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特開2022-179391電池状態判定方法および電池状態判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179391
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電池状態判定方法および電池状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20221125BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221125BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20221125BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221125BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20221125BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20221125BHJP
【FI】
G01R31/367
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Q
G01R31/392
G01R31/389
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079642
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2021084826の分割
【原出願日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹野 諭
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA23
2G216BA56
2G216CB12
2G216CB15
2G216CB31
2G216CB44
2G216CB51
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】二次電池の劣化度を目標変数とする回帰分析処理の実行により、二次電池の劣化度の評価精度の向上を図りうる装置等を提供する。
【解決手段】参照二次電池220の複素インピーダンスZの実測結果に基づく二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値を説明変数とし、当該二次電池モデルにしたがって評価された劣化度D(q1)を目的変数として、重回帰分析が実行される。そして、当該重回帰分析の結果として得られる重回帰式にしたがって、対象二次電池420の劣化度D(q2)が評価される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析要素と、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識要素と、
前記第2認識要素により認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析要素により定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価要素と、
を備えている
電池状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池状態判定装置において、
前記重回帰分析要素が、前記二次電池モデルを定義する全てのモデルパラメータから抽出される異なる複数のモデルパラメータ群のそれぞれを構成する複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰式を定義し、複数の当該重回帰式のそれぞれについて重相関係数または決定係数の値を評価し、当該重相関係数または当該決定係数の値が相対的に大きい一部の重回帰式を選定し、
前記電池劣化度評価要素が、前記重回帰分析要素により選定された前記一部の重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する
電池状態判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池状態判定装置において、
前記二次電池モデルが、関係式(10)により定義されている抵抗R0の伝達関数H0(z)と、関係式(11)により定義されているIIRシステムの伝達関数Hi(z)(i=1,2,‥,m)と、関係式(12)により定義されているFIRシステムの伝達関数HW(z)と、の並列結合を含む伝達関数により定義され、
0(z)=R0 ‥(10)、
i(z)=(bi0+bi1-1)/(1+ai1-1) ‥(11)、
W(z)=Σk=0-nk-k ‥(12)、
前記重回帰分析要素が、前記複数の説明変数ai1、bi0、bi1およびhkのうち、一部の説明変数を有する重回帰式を前記一部の重回帰式として選定する
電池状態判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電池状態判定装置において、
前記第1認識要素が、前記参照二次電池の複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定し、
前記電池劣化度評価要素が、初期状態の前記参照二次電池に対して、インパルス電流が入力された際に当該参照二次電池から出力される電圧の変化態様の実測結果としての実測出力電圧と、前記第1認識要素により前記複数のモデルパラメータの値が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際に当該二次電池モデルから出力される電圧の変化態様としてのモデル出力電圧と、の対比結果に基づき、前記参照二次電池の劣化度を評価し、
前記第1認識要素が、前記電池劣化度評価要素により評価された前記参照二次電池の劣化度を認識し、
前記第2認識要素が、前記対象二次電池の複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定する
