(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179346
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】作業工具及び工法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20221125BHJP
F16L 3/12 20060101ALI20221125BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F16L1/00 G
F16L3/12 A
F16B2/10 E
F16B2/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063900
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2022043949の分割
【原出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021085325
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021151845
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】522181234
【氏名又は名称】北嶋工業 株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522181245
【氏名又は名称】株式会社 増岡水道設備
(71)【出願人】
【識別番号】522181256
【氏名又は名称】株式会社 スミ設備
(72)【発明者】
【氏名】堀 敬太
(72)【発明者】
【氏名】前田 涼
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AB04
3H023AC14
3H023AC21
3H023AD19
3H023AD22
3H023AD54
3H023AE07
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC17
3J022FB03
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA16
3J022GB23
(57)【要約】
【課題】 高所に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に最適な作業工具及び工法を提供すること。
【解決手段】 作業工具200は、作業者が持ち手とするための長尺の棒体300と組み合わせて使用される。作業工具200は、棒体300の先端が固定される連結部210と、連結部210に連接されてパイプ100を保持するための保持部220とを備えている。長尺体保持具10に対してパイプ100を保持させる際には、作業工具200の保持部220にパイプ100を保持させ、棒体300の操作によって持ち上げてパイプ100を長尺体保持具10に対して押し付け、長尺体保持具10にパイプ100を保持させる。そして、棒体300の操作によって作業工具200を下方に向けて引っ張ることで、作業工具200の保持部220がパイプ100から外される。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に用いられる作業工具であって、長尺の棒体の先端に固定されるか又は当該棒体と一体化された連結部と、前記連結部に連接されて前記パイプを保持するための保持部とを備え、前記棒体を介して、前記保持部に保持した前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けることが可能な作業工具。
【請求項2】
高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に用いられるものであって、長尺の棒体の先端に固定されるか又は当該棒体と一体化された連結部と、前記連結部に連接されて前記パイプを保持するための保持部とを備え、前記保持部は前記パイプの軸線方向に間隔をおいて配置された一対が備えられており、前記一対の保持部間に形成された空隙を利用して、前記長尺体保持具を避けつつ前記一対の保持部間に位置する前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けることが可能な作業工具。
【請求項3】
高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際と、前記施工面に対して長尺体保持具を設置する際とに用いられる作業工具であって、長尺の棒体の先端に固定される第1連結部と、前記第1連結部に連接されて前記パイプを保持するための第1保持部とを備え、前記棒体を介して前記第1保持部に保持した前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けることが可能であって、さらには前記棒体の先端に固定される、前記第1連結部とは別の第2連結部と、前記第2連結部に連接されて前記長尺体保持具を保持するための第2保持部とを備え、前記棒体を介して前記第2保持部に保持した前記長尺体保持具を前記施工面に対して押し付けることが可能な作業工具。
