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特開2022-179446消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179446
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C05C 11/00 20060101AFI20221125BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20221125BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C05C11/00
C02F11/00 C ZAB
B01D19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082668
(22)【出願日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2021085903
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500004461
【氏名又は名称】シン・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156443
【弁理士】
【氏名又は名称】松崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】本田 岳士
(72)【発明者】
【氏名】石橋 保
【テーマコード(参考)】
4D011
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D011CB01
4D059AA23
4D059AA30
4D059BD00
4D059BE38
4D059BE70
4D059BF12
4D059BJ00
4D059CC01
4D059DA33
4D059DA70
4D059EB05
4D059EB11
4H061AA01
4H061AA02
4H061AA03
4H061BB10
4H061EE07
4H061FF01
4H061GG22
4H061GG41
4H061GG54
4H061GG69
4H061LL03
4H061LL22
(57)【要約】
【課題】 本発明は消化液の脱水工程において凝集剤を使用することなく、消化液中のアンモニア性窒素から硫安生成反応を効率的に行うことのできる、消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法の提供を課題とする。
【解決手段】 消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法であって、(a)消化液に対してアルコール系消泡剤を混合する工程と、(b)工程(a)で得られた消化液に対して硫酸を加えてpHを調整する工程と、(c)工程(b)で得られた消化液を濃縮する工程であって、窒素含有濃縮液と凝縮水とを分離して得る工程とを含む製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法であって
(a)前記消化液に対してアルコール系消泡剤を混合する工程と
(b)前記工程(a)で得られた消化液に対して硫酸を加えてpHを調整する工程と
(c)前記工程(b)で得られた消化液を濃縮する工程であって、窒素含有濃縮液と凝縮水とを分離して得る工程と
を含む製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記消化液がメタン発酵により得られた消化液である、製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記消化液が凝集剤を用いない固液分離により得られたものである、製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記工程(a)における前記アルコール系消泡剤を20ppm~1000ppmの範囲となるように前記消化液に添加する、製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記工程(b)において調整される消化液のpHがpH4.0~pH6.0の範囲内である、製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記工程(b)において加える硫酸の量を、前記消化液の蒸発残留物、アンモニア性窒素、または、Mアルカリ度から決定する、製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記工程(b)において加える硫酸の量が、前記消化液のMアルカリ度1g/mL当たり20%硫酸の滴下量が1~2mlである、製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記工程(a)が、混和槽に前記消化液と前記アルコール系消泡剤を連続的に流入し、前記アルコール系消泡剤と十分に混和した消化液がそのままpH調整槽へ連続的に流入する工程であり、
前記工程(b)が、pH調整槽内において前記混和槽から連続的に流入する消化液に対して硫酸を加えてpHを調整し、pHが調整された消化液を連続的に濃縮原水槽へ流出する工程である、
製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製造方法であって、
(d)前記工程(c)で得られた窒素含有濃縮液を乾燥する工程をさらに含む、製造方法。
【請求項10】
消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置であって、
消化液と消泡剤とを混合するための混和槽と
消泡剤を混合した消化液に硫酸を加えてpHを調整するためのpH調整槽と
pHを調整した消化液を濃縮するための濃縮手段と
を含む、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記混和槽は所望量の消化液を供給するための消化液供給手段と、所望量の消泡剤を供給するための消泡剤供給手段とを備えており、
前記pH調整槽は硫酸供給手段を備えている、
装置。
【請求項12】
請求項10に記載の装置であって、
消化液を固液分離するための固液分離手段をさらに含み、
前記固液分離手段と前記消化液供給手段とが連結されており、前記固液分離手段により得られた分離液が前記消化液供給手段を介して前記混和槽へと送られる、装置。
【請求項13】
請求項10に記載の装置であって、
前記混和槽と前記pH調整槽とが互いの槽の下部において直接連結しており、前記混和槽に投入した消化液が前記混和槽内における一定の滞留時間を経た後、前記pH調整槽へ直接流入する、装置。
【請求項14】
請求項10に記載の装置であって、
消化液貯留槽と消泡剤貯留槽と硫酸貯留槽とをさらに含む、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、
前記pH調整槽へ投入する硫酸を調整するための硫酸希釈槽をさらに含む、装置。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか一項に記載の装置であって、
