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  • 特開-膜厚測定装置及び膜厚測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179471
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】膜厚測定装置及び膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01B11/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124611
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2022530802の分割
【原出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021086172
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】荒野 諭
(72)【発明者】
【氏名】大塚 賢一
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF44
2F065FF48
2F065FF51
2F065GG23
2F065GG24
2F065JJ25
2F065JJ26
2F065LL67
2F065QQ23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高精度に測定対象物の膜厚を測定する膜厚測定装置を提供する。
【解決手段】膜厚測定装置1は、サンプル100に対して光を照射する光源10と、サンプルからの光を検出し、検出した光の輝度情報に応じた信号を出力するエリアセンサ24と、サンプルからの光を分光検出し、該光のスペクトルを含む波長情報に応じた信号を出力する分光器50と、エリアセンサから出力される信号から特定される輝度情報と、分光器から出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、サンプルの膜厚を推定する制御装置30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して光を照射する光照射部と、
前記測定対象物からの光を検出するエリアセンサ又はラインセンサである第1の光検出器を有し、検出した光の輝度情報に応じた信号を出力する光検出部と、
前記測定対象物からの光を分光検出し、該光のスペクトルを含む波長情報に応じた信号を出力する分光器と、
前記光検出部から出力される信号から特定される前記輝度情報と、前記分光器から出力される信号から特定される前記波長情報とに基づいて、前記測定対象物の膜厚を推定する解析部と、を備える膜厚測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、膜厚測定装置及び膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の膜厚を測定する技術として、白色光を測定対象物に照射してその反射光をカラーカメラで検出することにより3波長の干渉色画像を取得し、所定のアルゴリズムに基づきエリア単位で膜厚分布測定を行う技術が知られている(例えば特許文献1及び2、並びに、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-145229号公報
【特許文献2】特開2014-085112号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】北川克一,大槻真左文,"干渉色画像解析による透明膜の広視野膜厚分布測定装置の開発",精密工学会誌79(11),1078-1082,2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本技術分野では、より高精度に測定対象物の膜厚を測定することが求められている。
【0006】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、測定対象物の膜厚を高精度に導出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る膜厚測定装置は、測定対象物に対して光を照射する光照射部と、測定対象物からの光を検出するエリアセンサ又はラインセンサである第1の光検出器を有し、検出した光の輝度情報に応じた信号を出力する光検出部と、測定対象物からの光を分光検出し、該光のスペクトルを含む波長情報に応じた信号を出力する分光器と、光検出部から出力される信号から特定される輝度情報と、分光器から出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、測定対象物の膜厚を推定する解析部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る膜厚測定装置では、測定対象物からの光が光検出部において検出されると共に分光器において分光検出され、光検出部から出力される信号から特定される輝度情報と、分光器から出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、測定対象物の膜厚が推定される。光検出部において検出される光の輝度情報(光の反射率)は、測定対象物の膜厚に応じた値となる。ここで、輝度情報のみでは、膜厚の相対的な分布のみが特定され絶対値が特定されない。この点、本発明の一態様に係る膜厚測定装置では、分光検出された光のスペクトルを含む波長情報が更に考慮されているので、分光検出された点の膜厚の絶対値を特定することができる。これにより、輝度情報から特定される相対的な膜厚分布と、分光検出された点の膜厚の絶対値とに基づいて、測定対象物の各エリアの膜厚の絶対値を適切に導出することができる。以上のように、光検出部における検出結果が分光器における検出結果によって校正されることによって、測定対象物の膜厚を高精度に導出することができる。
