(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179458
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックと、カップリングフランジを有する、高温状態で気密のカップリングシステムとから成るアセンブリ
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20221125BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20221125BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20221125BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20221125BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20221125BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20221125BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20221125BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221125BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20221125BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20221125BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20221125BHJP
H01M 8/2432 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B1/23
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B9/77
C25B9/60
C25B9/65
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2465
H01M8/248
H01M8/2483
H01M8/2432
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022082977
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】2105242
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ イオリオ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルヴァソーニ,バスティエン
(72)【発明者】
【氏名】モネ,ティボー
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021BA17
4K021CA01
4K021CA07
4K021DB04
4K021DB36
4K021DB46
4K021DB53
4K021EA02
5H126AA25
5H126AA28
5H126BB06
5H126EE11
5H126GG08
5H126HH01
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の主な目的は、SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックと、当該固体酸化物スタックをクランプするためのシステムと、を含むアセンブリを提供することである。
【解決手段】アセンブリ(80)は、また、高温で気密のカップリングのための1つのシステム(90)を含み、このシステム(90)は、ガス入口及び/又は出口管(103)が通過できるようにするためのカップリングフランジ(110)と、クランプヘッド(115a)が設けられた少なくとも1つのクランプねじと、上部クランププレート(45)及び下部クランププレート(46)の前記少なくとも一方とカップリングフランジ(110)との間に接して配置されたシールと、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセンブリ(80)であって、
-高温で動作するSOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)を備え、当該固体酸化物スタック(20)が、
-カソード、アノード、及び、カソードとアノードとの間に介在する電解質により各々が形成された複数の電気化学セル(41)と、2つの隣接する電気化学セル(41)の間に各々が配置されている複数の中間インターコネクタ(42)と、を含み、前記アセンブリ(80)が、さらに、
-前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)をクランプするためのシステム(60)を備え、当該システム(60)が、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)がその間に把持される上部クランププレート(45)及び下部クランププレート(46)を含み、各クランププレート(45,46)が、少なくとも2つのクランプオリフィス(54)を含み、前記クランプするためのシステム(60)が、さらに、
-各々が、前記上部クランププレート(45)のクランプオリフィス(54)を通り、且つ、前記下部クランププレート(46)の対応するクランプオリフィス(54)を通って延在し、それにより前記上部クランププレート(45)と前記下部クランププレート(46)の組み付けを可能にするよう意図された少なくとも2つのクランプロッド(55)と、
-前記少なくとも2つのクランプロッド(55)と協働して、前記上部クランププレート(45)と前記下部クランププレート(46)の組み付けを可能にすることが意図された、前記上部クランププレート(45)及び前記下部クランププレート(46)の各クランプオリフィス(54)におけるクランプ手段(56,57,58)と、を含む前記アセンブリ(80)において、さらに、
-前記上部クランププレート(45)及び前記下部クランププレート(46)の少なくとも一方に取り付けられた、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)の、高温で気密のカップリングのための少なくとも1つのシステム(90)を備えることを特徴とし、当該システム(90)が、
-前記上部クランププレート(45)及び前記下部クランププレート(46)の少なくとも一方に取り付けられたカップリングフランジ(110)を含み、当該カップリングフランジ(110)が、ガス入口及び/又は出口管(103)の通過を可能にするための貫通内部導管(111)と、第1内ねじ(112a)を含む少なくとも1つの第1貫通内ねじオリフィス(112)と、を含み、前記システム(90)が、さらに、
