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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179363
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】内蔵物供給機及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/08 20060101AFI20221125BHJP
   B30B 11/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B30B11/08 A
B30B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022070579
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000141543
【氏名又は名称】株式会社菊水製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】辻浦 祐司
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 智弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】宇仁田 真秀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 曉宏
(57)【要約】
【課題】粉体圧縮成形機に対して成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための好適な供給機を提供する。
【解決手段】粉体圧縮成形機Aの臼孔4に成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機B、C、Dであって、内蔵物を捕捉し搬送する搬送部材B1、C1を備えた搬送機構B、Cと、搬送機構B、Cの搬送部材B1、C1による内蔵物の搬送経路と交差するように配置され搬送部材が搬送する内蔵物が衝突する掻き取り部材、掻き取り部材に衝突し搬送部材から掻き取られる内蔵物を案内し粉体圧縮成形機Aのテーブル31の臼孔4の直上近傍まで導く凹溝が形成された滑走部材、及び、当該内蔵物に当接し同内蔵物を滑走部材の凹溝の始端部に押し入れるとともに凹溝に沿って運動して当該内蔵物を凹溝の終端部まで送る突起部を有する押送部材D31を備えた供給機構Dとを具備する内蔵物供給機B、C、Dを構成した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルに形成された臼孔に粉体を充填し上下の杵によりその粉体を圧縮することで成形品を成形する粉体圧縮成形機の臼孔に、成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機であって、
前記内蔵物を捕捉し搬送する搬送部材を備えた搬送機構と、
前記搬送機構の搬送部材による前記内蔵物の搬送経路と交差するように配置され搬送部材が搬送する内蔵物が衝突する掻き取り部材、掻き取り部材に衝突し搬送部材から掻き取られる内蔵物を案内し前記粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔の直上近傍まで導く凹溝が形成された滑走部材、及び、掻き取り部材に衝突した内蔵物に当接し当該内蔵物を滑走部材の凹溝の始端部に押し入れるとともに凹溝に沿って運動して当該内蔵物を凹溝の終端部まで送る突起部を有する押送部材を備えた供給機構と
を具備する内蔵物供給機。
【請求項2】
前記搬送機構の搬送部材、及び前記供給機構の押送部材がそれぞれ回転する回転体であり、それら回転体が計三個存在している請求項1記載の内蔵物供給機。
【請求項3】
前記供給機構が、前記押送部材に支持され前記突起部とともに運動し、前記滑走部材の凹溝の終端部に至った前記内蔵物を上方から突いて前記粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔内に落とし込む叩き落とし部材を備えている請求項1記載の内蔵物供給機。
【請求項4】
前記供給機構が、前記掻き取り部材に衝突した前記内蔵物が前記押送部材の突起部により前記滑走部材の凹溝の始端部に押し入れられるまでの過程で当該内蔵物を吸引して保持するための吸引装置を備えている請求項1記載の内蔵物供給機。
【請求項5】
前記供給機構が、前記掻き取り部材に衝突した前記内蔵物が前記押送部材の突起部により前記滑走部材の凹溝の始端部に押し入れられるまでの過程で当該内蔵物を吸引して保持するための吸引装置を備えている請求項3記載の内蔵物供給機。
【請求項6】
前記供給機構が、前記滑走部材の凹溝の始端部に押し入れられる前記内蔵物に臨む位置に、内蔵物の除電用の空気を吹き出させる吹出口を備えている請求項4記載の内蔵物供給機。
【請求項7】
前記供給機構が、前記滑走部材の凹溝の始端部に押し入れられる前記内蔵物に臨む位置に、内蔵物の除電用の空気を吹き出させる吹出口を備えている請求項5記載の内蔵物供給機。
【請求項8】
前記内蔵物が、前記成形品を体内に収めた人の体内と体外との間で通信を行うためのチップを含んでいる請求項1記載の内蔵物供給機。
【請求項9】
前記成形品が医薬品である請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の内蔵物供給機。
【請求項10】
回転盤のテーブルに設けられた臼孔において、内蔵物を含有する成形品を圧縮成形する成形品の製造方法であって、
内蔵物をキャリアテープにより搬送する工程と、
前記キャリアテープにより搬送される前記内蔵物を取り出し、第一の回転体の下面に吸着し、第一の回転体により第一の位置まで搬送する工程と、
第一の位置において、第一の回転体から第二の回転体の上面に前記内蔵物を受け渡し、第二の回転体により前記内蔵物を吸引し第二の位置まで搬送する工程と、
第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を、第三の回転体に設けられる押送部材により、第二の回転体の回転方向とは異なる方向に押し送り、前記回転盤の前記臼孔の位置まで搬送する工程と
を含む成形品の製造方法。
【請求項11】
前記押送部材は、前記内蔵物を、第二の回転体の上面から前記押送部材の下方に設けられた滑走部材の上面へと送るとともに、当該滑走部材上を滑走させる請求項10に記載の成形品の製造方法。
【請求項12】
第二の回転体の上方に設けられた掻き取り部材により、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を掻き取る請求項10記載の成形品の製造方法。
【請求項13】
第二の回転体の上方に設けられた掻き取り部材により、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を掻き取る請求項11記載の成形品の製造方法。
【請求項14】
前記内蔵物はICチップを含んでおり、前記成形品は医薬品である請求項10、11、12又は13記載の成形品の製造方法。
【請求項15】
テーブルに形成された臼孔に粉体を充填し、その粉体を圧縮することで成形品を成形する粉体圧縮成形機の臼孔に、成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機であって、
キャリアテープにより搬送される前記内蔵物を取り出し、下面にて前記内蔵物を吸着し、第一の位置まで搬送する第一の回転体と、
第一の位置において、第一の回転体から前記内蔵物を受け取り、前記内蔵物を上面にて吸着して第二の位置まで搬送する第二の回転体と、
第三の回転体に設けられ、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を、第二の回転体の回転方向とは異なる方向に押し送る押送部材と
を含む内蔵物供給機。
【請求項16】
前記押送部材の下方に設けられ、第二の回転体の上面から押し送られた前記内蔵物の滑走面となる滑走部材を含む請求項15記載の内蔵物供給機。
【請求項17】
第二の回転体の上方に設けられ、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を掻き取る掻き取り部材を含む請求項15記載の内蔵物供給機。