【0009】
上記膜厚測定装置は、測定対象物からの光を分割する光分割素子を更に備え、光検出部は、エリアセンサ又はラインセンサである第2の光検出器を更に有し、光分割素子は、測定対象物からの光を分割して第1の光検出器及び第2の光検出器へ導光してもよい。このように、測定対象物からの光が分割され、2つの光検出器によって分割後の光が検出されることにより、例えば波長帯毎に光を分け、所望の波長帯における輝度情報から膜厚を推定することができる。これによって、より高精度に測定対象物の膜厚を導出することができる。
【0010】
光分割素子は、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、測定対象物からの光を透過及び反射することにより分割する傾斜ダイクロイックミラーを有していてもよい。このような構成によれば、波長帯毎に光を適切に分割することができる。
【0011】
光分割素子は、ダイクロイックミラー又はハーフミラーと、バンドパスフィルタとを有していてもよい。このような構成によれば、波長帯毎に光を適切に分割することができる。
【0012】
光検出部は、第1の光検出器において検出される光の輝度値と第2の光検出器において検出される光の輝度値との比を含む輝度情報に応じた信号を出力してもよい。光検出器において検出される光は、例えば光源のゆらぎや背景光等の影響を受けることが考えられる。この場合、輝度情報に基づき膜厚を高精度に推定できないおそれがある。この点、波長に応じて分割した2つの波長帯の光の輝度値の比が導出されることにより、上述した背景光等の影響を受けない輝度情報を導出することができる。このような輝度情報に基づいて膜厚が推定されることにより、高精度な膜厚推定を実現することができる。
【0013】
解析部は、測定対象物の情報に基づいて、輝度情報と波長情報とを用いた測定対象物の膜厚推定を実施するか否かを決定してもよい。測定対象物の状態(例えば厚さ等)によって、膜厚を高精度に推定可能な方法が異なるところ、測定対象物の情報に基づき、上述した「輝度情報と波長情報とを用いた膜厚推定」を実施するか否かが決定されることにより、測定対象物の状態に合った膜厚推定を実施することができる。これにより、高精度な膜厚推定を実現することができる。
【0014】
光分割素子は、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、測定対象物からの光を透過及び反射することにより分割する傾斜ダイクロイックミラーを有し、解析部は、測定対象物の膜厚の厚さが所定値よりも小さい場合には、輝度情報と波長情報とに基づいて測定対象物の膜厚を推定し、測定対象物の膜厚の厚さが所定値よりも大きい場合には、光検出部から出力される信号に基づき波長重心を特定し、該波長重心に基づいて測定対象物の膜厚を推定してもよい。波長重心に基づいて測定対象物の膜厚を推定する方法によれば、より簡易に高精度な膜厚推定を実現することができる。しかしながら、膜厚が小さい場合には波長重心に基づいて高精度に膜厚推定を実施することが困難である。この点、測定対象物の膜厚の厚さが取得されて、膜厚の厚さが所定値よりも小さい場合には上述した輝度情報と波長情報とに基づく膜厚推定が実施されることにより、膜厚が小さい場合であっても高精度に膜厚推定を実施することができる。そして、膜厚の厚さが十分に大きい場合には、波長重心に基づく膜厚推定が実施されることによって、より簡易な方法によって迅速かつ高精度に膜厚推定を実施することができる。
【0015】
解析部は、波長情報に基づき、測定され得る膜厚の範囲である膜厚測定レンジを特定し、輝度及び膜厚の関係式と輝度情報とに基づき特定される一又は複数の膜厚の内、膜厚測定レンジに含まれる膜厚を、測定対象物の膜厚として推定してもよい。測定対象物からの光の輝度及び膜厚については関係式が成立するため、輝度及び膜厚の関係式を予め規定することができる。ここで、輝度及び膜厚の関係は、周期的変化を示す波形で示されるため、輝度情報に基づき輝度が特定されても、当該輝度に対応する膜厚候補が複数存在することとなる。この点、スペクトルを含む波長情報が用いられることにより、測定され得る膜厚の範囲(膜厚測定レンジ)が特定されるため、複数の膜厚候補の中から一の膜厚を特定することが可能となる。このようにして特定された膜厚が対象物の膜厚として推定されることにより、高精度な膜厚推定を実現することができる。
【0016】
解析部は、輝度情報で示される輝度値を波長情報のスペクトルの初期値からの変化量によって補正した補正後輝度情報に基づいて、測定対象物の膜厚を推定してもよい。光検出器において検出される光は、例えば光源のゆらぎや背景光等の影響を受けることが考えられる。この場合、輝度情報に基づき膜厚を高精度に推定できないおそれがある。この点、スペクトルの初期値からの変化量によって、輝度情報で示される輝度値が補正されることによって、元々含まれていた光源のゆらぎや背景光等の影響をキャンセルした輝度情報によって、高精度に膜厚を推定することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る膜厚測定方法は、測定対象物に対して光を照射する光照射ステップと、測定対象物からの光を検出し、検出した光の輝度情報に応じた信号を出力する光検出ステップと、測定対象物からの光を分光検出し、該光のスペクトルを含む波長情報に応じた信号を出力する分光ステップと、光検出ステップにおいて出力される信号から特定される輝度情報と、分光ステップにおいて出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、測定対象物の膜厚を推定する膜厚推定ステップと、を含む。