濃縮手段により得られた窒素含有濃縮液を乾燥するための乾燥手段をさらに含み、前記乾燥手段と前記濃縮手段とが連結されており、前記濃縮液が前記濃縮手段から前記乾燥手段へ送られる、装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵後の残液である消化液は固形物濃度が3~5%程度であり、従来排水処理を行うためには凝集剤などの薬品を使用した脱水を行い、固形物と分離液に分ける必要があった。そのため脱水にかかる凝集剤等の薬品のコストが高く経済性を悪化させていた。さらには脱水後の分離液にはアンモニアなどのBOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)源が多く残っており、そのまま公共河川や下水道へ放流基準を満たすことができず硝化、脱窒、凝集反応、活性炭等の高度処理を行う必要があった。そのため消化液の処理にかかるイニシャル・ランニングコスト、フローの複雑さ、運転管理が大変であることからメタン発酵施設普及の妨げとなっていた。加えて、消化液中に含まれる窒素の約70%はアンモニア性の窒素で水溶液中に存在していることから、脱水後の窒素成分は分離液側の移行し、固形物中の窒素含有量は限られていた。そのため得られた固形物は肥料として価値の低いものであった。
これに対し例えば特許文献1では、ウェッジワイヤーを用いるスクリーンによりメタン発酵残液から固形分を除去したのち、得られた分離液のpHを酸性に調整することを記載している。これにより分離液中のアンモニア成分を固定し、pH調整した分離液の蒸発濃縮を行うことにより、窒素成分を確保した液肥を生成することを記載している。特許文献1はpH調整のための酸として硫酸が好ましい点について記載しており、硫酸の添加は分離液中のアンモニア性窒素成分を硫安へと変化させ液肥中に固定する。
一方、メタン発酵残液である消化液中にはメタン発酵の際に生じた炭酸ガスが飽和状態で溶け込んでいるため、硫酸等の投与は消化液中に急速に大量の発泡を生じてる。消化液中に生じた大量の泡は硫酸の添加による硫安の生成反応の進行を妨げ、消泡に要する時間は消化液処理システムの律速の要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-34870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況に鑑み、本発明は消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法において、消化液の脱水工程において凝集剤を使用することなく、消化液中のアンモニア性窒素から硫安生成反応を効率的に行うことのできる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題解決のため硫酸を加えて硫安を生成する際の発泡に対して消泡剤の使用を着想した。鋭意検討の結果、消化液に硫酸を加えて消化液中のアンモニア性窒素を硫安として固定する工程の前に、あらかじめ消化液中に消泡剤を混合することで硫酸添加時の発泡を顕著に抑えることができることを見出した。さらに本発明者らは、種々あるうちの消泡剤の中でアルコール系消泡剤が顕著に優れた消泡効果を示すことを見出した。本発明は当該知見により完成されたものであり、以下の態様を含む。
【0006】
本発明の一態様は、
〔1〕消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法であって
(a)前記消化液に対してアルコール系消泡剤を混合する工程と
(b)前記工程(a)で得られた消化液に対して硫酸を加えてpHを調整する工程と
(c)前記工程(b)で得られた消化液を濃縮する工程であって、窒素含有濃縮液と凝縮水とを分離して得る工程と
を含む製造方法に関する。
ここで本発明の製造方法は一実施の形態において
〔2〕上記〔1〕に記載の製造方法であって、
前記消化液がメタン発酵により得られた消化液であることを特徴とする。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の製造方法であって、
前記消化液が凝集剤を用いない固液分離により得られたものであることを特徴とする。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の製造方法であって、
前記工程(a)における前記アルコール系消泡剤を20ppm~1000ppmの範囲となるように前記消化液に添加することを特徴とする。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の製造方法であって、
前記工程(b)において調整される消化液のpHがpH4.0~pH6.0の範囲内であることを特徴とする。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の製造方法であって、
前記工程(b)において加える硫酸の量を、前記消化液の蒸発残留物、アンモニア性窒素、または、Mアルカリ度から決定することを特徴とする。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の製造方法であって、
前記工程(b)において加える硫酸の量が、Mアルカリ度1g/mL当たり20%硫酸の滴下量が1~2mlであることを特徴とする。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の製造方法であって、
前記工程(a)が、混和槽に前記消化液と前記アルコール系消泡剤を連続的に流入し、前記アルコール系消泡剤と十分に混和した消化液がそのままpH調整槽へ連続的に流入する工程であり、
前記工程(b)が、pH調整槽内において前記混和槽から連続的に流入する消化液に対して硫酸を加えてpHを調整し、pHが調整された消化液を連続的に濃縮原水槽へ流出する工程である、
製造方法。
また本発明の製造方法は一実施の形態において
〔9〕上記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の製造方法であって、
(d)前記工程(c)で得られた窒素含有濃縮液を乾燥する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
また本発明の別の態様は、
〔10〕消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置であって、
消化液と消泡剤とを混合するための混和槽と
消泡剤を混合した消化液に硫酸を加えてpHを調整するためのpH調整槽と
pHを調整した消化液を濃縮するための濃縮手段と
を含む、装置に関する。
ここで本発明の装置は一実施の形態において
〔11〕上記〔10〕に記載の装置であって、
前記混和槽は所望量の消化液を供給するための消化液供給手段と、所望量の消泡剤を供給するための消泡剤供給手段とを備えており、
前記pH調整槽は硫酸供給手段を備えていることを特徴とする。
また本発明の装置は一実施の形態において
〔12〕上記〔10〕または〔11〕に記載の装置であって
消化液を固液分離するための固液分離手段をさらに含み、
