(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179461
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物、その製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20221125BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221125BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20221125BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221125BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
B32B37/14 A
B32B27/34
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022083145
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064918
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
5G435
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC02
4F071AC12
4F071AE19
4F071AF29Y
4F071AF34Y
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4F071BC02
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4F100AG00
4F100AK49
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4F100AR00C
4F100AT00B
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4F100EH46
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4F100JA06
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4J043YA06
4J043ZB23
5G435AA01
5G435AA07
5G435AA12
5G435BB05
5G435BB06
5G435BB12
5G435GG43
5G435HH03
5G435HH18
5G435KK07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無色透明であり、且つ著しく改善した位相差、優れた機械的特性および優れた耐熱性を同時に実現することができるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムおよびこれを含む多層構造体の提供。
【解決手段】特定の二無水物から誘導された構造単位、および特定のジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、下記関係式1を満たすカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物による。
[関係式1]5,000≦VPI≦20,000(式中、VPIは、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、固形分含量が15重量%である時のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の粘度であり、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、
アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、
下記関係式1を満たすカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物であって、
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含む、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[関係式1]
5,000≦V
PI≦20,000
前記化学式2中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C6-C12)アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1-C10)アルコキシ、シアノ、チオール、(C1-C10)メルカプトまたはニトロであり、
T
1は、単結合、(C1-C10)アルキレン、(C6-C12)アリレン、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO
2-およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
前記関係式1中、
V
PIは、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、固形分含量が15重量%である時のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である。
【請求項2】
前記化学式2で表されるジアミンは、下記化学式3で表される、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
[化学式3]
【化3】
[前記化学式3中、
R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
T
1は、単結合、-O-または
【化4】
であり、前記nは、1~3の整数であり、
L
1は、(C1-C10)アルキレンまたは(C6-C12)アリレンである。]
【請求項3】
前記アミド系溶媒は、ジメチルプロピオンアミドを含む、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
【請求項4】
前記炭化水素系溶媒は、環状炭化水素系溶媒である、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
【請求項5】
前記環状炭化水素系溶媒は、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサンまたはこれらの組み合わせである、請求項4に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
【請求項6】
前記炭化水素系溶媒は、ポリアミン酸またはポリイミド重合後に追加される、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
【請求項7】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の固形分は、
前記ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、10~40重量%含む、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
【請求項8】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、
前記アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含む、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物。
【請求項9】
i)アミド系溶媒下で、下記化学式1で表される二無水物および下記化学式2で表されるジアミンを反応させてポリアミン酸溶液を製造するステップと、
ii)下記関係式1を満たすように炭化水素系溶媒をさらに投入して粘度を調節するステップとを含む、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の製造方法。
[化学式1]
【化5】
[化学式2]
【化6】
[関係式1]
5,000≦V
PI≦20,000
前記化学式2のR
1、R
2、aおよびbは、請求項1における化学式2での定義と同一であり、前記関係式1のV
PIは、請求項1における関係式1での定義と同一である。
【請求項10】
前記ステップii)は、
前記ステップi)のアミド系溶媒100重量部に対して25~50重量部の炭化水素系溶媒をさらに投入して撹拌させるステップと、
前記関係式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒をさらに投入するステップとを含む、請求項9に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を硬化してなる、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
【請求項12】
