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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179425
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】歯科用不透明化剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/831 20200101AFI20221125BHJP
【FI】
A61K6/831
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022082066
(22)【出願日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】21175082
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】コリーナ セルバン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ロスブラスト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン クロリコフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシリキ-カリロイ ストゥルナリ
(72)【発明者】
【氏名】カチャ オット
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン ヴィルトナー
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA02
4C089BA14
4C089BE02
4C089BE03
4C089BE08
4C089BE09
4C089BE14
4C089BE15
4C089BE16
4C089CA03
(57)【要約】
【課題】歯科用不透明化剤組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるために使用できる歯科用不透明化剤組成物に関する。さらに、本発明は、不透明化剤組成物を使用することによって、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度が増加される、歯科用修復物を製造するためのプロセスに関する。本発明は、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるために使用できる歯科用不透明化剤組成物に関する。さらに、本発明は、不透明化剤組成物を使用することによって、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度が増加される、歯科用修復物を製造するためのプロセスに関する。組成物の不透明化効果は、表面近くの酸化物セラミックの領域に限定することができ、薄肉の非常に美的な歯科用修復物においてさえ、変色した残根または暗いインプラントを覆うための望ましい美的効果を達成することを可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ケイ酸アルカリおよび
(b)水
を含む、歯科用不透明化剤組成物であって、
ここで、前記ケイ酸アルカリは前記水に少なくとも部分的に溶解している、歯科用不透明化剤組成物。
【請求項2】
増粘剤、好ましくは有機増粘剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記増粘剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボマー、ペクチン、シリカゾル、デンプン、ゼラチン、アルギネート、およびそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ケイ酸アルカリが、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびそれらの混合物、特にケイ酸ナトリウムから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリビニルピロリドンが、それぞれ重量平均分子量に基づいて、10,000から1,000,000g/molの範囲の分子量を有し、前記ポリエチレングリコールが200から100,000g/molの範囲の分子量を有する、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
0.5から37重量%、好ましくは0.5から20重量%、特に好ましくは1から10重量%のケイ酸アルカリを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
63から99.5重量%、好ましくは80から99.5重量%、特に好ましくは90から99.0重量%の水を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
0から50重量%、好ましくは0.1から50重量%、特に0.2から30重量%、特に好ましくは0.5から20重量%の増粘剤を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
0から30重量%、好ましくは0.1から30重量%、特に0.2から20重量%、特に好ましくは0.5から10重量%のポリビニルピロリドンを含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
0から50重量%、好ましくは0.1から50重量%、特に0.2から30重量%、特に好ましくは0.5から20重量%のポリエチレングリコールを含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
液体の形態、特に溶液の形態で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