【請求項18】
第二の回転体の上方に設けられ、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を掻き取る掻き取り部材を含む請求項16記載の内蔵物供給機。
【請求項19】
前記内蔵物はICチップを含んでおり、前記成形品は医薬品である請求項15、16、17又は18記載の内蔵物供給機。
【請求項20】
テーブルに形成された臼孔に粉体を充填しその粉体を圧縮することで成形品を成形する粉体圧縮成形機の臼孔に、成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機であって、
前記内蔵物を捕捉し搬送する搬送部材を備えた搬送機構と、
前記搬送機構の搬送部材による前記内蔵物の搬送経路と交差するように配置され搬送部材が搬送する内蔵物が衝突する掻き取り部材、及び掻き取り部材に衝突した内蔵物に当接し送る突起部を有する押送部材を備えた供給機構と
を具備する内蔵物供給機。
【請求項21】
前記搬送部材の回転と前記押送部材の回転とが同期された請求項16記載の内蔵物供給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臼孔に充填した粉体を杵により圧縮して成形品を成形する成形機の臼孔に内蔵物を供給するための供給機、及び内蔵物を内蔵した成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転盤のテーブルに臼孔を設けるとともに、各臼孔の上下に上杵及び下杵をそれぞれ摺動可能に保持させておき、テーブル及び杵をともに水平回転させて、上杵及び下杵の対が上ロール及び下ロールの間を通過するときに臼孔内に充填された粉体を圧縮成形(又は、打錠)する回転式の粉体圧縮成形機が公知である。この種の粉体圧縮成形機は、医薬品の錠剤や食品、電子部品等を製造するために利用される。
【0003】
成形品には、時として、何らかの内蔵物を埋設することがある。特に、近時では、医薬品である成形品に極小のセンサを備えたICチップを内蔵しておき、患者が当該医薬品を服用した事実を確認できるようにすることが試みられている(例えば、下記非特許文献を参照)。本件特許出願人は、成形品に内蔵するべき内蔵物を粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔に供給するための供給機を過去に出願している(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-229181号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite)(登録商標)米国承認”、[online]、平成29年11月14日、大塚製薬株式会社、[令和1年7月20日検索]、インターネット<URL:https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2017/20171114#1.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粉体圧縮成形機に対して成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための好適な供給機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、テーブルに形成された臼孔に粉体を充填し上下の杵によりその粉体を圧縮することで成形品を成形する粉体圧縮成形機の臼孔に、成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機であって、前記内蔵物を捕捉し搬送する搬送部材を備えた搬送機構と、前記搬送機構の搬送部材による前記内蔵物の搬送経路と交差するように配置され搬送部材が搬送する内蔵物が衝突する掻き取り部材、掻き取り部材に衝突し搬送部材から掻き取られる内蔵物を案内し前記粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔の直上近傍まで導く凹溝が形成された滑走部材、及び、掻き取り部材に衝突した内蔵物に当接し当該内蔵物を滑走部材の凹溝の始端部に押し入れるとともに凹溝に沿って運動して当該内蔵物を凹溝の終端部まで送る突起部を有する押送部材を備えた供給機構とを具備する内蔵物供給機を構成した。本内蔵物供給機によれば、搬送機構が搬送した内蔵物を供給機構を介して適切に粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔に供給できる。
【0008】
前記搬送機構の搬送部材、及び前記供給機構の押送部材がそれぞれ回転する回転体であり、それら回転体が計三個存在しているものとすれば、必要最小限度の構成で、成形品に内蔵するべき内蔵物の受け取り、内蔵物の搬送及び成形機の臼孔への供給といった一連の処理を遂行できる。本内蔵物供給機において、回転体は計四個以上存在する必要はない。
【0009】
加えて、前記供給機構が、前記押送部材に支持され前記突起部とともに運動し、前記滑走部材の凹溝の終端部に至った前記内蔵物を上方から突いて前記粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔内に落とし込む叩き落とし部材を備えていれば、滑走部材の凹溝に沿って滑走又は摺動する内蔵物が帯電する等しても、確実に内蔵物を成形機のテーブルの臼孔内に落とし入れることができる。
【0010】
前記供給機構が、前記掻き取り部材に衝突した前記内蔵物が前記押送部材の突起部により前記滑走部材の凹溝の始端部に押し入れられるまでの過程で当該内蔵物を吸引して保持するための吸引装置を備えていれば、搬送機構の搬送部材から掻き取った内蔵物を確実に滑走部材の凹溝に案内できる。
【0011】
また、前記供給機構が、前記滑走部材の凹溝の始端部に押し入れられる前記内蔵物に臨む位置に、内蔵物の除電用の空気を吹き出させる吹出口を備えていれば、内蔵物の帯電を抑制できる。
【0012】
前記内蔵物は、例えばICチップ、特に前記成形品を体内に収めた人の体内と体外との間で通信を行うためのチップを含む。前記成形品は、例えば医薬品である。
【0013】
本開示に係る、回転盤のテーブルに設けられた臼孔において、内蔵物を含有する成形品を圧縮成形する成形品の製造方法は、内蔵物をキャリアテープ(又は、テープキャリア)により搬送する工程と、前記キャリアテープにより搬送される前記内蔵物を取り出し、第一の回転体の下面に吸着し、第一の回転体により第一の位置まで搬送する工程と、第一の位置において、第一の回転体から第二の回転体の上面に前記内蔵物を受け渡し、第二の回転体により前記内蔵物を吸引し第二の位置まで搬送する工程と、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を、第三の回転体に設けられる押送部材により、第二の回転体の回転方向とは異なる方向に押し送り、前記回転盤の前記臼孔の位置まで搬送する工程とを含む。本方法によれば、必要最小限度の構成で、成形品に内蔵するべき内蔵物の受け取り、内蔵物の搬送及び成形機の臼孔への供給といった一連の処理を遂行できる。本方法において、回転体は計四個以上存在する必要はない。
【0014】
前記押送部材は、前記内蔵物を、第二の回転体の上面から前記押送部材の下方に設けられた滑走部材の上面へと送るとともに、当該滑走部材上を滑走させる。
【0015】
第二の位置にあっては、前記第二の回転体の上方に設けた掻き取り部材により、第二の回転体の上面の前記内蔵物を掻き取る。
【0016】
また、本開示に係る、テーブルに形成された臼孔に粉体を充填し、その粉体を圧縮することで成形品を成形する粉体圧縮成形機の臼孔に、成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機は、キャリアテープにより搬送される前記内蔵物を取り出し、下面にて前記内蔵物を吸着し、第一の位置まで搬送する第一の回転体と、第一の位置において、第一の回転体から前記内蔵物を受け取り、前記内蔵物を上面にて吸着して第二の位置まで搬送する第二の回転体と、第三の回転体に設けられ、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を、第二の回転体の回転方向とは異なる方向に押し送る押送部材とを含む。本内蔵物供給機によれば、必要最小限度の構成で、成形品に内蔵するべき内蔵物の受け取り、内蔵物の搬送及び成形機の臼孔への供給といった一連の処理を遂行できる。