厚さが20~500μmであり、550nmの波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が100~300nmであり、ASTM E131による黄色度(YI)が4以下である、請求項11に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含む、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記硬化ステップは、30~70℃で乾燥した後、100~400℃で加熱して行われる、請求項13に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記塗布ステップの後、常温で放置するステップをさらに含む、請求項13に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項16】
基板の一面に、請求項11に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含む、多層構造体。
【請求項17】
請求項11に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムと、
前記ポリイミドフィルム上に形成されたコーティング層とを含む、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項18】
前記コーティング層は、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせである、請求項17に記載のディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するために、ディスプレイパネルの上にディスプレイ装置用カバーウィンドウを備えている。最近、柔軟に曲げられるか撓むフレキシブルディスプレイパネルが次世代ディスプレイとして脚光を浴びており、このような次世代ディスプレイのカバーウィンドウ素材として、柔軟性を与えることができる高分子材料が注目されている。中でも、合成が容易であり、耐熱性および耐薬品性などに優れた高分子であるポリイミド(PI)が主に使用されている。
【0003】
スマート機器の最外面ウィンドウ基板に適用するためには、ディスプレイ視野角の確保のための透過度、低い屈折率、位相遅延などの優れた光学的物性が必須である。さらに、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置への適用を可能にするためには、機械的な物性の向上が伴われなければならないため、ディスプレイ装置用カバーウィンドウの要求性能は次第に高度化している。
【0004】
通常のポリイミドの色相は、褐色または黄色を帯びるが、これは、ポリイミドの分子内(intra molecular)および分子間(inter molecular)の相互作用による電子移動複合体(Chrage Trensfer Complex、CTC)が主な原因である。これは、ポリイミドフィルムの光透過度を低下させ、複屈折を高めて、狭い視野角の問題を引き起こす。
【0005】
これを解決するために、様々な構造の単量体を組み合わせるか変更してCTC効果を減少させ、無色透明なポリイミドを製造することができる。しかし、光学的な物性と機械的な物性は、互いにトレードオフ(trade-off)関係にあり、このような試みは、ポリイミドの光学的物性が改善されても、機能性が低下するか機械的物性が劣化するという極めて一般的な結果が得られるだけであった。そのため、ポリイミドの耐熱性および機械的物性が大きく低下しない範囲内で透過度および色相の透明度を向上させるための研究が続けられているが、屈折率および位相遅延の面の光学的物性を満たすには限界がある状況である。
【0006】
したがって、無色透明な性能が低下せず、且つ向上した光学的物性を実現するとともに、優れた機械的物性をすべて満たし、高価の強化ガラスの代わりに使用可能なカバーウィンドウ用素材の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2015-0031434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一具現例は、高度化したカバーウィンドウ要求性能を満たすことができる、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物およびこれより製造されたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供する。
【0009】
具体的には、一具現例は、無色透明であり、且つ著しく改善した位相差、優れた機械的特性および優れた耐熱性を同時に実現することができるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムおよびこれを含む多層構造体を提供する。
【0010】
また、一具現例は、上述の物性の実現のためのカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の製造方法およびカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0011】
また、一具現例は、強化ガラスなどの代わりに使用可能なカバーウィンドウおよびこれを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供するものであり、優れた光学的物性および機械的物性を満たすとともに、耐飛散性に優れた新たなカバーウィンドウ素材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、下記関係式1を満たし、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含む、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物であることができる。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[関係式1]
5,000≦V
PI≦20,000
[前記化学式2中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C6-C12)アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1-C10)アルコキシ、シアノ、チオール、(C1-C10)メルカプトまたはニトロであり、
T
1は、単結合、(C1-C10)アルキレン、(C6-C12)アリレン、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO
2-およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
前記関係式1中、
V
PIは、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、固形分含量が15重量%である時のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である。]
【0013】
一具現例による前記化学式2で表されるジアミンは、下記化学式3で表されてもよい。
[化学式3]
【化3】
[前記化学式3中、
R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
T
1は、単結合、-O-または
【化4】
であり、前記nは、1~3の整数であり、
L
1は、(C1-C10)アルキレンまたは(C6-C12)アリレンである。]
【0014】
前記アミド系溶媒は、ジメチルプロピオンアミドを含むことができる。
【0015】
前記炭化水素系溶媒は、環状炭化水素系溶媒であることができる。
【0016】
前記環状炭化水素系溶媒は、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサンまたはこれらの組み合わせであることができる。
【0017】
前記炭化水素系溶媒は、ポリアミン酸またはポリイミド重合後に追加されることができる。
【0018】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、固形分を前記ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、10~40重量%含むことができる。
【0019】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含むことができる。
【0020】
また、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物から製造されることができる。
【0021】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが20~500μmであり、550nmの波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が100~300nmであることができる。
【0022】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、ASTM E131による黄色度(YI)が4以下であることができる。
【0023】
また、他の具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法は、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含むことができる。
【0024】
前記硬化ステップは、30~70℃で乾燥した後、80~300℃で加熱して行われることができ、前記塗布ステップの後、常温で放置するステップをさらに含むことができる。
【0025】
また、さらに他の具現例による積層体は、基板の一面に前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むことができる。
