(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179478
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】運搬方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20221125BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221125BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20221125BHJP
G02B 26/00 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
H01L21/68 V
H01L21/68 A
G02B5/28
G02B26/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134057
(22)【出願日】2022-08-25
(62)【分割の表示】P 2017225973の分割
【原出願日】2017-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】大山 泰生
(72)【発明者】
【氏名】柴山 勝己
(72)【発明者】
【氏名】笠原 隆
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 真樹
(72)【発明者】
【氏名】川合 敏光
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 有未
(57)【要約】
【課題】多数のファブリペロー干渉フィルタの破損のリスクを低減しつつ運搬可能な運搬方法を提供する。
【解決手段】
運搬方法は、複数のファブリペロー干渉フィルタ1を含む対象物100A,100Bを運搬するための運搬方法であって、対象物100A,100Bを収容容器Pに収容する第1工程を備える。ファブリペロー干渉フィルタ1は、基板11と、基板11上に設けられ、空隙Sを介して互いに対向すると共に互いの距離が可変とされた第1ミラー部31及び第2ミラー部32を含む。第1工程においては、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列された状態において対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のファブリペロー干渉フィルタを含む対象物を運搬するための運搬方法であって、
前記対象物を収容容器に収容する第1工程を備え、
前記ファブリペロー干渉フィルタは、基板と、前記基板上に設けられ、空隙を介して互いに対向すると共に互いの距離が可変とされた第1ミラー部及び第2ミラー部と、を有し、
前記対象物は、前記基板に対して前記第1ミラー部及び前記第2ミラー部側の第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、前記第2表面に接着された接着層と、を含み、
前記接着層の外縁部には、支持体が設けられており、
前記収容容器の内面には、前記支持体を挟持する挟持部が設けられており、
前記第1工程においては、前記複数のファブリペロー干渉フィルタが二次元状に配列された状態において、前記挟持部により前記支持体を挟持することにより前記対象物を前記収容容器内に支持する、
運搬方法。
【請求項2】
前記第1工程においては、前記第1表面を下方に向けた状態において、前記挟持部により前記支持体を上下方向に挟持することにより前記対象物を前記収容容器内に支持する、
請求項1に記載の運搬方法。
【請求項3】
前記対象物は、前記複数のファブリペロー干渉フィルタが形成されたウェハであり、
前記第1工程においては、前記ウェハとして前記複数のファブリペロー干渉フィルタが二次元状に配列された状態において前記対象物を前記収容容器に収容して支持する、
請求項1又は2に記載の運搬方法。
【請求項4】
前記対象物は、互いに別体に構成されると共に二次元状に配列されて前記接着層に接着された前記複数のファブリペロー干渉フィルタを含み、
前記ファブリペロー干渉フィルタは、前記第1表面と前記第2表面とを含む、
請求項1又は2に記載の運搬方法。
【請求項5】
前記接着層における前記第2表面と反対側の面には、吸湿層が設けられており、
前記吸湿層における前記接着層と反対側の面には、吸着層が設けられており、
前記第1工程においては、一の前記対象物における前記吸着層が別の前記対象物における前記第1表面の下方側において前記第1表面に対向するように前記対象物を前記収容容器に収容して支持する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の運搬方法。
【請求項6】