【0017】
本内蔵物供給機は、前記押送部材の下方に設けられ、第二の回転体の上面から押し送られた前記内蔵物の滑走面となる滑走部材を含むことがある。
【0018】
本内蔵物供給機は、第二の回転体の上方に設けられ、第二の位置において、第二の回転体の上面の前記内蔵物を掻き取る掻き取り部材を含むことがある。
【0019】
並びに、本開示に係る、テーブルに形成された臼孔に粉体を充填しその粉体を圧縮することで成形品を成形する粉体圧縮成形機の臼孔に、成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための供給機は、前記内蔵物を捕捉し搬送する搬送部材を備えた搬送機構と、前記搬送機構の搬送部材による前記内蔵物の搬送経路と交差するように配置され搬送部材が搬送する内蔵物が衝突する掻き取り部材、及び掻き取り部材に衝突した内蔵物に当接し送る突起部を有する押送部材を備えた供給機構とを具備する。本内蔵物供給機によれば、搬送機構が搬送した内蔵物を供給機構を介して適切に粉体圧縮成形機のテーブルの臼孔に供給できる。
【0020】
前記搬送部材の回転と前記押送部材の回転とは、同期されている。
【0021】
なお、粉体とは、微小個体の集合体であり、いわゆる顆粒などの粒体の集合体と、粒体より小なる形状の粉末の集合体とを包含する概念である。粉体の具体例としては、主薬(主剤、有効成分)を含む粉体の他、成形品の嵩及び重量を適当な大きさに増すための賦形剤、粉体が臼孔や杵に付着することを防止するための滑沢剤、粉体同士を結合させる結合剤、水分を吸収することで成形品を崩れやすくする崩壊剤としての澱粉、結晶セルロースや炭酸塩等、品質を安定させる安定剤、保存期間を延長する保存剤等の添加剤を挙げることができる。二種類以上の粉体を混合した粉体も本開示にいう粉体の一種であり、粉体である主薬に粉体である添加剤を混交したものもまた粉体に該当する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粉体圧縮成形機に対して成形品に内蔵するべき内蔵物を供給するための好適な供給機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の回転式粉体圧縮成形機の縦断面図。
図2】同実施形態の粉体圧縮成形機及び内蔵物供給機の平面図。
図3】同実施形態の粉体圧縮成形機の円筒図。
図4A】同実施形態にあって成形品に内蔵する内蔵物の斜視図。
図4B】同実施形態にあって成形品に内蔵する内蔵物の縦断面図。
図4C】内蔵物及びこれを収めるキャリアテープの縦断面図。
図5】同実施形態の粉体圧縮成形機による成形品の製造工程を説明する図。
図6】同実施形態の内蔵物供給機の斜視図。
図7】同実施形態の内蔵物供給機の搬送機構の縦断面図。
図8】同実施形態の内蔵物供給機の供給機構の分解斜視図。
図9】同実施形態の内蔵物供給機の供給機構における掻き取り部材、滑走部材、吸引装置、吹出口、持上帯及びレールを拡大して示す斜視図。
図10】同実施形態の内蔵物供給機の供給機構における押送部材及び叩き落とし部材を含む供給円盤を下方から見た斜視図。
図11】同実施形態の内蔵物供給機の供給機構における叩き落とし部材単体の斜視図。
図12】同実施形態の内蔵物供給機の供給機構の縦断面図。
図13】同実施形態の内蔵物供給機の供給機構及び粉体圧縮成形機のテーブルの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、本実施形態における回転式粉体圧縮成形機Aの全体概要を述べる。成形機Aは、上下に貫通した臼孔4の上下に上杵5及び下杵6が上下摺動可能に保持され、その臼孔4内に充填された粉体M1、M2を上杵5と下杵6とで圧縮することにより、成形品P、例えば医薬品の錠剤等を成形するものである。臼孔4及び上下の杵5、6は、成形品Pを成形するための型となる。
【0025】
図1に示すように、本成形機Aのフレーム1内には、回転軸となる立シャフト2を設立し、その立シャフト2の上部に回転盤3を固定している。回転盤3は、立シャフト2の軸心回りに水平回転、即ち自転する。回転盤3の回転方向を、図2中に矢印で表している。回転盤3は、テーブル(臼ディスク)31と、上杵保持部32と、下杵保持部33とからなる。図2に示すように、テーブル31は、回転盤3の回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなしている。そして、その外周部に、回転方向即ち周方向に沿って所定間隔で複数の臼孔4を設けてある。臼孔4は、テーブル31を上下方向に貫通している。テーブル31は、複数のプレートに分割するものでもよい。また、テーブル31自体に直接臼孔4を穿ち形成するのではなく、テーブル31とは別体をなしテーブル31に対して着脱可能な複数個の臼部材をテーブル31に装着し、それら臼部材の各々に上下方向に貫通した臼孔4を穿っている構成としてもよい。
【0026】
各臼孔4の上下には、上杵5及び下杵6を配置する。上杵5及び下杵6は、上杵保持部32及び下杵保持部33により、それぞれが個別に臼孔4に対して上下方向に摺動可能であるように保持させる。上杵5の杵先53は、臼孔4に対して出入りする。下杵6の杵先63は、常時臼孔4に挿入してある。上杵5及び下杵6は、回転盤3及び臼孔4とともに立シャフト2の軸心回りに水平回転、即ち公転する。
【0027】
立シャフト2の下端側には、ウォームホイール7を取り付けている。ウォームホイール7には、ウォームギア10が噛合する。ウォームギア10は、モータ8により駆動されるギア軸9に固定している。モータ8が出力する駆動力は、ベルト11によってギア軸9に伝わり、ウォームギア10、ウォームホイール7を介して立シャフト2ひいては回転盤3及び杵5、6を回転駆動する。
【0028】
成形品Pの原料即ち構成材料となる粉体M1、M2は、充填装置たるフィードシューX1、X2から臼孔4に充填する。フィードシューX1、X2の種類には、攪拌フィードシューとオープンフィードシューがあり、そのうちの何れを採用しても構わない。フィードシューX1、X2への粉体M1、M2の供給は、ホッパ19から行う。
【0029】
図2及び図3に示すように、杵5、6の立シャフト2の軸心回りの公転軌道上には、杵5、6を挟むようにして上下に対をなす予圧上ロール12及び予圧下ロール13、本圧上ロール14及び本圧下ロール15がある。予圧上ロール12及び予圧下ロール13、並びに本圧上ロール14及び本圧下ロール15は、臼孔4内に充填された粉体M1、M2を杵先53、63の先端面を以て上下から圧縮するべく、上下両杵5、6を互いに接近させる方向に付勢する。
【0030】
上杵5、下杵6はそれぞれ、ロール12、13、14、15によって押圧される頭部51、61と、この頭部51、61よりも細径な胴部52、62とを有する。回転盤3の上杵保持部32は、上杵5の胴部52を上下に摺動可能に保持し、下杵保持部33は、下杵6の胴部62を上下に摺動可能に保持する。胴部52、62の先端部位即ち杵先53、63は、臼孔4内に挿入可能であるように、それ以外の部位と比べて一層細く、臼孔4の内径に略等しい直径である。杵5、6の公転により、ロール12、13、14、15は杵5、6の頭部51、61に接近し、頭部51、61に乗り上げるようにして接触する。さらに、ロール12、13、14、15は上杵5を下方に押し下げ、下杵6を上方に押し上げる。ロール12、13、14、15が杵5、6上の平坦面に接している期間は、杵5、6が臼孔4内の粉体M1、M2に対して一定の圧力を加え続ける。
【0031】
そして、本圧上ロール14及び本圧下ロール15による加圧位置から、回転盤3及び杵5、6の回転方向に沿って先に進んだ箇所に、完成した成形品Pの回収位置16が存在する。回収位置16には、スクレーパ(又は、ダンパ)17を設置してある。
【0032】
