(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179385
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20221125BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20221125BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079020
(22)【出願日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/201,937
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/519,975
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・ランベス
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン・ブレッケ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・リップ
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH08
2C002LL01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重心をゴルフボールが打たれそうな場所に近づけ得るゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】基準位置に置かれたときに、フェース中心164を有し、かつ、フェース平面を定義する打撃フェース160;フェース平面に垂直で、フェース中心164を通過する垂直中心面166;ソール部140;トップ部130;ヒール部120;ヒール部の反対側のトウ部110;シャフトを受け入れるように構成され、ホーゼル軸を定義するホーゼル150;約250gから320gのクラブヘッド質量;39°以上のロフトL;及びフェース平面から後方に距離D5を隔て、かつ、垂直中心面166から5mm以下の距離D7を隔てるクラブヘッド重心を備える。距離D5は、D5≦7.69 mm-0.074 mm/°*Lを満足し、ヒール・トウ方向に延び、かつ、クラブヘッド重心を通過する軸を中心に測定される慣性モーメントIyyは1000g・cm
2以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、基準位置に置かれたときに、
フェース中心を有し、かつ、フェース平面を定義する打撃フェース;
前記フェース平面に垂直で、前記フェース中心を通過する垂直中心面;
ソール部;
トップ部;
ヒール部;
前記ヒール部の反対側のトウ部;
シャフトを受け入れるように構成され、かつ、ホーゼル軸を定義するホーゼル;
250gから320gのクラブヘッド質量;
39°以上のロフトL;及び
前記フェース平面から後方に距離D5を隔て、かつ、前記垂直中心面から5mm以下の距離D7を隔てるクラブヘッド重心を備え、
前記距離D5は、D5≦7.69 mm-0.074mm/°*Lを満足し、
ヒール・トウ方向に延び、かつ、前記クラブヘッド重心を通過する軸を中心に測定される慣性モーメントIyyは1000g・cm2以上である、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記クラブヘッド重心を垂直に通る軸を中心に測定される慣性モーメントIzzをさらに備え、前記慣性モーメントIzzが2800g・cm2以上である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記クラブヘッド重心は、22mm以下の高さD3を有する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記ホーゼルは、80mm以上のホーゼル長さを備える、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
ホーゼル長さは、90mmから110mmの間である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記距離D5は、以下を満足する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
D5≦5.69mm-0.074mm/°*L
【請求項7】
前記慣性モーメントIyy は、1100g・cm2以上である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記ゴルフクラブヘッドは、第1の融点及び第1の密度を有する第1の材料を含む第1の構成要素と、前記第1の融点よりも高い第2の融点及び前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の材料を含む第2の構成要素とを含み、
前記第2の構成要素は、前記第1の構成要素によって少なくとも部分的に包まれている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記第2の密度は2.5g/cm3以下である、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記第2の材料は、セラミック材料を含む、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記第2の構成要素を囲む前記第1の構成要素の最小厚さは0.75mm以上である、請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
ゴルフクラブヘッドであって、基準位置に置かれたときに、
フェース中心を有し、かつ、フェース平面を定義する打撃フェース;
前記フェース平面に垂直で、前記フェース中心を通過する垂直中心面;
ソール部;
トップ部;
ヒール部;
前記ヒール部の反対側のトウ部;
シャフトを受け入れるように構成され、かつ、ホーゼル軸を定義するホーゼル;
250gから320gのクラブヘッド質量;
39°以上のロフトL;
前記フェース平面から後方に2.2mm以下の距離D5を隔て、かつ、前記垂直中心面から5mm以下の距離D7を隔てるクラブヘッド重心;
ヒール・トウ方向に延び、かつ、前記クラブヘッド重心を通過する軸を中心に測定される、1000g・cm2以上の慣性モーメントIyy、及び
