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特開2022-17943薄型フィルムおよび薄型フィルムを備える転写シート
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  • 特開-薄型フィルムおよび薄型フィルムを備える転写シート 図1
  • 特開-薄型フィルムおよび薄型フィルムを備える転写シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017943
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】薄型フィルムおよび薄型フィルムを備える転写シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220119BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20220119BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B7/06
B32B27/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120813
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 優一郎
(72)【発明者】
【氏名】森島 菜摘
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA43
4F071AA81
4F071AC05
4F071AC16
4F071AE08
4F071AE22
4F071AF53
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC02
4F071BC12
4F100AH01A
4F100AH02A
4F100AH03A
4F100AH06A
4F100AJ02B
4F100AK00A
4F100AK41A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA11A
4F100CA12A
4F100DG10B
4F100DG15B
4F100EC04A
4F100EH46A
4F100GB66
4F100GB71
4F100JA07A
4F100JC00A
4F100JD16A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明は、嗜好の多様化に対応可能とした薄型フィルムおよび転写シートを提供することを目的とする。
【解決手段】前記薄型フィルム10は少なくとも高分子化合物で形成される薄型フィルムであって、単位面積当たり質量が0.1g/m以上5.0g/m以下であり、香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方の機能成分を含み、当該少なくとも一方の機能成分の揮発制御材料12を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高分子化合物で形成される薄型フィルムであって、
前記薄型フィルムは、
単位面積当たり質量が0.1g/m以上5.0g/m以下であり、
香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方の機能成分を含み、
前記少なくとも一方の機能成分の揮発制御材料を含むこと
を特徴とする薄型フィルム。
【請求項2】
前記揮発制御材料がシロキサン結合を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の薄型フィルム。
【請求項3】
前記薄型フィルムは、生体適合材料を含むこと
を特徴とする請求項1または2に記載の薄型フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薄型フィルムと、
前記薄型フィルムを支持する支持基材と、を備えること
を特徴とする転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型フィルムおよび薄型フィルムを備える転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
数μm以下の厚さを有する薄型フィルムは、生体の皮膚等の被着体の表面形状に対する高い追従性を有するため、接着剤や粘着剤を用いずとも被着体に密着する。こうした薄型フィルムを、スキンケアやメイクアップ等の美容用途や、創傷の治癒等の医療用途に用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-19116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、美容用品および医療用品、さらには生活用品として薄型フィルムを広く普及させるためには、嗜好の多様化に対応することが薄型フィルムにおいて新たに求められる。
【0005】