本実施形態の成形機Aは、内蔵物Qを内蔵する成形品Pを成形するために使用される。内蔵物Qは、医薬品である成形品Pを服用した人の体内と体外との間で通信を行うためのチップQ1を含む。図4A及び図4Bに、内蔵物Qの一例を示す。内蔵物Qは、ICチップQ1を上下のフィルムQ2、Q3、例えばセルロースフィルムで挟み包装した極小のものであり、人体に無害である。なお、フィルムQ3に上から重ねるフィルムQ2は、薄膜材であるとは限られず、液状体を塗布又は滴下した後に凝固させたものであることがある。加えて、本実施形態における内蔵物Qは、上下方向に沿った厚みが薄い。医薬品Pが胃に到達し、チップQ1に実装されたセンサが胃液に接触すると、チップQ1が信号を発する。その信号を、服用した人の体外にある検出器により受信することを通じて、当該人が医薬品Pを服用した事実や、服用した日時等の情報を収集できる。
【0033】
成形品Pの製造工程を概説すると、図5に示すように、まず、回転盤3の回転に伴い、下杵6の杵先63が挿入されている臼孔4が第一のフィードシューX1の直下を通過するときに、当該臼孔4内に第一のフィードシューX1から粉体M1を充填する(I)。その粉体M1の充填量は、成形品Pを成形するために必要な量の一部である。なお、粉体M1の充填に先んじて、下杵6の杵先63が挿入されている臼孔4の内周面、下杵6の杵先63の上端面、及び上杵5の杵先53の下端面に、図示しない噴射装置から滑沢剤その他の噴射剤を噴射して塗布することがある。粉体M1が充填された臼孔4においては、下杵6が一旦上昇して臼孔4から溢れた粉体が擦り切られ、臼孔4内の粉体M1が適正な量となり、その後下杵6が再び下降する。
【0034】
次に、臼孔4が内蔵物供給機B、C、Dの供給機構Dの直下を通過するときに、当該臼孔4内に供給機構Dから内蔵物Qを供給する(II)。
【0035】
さらに、臼孔4が第二のフィードシューX2の直下を通過するときに、当該臼孔4内に第二のフィードシューX2から粉体M2を充填する(III)。粉体M2の充填量は、成形品Pを成形するために必要な量の一部である。即ち、粉体M1と粉体M2との合算量が、成形品Pを成形するために必要な量である。粉体M2が充填された臼孔4においては、下杵6が上昇して臼孔4から溢れた粉体が擦り切られ、臼孔4内の粉体M1、M2が適正な量となる。
【0036】
しかる後、上杵5が下降し、予圧上ロール12及び予圧下ロール13が上杵5の頭部51及び下杵6の頭部61を押圧し、それら杵5、6の杵先53、63で臼孔4内の粉体M1、M2を圧縮する予圧縮を行う。続いて、本圧上ロール14及び本圧下ロール15が上杵5の頭部51及び下杵6の頭部61を押圧し、杵5、6の杵先53、63で臼孔4内の粉体M1、M2を圧縮する本圧縮を行う(IV)。
【0037】
最後に、下杵6の杵先63の上端面が臼孔4の上端つまりはテーブル31の上面と略同じ高さとなるまで下杵6が上昇して、臼孔4内にある成形品Pを臼孔4からテーブル31上に押し出す(V)。臼孔4を出た成形品Pは、回転盤3の回転によりスクレーパ17に接触し、スクレーパ17に沿って成形品シュート18に向かって移動する。
【0038】
以降、成形機Aのテーブル31の臼孔4に内蔵物Qを供給するための内蔵物供給機B、C、Dに関して詳述する。図2及び図6に示すように、本実施形態の内蔵物供給機B、C、Dは、内蔵物Qを捕捉して搬送する搬送機構B、Cと、搬送機構B、Cから内蔵物Qを受け取り成形機Aのテーブル31の直上まで導いた上これを臼孔4内に落とし込む供給機構Dとを具備する。本内蔵物供給機B、C、Dは、薄物である内蔵物Qをピックアップし、その内蔵物Qを成形機Aのテーブル31まで搬送し、しかる後臼孔4内に落とし入れるという一連の処理を好適に遂行できる。
【0039】
搬送機構B、Cは、複数段存在している。上流側に位置する第一の搬送機構Bは、図4Cに示すような内蔵物Q搬送用のキャリアテープTのポケットT11に収められている内蔵物QをポケットT11から順次取り出し、それら内蔵物Qを下流側に位置する第二の搬送機構Cに向けて移送する役割を担う。図6及び図7に示すように、第一の搬送機構Bは、各吸着孔B11に一個ずつ内蔵物Qを吸着、捕捉して搬送する搬送部材たる第一の回転体B1と、回転体B1を回転駆動するシャフトB2と、回転体B1の吸着孔B11に内蔵物Qを吸着するために必要な負圧を供給するダクトB3とを備える。
【0040】
回転体B1は、シャフトB2の上部に固定しており、シャフトB2と一体となってシャフトB2の軸心回りに水平回転、即ち自転する。回転体B1の回転方向を、図2中に矢印で表している。回転体B1は、回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなしている。そして、その外周部に、回転方向即ち周方向に沿って所定間隔で複数の吸着孔B11を設けている。吸着孔B11は、回転体B1を上下方向に貫通している。
【0041】
回転体B1が回転するのに対し、ダクトB3は回転せず不動である。ダクトB3は、少なくとも、第一の搬送機構Bによる内蔵物Qの取り出し位置B4から、第一の位置である第二の搬送機構Cへの受け渡し位置C4までの間、平面視回転体B1の外周部に沿って部分円弧状をなすように拡張した筒状体である。このダクトB3の内部空間は、図示しないポンプにより吸引されて負圧化している。第一の搬送機構Bの回転体B1は、その下面側に内蔵物Qを吸着して保持する。そのために、ダクトB3は、回転体B1の上方にあって下方に開口しており、その開口を吸着孔B11の直上に位置づけるようにして回転体B1の上面に近接している。
【0042】
エンボスキャリアテープTは、図示しないテープフィーダによりリールから繰り出され、第一の搬送機構Bにおける内蔵物Qの取り出し位置B4まで送られる。その過程で、図4Cに模式的に示しているように、ポケットT11を有するボトムテープT1から蓋となるカバーテープ(トップテープ)T2が剥離され、内蔵物Qを収めたポケットT11が上方に開放する。ボトムテープT1は、内蔵物Qの取り出し位置B4にて、回転体B1の外周部の直下に入り込む。そして、開放したポケットT11の一つと回転体B1の吸着孔B11の一つとが平面視重なり合い、ダクトB3から負圧が供給されている吸着孔B11が内蔵物Qを下方から上方に向かって吸い上げることで、ポケットT11から内蔵物Qを取り出し、当該内蔵物Qを吸着孔B11の下面側の開口縁に係合せしめる。なお、このとき、テープフィーダが備える機構により、ポケットT11の下方からポケットT11内にピンFを差し入れて内蔵物Qを上方に突き出す動作を行うことがある。
【0043】
その後、回転体B1の回転に伴い、各吸着孔B11に吸着された各内蔵物Qが、取り出し位置B4から受け渡し位置C4まで移動する。受け渡し位置C4に到達した内蔵物Qは、後述するように、第一の搬送機構Bから第二の搬送機構Cに受け渡されることとなる。
【0044】
第二の搬送機構Cは、第一の搬送機構Bの回転体B1の各吸着孔B11に捕捉されている内蔵物Qをその吸着孔B11から順次受け取り、それら内蔵物Qを下流側に位置する供給機構Dに向けて移送する役割を担う。図6ないし図9に示すように、第二の搬送機構Cは、各吸着孔C11に一個ずつ内蔵物Qを吸着、捕捉して搬送する搬送部材たる第二の回転体C1と、回転体C1を回転駆動するシャフトC2と、回転体C1の吸着孔C11に内蔵物Qを吸着するために必要な負圧を供給するダクトC3とを備える。
【0045】
回転体C1は、シャフトC2の上部に固定しており、シャフトC2と一体となってシャフトC2の軸心回りに水平回転、即ち自転する。回転体C1の回転方向を、図2中に矢印で表している。回転体C1の回転方向は、回転体B1の回転方向とは逆である。回転体C1もまた、回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなしている。そして、その外周部に、回転方向即ち周方向に沿って所定間隔で複数の吸着孔C11を設けている。吸着孔C11は、回転体C1を上下方向に貫通している。受け渡し位置C4において、この回転体C1の外周部は、第一の搬送機構Bの回転体B1の外周部と平面視一部重なり合っている。回転体C1の外周部の上面は、第一の搬送機構Bの回転体B1の外周部の下面に近接している。
【0046】
回転体C1が回転するのに対し、ダクトC3は回転せず不動である。ダクトC3は、少なくとも、第一の位置即ち第二の搬送機構Cが内蔵物Qを受け取る受け渡し位置C4から、第二の位置即ち供給機構Dに内蔵物Qを提供するべくこれを解放する掻き取り位置D9までの間、平面視回転体C1の外周部に沿って部分円弧状をなすように拡張した筒状体である。このダクトC3の内部空間は、図示しないポンプにより吸引されて負圧化している。第二の搬送機構Cの回転体C1は、その上面側に内蔵物Qを吸着して保持する。そのために、ダクトC3は、回転体C1の下方にあって上方に開口しており、その開口を吸着孔C11の直下に位置づけるようにして回転体C1の下面に近接している。