【0018】
光検出ステップでは、測定対象物からの光を分割し、分割されたそれぞれの光を検出することにより、輝度情報を取得してもよい。
【0019】
光検出ステップでは、分割されたそれぞれの光の輝度値の比を含む輝度情報に応じた信号を出力してもよい。
【0020】
膜厚推定ステップでは、測定対象物の情報に基づいて、輝度情報と波長情報とを用いた測定対象物の膜厚推定を実施するか否かを決定してもよい。
【0021】
光検出ステップでは、所定の波長域において波長に応じて透過率及び反射率が変化し、測定対象物からの光を透過及び反射することにより分割する傾斜ダイクロイックミラーによって、測定対象物からの光を分割し、膜厚推定ステップでは、測定対象物の膜厚の厚さが所定値よりも小さい場合には、輝度情報と波長情報とに基づいて測定対象物の膜厚を推定し、測定対象物の膜厚の厚さが所定値よりも大きい場合には、光検出ステップにおいて出力される信号に基づき波長重心を特定し、該波長重心に基づいて測定対象物の膜厚を推定してもよい。
【0022】
膜厚推定ステップでは、波長情報に基づき、測定され得る膜厚の範囲である膜厚測定レンジを特定し、輝度及び膜厚の関係式と輝度情報とに基づき特定される一又は複数の膜厚の内、膜厚測定レンジに含まれる膜厚を、測定対象物の膜厚として推定してもよい。
【0023】
膜厚推定ステップでは、輝度情報で示される輝度値を波長情報のスペクトルの初期値からの変化量によって補正した補正後輝度情報に基づいて、測定対象物の膜厚を推定してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、測定対象物の膜厚を高精度に導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態に係る膜厚測定装置を模式的に示した図である。
図2図2は、膜厚毎の波長と反射強度との関係を示す図である。
図3図3は、膜厚値推定を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る膜厚測定フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る膜厚測定装置1を模式的に示した図である。膜厚測定装置1は、サンプル100(測定対象物)に対して例えば面状に光を照射し、該サンプル100からの反射光に基づいて、サンプル100に形成された膜の厚さを測定する装置である。サンプル100は、例えばLED、ミニLED、μLED、SLD素子、レーザ素子、垂直型レーザ素子(VCSEL)、OLED等の発光素子であってもよいし、ナノドット等を含む蛍光物質により発光波長を調整する発光素子であってもよい。また、サンプル100は、例えば薄膜が形成されたウェハ等の半導体材料であってもよい。
【0028】
図1に示されるように、膜厚測定装置1は、光源10(光照射部)と、カメラシステム20と、制御装置30(解析部)と、を備えている。
【0029】
光源10は、サンプル100に対して例えば面状に光を照射する。光源10は、例えば、サンプル100の表面の略全面に対して面状に光を照射する。光源10は、例えば、サンプル100の表面を均一的に照射可能な光源であり、サンプル100に対して拡散光を照射する。光源10は、いわゆるフラットドーム型の光源であってもよいし、ドーム型の光源であってもよい。フラットドーム型の光源によれば、十分な視野(例えば300mm程度の視野)を確保しながら、映り込みを抑制することができる。光源10は、白色LED、ハロゲンランプ、又はXeランプ等を用いた面照明ユニットであってもよい。
【0030】
光源10は、例えば、カメラシステム20が有する傾斜ダイクロイックミラー22(詳細は後述)の所定の波長域に含まれる波長の光を、サンプル100に対して照射する。詳細は後述するが、傾斜ダイクロイックミラー22は、サンプル100からの光を波長に応じて透過及び反射することにより分割する光学素子である。傾斜ダイクロイックミラー22は、上述した所定の波長域において、波長に応じて透過率及び反射率が変化する。
【0031】
カメラシステム20は、レンズ21と、傾斜ダイクロイックミラー22(光分割素子)と、エリアセンサ23,24(光検出部)と、バンドパスフィルタ25,26と、ハーフミラー29と、分光器50と、を含んで構成されている。
【0032】
レンズ21は、入射したサンプル100からの光を集光するレンズである。レンズ21は、傾斜ダイクロイックミラー22の前段(上流)に配置されていてもよいし、傾斜ダイクロイックミラー22とエリアセンサ23,24との間の領域に配置されていてもよい。レンズ21は、有限焦点レンズであってもよいし、無限焦点レンズであってもよい。レンズ21が有限焦点レンズである場合には、レンズ21からエリアセンサ23,24までの距離は所定値とされる。レンズ21が無限焦点レンズである場合には、レンズ21は、サンプル100からの光を平行光に変換するコリメータレンズであり、平行光が得られるように収差補正されている。レンズ21から出力された光は、傾斜ダイクロイックミラー22に入射する。
【0033】