【0026】
また、さらに他の具現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、前記ポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルム上に形成されたコーティング層とを含むことができる。
【0027】
前記コーティング層は、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0028】
また、さらに他の具現例によるフレキシブルディスプレイ装置は、前記ポリイミドフィルムを含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、ポリアミン酸と混合溶媒の相互作用(interaction)を阻害して、硬化時に分子間の充填密度を著しく減少させることができる。これにより、無色透明な性能が低下せず、且つ優れた光学的物性および優れた機械的物性を同時に実現することができるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供することができる。また、柔軟であり、曲げ特性に優れることから、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウに適用することができる。
【0030】
具体的には、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、優れた透過度および機械的物性を維持し、且つ著しく改善した位相差を有するポリイミドフィルムを提供することができる。これにより、ディスプレイパネルのカバーウィンドウとして使用時に視認性の問題になるムラ(mura)現象およびレインボー現象を効果的に抑制して、これを含むディスプレイパネルの信頼度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一具現例について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。ただし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する具現例に限定されない。また、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限するものでもない。
【0032】
また、本明細書で使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0033】
本明細書の全般にわたり、ある部分がある構成要素を「含む」ということは、特別に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味し得る。
【0034】
以下、本明細書において特別な定義がない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるとした時に、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含むことができる。
【0035】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
【0036】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「Aおよび/またはB」とは、AとBを同時に含む様態を意味し得、AとBから選択された様態を意味し得る。
【0037】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子を意味し、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含むことができる。一様態において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、枝分かれ(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらをすべて含む共重合体(例えば、1種より多い単量体を含む共重合体)であり得る。他の様態において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む共重合体)であることができる。
【0038】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「ポリアミン酸」は、アミン酸(amic acid)部分(moiety)を有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミド部分を有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0039】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、ポリイミドフィルムは、ポリイミドを含むフィルムであることができ、具体的には、二無水物化合物とジアミン化合物またはジイソシアネート化合物を溶液重合してポリアミン酸を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化して製造される高耐熱性フィルムであることができる。
【0040】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「ムラ現象」は、特定の角度で引き起こされ得る光による歪み現象をすべて包括する意味に解釈されることができる。例えば、ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置において、画面が黒く見えるブラックアウト現象、ホットスポット現象または虹光の汚れを有するレインボー現象など光による歪みを有することができる。
【0041】
以下、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物について説明する。
【0042】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成のための組成物(以下、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物ともいう)は、溶媒条件を変更することで、具体的には、ポリアミン酸(以下、ポリイミド前駆体ともいう)および/またはポリイミドの重合溶媒として使用することができず、ポリイミドとの親和性がない無極性溶媒を適用することで、光学的物性および機械的物性を同時に改善することができる。
【0043】
具体的には、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、ポリアミン酸および/またはポリイミド;極性溶媒;無極性溶媒;を含むことができる。前記極性溶媒は、親水性溶媒であることができ、例えば、ポリアミン酸および/またはポリイミドとの親和性があることができ、例えば、アミド系溶媒であることができる。また、前記無極性溶媒は、ポリアミン酸および/またはポリイミドとの親和性がほとんどないことがあり、例えば、炭化水素系溶媒であることができる。
【0044】
特定の理論に拘束されるものではないが、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を使用することで、重合体と重合体との分子間相互作用(intermolecular interaction)および/または重合体と溶媒との相互作用を効果的に阻害させることができ、硬化時に分子間の充填密度が著しく低下し、優れた光学的物性と機械的物性を同時に与えることができる。
【0045】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、単純にポリアミン酸の重合ステップで混合溶液を添加するものとは相違する分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミン酸を重合するステップにおいて前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を邪魔する要因として作用し、高分子量のポリアミン酸を取得することができないことがある。一方、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物では、十分な高分子量のポリアミン酸および/またはポリイミドを取得した後、炭化水素系溶媒が混合されることで、重合体の間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割を果たすことができ、以降、硬化時に、優れた光学的物性を与えることができる。
【0046】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を含み、下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含むことができる。
【0047】
また、一具現例による前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、下記関係式1を満たすことができる。特定の理論に拘束されるものではないが、このような条件を満たすカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、硬化時に、ポリイミドフィルムの充填密度を阻害し、無定形(amorphous)にさせ、光学的物性が向上することができる。
【0048】
【0049】
【0050】
[関係式1]
5,000≦VPI≦20,000