【請求項4】
前記保持部(請求項3に記載の発明にあっては前記第1保持部)には、前記長尺体保持具による前記パイプの保持を解除するための係合爪が設けられている請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の作業工具。
【請求項5】
高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に用いられる工法であって、長尺の棒体の先端に前記パイプを保持させる工程と、前記棒体を持ち上げて前記パイプを前記長尺体保持具に接近させる工程と、前記棒体を介して前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けて前記長尺体保持具に前記パイプを保持させる工程と、前記棒体を下ろすことで前記棒体から前記パイプを外す工程とを備えた工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水給湯に用いられるパイプ等の長尺体を高所に設置された長尺体保持具に保持させる際に用いられる作業工具及び工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には長尺体保持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高所に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に最適な作業工具及び工法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に用いられる作業工具であって、長尺の棒体の先端に固定されるか又は当該棒体と一体化された連結部と、前記連結部に連接されて前記パイプを保持するための保持部とを備え、前記棒体を介して、前記保持部に保持した前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けることが可能な作業工具である。
【0006】
上記目的を達成するために請求項2の発明は、高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に用いられるものであって、長尺の棒体の先端に固定されるか又は当該棒体と一体化された連結部と、前記連結部に連接されて前記パイプを保持するための保持部とを備え、前記保持部は前記パイプの軸線方向に間隔をおいて配置された一対が備えられており、前記一対の保持部間に形成された空隙を利用して、前記長尺体保持具を避けつつ前記一対の保持部間に位置する前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けることが可能な作業工具である。
【0007】
上記目的を達成するために請求項3の発明は、高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際と、前記施工面に対して長尺体保持具を設置する際とに用いられる作業工具であって、長尺の棒体の先端に固定される第1連結部と、前記第1連結部に連接されて前記パイプを保持するための第1保持部とを備え、前記棒体を介して前記第1保持部に保持した前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けることが可能であって、さらには前記棒体の先端に固定される、前記第1連結部とは別の第2連結部と、前記第2連結部に連接されて前記長尺体保持具を保持するための第2保持部とを備え、前記棒体を介して前記第2保持部に保持した前記長尺体保持具を前記施工面に対して押し付けることが可能な作業工具である。
【0008】
請求項4の発明は請求項1~請求項3のいずれか一項において、前記保持部(請求項2の発明にあっては前記第1保持部)には、前記長尺体保持具による前記パイプの保持を解除するための係合爪が設けられている。
【0009】
上記目的を達成するために請求項5の発明は、高所の施工面に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に用いられる工法であって、長尺の棒体の先端に前記パイプを保持させる工程と、前記棒体を持ち上げて前記パイプを前記長尺体保持具に接近させる工程と、前記棒体を介して前記パイプを前記長尺体保持具に対して押し付けて前記長尺体保持具に前記パイプを保持させる工程と、前記棒体を下ろすことで前記棒体から前記パイプを外す工程とを備えた工法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作業工具及び工法は、高所に設置された長尺体保持具に対してパイプを保持させる際に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図8】長尺体保持具の正面図であって、対応サイズのうちで外径が最も小さいパイプを保持した状態を示す図。