-前記少なくとも1つの第1貫通内ねじオリフィス(112)にねじ込まれることができる、クランプヘッド(115a)が設けられた少なくとも1つのクランプねじ(115)と、
-シール(118)と、を含み、当該シール(118)が、前記上部クランププレート(45)及び前記下部クランププレート(46)の少なくとも一方と、前記カップリングフランジ(110)の、前記第2端面(110b)とは反対側の第1端面(110a)との間に接して配置され、且つ、
前記上部クランププレート(45)及び前記下部クランププレート(46)の少なくとも一方が、前記第1内ねじ(112a)の反対側の第2内ねじ(113a)を含む少なくとも1つの第2内ねじオリフィス(113)を含み、前記少なくとも1つのクランプねじ(115)が、前記少なくとも1つの第2内ねじオリフィス(113)に、前記カップリングフランジ(90)を前記上部クランププレート(45)及び前記下部クランププレート(46)の少なくとも一方に取り付けるためにねじ込まれることができ、且つ、ガス通路貫通導管(102)を含み、当該ガス通路貫通導管(102)が、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)及び前記ガス入口及び/又は出口管(103)と流体連通するよう意図されていることを特徴とする、アセンブリ。
【請求項2】
前記上部クランププレート(45)及び前記下部(46)クランププレートの前記少なくとも一方と前記カップリングフランジ(110)とが、同一の材料、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼から作製されることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ガス入口及び/又は出口管(103)が、少なくとも4つの巻きを具体的には含む螺旋状巻線(103e)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのクランプねじ(115)と前記カップリングフランジ(110)とが、同一の材料、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼から作製されることを特徴とする、前記請求項1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記クランプねじ(115)の個数、前記第1貫通内ねじオリフィス(112)の個数、及び前記第2内ねじオリフィス(113)の個数が、2~10、特には4に等しいことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記カップリングフランジ(110)が、具体的には凹形状である少なくとも1つのショルダ(120)を前記カップリングフランジ(110)の側面(110c)上に含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記複数の電気化学セル(41)及び前記複数の中間コネクタ(42)がその間に把持される上端プレート(43)及び下端プレート(44)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
システム(130)であって、
-請求項1~7のいずれか一項に記載のアセンブリ(80)と、
-少なくとも1つのガス入口及び/又は出口管(103)が接続された炉(10)と、を含み、当該炉(10)に、高温で動作するSOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)が、ガスの流入及び流出用に、高温で気密の前記少なくとも1つのカップリングシステム(90)によりカップリングされていることを特徴とする、システム(130)。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のアセンブリ(80)又は請求項8に記載のシステム(130)により実施されるSOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)を高温で気密にカップリングする方法であって、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック(20)を少なくとも1つのガス入口及び/又は出口管(103)に、前記少なくとも1つのカップリングシステム(90)を用いて高温で気密にカップリングするステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記カップリングの前に前記カップリングフランジ(110)及び前記少なくとも1つのクランプねじ(115)を熱処理するステップを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理するステップが、予め決められた熱処理温度、具体的には600℃~950℃、特には700℃~870℃まで、具体的には5℃/分の速度で漸進的に加熱して、予め決められた熱処理温度でのプラトー、具体的には、10分~数時間、特には10分~1時間に到達させ、次いで、漸進的に冷却し、具体的には5℃/分の速度で最初の温度まで下げるステップから成ることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カップリングの前に、前記少なくとも1つのクランプねじ(115)に、耐高温性の結合防止型ペーストを付与することを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記結合防止型ペーストはその組成においてクロム粉末Cr3を10%~90%、特には約50%の重量割合で含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での水の電気分解(EHT)、特には、高温での水蒸気の電気分解(EVHT)(それぞれ英語では“high temperature electrolysis”「高温電気分解」(HTE)及び“high temperature steam electrolysis”「高温水蒸気電気分解」(HTSE)で示される)、二酸化炭素(CO2)の電気分解、さらには、高温での水の電気分解(HTE)と二酸化炭素(CO2)の共電解の一般的分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、高温固体酸化物電解槽(通常、SOEC(英語で“solid oxide electrolyser cell”)の頭文字で示される)の分野に関する。
【0003】
また、本発明は、高温固体酸化物燃料電池(通常、SOFC(英語で“solid oxide fuel cells”)の頭文字で示される)の分野にも関連している。
【0004】
従って、より広くは、本発明は、高温で動作するSOEC/SOFC型の固体酸化物スタックの分野に関する。
【0005】