第1の融点及び第1の密度を有する第1の材料を含む第1の構成要素と、前記第1の融点よりも高い第2の融点及び前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の材料を含む第2の構成要素であって、前記第1の構成要素によって少なくとも部分的に包まれている前記第2の構成要素とを備える、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記クラブヘッド重心を垂直に通る軸を中心に測定される慣性モーメントIzzをさらに備え、前記慣性モーメントIzzが2800g・cm2以上である、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記クラブヘッド重心は、22mm以下の高さD3を有する、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記ホーゼルは、80mm以上のホーゼル長さを備える、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
ホーゼル長さは、90mmから110mmの間である、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記距離D5は、以下を満足する、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
D5≦5.69mm-0.074mm/°*L
【請求項18】
前記慣性モーメントIyy は、1100g・cm2以上である、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
前記第2の密度は2.5g/cm3以下である、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
前記第2の材料は、セラミック材料を含む、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年5月19日に出願された米国仮特許出願第63/201,937号及び2021年11月5日に出願された米国特許出願第17/519,975号の優先権の利益を主張している。
【0002】
この開示は、一般にゴルフクラブの分野に関連している。より具体的には、それは、少なくともクラブヘッドのホーゼル部にインサートを備えたゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
ゴルフクラブヘッドの設計の目標は、クラブヘッドの重心を、スイング中にゴルフボールと接触する可能性が最も高い打撃面の位置に合わせることにある。これにより、ショットの精度が向上し、ゴルファーのスイングから可能な限り多くのエネルギーがインパクト時にゴルフボールに伝達され、それによって好ましいゴルフショットが得られるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この目標は、与えられた質量の予算の制約内で達成するのが難しい場合がしばしばある。これは、ヒール部とホーゼル部の形状と重量により、クラブヘッドの重心がフェースの中心からヒール側に自然に偏る「プレーヤー(player)」アイアンタイプのゴルフクラブヘッドに特に当てはまる。これらのクラブヘッドを使用するゴルファーは、より伝統的な外観を楽しむこともよくあり、したがって、これらのゴルファーは、クラブヘッドの重量プロファイルを有益に変更するだけでなく、クラブヘッドをこの従来の外観から逸脱させることにもなるような設計変更に反対する可能性がある。
【0005】
例えば、アイアンまたはウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの周縁部に重量を追加することは、慣性モーメントを増加させ、それによって中心から外れた打撃に「寛容性」を追加することができる。しかし、そのようなキャビティバッククラブヘッドの外観は、ブレードタイプのアイアン及びサンドウェッジの外観を好むプレーヤーにとっては不快なものになる可能性がある。そのような特徴はまた、特にバックスピン特性が関連するウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの場合、スイートスポットの位置に悪影響を与える可能性がある。
【0006】
したがって、オフセンター打撃の寛容性を提供しつつ、重心をゴルフボールが打たれそうな場所、おそらくクラブヘッドのフェース中心、に近づけるように、クラブヘッドのある部分から別の部分に重量を離散的に移動させる設計の必要性が存在する。
【0007】
したがって、本開示の1つまたは複数の態様によるゴルフクラブヘッドは、基準位置に置かれたときに、フェース中心を有し、かつ、フェース平面を定義する打撃フェース;前記フェース平面に垂直で、前記フェース中心を通過する垂直中心面;ソール部;トップ部;ヒール部;前記ヒール部の反対側のトウ部;ヒール部から延びるホーゼル部であって、シャフトを受け入れるための開放端と底面とを含むホーゼルボアを含み、前記ホーゼルボアは、中心ホーゼル軸を規定するホーゼル部;約250gから320gのクラブヘッド質量;及び、前記垂直中心面から5mm未満の距離を隔てるクラブヘッド重心を備える。前記ゴルフクラブヘッドはまた、第1の融点及び第1の密度を有する第1の材料の第1の構成要素、及び、前記第1の融点よりも高い第2の融点及び前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の構成要素を含むことができ、前記第2の構成要素は、(i)前記第1の構成要素によって少なくとも部分的に包まれ、(ii)前記ホーゼルボアの下のホーゼル部に延在し、及び、(iii)約5g未満の質量を有する。
【0008】
本開示の1つまたは複数の態様に従ったゴルフクラブヘッドを製造する方法は、順に、以下のステップを含み得る:(a)補助材料で補助構成要素を形成すること、(b)ロストワック鋳造法により、第1の材料を含むゴルフクラブのヘッド本体内に前記補助構成要素を封止すること、(c)開放端と底面とを備えたホーゼルボアを、前記補助構成要素の最上部が前記底面より下になるように形成するために、前記補助構成要素の一部を取り除くこと。前記第1の材料は、第1の融点及び第1の密度を有しても良く、前記補助材料は、前記第1の融点よりも大きい第2の融点及び前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有しても良い。また、ゴルフクラブヘッドには、さらに、フェース中心を有し、かつ、フェース平面を定義する打撃フェース;前記フェース平面に実質的に垂直であり、かつ、前記フェース中心を通過する垂直中心面、及び、前記垂直中心面から5mm未満の位置にある重心を含むことができる。
【0009】
そして、本開示の1つまたは複数の態様による別のゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッド本体及び補助構成要素を含み得る。前記ゴルフクラブヘッド本体は、フェース中心を有し、かつ、フェース平面を定義する打撃フェース;前記フェース平面に垂直であり、かつ、前記フェース中心を通って延びる垂直中心面;ソール部、トップ部、ヒール部、前記ヒール部と反対側のトウ部、前記ヒール部から延び、かつ、開放端と底面とを備えたホーゼルボアを備えるホーゼル部であって、前記ホーゼルボアは、中心ホーゼル軸を規定する前記ホーゼル部、及び、第1の融点及び第1の密度を有する第1の材料を含むことができる。
【0010】