前記第1工程の後に、前記収容容器を真空パックに収容すると共に、前記真空パックの排気により前記収容容器内を真空引きする第2工程を備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のファブリペロー干渉フィルタとして、基板と、基板上において空隙を介して互いに対向する固定ミラー及び可動ミラーと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなファブリペロー干渉フィルタを運搬する際には、ファブリペロー干渉フィルタを個別に収容容器に収容することが考えられる。一方で近年、上記のようなファブリペロー干渉フィルタに対する市場の需要の増加に伴い、大量のファブリペロー干渉フィルタを一度に運搬する必要性が生じてきた。この場合、ファブリペロー干渉フィルタを個別に収容容器に収容する作業を何度も行う必要が生じ、作業時間の増加による負担増や、作業精度が低下することによる不良品発生リスク(例えば可動ミラーに収容容器が接触して破損するなど)が懸念される。したがって、多数のファブリペロー干渉フィルタの破損のリスクを低減しつつ運搬可能な方法が望まれている。
【0005】
本発明は、多数のファブリペロー干渉フィルタの破損のリスクを低減しつつ運搬可能な運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運搬方法は、複数のファブリペロー干渉フィルタを含む対象物を運搬するための運搬方法であって、対象物を収容容器に収容する第1工程を備え、ファブリペロー干渉フィルタは、基板と、基板上に設けられ、空隙を介して互いに対向すると共に互いの距離が可変とされた第1ミラー部及び第2ミラー部と、を有し、第1工程においては、複数のファブリペロー干渉フィルタが二次元状に配列された状態において対象物を収容容器に収容して支持する。
【0007】
この方法においては、運搬の対象物が、複数のファブリペロー干渉フィルタを含む。そして、第1工程においては、ファブリペロー干渉フィルタが二次元状に配列された状態において、収容容器に収容して支持する。このように、複数のファブリペロー干渉フィルタが二次元状に配列されている状態であれば、ファブリペロー干渉フィルタを個別に取り扱う場合と比較して、第1ミラー部及び第2ミラー部といったミラー部に接触が生じないように、一括して収容及び支持を行うことが容易である。よって、この方法によれば、簡単な構成により複数の(多数の)ファブリペロー干渉フィルタの破損のリスクを低減しつつ運搬することが可能となる。
【0008】
本発明に係る運搬方法においては、対象物は、複数のファブリペロー干渉フィルタが形成されたウェハであり、ウェハは、基板に対して第1ミラー部及び第2ミラー部側の第1表面と、第1表面とは反対側の第2表面と、を含み、第1工程においては、ウェハとして複数のファブリペロー干渉フィルタが二次元状に配列された状態において前記対象物を前記収容容器に収容して支持してもよい。この場合、複数のファブリペロー干渉フィルタが、ウェハとして一体化されている。このため、より簡単な構成によって多数(複数)のファブリペロー干渉フィルタの破損のリスクを低減しつつ運搬することが可能である。
【0009】
本発明に係る運搬方法においては、対象物は、第2表面に接着された接着層を含み、接着層の外縁部には、支持体が設けられており、収容容器の内面には、支持体を挟持する挟持部が設けられており、第1工程においては、挟持部により支持体を挟持することにより対象物を収容容器内に支持してもよい。この場合、対象物であるウェハ自体に挟持部を当接させることなく対象物を支持可能である。このため、対象物の収容時及び支持時において、挟持部との接触によるファブリペロー干渉フィルタの破損が防止される。
【0010】
本発明に係る運搬方法においては、第1工程においては、第1表面を下方に向けた状態において、挟持部により支持体を上下方向に挟持することにより対象物を収容容器内に支持してもよい。この場合、収容容器内においてミラー部側の第1表面が下方に向くようにされる。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタにおいてミラー部の破損が生じた場合であっても、その破片の影響が他のファブリペロー干渉フィルタに及びにくい。
【0011】
本発明に係る運搬方法においては、ウェハには、複数のファブリペロー干渉フィルタを含む有効エリアと、有効エリアを囲むように設けられて外縁を形成するダミーエリアと、が形成されており、ダミーエリアは、互いに対向する第1ミラー部と第2ミラー部との間に中間層が設けられた複数のダミーフィルタを含み、収容容器の内面には、ダミーエリアにおいて対象物を挟持する挟持部が設けられており、第1工程においては、挟持部によりダミーエリアを挟持することにより対象物を収容容器内に支持してもよい。この場合、支持体等の部材を別途用いることなく、対象物を収容容器内において支持可能である。また、対象物であるウェハの外縁部にダミーエリアが設けられるので、ウェハの強度が向上すると共に反りが抑制される。このため、対象物の収容容器への収容が容易となる。
【0012】
本発明に係る運搬方法においては、第1工程においては、第1表面を下方に向けた状態において、挟持部によりダミーエリアを上下方向に挟持することにより対象物を収容容器内に支持してもよい。この場合、収容容器内においてミラー部側の第1表面が下方に向くようにされる。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタにおいてミラー部の破損が生じた場合であっても、その破片の影響が他のファブリペロー干渉フィルタに及びにくい。
【0013】