そこで本発明は、嗜好の多様化に対応可能とした薄型フィルム、転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による薄型フィルムは、少なくとも高分子化合物で形成される薄型フィルムであって、前記薄型フィルムは、単位面積当たり質量が0.1g/m以上5.0g/m以下であり、香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方の機能成分を含み、前記少なくとも一方の機能成分の揮発制御材料を含むことを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様による転写シートは、前記薄型フィルムと、前記薄型フィルムを支持する支持基材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄型フィルムにおいて、嗜好の多様化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による薄型フィルムの断面構造を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態による転写シートの断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、薄型フィルムおよび転写シートの一実施形態を説明する。
近年、嗜好の多様化の一例として、においに関する製品が多く販売されている。例えば、香水、パルファム、オーデパルファム等の人体に用いられるフレグランスや、ルームフレグランス等の様々な形態で、芳香を放つ製品が提供されている。芳香を放つ製品には、天然香料や合成香料が含有されている。
また一方で、体臭や生活臭のような不快な臭いを除去する目的の製品も提供されている。臭いを除去するための製品では、例えば、特定の臭い成分を化学的に分解する化学的消臭法や、特定の臭い成分を包摂あるいは吸着することで臭い成分が拡散することを防ぐ物理的消臭法が用いられている。また、臭いを除去するための製品では、特定の臭いを放つ細菌の繁殖を抑制(抗菌)する生物的消臭法や、マスキングやペアリングのように他の香りを利用して臭いを感じなくさせる感覚的消臭法も用いられている。
【0011】
しかしながら、上述のようなにおいに関する製品の多くは液状である。このため、芳香や消臭のための成分が外部へと揮発しやすい。また、スプレーによって液状の製品を皮膚に吹きかけて用いる場合には、汗等によって上記成分が流れてしまうことや、衣服と皮膚とが擦れたときに上記成分が衣服に転移してしまうことが起こる。更に、香料成分は付着させた箇所から芳香を発することが主たる機能であることから、揮発性が高い。同様に抗菌成分についても、広く使用されているイソプロピルメチルフェノールのように、揮発性の高い成分が多い。香料成分や、抗菌成分のように揮発性が高い成分は、多量に配合することで、皮膚表面等への塗布直後には、香料成分の場合、過度に強い芳香を放つことで却って不快感を覚えることや、抗菌成分の場合、刺激性により肌荒れを引き起こしてしまうなどの問題が起こりうる。このような状況から、においを扱う新たな態様の製品が求められている。本実施形態では、薄型フィルムに、においに関する機能を付与している。これにより、においを扱う新たな製品として、嗜好の多様化に対応した薄型フィルムを提供することができる。
【0012】
[薄型フィルムの基本構成]
図1に示すように、薄型フィルム10は、被着体に貼り付けられる第1面11Fと、第1面11Fと反対側の面である第2面11Rとを備えている。薄型フィルム10が被着体に貼り付けられたときに、第1面11Fは被着体との接着面となり、第2面11Rは被着体とは反対側に位置する最外面となる。薄型フィルム10は、少なくとも高分子化合物を含んで形成される。薄型フィルム10は、機能成分として香料成分や抗菌成分を保持する層を含む1以上の層から構成されていればよい。ここで、抗菌成分とは、特定の臭いを放つ細菌の繁殖を抑制(抗菌)する成分を示す。また、詳しくは後述するが、薄型フィルム10は、機能成分の揮発を制御する揮発制御材料12を含んでいる。
【0013】
薄型フィルム10は、当該フィルム単独で被着体に対する接着性を発現する程度に薄く、言い換えれば、上記接着性を発現する程度に、単位面積当たりの質量が小さい。具体的には、薄型フィルム10の単位面積当たりの質量は、0.1g/m以上5.0g/m以下の範囲内である。単位面積当たりの質量が5.0g/m以下であれば、被着体の表面形状に対する薄型フィルム10の追従性が良好に得られるため、薄型フィルム10と被着体との密着性が高められる。また、被着体が皮膚である場合、単位面積当たりの質量が5.0g/m以下であれば、薄型フィルム10の貼付部分にて皮膚が引っ張られるような感覚を使用者が覚えにくい。
【0014】
また、単位面積当たりの質量が0.1g/m以上であれば、薄型フィルム10の強度が良好に得られるため、薄型フィルム10に破れ等の欠陥が発生しにくくなる。また、単位面積当たりの質量が0.1g/m以上であれば、連続した膜状に薄型フィルム10を形成することが容易である。
【0015】
なお、上記単位面積当たりの質量は、平面視にて1mの面積を有する部分あたりに換算した薄型フィルム10の質量である。単位面積当たりの質量は、例えば、複数の測定領域で測定された質量の平均値から換算すること、あるいは、薄型フィルム10の膜厚の平均値に薄型フィルム10の密度を乗算することによって求められる。薄型フィルム10の密度は、例えば、1g/cm以上3g/cm以下の範囲内である。
【0016】
[高分子材料]