傾斜ダイクロイックミラー22は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、サンプル100からの光を波長に応じて透過及び反射することにより分割する光分割素子である。傾斜ダイクロイックミラー22は、サンプル100からの光を分割してエリアセンサ23,24へ導光する。傾斜ダイクロイックミラー22は、所定の波長域において波長に応じて光の透過率及び反射率が変化するように構成されている。すなわち、傾斜ダイクロイックミラー22では、所定の波長域において波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が緩やかに変化し、該所定の波長域以外の波長域において波長の変化に関わらず光の透過率(及び反射率)が一定とされている。換言すれば、特定の波長帯では波長の変化に応じて光の透過率が単調増加(反射率が単調減少)で変化している。透過率と反射率とは、一方が大きくなる方向に変化すると他方が小さくなる方向に変化する、負の相関関係にあるため、以下では「透過率(及び反射率)」と記載せずに単に「透過率」と記載する場合がある。なお、「波長の変化に関わらず光の透過率が一定」とは、完全に一定である場合だけでなく、例えば波長1nmの変化に対する透過率の変化が0.1%以下であるような場合も含むものである。
【0034】
エリアセンサ23,24は、サンプル100からの光(詳細には、傾斜ダイクロイックミラー22によって分割された光)を撮像(検出)する。エリアセンサ23は、傾斜ダイクロイックミラー22において透過された光を撮像する第1の光検出器である。エリアセンサ24は、傾斜ダイクロイックミラー22において反射された光を撮像する第2の光検出器である。エリアセンサ23,24が感度を有する波長の範囲は、傾斜ダイクロイックミラー22において波長の変化に応じて光の透過率(及び反射率)が変化する所定の波長域に対応している。エリアセンサ23,24は、例えば、モノクロセンサ又はカラーセンサである。エリアセンサ23,24は、検出した光の輝度情報に応じた信号を出力する。より詳細には、エリアセンサ23,24は、エリアセンサ23において検出される光の輝度値と、エリアセンサ24において検出される光の輝度値との比を含む輝度情報に応じた信号を、制御装置30に出力してもよい。なお、エリアセンサ23,24から出力される信号とは、例えば撮像結果(画像)である。
【0035】
なお、上述した傾斜ダイクロイックミラー22は、他の光分割素子に置き換えられてもよい。例えば、このような光分割素子は、例えば通常のダイクロイックミラー(波長に応じた光の透過率及び反射率の変化が小さいダイクロイックミラー)又はハーフミラーと、バンドパスフィルタとによって構成されていてもよい。また、上述したエリアセンサ23,24は、他の光検出器に置き換えられてもよい。例えば、このような光検出器は、例えばラインセンサであってもよい。
【0036】
バンドパスフィルタ25は、傾斜ダイクロイックミラー22及びエリアセンサ23の間に配置されている。バンドパスフィルタ26は、傾斜ダイクロイックミラー22及びエリアセンサ24の間に配置されている。バンドパスフィルタ25,26は、例えば、上述した所定の波長域(傾斜ダイクロイックミラー22において、波長に応じて光の透過率及び反射率が変化する波長域)以外の波長域の光を取り除くフィルタであってもよい。
【0037】
ハーフミラー29は、例えばレンズ21と傾斜ダイクロイックミラー22との間の光路に設けられており、サンプル100の一点(例えばサンプル100の中央付近の一点)からの光を分光器50方向に反射する。
【0038】
分光器50は、サンプル100からの光、具体的にはハーフミラー29において反射されたサンプル100の一点からの光を分光検出し、該光のスペクトルを取得する。ここでのスペクトルとは、波長毎の光の強度を示す分光スペクトルである。このような分光スペクトルによれば、制御装置30において、上述したサンプル100の一点の厚みの絶対値を特定することができる。分光器50は、当該分光スペクトルを含む波長情報に応じた信号を制御装置30に出力する。なお、分光器50は、カメラシステム20の外部に設けられて、レンズ21に入射する前のサンプル100からの光を分光検出するものであってもよい。
【0039】
制御装置30は、コンピュータであって、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。制御装置30は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。制御装置30は、マイコンやFPGAで構成されていてもよい。
【0040】
制御装置30は、サンプル100の膜厚を推定する解析部である。制御装置30は、前処理と、選択処理と、膜厚推定処理と、を実施する。以下、それぞれの処理について説明する。
【0041】
(前処理)
制御装置30は、エリアセンサ23,24から撮像画像(輝度情報に応じた信号)を取得し、該撮像画像に対して前処理を実施する。ここでの前処理とは、撮像画像に基づきサンプル100の膜厚を高精度に推定するための補正処理であり、例えば、バックグランド補正及びリファレンス補正(シェーディング補正)である。
【0042】
バックグランド補正とは、撮像画像に含まれる大気中からの光(背景光)を差し引くことにより、照射した光に応じたサンプル100からの光の輝度値を適切に取得するための処理である。バックグランド補正では、例えば、撮像画像の輝度値から、無反射状態のサンプル100の画像データの輝度値が減算される。光源10からの直接光の影響を除去する目的で無反射状態の信号量を用いて、撮像画像の輝度情報に応じたxを以下の(1)式により導出してもよい。以下の(1)式において、ITは透過光量、IRは反射光量、ITrはリファレンスにおける透過光量、IRrはリファレンスにおける反射光量、ITbは無反射状態の透過光量、IRbは無反射状態の反射光量を示している。