より正確には、本発明は、SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックと、当該スタックの、高温で気密(高温状態で気密)(gastight at high temperature)のカップリングのための、カップリングフランジを含むシステムとを備えたアセンブリに関する。また、本発明は、このようなアセンブリと、このようなカップリングシステムを用いて前記スタックにカップリングされた炉と、そして、関連するカップリング方法に関する。
【背景技術】
【0006】
SOEC型の高温固体酸化物電解槽に関しては、1つの同一の電気化学デバイス内で、電流により、水蒸気(H2O)を二水素(H2)と二酸素(O2)とに変換し、且つ/又は、二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)と二酸素(O2)とに変換することになる。SOFC型の高温固体酸化物燃料電池に関しては、電流及び熱を生成するために、動作は逆になり、二水素(H2)と二酸素(O2)、典型的には、空気と天然ガス、すなわちメタン(CH4)を供給する。簡略化のために、以下の説明は主に、水の電気分解を行うSOEC型の高温固体酸化物電解槽の動作に関する。しかし、この動作は、二酸化炭素(CO2)の電気分解、又は、二酸化炭素(CO2)との高温電気分解(HTE)の共電解にも適用可能である。またこの動作を、SOFC型の高温固体酸化物燃料電池の場合に置き換えることも可能である。
【0007】
水の電気分解を行うためには、高温で、典型的には600℃~1000℃で行うことが有利である。なぜなら、液体の水よりも水蒸気を電気分解する方が有利であり、また反応に必要なエネルギーの一部を、電気よりも安価な熱により提供できるからである。
【0008】
高温電気分解(HTE)を実施するために、SOEC型の高温固体酸化物電解槽は、上下に重ね合わせたアノード/電解質/カソードの3つの層から成る固体酸化物電解セル又は電気化学セルを各々含む基本パターンのスタックと、相互接続プレート(大抵は金属合金からつくられ、二極プレート又はインターコネクタとも称される)とで構成される。各電気化学セルは、2枚の相互接続プレートの間に把持されている。そして、SOEC型の高温固体酸化物電解槽は、電気化学セルとインターコネクタとの交互スタックである。SOFC型の高温固体酸化物燃料電池は、基本パターンのスタックと同じタイプのスタックで構成される。この高温技術は可逆的であるため、同一のスタックが電気分解モードで動作して、水と電気から水素と酸素を生成でき、又は、燃料電池モードでは、水素と酸素から電気を生成できる。
【0009】
各電気化学セルは電解質/電極アセンブリに対応し、それは、典型的には多層セラミックアセンブリであり、その電解質が中央のイオン伝導層により形成され、この層は固体で、高密度で気密であり、電極を形成している2つの多孔質層の間に把持されている。補助的な層が存在してもよいが、それらは既に記載した1以上の層の改良に寄与するに過ぎないことに留意されたい。
【0010】
電気的及び流体的な相互接続装置は、以下のような電子伝導体である。すなわち、電気的観点からは、基本パターンのスタック内の各基本パターンの電気化学セルの接続を提供し、1つのセルの面とカソードとの間の電気的接触及び次のセルの他方の面とアノードとの間の電気的接触を保証する。そして、流体的観点からは、各セルの生成物を組み合わせる。このようにしてインターコネクタは、電流を運んで収集し、ガスを循環させるために、また、分配及び/又は収集のために、コンパートメントを区画する機能を果たす。
【0011】
より正確には、インターコネクタの主な機能は、電流の通路だけでなく、各セル付近でのガス(すなわち、注入された水蒸気、HTE電気分解のために抽出された水素及び酸素;SOFCセルのために注入及び抽出された水素及び水を含む空気及び燃料)の循環を提供すること、そして、隣接する2つのセルのアノードコンパートメントとカソードコンパートメント(ガスの循環のためのコンパートメントであり、それぞれ、セルのアノード及びカソード)を分離することである。
【0012】
詳細には、SOEC型の高温固体酸化物電解槽では、カソードコンパートメントは、電気化学反応により生成された水蒸気及び水素を含み、一方、アノードコンパートメントは、排出ガス(存在する場合)、及び、電気化学反応の別の生成物である酸素を含む。SOFC型の高温固体酸化物燃料電池の場合、アノードコンパートメントは燃料を含み、カソードコンパートメントは酸化剤を含む。
【0013】
高温での水蒸気の電気分解(HTE)を行うために、水蒸気(H2O)をカソードコンパートメントに注入する。セルに付与される電流の作用により、水蒸気の形態での水分子の解離が、水素電極(カソード)と電解質との界面で達成される。この解離により二水素ガス(H2)と酸素イオン(O2-)が生成される。二水素(H2)は、水素コンパートメント出口にて回収されて排出される。酸素イオン(O2-)は、電解質を通って移動して、電解質と酸素電極(アノード)との界面で酸素(O2)として再結合する。排出ガス、例えば空気をアノードにて循環させることができ、これにより、ガスの形態で発生された酸素をアノードにて回収できる。
【0014】
固体酸化物燃料電池(SOFC)の動作を保証するために、空気(酸素)をセルのカソードコンパートメントに注入し、水素をアノードコンパートメントに注入する。空気中の酸素は分解してO2-イオンになる。これらのイオンは、カソードの電解質中をアノードに向かって移動し、水素を酸化して水を生成し、同時に電気を発生させる。SOFCセルにおいて、SOEC電解槽と同様に、水蒸気が二水素(H2)コンパートメントに配置される。極性のみが逆になる。
【0015】
例として、
図1に、SOEC型の高温固体酸化物電解槽の動作原理を示す概略図が示されている。このような電解槽の機能は、以下の電気化学反応に従って水蒸気を水素と酸素に変換することである。すなわち、
2H
2O→2H
2+O
2
【0016】
この反応は、電解槽のセル内で電気化学的に実行される。
図1に概略的に示されているように、各基本電解セル1は、固体電解質3の両側に配置されたカソード2及びアノード4により形成されている。2つの電極(カソード及びアノード)2及び4は、多孔質材料からつくられた電子及び/又はイオン伝導体であり、電解質3は、気密性、電子絶縁性、及びイオン伝導性である。電解質3は、詳細には、アニオン導電体であり得、より正確にはO
2-イオンのアニオン伝導体であり得、この場合、電解槽はプロトン(H
+)電解質と対比して、アニオン電解槽と称される。
【0017】
電気化学反応は、電子伝導体の各々とイオン伝導体との界面で行われる。
【0018】
カソード2にて、以下の半反応が生じる:
2H2O+4e-→2H2+2O2-
【0019】
アノード4では、以下の半反応が生じる:
2O2-→O2+4e-
【0020】
2つの電極2及び4の間に介在する電解質3は、O2-イオンが、アノード4とカソード2との間に与えられる電位差により生じる電界の影響下で移動する場所である。
【0021】
図1の括弧内に示されているように、カソード入口の水蒸気が水素H
2を同伴していてよく、出口で生成及び回収される水素に水蒸気が同伴していてよい。同様に、破線で示されているように、空気などの排ガスをさらに入口に注入して、発生した酸素を排出できる。排ガス注入という付加的機能が、温度調整器の役割を果たす。