薄型フィルム10を構成する高分子材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリシロキサン類、セルロースやキチンやキトサン等の多糖類、カゼイン等の各種のたんぱく質、ゴム、これらの高分子化合物の誘導体、変性体、共重合体、混合物が挙げられる。薄型フィルム10を構成する高分子材料は、後述する機能成分である香料成分または抗菌成分や、その他の任意の添加材料、被着体との親和性、膜の硬度や伸び等の物性等を考慮して適宜選択して用いればよい。また、被着体が生体である場合には、薄型フィルム10を構成する高分子材料は生体適合性を有する生体適合材料であることが好ましい。つまり、薄型フィルム10は、生体適合材料を含んでもよい。生体適合材料には、例えば生体適合性樹脂がある。生体適合性樹脂としては、例えばポリ乳酸、ポリカプロラクトン、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の高分子材料、これらの高分子材料の共重合体、アクリルウレタン共重合体等が挙げられる。
【0017】
[機能成分]
本実施形態による薄型フィルム10は、機能成分として香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方を含む。薄型フィルム10が香料成分を含むことにより、薄型フィルム10から芳香が放たれる。また、薄型フィルム10が抗菌成分を含むことにより、薄型フィルムが貼り付けられた被着体において細菌の繁殖が抑えられ、その結果、細菌に起因した臭いの発生が抑えられる。また、薄型フィルム10が香料成分および抗菌成分の両方を含むことにより、薄型フィルム10から芳香が放たれ、かつ被着体において細菌に起因した臭いの発生を抑えることができる。
【0018】
薄型フィルム10の全体の質量に対する、薄型フィルム10に含まれる各機能成分の総質量の割合は、50ppm(0.005%)以上30%以下であることが好ましい。機能成分の質量の割合が50ppm以上であれば、機能成分による効果を良好に得られ、また、機能成分による効果の持続性も良好に得られる。具体的には、薄型フィルム10に含まれる香料成分が50ppm以上であれば、芳香効果を良好に得られ、かつ芳香効果の持続性も良好に得られる。また、薄型フィルム10に含まれる抗菌成分が50ppm以上であれば、抗菌効果を良好に得られ、かつ抗菌効果の持続性も良好に得られる。
【0019】
また、機能成分の質量の割合が30%以下であれば、機能成分による効果が過剰になることを抑制することができる。例えば、香料成分の質量の割合が30%以下であれば、芳香が強くなりすぎることが抑えられる。また、機能成分である香料成分、抗菌成分それぞれの質量の割合が30%以下であれば、被着体が生体である場合に、各機能成分が生体に与える刺激を抑えられる。
【0020】
[香料成分]
薄型フィルム10において、香料成分としては、芳香を発する化合物が用いられる。こうした化合物としては、例えば、アセタール類、アルコール類、アルデヒド類、エーテル類、エステル類、カルボン酸類、グリコール類、ケトン類、窒素化合物、ニトロ化合物、フェニルプロパノイド類、フェノール類、ラクトン類、ハロゲン化炭化水素の各化合物が挙げられる。また、これら以外の芳香を発する脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素が香料成分として用いられてもよい。
【0021】
アセタール類の化合物は、例えば、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ヒドラトロプアルデヒドジメチルアセタール、[S,(-)]-7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールジメチルアセタールである。
【0022】
アルコール類の化合物は、例えば、ネロール、ボルネオール、ゲラニオール、シトロネロール、ファルネソール、ネロリドール、フルフリルアルコール、フェンコール、2-オクタノール、2-ヘプタノール、リナロール、ベンジルアルコール、1-オクタノール、イソプレゴール、l-メントール、フェニルエチルアルコール、テルピネオール、ペラルゴール、ノナノール、3-フェニル-1-プロパノール、1-デカノール、フェノキシエタノール、サンタロール、10-ウンデセン-1-オール、1-ウンデカノール、シンナミルアルコール、セドロール、ビサボロール、1-ドデカノールである。
【0023】
アルデヒド類の化合物は、例えば、ヒドロキシシトロネラール、オクタナール、サリチルアルデヒド、ヘプタナール、フェニルエテナール、ノナナール、シトロネラール、2-フェニルプロピオンアルデヒド、デカナール、フェニルプロピオンアルデヒド、ウンデカナール、シトラール、2-メチルウンデカナール、アニスアルデヒド、シンナムアルデヒド、ドデカナール、シクラメンアルデヒド、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、ピペロナール、α-へキシルシンナムアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、クミンアルデヒドである。
【0024】
エーテル類の化合物は、例えば、ジフェニルエーテル、2-メトキシナフタレン、サフロール、イソサフロール、イソオイゲノールメチルエーテル、2-エトキシナフタレン、シネオール、ベンジルイソアミルエーテルである。