前記固液分離手段と前記消化液供給手段とが連結されており、前記固液分離手段により得られた分離液が前記消化液供給手段を介して前記混和槽へと送られることを特徴とする。
また本発明の装置は一実施の形態において
〔13〕上記〔10〕~〔12〕のいずれかに記載の装置であって、
前記混和槽と前記pH調整槽とが互いの槽の下部において直接連結しており、前記混和槽に投入した消化液が前記混和槽内における一定の滞留時間を経た後、前記pH調整槽へ直接流入することを特徴とする。
また本発明の装置は一実施の形態において
〔14〕上記〔10〕~〔13〕のいずれかに記載の装置であって、
消化液貯留槽と消泡剤貯留槽と硫酸貯留槽とをさらに含むことを特徴とする。
また本発明の装置は一実施の形態において
〔15〕上記〔10〕~〔14〕のいずれかに記載の装置であって、
前記pH調整槽へ投入する硫酸を調整するための硫酸希釈槽をさらに含むことを特徴とする。
また本発明の装置は一実施の形態において
〔16〕上記〔10〕~〔15〕のいずれかに記載の装置であって、
濃縮手段により得られた窒素含有濃縮液を乾燥するための乾燥手段をさらに含み、前記乾燥手段と前記濃縮手段とが連結されており、前記濃縮液が前記濃縮手段から前記乾燥手段へ送られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法によれば、消化液中のアンモニア性窒素を硫安として固定する際の発泡をより少ない量の消泡剤により、短時間で消泡することを可能とする。
また本発明に係る窒素含有濃縮液の製造方法によれば、高濃度の窒素を含有する濃縮液を提供可能である。さらに濃縮液を製造する際に分離して得られる凝縮水は、硝化・脱窒処理などの排水処理が不要である。よって、窒素含有濃縮液の製造過程における凝集剤使用の処理やコスト、および、凝縮水の排水処理やコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法の一実施の形態におけるフローチャートを示す。
図2図2は、本発明に係る消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置の一実施の形態を示す模式図である。
図3図3は、本発明に係る消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置の一実施の形態であって、混和槽およびpH調整槽が連結した二槽式の槽を備える装置を示す模式図である。
図4図4は、本発明に係る消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置の一実施の形態であって、混和槽およびpH調整槽が連結した二槽式の槽と、硫酸希釈槽とをさらに備える装置を示す模式図である。
図5図5は、下記実施例に記載の発泡後添加試験(比較例1)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図6図6は、下記実施例に記載の発泡後添加試験(比較例1)において、開始時(図4A)と硫酸3 ml滴下時(図4B)の消化液の状態を示す写真図である。
図7図7は、下記実施例に記載の事前添加試験(実施例1)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図8図8は、下記実施例に記載の事前添加(実施例1)において、硫酸6ml滴下時の消化液の状態を示す写真図である。
図9図9は、下記実施例に記載の事前添加試験(実施例2)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図10図10は、下記実施例に記載の事前添加試験(実施例2)において、硫酸5ml滴下時(図10A)および6ml滴下時(図10B)の消化液の状態を示す写真図である。
図11図11は、下記実施例に記載の事前添加試験(実施例3)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図12図12は、下記実施例に記載の事前添加試験(実施例3)において、硫酸3ml滴下時(図12A)および5ml滴下時(図12B)の消化液の状態を示す写真図である。
図13図13は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例2)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図14図14は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例2)において、硫酸6ml滴下時の消化液の状態を示す写真図である。
図15図15は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例3)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図16図16は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例3)において、硫酸6ml滴下時の消化液の状態を示す写真図である。
図17図17は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例4)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図18図18は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例4)において、硫酸6ml滴下時の消化液の状態を示す写真図である。
図19図19は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例5)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図20図20は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例5)において、硫酸6ml滴下時の消化液の状態を示す写真図である。
図21図21は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例6)の結果を示すグラフである。当該グラフは、硫酸の滴下量と、消化液中に発生した泡の消泡時間と、消化液のpH変動との関係を示す。
図22図22は、下記実施例に記載の事前添加試験(比較例6)において、硫酸6ml滴下時の消化液の状態を示す写真図である。
図23図23は、下記実施例「II.消化液処理後の性状分析」の分析対象である凝縮水(図23A)および窒素含有濃縮液(図23B)の状態を示す写真図である。
図24図24は、下記実施例「III.硫酸注入量と消化液の性質との関係」における消化液ごとの滴定結果の平均を示すグラフである。
図25図25は、下記実施例「III.硫酸注入量と消化液の性質との関係」において測定した硫酸滴下量と蒸発残留物との関係を示すグラフである。
図26図26は、下記実施例「III.硫酸注入量と消化液の性質との関係」において測定した硫酸滴下量とNH-Nとの関係を示すグラフである。
図27図27は、下記実施例「III.硫酸注入量と消化液の性質との関係」において測定した硫酸滴下量とMアルカリ度との関係を示すグラフである。
図28図28は、下記実施例「IV.アルコール系消泡剤の検討」において各アルコール系消泡剤を用いた際の硫酸滴下量とpHの変化を示すグラフである。