本発明に係る運搬方法においては、対象物は、接着層と、互いに別体に構成されると共に二次元状に配列されて接着層に接着された複数のファブリペロー干渉フィルタと、を含み、接着層の外縁部には、支持体が設けられており、収容容器の内面には、支持体を上下方向に挟持する挟持部が設けられており、ファブリペロー干渉フィルタは、基板に対して第1ミラー部及び第2ミラー部側の第1表面と、第1表面とは反対側の面であって接着層に接着される第2表面と、を含み、第1工程においては、第1表面を下方に向けた状態において、挟持部により支持体を挟持することにより対象物を収容容器内に支持してもよい。この場合、互いに別体に構成された複数のファブリペロー干渉フィルタが、二次元状に配列されて接着層に接着されている。このため、ミラー部に接触が生じないように収容及び支持を行うことがより容易である。また、収容容器内において第1表面が下方に向くようにされる。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタにおいてミラー部の破損が生じた場合であっても、その破片の影響が他のファブリペロー干渉フィルタに及びにくい。
【0014】
本発明に係る運搬方法においては、接着層における第2表面と反対側の面には、吸湿層が設けられており、吸湿層における接着層と反対側の面には、吸着層が設けられており、第1工程においては、一の対象物における吸着層が別の対象物における第1表面の下方側において第1表面に対向するように対象物を収容容器に収容して支持してもよい。この場合、対象物の収容容器への収容と同時に、収容容器内に吸湿層及び吸着層を配置することができる。特に、この場合には、例えば収容容器の底部等に吸湿部材を配置する場合と比較して、ファブリペロー干渉フィルタに近い位置に吸湿層を配置可能である。また、吸着層が、第1表面の下方において第1表面に対向するように配置される。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタにおいてミラー部の破損が生じた場合であっても、その破片が吸着層に吸着されるので、その影響が他のファブリペロー干渉フィルタに及ぶことを防止できる。
【0015】
本発明に係る運搬方法は、第1工程の後に、収容容器を真空パックに収容すると共に、真空パックの排気により収容容器内を真空引きする第2工程を備えてもよい。この場合、ファブリペロー干渉フィルタに影響を与えることなく収容容器内を真空引き可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多数のファブリペロー干渉フィルタの破損のリスクを低減しつつ運搬可能な運搬方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るファブリペロー干渉フィルタの平面図である。
【
図2】
図1に示されたファブリペロー干渉フィルタの底面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿ってのファブリペロー干渉フィルタの断面図である。
【
図4】本実施形態に係るダミーフィルタの断面図である。
【
図6】
図5に示されるウェハの一部の拡大平面図である。
【
図7】
図5に示されるウェハのファブリペロー干渉フィルタ部及びダミーフィルタ部の断面図である。
【
図8】本実施形態に係る運搬方法の一例を示す模式的な断面図である。
【
図9】変形例に係る運搬方法の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
本実施形態に係る運搬方法は、ファブリペロー干渉フィルタを含む対象物を運搬するための方法である。したがって、まず、運搬対象となるファブリペロー干渉フィルタを含む対象物の一実施形態について説明する。
[ファブリペロー干渉フィルタ及びダミーフィルタの構成]
【0020】
図1は、本実施形態に係るファブリペロー干渉フィルタの平面図である。
図2は、
図1に示されたファブリペロー干渉フィルタの底面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿ってのファブリペロー干渉フィルタの断面図である。
図1~3に示されるように、ファブリペロー干渉フィルタ1は、基板11を備えている。基板11は、互いに対向する第1表面11a及び第2表面11bを有している。第1表面11aには、反射防止層21、第1積層体22、中間層23及び第2積層体24が、この順序で積層されている。第1積層体22と第2積層体24との間には、枠状の中間層23によって空隙(エアギャップ)Sが画定されている。
【0021】
第1表面11aに垂直な方向から見た場合(平面視)における各部の形状及び位置関係は、次の通りである。基板11の外縁は、例えば1辺の長さが数百μm~数mm程度の矩形状である。基板11の外縁及び第2積層体24の外縁は、互いに一致している。反射防止層21の外縁、第1積層体22の外縁及び中間層23の外縁は、互いに一致している。基板11は、中間層23の外縁よりも空隙Sの中心に対して外側に位置する外縁部11cを有している。外縁部11cは、例えば、枠状であり、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に中間層23を囲んでいる。空隙Sは、例えば円形状である。
【0022】
ファブリペロー干渉フィルタ1は、その中央部に画定された光透過領域1aにおいて、所定の波長を有する光を透過させる。光透過領域1aは、例えば円柱状の領域である。基板11は、例えば、シリコン、石英又はガラス等からなる。基板11がシリコンからなる場合には、反射防止層21及び中間層23は、例えば、酸化シリコンからなる。中間層23の厚さは、例えば、数十nm~数十μmである。
【0023】