7.5から12.5、好ましくは8.5から12.5、特に好ましくは9.5から12の範囲のpH値を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1から100s-1のせん断速度範囲において、1から5,000、好ましくは1から1,000、特に好ましくは1から100mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの少なくとも一部における不透明度を、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物をこの一部に付与し、熱処理を施すことにより、増加させる、歯科用修復物を製造するためのプロセス。
【請求項15】
前記酸化物セラミックが予備焼結される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記熱処理が、前記酸化物セラミックの高密度の焼結を伴う、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
エッチング液による処理が、前記不透明度が増加された前記酸化物セラミックの一部で実施される、請求項14~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記歯科用修復物が、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットである、請求項14~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
歯科用修復物の製造において、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させることができる、歯科用不透明化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ジルコニウムセラミックは、それらの有利な機械的特性により、歯科用修復物の製造に広く使用されている。Yで安定化された正方晶系多結晶に基づく酸化ジルコニウム材料は、歯科用修復物のための出発材料として特に使用される。
【0003】
国際公開第2018/115529A1号にも記載されているように、酸化ジルコニウムの歯科用修復物の製造は、通常、成形工程によって分離された2つの熱高密度化工程を含む。このプロセスにおいて、通常、酸化ジルコニウムの出発材料は、最初に鋳造されるか、圧力を使用して機械的に圧縮されて、次に中間開孔状態に予備焼結してブランクを製造する。このブランクは、例えばCAD/CAMプロセスでの機械加工による、成形または予備成形に適している。次いで、成形されたブランクは、さらなる焼結工程において最終的な熱高密度化を受け得る。
【0004】
歯科用修復物は、機械的特性の観点から高い要件を満たす必要があるだけではない。天然歯の複雑な外観を実物そっくりな様式で模倣することも特に重要である。これは、それぞれのグラジエントおよび3D効果を使用して、半透明性と着色の両方を模倣することを含む。これは、酸化ジルコニウムで作られた歯科用修復物にとって特に課題であり、そのため、特に前歯の領域では、酸化ジルコニウムよりも機械的特性が劣ることが多いにもかかわらず、ケイ酸リチウムガラスセラミックなどの他の材料が好まれる。
【0005】
歯科用診療において、半透明度の高い酸化ジルコニウム修復物は、チタン骨格などの暗いインプラント、または変色した調製された残根に付与されることがある。歯科用修復物の半透明度が高いため、これは、歯科用修復物を通して暗いまたは変色した材料が見える場合、望ましくない光学的効果を生じる可能性がある。この問題は、特に、歯科用修復物の頸部領域など、薄肉での酸化ジルコニウム修復物が使用される場所で発生する。
【0006】
酸化ジルコニウム修復物を通して暗い材料が見えるのを防止するためのさまざまな手順が公知である。
【0007】
例えば、不透明な酸化ジルコニウムの骨格は、最初に複雑な手順で製作され、次にガラスセラミックでうわべを飾られ、もし必要ならば艶出し加工される。
【0008】
浸透溶液などの歯科用不透明化剤の助けで、酸化ジルコニウムセラミックの下にある材料の可視性を低下させるか、完全に防止することも可能である。この目的のために、予備焼結歯科用修復物は、浸透溶液を修復物に付与することによって、または修復物を溶液に浸漬することによって、浸透溶液と接触させられる。浸透溶液は通常、歯科用修復物に白色の着色と不透明度の増加を引き起こし、酸化ジルコニウム修復物を通して暗い材料が輝くのを防止することができる。
【0009】
原則として、浸透溶液は歯科用修復物の内側、すなわち内腔に付与される。歯科用修復物の外側への浸透溶液の付与は、そこに付与された、もしくは付与されることになる着色溶液との望ましくない相互作用が起こり得るか、または着色溶液の使用が完全に防止されるため、不都合である。
【0010】
国際公開第2013/170705A1号は、Pr、Er、CeおよびNdのイオンからなる群から選択される少なくとも2種類の着色イオン、ならびに溶媒および添加剤の組み合わせを含有する着色溶液を開示している。この着色溶液は酸化ジルコニウムセラミックに付与されると、歯科用修復物の光透過率が増加する。つまり、その不透明度が低下する。したがって、着色溶液は、歯科用酸化ジルコニウム修復物を通して暗い材料が見えるのを防止するのには適していない。
【0011】
欧州特許出願公開第3 575 277A1号は、歯科用酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるための液体組成物を記載している。不透明化剤組成物は、水溶性アルミニウムまたはランタン化合物、水および有機溶媒を含有する。しかしながら、例えば欧州特許出願公開第3 575 277A1号から、AlまたはLaでドープすると局所的な焼結特性が変化することが公知である。したがって、製造された歯科用酸化ジルコニウムセラミックの低い焼結歪み、したがって高い適合精度を確保するために、Al含有不透明化剤化合物およびLa含有不透明化剤化合物の使用を避けることが望ましい。
【0012】
国際公開第2019/146908号は、ホワイトニング剤組成物を開示し、これの酸化ジルコニウム歯科用セラミックへの付与は、不透明度も増加させる。ホワイトニング剤は、金属酸化物ナノ粒子および/または金属イオン含有成分、ならびに安定剤を含有する。しかし、金属酸化物ナノ粒子の使用は、多段階の処理が必要なためコストがかかり、またフッ化水素酸の使用によりユーザーに高い健康リスクをもたらす。