【0022】
基本電解槽、又は電解リアクタが、カソード2、電解質3及びアノード4を有する上述の基本セルと、電気、水圧、及び熱の分配機能を果たす2つのインターコネクタとから成る。
【0023】
水素及び酸素の生成速度を上げるために、複数の基本電解セルを互いに、インターコネクタで分離しながら積み重ねることが知られている。このアセンブリは、電解槽(電解リアクタ)への電気供給及びガス供給をサポートする2つの端部相互接続プレートの間に配置される。
【0024】
このように、SOEC型高温固体酸化物電解槽が、少なくとも1つ、一般的には、互いに積み重ねられた複数の電解セルを備え、各基本セルは、電解質、カソード及びアノードにより形成され、電解質はアノードとカソードとの間に介在している。
【0025】
上述したように、1以上の電極と電気的に接触している流体及び電気相互接続装置は、一般的に、電流を供給及び収集し、また、1以上のガス循環コンパートメントを区切るという機能を果たす。
【0026】
このように、いわゆるカソードコンパートメントの機能は、電流及び水蒸気の分配と、接触しているカソードにおける水素の回収である。
【0027】
いわゆるアノードコンパートメントの機能は、電流の分配と、接触しているアソードで生成される酸素の、任意選択的に排ガスを用いた回収とである。
【0028】
図2は、先行技術によるSOEC型の高温固体酸化物電解槽の基本パターンの分解図である。この電解槽は、固体酸化物(SOEC)型の複数の基本電解セルC1,C2を含み、セルC1,C2は、インターコネクタ5と交互に積層されている。各セルC1,C2は、カソード2.1,2.2とアノード(セルC2のアノード4.2のみが示されている)から成り、その間に電解質が配置されている(セルC2の電解質3.2のみが示されている)。
【0029】
インターコネクタ5は、典型的に、金属合金から作られた部品であり、カソードコンパートメント50とアノードコンパートメント51との分離を提供し、この分離は、インターコネクタ5と隣接するカソード2.1との間に含まれる空間、及び、インターコネクタ5と隣接するアノード4.2との間に含まれる空間によりそれぞれ画成される。また、インターコネクタ5は、セルへのガスの分配も提供する。各基本パターンへの水蒸気の注入が、カソードコンパートメント50にて行われる。生成された水素、及び、カソード2.1,2.2での残留水蒸気の回収が、セルC1,C2の下流のカソードコンパートメント50にて、セルC1,C2による水蒸気の解離後に行われる。アノード4.2にて生成された酸素の回収は、セルC1,C2の下流のアノードコンパートメント51にて、セルC1,C2による水蒸気の解離後に行われる。インターコネクタ5が、セルC1とセルC2との間の電流の流通を、隣接するセル(すなわち、アノード4.2とカソード2.1)との直接接触により提供する。
【0030】
高温固体酸化物電解槽(SOEC)の運転条件は、固体酸化物燃料電池(SOFC)と非常に近く、技術的な制約も同じであることが分かっている。
【0031】
従って、高温で動作するこのようなSOEC/SOFC型の固体酸化物スタックの適切な動作のためには、主に以下の点を満たす必要がある。
【0032】
第1に、2つの連続したインターコネクタの間に電気的絶縁をもたらすことが必要である。そうしなければ、電気化学セルが短絡する可能性がある。それだけでなく、セルとインターコネクタとの間には良好な電気的接触及び十分な接触面が必要である。セルとインターコネクタとの間のオーミック抵抗を可能な限り低くすることが求められる。
【0033】
さらに、アノードコンパートメントとカソードコンパートメントとの間に気密性を持たせることが必要である。そうしなければ、生成されたガスが再結合することがあり、それにより効率が低下し、具体的には、スタックを損傷するホットスポットを発生させる。
【0034】
最後に、入口及び製品回収の両方において適切なガス分布とすることが重要である。そうしなければ、効率の低下や、様々な基本パターン内での圧力及び温度の不均一性、さらには、電気化学セルの許容外の劣化が生じるであろう。
【0035】
高温電解スタック(SOEC)、又は、高温で作動する燃料電池スタック(SOFC)における流入ガス及び流出ガスを、
図3を参照して説明するような炉の適切な装置により管理できる。
【0036】
このように、炉10は、低温部PF及び高温部PCを含み、高温部PCは、炉床11と、ガスの流入及び流出を管理するためのループ管12と、高温電解(SOEC)又は燃料電池(SOFC)スタック20とを備えている。
【0037】
ガス供給装置とガス排出装置とのカップリングが、通常、低温部PFで行われ、これは、具体的には、ダブルリング機械クランプカップリング、VCR(登録商標)メタルガスケット面シールカップリング、溶接接続、又は気密パーティションブッシュにより行われる。
【0038】
ダブルリング機械クランプカップリングの場合、2つのリングが、気密機能と管クランプの機能とを分離する。フロントリングがシールを生成し、一方、リアリングがフロントリングの軸方向の前進を可能にし、効果的な管クランプ作用を提供して、ガス漏れに対して常に非常に良好な不浸透性をもたらす。また、このクランプカップリングは、設置が簡単で、振動により生じる疲労に対する耐性が高い。溶接がない場合、取り外しは簡単である。しかし、その主な欠点として、正確には高温への耐性がないため、リアリング、フロントリング及び管が拡散溶接により共に溶接されて接合部を脱着不能にすることである。
【0039】
VCR(登録商標)メタルガスケット面シールカップリングの場合、シールは、雄ナット又は六角体と雌ナットとをクランプしているときにガスケットが2つの突起により圧縮されることにより得られる。この原理により、気密性を非常に高くし、異なるガスケット(ニッケル、銅、ステンレスなど)を最適な構成に応じて使用でき、ガスケットの交換作業中の容易な取り付け/取り外しを可能にする。しかし、この解決法は高温には適していない。なぜなら、この作業の許容温度が最大で約537℃でしかないからである。
【0040】
溶接接続の場合、全体的な気密性が、管を互いに溶接することにより得られ、これは、
TIG(「タングステン不活性ガス」の略)タイプの溶接方法により、又は、オービタル溶接機、すなわち、回転ノズルに接続されたTIG方法により行われる。しかし、炉10に取り付けられたスタック20に対する溶接作業は、管を外周にわたり溶接可能にするためのアクセス性が低いため、非常に複雑である。
【0041】
最終的に、約870℃の温度に耐えられるカップリングシステムが、センサ、プローブ、電気信号及び管を通すための、気密性の仕切りブッシングを使用して完成する。これらの気密性の仕切りブッシングは、316Lステンレス鋼のねじ付きカップリングの形態であり、パイプ、タンク、又はカバーの壁部上にねじ留めされることになる。これらのブッシングは、そのバージョンに応じて、様々なタイプ、寸法及び直径の1以上の貫通要素を受け入れる。従って、これらのブッシングは、不連続性のない要素の通過を可能にするが、2つの要素の気密連結を可能にするものではない。