前記補助構成要素は、前記第1の融点よりも高い第2の融点及び前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の材料を含むヒール部;前記ホーゼルボアの前記底面の下に位置する上部、及び、前記ヒール部に接続され、かつ、前記第1の密度よりも高い密度を持つ第3の材料を含むトウ部を含むことができる。そして、このゴルフクラブヘッドの重心は、前記垂直中心面から5mm未満に位置し得る。
【0011】
本開示の様々な態様によるゴルフクラブヘッド及びその製造方法のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の説明、図面、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、より明らかになるであろう。以下に記載される説明及び図面は、例示のみを目的としており、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の1つまたは複数の態様による例示的なゴルフクラブヘッドの正面図を示す。
【
図2】
図1の例示的なゴルフクラブヘッドの後面概略図を示す。
【
図3】本開示の1つまたは複数の態様による、例示的なゴルフクラブヘッドのヒール側立面図を示す。
【
図4】IV-IV線に沿った
図3のゴルフクラブヘッドの断面を示す。
【
図5】ホーゼルが取り外された
図3のゴルフクラブヘッドの正面斜視図を示す。
【
図6】VI-VI線に沿った
図5のゴルフクラブヘッドの断面図を示す。
【
図7】
図3のゴルフクラブヘッドを製造する例示的な方法を示す。
【
図8】
図3のゴルフクラブヘッド内のインサートの拡大図を示す。
【
図9】
図8のインサートを設計する方法の一部としての重なり合うクラブヘッドを示す。
【
図10】
図7の方法の第2のステップから生じるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図11】
図7の方法の第3のステップから生じるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図12】
図7の方法の第4のステップから生じるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図13】本開示の1つまたは複数の態様によるゴルフクラブヘッドを製造する例示的な方法を示す。
【
図14】
図13の方法の第4のステップから生じるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図15】本開示の1つまたは複数の態様によるゴルフクラブヘッドの後面断面図を示す。
【
図16】
図15のゴルフクラブヘッドのヒール側断面図を示す。
【
図18】XVIII-XVIII線に沿った
図17のゴルフクラブヘッドの断面を示す。
【
図19】XIX-XIX線に沿った
図17のゴルフクラブヘッドの断面を示す。
【
図20】本開示の第2の実施形態によるゴルフクラブヘッドの正面図を示す。
【
図22】
図20のゴルフクラブヘッドの正面図を参照寸法とともに示す。
【
図23】仮想の垂直中心面566を通る
図20のゴルフクラブヘッドの断面図を示す。
【
図26】
図20のゴルフクラブヘッドのヒール側立面図を示す。
【
図28】本開示の別の実施形態によるゴルフクラブヘッドの底面図を示す。
【
図29】本開示の別の実施形態による正面図でのゴルフクラブヘッドの相関セットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に示されているのは、本開示の1つまたは複数の態様によるゴルフクラブヘッド100である。このゴルフクラブヘッドの本体は、トウ部110、トウ部の反対側のヒール部120、トップ部130、及び、トップ部の反対側のソール部140によって境界付けられ得る。クラブヘッドを関連するシャフト(図示せず)に固定するためのホーゼル部150は、ヒール部から延びることができ、ホーゼル部は、仮想の中心ホーゼル軸152を規定することができる。
【0014】
クラブヘッドは、その前部に打撃フェース160をさらに含むことができる。打撃フェースは、実質的に仮想の打撃フェース平面76に一致する前部の実質的に平面の外面部分であり、これは、そのフェース平面76と中心ホーゼル軸152との間で得られる工場指定のロフト角でゴルフボールに接触するように配置されている。
【0015】
打撃フェースは、打撃フェースと打たれたゴルフボールとの間のトラクションを増加させ、ボールとの良好な接触(例えば、濡れた状態で)を確実にし、かつ、例えば、飛行中の安定性のため、またはバックスピンによって地面に戻った後の打たれたゴルフボールの静止位置をよりよく制御するためにボールにある程度のスピンを与えるような表面特徴で形成され得る。これらの表面特徴には、複数の実質的に平行な水平溝またはスコアライン162、ならびに、テクスチャパターンを形成する他の表面特徴(図示せず)が含まれても良い。
【0016】
打撃フェースは、ほぼ平面の打撃フェース160とソール部140との間に形成された接合部を構成するリーディングエッジ161を含み得る。リーディングエッジ161は、最も前方の点165を含む(
図1及び3を参照)。仮想の垂直中心面166は、リーディングエッジ161の最も前方の点165を通過する。
【0017】
打撃フェースは、フェース中心164を含むことができる。本明細書で使用されるフェース中心は、スコアラインの最もトップに近い部分と最もソールに近い部分の中間にあり、仮想の垂直中心面166を通過する、クラブヘッドの打撃フェース上の点を指す。いくつかの実施形態では、例えば、
図1に示される実施形態は、フェース中心はまた、好ましくは、スコアラインの最もヒールに近い部分と最もトウに近い部分の中間に位置する。しかしながら、他の実施形態では、フェース中心は、スコアラインの最もヒールの近い部分と最もトウに近い部分の中間に位置していない。例えば、スコアラインは、リーディングエッジの輪郭から横方向にオフセットされ得るか、または、スコアラインは、打撃フェースのトウ部分に完全に延びることができる。
【0018】
フェース平面に垂直な仮想の垂直中心面166は、クラブヘッドの前後方向にフェース中心を通って突出しており、ゴルフクラブヘッドの重心170は、その仮想の垂直中心面から離隔され得る。
図1では、例えば、重心は、仮想の垂直中心面からヒール方向に離間されている。前記重心は、仮想の垂直中心面から5mm未満の距離172だけ離隔することができ、より好ましい実施形態では、それは、仮想の垂直中心面から2mm未満で離隔しても良い。
【0019】
ゴルフクラブヘッドは、「基準位置」にあるものとして
図1に示されている。本明細書で使用される場合、「基準位置」は、ゴルフクラブヘッドの位置であって、例えば、クラブヘッドのソール部が仮想接地面10に接触し、ホーゼル部の仮想の中心ホーゼル軸152が仮想の垂直ホーゼル平面にあり、スコアライン162が、前記接地面に対して水平に向けられている
図1のクラブヘッドを示す。特に指定のない限り、ここに記載されているすべてのクラブヘッドの寸法は、クラブヘッドが基準位置にある状態で得られている。