電池状態判定装置。
【請求項5】
請求項4記載の電池状態判定装置において、
前記第1認識要素が、前記参照二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの実測結果を認識し、
前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値の温度依存性を特定し、
前記参照二次電池の前記実測出力電圧に加えて当該参照二次電池の温度の実測結果を認識し、
前記複数のモデルパラメータの値が同定され、かつ、当該複数のモデルパラメータのそれぞれの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流に加えて前記参照二次電池の温度の実測結果が入力された際の前記モデル出力電圧を認識し、
前記第2認識要素が、前記対象二次電池の複素インピーダンスの実測結果に加えて前記対象二次電池の温度の実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定する
電池状態判定装置。
【請求項6】
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識ステップと、
前記第1認識ステップにおいて関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析ステップと、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識ステップと、
前記第2認識ステップにおいて認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析ステップにより定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価ステップと、
を含んでいる
電池状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池の劣化度を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
装置に給電する再充電可能バッテリの劣化状態を推定するための方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。所与のバッテリに対する現在のモデルが、電圧測定値から回帰分析を使用して構築されている。例えば、電圧測定値を指数関数にフィットさせ、指数関数を使用して電圧測定値をフィルタリング除去し、フィルタリングされた電圧測定値を移動平均によって平滑化することにより所与のバッテリに対する現在のモデルが構築される。当該現在のモデルが、フィンガープリントのセットと比較されることによりバッテリの劣化状態が推定される。フィンガープリントは、バッテリに対する定量化された劣化状態が、バッテリの緩和電圧に対する所与のあらかじめ確定されたモデルにリンクされている。所与のあらかじめ確定されたモデルにより、バッテリが休止している間の時間の固定された期間にわたる2つ以上の点においてのバッテリの緩和電圧が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-520641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二次電池の劣化度を目標変数とする回帰分析処理の実行により、二次電池の劣化度の評価精度の向上を図りうる装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電池状態判定装置は、
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析要素と、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識要素と、
前記第2認識要素により認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析要素により定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価要素と、
を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態としての電池状態判定装置の構成に関する説明図。
図2】二次電池の電池状態判定方法の手順を示すフローチャート。
図3】二次電池の複素インピーダンスの測定システムに関する説明図。
図4】二次電池のナイキストプロットに関する説明図。
図5A】二次電池の内部抵抗の等価回路の第1例示説明図。
図5B】二次電池の内部抵抗の等価回路の第2例示説明図。
図6A】IIRシステムの伝達関数を表わすダイヤグラム。
図6B】FIRシステムの伝達関数を表わすダイヤグラム。
図7A】インパルス電流に関する説明図。
図7B】二次電池および二次電池モデルの電圧応答特性に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(電池状態判定装置の構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての電池状態判定装置100は、データベース10、参照機器200および対象機器400のそれぞれとネットワークを介して通信可能な一または複数のサーバにより構成されている。電池状態判定装置100は、参照機器200に電源としている参照二次電池220の劣化度の評価結果に基づき、対象機器400に電源として搭載されている対象二次電池420の劣化度を評価する。
【0008】
電池状態判定装置100は、第1認識要素111と、第2認識要素112と、第1劣化度評価要素121と、第2劣化度評価要素122と、重回帰分析要素130と、情報提供要素140と、を備えている。第1認識要素111、第2認識要素112、第1劣化度評価要素121、第2劣化度評価要素122、重回帰分析要素130および情報提供要素140のそれぞれは、プログラム(ソフトウェア)およびデータを記憶保持する記憶装置(RAM、ROM、EEPROMなどのメモリ、SSD、HDDなど)、当該記憶装置から必要なプログラムおよび/またはデータを読み取ったうえで所定の演算処理を実行する演算処理装置(シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、CPUなど)およびI/O回路等により構成されている。