【0042】
炉10の低温部PFにおけるガス供給装置とガス排出装置とのカップリングは、大きな欠点となる。なぜなら、これらの低温部PFは炉10の加熱要素から遠く、周辺機器、例えば特に、交換器、絶縁体及び凝縮器により妨げられるからである、これには、高温部PCに接続部を設置することが好ましいが、同時に、脱着及び再利用を容易にできるようにすることが望ましい。
【0043】
さらに、入口ガスの予熱のために炉10のチャンバを使用することが、炉10の加熱要素の放射を利用するために管を約2.5m~3mの長さのループ12で製造することになり、これは、限られた空間において管が適切な地点に到達することを保証しようとするため、カーブの複雑さを増大させる。
【0044】
また、スタック20を分解して別の場所で作業できるようにしたい場合に「プラグ&プレイ」(PnP)タイプの特性を与えると、まず、接続部を、例えば金属のこぎりを用いて機械的に切断し、そしてスタック20を別の炉に置くために新しい接続部を準備する必要があり、これにより作業は非常に複雑になる。
【0045】
最後に、このようなスタック20は非常に壊れやすく、場所を変える場合には可能な限り少ない作業で行う必要があることに留意されたい。従って、特に、振動及び衝撃を避けることができること、また、ひっくり返さないようにすることが必要である。
【0046】
上述のカップリングの解決方法では上記の要件を満たすことはできない。特に、ダブルリング機械クランプカップリングは高温で溶接される。この溶接は、溶接の複雑さ(アクセスが困難)のために、上述の問題を解決できず、また、解体のための管の切断を回避できない。
【0047】
先行技術のカップリングの解決方法では、スタック20を炉10から引き出して別の炉10に再接続できるようにすること、すなわち「プラグ&プレイ」特性を有することは、接合部を機械的に破壊せずにはできない。このため、組立/解体を担当する作業者は、カーブ形成(curving)、カップリング及び適合といった退屈な作業を実行しなくてはならない。
【0048】
SOEC/SOFCモードでの高温での接続のための着脱可能な気密システムの例として、特許文献1から知られる。マイカジョイントが、平滑なベースとねじ付きベースとの間に使用されて、着脱可能で再利用可能な気密接続を実現している。このシステムは、高温でのカップリングを解決することは可能だが、過度に大きいリーク率を伴う場合がある。また、マイカジョイントは、熱サイクル後に残渣を残すことがあり、別のガスケットを取り付ける前にこの残渣を除去する必要がある。
【0049】
また、特許文献2は、高温SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックのための自己完結型クランプシステムの原理を記載している。そして、特許文献3は、このようなクランプシステムを用いた、高温で気密のカップリングシステムの原理を記載している。
【0050】
正確には、この特許文献3は、管の通過を可能にする第1の内部貫通導管を有するクランプベース、この導管内に配置され且つ第2の内部貫通導管を含む支持ベース、及び、支持ベースの第1端部に接して配置されたシールの使用を記載している。クランププレートが、シールのための支持面を有するガス通路貫通導管と、クランプベースのねじ山を受けるためのねじ付きカウンターシンクとを含む。
【0051】
しかし、この解決策は、第1貫通内部導管に管を配置させることを必要とし、第1貫通内部導管は、第2貫通内部導管に配置された別の管に溶接される。この2つの管の間の溶接により変形が生じることがあり、これが、提案されたシステムの確立を複雑にするであろう。さらに、クランププレートの加工を深くしなければならないという欠点がある。同様に、シールは溝の底部に位置し、支持ベースにより圧縮されるため、組立及び分解作業中に支持ベースを清掃することが困難な場合があり、これが気密性能を制限する。さらに、この解決策では、スペースの問題が生じ得る。なぜなら、支持ベースの直径が大きいため、大きいキーの使用が必要であり、その操作が、中央の支持スタッドの存在により制限されるからである。また、シールをクランプするための単一のねじの存在により、クランプトルクが約12N.mほどに高くなり得る。さらに、この解決策では、高温耐性の結合防止型ペーストの、銅、アルミニウム及びグラファイトをベースにした配合が最適ではないためねじが互いに結合することがあり、解体において問題が生じ得る。最後に、この解決策は、スタックをクランププレートに密閉して接続する方法について詳述していない。
【0052】
従って、高温電解スタック(SOEC)又は燃料電池(SOFC)のための先行技術の既知のカップリング方法を改善する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】仏国特許出願公開第3061495号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第3045215号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第3100932号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0054】
本発明の目的は、上述の要件及び先行技術の実施形態に関する欠点を少なくとも部分的に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0055】
従って、本発明の目的は、その一態様によれば、アセンブリであり、当該アセンブリは、
-高温で動作するSOEC/SOFC型の固体酸化物スタックを備え、当該固体酸化物スタックは、
-カソード、アノード、及びカソードとアノードとの間に介在する電解質により各々が形成された複数の電気化学セルと、2つの隣接する電気化学セルの間に各々が配置されている複数の中間インターコネクタとを含む。前記アセンブリは、さらに、
-前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックをクランプするためのシステムを備え、当該システムは、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックがその間に把持される上部クランププレート及び下部クランププレートを含み、各クランププレートは、少なくとも2つのクランプオリフィスを含む。前記クランプするためのシステムは、さらに、
-各々が、前記上部クランププレートのクランプオリフィスを通り、且つ、前記下部クランププレートの対応するクランプオリフィスを通って延在し、それにより前記上部クランププレートと前記下部ランププレートの組み付けを可能にするよう意図された少なくとも2つのクランプロッドと、
-前記少なくとも2つのクランプロッドと協働して、前記上部クランププレートと前記下部クランププレートの組み付けを可能にすることが意図された、前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの各クランプオリフィスにおけるクランプ手段と、を含む。前記アセンブリは、さらに、