図29図29は、下記実施例「IV.アルコール系消泡剤の検討」において各アルコール系消泡剤を用いた際の各pH時点の消泡時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様は、消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法に関する。本発明の窒素含有濃縮液を製造する方法は、図1に示すように下記工程(a)~(c)を含む:
(a)消化液に対してアルコール系消泡剤を混合する工程(消泡剤混合工程)
(b)工程(a)で得られた消化液に対して硫酸を加えて硫安を生成する工程(pH調整工程)
(c)工程(b)で得られた消化液を濃縮する工程であって、窒素含有濃縮液と凝縮水とを分離して得る工程(濃縮工程)
【0011】
上記のように、本発明の窒素含有濃縮液を製造する方法は、「(a)消化液に対してアルコール系消泡剤を混合する工程」を含む。
本明細書において「消化液」とは、有機性廃棄物をメタン発酵させた後に得られたメタン発酵残液を意味する。本発明に用いることのできる消化液はアンモニアおよびアンモニア塩を含むメタン発酵残液であればよく、有機性廃棄物の由来やメタン発酵法は限定されない。
消化液はメタン発酵後に得られるメタン発酵残液をそのまま用いることもできる。この場合、消化液は例えばメタン発酵残液の貯留槽から消泡剤を混合するための混和槽へ供給することができる。混和槽への消化液の供給は、所望する量となるように定量的に行う。
【0012】
また消化液は固液分離処理により得られた分離液を用いてもよい。よって本発明の消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法における一実施の形態は、工程(a)の前に、消化液を固液分離する工程を含む。固液分離は濃縮手段やポンプ内における閉塞の原因となる粒子径の大きい固形物を分離できればよい。固液分離において取り除く固形物としては、以下に限定されないが、例えば20mm以上の粒子径もしくは直径を有する物質を挙げることができる。固液分離手段としては消化液中の固形分を分離できるものであれば限定されず、例えば、搾汁機、遠心脱水機等を用いることができる。
本発明の窒素含有濃縮液を製造する方法は、固液分離処理において凝集剤を使用する必要がないため消化液は凝集剤を含まない。本明細書において凝集剤とは消化液の脱水処理を行う際に水と固形物とを分離可能なように消化液中の粒子の性質を変化させる等して粒子の凝集化や粗粒化を図るものをいう。凝集剤としては、以下に限定されないが、鉄塩、アルミニウム塩、カルシウム塩などの無機系凝集剤やカチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤などの有機系凝集剤が知られている。
好ましい一実施の形態において、消化液は固液分離後の消化液であって、かつ、凝集剤を含まないものである。
【0013】
「アルコール系消泡剤」とは、液体中に生じる泡を消すために使用される消泡剤であって、アルコールを主成分として調整される消泡剤をいう。主成分となるアルコールは以下に限定されないが、例えば炭素数12~30の高級アルコール、または、炭素数18~22の直鎖アルコールなどが挙げられる。高級アルコールの例としては、以下に限定されないが、炭素数12~30の天然アルコール及び炭素数12~30の合成アルコールの群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。炭素数12~30の天然アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコノール、オクタコサノール及びミリシルアルコールなどの飽和アルコールや、例えば、オレイルアルコールなどの不飽和アルコールが挙げられる。また、炭素数12~30の合成アルコールとしては、チーグラー法で合成された直鎖第一級アルコールあるいは分岐第一級アルコール、又はこれらの炭素数の異なるアルコール混合物や、パラフィンを空気酸化して作られる直鎖第二級アルコールなどが挙げられる。消泡剤はこれらが単独で用いられているものでもよく、2種以上を併用されたものでもよい。また消泡剤には、炭素数が12未満のアルコールや、炭素数が30を超えるアルコールを含んでもよく、含まなくてもよい。以下に限定されないが、高級アルコールは例えば消泡剤全量に対して5~90重量%で含まれる。アルコール系消泡剤にはアルコールに加えて、さらに無機塩や界面活性剤(例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤)、脂肪酸エステル、天然油脂、鉱物油、炭化水素、水などアルコール系消泡剤の成分として公知のものが含まれていても良い。本発明に用いることのできるアルコール系消泡剤としては硫酸添加前の消化液中にあらかじめ添加することで硫酸添加時の発泡抑制および/または消泡効果を奏するものであれば限定されず公知のアルコール系消泡剤を使用することができる。このようなアルコール系消泡剤の例としては特開2011-215235号公報、特開2012-143700号公報、特開2014-079699号公報、特開2018-51513号公報、特開2021-098156号公報、特開2015-054259号公報に開示される高級アルコール系消泡剤を挙げることができる。
消泡剤の形態は特に限定されず、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルジョン型、自己乳化型などのいずれの形態の消泡剤も用いることができるが、好ましくはエマルジョン型である。消泡剤は各形態に好ましい添加剤(分離防止剤、防腐剤、乳化剤など)を含んでいてもよい。
本発明に用いることのできるアルコール系消泡剤としては市販のものも使用することができ、以下に限定されないが、例えばクリレス653(栗田工業製)、ダッポー H-312(サンノプコ株式会社)、ビスマーFSシリーズ(株式会社日新化学研究所)、SN-650(多木化学株式会社)、FALC-108(クボタ化水株式会社)、AE-3100(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社)、プロナールEM-38N(東邦化学工業株式会社)、EL-101(株式会社イーライフ)などを挙げることができる。
【0014】
消泡剤は消化液に対して20ppm~1000ppmの範囲となるように添加することが好ましく、50ppm~500ppmの範囲となるように添加することがより好ましい。さらに好ましい実施形態においては、消泡剤を100ppmの濃度となるように消化液に対して添加する。消泡剤の投入量が20ppm未満であると好ましい消泡効果を得られず、1000ppmを超えるとコストが嵩み好ましくない。
また消泡剤を消化液に添加した後、攪拌手段を用いて十分に混合することが好ましい。攪拌処理は、消泡剤が消化液中に均一に分散するまで行うことが好ましい。消化液の攪拌は例えば5分以上行う(例えば、約5~10分程度)。消化液を十分に撹拌することにより硫安生成時の発泡を抑制することができる。撹拌手段としては消泡剤と消化液とを混合することができれば制限されず、公知の攪拌機を用いることができる。
【0015】