【0009】
記憶装置には、インパルス電流に対する二次電池220の電圧応答特性の実測結果などの様々なデータのほか、プログラム(ソフトウェア)が記憶保持されている。例えば、二次電池220またはこれが搭載されている参照機器200の種類(規格および諸元により特定される。)を識別するための複数の識別子のそれぞれと、複数の二次電池モデルのそれぞれとが対応付けられてメモリに記憶保持されている。プロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、各要素111、112、121、122、130および140に割り当てられた後述する演算処理またはタスクが実行される。
【0010】
参照機器200は、参照入力インターフェース202と、参照出力インターフェース204と、参照制御装置210と、参照二次電池220と、参照センサ群230と、を備えている。参照機器200は、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、家電製品または電動自転車等の移動体など、参照二次電池220を電源とするあらゆる機器を含んでいる。
【0011】
参照制御装置210は、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。当該メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、参照二次電池220の電圧応答特性の実測結果などの様々なデータが記憶保持される。参照制御装置210は、参照二次電池220から供給電力に応じて作動し、通電状態において参照機器200の動作を制御する。参照機器200の動作には、当該参照機器200を構成するアクチュエータ(電動式アクチュエータなど)の動作が含まれる。参照制御装置210を構成するプロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって割り当てられた演算処理を実行する。
【0012】
参照二次電池220は、例えばリチウムイオンバッテリであり、ニッケル・カドミウム電池等のその他の二次電池であってもよい。参照センサ群230は、参照二次電池220の電圧応答特性および温度のほか、参照機器200の制御に必要なモデルパラメータの値を測定する。参照センサ群230は、例えば、参照二次電池220の電圧、電流および温度のそれぞれに応じた信号を出力する電圧センサ、電流センサおよび温度センサにより構成されている。
【0013】
対象機器400は、対象入力インターフェース402と、対象出力インターフェース404と、対象制御装置410と、対象二次電池420と、対象センサ群430と、を備えている。対象機器400は、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、家電製品または電動自転車等の移動体など、対象二次電池420を電源とするあらゆる機器を含んでいる。
【0014】
対象制御装置410は、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。当該メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、対象二次電池420の電圧応答特性の実測結果などの様々なデータが記憶保持される。対象制御装置410は、対象二次電池420から供給電力に応じて作動し、通電状態において対象機器200の動作を制御する。対象機器400の動作には、当該対象機器400を構成するアクチュエータ(電動式アクチュエータなど)の動作が含まれる。対象制御装置410を構成するプロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって割り当てられた演算処理を実行する。
【0015】
対象二次電池420は、例えばリチウムイオンバッテリであり、ニッケル・カドミウム電池等のその他の二次電池であってもよい。対象センサ群430は、対象二次電池420の電圧応答特性および温度のほか、対象機器400の制御に必要なモデルパラメータの値を測定する。対象センサ群430は、例えば、対象二次電池420の電圧、電流および温度のそれぞれに応じた信号を出力する電圧センサ、電流センサおよび温度センサにより構成されている。
【0016】
電池状態判定装置100は参照機器200および/または対象機器400に搭載されていてもよい。この場合、ソフトウェアサーバ(図示略)が、参照機器200および/または対象機器400が備えている制御装置210および/または410を構成する演算処理装置に対して劣化判定用ソフトウェアを送信することにより、当該演算処理装置に対して電池状態判定装置100としての機能を付与してもよい。
【0017】
(電池状態判定方法)
前記構成の電池状態判定装置100により実行される対象二次電池420の電池状態の判定方法について説明する。
【0018】
(複素インピーダンスの実測結果の認識)
電池状態判定装置100において、第1認識要素111により、さまざまな種類の参照二次電池220の複素インピーダンスZの実測結果が認識される(図2/STEP110)。各要素が情報を「認識する」とは、情報を受信すること、データベース10等の情報源から情報を検索することもしくは読み取ること、他の情報に基づいて情報を算定、推定、同定、予測等することなど、必要な情報を準備するあらゆる演算処理等を実行することを意味する。参照二次電池220の複素インピーダンスZは、交流インピーダンス法により測定され、当該実測結果は参照二次電池220の種類を識別するための識別子と関連付けられてデータベース10に登録される。
【0019】
交流インピーダンス法によれば、図3に示されているように、周波数応答解析装置(FRA)212およびポテンショガルバノスタット(PGS)232の組み合わせが用いられる。FRA212構成する発振器から任意の周波数の正弦波信号が出力され、当該正弦波信号に応じた参照二次電池220の電流信号I(t)および電圧信号V(t)がPGS232からFRA212に入力される。そして、FRA212において、電流信号I(t)および電圧信号V(t)が離散フーリエ周波数変換によって周波数領域のデータに変換され、周波数f=(ω/2π)における複素インピーダンスZが測定される。