x={(IT-ITb)/(ITr-ITb)-(IR-IRb)/(IRr-IRb)}/2{(IT-ITb)/(ITr-ITb)+(IR-IRb)/(IRr-IRb)} (1)
【0043】
リファレンス補正(シェーディング補正)とは、撮像画像と、撮像画像に対応する領域のシェーディング用画像との差分データを取得することにより、光学系に起因する明暗のむらや収差等の個体差を補正する処理である。リファレンス補正では、例えば撮像画像が、リファレンスサンプルの画像データにより除算される。例えば、反射特性が既知の基板の信号強度をリファレンスとして、xを以下の(2)式により導出してもよい。
x=(IT/ITr-IR/IRr)/2(IT/ITr+IR/IRr) (2)
【0044】
(選択処理)
制御装置30は、前処理に続いて選択処理を実施する。制御装置30は、サンプル100の情報(詳細には、サンプル100の膜厚)に基づいて、膜厚推定方法を選択する。サンプル100の膜厚については、制御装置30に予め設定されていてもよいし、ユーザによって入力されてもよい。制御装置30は、膜厚推定方法として、波長シフト方式及び反射光量厚み換算方式(詳細は後述)のいずれか一方を選択する。制御装置30は、サンプル100の膜厚の厚さが所定値(例えば100nm)よりも小さい場合には反射光量厚み換算方式を選択し、サンプル100の膜厚の厚さが所定値よりも大きい場合には、波長シフト方式を選択する。
【0045】
(膜厚推定処理)
制御装置30は、選択処理において選択された膜厚推定方法により、サンプル100の膜厚を推定する。すなわち、制御装置30は、波長シフト方式又は反射光量厚み換算方式により、サンプル100の膜厚を推定する。
【0046】
波長シフト方式では、制御装置30は、エリアセンサ23,24から出力される信号(撮像画像)に基づき波長重心を特定し、該波長重心に基づいてサンプル100の膜厚を推定する。制御装置30は、エリアセンサ23における撮像画像に基づき特定される透過光量と、エリアセンサ24における撮像画像に基づき特定される反射光量と、傾斜ダイクロイックミラー22の中心波長と、傾斜ダイクロイックミラー22の幅と、に基づいて、画素毎の光の波長重心を導出し、該波長重心に基づいて各画素に対応する膜厚を推定する。傾斜ダイクロイックミラー22の幅とは、例えば傾斜ダイクロイックミラー22において透過率が0%となる波長から透過率が100%となる波長までの波長幅である。
【0047】
具体的には、制御装置30は、以下の(3)式に基づいて各画素の波長重心を導出する。以下の(3)式において、λは波長重心、λ0は傾斜ダイクロイックミラー22の中心波長、Wは傾斜ダイクロイックミラー22の幅、Rは反射光量、Tは透過光量を示している。このように、波長重心は、透過光量及び反射光量に基づいて値がシフト(波長シフト)する。
λ=λ0+W(T-R)/2(T+R) (3)
【0048】
なお、波長重心の導出方法は、上記に限定されない。例えば、λ(波長重心)は以下のxと比例関係にあるため、以下の(4)式及び(5)式から波長重心を導出してもよい。以下の(5)式において、ITは透過光量、IRは反射光量を示している。また、測定対象のスペクトル形状や傾斜ダイクロイックミラー22の線形成が理想的な形状である場合には、(4)式におけるパラメータであるa、bは傾斜ダイクロイックミラー22の光学特性によって決定できる。
λ=ax+b (4)
x=IT-IR/2(IT+IR) (5)
【0049】
また、膜特性、照射スペクトル、傾斜ダイクロイックミラー22の非線形性等の、種々の補正を包括的に実施するために、波長重心(λ)は以下の(6)式のような多項式で近似してもよい。なお、以下の(6)式における各パラメータ(a、b、c、d、e)は、例えば、波長重心(膜厚)の異なるサンプルを複数測定することにより決定される。
λ=ax4+bx3+cx2+dx+e (6)
【0050】
そして、膜厚の違いによって、波長重心が異なるため、波長重心が特定されることにより、膜厚を推定することが可能となる。波長と膜厚との関係は、以下の(7)式により説明することができる。以下の(7)式において、nは膜の屈折率、dは膜厚、mは正の整数(1,2,3,…)、λは波長重心を示している。2ndは、光路差(膜が配置されていることにより生じる光路差)を示している。制御装置30は、以下の(7)式に基づいて、各画素の波長重心から各画素に対応する膜厚を推定する。
2nd=mλ(m=1,2,3,…) (強め合う条件)
2nd=(m-1/2)λ(m=1,2,3,…) (弱め合う条件) (7)
【0051】
ここで、上述したような透過光量及び反射光量に基づく波長重心の値のシフト(波長シフト)は、サンプル100の膜厚が薄い場合には起こりにくくなる。図2は、膜厚毎の波長と反射強度(エリアセンサ23,24によって検出される光の反射率)との関係を示す図である。図2において、横軸は波長、縦軸は反射強度(反射率)を示している。図2に示されるように、膜厚が薄くなるほど、反射率(光量)が変化しても波長の変化が小さくなっていることがわかる。光量に応じて波長が十分にシフトしない場合には、上述した波長シフト方式により膜厚を推定することが難しくなる。具体的には、上述した波長シフト方式は、サンプル100の膜厚が100nmよりも薄くなると、高精度に膜厚を推定することが難しくなる。そこで、制御装置30は、サンプル100の膜厚が所定値(例えば100nm)よりも小さい場合には反射光量厚み換算方式によってサンプル100の膜厚を推定する。