【0020】
図1及び
図2のゴルフクラブヘッドは、好ましくは、ウェッジ型クラブヘッドなどのアイアン型のクラブヘッドを含み、それは、好ましくは、40°以上のロフト角を有することができる。より好ましくは、ゴルフクラブヘッドは、伝統的なブレードタイプのクラブヘッドであっても良く、そうでなければ、特定のゴルファーによって「プレーヤー(player)」タイプのクラブヘッドと呼ばれものでも良い。 そのようなものとして、
図2に示されるように、クラブヘッドの後部180は、トップブレード部182及び下部マッスル部184を含むことができる。トップブレード部は、好ましくは、実質的に平面の表面を含むことができ、したがって、それは、好ましくは、周縁重み付け機能を欠いている可能性がある。前記マッスル部は、打撃フェースの平面に垂直な方向にトップブレード部から後方に突出していてもよい。ゴルフクラブヘッドの質量は、一般にマッスル部に集中している可能性があるため、重心170は、フェース中心のソール側に位置している可能性がある。そして、
図2に示されるように、具体的には、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメント(「MOI」)Izz 186は、重心を通過する仮想垂直軸187の周りで測定することができ、ゴルフクラブヘッドのMOI Ixx 188は、同様に重心を通過する、地面に平行な仮想水平軸189の周りで測定することができる。当業者に知られているように、MOIは、一般に、中心から外れたゴルフボールの打撃での特定の軸の周りの回転に対するクラブヘッドの自然な抵抗を増加させることと相関している。
【0021】
本開示の1つまたは複数の態様のゴルフクラブヘッドは、好ましくは、他の「プレーヤー」タイプのゴルフクラブヘッドと比較して、ヒール部または下部ホーゼル部から、ソール/マッスル部またはホーゼル部の上部に個別に重量を移動させる内部構造を有し、これにより、重心をフェースの中心、つまり、経験豊富なゴルファーが打撃フェースでゴルフボールを打つ可能性が高い場所に近づけ、それに応じて、垂直(Izz)と水平(Ixx)の両方のMOIが増加する。そのような内部構造を有する例示的なゴルフクラブヘッドは以下で説明される。これらの例示的なクラブヘッドのそれぞれは、
図1及び
図2に関連して上記で説明された前記本体の構造を含むことができる。
【0022】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った本開示の一態様によるゴルフクラブヘッドの断面を示している。図に示されるように、このクラブヘッドのホーゼル部150は、ホーゼル部の開いた最上端156からホーゼル部に深さ155で延びるホーゼルボア154を含むことができる。このボアは、上部内径157及び下部内径158を有し得、それらは同じであっても良く、また、異なっていてもよい。そして、ホーゼルボアは、仮想の中心ホーゼル軸152に向かって内側に突出する金属棚159で、その底部が終端している。ホーゼル部の側壁(及びゴルフクラブヘッド本体の残りの部分)は、好ましくは鋼、及び/または、8g/cm
3以上の密度、及び/または1600℃未満の融点を有する材料のような第1の材料で形成される第1の構成要素を構成し得る。また、ホーゼルボアの底部で測定されるホーゼル部の側壁の最小の厚さ151は、好ましくは、ゴルフショットの振動フィードバックに悪影響を与えることなくホーゼル部の構造的完全性を確保するのに十分であれば良い。例えば、この最小の厚さは、0.5mm以上、より好ましくは0.75mm以上であり得る。
【0023】
ホーゼルボアの底部のソール側には、第2の、または補助的な構成要素として機能するインサート190があっても良い。インサートは、仮想の中心ホーゼル軸と同軸である中心軸を有する実質的に円筒形部分192(
図8)を含むことができる。インサートはまた、ゴルフクラブヘッドのヒール輪郭に概ね一致するように成形されたヒール部を含んでも良い。このインサートは、セラミックなどの補助材料で形成することができ、好ましくは、第1の構成要素の融点よりも高い融点及び第1の構成要素の密度よりも低い密度を有することができる。そのようなものとして、インサートは、ゴルフクラブヘッド内で約5g未満の質量を有することができ、また、ゴルフクラブヘッドの全体の質量に対して、インサートの質量は、約1.5%未満であっても良い。このインサートは、少なくとも60%の酸化アルミニウム(Al
2O
3)で構成されても良い。より具体的には、このセラミックインサートは、20%のSiO
2、10%のZrO
2、及び70%のAl
2O
3で構成され得るが、これらのパーセンテージはそれぞれ最大約10%変化する場合があり得る。セラミックの組成を調整することにより、インサートの材料特性を調整して、重量配分目標、例えば、慣性モーメントの増加、より低い及び/またはより中心の重心位置、または、打撃時の特定の振動周波数を達成することができる。インサートは、次の特性も備えていても良い:(i)15MPaの結合強度、(ii)40%以下、好ましくは30%の気孔率、(iii)30%の吸着性、(iv)2500℃を超える融点、及び(v)3g/cm
3以下、好ましくは2g/cm
3以下の密度。しかし、インサートの組成と同様に、インサートの結合強度、多孔性、吸着性及び密度は、特定の重量配分目標を達成するために変化する可能性がある。
【0024】
図5のVI-VI線に沿った断面を示す
図6に示されるように、インサート190は、ホーゼル部からゴルフクラブヘッドのヒール部まで延びることができる。また、このインサートは、ゴルフクラブヘッドのさまざまなMOI値に影響を与える可能性がある。例えば、垂直方向のMOI Izzは、3000g・cm
2を超える場合があり、水平方向のMOI Ixxは1000g・cm
2を超える場合があり得る。
【0025】
図7~12は、
図3~6のゴルフクラブヘッドを形成する例示的な方法200を示している。第1のステップ210において、インサートは、例えば、射出成形によって形成され得る。
【0026】
図8は、この第1の成形ステップ後のインサート190の一実施形態を示している。このインサートは、コンピュータ支援設計(「CAD」)プログラムでさまざまなクラブロフトをオーバーレイし、ホーゼル部及び/またはヒール部の完全性のための最小の鋼壁(周囲壁)の厚さなどの必要な制約を考慮しながら、それらのクラブヘッドの重複領域を選択することによって設計することが好ましい。例えば、
図9は、46°、54°、及び64°のロフトを有するクラブヘッドの重なり合う領域に形成されたインサートを示している。この設計プロセスは、ゴルフクラブのヘッドロフトとソールの形状ごとに新しいインサートを設計する必要がないため、製造上の懸念を緩和し、さまざまなコストメリットをもたらす可能性があり得る。1つまたは複数の実施形態では、最小の鋼壁の厚さは、0.5mm以上であり、より好ましくは0.75mm以上である。
【0027】
次に、
図7に示される第2のステップ220において、ゴルフクラブヘッド本体は、例えば、ロストワックス鋳造によって、インサート190の周りに形成され、インサートをその中に封止することができる。このステップの結果が