-前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの少なくとも一方に取り付けられた、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックの、高温で気密のカップリングのための少なくとも1つのシステムを備えることを特徴とし、当該システムは、
-前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの少なくとも一方に取り付けられたカップリングフランジを含み、当該カップリングフランジが、ガス入口及び/又は出口管の通過を可能にするための貫通内部導管と、第1内ねじを含む少なくとも1つの第1貫通内ねじオリフィスと、を含む。前記システムは、さらに、
-前記少なくとも1つの第1貫通内ねじオリフィスにねじ込まれることができる、クランプヘッドが設けられた少なくとも1つのクランプねじと、
-シールと、を含み、当該シールは、前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの少なくとも一方と、前記カップリングフランジの、前記第2端面とは反対側の第1端面との間に接して配置されており、且つ、
前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの少なくとも一方が、前記第1内ねじの反対側の第2内ねじを含む少なくとも1つの第2内ねじオリフィスを含み、前記少なくとも1つのクランプねじが、前記少なくとも1つの第2内ねじオリフィスに、前記カップリングフランジを前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの少なくとも一方に取り付けるためにねじ込まれることができ、且つ、ガス通路貫通導管を含み、当該ガス通路貫通導管は、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック及び前記ガス入口及び/又は出口管と流体連通することを意図されていることを特徴とする。
【0056】
本発明によるアセンブリは、さらに、単独で、又は全ての可能な技術的組合せにより得られる以下の特徴のうちの1以上を含み得る。
【0057】
有利には、前記上部クランププレート及び前記下部クランププレートの前記少なくとも一方と前記カップリングフランジとは、同一の材料、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼、例えば310Sタイプから作製され得る。
【0058】
さらに、前記ガス入口及び/又は出口管は、螺旋状巻線(具体的には少なくとも4つの巻きを含む)を含み得、これらの巻線は、例えば、内径10mm、外径12mmの管に対して、直径200mmである。
【0059】
また有利には、前記少なくとも1つのクランプねじと前記カップリングフランジとは、同一の材料、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼、例えば310Sタイプから作製され得る。
【0060】
また、前記クランプねじの個数、前記第1貫通内ねじオリフィスの個数、及び前記第2内ねじオリフィスの個数は、2~10、特には4に等しくてよい。
【0061】
前記カップリングフランジは、具体的には凹形状である少なくとも1つのショルダを、前記カップリングフランジの側面上に含み得る。
【0062】
前記シールは、金属シール、特にはC字状の柔軟な金属シールにより形成され得る。このシールは、連続した巻きを有する金属螺旋ばねにより形成されるコアと、ばねがその中に埋め込まれた第1の金属包囲体と、当該第1の包囲体がその中に埋め込まれた第2の金属包囲体とを含む。
【0063】
前記アセンブリは、有利には、前記複数の電気化学セル及び前記複数の中間コネクタがその間に把持される上端プレート及び下端プレートを含み得る。
【0064】
前記上部クランププレート及び下部クランププレートの前記少なくとも一方が、10mm~40mm、特には20mm~30mm、特には約30mmの厚さを有し得る。
【0065】
前記20mm~30mm、特には約30mmの値が、現在の実施により適した値である。
【0066】
さらに、本発明の別の目的は、本発明の別の態様によれば、システムであり、このシステムは、
-以上に定義したアセンブリと、
-少なくとも1つのガス入口及び/又は出口管が接続された炉とを含み、当該炉に、高温で動作するSOEC/SOFC型の固体酸化物スタックが、ガスの出入りのために、高温で気密の前記少なくとも1つのカップリングシステムにより連結されていることを特徴とする。
【0067】
さらに、本発明の別の目的は、本発明の別の態様によれば、以上に定義したアセンブリ又は以上に定義したシステムにより実施されるSOEC/SOFC型の固体酸化物スタックを高温で気密にカップリングする方法であり、前記SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックを少なくとも1つのガス入口及び/又は出口管に、前記少なくとも1つのカップリングシステムを用いて高温で気密にカップリングするステップを含むことを特徴とする。
【0068】
前記方法は、前記カップリングの前に前記カップリングフランジ及び前記少なくとも1つのクランプねじを熱処理するステップを含み得る。
【0069】
前記熱処理するステップは、予め決められた熱処理温度、具体的には600℃~950℃、特には700℃~870℃まで、具体的には5℃/分の速度で漸進的に加熱して、予め決められた熱処理温度でのプラトー(具体的には、10分~数時間、特には10分~1時間)に到達させ、次いで、漸進的に冷却し、具体的には5℃/分の速度で最初の温度まで下げるステップから成り得る。
【0070】
前記カップリングの前に、前記少なくとも1つのクランプねじに、耐高温性の結合防止型ペーストを付与し得る。
【0071】
前記結合防止型ペーストは、その組成において、クロム粉末Cr3を10%~90%、特には約50%の重量割合で含み得る。
【0072】
本発明は、その実施形態の非限定的な例に関する以下の詳細な説明を読むことにより、また、添付図面の概略的な部分図を検討することにより、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】高温固体酸化物電解槽(SOEC)の動作原理を示す概略図である。
【
図2】先行技術によるインターコネクタを含む高温固体酸化物電解槽(SOEC)の一部の分解斜視図である。
【
図3】高温で動作する高温電解スタック(SOEC)又は燃料電池(SOFC)が搭載された炉の構成原理を示す図である。
【
図4】SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックと、当該スタックをクランプするためのシステム(高温で気密のカップリングシステムを含み得る)とを含む、本発明によるアセンブリの一例を上方から見た斜視図である。
【
図5】SOEC/SOFC型の固体酸化物スタックと、当該スタックをクランプするためのシステム(高温で気密の4つのカップリングシステムをさらに含む)とを含む、本発明によるアセンブリの別の例を下方から見た斜視図である。