【
図9】長尺体保持具の正面図であって、対応サイズのうちで外径が最も大きいパイプを保持した状態を示す図。
【
図10】長尺体保持具の平面図であって、対応サイズのうちで外径が最も大きいパイプを保持した状態を示す図。
【
図11】長尺体保持具の正面図であって、対応サイズのうちで外径が最も大きいパイプを保持した状態を示す図であり、一部の内向き係合爪が外向き係合爪に対して係合されていない状態を説明する図。
【
図12】長尺体保持具の平面図であって、対応サイズのうちで外径が最も大きいパイプを保持した状態を示す図であり、一部の内向き係合爪が外向き係合爪に対して係合されていない状態を説明する図。
【
図13】作業工具の正面図(背面図は正面図に同じ)。
【
図14】作業工具の右側面図(左側面図は右側面図に同じ)。
【
図19】別の別例の作業工具の正面図(背面図は正面図に同じ)。
【
図26】同じく作業工具の使用方法を説明する斜視図。
【
図27】同じく作業工具の使用方法を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、長尺体としての給水給湯用のパイプを保持するための長尺体保持具に具体化した一実施形態について、
図1~
図12を参照しつつ説明する。なお、
図1は長尺体保持具10の正面図であって、
図1の上下方向を長尺体保持具10の上下方向とし、
図1の左右方向を長尺体保持具10の左右方向とし、
図1の紙面表裏方向を長尺体保持具10の前後方向とする。
【0013】
図1~
図7に示すように、長尺体保持具10は、施工面Sに固定されるベース20と、ベース20に設けられてパイプ100を保持するための一対の保持部材(第1保持部材30及び第2保持部材40)と、を備えている。ベース20、第1保持部材30及び第2保持部材40は、ポリプロピレン等の合成樹脂により一体成形されている。つまり、第1保持部材30と第2保持部材40とは、ベース20を介して互いに連結されている。
【0014】
ベース20は、前後左右方向の中央部に上下方向へと延びる取付孔21aが設けられた取付部21と、取付部21において上面の右側縁に立設された「く」字形の第1柱状部22と、取付部21において上面の左側縁に立設された「く」字形の第2柱状部23とを備えている。ベース20は、取付部21の取付孔21aを介して施工面Sに対してビス止めされる。ベース20の下面には、施工面Sに対して食い込む先鋭状の突起20aが設けられており、当該ビス止め時における長尺体保持具10の回動を防止する。
【0015】
第1柱状部22の先端には、薄肉ヒンジよりなる第1ヒンジ22aが設けられている。第2柱状部23の先端には、薄肉ヒンジよりなる第2ヒンジ23aが設けられている。
【0016】
第1保持部材30及び第2保持部材40は、それぞれ半円筒状をなしている。第1保持部材30は第1保持凹所11aを有している。第2保持部材40は、パイプ100の外周を取り囲む保持部11を第1保持凹所11aとで構成する第2保持凹所11bを有している。第1保持部材30において上方側に位置する第1端30aと、第1端30aに対峙する、第2保持部材40において上方側に位置する第1端40aとの間には、保持部11へパイプ100を挿入するための入口11cが設けられている。
【0017】
第1保持部材30は、上方側の第1端30aと下方側の第2端30bとの間の途中部分の外面が、第1ヒンジ22aを介して第1柱状部22に連結されている。第2保持部材40は、上方側の第1端40aと下方側の第2端40bとの間の途中部分の外面が、第2ヒンジ23aを介して第2柱状部23に連結されている。保持部11の入口11cは、取付部21の取付孔21aの軸線上に位置する。入口11cの左右方向の幅は、取付孔21aの内径よりも大きい。
【0018】
第1保持部材30において第1端30a側の外面には、複数(本実施形態においては9つ)の外向き係合爪31が、周方向に沿って所定の間隔で設けられている。第1保持部材30において第1ヒンジ22aの近傍の外面には、指掛け32が突設されている。第1保持部材30において第1ヒンジ22aの近傍の内面には、周方向に延びるリブ33が設けられている。リブ33は、保持部11に収容されたパイプ100に対して軸線方向への抵抗力を付与することで、パイプ100が当該軸線方向へ移動することを防止する(
図8参照)。
【0019】
第2保持部材40において第1端40aの内面には、複数(外向き係合爪31の数よりも少ない数。本実施形態においては3つ)の内向き係合爪41が、周方向に沿って所定の間隔で設けられている。第2保持部材40の外面において第2ヒンジ23aの近傍には、段差42が設けられている。第2保持部材40は、段差42を境界とした第1端40a側の前後方向の幅が、同じく第2端40b側の前後方向の幅よりも狭くなっている。第2保持部材40において第2ヒンジ23aの近傍の内面には、周方向に延びるリブ43が設けられている。リブ43は、保持部11に保持されたパイプ100に対して軸線方向への抵抗力を付与することで、パイプ100が当該軸線方向へ移動することを防止する(