図10に示され、インサートは、ホーゼルボアの底部の金属棚159の下だけでなく、ホーゼルボアを通って、ホーゼル部150の最上端156の開口部を越えて延びることが示されている。
【0028】
次に、インサートの上部194、すなわち、ホーゼル部の最上部の開口部を超えて延びる部分及びホーゼルボア内に延びる部分は、例えば、機械加工によって、
図7に示される第3のステップ230で取り除かれ得る。この第3のステップの結果を示す
図11に示されるように、ホーゼルボア154及びホーゼル部の最上端156は、ゴルフクラブシャフトを受け入れることができるように、ここで開口され得る。インサート190は、ホーゼルボアの底部を区切る金属棚159のソール側に延びることができる。
図11にも示されているように、インサートは、打撃フェースに形成されたスコアラインの最もヒールに近い部分163を超えて延在しなくてもよい。好ましくは、インサートは、それらのスコアラインのほぼ最もヒールに近い部分まで延びても良い。これにより、インサートが打撃フェースの打撃ゾーンまで延びないことが保証され、ゴルフボールとの衝突時のゴルフクラブヘッドの従来の感触と音への変化を最小限に抑え得る。
【0029】
そして、その結果が
図12に示されている、
図7の最終ステップ240では、インサートキャップ196は、金属棚159の上に載るようにホーゼルボアに導入されても良い。このインサートキャップは、AlまたはABSプラスチックで形成されることができ、シャフトの先端とインサートの最上端の間に保護バリアを提供することができる。他の実施形態では、シャフトの先端がホーゼルボアに固定されている場合、インサートの最上端がエポキシ層で覆われているため、インサートキャップは必要ない場合がある。このようにインサートの周りにゴルフクラブヘッド本体を形成することにより、そうでなければより高密度の金属材料で満たされるであろう空間が、代わりに、例えばセラミック材料によって占められる。したがって、質量はホーゼル部及びヒール部から選択的に除去され、それによって重心をフェース中心に近づけるという目標を達成する。
【0030】
他の例示的なクラブヘッドは、本発明の精神及び範囲内にあると見なされる。例えば、
図7の方法と同様、
図13に示されるように、インサート390は、最初に、例えば、射出成形によって、第1のステップ310で形成されても良い。
【0031】
次に、ゴルフクラブヘッドの本体は、例えば、ロストワックス鋳造によって、第2のステップ320でインサートの周りに形成されても良い。しかし、第3のステップ330で、ホーゼル部のホーゼルボアを形成するためにインサートの上部のみを除去する代わりに、ホーゼルボアの下に内部空洞を形成するために、より多くのインサートを除去することができる。より具体的には、
図14に示されるように、ある部分392、例えば、少なくとも50%の体積、または全てのインサートは、例えば、機械的攪拌、化学エッチング、または電解エッチングによって、内部空洞を形成するように除去されても良い。いくつかの態様において、インサートは、水または水溶液への高い溶解度を有する材料から構成されても良い。そのような態様では、インサートは、ゴルフクラブヘッドから容易に溶解して空洞を形成することができる。
【0032】
次に、この空洞は、後で固化する高分子発泡体などの材料をその中に射出することによって、
図13の第4のステップ340で満たされても良い。したがって、この第4のステップは、クラブヘッド内に振動減衰材料を導入するか、または、例えば、高分子材料の密度を変化させることによって、重心位置の調整を可能にし得る。
【0033】
そして、
図7の方法のように、インサートキャップは、次に、第5のステップ350で、ホーゼルボアの底部を区切る金属棚の上に載るように、ホーゼルボアに導入されても良い。
【0034】
さらに他の例示的なクラブヘッドは、本発明の精神及び範囲内にあると見なされる。例えば、
図10~12及び14は、インサートがスコアラインの最もヒールの近くの部分までのみ延びるように示されているが、そうである必要はない。むしろ、
図15-19の例示的なゴルフクラブヘッド400に示されるように、インサート490は、ゴルフクラブヘッドのソール部またはトウ部にさらに延びることができる。このインサートは、実際にはヒールからトウまでの距離全体に広がる可能性があり得る。そのような構成は、「ゲーム向上」タイプのゴルフクラブヘッドにおいてより実現できる可能性があり、それは一般に、そのようなインサートを収容するためにより大きなソール容積を有する。「ゲーム向上」クラブヘッドを使用しているゴルファーはまた、インサートが打撃フェースに延びることに起因する音及び/または感触の変化をそれほど不快に感じないかもしれない。実際、インサートの存在は、振動減衰効果を提供し、中心から外れた打撃に対する感触を改善する可能性があり得る。
【0035】
また、
図17のゴルフクラブヘッドのXIX-XIX線に沿った断面を示す
図19に示されるように、高密度部分492は、トウ部のインサートと同時成形されるか、または、インサート内に配置され得る。この高密度部分は、金属材料、例えば、タングステン合金であっても良く、それは、10g/cm
3を超える密度を有することができる。インサートにこのような高密度部分を含めると、ゴルフクラブヘッドのトウ部に質量が追加されてMOIが増加する可能性があることから、有益な場合があり得るし、ゴルフボールを打ったときのゴルフクラブのヘッドの感触を改善し、最終的には製造コストを削減することが可能である。
【0036】
図20~28には、追加のゴルフクラブヘッドの実施形態が示されている。特に明記しない限り、
図20に示されるゴルフクラブヘッド500は、同様に構造化され、同様に形成され、
図1~19の実施形態と同様に多成分構造を有する。例えば、ゴルフクラブヘッド500は、ソール部540、トップ部530、ヒール部520、トウ部510、打撃フェース560、及び、後方部分580を含む(例えば、
図21を参照)。打撃フェース560は、最も前方の点565を有するリーディングエッジ561を含む。仮想の垂直中心面566は、
図1の実施形態に関して上で定義されたように、最も前方の点565及びフェース中心564を通過する。
【0037】
ゴルフクラブヘッド500は、ゲーム向上タイプのゴルフクラブ、より具体的には、ゲーム向上ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドとして特徴付けることができる。したがって、ゴルフクラブヘッド500は、
図1に示されるようなゴルフクラブヘッド100の実施形態の特徴から離れるとともに、強調される特定の特徴を有し得る。 例えば、ゴルフクラブヘッド500の後方部分580は、ブレード部分582及びマッスル部584を含む。ただし、後方部分580の周縁部については、周縁重み付け要素586が形成されている。後方部分580のマッスル部584は、インサート588をさらに含む。インサート588は、使用中にゴルフクラブヘッド500がゴルフボールに衝突したときに発し得る振動を減衰させるための弾性材料、例えば、ABS、TPU、ポリウレタン、ポリアミド、ポリブタジエンなどの高分子材料、及び/または粘弾性材料からなることができる。