【0051】
[前記化学式2中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C6-C12)アリール、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1-C10)アルコキシ、シアノ、チオール、(C1-C10)メルカプトまたはニトロであり、
T1は、単結合、(C1-C10)アルキレン、(C6-C12)アリレン、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO2-およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
前記関係式1中、
VPIは、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、固形分含量が15重量%である時のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である。]
【0052】
一具現例において、前記R1およびR2は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。一具現例において、前記R1およびR2は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0053】
具体的には、前記R1およびR2は、透過度がより高く、ヘイズがより低いフィルムを提供するための面で、フルオロ(C1-C6)アルキルであってもよい。一例として、フルオロメチル、トリフルオロメチルまたはパーフルオロエチルであってもよく、例えば、トリフルオロメチルであってもよい。
【0054】
一具現例において、前記T1は、(C6-C12)アリレンであってもよく、例えば、フェニレン、ビフェニレンまたはナフタレンであってもよく、具体的には、フェニレンであってもよい。これにより、ガラス積層体の機械的物性がより優れることができる。
【0055】
一具現例において、前記aおよびbは、それぞれ独立して、1~3の整数であっていてもよく、例えば、1または2の整数であってもよい。
【0056】
一具現例において、前記aが2以上の整数である時に、複数個のR1は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、前記bが2以上の整数である時に、複数個のR2は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
一具現例による前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の粘度(VPI)は、20,000cp以下、または10,000cp以下、または5,000~8,000cpを満たすことができる。
【0058】
上述のような構成的特徴を有することにより、無色透明な性能、光学的物性および機械的物性がいずれも優れたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供することができる。具体的には、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、無色透明であるとともに著しく改善した位相差を有することから、ムラ現象およびレインボー現象を効果的に抑制することができ、且つ優れた機械的物性および耐熱性を実現する。これにより、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物で製造されたポリイミドフィルムは、フォルダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置に適用可能な新たな基板素材またはカバーウィンドウ素材に適用されることができ、前記ポリイミドフィルムは、より優れた視認性を有することで、ユーザの目の疲れを最小化することができる。
【0059】
より具体的には、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、前記化学式1で表される二無水物と前記化学式2で表されるジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸と、アミド系溶媒とを含むポリアミン酸溶液に、前記関係式1を満たすように炭化水素系溶媒および混合溶媒を混合したものであることができる。
【0060】
ここで、前記アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を順に使用することで、ポリイミド前駆体であるポリアミン酸と溶媒の相互作用をより適切な範囲に調節することができる。ここで、前記調節は、阻害を意味し得る。
【0061】
ジアミンおよび二無水物
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物において、前記化学式2で表されるジアミンは、例えば、下記化学式3で表されてもよい。
【0062】
【0063】
[前記化学式3中、
R
11およびR
12は、それぞれ独立して、水素またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
T
1は、単結合、-O-または
【化8】
であり、前記nは、1~3の整数であり、
L
1は、(C1-C10)アルキレンまたは(C6-C12)アリレンである。]
【0064】
一具現例において、前記R11およびR12は、互いに同一であってもよい。
【0065】
一具現例において、前記R11およびR12は、それぞれ独立して、ハロ(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0066】
具体的には、前記R11およびR12は、透過度がより高く、ヘイズがより低いフィルムを提供するための面で、フルオロ(C1-C6)アルキルであってもよい。一例として、フルオロメチル、トリフルオロメチルまたはパーフルオロエチルであってもよく、例えば、トリフルオロメチルであってもよい。
【0067】
一具現例において、前記L1は、(C6-C12)アリレンであってもよく、例えば、フェニレン、ビフェニレンまたはナフタレンであってもよく、具体的には、フェニレンであってもよい。これにより、以降、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの機械的物性がより優れることができる。
【0068】
前記化学式2で表されるジアミンは、例えば、下記化学式3-1~3-3で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
一具現例において、例えば、前記ジアミンは、PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0073】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、前記化学式1で表される二無水物から誘導された構造単位を含むことで、機械的強度がより改善したフィルムを提供することができる。また、これより製造されたポリアミン酸と溶媒の相互作用を効果的に阻害することで、硬化時に分子間の充填密度を著しく下げ、目的とする光学的物性に卓越するという利点を提供することができる。
【0074】
また、前記二無水物は、必要に応じて、PMDA(ピロメリティックジアンハイドライド)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、ODPA(4,4’-オキシジフタリックアンハイドライド)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタリックアンハイドライド)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、6FDA(2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリティックモノエステルアンハイドライド)、ESDA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド)およびNTDA(ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)などから選択される一つまたは二つ以上と混合して使用することができ、これに制限されるものではない。
【0075】
溶媒
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物において、前記アミド系溶媒は、アミド部分を含む化合物を意味する。前記アミド系溶媒は、環状化合物であってもよく、直鎖状化合物であってもよく、具体的には、直鎖状化合物であってもよい。例えば、2~15の炭素数を有することができ、例えば、3~10の炭素数を有することができる。
【0076】
前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミド部分を含むことができ、前記ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに融合して環を形成するか、前記ジアルキル基のうち少なくとも一つのアルキル基が分子内の他の置換基と融合して環を形成することができ、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも一つのアルキル基がアミド部分のカルボニル炭素に連結されたアルキル基と融合して環を形成することができる。ここで、前記環は、4~7員環であることができ、例えば、5~7員環であることができ、例えば、5員または6員環であることができる。前記アルキル基は、例えば、C1~C10アルキル基、例えば、C1~C8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであることができる。