本発明の窒素含有濃縮液を製造する方法は、上記工程(a)の後に「(b)工程(a)で得られた消化液に対して硫酸を加えてpHを調整する工程」を含む。
混和槽において消泡剤と十分に混合した消化液はpH調整槽へ送られ、pH調整槽において消化液中のアンモニア性窒素から硫安を生成する。
硫安の生成には硫酸を用いることが好ましい。硫酸を用いることでコストを抑えつつ、塩酸などを用いた場合に比べて、設備の腐食が起こる可能性を低くすることができる。
硫酸を用いる場合、例えば10~40wt%硫酸としてpH調整槽へ供給することができる。供給する硫酸の濃度が高いと発泡の勢いが激しくなり、一方で硫酸の濃度が低いと硫安生成反応の進行に時間を要する。当業者は硫酸添加時の発泡の状態と硫酸生成反応に要する時間とのバランスを考慮して適宜好ましい濃度を設定することができる。好ましい実施の形態においてpH調整槽に供給する硫酸の濃度は15~25wt%である。
硫酸は、消化液のpHが例えばpH4.0~pH6.0の範囲となるまで供給すればよい。好ましい実施形態においては消化液のpHが4.5~5.5の範囲となるまで硫酸を供給し、さらに好ましい実施形態においては消化液のpHが5.0とするなるまで硫酸を供給する。アンモニアの揮発率(凝縮水中へのアンモニアの混入率)はpH4.0とpH5.0の同じであるため、pH5とした方が硫酸の使用量や消泡剤の量が削減でき好ましい。なお、pHを4.0未満とすると窒素含有濃縮液のpHが低くなり、肥料利用する際に弊害が出る可能性がある)なり好ましくなく、pHが6.0を超えるように調整するとアンモニア性窒素が十分に固定されず揮発するため好ましくない。
【0016】
本発明の窒素含有濃縮液を製造する方法は一実施の形態において、消化液に添加する硫酸の量を、当該消化液の蒸発残留物、アンモニア性窒素、または、Mアルカリ度から決定することができる。予め消化液の蒸発残留物、アンモニア性窒素、または、Mアルカリ度を測定することで、本願実施例IIIの記載および図25~27の結果に基づきpH調整に必要な硫酸の量を算出することができる。例えば、消化液をpH4.8に調整する際、Mアルカリ度1g/mL当たり20%硫酸の滴下量を1~2ml、より好ましくは1.2~1.6mlの範囲内とすることができる。
硫酸は消化液を含むpH調整槽の底部または下部に連結された硫酸供給口から供給することが好ましい。消化液の下部から硫酸を供給することで効率よく反応を促すことができる。
硫酸を消化液に添加した後は、攪拌手段を用いて十分に混合することが好ましい。消化液の攪拌は5分以上(例えば、5分~10分間)行うことが好ましい。これにより消化液中に含まれる窒素(特にアンモニア性窒素)を揮発させることなく固定することが可能となる。
pH調整後の消化液はオーバーフローにより濃縮原水槽へ送ることができる。
【0017】
本発明の窒素含有濃縮液を製造する方法は、上記工程(b)の後に「(c)工程(b)で得られた消化液を濃縮する工程であって、窒素含有濃縮液と凝縮水とを分離して得る工程」を含む。工程(c)において、硫安を生成した消化液はpH調整槽または濃縮原水槽から濃縮手段へ送られる。消化液は濃縮手段により濃縮され、窒素含有濃縮液と凝縮水とに分離される。このとき消化液中に含まれていたアンモニア性窒素は濃縮液側に移る。好ましい実施の形態において、工程(c)により得られる窒素含有濃縮液は、濃縮前の消化液中アンモニア性窒素と比較して、1.5倍以上、2倍以上、より好ましくは2.5倍以上に濃縮したアンモニア性窒素を含むことができる。また例えば、好ましい実施の形態において、本発明の製造方法により得られる窒素含有濃縮液は5000mg/kg以上の窒素を含むことができる。工程(c)に用いることのできる濃縮手段としては公知の減圧式濃縮装置を採用することができる。減圧式濃縮装置には例えば90℃程度の温水を熱源として利用することが可能である。また、ヒートポンプ式で凝縮水の潜熱を再利用することで熱効率を高くすることで、発電機の余剰熱源のみで濃縮ができるような構成とすることができる。
濃縮工程により得られた凝縮水は固形物(SS)や窒素含有量の低いものであり、環境省から提示される一般排水基準を満たすものであり河川・下水へ放流することが可能である。
一実施形態において、本発明の方法により得られる凝縮水はSS(固形物)が100mg/L未満であり、好ましくは50mg/L未満、さらに好ましくは30mg/L未満である。また一実施の形態において、本発明の方法により得られる凝縮水はt-n(全窒素量)が100mg/L未満であり、好ましくは50mg/L未満、さらに好ましくは30mg/L未満である。また一実施の形態において、本発明の方法により得られる凝縮水はBOD(生物化学的酸素要求量)が100mg/L未満であり、好ましくは50mg/L未満、さらに好ましくは30mg/L未満である。また一実施の形態において、本発明の方法により得られる凝縮水はCODMn(化学的酸素要求量)が100mg/L未満であり、好ましくは50mg/L未満、さらに好ましくは30mg/L未満である。
【0018】
上記工程(c)を経て得られた窒素含有濃縮液は、液体肥料としてそのまま用いることもできるし、乾燥させて乾燥肥料とすることもできる。
よって本発明の消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法は一実施の形態において、(d)工程(c)で得られた窒素含有濃縮液を乾燥する工程をさらに含む。これにより窒素含有固形物を乾燥肥料として提供することが可能となる。工程(d)に用いることのできる乾燥手段としては公知の乾燥装置を採用することができる。
【0019】
本発明は別の態様として消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置(消化液処理装置)を提供する。当該装置は、消化液と消泡剤とを混合するための混和槽と、消泡剤を混合した消化液に硫酸を加えてpHを調整するためのpH調整槽と、pHを調整した消化液を濃縮するための濃縮手段とを含む。
【0020】
本発明の消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置は一実施の形態において、混和槽が所望量の消化液を供給するための消化液供給手段と、所望量の消泡剤を供給するための消泡剤供給手段と、攪拌手段とを備えており、pH調整槽が硫酸供給手段と攪拌手段とを備えている。消化液供給手段としては、図2に例示するような消化液貯留槽、ポンプ、流量計の組み合わせによる構成などを挙げることができる。消泡剤供給手段としては、図2に例示するような消泡剤貯留槽、ポンプ、流量計の組み合わせによる構成などを挙げることができる。硫酸供給手段としては、硫酸貯留槽と、pH制御盤により制御されるポンプおよびpHメータの組み合わせによる構成などを挙げることができる。
このような構成により、所望量の消化液に対して好ましい範囲で消泡剤を供給することができ、かつ、硫酸添加前の混和槽において消化液と消泡剤とを十分に混合することができる。
【0021】
また本発明の消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置は一実施の形態において、消化液を固液分離するための固液分離手段をさらに含む。固液分離手段は消化液供給手段に連結されており、固液分離手段により得られた分離液は消化液供給手段を介して混和槽へと送られる。固液分離手段としては、上述のように、消化液中の固形分を分離できるものであれば限定されず、公知の搾汁機、遠心脱水機等を採用することができる。