第1積層体22のうち光透過領域1aに対応する部分は、第1ミラー部31として機能する。第1ミラー部31は、固定ミラーである。第1ミラー部31は、反射防止層21を介して第1表面11aに配置されている。第1積層体22は、複数のポリシリコン層25と複数の窒化シリコン層26とが一層ずつ交互に積層されることで構成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、ポリシリコン層25a、窒化シリコン層26a、ポリシリコン層25b、窒化シリコン層26b及びポリシリコン層25cが、この順で反射防止層21上に積層されている。第1ミラー部31を構成するポリシリコン層25及び窒化シリコン層26のそれぞれの光学厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。なお、第1ミラー部31は、反射防止層21を介することなく第1表面11a上に直接に配置されてもよい。
【0024】
第2積層体24のうち光透過領域1aに対応する部分は、第2ミラー部32として機能する。第2ミラー部32は、可動ミラーである。第2ミラー部32は、第1ミラー部31に対して基板11とは反対側において空隙Sを介して第1ミラー部31と対向している。第1ミラー部31と第2ミラー部32とが互いに対向する方向は、第1表面11aに垂直な方向に平行である。第2積層体24は、反射防止層21、第1積層体22及び中間層23を介して第1表面11aに配置されている。第2積層体24は、複数のポリシリコン層27と複数の窒化シリコン層28とが一層ずつ交互に積層されることで構成されている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、ポリシリコン層27a、窒化シリコン層28a、ポリシリコン層27b、窒化シリコン層28b及びポリシリコン層27cが、この順で中間層23上に積層されている。第2ミラー部32を構成するポリシリコン層27及び窒化シリコン層28のそれぞれの光学厚さは、中心透過波長の1/4の整数倍であることが好ましい。
【0025】
なお、第1積層体22及び第2積層体24では、窒化シリコン層の代わりに酸化シリコン層が用いられてもよい。また、第1積層体22及び第2積層体24を構成する各層の材料としては、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム、フッ化カルシウム、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛等が用いられてもよい。また、ここでは、第1ミラー部31の空隙S側の表面(ポリシリコン層25cの表面)と、第2ミラー部32の空隙S側の表面(ポリシリコン層27aの表面)とは、空隙Sを介して直接的に対向している。ただし、第1ミラー部31の空隙S側の表面、及び、第2ミラー部32の空隙S側の表面に、(ミラーを構成しない)電極層・保護層が形成されていてもよい。この場合、第1ミラー部31と第2ミラー部32とは、それらの層を間に介在させた状態において、空隙Sを介して互いに対向することになる。換言すれば、このような場合であっても、第1ミラー部31と第2ミラー部32との空隙Sを介した対向は実現され得る。
【0026】
第2積層体24において空隙Sに対応する部分(第1表面11aに垂直な方向から見た場合に空隙Sと重なる部分)には、複数の貫通孔24bが形成されている。各貫通孔24bは、第2積層体24の中間層23とは反対側の表面24aから空隙Sに至っている。複数の貫通孔24bは、第2ミラー部32の機能に実質的に影響を与えない程度に形成されている。複数の貫通孔24bは、エッチングによって中間層23の一部を除去して空隙Sを形成するために用いられる。
【0027】
第2積層体24は、第2ミラー部32に加えて、被覆部33と、周縁部34と、を更に有している。第2ミラー部32、被覆部33及び周縁部34は、互いに同じ積層構造の一部を有し且つ互いに連続するように、一体的に形成されている。被覆部33は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に第2ミラー部32を囲んでいる。被覆部33は、中間層23の基板11とは反対側の表面23a、並びに、中間層23の側面23b(外側の側面、つまり、空隙S側とは反対側の側面)、第1積層体22の側面22a及び反射防止層21の側面21aを被覆しており、第1表面11aに至っている。すなわち、被覆部33は、中間層23の外縁、第1積層体22の外縁及び反射防止層21の外縁を被覆している。
【0028】
周縁部34は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に被覆部33を囲んでいる。周縁部34は、外縁部11cにおける第1表面11a上に位置している。周縁部34の外縁は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に基板11の外縁と一致している。周縁部34は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されている。すなわち、周縁部34のうち外縁部11cの外縁に沿う部分は、周縁部34のうち外縁に沿う部分を除く他の部分と比べて薄くなっている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、周縁部34は、第2積層体24を構成するポリシリコン層27及び窒化シリコン層28の一部が除去されていることで薄化されている。周縁部34は、被覆部33に連続する非薄化部34aと、非薄化部34aを囲む薄化部34bと、を有している。薄化部34bにおいては、第1表面11a上に直接に設けられたポリシリコン層27a以外のポリシリコン層27及び窒化シリコン層28が除去されている。