【0038】
インサート588は、任意の特定の機能的側面、例えば、振動減衰、音響調整、または感触調整に加え、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドに伝統的に望まれるようなソリッド、ブレードタイプの特性及び/または美観をゴルファーに伝えるように機能してもよい。実際は、インサート588は、それが嵌合する凹部、好ましくはヒール側凹部590A及びトウ側凹部590Bを充填し、それによって隠す。これにより、オフセンターショットにおける寛容性に関連するゴルフクラブヘッド500の特性がさらに向上し、さらに、裁量的質量が増加する可能性がある。そのような裁量的質量は、所定の質量予算を提供されたゴルフクラブヘッド500の質量に関連する特性を改善するために、ゴルフクラブヘッド500の他の領域に再配置されてもよい。
【0039】
ゲーム向上クラスのゴルファーのためにゴルフクラブヘッド500を構成するという目標に加えて、様々な要素が構成されるプロセスは、
図1の実施形態のものから離れ得る設計手法の結果である。
図20のゴルフクラブヘッド500の場合、様々な特徴及び要素は、期待される性能を最大化することに基づいて、特にサイズ及び輪郭が決められている。具体的には、クラブヘッド500の打撃フェース560に関する複数の位置のそれぞれについて、インパクト確率を代表するモデルが生成される。次に、特定の性能特性、例えば、インパクト時のボール速度及び/または平均キャリー距離が、打撃フェース560に関する複数の位置の教示が測定される。確率モデルをそのような性能特性と関連付けることによって、そのような情報を集約し、それに基づいて、ゴルファーがプレー中のゴルフショットの大きなサンプリングにわたって達成することを期待できるものを代表する全体的な性能値を計算するモデルが生成され得る。
【0040】
このようなモデルの生成と実行の結果、さまざまな属性が比較的許容できるもの、またはさらに操作した場合のリターンが最小となるものとみなされるようになった。しかし、他の属性は、さらに操作するのに適していると見なされた。言い換えると、ある属性を変化させると他の属性に悪影響を及ぼす可能性がある場合、確率論的な総合性能を用いたモデルを採用することで、最も望ましい属性の組み合わせを指し示すことができる可能性がある。
【0041】
特に、Iyyを増加させることが修正に値するとされた。ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの場合、ゴルファーは打撃フェース560でゴルフボールを打つ傾向があり、垂直方向への振動が大きい(例えば、ロフトの低いアイアンタイプのゴルフクラブと比較して)。しかし、
図1のクラブヘッド100の実施形態に関して上述したように、重心の横方向の位置は、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの重要な特性として残っている。他のゴルフクラブヘッドの側面も、例えば打撃フェース560上のスイートスポットの高さなど、特に重要である。
【0042】
これらの理由から、
図1の実施形態と比較すると、Iyyを大幅に増加させるなど、他の特性を操作することを優先して、スイートスポットの高さや重心の横方向への配置など、様々な望ましい特性をほぼ維持したいという要望 - または少なくともそれらの操作を制限すること - が確認された。
【0043】
このような特性のより望ましい組み合わせは、様々な方法で実現することができる。例えば、ゴルフクラブヘッド500は、
図1の実施形態に関して説明したような低密度インサート190と形態、位置及び組成が類似した低密度インサートを維持する。しかしながら、ゴルフクラブヘッド500の特定の場合において、低密度インサート190は、より高い質量、より大きな体積を備え、したがって、ゴルフクラブヘッド全体のより大きなパーセント体積及びパーセント質量を有する。
【0044】
第一に、本発明者らは、ゴルフクラブヘッド500の構造的完全性を許容可能な閾値未満に低下させることなく、より大きなインサート質量が実行可能であると決定した。第二に、複数の異なる低密度インサートがセットまたはポートフォリオ全体に実装されている場合、または複数のロフトが変化するゴルフクラブヘッドを提供している場合、より大きなインサートボリュームが達成され得る。
【0045】
図1の実施形態に関して、同一形状の低密度インサートは、セットまたはポートフォリオを構成するロフトが変化する複数のゴルフクラブヘッドの各々に関連付けられることが提案されてきた。その結果、低密度インサートが収まる可能性のある設計包絡線は、同じ向きで互いに重ね合わされたそのようなすべてのゴルフクラブヘッドの正味の重なり合ったスペースであると見なされた。代わりに、複数の異なる低密度インサートを異なるロフトのクラブヘッドのセットに組み込むことが認められれば、低密度インサートごとに重ね合わせるクラブヘッドの数を少なくするか、全く重ね合わせないようにすることができる。その結果、一般的に、上記設計包絡線はより大きくなり、セットや製品全体のより大きなデザインの自由度を許容または提供する。
【0046】
上記によれば、
図25の実施形態に関する低密度インサート190は、好ましくは4g/cc以下の密度、より好ましくは3g/cc以下の密度、さらに好ましくは約2g/ccに等しい密度を有する。さらに、または代替的に、低密度インサートは、4g以上、より好ましくは4.25g以上、さらに好ましくは4.4g~5.25gの範囲内の質量を有する。さらに、または代替的に、低密度インサートは、2cc以上、より好ましくは2.1cc以上、さらにより好ましくは2.1ccから2.75ccの範囲内の体積を含む。
【0047】
しかし、上述したように、複数の低密度インサートを異なるロフトのクラブヘッドのセットまたは提供物に適用することは、少なくとも特定のロフトに関して、より大きな設計の自由度を可能にする。本明細書で使用される「提供物」とは、単一の製品ラインであることを意図し、そのように見えるように、 類似した美的及び機能的特性を有する複数の製品を指し、そこでは、ユーザーは、ゴルフクラブまたはゴルフクラブヘッドのセットまたはセットの一部を構成するために、提供物の全てまたは全てより少ない製品のセットを選択することが期待される。本明細書で使用するセット、または関連するセットとは、類似または相関した機能性及び/または美観を有する複数の製品を指し、組み合わせて販売または提供されるものである。したがって、上記に加えてまたは代替的に、低密度インサート量は、好ましくは、以下のようにセットまたは提供物の全体を通してロフトに関連する:
体積≧0.0279cc/°*ロフト+0.7805cc
【0048】
一例として、
図29を参照すると、上記の開示による複数のゴルフクラブヘッド568のセットまたは提供物は、ゴルフクラブヘッド、例えば、ゴルフクラブヘッドを含む。ゴルフクラブのヘッド500A、500B、500Cは、ロフトが異なる。ゴルフクラブヘッド500A、500B及び500Cはそれぞれ、本開示による低密度インサート190A、190B及び190Cを含むことができ、低密度インサートは以下のような特性を有する。