【0013】
国際公開第2015/148215A1号は、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるためのリン含有組成物を開示している。しかし、リン含有酸などのリン含有組成物による酸化ジルコニウム材料の処理は、リン酸含有セメントなどの接着剤への結合に悪影響を与えるため、不都合であることが公知である。したがって、歯科用修復物の内面と残根との間の強力な結合を確保するために、歯科用修復物の内面、すなわちその内腔へのホスフェート含有組成物の付与は、可能な限り避けるべきである。しかしながら、変色した残根の可視性を低下させるために不透明化効果が望ましいのは、まさにそこにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2013/170705A1号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3 575 277A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/146908号
【特許文献4】国際公開第2015/148215A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させることができる剤を提供するという問題に基づいている。この剤で処理された酸化ジルコニウムセラミックは、美的外観の観点から有利な特性を示すだけでなく、機械的特性と適合精度の観点からも有利な特性を示すべきである。剤は、薄肉の歯科用修復物にも使用できるようにするべきである。加えて、剤は健康に害がなく、複雑でない処理を可能にするべきである。さらに、剤は、保存中に高い安定性と長期にわたる均質性を有するべきである。
【0016】
この問題は、驚くべきことに、請求項1~13に記載の歯科用不透明化剤組成物によって解決される。本発明はまた、請求項14~18に記載の歯科用修復物を製造するためのプロセス、および請求項19に記載の使用に関する。
【0017】
本発明による歯科用不透明化剤組成物は、
(a)ケイ酸アルカリおよび
(b)水、
を含むことを特徴とし、
ここで、ケイ酸アルカリは水に少なくとも部分的に溶解している。
【0018】
驚くべきことに、本発明による組成物を使用して、Al、La、Zrおよび/もしくはTiのイオンなどの不透明化金属イオン、または例えばAl、Tiおよび/もしくはZrを含有する金属酸化物ナノ粒子を使用しなくても、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックに高い不透明度をもたらすことができることが見出された。
【0019】
組成物の不透明化効果は、表面近くの酸化物セラミックの領域に限定することができ、薄肉の非常に美的な歯科用修復物においてさえ、変色した残根または暗いインプラントを覆うための望ましい美的効果を達成することを可能にする。
【0020】
さらに、驚くべきことに、本発明による組成物は、所望の美的特性に加えて、特に有利な機械的特性も示す、歯科用修復物を製造することを可能にする。不透明化剤組成物で処理されていない、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの範囲における、強度と長期安定性によって特徴づけられる、所望の不透明度特性を有する歯科用修復物を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明による組成物は、所望の不透明度特性だけでなく、高い適合精度によっても特徴付けられる歯科用修復物を得るために使用することもできる。組成物で処理された酸化物セラミックは、最終高密度焼結中の焼結歪みが少なく、有利な焼結挙動を示す。したがって、所望の美的特性を備えた歯科用修復物を得ることができ、準備された残根またはインプラント界面への適合を調整する追加の工程なしで、患者の口に置くこともできる。
本出願は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
(a)ケイ酸アルカリおよび
(b)水
を含む、歯科用不透明化剤組成物であって、
ここで、前記ケイ酸アルカリは前記水に少なくとも部分的に溶解している、歯科用不透明化剤組成物。
(項目2)
増粘剤、好ましくは有機増粘剤を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記増粘剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボマー、ペクチン、シリカゾル、デンプン、ゼラチン、アルギネート、およびそれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物である、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記ケイ酸アルカリが、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびそれらの混合物、特にケイ酸ナトリウムから選択される、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記ポリビニルピロリドンが、それぞれ重量平均分子量に基づいて、10,000から1,000,000g/molの範囲の分子量を有し、前記ポリエチレングリコールが200から100,000g/molの範囲の分子量を有する、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
0.5から37重量%、好ましくは0.5から20重量%、特に好ましくは1から10重量%のケイ酸アルカリを含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
63から99.5重量%、好ましくは80から99.5重量%、特に好ましくは90から99.0重量%の水を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