【0029】
第1表面11aから非薄化部34aの基板11とは反対側の表面34cまでの高さは、第1表面11aから中間層23の表面23aまでの高さよりも低い。第1表面11aから非薄化部34aの表面34cまでの高さは、例えば100nm~5000nmである。第1表面11aから中間層23の表面23aまでの高さは、例えば500nm~20000nmである。薄化部34bの幅(第1表面11aに垂直な方向から見た場合における非薄化部34aの外縁と外縁部11cの外縁との間の距離)は、基板11の厚さの0.01倍以上である。薄化部34bの幅は、例えば5μm~400μmである。基板11の厚さは、例えば500μm~800μmである。
【0030】
第1ミラー部31には、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に光透過領域1aを囲むように第1電極12が形成されている。第1電極12は、ポリシリコン層25cに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。第1ミラー部31には、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に光透過領域1aを含むように第2電極13が形成されている。第2電極13は、ポリシリコン層25cに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。第1表面11aに垂直な方向から見た場合に、第2電極13の大きさは、光透過領域1aの全体を含む大きさであることが好ましいが、光透過領域1aの大きさと略同一であってもよい。
【0031】
第2ミラー部32には、第3電極14が形成されている。第3電極14は、空隙Sを介して第1電極12及び第2電極13と対向している。第3電極14は、ポリシリコン層27aに不純物をドープして低抵抗化することで形成されている。
【0032】
一対の端子15は、光透過領域1aを挟んで対向するように設けられている。各端子15は、第2積層体24の表面24aから第1積層体22に至る貫通孔内に配置されている。各端子15は、配線12aを介して第1電極12と電気的に接続されている。各端子15は、例えば、アルミニウム又はその合金等の金属膜によって形成されている。
【0033】
一対の端子16は、光透過領域1aを挟んで対向するように設けられている。各端子16は、第2積層体24の表面24aから第1積層体22に至る貫通孔内に配置されている。各端子16は、配線13aを介して第2電極13と電気的に接続されていると共に、配線14aを介して第3電極14と電気的に接続されている。端子16は、例えば、アルミニウム又はその合金等の金属膜によって形成されている。一対の端子15が対向する方向と一対の端子16が対向する方向とは、直交している(
図1参照)。
【0034】
第1積層体22の表面22bには、複数のトレンチ17,18が設けられている。トレンチ17は、配線13aにおける端子16との接続部分を囲むように環状に延在している。トレンチ17は、第1電極12と配線13aとを電気的に絶縁している。トレンチ18は、第1電極12の内縁に沿って環状に延在している。トレンチ18は、第1電極12と第1電極12の内側の領域(第2電極13)とを電気的に絶縁している。各トレンチ17,18内の領域は、絶縁材料であっても、空隙であってもよい。
【0035】
第2積層体24の表面24aには、トレンチ19が設けられている。トレンチ19は、端子15を囲むように環状に延在している。トレンチ19は、端子15と第3電極14とを電気的に絶縁している。トレンチ19内の領域は、絶縁材料であっても、空隙であってもよい。
【0036】
基板11の第2表面11bには、反射防止層41、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44が、この順序で積層されている。反射防止層41及び中間層43は、それぞれ、反射防止層21及び中間層23と同様の構成を有している。第3積層体42及び第4積層体44は、それぞれ、基板11を基準として第1積層体22及び第2積層体24と対称の積層構造を有している。反射防止層41、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、基板11の反りを抑制する機能を有している。
【0037】
第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、外縁部11cの外縁に沿って薄化されている。すなわち、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44のうち外縁部11cの外縁に沿う部分は、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44のうち外縁に沿う部分を除く他の部分と比べて薄くなっている。ファブリペロー干渉フィルタ1では、第3積層体42、中間層43及び第4積層体44は、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に薄化部34bと重なる部分において第3積層体42、中間層43及び第4積層体44の全部が除去されていることで薄化されている。