【表1】
【0049】
したがって、固有のロフトを有する少なくとも3つのクラブヘッドのゴルフクラブヘッドのセット(例えば、セットまたは提供物568)、例えばウェッジタイプのゴルフクラブヘッドは、(
図20に関して説明した方法で)、ある特定のロフトのクラブヘッドから別の異なるロフトのクラブヘッドまで異なる低密度インサートを含むことができることが企図される。そのような場合、同一の第1の低密度インサートが、ゴルフクラブヘッドのセットの第1のサブセット(例えば、第1の2~3のクラブヘッド)に組み込まれることがあり、ゴルフクラブヘッドの第1のサブセットはそれぞれ好ましくはロフトが異なり、一方、第2の同一の低密度インサート(第1の低密度インサートとは異なる形状である)はゴルフクラブヘッドのセットの第2のサブセット(例えば、第2の2~3のクラブヘッド)に組み込まれてもよく、ゴルフクラブヘッドの第2のサブセットは好ましくはロフトが異なる。いくつかのそのような実施形態では、異なる形状の低密度インサートは、ゴルフクラブヘッドのセットの異なるロフトのクラブヘッドの各々に対応してもよい。しかしながら、そのような実施形態は、実用的な観点から、達成される増分質量関連利点に見合わない可能性のある製造コストの増加をもたらす可能性がある。
【0050】
したがって、より大きな裁量質量が達成され、この裁量質量は、クラブヘッドのより望ましい領域に再配置され、また、質量除去が望ましいと思われるクラブヘッドの領域、例えば、ヒール部分に近接した位置、及び/または、y軸(すなわち、クラブヘッドが仮想接地面510に対して基準位置に向けられたときにクラブヘッドの重心を通る水平ヒール-トウ軸)に近接した位置から除去されてもよい。ひいては、Iyyがさらに増加され得る。
【0051】
好ましくは、上述したように低密度インサートを拡大することと組み合わせて、質量はクラブヘッドの様々な端部、好ましくはホーゼル550に近接して再配置される。例えば、ホーゼル550は、低密度インサートを組み込んだ結果として長くなってもよい。好ましくは、ホーゼル長さは78mm以上、より好ましくは80mm以上、さらに好ましくは約85mmに等しいが、好ましくは90mmを超えないようにされる。このようにして、慣性モーメント特性がさらに改善される。例えば、質量がy軸に対してより垂直に離れた領域に再配置されると、Iyyは増加する可能性がある。質量が、Izzが測定されるz軸からより横方向に離れた領域に再配置されると、Izzが増加する可能性がある。さらに、質量がヒール側の位置の近くで除去され、ホーゼル550の近くで再配置されたとすると、重心の望ましい横方向(ヒールからトウまで)の位置は、一般的に維持され得る(軸からの距離の変化は、重心位置よりもMOIに大幅に大きな影響を及ぼす)。好ましくは、前記重心は、仮想の垂直中心面566から5mm以下の距離D7(例えば、
図22を参照)だけ離間されている。ただし、低密度インサートの質量と体積が大きい場合は、この寸法をさらに大きくすることができる。したがって、D7は、より好ましくは2mm以下であり、さらにより好ましくは1.25mm以下である。
【0052】
加えて、重心は、好ましくは、打撃フェースのフェース平面576からの深さ、D5(
図23を参照)を有し、D5は、フェース平面576に垂直に測定され、その正の値は、2.5mm以下、より好ましくは2.25mm以下、さらにより好ましくは2mm以下の後方向に対応する。いくつかの実施形態では、重心の深さは、重心が打撃フェース560の前方にあることを示す負の値であり得る。そのような実施形態は、大量の任意の質量がホーゼル550に組み込まれるので、特に実行可能である。これらの値は、一方で、ゴルフクラブヘッド500が、定性的に、外観及び/または感触において、ブレードのような、またはソリッドであることを示す。他方、これらの値は、打撃フェース560においてクラブヘッドのスイートスポットが比較的低いことを示すのに役立つ可能性があり、それは、インパクト時に有益なスピンを生成するゴルフクラブヘッドの能力を考慮すると、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドに関して特に望ましい特徴と見なすことができる。
【0053】
さらに、または代替的に、重心の深さD5は、好ましくは、クラブヘッドロフト(L:°)に関連している。例えば、好ましくは、以下を満たす。
D5≦7.69mm-0.074mm/°*L
より好ましくは、以下を満たす。
D5≦7.19mm-0.074mm/°*L
これらの関係は、絶対的な形でD5に関連する上記の利点を保証するが、D5がクラブヘッドロフトと相関して変化する自然な傾向を考慮に入れている。
【0054】
上記の構成に基づいて、Iyyは好ましくは1000g・cm2以上、より好ましくは1100g・cm2以上である。さらに、または代替的に、Izzは、好ましくは3000g・cm2以上、より好ましくは3250g・cm2以上、さらにより好ましくは3300g・cm2以上である。これらの値は、上記の確率ベースのモデルを使用して、打撃フェース560の周りの一連の位置にわたって考慮されるように、予想されるボールのキャリー距離及び/または予想されるボール衝撃速度を増加させると考えられる。それにより、ゴルフクラブヘッド500の全体的な期待される性能を向上させる。
【0055】
図23を参照して、さらに、または代替的に、クラブヘッド500のスイートスポットは、仮想接地面10から垂直に測定した高さD1が、好ましくは24mm 以下、より好ましくは19mmと23mmとの間である。関連して、ヘッド重心は、好ましくは22mm以下、より好ましくは19mmから21.5mmの範囲の高さ、D3を有する。さらに、または代替的に、クラブヘッド500は、打撃フェース576から後方に、打撃フェース576に垂直な方向で測定した全体の深さD4を有し、D4は、好ましくは23mm以下、より好ましくは22mm以下、さらに好ましくは17mmから22mmの範囲内である。クラブヘッド500は、フェース中心564とクラブヘッドの最もトウ側の位置との間の横方向距離であるトウ幅寸法D2をさらに有する。D2は、好ましくは44mm以上、より好ましくは45mm以上、さらに好ましくは45mm~48mmの範囲内である。さらに、または代替的に、クラブヘッド500は、ホーゼル550を除くクラブヘッド本体の垂直方向の範囲であるクラブヘッドの高さ寸法D6を含む。この高さD6は、好ましくは 38mm以上であり、より好ましくは39mmから49mmの範囲内である。
【0056】
上記のように、確率に基づくモデリングの観点から、Izzの増強を維持または少なくしてIyyを増強することがより好ましい場合があることが企図される。したがって、Iyy/Izzの比は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.28以上、さらに好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.32以上である。好ましくは、このような比は0.30から0.35の範囲内である。このような特性は、クラブヘッド500の全体的な確率に基づく期待性能をさらに向上させる。
