接続する。当該横方向仕切り板80と当該左側板521との間には、第二距離D2を有し、当該横方向仕切り板80の頂部と当該頂板523とは、第二間隔距離H2を有する。当該横方向仕切り板80の底部と当該底板524とは、第三間隔距離H3を有すると共に、当該吸気口50aと当該排気口50bとの間の当該軸線Xと交差する。そうすると、同様に、気体のケイ素酸化物との接触面積を増やし、気体のケイ素酸化物の流れ経路を伸ばすという効果が図れる。そのうち、当該第二距離D2は、15mm~25mmにあり、当該第二間隔距離H2は、20mm~110mmにある、当該第三間隔距離H3は、240mm~330mmにある。本実施例では、当該第二距離D2を15mm~25mmに選ぶことは、当該第二距離D2が25mmよりも大きいと、当該ケース本体52の気体の流れ速度が比較的速く、反応の時間が比較的短く、ケイ素酸化物の産出率が低くなりやすい一方、当該第二距離D2が15mmよりも小さいと、当該横方向仕切り板80と当該左側板521との間に産出されたケイ素酸化物により当該通路Cが塞がれて産出率が低くなりやすいためである。また、当該第二間隔距離H2を20mm~110mm、当該第三間隔距離H3を240mm~330mmに選ぶことは、当該第二間隔距離H2と当該第三間隔距離H3との比例を1:2.3~1:16.5にするためである。利用者は、当該第二間隔距離H2と当該第三間隔距離H3との比例を調整して、異なる産出率、及び、固体のケイ素酸化物の酸素含有量(つまり、SiOxのx値)を取得することができる。当該第二間隔距離H2が比較的小さい場合には、気体のケイ素酸化物との接触面積を増やすという効果が図れる。そして、固体のケイ素酸化物の産出率を高め、x値が広く分布する固体のケイ素酸化物の産出物を取得できる。一方、当該第二間隔距離H2が比較的大きい場合には、x値の分布が比較的に集中する固体のケイ素酸化物の産出物を取得することができる。
【0016】
また、仕切り板を設置する形態は、
図5に示すようにしてもよい。仕切り板は、二つの縦方向仕切り板82及び一つの横方向仕切り板80を含み、しかも、二つの縦方向仕切り板82が一つの横方向仕切り板80に接続される。これらの縦方向仕切り板82は、一方端がそれぞれ当該横方向仕切り板80の板面に接続される一方、他方端が当該析出ケース50の当該吸気口50aに向かう方向に延出すると共に当該横方向仕切り板80の板面と垂直して設置される。また、当該横方向仕切り板80は、当該右側板522に接続され、当該左側板521との間に第三距離D3を有する。当該横方向仕切り板80は、頂部と当該頂板523との間に第三間隔距離H3を有する。二つの縦方向仕切り板82における当該左側板521と近い縦方向仕切り板82aは、当該左側板521との間に第四距離D4を有すると共に当該底板524との間に第四間隔距離H4を有し、また、二つの縦方向仕切り板82間に第五距離D5を有する。二つの縦方向仕切り板82における当該右側板522と近い縦方向仕切り板82bは、当該右側板522との間に第六距離D6を有すると共に当該底板524との間に第五間隔距離H5を有する。そのうち、当該第三距離D3は、15mm~25mm、当該第三間隔距離H3は、20mm~110mm、当該第四間隔距離H4及び当該第五間隔距離H5は、それぞれ、100mm~190mmに、それぞれある。当該第四距離D4が60mm、当該第五距離D5が115mm、当該第六距離D6が175mmである。そして、固体のケイ素酸化物Sが析出する産量を大幅に高めることができる。そのうち、縦方向仕切り板82は、その数が一つ又は二つの以上であってもよい。縦方向仕切り板82と横方向仕切り板80の板面とは、互いに垂直せずに設置されてもよい。本実施例では、当該第三距離D3を15mm~25mmに選ぶことは、当該第三距離D3が25mmよりも大きいと、当該ケース本体52における気体の流れ速度が比較的速く、反応の時間が比較的短く、ケイ素酸化物の産出率が低くなりやすい一方、当該第三距離D3が15mmよりも小さいと、当該横方向仕切り板80と当該左側板521との間に産出されたケイ素酸化物により当該通路Cが塞がれて産出率が低くなりやすいためである。