【0038】
第3積層体42、中間層43及び第4積層体44には、第1表面11aに垂直な方向から見た場合に光透過領域1aを含むように開口40aが設けられている。開口40aは、光透過領域1aの大きさと略同一の径を有している。開口40aは、光出射側に開口している。開口40aの底面は、反射防止層41に至っている。
【0039】
第4積層体44の光出射側の表面には、遮光層45が形成されている。遮光層45は、例えばアルミニウム等からなる。遮光層45の表面及び開口40aの内面には、保護層46が形成されている。保護層46は、第3積層体42、中間層43、第4積層体44及び遮光層45の外縁を被覆すると共に、外縁部11c上の反射防止層41を被覆している。保護層46は、例えば酸化アルミニウムからなる。なお、保護層46の厚さを1~100nm(好ましくは、30nm程度)にすることで、保護層46による光学的な影響を無視することができる。
【0040】
以上のように構成されたファブリペロー干渉フィルタ1においては、一対の端子15,16を介して第1電極12と第3電極14との間に電圧が印加されると、当該電圧に応じた静電気力が第1電極12と第3電極14との間に発生する。当該静電気力によって、第2ミラー部32が、基板11に固定された第1ミラー部31側に引き付けられ、第1ミラー部31と第2ミラー部32との間の距離が調整される。このように、ファブリペロー干渉フィルタ1では、第1ミラー部31と第2ミラー部32との間の距離が静電気力によって変化する。
【0041】
ファブリペロー干渉フィルタ1を透過する光の波長は、光透過領域1aにおける第1ミラー部31と第2ミラー部32との間の距離に依存する。したがって、第1電極12と第3電極14との間に印加する電圧を調整することで、透過する光の波長を適宜選択することができる。このとき、第2電極13は、第3電極14と同電位である。したがって、第2電極13は、光透過領域1aにおいて第1ミラー部31及び第2ミラー部32を平坦に保つための補償電極として機能する。
【0042】
ファブリペロー干渉フィルタ1では、例えば、ファブリペロー干渉フィルタ1に印加する電圧を変化させながら(すなわち、ファブリペロー干渉フィルタ1において第1ミラー部31と第2ミラー部32との間の距離を変化させながら)、ファブリペロー干渉フィルタ1の光透過領域1aを透過した光を光検出器によって検出することで、分光スペクトルを得ることができる。
【0043】
このように、ファブリペロー干渉フィルタ1には、空隙Sを介して互いに対向すると共に互いの距離が可変とされた第1ミラー部31及び第2ミラー部32を含むメンブレン構造部Mが設けられている。メンブレン構造部Mは、基板11と反対側の主面Msを含む。基板11の第1表面11a及び主面Msに交差(直交)する方向からみて、第1積層体22及び第2積層体24における中間層23と重複しない部分である。すなわち、主面Msに交差(直交)する方向からみたときのメンブレン構造部Mの外形は、中間層23の内縁によって規定され、ここでは円形状である(
図1参照)。
【0044】
図4は、本実施形態に係るダミーフィルタの断面図である。
図4に示されるように、ダミーフィルタ2は、第2積層体24に複数の貫通孔24bが形成されていない点、及び中間層23に空隙Sが形成されていない点で、上述したファブリペロー干渉フィルタ1と相違している。ダミーフィルタ2では、第1ミラー部31と第2ミラー部32との間に中間層23が設けられている。つまり、第2ミラー部32は、空隙S上に浮いておらず、中間層23の表面23aに配置されている。
[ウェハの構成]
【0045】
次に、一実施形態のウェハの構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るウェハの平面図である。
図6は、
図5に示されるウェハの一部の拡大平面図である。
図5,6に示されるように、ウェハ100は、基板層110を備えている。基板層110は、例えば、直径が150mm又は200mm程度の円板状の形状を呈しており、その一部にオリエンテーションフラットOFが形成されている。基板層110は、例えば、シリコン、石英又はガラス等からなる。以下、基板層110の厚さ方向から見た場合に基板層110の中心を通り且つオリエンテーションフラットOFに平行な仮想直線を第1直線3といい、基板層110の厚さ方向から見た場合に基板層110の中心を通り且つオリエンテーションフラットOFに垂直な仮想直線を第2直線4という。
【0046】
ウェハ100には、有効エリア101及びダミーエリア102が設けられている。ダミーエリア102は、基板層110の外縁110c(すなわち、ウェハ100の外縁100a)に沿ったエリアである(外縁100aを形成している)。有効エリア101は、ダミーエリア102の内側のエリアである。ダミーエリア102は、基板層110の厚さ方向から見た場合に有効エリア101を囲んでいる。ダミーエリア102は、有効エリア101に隣接している。
【0047】