【0020】
例えば、参照二次電池220の出荷直前等、参照機器200に搭載されていない状態における参照二次電池220の複素インピーダンスZが測定される。そのほか、参照機器200に搭載されている状態における参照二次電池220としての二次電池220の複素インピーダンスZが測定されてもよい。この場合、参照制御装置210によりFRA212が構成され、参照センサ群230がPGSにより構成されていてもよい。例えば、参照機器200が参照二次電池220の充電のために商用電源等の電源に接続され、当該電源から供給される電力によって正弦波信号が出力されうる。
【0021】
図4には、参照二次電池220の複素インピーダンスZの実測結果を表わすナイキストプロットの一例が、当該プロットの近似曲線とともに示されている。横軸は複素インピーダンスZの実部ReZであり、縦軸は複素インピーダンスZの虚部-ImZである。-ImZ>0の領域においてReZが大きくなるほど低周波数の複素インピーダンスZを表わしている。-ImZ=0におけるReZの値は参照二次電池220の電解液中の移動抵抗に相当する。-ImZ>0の領域における略半円形状の部分の曲率半径は、参照二次電池220の電荷移動抵抗に相当する。当該曲率半径は、参照二次電池220の温度Θが高温になるほど小さくなる傾向がある。-ImZ>0の領域の低周波数領域において約45°で立ち上がる直線状の部分には、参照二次電池220のワールブルグインピーダンスの影響が反映されている。
【0022】
(二次電池モデルを定義するモデルパラメータの同定)
電池状態判定装置100において、第1認識要素111により、参照二次電池220の複素インピーダンスZの実測結果に基づき、二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値が同定される(図2/STEP112)。
【0023】
二次電池モデルは、電流I(t)が参照二次電池220に入力された際に当該参照二次電池220から出力される電圧V(t)を表わすモデルである。参照二次電池220の開放電圧OCVおよび内部抵抗の伝達関数H(t)を用いて関係式(01)により定義される。
【0024】
V(t)=OCV(t)+H(t)・I(t) ‥(01)。
【0025】
ここでOCV(t)は、電流I(t)の充電および/または放電に伴い開放電圧が増減することを表わしている。
【0026】
参照二次電池220の内部抵抗の等価回路モデルの伝達関数H(z)は関係式(02)により定義される。
【0027】
H(t)=HL(t)+HW(t)+Σi=1-mi(t)+H0(t) ‥(02)。
【0028】
「H0(t)」、「Hi(t)」、「HW(t)」および「HL(t)」は、二次電池の内部抵抗の特性を表わすモデルパラメータにより定義されている。
【0029】
図5Aには、参照二次電池220の内部抵抗の等価回路の一例が示されている。この例では、内部抵抗の等価回路は、電解液中の移動抵抗に相当する抵抗R0、電荷移動抵抗に相当する抵抗RiおよびキャパシタCiからなる第iのRC並列回路(i=1,2,‥,m)、ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0、ならびに、コイルLの直列回路により定義されている。直列接続されるRC並列回路の数は、図5Aに示した実施例では「3」であったが、3より小さくてもよく、3より大きくてもよい。抵抗W0は、少なくともいずれか1つのRC並列回路において抵抗Rと直列接続されていてもよい。キャパシタCがCPE(Constant Phase Element)に置換されていてもよい。図5Bに示されているよう、ワールブルグ抵抗Wが少なくとも1つのRC並列回路(図5Bの例では第1のRC並列回路)の抵抗Rと直列接続されてもよい。
【0030】
抵抗R0の伝達関数H0(z)は関係式(10)により定義されている。
【0031】
0(z)=R0 ‥(10)。
【0032】
第iのRC並列回路の伝達関数Hi(z)はIIR(Infinite Impulse Response)システム(無限インパルス応答システム)の伝達関数として関係式(11)により定義されている。図6Aには、第iのRC並列回路の伝達関数Hi(z)を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0033】
i(z)=(bi0+bi1-1)/(1+ai1-1) ‥(11)。
【0034】
ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0の伝達関数HW(z)はFIR(Finite Impulse Response)システム(有限インパルス応答システム)の伝達関数として関係式(12)により定義されている。図6Bには、ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0の伝達関数HW(z)を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0035】
W(z)=Σk=0-nk-k ‥(12)。
【0036】
コイルLの伝達関数HL(z)は関係式(13)により定義されている。
【0037】
L(z)=(2L0/T)(1-z-1)/(1+z-1) ‥(13)。
【0038】
図4に実線で示されているナイキストプロットにより表わされる参照二次電池220の複素インピーダンスZの近似曲線を求める際、関係式(02)にしたがって参照二次電池220の内部抵抗の等価回路モデルの伝達関数H(z)が定義されるという仮定下で求められる。これにより、複数のモデルパラメータR0、ai1、bi0、bi1、hk、L0およびTのそれぞれの値が求められる(関係式(11)、(12)および(13)参照)。開放電圧OCVの測定値により二次電池モデルにおける開放電圧OCVの値が同定される(関係式(01)参照)。そして、当該複数のモデルパラメータのそれぞれの値により二次電池モデルが様々な種類の参照二次電池220について確立される。
【0039】
(参照二次電池の劣化度評価)
参照機器200において、通電状態の参照制御装置210により第1条件が満たされているか否かが判定される(図2/STEP210)。「第1条件」としては、参照機器200において参照入力インターフェース202を通じて指定操作があったこと、参照機器200が参照二次電池220の充電のために外部電源に接続されたことなどの条件が採用される。