【0052】
反射光量厚み換算方式では、制御装置30は、エリアセンサ23,24から出力される信号(撮像画像)から特定される輝度情報と、分光器50から出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、サンプル100の膜厚を推定する。
【0053】
具体的には、制御装置30は、まず、撮像画像の輝度情報に応じたxの値を導出する。例えば傾斜ダイクロイックミラー22における透過側の光の輝度情報が利用される場合には、x=IT(ITは透過光量)とされる。また、傾斜ダイクロイックミラー22における反射側の光の輝度情報が利用される場合には、x=IR(IRは反射光量)とされる。また、エリアセンサ23において検出される光の輝度値とエリアセンサ24において検出される光の輝度値との比を含む輝度情報が利用される場合には、x=IT/IRとされてもよい。エリアセンサ23,24において検出される光は、例えば光源10のゆらぎや背景光等の影響を受けている(光量変動が生じている)ことが考えられるが、輝度情報に応じたxの値がIT/IRのようにレシオ値とされることにより、上述したような光量変動を補正することができる。なお、このような光量変動補正は、光量変動量が、検出される光量と比較して極めて小さい場合に有効である。
【0054】
制御装置30は、分光器50から出力される信号から特定される波長情報に基づいて、上述したxの導出に係るIT(ITは透過光量)及びIR(IRは反射光量)の値を補正することにより、上述した光量変動補正を行ってもよい。制御装置30は、以下の(8)式により、IT及びIRの光量変動補正を行ってもよい。以下の(8)式において、IT´は補正後の透過光量、IR´は補正後の反射光量、T(λ)は傾斜ダイクロイックミラー22における透過率、R(λ)は傾斜ダイクロイックミラー22における反射率、I(λ)は波長情報に含まれるスペクトル(分光器50が測定したスペクトル)、Iini(λ)は分光器50において測定されるスペクトルの初期値である。なお、傾斜ダイクロイックミラー22においては、R(λ)=1-T(λ)である。
IT´=IT×(Σ(Iini(λ)T(λ))/Σ(I(λ)T(λ))
IR´=IR×(Σ(Iini(λ)R(λ))/Σ(I(λ)R(λ)) (8)
【0055】
上述した(8)式に示されるように、制御装置30は、輝度情報で示される輝度値に応じたIT(又はIR)を、分光器50が測定したスペクトルの初期値からの変化量によって補正することにより、補正後の輝度情報であるIT´及びIR´を導出している。このように、スペクトルの初期値からの変化量によって、輝度値が補正されることによって、元々含まれていた光源10のゆらぎや背景光等の影響をキャンセルすることができる。なお、上述したようにxの値がIT/IRのようにレシオ値とされる場合においては、レシオ値を用いることにより光量変動補正がなされているため、(8)式による光量変動補正を必ずしも実施しなくてもよい。ただし、透過信号と反射信号とで互いに独立した光量変動がある場合には、(8)式による光量変動補正を実施することが好ましい。すなわち、光源10が波長帯によって挙動が変化する場合等においては、(8)式による光量変動補正が好ましい。以下では、(8)式によって光量変動補正を実施し、補正後の輝度情報を用いる例を説明する。すなわち、制御装置30は、輝度情報で示される輝度値を波長情報のスペクトルの初期値からの変化量によって補正した補正後輝度情報に基づいて、サンプル100の膜厚を推定する。
【0056】
制御装置30は、分光器50から出力される信号から特定される波長情報に基づき、測定され得る膜厚の範囲である膜厚測定レンジを特定し、輝度及び膜厚の関係式と輝度情報とに基づき特定される一又は複数の膜厚の内、膜厚測定レンジに含まれる膜厚を、サンプル100の膜厚として推定する。
【0057】
図3は、上述した膜厚値推定を説明する図である。輝度情報に示される光の輝度値(反射強度)及び膜厚の関係は、例えば以下の(9)式により示される。以下の(9)式において、Iは輝度値(反射強度)、nは膜の屈折率、dは膜厚である。
I=Acos(2π(2nd/λ))+B (9)
【0058】
図3(a)は、上記(9)式によって定まる輝度値(反射強度)及び膜厚の関係を示す図である。図3(a)において、横軸は膜厚、縦軸は輝度値(反射強度)である。(9)式からも明らかなように、輝度及び膜厚の関係は周期的変化を示す波形で示される(図3(a)参照)。そのため、輝度情報に基づき輝度値が特定されても、当該輝度値に対応する膜厚dの候補が複数存在することとなる。すなわち、図3(a)において破線で示される輝度値(反射強度)が特定される場合、位相毎に異なる複数の膜厚dの候補が存在することとなる。図3(a)に示される例では、mを整数として、2π(2nd/λ)=(m+4)π~(m+5)πの膜厚の範囲、2π(2nd/λ)=(m+2)π~(m+3)πの膜厚の範囲、2π(2nd/λ)=mπ~(m+1)πの膜厚の範囲が存在している。この場合、制御装置30は、分光器50から出力される信号から特定される波長情報(図3(e)参照)に基づき、どの膜厚の範囲が、測定され得る膜厚の範囲(膜厚測定レンジ)であるかを特定することができる。すなわち、(m+4)π~(m+5)πの反射強度及び波長の関係式(図3(b)参照)、(m+2)π~(m+3)πの反射強度及び波長の関係式(図3(c)参照)、及び、mπ~(m+1)πの反射強度及び波長の関係式(図3(d)参照)がある場合において、制御装置30は、(m+2)π~(m+3)πの反射強度及び波長の関係式(図3(c)参照)と波長情報(図3(e)参照)とが一致することから、(m+2)π~(m+3)πの膜厚の範囲を、膜厚測定レンジに特定する。