【0077】
より具体的には、前記アミド系溶媒は、ポリアミン酸の重合に一般的に使用されるものであれば制限されず、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドンまたはこれらの組み合わせであることができ、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含むことができる。
【0078】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物において、前記炭化水素系溶媒は、上述のように無極性分子であることができる。
【0079】
前記炭化水素溶媒は、炭素と水素からなる化合物であることができる。例えば、前記炭化水素系溶媒は、芳香族や脂肪族であることができ、例えば、環状化合物や直鎖状化合物であることができるが、具体的には、環状化合物であることができる。ここで、前記炭化水素溶媒が環状化合物である場合、単環または多環を含むことができ、前記多環は、縮合環か非縮合環であることができるが、具体的には、単環であることができる。
【0080】
前記炭化水素系溶媒は、3~15の炭素数を有することができ、例えば、6~15の炭素数を有することができ、例えば、6~12の炭素数を有することができる。
【0081】
前記炭化水素系溶媒は、置換または非置換のC3~C15のシクロアルカン、置換または非置換のC6~C15芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであることができる。ここで、前記シクロアルカンは、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはこれらの組み合わせであることができ、前記芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0082】
前記炭化水素系溶媒は、少なくとも一つのC1~C5のアルキル基で置換されるか非置換のシクロアルカン、少なくとも一つのC1~C5アルキル基で置換されるか非置換の芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであることができ、ここで、前記シクロアルカンおよび芳香族化合物は、それぞれ、上述のとおりである。
【0083】
前記C1~C5アルキル基は、例えば、C1~C3アルキル基、例えば、C1またはC2アルキル基であることができ、より具体的には、メチル基であることができるが、これに限定されるものではない。
【0084】
また、前記炭化水素系溶媒は、必要に応じて、酸素をさらに含むことができる。例えば、前記炭化水素に溶媒が酸素を含む場合、ケトン基やヒドロキシ基を含むことができ、例えば、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0085】
具体的には、前記炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0086】
さらに具体的には、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、ジメチルプロピオンアミドを含むアミド系溶媒と、トルエン、ベンゼンおよびシクロヘキサンなどから選択される炭化水素系溶媒とを含む混合溶媒を含むことができる。
【0087】
一具現例による前記炭化水素系溶媒は、ポリアミン酸またはポリイミド重合後に追加されることができる。
【0088】
これにより、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、単純にポリアミン酸の重合ステップで混合溶液を添加することとは相違する分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミン酸を重合するステップにおいて、前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を邪魔する要因として作用して、高分子量のポリアミン酸を取得できないことがある。一方、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物では、十分な高分子量のポリアミン酸および/またはポリイミドを取得した後、炭化水素系溶媒が混合されることで、重合体の間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割を果たすことができ、以降、硬化時に、目的とする光学的物性を取得することができる。
【0089】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、より改善した位相差および黄色度を実現するための面で、前記アミド系溶媒および前記炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含むことができ、具体的には、8:2~6:4の重量比で含むことができる。前記数値範囲で、ジアミンと二無水物の反応性を優秀に維持することができ、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の硬化時に、分子間の充填密度を適切に阻害し、無定形(amorphous)にさせる。これにより、機械的物性、耐熱性および透過度を低下させず、且つ位相差が著しく改善したカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供することができる。
【0090】
ポリアミン酸および/またはポリイミド
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、前記で例示されたジアミンと二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミン酸および/またはポリイミドを含む。
【0091】
前記ポリアミン酸および/またはポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、10,000g/mol以上、例えば、20,000g/mol以上であることができ、例えば、25,000~80,000g/molであることができる。また、ガラス転移温度は、制限されるものではないが、100~400℃、より具体的には100~380℃であることができる。前記範囲では、光学的物性がより優れ、機械的強度がより優れ、カールの発生が少ないフィルムを提供することができ好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0092】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の固形分含量は、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の全重量に対して、40重量%以下、または35重量%以下、または10~20重量%の範囲を満たすことができる。ここで、固形分は、前記ポリアミン酸および/またはポリイミドであることができる。
【0093】
前記ポリアミン酸および/またはポリイミドが通常のアミド系溶媒単独に溶解される場合、溶液の粘度は、20,000cp以上、または25,000cp以上、または35,000cp以下の範囲であることができる。ここで、前記溶液の粘度は、溶液の全重量に対して、固形分含量が15重量%である時の粘度を意味する。
【0094】
一方、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒を使用して、15重量%の高含量の固形分を含んでも、組成物の粘度を著しく下げることができ、これにより、高固形分・底粘度で薄膜コーティング工程への適用が可能である。通常、ポリイミドの場合、固形分の濃度が高くなるほど粘度も高くなる傾向があるが、薄膜コーティング工程において高分子の流れが良好でないと、気泡の除去およびコーティングにおいてムラが発生する。しかし、一具現例を適用した場合、このような薄膜コーティング工程の不良を効果的に防止することができて、より向上した光学的物性を実現することができる。それだけでなく、上述のように、アミド系溶媒単独に溶解される場合、高い粘度のせいで固形分の濃度を高めることが難く、工程効率性を減少させたが、一具現例によると、このような問題を引き起こさずに、高い固形分含量を有するカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物として使用することができ、商業的にも有利であることができる。
【0095】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の製造方法
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の製造方法は、i)アミド系溶媒下で、前記化学式1で表される二無水物および前記化学式2で表されるジアミンを反応させてポリアミン酸溶液を製造するステップと、ii)下記関係式1を満たすように、炭化水素系溶媒をさらに投入して粘度を調節するステップとを含むことができる。
【0096】
具体的には、前記ステップi)は、ジアミンと二無水物を1:0.9~1:1.1の当量比で混合してポリアミン酸を重合するものであり、20~30℃の温度でアミド系溶媒下でジアミンを溶解するステップと、40~60℃の温度で前記溶液に二無水物を添加して溶解するステップと、前記反応溶液を5時間~7時間撹拌して反応させるステップとを含むことができる。