当該第四間隔距離H4を100mm~190mmに選ぶことは、縦方向仕切り板82aと当該底板524とを適正な距離に維持して、当該ケース本体50における気体が円滑に流れるようにするためである。また、当該第五間隔距離H5を100mm~190mmに選ぶことは、当該縦方向仕切り板82bが当該吸気口50aと近いと共に当該軸線Xを通過する位置に設置されることから、固体のケイ素酸化物が縦方向仕切り板82bに集まって生成されるためである。当該第五間隔距離H5については、つまり、当該縦方向仕切り板82bと当該吸気口50aと間の最小距離が100mmよりも小さい場合に、当該縦方向仕切り板82と当該底板524との間に産出されたケイ素酸化物により当該通路Cが塞がれて産出率が低くなりやすい。また、当該第四間隔距離H4及び当該第五間隔距離H5が190mmよりも大きいと、縦方向仕切り板82の表面積が間接的に小さくなり、ケイ素酸化物の産出率が低くなる。
【0017】
次に、下表1を参照すると、下表1は、仕切り板を設置しなかった形態、及び、
図3A~
図5に示されている異なる仕切り板を設置する形態に従って得られたケイ素酸化物の産出率を示すものである。係る産出率は、当該固体のケイ素酸化物Sの産出量と、投入された当該固体の原材料の重量との比例を算出したものである。表1に示すように、
図5における二つの縦方向仕切り板及び一つの横方向仕切り板に示される仕切り板を設置する形態により、仕切り板と気体のケイ素酸化物との接触面積を大幅に増やして、比較的高いケイ素酸化物の産出率を得ることが分かる。
【0018】
【0019】
図1を再度参照すると、当該ケイ素酸化物の製造装置1は、当該析出ケース50の外壁に設置された断熱部100を含み、当該断熱部100の熱伝導率が0.13~0.5W/m.Kにあり、0.24W/m.Kよりも小さいことが好ましく、厚さが5~80mmにある。当該断熱部100は、炭素繊維又は他の断熱素材で製造されたものであってもよい。当該断熱部100を設置することにより、当該析出ケース50を200~600度の温度に安定的に維持することができる。
【0020】
本実施例では、当該断熱部100が一つであるということを例に説明したが、他の実施例では、当該断熱部100の数が複数であってもよい。例示的に説明すると、
図6に示すように、当該析出ケースが第一析出部A1及び第二析出部A2を有する。当該第一析出部A1は、当該第二析出部A2に対して、当該加熱装置のヒーター30と近づく位置に設置され、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2との間に温度勾配を形成し、当該断熱部100は、第一断熱部102及び第二断熱部104を含み、当該第一断熱部102は、当該第一析出部A1の外壁に設置され、当該第二断熱部104は、当該第二析出部A2の外壁に設置され、しかも、当該第一断熱部102と当該第二断熱部104は、それぞれ、0.13~0.5W/m.Kにある異なる熱伝導率を有する。
【0021】
そうすると、当該第一断熱部102と当該第二断熱部104との当該熱伝導率を調整して当該第一析出部A1と当該第二析出部A2と間の温度差を制御することができる。温度差が近づけば近いほど、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2とに析出される固体のケイ素酸化物の酸素含有量が一致になる。当該温度差について例を挙げると50度よりも小さいと良く、30度よりも小さいことが好ましく、10度よりも小さいことが最も好ましい。一方、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2と間の温度差が大きければ大きいほど、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2が、酸素含有量が異なる固体のケイ素酸化物を析出することができる。上記通りに、当該第一断熱部102と当該第二断熱部104との熱伝導率を調整して当該第一析出部A1と当該第二析出部A2と間の温度差を制御できる以外に、当該第一断熱部102と当該第二断熱部104との厚さを調整して、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2との間の温度差を制御することもできる。本実施例では、当該第一断熱部102と当該第二断熱部104との厚さ差が20mm~70mmである。それ以外に、該第一析出部A1を当該第一断熱部102にのみ設置したり、当該第二析出部A2を当該第二断熱部104にのみ設置したりすることを排除することはない。