【0059】
制御装置30は、膜特性、照射スペクトル、傾斜ダイクロイックミラー22の非線形性等の、種々の補正を包括的に実施するために、膜厚dを以下の(10)式のような多項式で近似してもよい。なお、以下の(10)式における各パラメータ(a、b、c、d、e)は、例えば、膜厚・膜種の異なるサンプルを複数測定することにより、膜厚・膜種毎に予め設定されていてもよい。
d=ax4+bx3+cx2+dx+e (10)
【0060】
次に、本実施形態に係る膜厚測定フローについて説明する。図4は、本実施形態に係る膜厚測定フローを示すフローチャートである。
【0061】
膜厚測定装置1では、最初に、光源10からサンプル100に対して光が照射され(光照射ステップ)、エリアセンサ23,24においてサンプル100からの光が検出されて、検出された光の輝度情報に応じた信号が出力されることにより撮像画像が取得される(ステップS1,光検出ステップ)。
【0062】
取得された画像に対しては、制御装置30によってバックグランド補正が実施され(ステップS2)、さらに、リファレンス補正が実施される(ステップS3)。そして、制御装置30において、サンプル100の情報に基づいて、膜厚推定方法が選択される(ステップS4)。制御装置30は、サンプル100の膜厚に基づいて、輝度情報と波長情報とを用いたサンプル100の膜厚推定を実施するか否かを決定する。制御装置30は、膜厚が例えば100nm未満である場合には、輝度情報と波長情報とを用いたサンプル100の膜厚推定(反射光量厚み換算方式)を実施することを決定し、ステップS5~ステップS10の処理を実施する。制御装置30は、膜厚が例えば100nm以上である場合には、輝度情報と波長情報とを用いたサンプル100の膜厚推定(反射光量厚み換算方式)を実施せずに波長シフト方式を実施することを決定し、ステップS13~ステップS15の処理を実施する。
【0063】
反射光量厚み換算方式では、まず、撮像画像の輝度情報に応じたxの値が導出される(ステップS5)。例えばエリアセンサ23において検出される光の輝度値とエリアセンサ24において検出される光の輝度値との比を含む輝度情報が利用される場合には、x=IT/IRとされる。
【0064】
つづいて、膜厚絶対値補正が実施されるか否かが判定される(ステップS6)。膜厚絶対値補正とは、分光器50による膜厚の絶対値の測定結果を利用して膜厚の値を算出する処理である。膜厚絶対値補正が実施されない場合には、ステップS6の処理につづいて後述するステップS10の処理が実施される。
【0065】
膜厚絶対値補正が実施される場合、分光器50によって、サンプル100からの光が分光検出され、該光のスペクトルを含む波長情報に応じた信号が出力される(ステップS7,分光ステップ)。そして、制御装置30によって、上記波長情報に基づき、測定され得る膜厚の範囲である膜厚測定レンジが特定される(ステップS8)。
【0066】
また、制御装置30によって、光量変動補正が実施される(ステップS9)。具体的には、制御装置30は、上述した(8)式によって、波長情報に基づきIT(ITは透過光量)及びIR(IRは反射光量)の値を補正することにより、光量変動補正を行う。
【0067】
最後に、制御装置30によって、上述した(10)式で示される多項式により膜厚dが推定される(ステップS10,膜厚推定ステップ)。なお、(10)式における各パラメータ(補正係数)であるa、b、c、d、eは、膜厚・膜種毎に設定されていてもよい。その場合、事前に、膜厚・膜種毎に補正用画像が取得され(ステップS11)、補正係数a~eが決定される(ステップS12)。
【0068】
一方で、波長シフト方式では、まず、制御装置30によって、波長重心を導出するためのxが上記(5)式により導出される(ステップS13)。そして、制御装置30によって、上述した(6)式で示される多項式により波長重心λが導出される(ステップS14)。そして、制御装置30によって、上述した(7)式により、波長重心から膜厚が推定される(ステップS15)。なお、(6)式における各パラメータ(補正係数)であるa、b、c、d、eは、事前に補正用画像が取得され(ステップS16)、決定されていてもよい(ステップS17)。
【0069】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0070】
膜厚測定装置1は、サンプル100に対して光を照射する光源10と、サンプル100からの光を検出し、検出した光の輝度情報に応じた信号を出力するエリアセンサ23と、サンプル100からの光を分光検出し、該光のスペクトルを含む波長情報に応じた信号を出力する分光器50と、エリアセンサ23から出力される信号から特定される輝度情報と、分光器50から出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、サンプル100の膜厚を推定する制御装置30と、を備える。
【0071】