図8参照)。
【0020】
第1保持部材30において第2端30bの先端には、半円状の切り欠き34が設けられている。切り欠き34の内径は、取付部21の取付孔21aの内径よりも大きい。第2保持部材40において第2端40bの先端には、半円状の切り欠き44が設けられている。切り欠き44の内径は、取付部21の取付孔21aの内径よりも大きい。保持部11の入口11cは、第1ヒンジ22a第2ヒンジ23aの自然状態において長尺体保持具10を平面視した場合(
図5参照)、切り欠き34,44の全体を視認が可能なように、左右方向の幅が広くなっている。
【0021】
したがって、第1ヒンジ22a及び第2ヒンジ23aの自然状態において長尺体保持具10を平面視した場合(
図5参照)、取付部21の取付孔21aが第1保持部材30の第1端30a及び第2端30bや、第2保持部材40の第1端40a及び第2端40bによって隠されることはなく、取付孔21aは入口11c及び切り欠き34,44を介して視認が可能である。
【0022】
よって、長尺体保持具10を施工面Sに対してビス止めする際には、第1ヒンジ22a及び第2ヒンジ23aが自然状態のままで、保持部11の入口11cから取付部21の取付孔21aまで、ビス(図示しない)を直線的に移動させることができる。したがって、ビスを取付孔21aへ挿入する際に、例えば第1保持部材30や第2保持部材40を手などで傾動させる、すなわち第1ヒンジ22a及び第2ヒンジ23aを弾性変形させた状態としておく面倒がない。
【0023】
第1保持部材30の第1端30aにおいて、保持部11の入口11cに最も近い位置にある外向き係合爪31の前後には、第1係合目印35がそれぞれ設けられている。第1係合目印35は、第1保持部材30の径方向に延びるようにして設けられており、当該径方向の内側に向かうほど周方向の幅が狭くなる形状をなしている。第1係合目印35の基端において、入口11cとは反対側の端面を、第1基準35aとする。
【0024】
第2保持部材40において第1端40aの外面には、第2係合目印45が設けられている。第2係合目印45は、突起よりなり、平面視にて二等辺三角形状をなしている。第2係合目印45は、複数の内向き係合爪41のうち、保持部11の入口11cから最も遠い位置にある内向き係合爪41の近傍に、二等辺三角形状の底辺が位置するよう設けられている。当該底辺を第2基準45aとする。
【0025】
さて、
図1~
図7に示す状態(施工面Sに対するビス止め済みとする。第1ヒンジ22a及び第2ヒンジ23aは自然状態。)にある長尺体保持具10にパイプ100を保持させる際には、入口11cを介して保持部11へとパイプ100を挿入する(特に
図7参照)。保持部11に挿入されたパイプ100を、第1保持部材30の第2端30b及び第2保持部材40の第2端40bに対して押し付けることで、第1保持部材30が第1ヒンジ22aを支点として、また第2保持部材40が第2ヒンジ23aを支点として、それぞれ傾動する。この第1保持部材30及び第2保持部材40の傾動に応じて、保持部11の内径が小さくなってゆく。
【0026】
したがって、
図8及び
図9に示すように、第1保持部材30の第1端30aと第2保持部材40の第1端40aとが互いに接近してやがては入口11cが閉じられ、さらには第1保持部材30の外向き係合爪31と第2保持部材40の内向き係合爪41とがスナップ係合されて、第1保持部材30と第2保持部材40との間でパイプ100が挟持される。
【0027】
図8は、長尺体保持具10が、その対応するパイプ100のサイズのうちで、外径が最も小さいパイプ100(100A)を保持した状態を示す図である。この状態で、第2保持部材40の内向き係合爪41は、第1保持部材30の複数の外向き係合爪31のうちで、入口11cから周方向に遠く離れた外向き係合爪31に対して係合されている。したがって、外向き係合爪31と内向き係合爪41との前述したスナップ係合を、パイプ100(100A)等からの反力がある程度大きくなるまで進行させて保持部11の内径を小さくするのみで、複数の内向き係合爪41の全てを外向き係合爪31に対して係合させることが可能である。
【0028】
また、第1保持部材30の第1端30aの先端(第1係合目印35の端面)が、段差42に当接することによって、保持部11の内径が、最小外径のパイプ100(100A)を保持するのに好適となったことを確認できる。
【0029】
ここで、
図9は、長尺体保持具10が、その対応するパイプ100のサイズのうちで外径が最も大きいパイプ100(100B)を保持した状態を示す図である。この状態で、第2保持部材40の内向き係合爪41は、第1保持部材30の複数の外向き係合爪31のうちで、入口11cに近い外向き係合爪31に対して係合されている。したがって、例えば
図11に示すように、外向き係合爪31と内向き係合爪41とのスナップ係合を、パイプ100(100B)等からの反力がある程度大きくなるまで進行させる感触のみの判断では、複数の内向き係合爪41の全てを外向き係合爪31に対して係合させることができない場合がある。