【0040】
第1条件が満たされていないと判定された場合(図2/STEP210‥NO)、第1条件の充足性判定処理が再び実行される(図2/STEP210)。第1条件の充足性判定処理(図2/STEP210)は省略されてもよい。
【0041】
第1条件が満たされていると判定された場合(図2/STEP210‥YES)、図7Aに示されているようなインパルス電流I(t)が参照二次電池220に対して入力される(図2/STEP212)。インパルス電流I(t)の波形信号は、電池状態判定装置100および参照機器200の相互通信によって、第2認識要素112により指定されたものであってもよい。例えば、参照機器200が接続された外部電源からの供給電力により、参照機器200に搭載されているパルス電流発生器が駆動されることにより、当該パルス電流発生器において発生されたインパルス電流I(t)が参照二次電池220に対して入力される。インパルス電流発生のための補助電源が参照機器200に搭載されていてもよい。
【0042】
センサ群230の出力信号に基づき、制御装置200により参照二次電池220の電圧応答特性V(t)および温度Θが測定される(図2/STEP214)。これにより、例えば、図7Bに実線で示されているように変化する参照二次電池220の電圧応答特性V(t)が測定される。
【0043】
続いて、参照制御装置210により第2条件が満たされているか否かが判定される(図2/STEP216)。「第2条件」としては、電圧応答特性V(t)を特定するために十分な波形信号が取得されたこと、最後に第1条件が満たされたと判定された第1時点から所定時間が経過した第2時点に至ったこと、参照機器200において参照入力インターフェース202を通じて参照二次電池220の電池劣化度評価の要請があったことなどの条件が採用される。
【0044】
第2条件が満たされていないと判定された場合(図2/STEP216‥NO)、第1条件の充足性判定処理が再び実行される(図2/STEP210)。第2条件の充足性判定処理(図2/STEP216)は省略されてもよい。
【0045】
第2条件が満たされていると判定された場合(図2/STEP216‥YES)、参照二次電池220の電圧応答特性V(t)および温度Θの実測結果が、参照出力インターフェース202を構成する送信装置により参照機器200から電池状態判定装置100に対して送信される(図2/STEP220)。この際、参照二次電池220の種類(規格、諸元)を識別するための識別子IDも参照機器200から電池状態判定装置100に対して送信される。また、電圧応答特性V(t)が測定された際に参照二次電池220に入力されたインパルス電流I(t)を特定するための測定条件情報が参照機器200から電池状態判定装置100に対して送信されてもよい。
【0046】
電池状態判定装置100において、第1認識要素111により、参照二次電池220の電圧応答特性V(t)および温度Θの実測結果が第2実測結果として認識される(図2/STEP120)。
【0047】
第1劣化度評価要素121により、データベース10に登録されている多数の二次電池モデルの中から、第2実測結果に付随する識別子IDおよび第2実測結果に含まれている温度Θの実測結果のそれぞれに関連付けられている一の二次電池モデルが選定される(図2/STEP122)。
【0048】
さらに、第1劣化度評価要素121により、当該選定された二次電池モデルに対して、インパルス電流I(t)が入力される(図2/STEP124)。インパルス電流I(t)は、第1認識要素211により指定された波形信号に基づいて認識されてもよく、参照機器200から電池状態判定装置100に対して送信された測定条件情報に基づいて認識されてもよい。
【0049】
第1劣化度評価要素121により、二次電池モデルから出力される電圧応答特性Vmodel(t)が当該二次電池モデルの出力信号として計算される(図2/STEP126)。これにより、例えば、図7Bに破線で示されているように変化する二次電池モデルの電圧応答特性Vmodel(t)が二次電池モデルの出力信号として計算される。図7Bには、開放電圧OCV(t)の変化態様が一点鎖線で示されている。
【0050】
続いて、第1劣化度評価要素121により、参照二次電池220の電圧応答特性V(t)および二次電池モデルの電圧応答特性Vmodel(t)の対比結果に基づき、当該参照二次電池220の劣化度D(q1)が評価される(図2/STEP128)。例えば、参照二次電池220の電圧応答特性V(t)および二次電池モデルの電圧応答特性Vmodel(t)のそれぞれを表わす曲線の類似度xが計算される。そして、類似度xを主変数とする減少関数fにしたがって、参照二次電池220の劣化度D(q1)=f(x)が計算される。「q1」は参照二次電池220の種類の別を意味する指数である。
【0051】
(重回帰分析)
次に、重回帰分析要素130により、第1認識要素111により関連付けて認識された、複数の参照二次電池220のそれぞれの劣化度D(q1)および複数のモデルパラメータR0、ai1、bi0、bi1、hk、L0およびTのそれぞれの値に基づき、重回帰分析が実行される(図2/STEP130)。
【0052】
具体的には、参照二次電池220の劣化度D(q1)を目的変数とし、複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析が実行されることにより重回帰式が定義される。例えば、二次電池モデルを定義する全てのモデルパラメータ(R0、a11、a21、‥、ai1、‥、am1、b10、b20、‥、bm0、b11、b12、‥、b1m、h1、h2、‥hn、L0、T)から抽出される異なる複数のモデルパラメータ群のそれぞれを構成する複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰式が定義される。複数のモデルパラメータ群のそれぞれは、2以上かつ(3m+n+3)以下または未満の異なるモデルパラメータを構成要素としている。複数の当該重回帰式のそれぞれについて重相関係数または決定係数の値が評価される。そして、当該重相関係数または当該決定係数の値が相対的に大きい一部の重回帰式が選定される。例えば、重回帰分析要素122が、複数の説明変数ai1、bi0、bi1およびhkのうち一部の説明変数を有する一または複数の重回帰式が選定される。