【0022】
図7に示すように、再度説明するのは、他の実施例において、当該カバー90が他の形状とされてもよく、上記の実施例に限られるものではない。例を挙げると、カバーが平板状のカバー92とされてもよい。この場合に、気体のケイ素酸化物の流れ領域を制限する効果が同様に図れる。
【0023】
図8を再度参照すると、他の実施例において、当該ケイ素酸化物の製造装置が断熱部94を含む。当該断熱部94は、炭素繊維又は他の断熱素材で製造されたものであってもよい。当該断熱部94は、当該析出ケースと当該断熱素材12との間に設置され、当該析出ケースと当該断熱素材12との間に距離Dを空けるためのものである。当該断熱部94の厚さを調整することにより、当該析出ケースと当該加熱装置との距離を制御し、析出ケースの温度を制御し、ひいては、固体のケイ素酸化物の酸素含有量(つまり、SiOxのx値)を制御することができる。例えば、当該断熱部94の厚さが厚くなると、当該析出ケースと当該断熱素材12との間の間隔距離Dが増やされ、当該析出ケースと当該加熱装置との距離が大きくなり、そして、当該析出ケースの温度を低くするように調整することができる。本実施例では、当該距離Dが300mmであるということを例に説明したが、他の実施例において、距離Dが300mmよりも小さいとされてもよい。
【0024】
以上より、本発明に係るケイ素酸化物の製造装置1は、仕切り板を設置することにより、気体のケイ素酸化物との接触面積を増やし、しかも、気体のケイ素酸化物の気体の流れ経路を伸ばすことから、ケイ素酸化物の産量を高めることができる。また、当該第一断熱部102と当該第二断熱部104との当該熱伝導率又は当該第一断熱部102と当該第二断熱部104との厚さを調整することにより、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2との間の温度差を制御し、ひいては、当該第一析出部A1と当該第二析出部A2に析出された固体のケイ素酸化物の酸素含有量を制御することができる。また、当該断熱部94の厚さを調整することにより、当該析出ケースと当該加熱装置との距離を制御でき、また、析出ケースの温度を制御でき、ひいては、固体のケイ素酸化物の酸素含有量(つまり、SiOxのx値)を制御することができる。
【0025】
以上に説明したのは、本発明における好ましい実施可能な実施例に過ぎず、本発明の明細書及び特許請求の範囲に基づいてなされる如何なる均等置換は、いずれも、本発明の特許範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケイ素酸化物の製造装置
10 加熱炉
10a 内炉壁
100 断熱部
102 第一断熱部
104 第二断熱部
12 断熱素材
20 載置台
30 ヒーター
40 坩堝
40a 上方開口
50 析出ケース
50a 吸気口
50b 排気口
52 ケース本体
521 左側板
522 右側板
523 頂板
524 底板
525 側方開口
54 ケースカバー
60 排気ダクト
60a 第一端
60b 第二端
70 抽気装置
80 横方向仕切り板
82 縦方向仕切り板
82a 縦方向仕切り板
82b 縦方向仕切り板
90、92 カバー
94 断熱部
90a 開孔
A1 第一析出部
A2 第二析出部
C 通路
D、D1、D2、D3、D4、D5、D6 距離
H1、H2、H3、H4、H5 間隔距離
H 高さ
R 加熱炉室
X 軸線
S 固体のケイ素酸化物