【0025】
エステル類の化合物は、例えば、酢酸ゲラニル、3-メチル-3-フェニルオキシラン-2-カルボン酸エチル、酪酸アミル、アセト酢酸エチル、ヘプタン酸エチル、ギ酸ヘプチル、ギ酸オクチル、安息香酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸ボルニル、安息香酸エチル、酢酸フェニルエチル、コハク酸ジエチル、酢酸オクチル、ギ酸リナリル、フェニル酢酸エチル、ベンジルアセテート、ギ酸メチル、サリチル酸メチル、ギ酸フェニルエチル、2-オクチル酸メチル、酢酸p-トリル、リナリルアセテート、酢酸ノニル、酢酸ボルニル、酢酸イソボルニル、ノナン酸エチル、酢酸メンチル、イソボルニルプロピオネート、ボルニルプロピオネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、酢酸テルピニル、安息香酸イソブチル、酢酸フェネチル、リナリルプロピオナート、ギ酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、ビシクロイソブチラート、ベルテネックス、フェネチルプロピオナート、イソ酪酸リナリル、シトロネリルプロピオナート、フェネチルイソブチレート、イソ酪酸ベンジル、フェニル酢酸イソブチル、ゲラニルプロピオナート、DL-リンゴ酸ジエチル、酢酸3-フェニルプロピル、安息香酸イソアミル、サリチル酸イソブチル、イソ吉草酸ベンジル、フェニル酢酸イソアミル、桂皮酸メチル、安息香酸アミル、酢酸4-メトキシベンジル、酢酸シンナミル、10-ウンデセン酸メチル、イソ酪酸3,7-ジメチル-6-オクテニル、桂皮酸エチル、ジメチルフタレート、l-(+)-酒石酸ジエチル、イソ酪酸ゲラニル、10-ウンデセン酸エチル、サリチル酸イソアミル、酢酸オイゲノール、桂皮酸イソブチル、フェニル酢酸ベンジル、チグリン酸ゲラニル、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸2-フェニルエチル、サリチル酸ベンジル、桂皮酸ベンジル、酢酸リナリル、フランカルボン酸エチルである。
【0026】
カルボン酸類の化合物は、例えば、フェニル酢酸、桂皮酸、安息香酸である。
【0027】
グリコール類の化合物は、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールである。
【0028】
ケトン類の化合物は、例えば、カルボン、α-ヨノン、β-ヨノン、2-ウンデカノン、2-ブタノン、D-フェンコン、ツジョン、メントン、アセトフェノン、樟脳、プレゴン、メチルアセトフェノン、アセトアニソール、ベンジリデンアセトン、α-メチルイオノン、エキサルトン、ムスコン、ベンゾフェノン、2’-アセトナフトン、cis-ジャスモン、セダノリドである。
【0029】
窒素化合物は、例えば、6-メチルキノリン、N-メチルアントラニル酸メチル、アントラニル酸メチル、インドール、スカトールである。
【0030】
ニトロ化合物は、例えば、ムスクアンブレット、ムスクキシロール、ムスクケトンである。
【0031】
フェニルプロパノイド類の化合物は、例えば、メチルオイゲノール、エストラゴール、アネトール、オイゲノール、イソオイゲノールである。
【0032】
フェノール類の化合物は、例えば、チモール、ジメチルヒドロキノン、サリチル酸エチル、カルバクロールである。
【0033】
ラクトン類の化合物は、例えば、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナノラクトン、クマリン、6-メチルクマリン、シクロペンタデカノリドである。
【0034】
ハロゲン化炭化水素は、例えば、ブロモスチロール、酢酸α-トリクロロメチルベンジルである。
【0035】
上記以外の脂肪族炭化水素としては、例えば、カリオフィレン、α-カジネン、リモネン、セドレンが挙げられる。また、上記以外の芳香族炭化水素としては、例えば、ジフェニルメタンが挙げられる。これらの香料成分は、単体又は複数を混合して使用できる。
【0036】
[抗菌成分]
薄型フィルム10において、抗菌成分としては、例えば、サリチル酸、サリチル酸ナトリウムやサリチル酸フェニル等のサリチル酸化合物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸化合物、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、o-シメン-5-オール、N-ココイル-L-アルギニンエチルエステル・ピロリドンカルボン酸塩、安息香酸ナトリウム、感光素101号、感光素201号、感光素401号、カンジダボンビコラ/(グルコース/ナタネ油脂肪酸メチル)発酵物、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン、ジメチロールプロピオン酸ヘキシル、ラウリルイソキノリニウムブロミド、チアントール、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、ヨウ化パラジメチルアミノスチリルヘプチルメチルチアゾリウム、レゾルシン、トリクロロカルバン等のカルバニリド化合物、銅や銀等の抗菌性を有する金属材料、これら金属材料の有機金属化合物や酸化物、これら金属材料をゼオライトに担持させた材料が挙げられる。また、上述した香料成分のうち、安息香酸、チモール、カルバクロール、リナロール等の抗菌性を有する化合物は、抗菌成分としても使用可能である。これらの抗菌成分は、単体又は複数を混合して使用できる。