【0053】
(二次電池モデルを定義するモデルパラメータの同定)
さらに、第2認識要素112により、対象二次電池420の複素インピーダンスZの実測結果が認識される(図2/STEP132)。対象二次電池420の複素インピーダンスZは、交流インピーダンス法により測定され、当該実測結果は対象二次電池420の種類を識別するための識別子と関連付けられてデータベース10に登録され、あるいは、対象機器400から電池状態判定装置100に対して送信される。
【0054】
第2認識要素112により、対象二次電池420の複素インピーダンスZの実測結果に基づき、二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値が同定される(図2/STEP134)。この二次電池モデルは、電流I(t)が対象二次電池420に入力された際に当該対象二次電池420から出力される電圧V(t)を表わすモデルである。対象二次電池420の開放電圧OCVおよび内部抵抗の伝達関数H(t)を用いて前記関係式(01)により定義される。
【0055】
(対象二次電池の劣化度評価)
第2電池劣化度評価要素122により、第2認識要素112により同定された複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、重回帰分析要素130により定義された重回帰式にしたがって、対象二次電池420の劣化度D(q2)が評価される(図2/STEP136)。「q2」は対象二次電池420の種類の別を意味する指数である。複数の重回帰式が用いられる場合、当該複数の重回帰式の理論値の平均値、最高値または最低値が対象二次電池420の劣化度D(q2)として評価されてもよい。
【0056】
(対象二次電池の劣化診断情報の生成および提供)
情報提供要素140により、対象二次電池420の劣化度D(q2)に応じた劣化診断情報Info(D(q2))が生成される(図2/STEP138)。情報提供要素140により、劣化診断情報Info(D(q2))が電池状態判定装置100から対象機器400に対して送信される(図2/STEP140)。
【0057】
対象機器400において、対象入力インターフェース401を構成する受信装置により劣化診断情報Info(D(q2))が受信される(図2/STEP222)。対象出力インターフェース402を構成するディスプレイ装置に、劣化診断情報Info(D(q2))が出力表示される(図2/STEP224)。これにより、二次電池220の劣化度D(q2)を示すグラフ表示のほか、「バッテリの劣化度は30%です。あと150日で交換することをおススメします。」といった劣化度D(q2)に応じた対処方法などに関するメッセージがディスプレイ装置に表示される。
【0058】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、参照二次電池220の電圧応答特性V(t)の測定時の温度Θが勘案されたうえで二次電池モデルが選定され、当該参照二次電池220の劣化度D(q1)が評価されたが、他の実施形態として、参照二次電池220の電圧応答特性Vの測定時の温度Θが勘案されずに、種類を表わす識別子q1に基づいて二次電池モデルが選定され、当該参照二次電池220の劣化度D(q1)が評価されてもよい。同様に、前記実施形態では、対象二次電池420の電圧応答特性V(Θ)の測定時の温度Θが勘案されたうえで二次電池モデルが選定され、当該対象二次電池420の劣化度D(q2)が評価されたが、他の実施形態として、対象二次電池420の電圧応答特性V(t)の測定時の温度Θが勘案されずに、種類を表わす識別子q2に基づいて二次電池モデルが選定され、当該対象二次電池420の劣化度D(q2)が評価されてもよい。
【0059】
情報提供要素140により、参照二次電池220の劣化度D(q1)に応じた劣化診断情報Info(D(q1))が生成され、かつ、電池状態判定装置100から参照機器200に対して送信されたうえで、参照機器200において、参照出力インターフェース202を構成するディスプレイ装置に、劣化診断情報Info(D(q1))が出力表示されてもよい。
【0060】
(発明の効果)
本発明に係る電池状態判定装置100およびこれにより実行される電池状態判定方法によれば、参照二次電池220の複素インピーダンスZの実測結果に基づく二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値を説明変数とし、当該二次電池モデルにしたがって評価された劣化度D(q1)を目的変数として、重回帰分析が実行される(図2/STEP130参照)。そして、当該重回帰分析の結果として得られる重回帰式にしたがって、対象二次電池420の劣化度D(q2)が評価される(図2/STEP136参照)。これにより、対象二次電池420の劣化D(q2)の評価精度の向上が図られる。
【符号の説明】
【0061】
10‥データベース、100‥電池状態判定装置、111‥第1認識要素、112‥第2認識要素、121‥第1劣化度評価要素、122‥第2劣化度評価要素、130‥重回帰分析要素、140‥情報提供要素、200‥参照機器、202‥入力インターフェース、204‥出力インターフェース、210‥制御装置、220‥参照二次電池、230‥センサ群、400‥対象機器、402‥入力インターフェース、404‥出力インターフェース、410‥制御装置、420‥対象二次電池、430‥センサ群。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2022-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析要素と、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識要素と、
前記第2認識要素により認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析要素により定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価要素と、
を備え