【0047】
図7に示しているように、第一の搬送機構Bの回転体B1の吸着孔B11及び当該吸着孔B11に捕捉された内蔵物Qは、受け渡し位置C4にて、回転体C1の外周部の直上に至る。そして、第一の搬送機構Bの回転体B1の吸着孔B11の一つと、第二の搬送機構Cの回転体C1の吸着孔C11の一つとが平面視重なり合い、ダクトC3から負圧が供給されている吸着孔C11が内蔵物Qを上方から下方に向かって吸い込むことで、吸着孔B11から落下する内蔵物Qを受け取り、当該内蔵物Qを吸着孔C11の上面側の開口縁に係合せしめる。
【0048】
その後、回転体C1の回転に伴い、各吸着孔C11に吸着された各内蔵物Qが、受け渡し位置C4から掻き取り位置D9まで移動する。掻き取り位置D9に到達した内蔵物Qは、後述するように、第二の搬送機構Cの回転体C1から解放され、供給機構Dに提供されることとなる。
【0049】
なお、受け渡し位置C4にて第一の搬送機構Bの回転体B1から第二の搬送機構Cの回転体C1に内蔵物Qを受け渡す際、吸着孔C11に内蔵物Qが吸着されているもののその中心位置が吸着孔C11の中心から大きくずれてしまうことが、稀にではあるが起こり得る。
【0050】
そのような内蔵物Qを、供給機構Dを介して成形機Aのテーブル31上までそのまま搬送し臼孔4に供給することもできる。だが、各吸着孔C11に吸着された内蔵物Qの当該吸着孔C11に対する相対的な位置をカメラ等により光学的に計測し、中心位置が吸着孔C11の中心から大きくずれている内蔵物Qについては、供給機構Dにおける掻き取り位置D9まで搬送せず中途で排除するようにしても構わない。
【0051】
吸着孔C11に対する位置が大きくずれた内蔵物Qを中途で排除する態様をとる場合には、例えば図6に示すように、回転体C1及び吸着孔C11の回転に伴う内蔵物Qの水平回転移動の軌跡に重なる位置に、直下を通過する吸着孔C11及びこれに吸着されている内蔵物Qを撮影するカメラ等の光学的な計測手段C5を設置する。並びに、吸着孔C11に対して大きく位置がずれている内蔵物Qに対して圧縮空気を吹き付け、当該内蔵物Qを吸着孔C11から脱離させ回転体C1の外側方に吹き飛ばして排除するノズルC6を設置する。
【0052】
また、吸着孔C11から内蔵物Qが排除されたとき、その吸着孔C11に対応している成形機Aの臼孔4には内蔵物Qが供給されず、その臼孔4において圧縮成形される成形品Pには内蔵物Qが内蔵されないことになる。当該成形品Pは不良品であり、内蔵物Qが内蔵された正常な成形品から分別して排除される必要がある。そこで、例えば図2に示すように、テーブル31及び臼孔4の回転に伴う粉体M1及び内蔵物Qの水平回転移動の軌跡に重なる位置に、直下を通過する臼孔4及び当該臼孔内4に供給されているはずの内蔵物Qを撮影するカメラ等の光学的な計測手段21を設置する。並びに、内蔵物Qが供給されなかった臼孔4において成形された成形品Pに対して圧縮空気を吹き付け、当該成形品Pをテーブル31の外側方に吹き飛ばして排除するノズル20を設置する。
【0053】
尤も、上述した計測手段C5、21及び排除用ノズルC6、20は、本実施形態の内蔵物供給機B、C、D及び成形機Aにおいて必須の構成要素ではない。
【0054】
供給機構Dは、第二の搬送機構Cの回転体C1の各吸着孔C11に捕捉されている内蔵物Qをその吸着孔C11から順次掻き取り、それら内蔵物Qを下流側に位置する成形機Aに向けて移送し、最終的にテーブル31の各臼孔4に一個ずつ落とし入れる役割を担う。図6図8ないし図13に示すように、供給機構Dは、第二の搬送機構Cの回転体C1が搬送する内蔵物Qを掻き取る掻き取り部材D1と、回転体C1から掻き取った内蔵物Qを案内する凹溝D21を設けた滑走部材D2と、回転体C1から掻き取った内蔵物Qを滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れ凹溝D21に沿って押送するとともに凹溝D21の終端部D212にて当該内蔵物Qを成形機Aのテーブル31の臼孔4内に叩き落とす機能を有する供給円盤D3と、供給円盤D3が内蔵物Qを凹溝D21の始端部D211に押し入れる動作を補助するための吸引装置D4と、内蔵物Qを除電するための空気を吹き出させる吹出口D5と、供給円盤D3により内蔵物Qをテーブル31の臼孔4内に叩き落とす動作を惹起するためのレールD6及び持上帯D7とを備える。
【0055】
掻き取り部材D1は、掻き取り位置D9において、第二の搬送機構Cの回転体C1の吸着孔C11に吸着している内蔵物Qを当該吸着孔C11から掻き取り、内蔵物Qを回転体C1から解放するスクレーパとなる。故に、掻き取り部材D1は、回転体C1及び吸着孔C11の回転に伴う内蔵物Qの水平回転移動の軌跡に立ち塞がる位置に固定してある。掻き取り部材D1は、掻き取り位置D9に面し、掻き取る対象の内蔵物Qの水平回転移動の軌跡に対して交差又は直交する側面D11を有している。内蔵物Qは、この側面D11に衝突することで掻き取られる。側面D11は、滑走部材D2の凹溝D21の内周側の側面と略面一である。換言すれば、側面D11は、供給円盤D3の回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において部分円弧状をなし、その軸心及び径が凹溝D21の内周側の側面のそれに略等しい直立した部分円筒面である。
【0056】
滑走部材D2は、その外周部に平面視部分円弧状をなすように延伸する凹溝D21を形成した部材であり、基台D8に対して固着しており不動である。凹溝D21は、対向する内周側の側面と外周側の側面とによって内側方及び外側方がそれぞれ遮蔽され、かつ底面によって下方が閉塞されている、上方にのみ開放した溝である。既に述べた通り、凹溝D21の内周側の側面は、軸心及び径が掻き取り部材D1の側面D11と略等しい直立した部分円筒面である。凹溝D21の外周側の側面は、軸心が内周側の側面と略等しく、径が内周側の側面よりも大きい直立した部分円筒面である。凹溝D21の幅、即ち内周側の側面と外周側の側面との離間距離は、始端部D211から終端部D212に至るまで略一定である。凹溝D21の始端部D211は、掻き取り位置D9からやや下流に離間している。凹溝D21の終端部D212は、成形機Aのテーブル31の外周部及び臼孔4と平面視重なり合う。滑走部材D2及びその凹溝D21の底面は、テーブル31の上面よりも高位置にある。
【0057】
供給円盤D3は、回転体C1の吸着孔C11から掻き取った内蔵物Qに当接しこれを押送する突起部D311を有する押送部材たる第三の回転体D31と、回転体D31を回転駆動するシャフトD32と、回転体D31の上面側に支持させており内蔵物Qを上方から突いて成形機Aのテーブル31の臼孔4内に落とし込む叩き落とし部材D33とを主たる要素とする。
【0058】
回転体D31は、シャフトD32の上部に固定しており、シャフトD32と一体となってシャフトD32の軸心回りに水平回転、即ち自転する。回転体D31の回転方向、つまりは供給円盤D3の回転方向を、図2中に矢印で表している。供給円盤D3及び回転体D31の回転方向は、回転体C1の回転方向と同じであるが、成形機Aの回転盤3及びテーブル31の回転方向とは逆である。回転体D31は、回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において概ね円盤状の外形をなしている。回転体D31及びシャフトD32の軸心は、部分円筒面である掻き取り部材D1の側面D11の軸心、及び滑走部材D2の凹溝D21の側面の軸心に略等しい。そして、図8図10図12及び図13に示しているように、回転体D31の外周縁部の下面側に、回転方向即ち周方向に沿って所定間隔で複数の突起部D311を突設している。
【0059】
加えて、回転体D31の回転方向に沿って各突起部D311に隣接する箇所に、突起部D311と同数のピン孔D312を穿っている。ピン孔D312は、回転体D31の外周縁部を上下方向に貫通する。ピン孔D312の下面側の開口縁は、突起部D311の下面よりも上方に位置している。逆に言えば、突起部D311は、ピン孔D312の下縁よりも下方に突出し、ピン孔D312に面する端面D3111を有している。突起D311及びピン孔D312は、滑走部材D2の凹溝D21に上方から差し入り、凹溝D21内を当該凹溝D21に沿って運動する。
【0060】