0から50重量%、好ましくは0.1から50重量%、特に0.2から30重量%、特に好ましくは0.5から20重量%の増粘剤を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
0から30重量%、好ましくは0.1から30重量%、特に0.2から20重量%、特に好ましくは0.5から10重量%のポリビニルピロリドンを含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
0から50重量%、好ましくは0.1から50重量%、特に0.2から30重量%、特に好ましくは0.5から20重量%のポリエチレングリコールを含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
液体の形態、特に溶液の形態で存在する、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
7.5から12.5、好ましくは8.5から12.5、特に好ましくは9.5から12の範囲のpH値を有する、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
1から100s-1のせん断速度範囲において、1から5,000、好ましくは1から1,000、特に好ましくは1から100mPa・sの範囲の粘度を有する、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの少なくとも一部における不透明度を、先行する項目のいずれか一項に記載に記載の組成物をこの一部に付与し、熱処理を施すことにより、増加させる、歯科用修復物を製造するためのプロセス。
(項目15)
前記酸化物セラミックが予備焼結される、先行する項目のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目16)
前記熱処理が、前記酸化物セラミックの高密度の焼結を伴う、先行する項目のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目17)
エッチング液による処理が、前記不透明度が増加された前記酸化物セラミックの一部で実施される、先行する項目のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目18)
前記歯科用修復物が、ブリッジ、インレー、アンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットである、先行する項目のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目19)
歯科用修復物の製造において、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるための、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、高密度焼結酸化ジルコニウムセラミックを示し、左側の酸化ジルコニウムセラミックは実施例3の不透明化剤組成物で処理され、中央の酸化ジルコニウムセラミックは実施例4の不透明化剤組成物で処理され、右側の酸化ジルコニウムセラミックは実施例5の不透明化剤組成物で処理されている。
図2図2は、不透明化剤組成物で処理された予備焼結酸化ジルコニウムセラミックを示す。
図3図3は、実施例1および2について記載された手順に従う高密度焼結酸化ジルコニウムセラミックを示す。
図4図4は、表5に記載の組成物で処理された表面領域の微細構造を示す。
図5図5は、高密度焼結後の実施例9~11の試験片の3D測定の例示的な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるために使用できる歯科用不透明化剤組成物に関する。さらに、本発明は、不透明化剤組成物を使用することによって酸化ジルコニウムセラミックの不透明度が増加される、歯科用修復物を製造するためのプロセスに関する。
本発明の目的のために、用語「不透明化剤組成物」は、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるのに適した組成物を指す。この文脈において、不透明度の増加は、特に、酸化物セラミックが組成物と接触し、加えて熱処理を受けた後に生じる。不透明度の増加は、酸化物セラミックに不透明な層を付与することによってではなく、特に酸化物セラミック自体で発生する。不透明化剤組成物は、好ましくはYで安定化された正方晶多結晶から作られる予備焼結酸化ジルコニウムセラミックの不透明度を増加させるのに特に適している。
【0024】
不透明度は光に対する不透過性であり、半透明度、つまり材料の光透過率と相反関係である。半透明度は、透過光と入射光の強度の比率である。不透明度または半透明度の測定として、英国規格5612に従ってコントラスト値(CR値)を決定することができる。本発明による不透明度の増加は、不透明化剤組成物で処理され、必要に応じて熱処理される、高密度焼結歯科用修復物などの酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの一部において、酸化物セラミックの別の未処理部分と比較して不透明度が増加される場合、存在する。酸化物セラミック全体が組成物で処理されている場合、対応する様式で調製された未処理の酸化物セラミックを使用して、比較値を決定することができる。不透明度の増加は、本出願の目的では「不透明化」とも呼ばれる。
【0025】
本発明の目的のために、用語「色」および「着色された」は、材料の明度および/または明るさを指す。明度および明るさは、L*a*b値によって、特にDIN EN ISO 11664-4に従って、または歯科業界で一般的に使用されるシェードガイドに従って決定され得る。測色は、CM-3700d分光光度計(コニカミノルタ)等の市販の測定器で行うことができる。シェードガイドの例としては、VITA Zahnfabrik H. Rauter GmbH & Co. KG製のVitapan classical(登録商標)およびVita 3D Master(登録商標)、ならびにIvoclar Vivadent AG製のChromascop(登録商標)がある。
【0026】