【
図6】下部クランププレート及び高温で気密のカップリングシステムを有する
図5のアセンブリの詳細を示す長手方向部分断面図である。
【
図7】
図5のアセンブリと、炉(そこにSOEC/SOFC型の固体酸化物スタックが、ガスを供給及び排出するために、高温で気密の4つのカップリングシステムを用いてカップリングされている)とを含む、本発明によるシステムの例の部分斜視図である。
【
図8】高温で気密のカップリングシステムに関する
図5のアセンブリの詳細を下方から見た図である。
【0074】
これらの全ての図において、同一の参照符号は同一又は類似の要素を示し得る。
【0075】
また、図面に示されている様々な部品は、図を見やすくするために、必ずしも均一の縮尺で示されてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1~
図3は、先行技術及び本発明の背景技術に関する部分で既に説明した。
図1及び
図2に関し、水蒸気H
2Oの供給、二水素H
2、酸素O
2、空気及び電流の分配及び回収のための符号及び矢印を示しており、これらは、図示の装置の動作を明瞭且つ正確に説明するためのものである。
【0077】
さらに、所与の電気化学セルの全ての構成要素(アノード/電解質/カソード)が、好ましくはセラミックであることに留意されたい。さらに、高温SOEC/SOFC型のスタックの動作温度は、典型的に、600℃~1000℃である。
【0078】
また、用語「上」(top)及び「下」(bottom)は、本明細書において、SOEC/SOFC型のスタックの使用時の構成における通常の配向方向に従って理解されるべきである。
【0079】
図4を参照すると、SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック20とクランプシステム60とを備えたアセンブリ80の一例が示されており、このアセンブリ80は、
図5~
図8を参照して以下に説明するように、高温で気密のカップリングシステム90を含むことができる。
【0080】
有利には、本発明によるアセンブリ80は、仏国特許出願公開第3045215明細書に記載のアセンブリと類似の構造を有し、本明細書においては、高温で気密のカップリングシステム90が存在すること、すなわち、スタック20が「プラグ&プレイ(PnP)」タイプの特徴を有することが異なる。
【0081】
また、以下に説明する本発明の様々な実施形態に共通し、また
図4に示されているように、アセンブリ80は、高温で動作するSOEC/SOFC型の固体酸化物スタック20を含む。
【0082】
このスタック20は、複数の電気化学セル41(各々が、カソード、アノード、及び、カソードとアノードとの間に介在する電解質により形成されている)と、複数の中間インターコネクタ42(各々が、隣接する2つの電気化学セル41の間に配置されている)とを含む。この電気化学セル41と中間インターコネクタ42とによるアセンブリを「スタック」とも称し得る。
【0083】
さらに、スタック20は、上端プレート43及び下端プレート44を含み、これらをそれぞれ、スタック上端プレート43及びスタック下端プレート44とも称する。これらのプレート間に複数の電気化学セル41及び複数の中間インターコネクタ42が把持され、すなわち、これらのプレート間にスタックが配置されている。
【0084】
また、アセンブリ80は、SOEC/SOFC型の固体酸化物スタック20をクランプするためのシステム60も含み、システム60は上部クランププレート45及び下部クランププレート46を含み、これらのプレート間にSOEC/SOFC型の固体酸化物スタック20が把持されている。
【0085】
クランプシステム60の各クランププレート45,46が、4つのクランプオリフィス54を含む。
【0086】
さらに、クランプシステム60は、4つのクランプロッド55、すなわちタイロッドも含み、これらのクランプロッド55は、上部クランププレート45のクランプオリフィス54を通り、下部クランププレート46の対応するクランプオリフィス54を通って延在して、上部クランププレート45と下部46クランププレートとを組み付けることを可能にする。
【0087】
また、クランプシステム60は、クランプ手段56,57,58も、上部クランププレート45及び下部クランププレート46の各クランプオリフィス54に含み、クランプ手段56,57,58は、クランプロッド55と協働して、上部クランププレート45と下部クランププレート46を組み付けることを可能にしている。
【0088】
より正確には、クランプ手段は、上部クランププレート45の各クランプオリフィス54に、第1クランプナット56を含む。第1クランプナット56は、クランプオリフィス54を通して挿入された対応するクランプロッド55と協働する。さらに、クランプ手段は、下部クランププレート46の各クランプオリフィス54に、クランプワッシャ58に関連付けられた第2クランプナット57を含み、これらが、クランプオリフィス54を通って挿入された対応するクランプロッド55と協働する。クランプワッシャ58は、第2クランプナット57と下部クランププレート46との間に配置されている。
【0089】
本発明によれば、アセンブリ80は、スタック20の、高温で気密のカップリングのための少なくとも1つのシステム90を含む。システム90は
図4には示されておらず、例えば
図5~
図8を参照して説明する。
【0090】
ここで、このような高温で気密のカップリングシステム90の例を、
図5~
図8を参照して説明する。
図5~
図8は、1つの同一の実施形態を様々な図で示したものである。このカップリングは、高温のガス入口ゾーンに実装される。
【0091】
この例では、アセンブリ80は、高温で気密の4つのカップリングシステム90を含み、カップリングシステム90は、下部クランププレート46に、4つのクランプナット56に近接して取り付けられている。
【0092】
こうして、炉10に接続するための、高温で気密のこれら4つのカップリングシステム90が、支持スタッド100の周囲に、下部クランププレート46に固定されて規則的に配置され、アセンブリ80を炉10内で支持できることが意図されている。
【0093】
図6に、より詳細に見られるように、各気密カップリングシステム90は、第一に、カップリングフランジ110を含む。このカップリングフランジ110は、下部クランププレート46に対向している第1端面110aと、第2対向端面110bとを含み、第2対向端面110b上にクランプねじ105のヘッド105aが当接している。これに関しては、以下に説明する。
【0094】
さらに、このカップリングフランジ110は、第1端面110a及び第2端面110bに出現する、貫通内部導管111を含み、これが、ガスGの流入及び/又は流出を提供するための管103の通過を可能にしている。
【0095】
さらに、各カップリングフランジ110は、4つの第1貫通内ねじオリフィス112を含み、これらの各々が第1端面110a及び第2端面110bに出現し、第1内ねじ112aを含む。第1内ねじ112aは、4つのクランプねじ105の導入及びねじ込みを可能にする。クランプねじ105の各々に、ねじ込みヘッド105aが設けられている。さらに、下部クランププレート46は、4つの第2内ねじオリフィス113も含み、各々が、第2内ねじ113aを含んで、4つのクランプねじ105の導入及びねじ込みを可能にしている。このようにして、カップリングシステム90は着脱可能である。