【0037】
[揮発制御材料]
本実施形態による薄型フィルム10は、機能成分(香料成分、抗菌成分)の揮発性の度合いを制御するための揮発制御材料12を含有してもよい。揮発制御材料12を含有していることによって、薄型フィルム10は機能成分の徐放性を向上させることができる。また、含有させる拡散阻害物質の種類や含有量の調整によって、機能成分の徐放性の程度を調整することができる。上記に掲げた香料成分のうち、例えば、バニリンやクマリンなど蒸気圧の比較的低いものは保留剤として香料成分の揮発を抑制することが可能であり、揮発制御材料12として用いられる。
【0038】
また、薄型フィルム10において揮発制御材料12は、シロキサン結合を含んでもよい。薄型フィルム10では、シロキサン結合を有するものや、薄型フィルム10の製造過程でシロキサン結合を形成する材料も機能成分(香料成分、抗菌成分)の揮発性を制御する揮発制御材料12として好適に用いられる。シロキサン結合を有する揮発制御材料12としては各種シリコーンを用いることも可能であるし、薄型フィルム10の製造過程でシロキサン結合を形成する材料としては、シランカップリング剤が挙げられる。
【0039】
シランカップリング剤とは、RSi(ORやRSiR(ORで表される化合物であり、加水分解を起こすことでシロキサン結合を形成することが可能である。シランカップリング剤を用いる場合、薄型フィルム10を形成する高分子材料と化学的に結合を形成することも可能であるし、単にシランカップリング剤同士が化学結合を形成することも可能である。シロキサン結合を薄型フィルム10中に形成することで薄型フィルム全体の密度が大きくなり、薄型フィルム10内での香料成分、抗菌成分の拡散速度を減じることが可能となり、好適に揮発性を制御することができる。また、シランカップリング剤を用いることでシロキサン結合の側鎖における官能基を任意に選択することが可能であるため、拡散速度の調整が可能となり、好適であるし、薄型フィルム10の密度制御に付随して適宜、薄型フィルム10の強度を高めることも可能である。
【0040】
尚、シランカップリング剤を添加して揮発制御を行おうとする場合、少量の水やメタノールやエタノール、プロパノール等の低分子アルコールを同時に添加することで、シランカップリング剤の加水分解が良好に進行するため、シロキサン結合を形成しやすくなり好ましい。このようにして揮発制御をすることで、従前よりも膜厚を小さくした場合でも、いわゆる徐放が可能となり、香料成分や抗菌成分の効果の持続時間を延長することができる。このように、本実施形態による薄型フィルム10は、香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方の機能成分を含み、当該少なくとも一方の機能成分の揮発制御材料12を含んでいればよい。例えば、薄型フィルム10は機能成分として香料成分を含む場合に、香料成分の揮発性を制御する揮発制御材料12を含んでいればよい。また、薄型フィルム10は機能成分として抗菌成分を含む場合に、抗菌成分の揮発性を制御する揮発制御材料12を含んでいればよい。また、薄型フィルム10は機能成分として香料成分および抗菌成分を含む場合に、香料成分および抗菌成分の揮発性を制御する揮発制御材料12を含んでいればよい。
【0041】
[添加剤]
薄型フィルム10には、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、薄型フィルム10の光学特性を調整するための高屈折率材料、低屈折率材料、光吸収剤、色素や、薄型フィルム10の濡れ性を調整するための改質剤、導電性材料、化粧料成分、薬効成分等が挙げられる。薄型フィルム10に含有させる添加剤は、薄型フィルム10において発現させたい機能に応じて選択されればよい。
【0042】
[薄型フィルムの形成方法]
本実施形態による薄型フィルム10は、公知の薄膜形成法によって形成される。例えば、溶融した材料を押し出して薄膜状に成形する溶融押出法や、材料の溶液を薄膜状に基材に塗布した後に溶媒を蒸発させる溶液キャスト法を用いることができる。薄型フィルム10の形成方法は、材料に応じて選択されればよい。
【0043】
例えば、薄型フィルム10の形成方法として溶液キャスト法を用いる場合、薄型フィルム10の材料を適宜の溶媒に溶解もしくは分散させることにより塗液を生成し、当該塗液を樹脂等からなる基材に塗布して塗膜を形成する。塗膜が乾燥により固化されることによって、上述の機能成分を保持する保持層が形成される。塗布方法としては、例えば、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、小径リバースグラビア、マイヤーコート、ダイ、カーテン、スプレー、スピンコート、スクリーン印刷、コンマ、ナイフ、グラビアオフセット、ロールコート等の各種のコーティング方法が使用可能である。
【0044】
[転写シートの構成]
図2は、本実施形態による転写シートの断面構造の概略を示す模式図である。転写シート20は、薄型フィルム10を被着体に貼り付ける場合に用いられる。図2に示すように、転写シート20は、薄型フィルム10と、薄型フィルム10を支持する支持基材21とを備えている。