【0030】
この場合、
図11及び
図12に示すように、入口11cが開いた状態(
図1参照)では左右方向に離間していた第1保持部材30の第1係合目印35と第2保持部材40の第2係合目印45とは、入口11cが閉じることによって接近しつつも、第2係合目印45の第2基準45aが一対の第1係合目印35の第1基準35a間に到達した状態とはならない。したがって、作業者は、第2係合目印45の第2基準45aが一対の第1係合目印35の第1基準35a間に到達していないことを視認することで、複数の内向き係合爪41のうちの一部が外向き係合爪31に対して係合されていないことを確認できる。
【0031】
内向き係合爪41の外向き係合爪31に対する不完全な係合を確認した作業者は、外向き係合爪31と内向き係合爪41とのスナップ係合をさらに進行させて保持部11の内径を小さくする。したがって、
図9及び
図10に示すように、第2係合目印45の第2基準45aは、保持部11の内径が小さくなることに応じて、一対の第1係合目印35の第1基準35a間にほぼ到達することとなる。作業者は、第2係合目印45の第2基準45aが一対の第1係合目印35の第1基準35a間にほぼ到達したことを視認することによって、全ての内向き係合爪41が外向き係合爪31に対して係合されていることを確認でき、複数の内向き係合爪41の外向き係合爪31に対する不完全な係合を容易に回避できる。
【0032】
本実施形態においては次のような作用効果も奏し得る。
(1)第1係合目印35は、第1保持部材30において入口11c側の第1端30aに設けられている。第2係合目印45は、第2保持部材40において入口11c側の第1端40aに設けられている。したがって、保持部11に対するパイプ100の挿入作業を行いつつ、少ない視線の移動で第1係合目印35と第2係合目印45との相対位置の変化を視認でき、作業性が良好となる。
【0033】
(2)第1係合目印35は一対が設けられており、第1保持部材30及び第2保持部材40の傾動によって、一対の第1係合目印35の間を第2係合目印45(第2保持部材40)が通過する構成である。したがって、第1係合目印35と第2係合目印45との相対位置を正確に把握し易いし、一対の第1係合目印35によるガイド作用によって、外向き係合爪31と内向き係合爪41とのスナップ係合の作業を、正確かつ容易に行い得る。
【0034】
(3)第1保持部材30の第2端30b及び第2保持部材40の第2端40bのそれぞれには、取付部21の取付孔21aを入口11c側から視認可能とする切り欠き34,44が設けられている。したがって、第2端30b,40bにおいて切り欠き34,44が設けられていない部分に対してパイプ100を押し付けることで、第1保持部材30及び第2保持部材40を傾動させて入口11cを閉じることができる。つまり、取付部21のビス止めのし易さと、所謂ワンタッチ式パイプクランプの機能とを高次元で両立できる。
【0035】
(4)指掛け32及び段差42は、外向き係合爪31と内向き係合爪41とのスナップ係合をさらに進行させる際の作業者の手掛かりとなり、その作業を容易とする。
【0036】
(別例)
本発明は例えば次の態様でも実施が可能である。
〇高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10に対してパイプ100を保持させる際に、
図13~
図16に示すような、合成樹脂製の作業工具200を用いること。作業工具200は、作業者が持ち手とするための長尺の棒体300と組み合わせて使用される。棒体300は、金属製、合成樹脂製或いは木製の円柱体からなっている。
【0037】
作業工具200は、棒体300の先端が圧入固定される円筒状の連結部210と、連結部210に連接されてパイプ100を保持するための保持部220とを備えている。保持部220は、パイプ100の軸線方向に間隔をおいて配置された一対が備えられている。各保持部220は、一対の保持片221を備えている。保持片221は、弾性変形によってパイプ100を着脱可能に挟持保持するためのものである。各保持片221の先端の外面には、それぞれ係合爪221aが設けられている。各保持片221の内面には、パイプ100が軸線方向へ移動されることを抑制するための滑り止めのリブ221bが設けられている。
【0038】
図17に示すように、高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10に対してパイプ100を保持させる際には、作業工具200の一対の保持部220に対して、それぞれ保持片221の先端側からパイプ100を押し込んで、対応する一対の保持片221の間でパイプ100を挟持させる。パイプ100を保持した状態にある作業工具200を、棒体300の操作によって持ち上げて長尺体保持具10に対して接近させる。
【0039】
そして、一対の保持部220の間に形成された空隙を利用して、長尺体保持具10と作業工具200との干渉を避けつつ、パイプ100において一対の保持部220間に位置する部分を長尺体保持具10に対して押し付けて、第1保持部材30の外向き係合爪31と第2保持部材40の内向き係合爪41とを係合させる(