このような構成により消化液中に含まれる径の大きい固形物をあらかじめ取り除くことができ、後の消泡剤混和工程やpH調整工程の効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の消化液から窒素含有濃縮液を製造するための装置は一実施の形態において、濃縮手段により得られた窒素含有濃縮液を乾燥するための乾燥手段をさらに含む。乾燥手段は濃縮手段と連結されており、濃縮手段により得られた窒素含有濃縮液は乾燥手段へ送ることができる。乾燥手段としては、窒素含有濃縮液を固形物へ乾燥できるものであれば限定されず、公知の乾燥機を採用することができる。
このような構成により窒素含有濃縮液を乾燥物または固形物として提供することができる。
【0023】
ここで本発明の装置の一実施の形態について図2を参照して以下に説明する。なお参照する図面は本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いるものであり、本発明の装置は図に記載の構成に限定されない。図2に示す消化液処理装置1は、消化液貯留槽2と、消泡剤貯留槽3と、混和槽4と、硫酸貯留槽5と、pH調整槽6と、濃縮原水槽7と、減圧濃縮手段8とを備える。
【0024】
メタン発酵残液としての消化液は消化液貯留槽2に貯留される。消化液貯留槽2は混和槽4と配管により接続されている。消化液貯留槽2中の消化液は、ポンプ21および流量計31により定量的に混和槽4へと供給される。消泡剤は消泡剤貯留槽3において所望の濃度となるように調整され保管される。消泡剤貯留槽3は攪拌手段51を備えており、また混和槽4と配管により接続される。消泡剤貯留槽3中の消泡剤は、ポンプ22および流量計32により定量的に混和槽4へと供給される。混和槽4は攪拌手段52を備えており消化液と消泡剤を混合する。混和槽4はpH調整槽6に配管で接続されており、消泡剤と混和した消化液はpH調整槽6へ送られる。硫酸貯留槽5において硫酸を所望の濃度に調整し保管する。硫酸貯留槽5はpH調整槽6と配管で接続されており、硫酸貯留槽5中の硫酸がポンプ23によりpH調整槽6へ送られる。pH調整槽6は攪拌手段53とpHメータ41を備えている。pHメータ41とポンプ23とはpH制御盤により制御され、所望のpHとなるように硫酸をpH調整槽6へと送る。pH調整槽6は濃縮原水槽7と配管で接続されておりpH調整槽6からオーバーフローした消化液は濃縮原水槽7へ送られる。濃縮原水槽7は攪拌手段54を備えており、減圧濃縮手段8と配管で接続されている。濃縮原水槽7中の消化液は流量調整計および調節弁の制御により減圧濃縮手段8へと送られる。減圧濃縮手段8により消化液は窒素含有濃縮液と凝縮水とに分離される。
【0025】
また本発明の装置の別の実施の形態を図3に示す。図3に示す消化液処理装置1は、消化液貯留槽2と、消泡剤貯留槽3と、混和槽4とpH調整槽6とが連結した二槽式の槽と、硫酸貯留槽5と、濃縮原水槽7と、減圧濃縮手段8とを備える。消泡剤と消化液は当該二層式の混和槽4部分の上部より投入される。混和槽4部分は、消化液がその槽内において消泡剤と混和するための十分な滞留時間を有するように設計することができる。これにより消泡剤と十分に混和した消化液は、混和槽4の下部からpH調整槽6部分へと送られ、pH調整槽内において硫酸によりpHが調整される。pH調整槽6部分は、消化液が所望のpHに調整できるよう十分な滞留時間を有するように設計することができる。混和槽4へは一定量の消化液および消泡剤が投入され続けるため、pH調整槽6部分において所望のpHに調整された消化液はオーバーフローにより濃縮原水槽7へと送られる。図3に示す消化液処理装置のように、混和槽4とpH調整槽6とは連結した二槽式の槽としてもよい。このように二槽式の槽とすることで、槽を分割するよりも低コスト化でき好ましい。
【0026】
また本発明の装置の別の実施の形態を図4に示す。図4に示す消化液処理装置1は、消化液貯留槽2と、消泡剤貯留槽3と、混和槽4とpH調整槽6とが連結した二槽式の槽と、硫酸貯留槽5と、硫酸希釈槽9と、濃縮原水槽7と、減圧濃縮手段8とを備える。硫酸希釈槽9では、硫酸を所望の濃度に希釈することができる。図4に示す消化液処理装置のように、硫酸希釈槽をさらに備えていても良い。硫酸希釈槽は2つ以上の槽として備えることもできる。硫酸希釈槽9を備えることで、使用する硫酸が98%の濃硫酸を使用できることで硫酸の搬入量の低減が図れ、装置の省スペース化につながり好ましい。
【0027】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【実施例0028】
(I.消泡試験)
本実施例では、消化液に硫酸を滴下し、消化液から発泡を確認後、アルコール系消泡剤を添加する発泡後添加区(比較例1)を行い、その時の消泡剤の添加量と消泡時間を確認した。
また、予め消化液にアルコール系消泡剤を添加後、硫酸を滴下した場合の消泡剤の添加量と消泡時間を確認し(事前添加試験区:実施例1~4)、発泡後添加区と比較した。
さらにシリコーン系消泡剤の消泡効果を検証するため、シリコーン系消泡剤を用いて事前添加試験区と同様に試験を行った(比較例2~6)。
【0029】
1-1.試薬
消化液として、畜産排泄物のメタン発酵後に得られた消化液を用いた。当該消化液の分析結果を下記に表1に示す。消化液はpH測定や撹拌の操作に影響がでないよう、使用前に篩を用いて浮遊物を取り除いた。
【表1】
【0030】
滴定に用いた硫酸は、96%濃硫酸を20%に希釈して使用した。
消泡剤には、アルコール系消泡剤として「クリレス(登録商標)653」(栗田工業株式会社製)を、シリコーン系消泡剤として「クリレス(登録商標)S-117」(栗田工業株式会社製)および「KM-73」(信越シリコーン社製)を用いた。
【0031】
1-2.試験方法
発泡後添加区の試験は、以下のようにして行った。消化液150mlを500mLビーカーに移し、撹拌しながら消化液がpH4になるまで硫酸を1mLずつ滴下した。硫酸の滴下中、発泡が生じた際には硫酸の滴下を止め、消泡剤を少量ずつ添加し発泡から消泡までに要した時間を記録した。消泡後は、再度消化液がpH4になるまで硫酸を1mLずつ滴下し発泡後の消泡剤の添加と発泡から消泡までに要した時間を記録した。この作業を消化液がpH4付近になるまで繰り返し行った。
事前添加試験区の試験は、以下のようにして行った。消化液150mlを500mLビーカーに移し、消化液に対し事前に消泡剤を一定量添加した。消泡剤添加後に消化液を撹拌し十分に混合した。次いで、消化液がpH4になるまで撹拌しながら硫酸を1mLずつ滴下した。
硫酸の滴下中、発泡が生じた際には消泡するまで硫酸の滴下を止めて撹拌操作を続け、発泡から消泡までの時間を記録した。消泡後は、再度消化液がpH4になるまで硫酸を1mLずつ滴下した。発泡が生じたら同様に消泡するまで硫酸の滴下を止めて撹拌操作を続け、発泡から消泡までの時間を記録した。この作業を消化液がpH4付近になるまで繰り返し行った。
なお、消泡時間は泡の層が形成されてから液体の表面が可視できる状態まで要した時間とした。