転写シート20において、薄型フィルム10は支持基材21上に積層されている。具体的には図2に示すように、支持基材21には薄型フィルム10の第2面11Rが接する。つまり、転写シート20では、薄型フィルム10の片面に支持基材21がある。なお、転写シート20において支持基材21は、薄型フィルム10を挟むようにして、薄型フィルム10の両面にあってもよい。
【0045】
支持基材21は、薄型フィルム10の保管時や、薄型フィルム10の使用に際して被着体上まで薄型フィルム10を移動させるときに、薄型フィルム10の変形を抑える機能を有する。支持基材21に支持されていることにより、薄型フィルム10が取り扱いやすくなる。
【0046】
支持基材21の材料は特に限定されない。支持基材21は、例えば、高分子フィルム、織物、編物、不織布、および、紙のいずれかであることが好ましい。
高分子フィルムの材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリシロキサン類、セルロース、カゼイン等の各種のたんぱく質、ゴム、これらの高分子化合物の誘導体、変性体、共重合体、混合物が挙げられる。支持基材21として用いられる高分子フィルムは、エンボス加工、穴あけ加工、発泡等による多孔質化等の加工が施されたフィルムであってもよい。
【0047】
支持基材21を形成する上述の織物、編物、および、不織布は、天然繊維もしくは化学繊維から構成される。天然繊維としては、綿、麻、パルプ、毛、絹等を用いることができる。化学繊維としては、ポリエステル、ポリオレフィン、キュプラ、レーヨン、リヨセル、アセテート、ジアセテート、ナイロン、アラミド、アクリル等からなる繊維を用いることができる。また、支持基材21は、天然繊維と化学繊維とが混合された繊維材料から構成されていてもよい。こうした繊維材料からなる支持基材21においては、エンボス加工、穴あけ加工、発泡等による繊維の多孔質化等の加工が施されていてもよい。
【0048】
支持基材21が繊維材料からなる場合、支持基材21の目付けは、3g/m以上200g/m以下であることが好ましく、10g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。支持基材21の目付けが上記下限値以上であれば、静電気や気流に起因して縒れ等の変形が生じ難くなる程度の剛性を支持基材21が有するため、薄型フィルム10が取り扱いやすくなる。また、支持基材21の目付けが上記上限値以下であれば、支持基材21において繊維が詰まりすぎないため、転写シート20の使用に際して支持基材21を湿潤させて薄型フィルム10から剥離する転写方法を用いる場合に、支持基材21の吸液が円滑に進み、転写を好適に行うことができる。
【0049】
また、転写シート20は、薄型フィルム10の第1面11Fを覆う保護層を備えていてもよい。保護層を備えることにより、薄型フィルム10の保管時において、薄型フィルム10が保護される。保護層としては、支持基材21として例示した上述の各種の基材を用いることができる。なお、保護層と支持基材21との材料は一致していてもよいし、異なってもよい。
【0050】
なお、平面視における薄型フィルム10および転写シート20の外形形状は、特に限定されない。薄型フィルム10および転写シート20の外形形状は、例えば、矩形等の多角形形状、円形状、楕円形状、これら以外の直線や曲線で囲まれた形状等である。平面視にて、薄型フィルム10と支持基材21の形状は一致していてもよいし、支持基材21は薄型フィルム10よりも大きくてもよい。
【0051】
転写シート20は、成膜用の基材上に形成された薄型フィルム10が支持基材21上に転写されることによって形成されてもよいし、支持基材21上に薄型フィルム10が成膜されることによって形成されてもよい。成膜用の基材から支持基材21への薄型フィルム10の転写方法としては、吸引による剥離を利用する方法や犠牲膜を利用する方法等、公知の転写方法が用いられればよい。
【0052】
転写シート20の使用に際しては、まず、被着体と薄型フィルム10の第1面11Fとが接するように、被着体上に転写シート20が配置される。そして、薄型フィルム10から支持基材21が剥離される。これにより、薄型フィルム10が被着体に転写される。
【0053】
転写シート20を貼り付ける前の被着体の表面や、転写シート20を貼り付けた後の支持基材21上に、水やローション等の液状体が供給され、転写シート20に液状体を浸透させることで、支持基材21と薄型フィルム10との剥離が促進されてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の薄型フィルム10は、少なくとも高分子化合物で形成される薄型フィルムであって、単位面積当たり質量が0.1g/m以上5.0g/m以下であり、香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方の機能成分を含み、当該少なくとも一方の機能成分の揮発制御材料12を含んでいる。