前記参照二次電池の劣化度が、前記参照二次電池の電圧応答特性および前記二次電池モデルの電圧応答特性の対比結果に基づき、評価される
電池状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池状態判定装置において、
前記重回帰分析要素が、前記二次電池モデルを定義する全てのモデルパラメータから抽出される異なる複数のモデルパラメータ群のそれぞれを構成する複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰式を定義し、複数の当該重回帰式のそれぞれについて重相関係数または決定係数の値を評価し、当該重相関係数または当該決定係数の値が相対的に大きい一部の重回帰式を選定し、
前記電池劣化度評価要素が、前記重回帰分析要素により選定された前記一部の重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する
電池状態判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池状態判定装置において、
前記二次電池モデルが、関係式(10)により定義されている抵抗R0の伝達関数H0(z)と、関係式(11)により定義されているIIRシステムの伝達関数Hi(z)(i=1,2,‥,m)と、関係式(12)により定義されているFIRシステムの伝達関数HW(z)と、の並列結合を含む伝達関数により定義され、
0(z)=R0 ‥(10)、
i(z)=(bi0+bi1-1)/(1+ai1-1) ‥(11)、
W(z)=Σk=0-nk-k ‥(12)、
前記重回帰分析要素が、前記複数のモデルパラメータとしての前記関係式(10)~(12)における係数i1、bi0、bi1およびhkのうち、一部説明変数として有する重回帰式を前記一部の重回帰式として選定する
電池状態判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電池状態判定装置において、
前記第1認識要素が、前記参照二次電池の複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定し、
前記電池劣化度評価要素が、初期状態の前記参照二次電池に対して、インパルス電流が入力された際に当該参照二次電池から出力される電圧の変化態様の実測結果としての実測出力電圧と、前記第1認識要素により前記複数のモデルパラメータの値が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際に当該二次電池モデルから出力される電圧の変化態様としてのモデル出力電圧と、の対比結果に基づき、前記参照二次電池の劣化度を評価し、
前記第1認識要素が、前記電池劣化度評価要素により評価された前記参照二次電池の劣化度を認識し、
前記第2認識要素が、前記対象二次電池の複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定する
電池状態判定装置。
【請求項5】
請求項4記載の電池状態判定装置において、
前記第1認識要素が、前記参照二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの実測結果を認識し、
前記参照二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値の温度依存性を特定し、
前記参照二次電池の前記実測出力電圧に加えて当該参照二次電池の温度の実測結果を認識し、
前記複数のモデルパラメータの値が同定され、かつ、当該複数のモデルパラメータのそれぞれの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流に加えて前記参照二次電池の温度の実測結果が入力された際の前記モデル出力電圧を認識し、
前記第2認識要素が、前記対象二次電池の複素インピーダンスの実測結果に加えて前記対象二次電池の温度の実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定する
電池状態判定装置。
【請求項6】
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識ステップと、
前記第1認識ステップにおいて関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析ステップと、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識ステップと、
前記第2認識ステップにおいて認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析ステップにより定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価ステップと、
を含み、
前記参照二次電池の劣化度が、前記参照二次電池の電圧応答特性および前記二次電池モデルの電圧応答特性の対比結果に基づき、評価される
電池状態判定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明に係る電池状態判定装置は、
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析要素と、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識要素と、
前記第2認識要素により認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析要素により定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価要素と、
を備え
前記参照二次電池の劣化度が、前記参照二次電池の電圧応答特性および前記二次電池モデルの電圧応答特性の対比結果に基づき、評価される
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析要素と、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識要素と、