【0032】
1-3.試験条件
事前添加試験区では、事前に添加する消泡剤を下記表に記載する濃度となるように用いた。また消化液が発泡した際には、液内に抵抗が生まれ撹拌が止まってしまうため撹拌の回転数を適宜上昇させた。下記表2に各試験区における撹拌の初期回転数および上昇後の回転数を示す。
【表2】
【0033】
2.結果
2-1.比較例1
発泡後添加(比較例1)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図5に示す。図5に示すように、pHが7を下回ったあたりから発泡が確認された。硫酸を3ml滴下時、pHは6.7となり、10mmの厚さの泡の層を形成した。撹拌時、消化液に流れを確認できたが、泡の層が出来た時は液の流れがなくなっていた。撹拌子の回転数を1,200rpmに上昇させた。消泡剤を333ppm添加した。消泡剤添加から30秒で消泡したため、継続して硫酸を滴下した。消泡剤を入れた後は時間が掛かるものの撹拌のみで消泡した。開始時と硫酸3ml滴下時の状態を図6に示す。図6に示すように発泡後に消泡剤333ppmを添加した試験区では、pH4とするまでの消泡処理に合計約12.5分要した。
【0034】
2-2.実施例1
実施例1(事前添加量1000ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図7に示す。図7に示すように硫酸6ml滴下時、泡の層(5mm程度)が形成した。この時のpHは6.3であった。また細かな泡の層が1mm程度形成しいていたが、細かな泡の層は30秒で消泡した。硫酸を7ml~8ml滴下したときは少量発泡したが、30秒で消泡した。硫酸8ml滴下後、回転数を1,000rpmに上昇させた。6ml滴下時の状態を図8に示す。
硫酸添加前にあらかじめ消泡剤を消化液に混合させておくことで、発泡後に消泡剤を添加する比較例1と比較して、顕著に消泡時間を短縮することができた。
【0035】
2-3.実施例2
実施例2(事前添加量100ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図9に示す。図9に示すように硫酸2ml滴下時、泡の層が形成した。硫酸2ml滴下時、撹拌が止まったため、回転数を1,000rpmに上昇した。硫酸5ml滴下時、3mm程度の泡の層が形成した。その時のpHは6.3であった。発泡後は1分で消泡した。硫酸6ml滴下時、5mm程度の泡の層が形成した。pHは6.0であった。発泡後は1分で消泡した。図9に示すように、本実施例では生じた泡の消泡に合計約5.5分要した。硫酸5ml滴下時及び6ml滴下時の状態を図10に示す。
比較例1(333ppm)よりも3分の1以下の消泡剤の使用量(100ppm)であっても、硫酸添加前にあらかじめ消泡剤を消化液に混合させておくことで、発泡後に消泡剤を添加する比較例1と比較して、顕著に消泡時間を短縮することができた。
【0036】
2-4.実施例3
実施例3(事前添加量20ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図11に示す。図11に示すように硫酸2ml滴下時、泡の層が形成した。硫酸2ml滴下時、撹拌が止まったため、回転数を1,000rpmに上昇させた。硫酸3ml滴下時、3mm程度の泡の層が形成した。pHは6.4であった。発泡後は1分で消泡した。硫酸5ml滴下時、5mm程度の泡の層が形成した。pHは6.0であった。発泡後は1分で消泡した。硫酸3ml滴下時及び5ml滴下時の状態を図12に示す。
比較例1(333ppm)よりも15分の1以下の消泡剤の使用量(20ppm)であっても、硫酸添加前にあらかじめ消泡剤を消化液に混合させておくことで、発泡後に消泡剤を添加する比較例1と比較して、顕著に消泡時間を短縮することができた。
【0037】
2-5.比較例2
比較例2(事前添加量10ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図13に示す。図13に示すように硫酸3ml滴下時、泡の層が形成した。硫酸3ml滴下時にも2mm程度の泡の層が形成した。pHは6.5であった。発泡後は2分で消泡した。硫酸6ml滴下時にも5mmの泡の層が形成した。このときのpHは5.9であった。発泡後は4分で消泡した。6ml滴下時の状態を図14に示す。
【0038】
2-6.比較例3
比較例3(シリコーン系消泡剤「クリレスS-117」使用;事前添加量1000ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図15に示す。図15に示すように硫酸2ml滴下時、泡の層(5mm)が形成した。pHは6.8であった。撹拌がビーカー側面から確認できなかったため、回転数を750rpmに上昇させたところ3分で消泡した。硫酸3ml滴下後、ビーカー側面から撹拌が見られなくなったため、回転数を1,000ppmに上昇させた。硫酸6ml滴下時にも5mm程度の泡の層が形成した。pHは6.0であった。発泡後は2分で消泡した。硫酸2ml滴下時および硫酸6ml滴下時の状態を図16に示す。
【0039】
2-7.比較例4
比較例4(シリコーン系消泡剤「KM-73」使用;事前添加量1000ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図17に示す。図17に示すように硫酸3ml滴下時、泡の層(3mm)が形成した。pHは6.6であった。硫酸6ml滴下時にも5mm程度の泡の層が形成した。pHは6.0であった。発泡後は5分で消泡した。硫酸3ml滴下時および硫酸5ml滴下時の状態を図18に示す。
【0040】
2-8.比較例5
比較例5(シリコーン系消泡剤「クリレスS-117」使用;事前添加量100ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図19に示す。図19に示すように硫酸3ml滴下時、泡の層(5mm)が形成した。pHは6.4であった。発泡後5分で消泡した。硫酸6ml滴下時にも5mm程度の泡の層が形成した。pHは5.5であった。発泡後は5分で消泡した。硫酸5ml滴下時および硫酸6ml滴下時の状態を図20に示す。
【0041】
2-9.比較例6
比較例5(シリコーン系消泡剤「KM-73」使用;事前添加量100ppm)のpH変動および消泡時間の関係を示すグラフを図21に示す。図21に示すように硫酸3ml滴下時、泡の層(5mm)が形成した。pHは6.4であった。発泡後2分で消泡した。硫酸4ml滴下時、泡の層(5mm)が形成した。pHは6.2であった。発泡後5分で消泡した。硫酸5ml滴下時、泡の層(3mm)が形成した。pHは6.0であった。発泡後4分で消泡した。図22に示すように、本比較例では生じた泡の消泡に合計約16分要した。硫酸3ml滴下時および硫酸4ml滴下時の状態を図22に示す。
実施例2(アルコール系消泡剤;事前添加量100ppm)と比較例6(シリコーン系消泡剤;事前添加量100ppm)との結果は、アルコール系消泡剤の使用が、シリコーン系消泡剤の使用による消泡に要した合計時間の約3分の1に短縮することができることを示す。
【0042】
(II.消化液処理後の性状分析)