【0097】
一具現例による前記ステップi)の反応溶液において、固形分は、反応溶液の全重量に対して15~25重量%の含量で含まれることができ、17~23重量%の含量で含まれることができる。前記数値範囲で、ジアミンと二無水物の重合反応を優秀に維持し、目的する重量平均分子量を有するポリアミン酸を取得することができる。
【0098】
一具現例による前記ステップii)は、上述の炭化水素溶媒をさらに投入して撹拌させた後、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒をさらに投入して、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物の粘度範囲が前記関係式1を満たすことができる。
【0099】
具体的には、常温(25℃)で、前記ステップi)のアミド系溶媒100重量部に対して25~50重量部の炭化水素系溶媒をさらに投入し、15時間~20時間撹拌するステップと、撹拌が完了した後、前記関係式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を添加するステップとを含む。特定の理論に拘束されるものではないが、このような条件を満たすカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、硬化時に、ポリイミドフィルムの充填密度を阻害し、無定形(amorphous)にさせることができる。これにより、機械的物性、耐熱性および透過度を低下させず、且つ位相差が著しく改善したカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供することができる。
【0100】
また、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、単純にポリアミン酸の重合ステップで混合溶液を添加することとは相違する分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミン酸を重合するステップで前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を邪魔する要因として作用して、高分子量のポリアミン酸を取得できないことがある。
【0101】
一方、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物では、十分な高分子量のポリアミン酸および/またはポリイミドを取得した後に炭化水素系溶媒が混合されることで、高分子量のポリアミン酸を取得することができるだけでなく、前記炭化水素系溶媒が重合体の間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割を果たすことができ、以降、硬化時に、目的とする光学的物性を取得することができる。
【0102】
成形体
一具現例による成形体は、上述のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を使用して製造された成形体であることができる。
【0103】
一具現例による成形体の第1様態は、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムであることができる。
【0104】
また、一具現例による成形体の第2様態は、前記ポリイミドフィルムを含む多層構造体であることができる。
【0105】
また、一具現例による成形体の第3様態は、前記ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウであることができる。
【0106】
また、一具現例による成形体の第4様態は、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルであることができる。
【0107】
一具現例による前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが20~500μm、例えば、30~300μm、例えば、50~100μmであることができる。また、550nmの波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が100~300nm、例えば、100~280nm、例えば、120~280nm、例えば、120~220nm、例えば、120~200nmを満たすことができる。
【0108】
前記数値範囲で、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、位相差が著しく改善し、ディスプレイパネルのカバーウィンドウとして使用時に視認性の問題になるムラ現象およびレインボー現象をより効果的に抑制することができる。
【0109】
一具現例による前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、ASTM E131による黄色度(YI)が4以下、または3.5以下、または3以下を満たすことができる。
【0110】
前記数値範囲で、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、透過度などの優れた光学的物性を満たすとともに光による歪み現象を著しく低減することができる。
【0111】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法
また、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法は、i)前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、ii)前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含むことができる。
【0112】
具体的には、前記ステップi)は、ガラスなどの基板に前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を塗布するものであり、前記塗布方法は、通常、該当分野において使用されるものであれば制限なく使用可能である。その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順に適用可能であることは言うまでもない。
【0113】
また、前記基板は、通常、該当分野において使用されるものであれば制限なく使用可能であり、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などを使用することができるが、これに制限されない。
【0114】
また、一具現例による前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、ガラスなどの基板との接着力が5gf/in以上であることができ、または10gf/in以上、または15gf/in以上であることができる。一具現例によるポリイミドフィルムは、分子間密集度が減少し、これをフレキシブルディスプレイのカバーウィンドウなどに適用する場合、画面歪みを引き起こさないことができる。
【0115】
一具現例による前記ステップii)において、前記乾燥は、30~80℃、または40~80℃、または50~80℃で行われることができる。
【0116】
前記熱硬化は、80~400℃、または90~380℃、または100~350℃で行われることができる。
【0117】
より具体的には、前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、または100超~200℃で1分~2時間、または200超~350℃で1分~2時間行われることができ、これらから選択される二つ以上の温度条件下で段階的な熱硬化が行われることもできる。また、熱硬化は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0118】
前記硬化ステップは、化学的硬化により行われることができる。
【0119】
前記化学的硬化は、イミド化触媒を使用して行われることができ、前記イミド化触媒の非限定的な一例としては、前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を使用することができ、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0120】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、必要に応じて、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を基板上に塗布した後、常温で放置する放置ステップをさらに含むことができる。
【0121】
前記放置ステップにより、フィルム表面の光学的物性をより安定的に維持することができる。特定の理論に拘束されるものではないが、従来のポリイミドフィルム形成用組成物は、硬化前にこのような放置ステップが行われると、溶媒が空気中の水分を吸収し、内部に水分が拡散し、ポリアミン酸および/またはポリイミドと衝突して、フィルムの表面から白濁が発生し、凝集現象が発生して、コーティング不均一性が発生し得る。一方、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、空気中に長期間放置されても、白濁現象および凝集現象がなく、向上した光学的物性を有するフィルムを確保できるという利点を実現することができる。
【0122】