有効エリア101には、二次元に配置された複数のファブリペロー干渉フィルタ部1Aが設けられている。複数のファブリペロー干渉フィルタ部1Aは、有効エリア101の全体に設けられている。ダミーエリア102には、二次元に配置された複数のダミーフィルタ部2Aが設けられている。複数のダミーフィルタ部2Aは、ダミーエリア102のうち一対のエリア102aを除くエリアに設けられている。一方のエリア102aは、オリエンテーションフラットOFに沿ったエリアである。他方のエリア102aは、基板層110の外縁110cのうちオリエンテーションフラットOFとは反対側の部分に沿ったエリアである。有効エリア101とダミーエリア102との境界部分において、ファブリペロー干渉フィルタ部1Aとダミーフィルタ部2Aとは、隣接している。基板層110の厚さ方向から見た場合に、ファブリペロー干渉フィルタ部1Aの外形とダミーフィルタ部2Aの外形とは、同一である。複数のファブリペロー干渉フィルタ部1A及び複数のダミーフィルタ部2Aは、互いに直交する第1直線3及び第2直線4のそれぞれについて対称となるように、配置されている。なお、複数のダミーフィルタ部2Aは、ダミーエリア102の全体に設けられていてもよい。また、複数のダミーフィルタ部2Aは、ダミーエリア102のうちいずれか一方のエリア102aを除くエリアに設けられていてもよい。
【0048】
複数のファブリペロー干渉フィルタ部1Aは、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数のファブリペロー干渉フィルタ1になる予定の部分である。複数のダミーフィルタ部2Aは、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数のダミーフィルタ2になる予定の部分である。基板層110の厚さ方向から見た場合に、複数のライン5は、オリエンテーションフラットOFに平行な方向に沿うように延在しており、複数のライン5は、オリエンテーションフラットOFに垂直な方向に沿うように延在している。一例として、基板層110の厚さ方向から見た場合に各フィルタ部1A,2Aが矩形状を呈するときには、各フィルタ部1A,2Aは、二次元マトリックス状に配置され、複数のライン5は、隣り合うフィルタ部1A,1A間、隣り合うフィルタ部1A,2A間、及び隣り合うフィルタ部2A,2A間を通るように格子状に設定される。ここで、
図5に示されるように、二次元アレイ状に配列された複数のファブリペロー干渉フィルタ部1A及びダミーフィルタ部2Aのうち、ある1つのファブリペロー干渉フィルタ部1A又はダミーフィルタ部2Aと、その1つのファブリペロー干渉フィルタ部1A又はダミーフィルタ部2Aの周囲を囲むファブリペロー干渉フィルタ1及び/又はダミーフィルタ部2Aと、を含む3×3のアレイを単位アレイとする。このとき、ウェハ100においては、第1直線3と第2直線4とで区分けされた4つの領域に、それぞれ、複数の単位アレイが配置される。また、第1直線3と第2直線4とで区分けされた4つの領域に対して、同数の単位アレイが配置されている。さらに、ここでは、単位アレイは、第1直線3及び第2直線4に対して対照的に配置されている。単位アレイにおいては、その厚さ(断面積)よりもその幅(表面積)が大きくされている。
【0049】
図7の(a)は、ファブリペロー干渉フィルタ部1Aの断面図であり、
図7の(b)は、ダミーフィルタ部2Aの断面図である。
図7の(a)及び(b)に示されるように、基板層110は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の基板11になる予定の層である。基板層110は、互いに対向する第1表面110a及び第2表面110bを有している。基板層110の第1表面110aには、反射防止層210が設けられている。反射防止層210は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の反射防止層21になる予定の層である。基板層110の第2表面110bには、反射防止層410が設けられている。反射防止層410は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の反射防止層41になる予定の層である。
【0050】
反射防止層210上には、デバイス層200が設けられている。デバイス層200は、第1ミラー層220と、中間層230と、第2ミラー層240と、を有している。第1ミラー層220は、複数の第1ミラー部31を有する層であって、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の第1積層体22になる予定の層である。複数の第1ミラー部31は、反射防止層210を介して基板層110の第1表面110aに二次元に配置されている。中間層230は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の中間層23になる予定の層である。第2ミラー層240は、複数の第2ミラー部32を有する層であって、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の第2積層体24になる予定の層である。複数の第2ミラー部32は、中間層23を介して第1ミラー層220上に二次元に配置されている。
【0051】
反射防止層410上には、応力調整層400が設けられている。つまり、応力調整層400は、反射防止層410を介して基板層110の第2表面110bに設けられている。応力調整層400は、複数の層420,430,440を有している。層420は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の第3積層体42になる予定の層である。層430は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の中間層43になる予定の層である。層440は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の第4積層体44になる予定の層である。