図7及び
図8参照)。当該係合が完了された後には、棒体300の操作によって作業工具200を下方に向けて引っ張ることで、各保持片221が弾性変形されて、作業工具200の各保持部220がパイプ100から外される。
【0040】
逆に、高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10からパイプ100を外す場合には、作業工具200を、棒体300の操作によって持ち上げて長尺体保持具10に対して接近させ、いずれかの保持片221の係合爪221aを、長尺体保持具10において第2保持部材40の第1端40aに引っ掛ける。そして、棒体300の操作によって作業工具200を下方に向けて引っ張ることで、第2保持部材40における第1端40aの付近が弾性変形して、第1保持部材30の外向き係合爪31と第2保持部材40の内向き係合爪41との係合が解除される。
【0041】
なお、当該係合が解除された後には、パイプ100を自重により落下させてもよいし、落下しようとするパイプ100を作業工具200の各保持片221の先端で受け止めて、パイプ100を作業工具200とともにゆっくりと下ろすようにしてもよい。
【0042】
図13~
図17に示す作業工具200(及び棒体300)によれば、脚立等を用いることなく、高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10に対してパイプ100を着脱可能であって、当該作業の効率が向上されるし、当該作業の安全性においても有利である。
【0043】
また、長尺体保持具10に対してパイプ100を着脱する際、一対の保持部220によって、長尺体保持具10の両側でパイプ100が保持されることとなる。したがって、長尺体保持具10に対してパイプ100を押し付けて保持させることを、安定的に行い得る。
【0044】
〇
図18に示す作業工具250は、
図13~
図17に示す作業工具200において、各保持片221の先端部の内面に切り欠き221cを設けたものである。一対の保持部220は、切り欠き221cを介することで、矩形の基板50の長手方向の両端部を好適に挟持保持することが可能である。基板50には、ビス止めや接着剤による接着や両面テープを介した貼着等によって、複数(本実施形態においては二つ)の長尺体保持具10が固定されている。複数の長尺体保持具10が固定された基板50は、複数の長尺体保持具10が一対の保持部220の間に位置するようにして、換言すれば複数の長尺体保持具10の上下を反転させた状態で、保持部220によって保持されている。
【0045】
そして、基板50において長尺体保持具10とは反対側の面に対して、接着剤を塗布したり或いは両面テープを貼着したりする等した後、基板50及び作業工具250を、棒体300の操作によって高所に持ち上げて、基板50を施工面Sに対して押し付けて固定する。施工面Sに対する基板50の固定、換言すれば長尺体保持具10の設置が完了された後には、棒体300の操作によって作業工具250を下方に向けて引っ張ることで、作業工具250の保持部220が基板50から外される。このようにして高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10に対しては、
図13~
図17に示す作業工具200と同様にしてパイプ100を保持させる。
【0046】
図18に示す作業工具250によれば、脚立等を用いることなく、長尺体保持具10及びパイプ100を高所の施工面Sに対して設置でき、当該作業の効率が向上されるし、当該作業の安全性においても有利である。そういった意味において作業工具250は、長尺体保持具10を保持するための作業工具としても把握できる。なお、作業工具250のその他の使用方法としては、長尺体保持具10に対して予めパイプ100を保持させておき、パイプ100を基板50及び長尺体保持具10とともに高所へと一度に持ち上げて、これら一式を施工面Sに対して一度の作業で設置するようにしてもよい。
【0047】
〇
図19~
図27に示す作業工具260は、円筒状をなす棒体300の先端に圧入固定される円柱状の第1連結部270と、棒体300の先端に圧入固定される円柱状の第2連結部271とを備えている。第1連結部270と第2連結部271とは、互いの中心軸線が直交する位置関係で配置されている。第1連結部270と第2連結部271とが交差する共通部分を交差部272とする。なお、第1連結部270、第2連結部271及び交差部272のそれぞれの外面には、作業工具260を軽量化するための肉抜きが施されている。
【0048】
交差部272において第1連結部270と反対側には、パイプ100を保持するための第1保持部280が設けられている。第1保持部280は、一対の保持片281を備えている。保持片281は、弾性変形によってパイプ100を着脱可能に挟持保持するためのものである。各保持片281の先端の外面には、それぞれ係合爪281aが設けられている。各係合爪281aは、
図13~