さらに、回転体D31の外周の側面から、内方に向かって連通孔D313を掘削して設けている。連通孔D313は、ピン孔D312と同数存在し、回転体D31の外周の側面に開口して、ピン孔D312の内部を回転体D31の外方に連通させる。
【0061】
叩き落とし部材D33は、回転体D31の回転軸と直交する径方向に沿って幅が拡張した外観を呈し、図8及び図10に示すように、ピン孔D312と同数のものD33を回転体D31上に平面視放射状に配列している。一基の叩き落とし部材D33は、一つの突起部D311及びピン孔D312の組と対になっている。回転体D31の水平回転に伴い、これら複数の叩き落とし部材D33の各々が、シャフトD32の軸心回りに水平旋回することは言うまでもない。
【0062】
図11ないし図13に示すように、各叩き落とし部材D33は、回転体D31に固定する支持枠D331に、揺動体D332を上下動可能に支持させてなる。より具体的には、支持枠D331に上下方向に伸長する複数本の支軸D3311を設ける一方、揺動体D332にそれら支軸D3311に対応して上下方向に延伸する複数の軸孔D3321を設け、各支軸D3311を各軸孔D3321に上方から挿通する。その際、支軸D3311の上端部を固定している支持枠D331の下向面と、これに対向する揺動体D332の上向面との間に、圧縮コイルばねD3312を介在させる。圧縮コイルばねD3312は、揺動体D332を支持枠D331から下方に離反するように弾性付勢する。
【0063】
並びに、各支軸D3311の下端部に、当該支軸D3311よりも拡径した、ちょうどボルトの軸部に対する頭部のような抜止部D3313を設けている。圧縮コイルばねD3312により弾性付勢された揺動体D332は、支軸D3311に沿って支持枠D331ひいては回転体D31に対して相対的に下方に変位する。だが、揺動体D332の下向面が抜止部D3313の上向面に当接することにより、揺動体D332がそれ以上下方に変位することが阻止される。また、軸孔D3321から支軸D3311が抜け出て揺動体D332が支持枠D331から脱落することが防がれる。
【0064】
揺動体D332が上向きの外力を受けると、揺動体D332が圧縮コイルばねD3312による弾性付勢力に抗しながら、支持枠D331及び回転体D31に対して相対的に上方に変位し、揺動体D332の下向面が抜止部D3313の上向面から離反する。図11及び図13は、揺動体D332の下向面が抜止部D3313の上向面に当接又は近接した状態、即ち揺動体D332が最下方の高さ位置まで降下した状態を表している。翻って、図12は、揺動体D332がある程度以上の大きさの上向きの外力を受けて最下方の高さ位置から浮上した状態を表している。
【0065】
揺動体D332の幅方向、これは叩き落とし部材D33の幅方向であり、叩き落とし部材D33を回転体D31上に配置したときの当該回転体D31の径方向に該当するが、その中間部には、カムフォロア(又は、ガイドローラ)D3322及び摺動台座D3323を設けている。図10図12及び図13に示すように、これらカムフォロアD3322及び摺動台座D3323は、叩き落とし部材D33を回転体D31上に配置したときに、回転体D31に開設してある上下方向に貫通した窓D314を通じて回転体D31の下面側に露出する。カムフォロアD3322の外輪は、揺動体D332の幅方向と平行又は略平行な水平軸又は略水平軸回りに回転可能となっている。カムフォロアD3322は、レールD6上を転動し、摺動台座D3323は、持上帯D7上を摺動する。摺動台座D3323は、揺動体D332の本体とは別体をなし、その本体よりも摩擦係数が小さく摩耗に強い材料(樹脂材料であることがある)により作製することが好ましい。
【0066】
さらに、揺動体D332の幅方向の外側端部に、下方に突出するピンD3324を設けている。ピンD3324は、叩き落とし部材D33を回転体D31上に配置したときに、回転体D31の外周縁部に設けているピン孔D312に上方から挿入する。ピン孔D312における、連通孔D313よりも下方の部位の内径は、同部位に差し入るピンD3324の外径よりも幾分大きい。これに対し、ピン孔D312における、連通孔D313よりも上方の部位の内径は、同部位に差し入るピンD3324の外径に略等しい。従って、連通孔D313よりも上方の部位におけるピンD3324とピン孔D312との隙間は狭小であるが、連通孔D313よりも下方の部位におけるピンD3324とピン孔D312との隙間はそれよりも大きい。
【0067】
図11及び図13に示すように、揺動体D332が最下方の高さ位置まで降下した状態では、ピンD3324の下端がピン孔D312の下縁及び突起部D311の下面よりも下方に突き出る。だが、図12に示すように、揺動体D332が上向きの外力を受けて最下方の高さ位置から浮上すると、ピンD3324の下端がピン孔D312の下縁よりも上方に退避する。
【0068】
掻き取り位置D9にて、供給円盤D3の回転体D31の外周縁部は、第二の搬送機構Cの回転体C1の外周部と平面視一部重なり合う。回転体D31の突起部D311の下面は、搬送機構Cの回転体C1の外周部の上面及び滑走部材D2の凹溝D21の底面に対して上方から極近接する。
【0069】
並びに、供給円盤D3の回転方向に沿って凹溝D21の終端部D212よりも先に進んだ位置で、供給円盤D3の回転体D31の外周縁部の一部、及び複数のうちの一部の叩き落とし部材D33の外側端部が、成形機Aのテーブル31の外周部及び臼孔4と平面視重なり合う。回転体D31の突起部D311の下面及びピン孔D312の下縁、並びに叩き落とし部材D33のピンD3324の下端は、成形機Aのテーブル31の上面よりも高位置にある。
【0070】
吸引装置D4は、掻き取り部材D1に衝突して掻き取られた内蔵物Qが滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れられるまでの過程で当該内蔵物Qを吸引して保持するために必要な負圧を供給するダクトを含む。供給円盤D3が回転するのに対し、ダクトD4は回転せず不動である。図8及び図9に示すように、ダクトD4は、少なくとも掻き取り位置D9から、供給円盤D3の回転方向に沿って凹溝D21の始端部D211よりも先に進んだ箇所までの間、平面視掻き取り部材D1の側面D11及び凹溝D21に並行する部分円弧状をなすように拡張した筒状体である。このダクトD4の内部空間は、図示しないポンプにより吸引されて負圧化している。供給円盤D3の回転体D31は、その外周縁部の下面側、特にピン孔D312の下縁に一時的に内蔵物Qを吸着して保持する。そのために、ダクトD4は、図12に示しているように、回転体D31の外側方にあって内方に開口しており、その開口を連通孔D313の真横に位置づけるようにして回転体D31の外周の側面に近接している。
【0071】
吹出口D5は、滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れられる内蔵物Qを挟むように吸引装置のダクトD4と対向する位置にあり、図示しない除電器(イオナイザ)によりイオン化された圧縮空気を上方及び/又はダクトD4に向かう外側方に吹き出させて内蔵物Qに当て、内蔵物Qが帯びる静電気を除去する。
【0072】
レールD6は、滑走部材D2及びその凹溝D21よりも内方にあって、平面視一部が欠損した円弧状をなすように延伸している帯状体であり、その軸心は供給円盤D3の回転体D31及びシャフトD32の軸心に略等しい。レールD6は、基台D8に対して固着しており不動である。レールD6の欠損部分D63は、凹溝D21の終端部D212から回転体D31の径方向に沿って内側方に偏倚した箇所に所在する。そして、欠損部分D63を挟んで、登坂部分D61及び降坂部分D62を形成している。登坂部分D61は、最低位である欠損部分D63から上面が徐々に高くなってゆく傾斜面であり、降坂部分D62は、最低位である欠損部分D63に向けて上面が徐々に低くなってゆく傾斜面である。レールD6における、登坂部分D61の終端から降坂部分D62の始端までの区間の上面は、平坦面となっている。供給円盤D3の叩き落とし部材D33の揺動体D332のカムフォロアD3322は、レールD6の上面に載置され、当該レールD6に沿って転動する。
【0073】