【0096】
さらに、各気密性カップリングシステム90は、優先的に金属製の、例えばC字状の圧縮シール118も含む。このシール118は、カップリングフランジ110の第1端面110aに接して、且つ下部クランププレート46に接して配置される。有利には、シール118は、容易にアクセス可能な平面により圧縮される。
【0097】
有利には、シール118は、以下を含む柔軟な金属シールにより形成される。これらの1つは金属螺旋ばねから成るコアであり、それ自体が閉じている連続した巻きを有し、静止状態でトーラスの形態である。また、その他の1つは、ばねがその中に埋め込まれた、非延性金属から作られた第1の包囲体であり、この包囲体は、静止状態で、その母線円(generatrix circle)がそれ自体で閉じていないトーリック面の形態である。その他の1つは、第1の包囲体がその中に埋め込まれた、延性金属から作られた第2の包囲体であり、これもまた、静止状態で、その母線円がそれ自体で閉じていないトーリック面の形態である。このようなシールの例が、仏国特許出願公開第2151186号に記載されている。
【0098】
シール118は、ニッケルベースの超合金、具体的には、インコネル600タイプの超合金から作製され得る。シール118は、約12.5mmの内径及び約17.5mmの外径を有し得る。シール118は金でコーティングされてもよく、クランプトルクは1N.m~20N.mであってよく、非常に強い接着のための優先的な値は4N.mである。
【0099】
気密カップリングシステム90を下部クランププレート46上に取り付けてガスGの流入及び/又は流出を提供できるように、下部クランププレート46は、ガスGを通過させてSOEC/SOFC型の固体酸化物スタック20と流体連通させるための貫通導管102と、ガスGの流入/流出のための管103とを含む。例えば、管103を導管102に、例えばTIG法又はその他の任意の溶接方法で溶接し得る。内部導管111における溶接による管103の接続は、溶接による変形を制限する固体部分上で行われるため、容易にされる。
【0100】
有利には、下部クランププレート46とカップリングフランジ110とは、同一の材料から、具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼、具体的には310Sタイプから作製される。こうして、熱膨張が同一になる。
【0101】
さらに、本発明によるシステム130を示す
図7に見られるように、各管103は、螺旋状の巻線103eを含む。これは、アセンブリの柔軟性を高め、カップリングフランジ110の第1端面110aを下部クランププレート46に対して平行に配置できるようにするためである。螺旋状巻線103eの巻数及び寸法、特に直径が、使用される管103の種類に依存することに留意されたい。一例として、螺旋状巻線103eは、内径10mm、外径12mmの管103に対して、直径200mmの4つの巻きにより形成され得る。
【0102】
有利には、カップリングフランジ110と同一の材料、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼、具体的には310Sタイプから作製されたクランプねじ115。このようにして、熱膨張が同一になる。
【0103】
ここで説明する例では、クランプねじ115の個数は4に等しいが、これは決して限定的なものではない。具体的には、クランプねじ115の個数は、2~10であり得る。複数のクランプねじ115の使用が、有利には、その寸法を制限すること、及び結合を制限するように各ねじをより少なく締め付けることを可能にする。具体的には、約1~10N/mの締め付けが想定され、優先的には、約4N/mの締め付けが想定され得る。
【0104】
好ましくは、カップリングフランジ110及びクランプねじ118の使用前に、熱処理が行われる。この処理は、カップリングフランジ110及びクランプねじを、5℃/分の速度で800℃まで漸増する温度に晒すステップを含む。次いで、800℃でプラトーを1時間維持した後、5℃/分の速度で温度を下げることにより冷却する。この熱処理は、空気下、中性ガス下、又は還元性ガス下で行われ得る。熱処理温度は800℃が好ましいが、600℃~950℃、好ましくは700℃~870℃であってもよい。このようにして、材料は、使用時の温度に近い温度で処理される。加熱速度は重要ではなく、温度プラトーは、ここでは優先的に1時間と示したが、10分~数時間であってもよい。
【0105】
さらに、嵌め込み及びクランプをする前に、クランプねじ115、特にはねじピッチ、及びヘッド115aの下の部分に、解体を容易にするために高温に耐性の結合防止型(anti-binding)ペーストを施すことができる。これは、熱サイクル中のねじでの拡散溶着の現象も回避する。この結合防止型ペーストは、また、接続部を潤滑にし、耐腐食性である。これは、極端な温度及びいわゆる攻撃的雰囲気に晒される部品の詰まりや過度の摩耗を回避する。例えば、サーマルマシン、高温ガス用マニホールド、バーナ、バルブ、ディスクブレーキ、スパークプラグ、排気ブラケット、ローラ、ボルト、カラーなどのねじの場合である。
【0106】
この結合防止型ペーストは、優先的には、50重量%のクロム粉末Cr3と、50重量%の、鉱油又はその他の成分を基材とした工業用多用途グリースとを含むグリースの形態である。Cr3粉末の割合は、優先的には50重量%であるが、10重量%~90重量%であってもよいことに留意されたい。こうして得られたグリースは、特徴的な緑色である。
【0107】
さらに、
図8は、各カップリングフランジ110が、少なくとも1つのショルダ120(ここでは2つの対向するショルダ120)をカップリングフランジ110の側面110cに含むという事実を示している。このショルダ120は、コンパクトな装置及び実装の容易性の両方を得るためにクランプねじ56の通路に配置されるよう意図されている。
【0108】
当然のことながら、本発明は、以上に記載した例示的な実施形態に限定されるものではない。当業者は、これらの実施形態に様々な改変を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
2.1 カソード
3.2 電解質
4.2 アノード
5 インターコネクタ
20 固体酸化物スタック
41 電気化学セル
42 中間インターコネクタ
45 上部クランププレート
46 下部クランププレート
50 カソードコンパートメント
51 アノードコンパートメント
54 クランプオリフィス
55 クランプロッド
56 クランプ手段
60 クランプシステム
80 アセンブリ
90 カップリングシステム
103 ガス入口及び/又は出口管
110 カップリングフランジ
111 貫通内部導管
112 第1貫通内ねじオリフィス
113 第2内ねじオリフィス
115 クランプねじ
118 シール
【外国語明細書】