いかなる理論にも限定されるものではないが、不透明化剤組成物が付与された後、酸化物セラミック中の酸化物セラミック粒上に薄いガラス相が形成され得ると考えられる。不透明度の増加は、酸化物セラミック相とガラス相の屈折率の違いによるものと考えられる。
【0027】
ケイ酸アルカリは、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびそれらの混合物、ならびに特にケイ酸ナトリウムから選択されることが好ましい。
【0028】
好ましくは、ケイ酸アルカリは、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラスまたはリチウム水ガラス、および特にナトリウム水ガラス、の形態であり得る。本発明の目的のために、ナトリウム水ガラスは、ケイ酸ナトリウムおよび必要に応じて他のケイ酸アルカリを含む水ガラスであり、ケイ酸ナトリウムがシリケートの最大重量割合を表す。したがって、カリウム水ガラスおよびリチウム水ガラスは、それぞれケイ酸カリウムおよびケイ酸リチウムの主な重量割合を有する。好ましくは、ナトリウム水ガラスの密度は1.34から1.38g/cmであり、カリウム水ガラスの密度は1.23から1.27g/cm、特に1.25g/cmであり、リチウム水ガラスの密度は1.16から1.20g/cm、特に1.18g/cmである。
【0029】
好ましい実施形態において、組成物は、0.5から37重量%、好ましくは0.5から20重量%、より好ましくは1から10重量%のケイ酸アルカリを含む。
【0030】
不透明化剤組成物中に存在するケイ酸アルカリは、例えば、X線蛍光分析(XRF)、Si-NMR、13C-NMR、原子吸光分析法(AAS)またはラマン分光法によって、必要に応じて、乾燥または結晶化された不透明化剤組成物のpH測定、着火残留物分析または走査型電子顕微鏡分析などのさらなる間接分析と組み合わせることによって、定性的に検出または定量的に決定することができる。
【0031】
さらに好ましい実施形態において、組成物は、0.001から10重量%、好ましくは0.001から8重量%、特に0.001から5重量%のSi(SiOとして計算)、および0.0001から10重量%、好ましくは0.001から8重量%、特に0.01から5重量%のアルカリ金属(アルカリ金属酸化物として計算)を含む。
【0032】
組成物は、63から99.5重量%、好ましくは80から99.5重量%、より好ましくは90から99.0重量%の水を含むことがさらに好ましい。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、組成物中のケイ酸アルカリと水との重量比は、1:200から1:6、特に1:100から1:8の範囲である。
【0034】
ケイ酸アルカリが水に完全に溶解していることがさらに好ましい。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、ケイ酸アルカリは水ガラスの形態で存在し、ここで、Si(SiOとして計算)と、アルカリ金属(アルカリ金属酸化物として計算)との重量比は、1から6、好ましくは1.5から6、特に好ましくは2から6である。
【0036】
別の好ましい実施形態において、本発明による組成物は、増粘剤、好ましくは有機増粘剤を含む。
【0037】
増粘剤は、溶液、好ましくは水溶液の粘度を増加させることができる剤であると理解される。
【0038】
増粘剤の添加は、不透明化剤組成物が酸化ジルコニウムセラミックにどれだけ深く浸透するかに影響を与える可能性があることを見出した。これは、組成物の不透明化効果が表面近くの領域に限定される場合に特に有利である。このようにして、変色した残根や暗いインプラントの被覆は、修復物の外側に望ましくない美的影響を伴わない薄肉の歯科用修復物でも達成され得る。
【0039】
好ましい実施形態において、増粘剤は多糖類である。増粘剤が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボマー、ペクチン、シリカゾル、デンプン、ゼラチン、アルギネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されることがさらに好ましく、特に好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物である。特に好ましくは、増粘剤はポリビニルピロリドンである。
【0040】
ポリビニルピロリドンは、いずれの場合も重量平均分子量に基づいて、10,000から1,000,000g/molの範囲の分子量を有し、ポリエチレングリコールは200から100,000g/molの範囲の分子量を有することが好ましい。
【0041】
10,000から500,000g/mol、特に10,000から100,000g/molの重量平均分子量を有するポリビニルピロリドンが特に好ましい。
【0042】
ポリビニルピロリドンを使用すると、本発明による組成物の透明な溶液の調製が著しく容易になることが見出された。特に、ポリビニルピロリドンを使用すると、組成物をより迅速に調製して透明な溶液を得ることができ、超音波浴の使用などの広範な溶解および混合手順を省略することもできる。
【0043】
ポリビニルピロリドンの使用は、本発明による組成物の安定性に関しても有利であることが証明された。ポリビニルピロリドンの使用により、相分離または沈殿などの組成物の保存の悪影響を回避することができる。
【0044】
特に、ポリビニルピロリドンを含有する組成物は、他の増粘剤を含有する組成物と比較して、望ましくない濁りおよび凝集を形成しにくいことが示されている。このような濁りや凝集は肉眼で見ることができるので、例えば組成物を観察することにより、それらの形成をモニターすることができる。
【0045】
200から50,000g/mol、特に200から35,000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0046】
組成物は、0から50重量%、好ましくは0.1から50重量%、特に0.2から30重量%、特に好ましくは0.5から20重量%の増粘剤を含むことが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態において、組成物は、0から30重量%、好ましくは0.1から30重量%、特に0.2から20重量%、特に好ましくは0.5から10重量%、さらに好ましくは0.5から6重量%のポリビニルピロリドンを含む。