本実施形態に係る膜厚測定装置1では、サンプル100からの光がエリアセンサ23において検出されると共に分光器50において分光検出され、エリアセンサ23から出力される信号から特定される輝度情報と、分光器50から出力される信号から特定される波長情報とに基づいて、サンプル100の膜厚が推定される。エリアセンサ23において検出される光の輝度情報(光の反射率)は、サンプル100の膜厚に応じた値となる。ここで、輝度情報のみでは、膜厚の相対的な分布のみが特定され絶対値が特定されない。この点、本実施形態に係る膜厚測定装置1では、分光検出された光のスペクトルを含む波長情報が更に考慮されているので、分光検出された点の膜厚の絶対値を特定することができる。これにより、輝度情報から特定される相対的な膜厚分布と、分光検出された点の膜厚の絶対値とに基づいて、測定対象物の各エリアの膜厚の絶対値を適切に導出することができる。以上のように、エリアセンサ23における検出結果が分光器50における検出結果によって校正されることによって、サンプル100の膜厚を高精度に導出することができる。
【0072】
上記膜厚測定装置1は、サンプル100からの光を分割する光分割素子である傾斜ダイクロイックミラー22(或いは、ダイクロイックミラー又はハーフミラーとバンドパスフィルタ)を更に備え、エリアセンサ24を更に有し、傾斜ダイクロイックミラー22は、サンプル100からの光を分割してエリアセンサ23及びエリアセンサ24へ導光してもよい。このように、サンプル100からの光が分割され、2つのエリアセンサ23,24によって分割後の光が検出されることにより、例えば波長帯毎に光を分け、所望の波長帯における輝度情報から膜厚を推定することができる。これによって、より高精度にサンプル100の膜厚を導出することができる。
【0073】
そして、光分割素子として、傾斜ダイクロイックミラー22(或いは、ダイクロイックミラー又はハーフミラーとバンドパスフィルタ)が用いられることにより、波長帯毎に光を適切に分割することができる。
【0074】
エリアセンサ23,24は、エリアセンサ23において検出される光の輝度値とエリアセンサ24において検出される光の輝度値との比を含む輝度情報に応じた信号を出力してもよい。エリアセンサ23,24において検出される光は、例えば光源のゆらぎや背景光等の影響を受けることが考えられる。この場合、輝度情報に基づき膜厚を高精度に推定できないおそれがある。この点、波長に応じて分割した2つの波長帯の光の輝度値の比が導出されることにより、上述した背景光等の影響を受けない輝度情報を導出することができる。このような輝度情報に基づいて膜厚が推定されることにより、高精度な膜厚推定を実現することができる。
【0075】
制御装置30は、サンプル100の情報に基づいて、輝度情報と波長情報とを用いたサンプル100の膜厚推定を実施するか否かを決定してもよい。サンプル100の状態(例えば厚さ等)によって、膜厚を高精度に推定可能な方法が異なるところ、サンプル100の情報に基づき、上述した「輝度情報と波長情報とを用いた膜厚推定」を実施するか否かが決定されることにより、サンプル100の状態に合った膜厚推定を実施することができる。これにより、高精度な膜厚推定を実現することができる。
【0076】
制御装置30は、サンプル100の膜厚の厚さが所定値よりも小さい場合には、輝度情報と波長情報とに基づいてサンプル100の膜厚を推定し、サンプル100の膜厚の厚さが所定値よりも大きい場合には、エリアセンサ23,24から出力される信号に基づき波長重心を特定し、該波長重心に基づいてサンプル100の膜厚を推定してもよい。波長重心に基づいてサンプル100の膜厚を推定する方法によれば、より簡易に高精度な膜厚推定を実現することができる。しかしながら、上述したように、膜厚が小さい場合には波長重心に基づいて高精度に膜厚推定を実施することが困難である。この点、サンプル100の膜厚の厚さが取得されて、膜厚の厚さが所定値よりも小さい場合には上述した輝度情報と波長情報とに基づく膜厚推定が実施されることにより、膜厚が小さい場合であっても高精度に膜厚推定を実施することができる。そして、膜厚の厚さが十分に大きい場合には、波長重心に基づく膜厚推定が実施されることによって、より簡易な方法によって迅速かつ高精度に膜厚推定を実施することができる。
【0077】
制御装置30は、波長情報に基づき、測定され得る膜厚の範囲である膜厚測定レンジを特定し、輝度及び膜厚の関係式と輝度情報とに基づき特定される一又は複数の膜厚の内、膜厚測定レンジに含まれる膜厚を、サンプル100の膜厚として推定してもよい。サンプル100からの光の輝度及び膜厚については関係式が成立するため、輝度及び膜厚の関係式を予め規定することができる。ここで、輝度及び膜厚の関係は、周期的変化を示す波形で示されるため、輝度情報に基づき輝度が特定されても、当該輝度に対応する膜厚候補が複数存在することとなる。この点、スペクトルを含む波長情報が用いられることにより、測定され得る膜厚の範囲(膜厚測定レンジ)が特定されるため、複数の膜厚候補の中から一の膜厚を特定することが可能となる。このようにして特定された膜厚がサンプル100の膜厚として推定されることにより、高精度な膜厚推定を実現することができる。
【0078】
制御装置30は、輝度情報で示される輝度値を波長情報のスペクトルの初期値からの変化量によって補正した補正後輝度情報に基づいて、サンプル100の膜厚を推定してもよい。光検出器において検出される光は、例えば光源のゆらぎや背景光等の影響を受けることが考えられる。この場合、輝度情報に基づき膜厚を高精度に推定できないおそれがある。この点、スペクトルの初期値からの変化量によって、輝度情報で示される輝度値が補正されることによって、元々含まれていた光源のゆらぎや背景光等の影響をキャンセルした輝度情報によって、高精度に膜厚を推定することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…膜厚測定装置、10…光源(光照射部)、22…傾斜ダイクロイックミラー、23,24…エリアセンサ(光検出器,光検出部)、30…制御装置(解析部)、50…分光器、100…サンプル(測定対象物)。
図1
図2
図3
図4