持上帯D7は、滑走部材D2とレールD6との間、即ち滑走部材D2及びその凹溝D21よりは内方、レールD6よりは外方にあって、平面視部分円弧状をなすように延伸している帯状体であり、その軸心は供給円盤D3の回転体D31及びシャフトD32の軸心に略等しい。持上帯D7は、基台D8に対して固着しており不動である。持上帯D7の始端部D71は、レールD6における降坂部分D62の始端よりも供給円盤D3の回転方向とは逆方向に遡った平坦面の部分から回転体D31の径方向に沿って外側方に偏倚した箇所に所在する。持上帯D7の終端部D72は、レールD6における降坂部分D62の終端から回転体D31の径方向に沿って外側方に偏倚した箇所に所在する。持上帯D7の上面は、平坦面となっている。この持上帯D7の上面は、レールD6における平坦面部分の上面よりも若干高い。レールD6の降坂部分D62の上面が徐々に下る坂であるのに対し、持上帯D7の終端部D72ではその上面を切り落としてある。供給円盤D3の叩き落とし部材D33の揺動体D332の摺動台座D3323は、持上帯D7の上面に載置され、当該持上帯D7に沿って摺動する。
【0074】
シャフトD32の上部に組み付けた供給円盤D3は、滑走部材D2、吹出口D5、レールD6、持上帯D7及び基台D8に上方より覆い被さる。さらに、実際には、図2図6図12及び図13に示しているように、供給円盤D3の大部分をカバーD0で覆っている。また、供給機構Dに粉塵等が付着することによる駆動不良等の発生を抑制するために、カバーD0の内部に空気を送り込んでいる。
【0075】
供給機構Dが内蔵物Qを成形機Aのテーブル31の臼孔4に供給する動作について述べる。第二の搬送機構Cの回転体C1が吸着孔C11に吸着して捕捉している内蔵物Qは、回転体C1の回転により移送され、吸引装置のダクトD4の直下を通過した後、掻き取り位置D9に至る。そして、掻き取り位置D9にて、掻き取り部材D1の側面に衝突し、回転体C1の吸着孔C11から掻き取られる。
【0076】
吸着孔C11から掻き取られた一個の内蔵物Qは、僅かな時間ではあるが掻き取り位置D9に滞留する。この内蔵物Qに対して、回転する供給円盤D3の一つの突起部D311及びピン孔D312の組が接近すると、そのピン孔D312に連通する連通孔D313がダクトD4により吸引され、ピン孔D312に負圧が供給されて、当該ピン孔D312が内蔵物Qを下方から上方に向かって吸い上げる。
【0077】
これにより、図12に示すように、搬送機構Cの回転体C1上の内蔵物Qが搬送円盤D3の回転体D31のピン孔D312の下縁に吸着して係合するとともに、当該ピン孔D312に面する突起部D311の端面D3111が当該内蔵物Qに接触してこれを押送することを可能にする。内蔵物Qが掻き取り位置D9に滞留することで、ピン孔D312に内蔵物Qを確実に吸着でき、後にその内蔵物Qを成形機Aのテーブル31の臼孔4の所望の位置(例えば、中心部)に適切に落とし入れることが可能となる。なお、このとき、当該ピン孔D312に挿入しているピンD3324の下端は、ピン孔D312の下縁よりも上方に退避している。これは、当該ピンD3324を有する叩き落とし部材D33の揺動体D332のカムフォロアD3322がレールD6の平坦面部分に乗り上げており、揺動体D332が最下方の高さ位置から浮上していることによる。一つの突起部D311及びピン孔D312の組に係合して捕捉される内蔵物Qは、一個である。二個以上の内蔵物Qが、同時期に掻き取り位置D9に滞留することはない。
【0078】
因みに、ピン孔D312の下縁部には、座繰り加工を施してある。ピン孔D312の下縁部を座繰り孔としているのは、図4A及び図4Bに示しているように中央部(特に、フィルムQ2)が周縁部よりも上方に盛り上がっている内蔵物Qの上面形状に対応したもので、ピン孔D312とこれに吸着される内蔵物Qとの間に隙が生じたり、内蔵物Qが略水平でなく傾いた姿勢で吸着されたりすることを防ぐ意図である。
【0079】
供給円盤Dの回転に伴い、突起部D311及びピン孔D312の組に捕捉された内蔵物Qは、突起部D311及びピン孔D312の水平回転運動の軌跡に沿って移送される。即ち、内蔵物Qは、掻き取り位置D9から、滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れられた後、凹溝D21内を滑走又は摺動して凹溝D21の終端部D212に至り、そこから成形機Aのテーブル31の臼孔4内へと落下する。この内蔵物Qの移動の方向及び軌跡を、図9中に矢印で表している。内蔵物Qが掻き取り位置D9から凹溝D21の始端部D211に押し入れられる過程で、吹出口D5から吹き出す除電用の空気が、内蔵物Qに対して吹き当てられる。
【0080】
内蔵物Qを捕捉する突起部D311及びピン孔D312の組のうちのピン孔D312に対するダクトD4からの負圧の供給は、内蔵物Qを凹溝D21内に押し入れた後に打ち切られる。それ以後は、突起部D311がその端面D3111で内蔵物Qを押し、内蔵物Qを凹溝D21に沿って終端部D212まで送ることになる。
【0081】
既に述べた通り、内蔵物Qを捕捉する突起部D311及びピン孔D312の組と対をなす叩き落とし部材D33の揺動体D332のカムフォロアD3322は、レールD6の平坦面部分の上を転動する。叩き落とし部材D33が、凹溝D21の始端部D211から終端部D212に向かって水平旋回する間に、当該叩き落とし部材D33の揺動体D332に設けた摺動台座D3323が持上帯D7の始端部D71に到達し、その後は摺動台座D3323の下面が持上帯D7の上面に摺接又は極近接するようになる。
【0082】
内蔵物Qを捕捉する突起部D311及びピン孔D312の組が凹溝D21の終端部D212に近づくと、これと対をなす叩き落とし部材D33の揺動体D332のカムフォロアD3322がレールD6の降坂部分D62に差し掛かり、降坂部分D62を転がり降りる。カムフォロアD3322による支えを失う揺動体D332は降下しようとするため、同揺動体D332に設けた摺動台座D3323が持上帯D7の上面に当接し、持上帯D7の上面に対して摺動しながら揺動体D332を支え続ける状態となる。
【0083】
供給円盤D3がさらに回転し、叩き落とし部材D33がさらに旋回して、揺動体D332の摺動台座D3323が持上帯D7の終端部D72に到達すると、摺動台座D3323が持上帯D72の上面から落下する。摺動台座D3323による支えをも失った揺動体D332は、最下位の高さ位置に向かって降下し始める。それに従い、ピン孔D312に挿入しているピンD3324がピン孔D312から下方に突き出そうとする。
【0084】
その直後のタイミングで、内蔵物Qを捕捉する突起部D311及びピン孔D312の組が凹溝D21の終端部D212に到達する。さすれば、当該内蔵物Qが凹溝D21の終端部から押し出されて、凹溝D21の底面から落下する。同時に、図13に示すように、当該内蔵物Qを捕捉していた突起部D311及びピン孔D312の組と対をなす叩き落とし部材D33のピンD3324の下端が、そのピン孔D312の下縁よりも下方に突出し、当該内蔵物Qを突いて確実にこれを供給円盤D3の回転体D31から叩き落とす。このとき、当該内蔵物Qの直下には粉体M1が充填された臼孔4が控えており、当該内蔵物Qはこの臼孔4内に落下する。かくして、成形機Aのテーブル31の臼孔4に内蔵物Qを適切に供給できる。
【0085】
内蔵物Qを叩き落とした後の揺動体D332は、供給円盤D3がさらに回転しカムフォロアD3322がレールD6の登坂部分D61に乗り上げることにより、最下位の高さ位置から再び浮上する。そして、そのピンD3324が、ピン孔D312の下縁よりも上方に退避する。
【0086】
成形機Aの回転盤3、搬送機構B、Cの回転体B1、C1及び搬送機構Dの供給円盤D3は、同期して回転する必要がある。回転盤3、回転体B1、C1及び供給円盤D3の回転を同期させるためには、例えば、回転盤3、回転体B1、C1及び供給円盤D3の各々を回転駆動するモータをサーボモータ又はステッピングモータとし、かつロータリエンコーダ等の角位置センサを用いて回転盤3、回転体B1、C1及び供給円盤D3の各々の回転角度及び回転速度を検出して、これらの回転が同期するように各モータの回転速度をフィードバック制御する。あるいは、回転盤3、回転体B1、C1及び供給円盤D3を、歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させるようにしても構わない。
【0087】