【0048】
さらに好ましい実施形態において、組成物中の増粘剤、特にポリビニルピロリドンと水との重量比は、1:200から1:10、特に1:100から1:12、特に好ましくは1:50から1:15の範囲である。
【0049】
組成物中の増粘剤、特にポリビニルピロリドンとケイ酸アルカリとの重量比が、1:20から5:1、特に1:15から1:4の範囲であることも好ましい。
【0050】
別の好ましい実施形態において、組成物は、0から50重量%、好ましくは0.1から50重量%、特に0.2から30重量%、特に好ましくは0.5から20重量%のポリエチレングリコールを含む。
【0051】
不透明化剤組成物の浸透深度は、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールなどの増粘剤の割合、ならびに増粘剤の特性によって影響を受ける可能性があることが示されている。原則として、例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールの割合が高く、ならびにこれらの成分の分子量が高いと、浸透深度が低くなり、観察者に対する不透明化効果が低下する可能性がある。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明による不透明化剤組成物は、有機溶媒を、好ましくは0.5から30重量%、特に1から20重量%の量でさらに含む。適切な有機溶媒は、特に水と混和性であり、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、エチレングリコール、アセトン、1,4-ジオキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。不透明化剤組成物の有利な湿潤特性および乾燥特性は、例えば、有機溶媒の添加によってもたらされ得る。
【0053】
好ましい実施形態において、組成物は金属酸化物ナノ粒子を実質的に含まない。組成物がAl、La、Zr、PおよびTiを実質的に含まないことがさらに好ましい。
【0054】
不透明化剤組成物が識別色を含むことがさらに好ましい。本発明の目的のために、識別色は、高密度焼結酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの色に重大な影響を与えることなく、組成物に着色効果を有する剤である。好ましい識別色は、有機染料、特にパテントブルーV(E131)などのトリフェニルメタン染料である。識別色は、予備焼結酸化物セラミック上の本発明による組成物の可視性を改善し、それによって組成物の正確な付与を容易にすることができる。
【0055】
本発明による組成物は、液体の形態、特に溶液の形態であることがさらに好ましい。これにより、例えば、ブラシまたは適切なアプリケーターを用いての、酸化物セラミックへの付与が容易になる。特に好ましくは、組成物は、一定の不透明化効果を確保するために均質な液体の形態である。
【0056】
組成物は、7.5から12.5、好ましくは8.5から12.5、特に好ましくは9.5から12の範囲のpH値を有することが特に好ましい。このようにして、不透明化剤組成物のユーザーにおける酸性またはアルカリ性熱傷のリスクが低減される。特に、12.5を超えるpH値を有する先行技術からの公知である不透明化剤組成物と比較して、歯科技工士および歯科医の職業上の安全性が改善されている。
【0057】
別の好ましい実施形態において、組成物は、室温で、すなわち23℃の温度で、1から100s-1のせん断速度範囲で、1から5,000、好ましくは1から1,000、特に好ましくは1から100mPa・sの範囲の粘度を有する。粘度は、例えば、Anton Paar GmbH製のMCR302型のレオメーターで、CP50測定システム(直径50mmのコーンプレート)を使用して決定され得る。典型的には、言及された範囲内の粘度を有する組成物は、加工性の観点から特に有利な特性を有する。
【0058】
本発明はさらに、歯科用修復物を製造するためのプロセスに関し、不透明度は酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックの少なくとも一部に、上記の本発明による組成物をこの一部に付与し、および、熱処理を施すことによって増加される。
【0059】
好ましくは、熱処理は、好ましくは1000から1700℃、特に1000℃から1600℃、より好ましくは1000から1500℃の温度で、少なくとも1分間、特に少なくとも10分間行われる。
【0060】
組成物が酸化物セラミック中に1から2000μm、特に2から1000μm、特に好ましくは5から500μmの深さまで浸透することが好ましい。浸透深度は、酸化物セラミックを組成物で処理し、それに熱処理を施し、次いで例えばのこぎりを使用して分割し、その後、組成物が酸化物セラミックに、顕微鏡(例えば、オリンパス SZX10)を使用して、分割によってアクセス可能になっている表面上にどの程度浸透したかを測定することによって決定することができる。
【0061】
製作される歯科用修復物の内腔に不透明化剤組成物を付与することも好ましい。
【0062】
好ましい実施形態において、不透明度は、バリア剤が予め付与され、必要に応じて乾燥された酸化物セラミックの少なくとも一部において増加される。バリア剤とは、酸化物セラミックへの付与および必要に応じて乾燥後に、酸化物セラミック中の不透明化剤組成物の浸透深度を減少させることができる剤を意味する。原則として、バリア剤は、不透明化剤組成物の浸透を妨げるバリア層を酸化物セラミック中に形成する。
【0063】
好ましい実施形態において、バリア剤は、溶媒、特に有機溶媒、およびその中に分散されたポリマー、特に増粘剤、および必要に応じて識別色を含む。適切な増粘剤は、不透明化剤組成物について述べたものである。
【0064】