本実施例では、本発明に係る消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法を用いて消化液から窒素含有濃縮液および凝縮水を得て、当該窒素含有濃縮液および凝縮水の性状を分析した。
1.消化液の減圧濃縮試験
消化液に対して100ppmとなるように消泡剤を添加し十分に混合した。その後消化液を攪拌しながら20wt%硫酸を加えてpHを4に調整した。pH調整により消化液中に硫安を生成した消化液を、ロータリーエバポレータを用いた真空蒸発濃縮に供し、窒素含有濃縮液と凝縮水を得た。ロータリーエバポレータの運転条件は操作圧力20kPa.A、恒温槽温度82℃、回転数70rpmとした。上記減圧濃縮試験を2回行い、分析用のサンプルを2回分得た。
【0043】
2.結果
上記試験の結果得られた窒素含有濃縮液および凝縮水の性状について分析した。消化液の減圧濃縮試験は2回行い、それぞれにおいて得られた窒素含有濃縮液および凝縮水の性状を分析した。その結果を下記表に示す(表中、-はデータの測定を行っていないことを示す)。また当該窒素含有濃縮液および凝縮水の状態を図23に示す。
【表3】
【0044】
表3に示すように、消化液原液のアンモニア濃度は2300mg/kgであった。一方、濃縮後の凝縮水中のアンモニア濃度はほぼゼロであった(5mg/L未満)。本試験において消化液原液の濃縮倍率は2.5倍であった。よって、計算上窒素含有濃縮液中には約5700mg/kgのアンモニア性窒素が固定されていると考えられる。
このように、本発明の消化液から窒素含有濃縮液を製造する方法によれば、得られる窒素含有濃縮液は高濃度のアンモニア性窒素を含有する。さらに、窒素含有濃縮液とともに得られる凝縮水はアンモニアをほとんど含んでおらず、硝化や脱窒処理を必要とせず、そのまま排水することができる。
【0045】
(III.硫酸注入量と消化液の性質との関係)
本実施例では、消化液濃縮にかかわる硫酸注入量の検討を行った。また消化液の濃縮にかかる硫酸の注入量に関して、アンモニア性窒素及びMアルカリ度の数値との関係性を検討した。
【0046】
1-1.試薬
消化液として、稲川牧場(以下消化液I)、小林牧場(以下消化液K)、または、みんなの牧場(以下消化液M)由来の畜産排泄物のメタン発酵後に得られた消化液を用いた。消化液I及び消化液Kは開き目1mmのメッシュにて分離し、通過した消化液を使用した。消化液Mについては分離後の消化液であり、そのまま使用した。
消化液3種類の初期値の分析結果を下記表4に示す。蒸発残留物はJIS K 0102 14.2に記載の測定方法に準じて測定した。NH-NはJIS K 0102 42.1 42.3に記載の測定方法に準じて測定した。Mアルカリ度は下水道試験法(日本下水道協会) 5.1.13に記載の測定方法に準じて測定した。表4に示すように、蒸発残留物、NH-N(アンモニア性窒素)及びt-VFA(揮発性脂肪酸総量)は消化液Iが最も高く、次いで高かったのは消化液Kであり、消化液Mが最も低かった。アルカリ度は消化液Iが最も高く、次いで消化液Mであり、最も低かったのは消化液Kであった。
【表4】
また96%硫酸を水で薄めて20%硫酸を調整し、使用した。
【0047】
1-2.試験方法
各消化液150mlを500mLビーカーに移し、各消化液に対して100ppmのクリレス653を添加した。1,000rpmで攪拌しながら、pHが4.8になるまで20%硫酸を滴下した。硫酸の滴下後、消化液のサンプルを分析した。試験は消化液ごとに2回ずつ行い、その平均値を分析結果とした。
【0048】
2.結果
消化液3種類のpH4.8までの滴定結果を下記表5示す。また図24に消化液ごとの滴定結果の平均を示す。消化液Iに対する硫酸滴定量は10.4mLであり、消化液Kに対する硫酸滴定量9mLであり、消化液Mに対する硫酸滴定量は9.7mLであった。
【表5】
【0049】
図25に硫酸滴下量と蒸発残留物の関係、図26に硫酸滴下量とアンモニア性窒素量(NH-N)との関係、図27に硫酸滴下量とMアルカリ度の関係を示す。図25~27に示すように、硫酸の滴下量と各水質項目とは比例の相関関係を示し、検量線を描くことができた。硫酸の滴定量は、消化液量150mLに対しては6-6.8%の注入率であった。さらに、Mアルカリ度1g当たりの硫酸滴下量は1.2~1.6mg-H2SO4/gアルカリ度であった。
試験前後の消化液分析結果の平均値の数値を表6に示す。
【表6】
【0050】
(IV.アルコール系消泡剤の検討)
1-1.試薬
消化液として、みんなの牧場由来の畜産排泄物のメタン発酵後に得られた消化液(消化液M)を用いた。当該消化液は固液分離後の消化液であるため、そのまま使用した。
消泡剤には、クリレス653、SNデフォーマー 170、FK消泡剤 FALC-108、または、ダッポー H312を用いた。
【0051】
1-2.試験方法
各消化液150mlを500mLビーカーに移し、各消化液に対して100ppmの各消泡剤を添加した。1,000rpmで攪拌しながら、pHが5.0になるまで20%硫酸を滴下した。硫酸を滴下した際の発泡が消えるまでの時間及び泡の層の厚みを計測し、メーカー毎のアルコール系消泡剤での効果を比較した。
発泡開始の条件は液面に泡が確認できたときとし、消泡の条件は液面に泡が見られなくなった時とした。
【0052】
2.結果
消化液3サンプル(消化液M:みんなの牧場)に各消泡剤を100 ppm事前添加した。その後、pHが5.0になるまでの20%硫酸の滴下量とpHの関係を表7および図28に示す。表7および図28に示すように、消化液対して各アルコール系消泡剤を入れた際のpH変化は、どの消泡剤でもpH5.0になるまでの硫酸滴下量に差はなかった。
【表7】
【0053】
また硫酸滴下時の各消泡剤における消泡時間を図29に示す。図29に示すように、いずれのアルコール系消泡剤を用いた場合も各pH時点において1分未満の消泡時間を示した。このように、クリレス653以外のアルコール系消泡剤も好ましい消泡時間の結果を示した。
【0054】
(V.窒素含有濃縮液の製造例)
図2に示す消化液処理装置を用いて、消化液から窒素含有濃縮液を製造した。
具体的には、混和槽内においてメタン発酵後の消化液(固液分離後)38L/時に対して100ppmとなるように消泡剤を添加し、5分間撹拌した。消泡剤を十分に混和した消化液をpH調整槽に移し、pH5となるように20%硫酸を添加し5分間撹拌した。pH調整後の消化液を濃縮原水槽に移した後、減圧濃縮装置を用いて窒素含有濃縮液と凝縮水とに分離した。用いた消化液、ならびに、得られた窒素含有濃縮液および凝縮水の成分分析結果を下記表に示す。
【表8】
表8に示すように、本発明の方法により製造された窒素含有濃縮液は高濃度の窒素を含有していた。このような高濃度窒素を含有する濃縮液は液肥や乾燥させて固形肥料として用いることができる。一方で、消化液の濃縮処理により分離した凝縮水はSS、T-N、BOD、CODMnのいずれも低い値であり一般排水基準を満たすものであった。
【符号の説明】
【0055】
1 消化液処理装置
2 消化液貯留槽
3 消泡剤貯留槽
4 混和槽
5 硫酸貯留槽
6 pH調整
7 濃縮原水槽
8 減圧濃縮手段
9 硫酸希釈槽
21、22、23、24 ポンプ
31、32 流量計
41 pHメータ
51、52、53、54、55 攪拌手段
図1
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