前記放置ステップは、常温および/または高湿条件で行われることができる。ここで、前記常温は、40℃以下であることができ、例えば、30℃以下であることができ、例えば、25℃以下であることができ、より具体的には、15~25℃であることができ、20~25℃であることができる。また、前記高湿とは、例えば、50%以上、例えば、60%以上、例えば、70%以上、例えば、80%以上の相対湿度であることができる。
【0123】
前記放置するステップは、1分から3時間、例えば、10分から2時間、例えば、20分から1時間行われることができる。
【0124】
一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミン酸溶液に、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤および可塑剤などから選択される一つまたは二つ以上の添加剤を混合してカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0125】
また、一具現例による前記多層構造体は、基板上に形成された一具現例のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むことができる。必要に応じて、前記多層構造体は、ポリイミドフィルムまたは基板の少なくとも一つの他面に機能性コーティング層をさらに含むことができる。前記機能性コーティング層の非限定的な一例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層および衝撃吸収層などが挙げられ、少なくとも一つまたは二つ以上の機能性コーティング層を備えることができる。
【0126】
一具現例による前記成形体は、飛散防止のために、基板の一面に一具現例のポリイミドフィルムを含み、前記基板の少なくとも一つの他面にハードコーティング層を含むことができる。
【0127】
また、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を用いて製造された成形体の具体的な一例としては、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ、保護膜または絶縁膜を含むプリント配線板、フレキシブル回路基板などが挙げられ、これに制限されない。また、強化ガラスの代わりに使用可能な保護フィルムに適用することができ、向上した光学的物性により、ディスプレイをはじめ、様々な産業分野においてその応用の幅が広い利点がある。
【0128】
著しく改善した位相差および低い黄色度のような優れた光学的物性により、具体的には、フレキシブルディスプレイパネルなどのカバーウィンドウとして使用することができる。一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、より優れた光学的物性を有するだけでなく、様々な角度でも十分な位相差を示すことで、広い視野角を確保することができる。
【0129】
また、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物を用いて製造された成形体の具体的な一例としては、上述のカバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置などが挙げられ、これに制限されない。この際、前記カバーウィンドウは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面のウィンドウ基板として使用されることができる。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置など、各種の画像表示装置であることができる。
【0130】
以下、一具現例の具体的な説明のために一実施例をあげて説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0131】
下記実験において、物性は、以下のように測定した。
【0132】
<粘度(VPI)>
粘度は、Plate rheometer(モデルLVDV-1II Ultra、Brookfield社製)で、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(固形分の濃度15重量%)0.5μlを容器に入れて、スピンドルを下げ、rpmを調節し、トルクが80%になる時点で2分間待機した後、トルクの変化がない時の粘度値を測定した。この際、前記粘度は、52Zスピンドルを用いて、25℃の温度条件で測定した。単位はcpである。
【0133】
<位相差(Rth)>
Axoscanを用いて測定した。フィルムを所定の大きさに切断し、厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定し、位相差値を補償するために、C-plate方向に補正しながら測定した厚さ(nm)を入力した。
【0134】
<黄色度(YI)>
ASTM E313の規格に準じてSpectrophotometer(Nippon Denshoku社製、COH-5500)を用いて測定し、測定結果を下記の基準で評価した。
〇:黄色度4以下、×:黄色度4以上
【0135】
<重量平均分子量>
0.05M LiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCは、Waters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを用いており、カラム(Column)は、Olexis、Polyporeおよびmixed Dカラムを連結して、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を使用しており、35℃、1mL/minの流速(flow rate)で分析した。
【0136】
[実施例1]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(TFMB/BPAF)の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)173gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)20.74gを溶解させた。これに、BPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンジアンハイドライド)30gを50℃の温度で添加して溶解させながら撹拌した。6時間撹拌した後、25℃でトルエン(Toluene)74.3gを投入し、18時間撹拌した。以降、固形分含量が組成物の全重量に対して15重量%になるように、DMPA:トルエン=70重量%:30重量%の混合溶媒を添加して、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物1を製造した。
【0137】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、前記で取得したカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物1を#20メイヤーバー(meyer bar)で塗布し、窒素気流下で、80℃で30分間、以降、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離して、厚さ50μmの実施例1のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0138】
[実施例2]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(6FODA/BPAF)の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA177gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)21.7gを溶解させた。これに、BPAF30gを50℃の温度で添加して溶解させながら撹拌した。6時間撹拌した後、25℃でトルエン75.8gを投入し、18時間撹拌した。以降、固形分含量が組成物の全重量に対して15重量%になるように、DMPA:トルエン=70重量%:30重量%の混合溶媒を添加して、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物2を製造した。
【0139】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物2を用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの実施例2のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0140】
[実施例3]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(6FAPB/BPAF)の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA197.4gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)27.7gを溶解させた。これに、BPAF30gを50℃の温度で添加して溶解させながら撹拌した。6時間撹拌した後、25℃でトルエン84.6gを投入し、18時間撹拌した。次に、固形分含量が組成物の全重量に対して15重量%になるように、DMPA:トルエン=70重量%:30重量%の混合溶媒を添加して、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物3を製造した。