図18に示す作業工具200,250の係合爪221aと同様の役目(外向き係合爪31と内向き係合爪41との係合を解除する)をなすものである。各保持片281において係合爪281aの両側には、ガイド281bが設けられている。ガイド281bは、当該役目を果たすべく係合爪281aを長尺体保持具10の第1端40aに引っ掛けた際に、係合爪281aが第1端40aから外れないようにするためのものである。各保持片281の内面には、パイプ100が軸線方向へ移動されることを抑制するための滑り止めのリブ281cが設けられている。
【0049】
交差部272において第2連結部271と反対側の外面(肉抜き部分以外の面)は、第1連結部270の中心軸線を中心とした半円筒面状をなしており、交差部272において当該半円筒面状の部分が第2保持部285となっている。第2保持部285において第2連結部271の中心軸線上には、挿入突起285aが設けられている。
【0050】
図26に示すように、高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10に対してパイプ100を保持させる際には、作業工具260の第1連結部270を棒体300の先端に圧入固定するとともに、
図13~
図18に示す作業工具200,250と同様にして、第1保持部280にパイプ100を保持させる。
【0051】
図27に示すように、複数(本実施形態においては二つ)の長尺体保持具10が固定された基板50を、高所の施工面Sに対して設置する際には、作業工具260の第2連結部271を棒体300の先端に圧入固定するとともに、複数のうちの一つの長尺体保持具10に対し、入口11cを介して保持部11へと第2保持部285を挿入する。第2保持部285の幅(半円筒面状の外径)は入口11cの幅よりも大きいため、入口11cにおいて第1保持部材30と第2保持部材40との間で第2保持部285が締められて、第2保持部285に対して長尺体保持具10が保持される。
【0052】
ここで、作業工具260において、長尺体保持具10の第1保持部材30及び第2保持部材40に対して当接する面が、パイプ100の外面に類似した半円筒面状であるため、第2保持部285の長尺体保持具10(保持部11)への挿入がスムーズとなる。また、第2保持部285の外面が肉抜きされているため、長尺体保持具10の第1保持部材30及び第2保持部材40に対する第2保持部285の引っ掛かりがよくなり、第2保持部285による長尺体保持具10の保持が確実となる。
【0053】
第2保持部285に対して長尺体保持具10が保持された状態では、第2保持部285の挿入突起285aが、長尺体保持具10の切り欠き34と切り欠き44との間を挿通された状態となっている。したがって、作業工具260の挿入突起285aが、長尺体保持具10の切り欠き34,44の内縁に対して当接することで、長尺体保持具10換言すれば基板50が、作業工具260に対して傾動することや、長尺体保持具10換言すれば基板50が、第1連結部270の中心軸線方向にズレてしまうことを防止でき、施工面Sに対する基板50の設置(接着)を確実に行い得る。
【0054】
図19~
図27に示す作業工具260によれば、高所の施工面Sに設置された長尺体保持具10に対してパイプ100を保持させる際と、長尺体保持具10が固定された基板50を施工面Sに対して設置する際とで、棒体300が固定される連結部(第1連結部270及び第2連結部271)が別に備えられている。したがって、パイプ100を保持するための第1保持部280及び長尺体保持具10を保持するための第2保持部285のそれぞれの配置にスペース的な余裕ができ、第1保持部280及び第2保持部285のそれぞれの設計の自由度が増す。
【0055】
〇作業工具200,250の連結部210を棒体300と一体成形する等、連結部210と棒体300とを一体化すること。
【0056】
○第1係合目印35を、複数の外向き係合爪31のうち入口11cから遠い位置にある外向き係合爪31の近傍に設けること。
【0057】
〇第2係合目印45を、複数の内向き係合爪41のうち入口11cから最も近い位置にある内向き係合爪41の近傍に設けること。
【0058】
〇外向き係合爪31の数を内向き係合爪41の3倍未満又は3倍を超える数とすること。特に外向き係合爪31の数が内向き係合爪41の数の2倍以上であると、外径が最も大きいパイプ100(100B)を保持した状態において使用されずに露出されている外向き係合爪31の数、換言すれば内向き係合爪41に対して係合されていない外向き係合爪31の数が多くて当該数の正確な把握が困難となる。したがって、第1係合目印35及び第2係合目印45を利用しなければ、全ての内向き係合爪41が対応する外向き係合爪31に対して係合されていることの確認が困難となる。つまり、外向き係合爪31の数が内向き係合爪41の数の2倍以上であるという前提条件では、本発明を適用するのに特に有効となる。
【0059】
〇外向き係合爪31及び/又は第2係合目印45を、凹部又はペイントにより設けること。
【0060】
○第1ヒンジ22a及び/又は第2ヒンジ23aを、軸部材を用いたヒンジへと変更すること。