別の好ましい実施形態において、本発明による同じ組成物または異なる組成物が、不透明化剤組成物が付与された酸化物セラミックの少なくとも一部の領域に再び付与される。好ましくは、繰り返し付与する前に、本発明による同じまたは異なる組成物を再び付与する前に、組成物を最初に乾燥させる。不透明化剤組成物を複数回付与することにより、必要に応じて異なる浸透深度などの異なる特性を持つ組成物を選択することと組み合わせて、複雑な三次元不透明度グラジエントを生成することもできる。
【0065】
酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックは、本発明による組成物が付与される場合、未焼結または予備焼結状態であることができる。酸化物セラミックが予備焼結されることが特に好ましい。予備焼結された酸化物セラミックは、通常、高密度焼結酸化物セラミックの密度の好ましくは30から70%、特に40から65%の密度を有する開孔状態で存在する。通常、予備焼結酸化物セラミックの密度が低いほど、不透明化剤組成物の浸透深度がより大きくなることが伴う。
【0066】
特に好ましい実施形態において、熱処理は、酸化物セラミックの高密度焼結を伴う。
【0067】
通常、高密度焼結により、望ましい特性を備えた歯科用修復物が得られる。本発明による組成物によって不透明度が増加された酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックは、焼結歪みが少なく有利な焼結挙動を示すことが示された。
【0068】
本発明によるプロセスは、有利な機械的特性を有する歯科用修復物を製造することを可能にする。
【0069】
好ましくは、本発明のプロセスに従って製造された高密度焼結歯科用修復物は、ISO 6872:2015に従って決定された、少なくとも500MPa、特に少なくとも600MPa、特に好ましくは少なくとも700MPaの二軸破壊強度を有する。
【0070】
本発明のプロセスに従って製造された高密度焼結歯科用修復物は、ISO 6872:2015に従って、それぞれのケースで、不透明化剤組成物で処理されていない対応する高密度焼結歯科用修復物の二軸破壊強度に基づいて決定された、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも95%の二軸破壊強度を有することも好ましい。
【0071】
本発明のプロセスに従って調製された高密度焼結歯科用修復物が高い長期安定性を示すこともまた好ましい。特に好ましくは、高密度焼結歯科用修復物は、歯科用修復物が少なくとも450N、好ましくは少なくとも550N、特に好ましくは少なくとも650Nで、DYNA-MESS Prufsysteme GmbH製の5kN servopneumatic 2 カラム卓上試験機、37℃の温水で 5 Hz の正弦波周波数 (予荷重は主荷重の10%)を使用して、2,000,000試験サイクル荷重される疲労試験に合格することを特徴とする。
【0072】
本発明のプロセスに従って製造された歯科用修復物は、任意の公知の方法(例えば、セメンティング、ボンディング、またはねじ込み)、残根またはインプラントの骨格に取り付けることができる。
【0073】
残根またはインプラント表面への結合を強化するために酸化ジルコニウムの表面を前処理するための化学的および機械的方法は、先行技術から公知である。
【0074】
プロセスの好ましい実施形態において、エッチング液による処理は、酸化物セラミックの不透明度が増加された酸化物セラミックの一部で実施される。処理は、不透明化部分の一部で行うことができ、酸化物セラミックの非不透明化部分にまで及び得る。驚くべきことに、エッチング液での処理は、不透明化剤組成物で処理された領域における残根またはインプラントとの結合の改善にもつながることが示されている。
【0075】
特に好ましい実施形態において、エッチング液はフッ化水素酸を含む。
【0076】
プロセスの別の好ましい実施形態において、歯科用修復物は、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットである。
【0077】
本発明はさらに、歯科用修復物の製造において、酸化物セラミック、特に酸化ジルコニウムセラミックにおける不透明度を増加させるための、本発明による歯科用不透明化剤組成物の使用に関する。
【0078】
本発明による不透明化剤組成物およびプロセスに関連して記載されたすべての組成定義、プロセスステップおよびプロセスパラメータも、本発明によるこの使用に適している。
【0079】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【実施例0080】
実施例1および2:本発明による不透明化剤組成物。
【0081】
溶液を、表1による化学組成物で調製した。
表1
【表1】
【0082】
Carl Roth GmbH製の純度クラス「超高純度」のナトリウム水ガラス(製造業者によれば、ケイ酸ナトリウム以外に他のケイ酸アルカリをまったく含まない)、およびLuviskol(登録商標)K30の名前で販売されているBASF SE製の純度クラス「超高純度」のポリビニルピロリドン(PVP)K30を、これらおよび以下の実施例の調製に使用した。製造業者によると、Luviskol(登録商標)K30は、K値(Fikentscherよる、水中1%)が27.0から33.0で、重量平均分子量が約49,000g/molのポリビニルピロリドンで構成される。表1およびそれに続くすべての表および各成分の組成に示される重量%での含有量は、製造業者の仕様書に対応する。
【0083】
歯科用のクラウンの形態における2つの予備焼結酸化ジルコニウムセラミックを提供した。実施例1および2の溶液をブラシで各クラウンの内面に付与し、風乾した。その後、クラウンは、Ivoclar Vivadent AG製のProgramat S1-1600炉内で1500℃で120分間高密度に焼結した。
【0084】
高密度焼結後、溶液で処理された表面領域の両方のクラウンで不透明性が観察され、溶液で処理していない領域と比較して増加した。
実施例3から5:PVP K30、K90およびK360を含む不透明化剤組成物
【0085】
不透明化剤組成物を、表2による化学組成物で調製した。
表2
【表2】
【0086】
3つの予備焼結酸化ジルコニウムセラミックを歯科用のクラウンの形態で提供し、次に実施例3から5の不透明化剤組成物で処理し、実施例1および2について記載した手順に従って熱処理を施した。