これにより、薄型フィルム10を被着体に貼り付けて用いることによって、香料成分に起因した芳香が得られる効果や、抗菌成分によって被着体からの臭いの発生が抑えられる効果が得られる。そして、香料成分や抗菌成分が薄型フィルム10に保持されているため、芳香や消臭のための従来の液状の製品と比較して、香料成分や抗菌成分による効果の持続時間が長く得られる。さらに、薄型フィルム10は、揮発制御材料を含むため、香料成分や抗菌成分に期待される効果を適切な度合いで、かつ長時間に亘って得ることが可能となる。したがって、本実施形態による薄型フィルム10は、嗜好の多様化に対応することができる。
【0055】
また、薄型フィルム10において、揮発制御材料12がシロキサン結合を含んでもよい。この構成によれば、薄型フィルム中の機能成分(香料成分および抗菌成分のうち少なくとも一方)の拡散速度を効果的に制御することができ、香料成分や抗菌成分に期待される効果をより好適に、適切な度合いで、かつ長時間に亘って得ることが可能となる。
【0056】
また、前記薄型フィルム10は、生体適合材料を含んでもよい。この構成によれば、生体への貼り付けに適した薄型フィルムが実現される。
【0057】
また、本実施形態による転写シート20は、薄型フィルム10と、薄型フィルム10を支持する支持基材21と、を備える。この構成によれば、薄型フィルム10が支持基材21に支持されていることにより、薄型フィルム10の変形が抑えられるとともに、薄型フィルム10が取り扱いやすくなる。
【0058】
なお、本実施形態において、薄型フィルム10の用途として、においに関する製品を例示したが、本発明による薄型フィルム10の用途は特に限定されない。つまり、薄型フィルム10が含有する機能成分は香料成分や抗菌成分に限られず、化粧料成分や薬効成分であってもよい。
【0059】
従来の液状の製品では、上述のように汗の発生や衣服との擦れ等によって、機能成分を皮膚上に長時間保持させることが困難であった。これに対し、本実施形態による薄型フィルム10は、機能成分を保持した状態で皮膚に長時間貼り付けておくことが可能である。したがって、被着体が生体の皮膚であると、従来の液状の製品と比較して、効果の持続時間を延ばす効果が特に高く得られる。なお、薄型フィルム10の被着体も特には限定されず、被着体は生体の皮膚でなくてもよい。このように、薄型フィルム10は、嗜好の多様化に柔軟に対応することができる。
【実施例0060】
[実施例1]
<薄型フィルムおよび転写シートの製造方法>
酢酸エチルとエタノールとの質量比を99:1とした溶媒に、ポリ-DL-乳酸((株)武蔵野化学研究所製)と揮発制御材料12としての3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学(株)製)とを、99:1の質量比で、溶液中の固形分が10%となるように溶解した。その後、香料成分としてのリナロールを加えて混合することにより、薄型フィルム10の形成のための塗液を生成した。薄型フィルム10の全体の質量に対する、リナロールの質量割合は10%とした。使用したポリ-DL-乳酸の重量平均分子量は10万である。
【0061】
薄型フィルム10の形成のための塗液を、成膜基材であるPETシート状に、ワイヤバーを用いて塗布し、塗膜を形成した。塗膜をオーブンで加熱して乾燥・固化させることにより、薄型フィルム10を形成した。塗膜の乾燥時の加熱温度は90℃、加熱時間は1分とした。以上の工程では、薄型フィルム10を、乾燥後の単位面積当たり質量が0.5g/mとなるように形成した。
【0062】
以上により、成膜用基材上に実施例1の薄型フィルム10を形成した。次いで、成膜用基材上の薄型フィルム10に支持基材21を重ね合わせ、成膜用基材と薄型フィルム10と支持基材21との積層体を成膜用基材の位置する側からゴムローラーで押圧しつつ、成膜用基材を剥離した。支持基材21としては、パルプ系の繊維から構成された不織布を用いた。支持基材21の目付けは、35g/mである。以上により、実施例1の転写シート20を形成した。
【0063】
上記の製造方法において、薄型フィルムの成膜厚さを変えることにより、単位面積当たりの薄型フィルムの質量、および、薄型フィルム中の揮発制御材料12の有無を変えた実施例1および2、比較例1~3の薄型フィルムおよび転写シートを形成した。
【0064】
[実施例2]
薄型フィルム10の単位面積当たり質量が4.8g/mとなるように形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の薄型フィルムおよび転写シートを形成した。
【0065】
[比較例1]
薄型フィルムの単位面積当たり質量が0.08g/mとなるように形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の薄型フィルムおよび転写シートを形成した。
[比較例2]
薄型フィルムの形成のための塗液に揮発制御材料12を含まないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の薄型フィルムおよび転写シートを形成した。
[比較例3]
薄型フィルムの単位面積当たり質量が5.9g/mとなるように形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の薄型フィルムおよび転写シートを形成した。
【0066】
<評価方法>
(香気評価)
実施例1および2、比較例1~3の各々について、転写シートを5つずつサンプルとして準備した。被着体としてヒトの皮膚に、500μlの水を供給し、供給した水を指で軽く引き伸ばした。その後、サンプルの転写シートを、薄型フィルムが皮膚に接するように、皮膚上に配置した。次いで、支持基材の上から、3秒間、指でサンプルを押圧した。そして、サンプルの端部から、支持基材を指で剥離した。これにより、皮膚に薄型フィルムが貼り付けられた。