【0141】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物3を用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの実施例3のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0142】
[実施例4および5]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(6FAPB/BPAF)の製造
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物内のDMPAとトルエンの全重量に対して、トルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすようにDMPAおよび/またはトルエンを添加した以外は、前記実施例3と同一の方法で、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物4および5を製造した。
【0143】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物4および5を用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの実施例4および5のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0144】
[比較例1]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(TFMB/BPAF)の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA372gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB20.74gを溶解させた。これに、BPAF30gを50℃の温度で添加して溶解させながら撹拌した。24時間撹拌した後、固形分含量が組成物の全重量に対して15重量%になるようにDMPAを添加し、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Aを製造した。
【0145】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物Aを用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの比較例1のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0146】
[比較例2]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(6FODA/BPAF)の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA379gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FODA21.7gを溶解させた。これに、BPAF30gを50℃の温度で添加して溶解させながら撹拌した。24時間撹拌した後、固形分含量が組成物の全重量に対して15重量%になるようにDMPAを添加して、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Bを製造した。
【0147】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物Bを用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの比較例2のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0148】
[比較例3]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(6FAPB/BPAF)の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA296.4gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FAPB27.7g(0.06mol)を溶解させた。これに、BPAF30g(0.06mol)を50℃の温度で添加して溶解させながら撹拌した。24時間撹拌した後、固形分含量が組成物の全重量に対して15重量%になるようにDMPAを添加して、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Cを製造した。
【0149】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物Cを用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの比較例3のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0150】
[比較例4および5]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(6FAPB/BPAF)の製造
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物内のDMPAとトルエンの全重量に対して、トルエンの含有量が下記表2のT含有量を満たすようにDPMAおよび/またはトルエンを添加した以外は、前記実施例3と同一の方法で、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物DおよびFを製造した。
【0151】
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
取得したカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同一の方法で、厚さ50μmの比較例4および5のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを取得した。
【0152】
<ポリイミドフィルムの光学的特性の評価>
前記実施例1~5および比較例1~5で製造されたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの物性を測定し、下記表1および表2に示した。下記表1および表2での粘度は、前記実施例1~5および比較例1~5で製造されたカバーウィンドウ用ポリイミド形成組成物の粘度である。
【0153】
【0154】
【0155】
前記表1を参照すると、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、5,000~20,000cpの粘度を有して、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を含むことで、フレキシブルディスプレイのカバーフィルムとして使用するために十分な厚さを有する膜を形成することができることを確認することができる。
【0156】
一方、比較例5から製造されたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、初期の重合固形分が高くて、溶液粘度が制御できないほど高くなって重合が不可能であった。また、比較例4から製造されたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、固形分に比べて粘度が高く、気泡が除去されず工程上不都合があり、コーティング表面が不均一に製造された。そのため、硬化後、コーティング層の表面が多少粗くて不良と評価され、ポリイミドフィルムの製造に適しないことを確認することができる。さらに、比較例4のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、コーティング後、表面が粗くて、位相差値が著しく高くなることを確認した。
【0157】
一方、一具現例によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物(実施例1~5)から製造されたポリイミドフィルムは、著しく改善した位相差を示すことは言うまでもなく、より優れた光学的特性を実現することを確認することができた。また、画面の歪み現象を改善するとともに、柔軟で、より優れた曲げ特性を有することから、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウとして有用に適用することができる。
【0158】
また、一具現例によるポリイミドフィルムは、優れた接着力を示すことから、優れた耐飛散性を有することを確認することができる。
【0159】
一方、比較例1~4から製造されたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物は、熱硬化時に分子間の充填密度が増加し、これより製造されたポリイミドフィルムの位相差値が大きい。しかし、実施例のフィルムは、比較例1~5のフィルムと比較して、黄色度値を優秀に維持するとともに、著しく改善した位相差値を有することを確認することができる。
【0160】
以上、一具現例が限定された実施例によって説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0161】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等であるか等価的変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
【外国語明細書】