前記第2認識要素により認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析要素により定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価要素と、
を備え、
前記参照二次電池の劣化度が、前記参照二次電池の電圧応答特性および前記二次電池モデルの電圧応答特性の対比結果に基づき、評価される
電池状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池状態判定装置において、
前記重回帰分析要素が、前記二次電池モデルを定義する全てのモデルパラメータから抽出される異なる複数のモデルパラメータ群のそれぞれを構成する複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰式を定義し、複数の当該重回帰式のそれぞれについて重相関係数または決定係数の値を評価し、当該重相関係数または当該決定係数の値が相対的に大きい一部の重回帰式を選定し、
前記電池劣化度評価要素が、前記重回帰分析要素により選定された前記一部の重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する
電池状態判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池状態判定装置において、
前記二次電池モデルが、関係式(10)により定義されている抵抗R0の伝達関数H0(z)と、関係式(11)により定義されているIIRシステムの伝達関数Hi(z)(i=1,2,‥,m)と、関係式(12)により定義されているFIRシステムの伝達関数HW(z)と、の並列結合を含む伝達関数により定義され、
0(z)=R0 ‥(10)、
i(z)=(bi0+bi1-1)/(1+ai1-1) ‥(11)、
W(z)=Σ m i=1 k-k ‥(12)、
前記重回帰分析要素が、モデルパラメータとしての前記関係式(10)~(12)における係数ai1、bi0、bi1およびhkのうち、一部を説明変数として有する重回帰式を前記一部の重回帰式として選定する
電池状態判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電池状態判定装置において、
前記第1認識要素が、前記参照二次電池の複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定し、
前記電池劣化度評価要素が、初期状態の前記参照二次電池に対して、インパルス電流が入力された際に当該参照二次電池から出力される電圧の変化態様の実測結果としての実測出力電圧と、前記第1認識要素により前記複数のモデルパラメータの値が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際に当該二次電池モデルから出力される電圧の変化態様としてのモデル出力電圧と、の対比結果に基づき、前記参照二次電池の劣化度を評価し、
前記第1認識要素が、前記電池劣化度評価要素により評価された前記参照二次電池の劣化度を認識し、
前記第2認識要素が、前記対象二次電池の複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定する
電池状態判定装置。
【請求項5】
請求項4記載の電池状態判定装置において、
前記第1認識要素が、前記参照二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの実測結果を認識し、
前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの実測結果に基づき、前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値の温度依存性を特定し、
前記参照二次電池の前記実測出力電圧に加えて当該参照二次電池の温度の実測結果を認識し、
前記複数のモデルパラメータの値が同定され、かつ、当該複数のモデルパラメータのそれぞれの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流に加えて前記参照二次電池の温度の実測結果が入力された際の前記モデル出力電圧を認識し、
前記第2認識要素が、前記対象二次電池の複素インピーダンスの実測結果に加えて前記対象二次電池の温度の実測結果に基づき、前記二次電池モデルの前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を同定する
電池状態判定装置。
【請求項6】
同一の仕様で製造された複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度と、前記複数の参照二次電池のそれぞれの内部抵抗特性を表現する二次電池モデルを定義する複数のモデルパラメータのそれぞれの値と、を関連付けて認識する第1認識ステップと、
前記第1認識ステップにおいて関連付けて認識された、前記複数の参照二次電池のそれぞれの劣化度および前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記参照二次電池の劣化度を目的変数とし、前記複数のモデルパラメータを説明変数とする重回帰分析を実行することにより重回帰式を定義する重回帰分析ステップと、
前記複数の参照二次電池のそれぞれと同一の仕様で製造された対象二次電池のインピーダンスの実測結果に基づいた前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値を認識する第2認識ステップと、
前記第2認識ステップにおいて認識された前記複数のモデルパラメータのそれぞれの値に基づき、前記重回帰分析ステップにより定義された前記重回帰式にしたがって、前記対象二次電池の劣化度を評価する電池劣化度評価ステップと、
を含み、
前記参照二次電池の劣化度が、前記参照二次電池の電圧応答特性および前記二次電池モデルの電圧応答特性の対比結果に基づき、評価される
電池状態判定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
H(t)=HL(t)+HW(t)+Σ m i=1 +H0(t) ‥(02)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
W(z)= Σ m i=1 k-k ‥(12)。