【0067】
皮膚上の薄型フィルムの表面と直交する方向に薄型フィルムから10cm離れた位置から、香気を知覚できるかを判定した。判定は、薄型フィルムを貼り付けてから1時間経過後と8時間経過後との各々について判定した。1時間経過後と8時間経過後との各々について、5つのサンプルのすべてについて香気を知覚できた場合を「〇」、3つもしくは4つのサンプルについて香気を知覚できた場合を「△」、香気を知覚できたサンプルが2つ以下であった場合を「×」とした。
【0068】
(転写性)
実施例1および2、比較例1~3の各々について、転写シートを5つずつサンプルとして用意し、香気評価と同様に、皮膚に薄型フィルムを貼り付けた。薄型フィルムを貼り付けてから1時間経過後に、皮膚上の薄型フィルムを目視によって観察し、薄型フィルムに欠け、破れ、皺、縒れのいずれかの変形が生じているかを判定した。5つのサンプルのすべてにおいて変形が生じていない場合を「〇」、3つもしくは4つのサンプルにおいて変形が生じていない場合を「△」、変形が生じていないサンプルが2つ以下であった場合を「×」とした。
【0069】
(貼付感)
実施例1および2、比較例1~3の各々について、転写シートを5つずつサンプルとして用意し、香気評価と同様に、皮膚に薄型フィルムを貼り付けた。薄型フィルムを貼り付けてから1時間経過後に、薄型フィルムの貼付箇所に蒸れや突っ張り感等の違和感が生じているかを判定した。5つのサンプルのすべてについて違和感が生じていない場合を「〇」、3つもしくは4つのサンプルについて違和感が生じていない場合を「△」、違和感が生じていないサンプルが2つ以下であった場合を「×」とした。
【0070】
<評価結果>
表1に、各実施例および各比較例についての、単位面積当たりの薄型フィルムの質量、揮発制御材料の有無を示すとともに、香気評価、転写性、貼付感の各々の評価結果、および、総合評価を示す。総合評価は、各評価がすべて「○」である場合を○、各評価に「×」が含まれず「△」が含まれる場合を「△」、各評価に1つでも「×」が含まれる場合を「×」とした。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、揮発性材料を含まない比較例2は、香気評価の結果が8時間経過後は「×」であった。これに対して、揮発制御材料を含む実施例1および2は、香気評価の結果が8時間経過後も良好(「〇」)であった。これにより、揮発制御材料を含む薄型フィルムは良好に芳香を保っており、揮発制御材料によって薄型フィルムの芳香を長時間保つ機能が付与されることが示された。
【0073】
一方で、薄型フィルムの単位面積当たりの質量が0.1g/m未満である比較例1は、その薄さに起因して香料成分の総量が少なく、香気が感じにくいため、香気評価の結果は1時間経過後が「△」、8時間経過後が「×」となった。これに加え、比較例1は、薄型フィルム10の強度が低いために、破れが生じて薄型フィルムの転写性の評価も悪く「×」となっている。
【0074】
また、単位面積当たりの質量が5.0g/mを超える比較例3では、その厚さに起因して薄型フィルム内での香料成分の拡散距離が大きくなり、外部への拡散が抑制されることで、香気が知覚され難くなっている。このため、香気評価の結果は1時間経過後および8時間経過後のいずれも「△」となった。また、比較例3では、皮膚上の薄型フィルムに皺が多く確認され、転写性の評価が悪く「×」となった。このことは、薄型フィルムの厚さが大きいために薄型フィルムと皮膚との密着性が低くなることに因ると考えられる。さらに、薄型フィルムの厚さが大きいことにより、薄型フィルムの貼付箇所に蒸れや突っ張り感等が生じ易く、貼付感の評価結果も「×」となっている。このように、比較例1~3は、単位面積当たりの質量が0.1g/m以上5.0g/m以下であり、且つ機能成分の揮発制御材料を含むという条件を満たしていないため総合評価が「×」となった。
【0075】
これに対し、単位面積当たりの質量が0.1g/m以上5.0g/m以下であり、且つ機能成分の揮発制御材料を含む実施例1および2は、薄型フィルムの貼付の8時間経過後にも香気の知覚が可能であり、且つ転写性および貼付感の評価も良好(「〇」)であった。このため、実施例1および2は総合評価が「〇」であった。したがって、実施例1および2の薄型フィルムは、香料成分による効果の持続性が良好であるとともに、被着体に貼り付ける薄型フィルムのとしての実用性も良好であり、嗜好の多様化に対応可能であることが示された。
【0076】
上述した薄型フィルム10および転写シート20について、具体的な実施例および比較例を用いて説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。また、本実施例においては香料成分としてリナロールを用いたが、本実施例に示す方法を用いて、抗菌成分の揮発制御材料を含む薄型フィルムも作製することが可能である。
【0077】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0078】
10 薄型フィルム
11F 第1面
11R 第2面
12 揮発制御材料
20 転写シート
21 支持基材
図1
図2