【0061】
〇上記実施形態の長尺体保持具10は、パイプ100を保持部11に挿入する力を利用することで、第1保持部材30及び第2保持部材40を傾動させて入口11cを閉じる所謂ワンタッチ式パイプクランプであった。これを変更し、保持部11にパイプ100を挿入した後、作業者が手指にて第1保持部材30及び第2保持部材40を直接的に傾動させて入口11cを閉じるタイプの長尺体保持具10とすること。
【0062】
○その他の施工面としては、車両の車体面等が挙げられる。
【0063】
○他のパイプとしては、排水パイプやガスパイプ等が挙げられる。また、パイプ以外の長尺体としては、ワイヤハーネスや光ファイバー等が挙げられる。
【0064】
(付記)
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記第1係合目印は、複数の前記外向き係合爪のうち前記入口に最も近い位置にある前記外向き係合爪の近傍に設けられ、前記第2係合目印は、複数の前記内向き係合爪のうち前記入口から最も遠い位置にある前記内向き係合爪の近傍に設けられている請求項2に記載の長尺体保持具。
【0065】
(2)前記外向き係合爪の数は前記内向き係合爪の数の2倍以上である請求項1~請求項3のいずれか一項又は技術的思想(1)に記載の長尺体保持具。
【0066】
(3)高所の施工面に対して長尺体保持具を設置する際に用いられる作業工具であって、長尺の棒体の先端に固定されるか又は当該棒体と一体化された連結部と、前記連結部に連接されて前記長尺体保持具を保持するための保持部とを備え、前記保持部は間隔をおいて配置された一対が備えられており、前記一対の保持部の間に形成された空隙に、前記保持部に保持された前記長尺体保持具を収容することが可能である作業工具。
【0067】
(4)前記長尺体保持具は複数が基板に固定されており、前記保持部は前記基板を保持可能であって、前記一対の保持部の間に形成された空隙は、複数の前記長尺体保持具を収容することが可能である技術的思想(3)に記載の作業工具。
【0068】
(5)施工面に対して長尺体を取り付けるために用いられるものであって、第1保持凹所を有する第1保持部材と、前記長尺体の外周を取り囲む保持部を前記第1保持凹所とで構成する第2保持凹所を有する第2保持部材と、を備え、前記第1保持部材と前記第2保持部材とは互いに連結されて、前記保持部における前記長尺体の入口を開閉可能であり、前記第1保持部材において前記入口側の端の外面には複数の外向き係合爪が設けられ、前記第2保持部材において前記入口側の端の内面には、前記第1保持部材の前記外向き係合爪に係合可能な複数の内向き係合爪が、前記外向き係合爪の数よりも少ない数だけ設けられ、前記外向き係合爪と前記内向き係合爪とが係合されることで前記入口が閉じた状態を維持可能であるとともに、前記内向き係合爪が係合する前記外向き係合爪を変更することで、前記保持部の内径を調節して異なる外径の前記長尺体を保持可能となっており、前記第1保持部材には第1係合目印が設けられ、前記第2保持部材には第2係合目印が設けられており、前記内向き係合爪が係合する前記外向き係合爪を変更した場合に、前記第1保持部材の前記第1係合目印と前記第2保持部材の前記第2係合目印との相対位置が変更されることで、全ての前記内向き係合爪が前記外向き係合爪に対して係合されていることを、前記第1係合目印と前記第2係合目印との相対位置の視認によって確認できるようにした長尺体保持具。
【0069】
(6)前記第1係合目印は、前記第1保持部材において前記入口側の端に設けられ、前記第2係合目印は、前記第2保持部材において前記入口側の端に設けられている技術的思想(5)に記載の長尺体保持具。
【0070】
(7)前記第1係合目印は一対が設けられており、前記第1係合目印と前記第2係合目印との相対位置の変更によって、一対の前記第1係合目印の間を前記第2係合目印が通過される技術的思想(5)又は技術的思想(6)に記載の長尺体保持具。
【符号の説明】
【0071】
10…長尺体保持具、11…保持部(a…第1保持凹所、b…第2保持凹所、c…入口)。
20…ベース(a…突起)、21…取付部(a…取付孔)、22…第1柱状部(a…第1ヒンジ)、23…第2柱状部(a…第2ヒンジ)。
30…第1保持部材(a…入口側の端としての第1端、b…第2端)、31…外向き係合爪、32…指掛け、33…リブ、34…切り欠き、35…第1係合目印(a…第1基準)。
40…第2保持部材(a…入口側の端としての第1端、b…第2端)、41…内向き係合爪、42…段差、43…リブ、44…切り欠き、45…第2係合目印(a…第2基準)。
50…基板。
100(100A,100B)…パイプ。
200…作業工具。
210…連結部。
220…保持部、221…保持片(a…係合爪、b…リブ、c…切り欠き)。
250…作業工具。
260…作業工具。
270…第1連結部、271…第2連結部、272…交差部。
280…第1保持部、281…保持片(a…係合爪、b…ガイド、c…リブ)、285…第2保持部(a…挿入突起)。
300…棒体。
S…施工面。