【0057】
ロフトが異なる複数のクラブヘッドの提供物のそれぞれに対する前述の寸法D1~D7の例示的な値は以下の通りである(ここで、寸法はミリメートルである)。
【表2】
【0058】
上記のように、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドに求められる特徴の1つは、インパクト時にバックスピンを発生させる能力である。スイートスポットの位置及び慣性モーメントのような上述の特徴に加えて、他のゴルフクラブヘッドの側面がバックスピン発生に寄与するのを助けることができる。そのような属性には、打撃フェースの表面粗さ特性がある。
【0059】
アイアンタイプ、例えばウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの打撃フェースの表面粗さは、プロゴルフのプレーを管理するルールを公布する組織、例えば米国ゴルフ協会(USGA)によって様々な方法で規制されている。特に、USGA は、表面粗さの態様を制限する規則を含む、機器を管理する規則を公布している。 これらの規則により、平均表面粗さRaは、180μinに制限されていると考えられている。しかし、平均表面粗さは、表面の特性を表す一つの方法に過ぎない。そのため、この許容範囲内であれば、複雑な表面変化も可能である。
【0060】
したがって、特にウェットコンディションでのプレーに注目し、表面仕上げ加工を適切に選択することで、バックスピンの発生など、総合的な性能が向上する可能性があることが分かった。好ましくは、上記の方法で形成されたスコアラインとは別に、打撃フェース500は、メディアブラストによって表面加工されることが好ましい。より好ましくは、打撃フェースは、天然砂ベースの媒体、例えば、CHEMOURS(TM)から市販されているSTARBLAST(TM)のような十字石の砂を使用して仕上げられることが好ましい。さらに、または代替的に、前記メディアは好ましくはモース硬度が6.5以上であり、好ましくは7.0から7.5の範囲内とされる。さらに、または代替的に、前記メディアは、3.5から4の範囲内の比重を有し、より好ましくは3.7から3.85の範囲内の比重を有する。さらに、または代替的に、前記メディアは、約100μmから200μmの範囲内の平均直径を有する。好ましくは、このようなメディアのブラストは、Ni-Crコーティングの適用に続いて、及び、その適用時に起こる。
【0061】
上述したように、
図20の本ゴルフクラブヘッドの実施形態は、個別に、または複数のロフト可変ゴルフクラブヘッドのセットまたは提供物として考慮され、好ましくは、ゲーム向上クラブヘッドのクラス内に入ることを意図している。したがって、そのような提供物を、広義に認識することが好ましい。例えば、この特定のクラスのゴルフクラブでは、アイアンは「ストロング」傾向にあり、例えば、過去の参照と比較して、その数値指定に関連したより低いロフトを有しているようである。その結果、及び、前述の特徴との任意の組み合わせで、そのようなセットまたは提供物、例えばセット568内に、46度未満、より好ましくは約40度と46度との間、さらに好ましくは約44度に等しいロフトを有するウェッジタイプクラブヘッドを含むことが望ましい場合がある。そのようなものは、 -この傾向に基づいて- 約38度から43度までの任意の角度にロフトが付けられる可能性があるピッチングウェッジとのロフトの潜在的なギャップを埋めるのを助けるであろう。
【0062】
最も重要な点で、この低ロフトウェッジは、好ましくは、
図20の実施形態に関して上述したすべての特徴を担う。しかしながら、例えば、ゴルファーがアイアンタイプのゴルフクラブに似た挙動でより使用する傾向にあるように、このウェッジの独特な低ロフトに基づいて、いくつかの変形が好ましい場合がある。
【0063】
例えば、
図24の低ロフトのクラブヘッド500(例えば、42~46°の間、好ましくは44°のロフトを有する)は、同じクラブヘッドセットまたは提供物内のよりロフトの大きいクラブヘッドとは異なるソールグラインドを有するソール部540を含んでいる。
図28に示すように、第1のグラインドエッジ570は、ヒールからトウの方向に一般的に、ソール部540のリーディングエッジ561とトレーリングエッジ574との間で一般的に中心的に走っている。セット内のロフトの大きい1つ以上のクラブヘッドと比較して、このグラインドにより、ソール部540は、仮想接地面に向かって引っ張られる「キール」構造で存在することになる。したがって、例えば、
図24のクラブヘッド500は、仮想接地面510に対して、セット(例えば、より大きなロフトを有するセット568)の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくはすべてのクラブヘッドよりも高い高さを有するリーディングエッジの最前点565(
図20を参照)を含み得る。
【0064】
さらに、
図24のより低いロフトのクラブヘッド500のソール部540の表面は、第1のグラインドエッジ570の前方に第2のグラインドエッジ572を含む。第2のグラインドエッジ572は、好ましくは、後方に曲がる一般的にC字形の経路をたどる。
【0065】
これらのソールの特徴は、ゴルファーが、セットまたは提供物、例えばセット568内のより高いロフトのクラブヘッドを使用する場合よりも有意に大きい程度にフォワードプレス及び/またはチッピングショットを行うことを意図し得ることを予期している点で有益である。第1及び第2のグラインドエッジの結果として、そのようなクラブヘッドの有効バウンスは、好ましくは、同じセットまたは提供物内のより高いロフトの1つまたは複数のクラブヘッドよりも大きく、より好ましくは、より高いロフトを有するセットのすべてのクラブヘッドよりも大きくされても良い。
【0066】
いくつかの態様において、
図24のより低いロフトのクラブヘッド500のデュアルグラインドソールは、手動研磨によって形成されてもよい。しかしながら、代替的に、グラインド表面は、鋳造または鍛造によって形成されてもよい。さらに他の実施形態では、製品から製品への一貫性を高めるために、グラインド表面は、例えばロボットアーム研磨プロセスを用いて機械加工されてもよい。
【0067】
以上の説明において、本開示は、その具体的な例示的側面を参照して説明された。しかしながら、本開示のより広い精神及び範囲から逸脱することなく、これらの例示的な側面に対して様々な修正及び変更を行うことができることは明らかであろう。したがって、前述の説明及び添付の図面は、いかなる方法によってもその範囲を限定するものではなく、単に本開示を例示するものとみなされる。
【符号の説明】
【0068】
100 ゴルフクラブヘッド
110 トウ部
120 ヒール部
130 トップ部
140 ソール部
160 打撃フェース
164 フェース中心
166 垂直中心面