【0087】
高密度焼結酸化ジルコニウムセラミックを図1に示し、左側の酸化ジルコニウムセラミックを実施例3の不透明化剤組成物で処理し、中央の酸化ジルコニウムセラミックを実施例4の不透明化剤組成物で処理し、右側の酸化ジルコニウムセラミックを実施例5の不透明化剤組成物で処理した。観察者にとって、実施例3による、すなわちポリビニルピロリドンK30を使用した組成物の不透明化効果が最も強いことが分かる。
実施例6:識別色を伴う不透明化剤組成物
【0088】
表3による化学組成物を有する溶液を調製し、最大4層で小板形状の予備焼結酸化ジルコニウムセラミックに付与した。
表3
【表3】
【0089】
不透明化剤組成物で処理された予備焼結酸化ジルコニウムセラミックを図2に示す。識別色の追加により、不透明化剤組成物で処理された酸化ジルコニウムセラミックの領域は、未処理の領域と明確に区別できた。
【0090】
酸化ジルコニウムセラミックを、実施例1および2に記載の手順に従って高密度に焼結した。高密度焼結酸化ジルコニウムセラミックの不透明度は、未処理領域と比較して、不透明化剤組成物で処理された領域で増加した。これは、図3に示す酸化ジルコニウムセラミックからも明らかである。
実施例7:不透明化剤溶液の浸透深度の決定
【0091】
小板形状の予備焼結酸化ジルコニウムセラミックを提供し、約3μlの不透明化剤溶液を酸化ジルコニウムセラミックに付与することにより、表4による化学組成物を有する不透明化剤溶液で処理した。
表4
【表4】
【0092】
酸化ジルコニウムセラミックを、実施例1および2に記載の手順に従って高密度に焼結し、次いで、不透明化剤溶液の浸透深度を決定できるように切断した。オリンパス SZX10顕微鏡を使用した測定では、0.14mmの浸透深度を得た。
実施例8:SEMによる微細構造の分析
【0093】
予備焼結酸化ジルコニウムセラミックを、表5による不透明化剤組成物で処理した。
表5
【表5】
【0094】
酸化ジルコニウムセラミックを、実施例1および2に記載の手順に従って高密度に焼結した。続いて、酸化ジルコニウムセラミックの微細構造を走査型電子顕微鏡法(SEM)によって調べた。表5による組成物で処理した表面領域の微細構造を図4に示す。酸化ジルコニウムセラミックの構造は小さな粒径によって特徴付けられることが分かる。さらに穴も見られない。
実施例9から11:二軸破壊強度を測定するための試験片
【0095】
ISO 6872:2015に従って二軸破壊強度を決定するために、厚さ1.2mmおよび直径13.0mmの円盤状の試験片を予備焼結酸化ジルコニウムから製作した。
【0096】
65.37重量%のHO、18.247重量%のPVP K30、16.343重量%のエタノール、および0.04重量%のパテントブルーV(E131)を含有するバリア剤を、実施例10および11の試験片に付与し、乾燥した。
【0097】
表6による化学組成物で3つの不透明化剤溶液を調製した。
表6
【表6】
【0098】
各試験片に3μlの不透明化剤組成物を付与することにより、5つの試験片をそれぞれ実施例9から11の不透明化剤組成物で処理した。すべての試験片を高密度に焼結し、3つの同心円状に配置したボールに置き、破損するまで中央に荷重を加えた。
【0099】
実施例9から11の試験片の平均二軸破壊強度を表7に示す。
表7
【0100】
高密度焼結後、実施例9から11の試験片には変形は見られなかった。説明の目的のために、試験片を、光学3Dスキャナー(GOM GmbH製のモデル ATOS Capsule)を使用して3D測定を施した。3D測定の結果の例を図5に示す。
実施例12:疲労試験
【0101】
4つの3ユニット後部ブリッジを、酸化ジルコニウム(Ivoclar Vivadent AG製のe.max ZirCAD)から製作した。ブリッジは、壁の厚さが0.6mmで、コネクタの断面が約3mm×3mmであった。
【0102】
本発明による不透明化剤組成物は、21.37gのHO、1.125gのPVP K30および2.5gのナトリウム水ガラス(33.6から37重量%溶液)から調製した。組成物を、2つの後方ブリッジの内腔表面全体に付与した。残りの2つの後部ブリッジの表面には、不透明化剤組成物を付与しなかった。4つの後部ブリッジはすべて高密度に焼結した。
【0103】
次に、最初に後部ブリッジの内面と残根の上部表面をサンドブラストによって機械的に粗面化し、次にそれらを自己硬化ガラスアイオノマーセメント(Ivoclar Vivadent AG 製の Vivaglass CEM)で一緒に結合することにより、後部ブリッジをポリメチルメタクリレート(PMMA)残根に取り付けた。
【0104】
次に、後部ブリッジを、37℃の温水中、5Hzの正弦波周波数(予荷重は主荷重の10%)で550Nで2,000,000サイクル荷重で、DYNA-MESS Pruefsysteme GmbH製のサーボ空気式2カラム卓上試験機5kN(2カラム卓上試験機5kN)で疲労試験を施した。
【0105】
不透明化剤組成物で処理した2つの後部ブリッジと、不透明化剤組成物で処理していない2つのブリッジの両方が、疲労試験の完了後に目に見える損傷を示さなかった。
実施例13および14:組成物の均質性
【0106】
表8による化学組成物を有する2つの不透明化剤組成物を調製した。この目的のために、まずナトリウム水ガラスを室温で約15分間、水で均質化した。次いで、増粘剤を添加し、別の均質化工程を実施した。均質化のために、400から600rpmの速度のマグネチックスターラーを使用した。
表8
【表8】
【0107】
組成物を、それらの調製直後に均質性について綿密に検査した。次いで、組成物を室温で保存し、数週間にわたって均質性について定期的に再検査した。
【0108】
実施例14の組成物では、その調製直後から凝集が観察され、保存時間が経過するにつれて形成される凝集物の量が目に見えて増加した。凝集物はバイアルの底に沈んだ。
【0109】
一方、実施例13の組成物は、製造直後は透明であり、凝集は観察されなかった。最初の凝集物は、2週間超経過した後にしか見えず、凝集は実施例14の組成物よりもかなり遅かった。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】