本実施形態では、テーブル31に形成された臼孔4に粉体M1、M2を充填し上下の杵5、6によりその粉体M1、M2を圧縮することで成形品Pを成形する粉体圧縮成形機Aの臼孔4に、成形品Pに内蔵するべき内蔵物Qを供給するための供給機B、C、Dであって、前記内蔵物Qを捕捉し搬送する搬送部材(回転体)B1、C1を備えた搬送機構B、Cと、前記搬送機構Cの搬送部材C1による前記内蔵物Qの搬送経路と交差するように配置され搬送部材C1が搬送する内蔵物Qが衝突する掻き取り部材D1、掻き取り部材D1に衝突し搬送部材C1から掻き取られる内蔵物Qを案内し前記粉体圧縮成形機Aのテーブル31の臼孔4の直上近傍まで導く凹溝D21が形成された滑走部材D2、及び、掻き取り部材D1に衝突した内蔵物Qに当接し当該内蔵物Qを滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れるとともに凹溝D21に沿って運動して当該内蔵物Qを凹溝D21の終端部D212まで送る突起部D311を有する押送部材(回転体)D31を備えた供給機構Dとを具備する内蔵物供給機B、C、Dを構成した。本実施形態によれば、粉体圧縮成形機Aのテーブル31の臼孔4に対して成形品Pに内蔵するべき内蔵物Qを適切に供給できる。
【0088】
本実施形態の内蔵物供給機B、C、Dでは、前記搬送機構B、Cの搬送部材B1、C1、及び前記供給機構Dの押送部材D31がそれぞれ回転する回転体であり、それら回転体B1、C1、D31が計三個存在している。これにより、必要最小限度の構成で、即ち極小かつ薄物の内蔵物Qをピックアップしてから二つの吸引搬送機構B、C及び一つの滑走供給機構Dという三つの機構のみを経て、内蔵物Qを成形機Aのテーブル31の臼孔4に適切に供給することができる。本内蔵物供給機B、C、Dにおいて、回転体B1、C1、D31は四個以上存在していない。
【0089】
前記供給機構Dが、前記押送部材D31に支持され前記突起部D311とともに運動し、前記滑走部材D2の凹溝D21の終端部D212に至った前記内蔵物Qを上方から突いて前記粉体圧縮成形機Aのテーブル31の臼孔4内に落とし込む叩き落とし部材D33を備えているため、静電気等により内蔵物Q(特に、セルロースフィルムQ2、Q3)が押送部材D31に付着したとしても、凹溝D21の終端部D212にて内蔵物Qを確実に押送部材D31から叩き落とし、テーブル31の臼孔4に落とし入れることができる。
【0090】
前記供給機構Dが、前記掻き取り部材D1に衝突した前記内蔵物Qが前記押送部材D31の突起部D311により前記滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れられるまでの過程で当該内蔵物Qを吸引して保持するための吸引装置D4を備えており、内蔵物Qを凹溝D21の始端部D211に押し入れて凹溝D21内を滑走又は摺動させる動作が確実となる。
【0091】
前記供給機構Dが、前記滑走部材D2の凹溝D21の始端部D211に押し入れられる前記内蔵物Qに臨む位置に、内蔵物Qの除電用の空気を吹き出させる吹出口D5を備えているため、成形機Aに供給するべき内蔵物Qに帯電する静電気を除去できる。
【0092】
本実施形態の成形品Pの製造方法は、回転盤3のテーブル31に設けられた臼孔4において、内蔵物Qを含有する成形品Pを圧縮成形するためのものであり、内蔵物QをキャリアテープTにより搬送する工程と、前記キャリアテープTにより搬送される前記内蔵物Qを取り出し、第一の回転体B1の下面に吸着し、第一の回転体B1により第一の位置C4まで搬送する工程と、第一の位置C4において、第一の回転体B1から第二の回転体C1の上面に前記内蔵物Qを受け渡し、第二の回転体C1により前記内蔵物Qを吸引し第二の位置D9まで搬送する工程と、第二の位置D9において、第二の回転体C1の上面の前記内蔵物Qを、第三の回転体として設けられる押送部材D31により、第二の回転体C1の回転方向とは異なる方向(即ち、第二の回転体C1により捕捉されて搬送される内蔵物Qの水平回転移動の軌跡に対して交差又は直交する方向)に押し送り、前記回転盤3の前記臼孔4の位置まで搬送する工程とを含む。本方法によれば、必要最小限度の構成で、成形品Pに内蔵するべき内蔵物Qの受け取り、内蔵物Qの搬送及び成形機Aの臼孔4への供給といった一連の処理を遂行できる。本方法において、回転体B1、C1、D31は計四個以上存在する必要はない。
【0093】
前記押送部材D31は、前記内蔵物Qを、第二の回転体C1の上面から前記押送部材D31の下方に設けられた滑走部材D2の上面へと送るとともに、当該滑走部材D2上を滑走させる。
【0094】
第二の位置D9にあっては、前記第二の回転体C1の上方に設けた掻き取り部材D1により、第二の回転体C1の上面の前記内蔵物Qを掻き取る。
【0095】
また、本実施形態では、テーブル31に形成された臼孔4に粉体M1、M2を充填し、その粉体M1、M2を圧縮することで成形品Pを成形する成形機Aの臼孔4に、成形品Pに内蔵するべき内蔵物Qを供給するためのものとして、キャリアテープTにより搬送される前記内蔵物Qを取り出し、下面にて前記内蔵物Qを吸着し、第一の位置C4まで搬送する第一の回転体B1と、第一の位置C4において、第一の回転体B1から前記内蔵物Qを受け取り、前記内蔵物Qを上面にて吸着して第二の位置D9まで搬送する第二の回転体C1と、第三の回転体に設けられ、第二の位置D9において、第二の回転体C1の上面の前記内蔵物Qを、第二の回転体C1の回転方向とは異なる方向に押し送る押送部材D31とを含む内蔵物供給機B、C、Dを構成した。本実施形態によれば、必要最小限度の構成で、成形品Pに内蔵するべき内蔵物Qの受け取り、内蔵物Qの搬送及び成形機Aの臼孔4への供給といった一連の処理を遂行できる。
【0096】
本内蔵物供給機B、C、Dは、前記押送部材D31の下方に設けられ、第二の回転体C1の上面から押し送られた前記内蔵物Qの滑走面となる滑走部材D2を含む。
【0097】
本内蔵物供給機B、C、Dは、第二の回転体C1の上方に設けられ、第二の位置D9において、第二の回転体C1の上面の前記内蔵物Qを掻き取る掻き取り部材D1を含む。
【0098】
並びに、本実施形態では、テーブル31に形成された臼孔4に粉体M1、M2を充填しその粉体M1、M2を圧縮することで成形品Pを成形する成形機Aの臼孔に、成形品Pに内蔵するべき内蔵物Qを供給するためのものとして、前記内蔵物Qを捕捉し搬送する搬送部材C1を備えた搬送機構Cと、前記搬送機構Cの搬送部材C1による前記内蔵物Qの搬送経路と交差するように配置され搬送部材C1が搬送する内蔵物Qが衝突する掻き取り部材D1、及び掻き取り部材D1に衝突した内蔵物Qに当接し送る突起部D311を有する押送部材D31を備えた供給機構Dとを具備する内蔵物供給機B、C、Dを構成した。本実施形態によれば、搬送機構Cが搬送した内蔵物Qを供給機構Dを介して適切に成形機Aのテーブル31の臼孔4に供給できる。
【0099】
前記搬送部材C1の回転と前記押送部材D31の回転とは、同期されている。
【0100】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、製造する成形品Pが医薬品であり、内蔵物Qが当該医薬品を服用した人の体内と体外との間で通信を行うためのチップQ1を含んでいたが、成形品Pは医薬品には限定されないし、内蔵物QはそのようなチップQ1を含むものには限定されない。成形品Pは、食品や、人が服用し又は人の体内に入れることのできる小形の医療機器、診断機器、計測機器等であることがある。内蔵物Qは、人の体内を巡るマイクロマシンやナノマシン、極小のロボットのようなものを含み得る。
【0101】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【符号の説明】
【0102】
A…粉体圧縮成形機
31…テーブル
4…臼孔
5…上杵
6…下杵
B、C…内蔵物供給機の搬送機構
B1…搬送部材(第一の回転体)
C1…搬送部材(第二の回転体)
C4…受け渡し位置(第一の位置)
D…内蔵物供給機の供給機構
D1…掻き取り部材
D2…滑走部材
D21…凹溝
D211…始端部
D212…終端部
D31…押送部材(第三の回転体)
D311…突起部
D33…叩き落とし部材
D4…吸引装置(ダクト)
D5…吹出口
D9…掻き取り位置(第二の位置)
P…成形品
Q…内蔵物
Q1…チップ
T…キャリアテープ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13