【0052】
応力調整層400上には、遮光層450及び保護層460が設けられている。遮光層450は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の遮光層45になる予定の層である。保護層460は、ウェハ100が各ライン5に沿って切断されることで、複数の保護層46になる予定の層である。
【0053】
図7の(a)に示されるように、各ファブリペロー干渉フィルタ部1Aでは、互いに対向する第1ミラー部31と第2ミラー部32との間に空隙Sが形成されている。つまり、各ファブリペロー干渉フィルタ部1Aでは、中間層23が空隙Sを画定しており、第2ミラー部32が空隙S上に浮いている。各ファブリペロー干渉フィルタ部1Aには、上述したファブリペロー干渉フィルタ1の構成と同様に、第1電極12、第2電極13、第3電極14、複数の端子15,16、及び開口40a等に関する構成が設けられている。したがって、複数のファブリペロー干渉フィルタ部1Aがウェハ100の状態のままであっても、一対の端子15,16を介して各ファブリペロー干渉フィルタ部1Aに電圧が印加されると、互いに対向する第1ミラー部31と第2ミラー部32との間の距離が静電気力によって変化する。このように、ウェハ100には、既に、二次元状に配列された複数のファブリペロー干渉フィルタ1が形成され、固定されている(互いの相対的な位置が一定とされている)ともいえる。また、有効エリア101は、複数のファブリペロー干渉フィルタ1を含むことになる。
【0054】
図7の(b)に示されるように、各ダミーフィルタ部2Aでは、互いに対向する第1ミラー部31と第2ミラー部32との間に中間層23が設けられる。つまり、ダミーフィルタ部2Aでは、中間層23が空隙Sを画定しておらず、第2ミラー部32が中間層23の表面23aに配置されている。したがって、各ダミーフィルタ部2Aには、上述したダミーフィルタ2の構成と同様に、第1電極12、第2電極13、第3電極14、複数の端子15,16、及び開口40a等に関する構成が設けられているものの、互いに対向する第1ミラー部31と第2ミラー部32との間の距離は変化しない。なお、各ダミーフィルタ部2Aには、第1電極12、第2電極13、第3電極14、複数の端子15,16(各端子15,16を構成するアルミニウム等の金属膜、各端子15,16を配置するための貫通孔等)、及び開口40a等に関する構成が設けられていなくてもよい。このように、ウェハ100には、既に、二次元状に配列された複数のダミーフィルタ2が形成され、固定されている(互いの相対的な位置が一定とされている)ともいえる。また、ダミーエリア102は、複数のダミーフィルタ2を含むことになる。
【0055】
図6及び
図7の(a)に示されるように、デバイス層200には、基板層110とは反対側に開口する第1溝290が形成されている。第1溝290は、各ライン5に沿って形成されている。第1溝290は、各ファブリペロー干渉フィルタ部1A及び各ダミーフィルタ部2Aにおいて、第1ミラー部31、中間層23及び第2ミラー部32を囲んでいる。各ファブリペロー干渉フィルタ部1Aにおいて、第1ミラー部31、中間層23及び第2ミラー部32は、環状に連続する第1溝290によって囲まれている。同様に、各ダミーフィルタ部2Aにおいて、第1ミラー部31、中間層23及び第2ミラー部32は、環状に連続する第1溝290によって囲まれている。隣り合うフィルタ部1A,1A、隣り合うフィルタ部1A,2A、及び隣り合うフィルタ部2A,2Aに着目すると、第1溝290は、一方のフィルタ部の周縁部34及び他方のフィルタ部の周縁部34上の領域に対応している。第1溝290は、有効エリア101及びダミーエリア102において繋がっており、第1ミラー部31と第2ミラー部32とが互いに対向する方向(以下、単に「対向方向」という)から見た場合に基板層110の外縁110cに至っている。なお、第1溝290は、各ファブリペロー干渉フィルタ部1A及び各ダミーフィルタ部2Aにおいて、少なくとも第2ミラー部32を囲んでいればよい。
【0056】
図7の(b)に示されるように、応力調整層400には、基板層110とは反対側に開口する第2溝470が形成されている。第2溝470は、各ライン5に沿って形成されている。つまり、第2溝470は、第1溝290に対応するように形成されている。ここで、第2溝470が第1溝290に対応するとは、対向方向から見た場合に第2溝470が第1溝290と重なること意味する。したがって、第2溝470は、有効エリア101及びダミーエリア102において繋がっており、対向方向から見た場合に基板層110の外縁110cに至っている。
【0057】
以上のウェハ100からファブリペロー干渉フィルタ1及びダミーフィルタ2を製造する際には、まず、保護層460上に(すなわち、第2表面110b側に)エキスパンドテープ(後述する接着層501の一例)を貼り付ける。続いて、第2表面110b側にエキスパンドテープが貼り付けられた状態で、エキスパンドテープとは反対側からレーザ光を照射し、レーザ光の集光点を基板層110の内部に位置させつつ、レーザ光Lの集光点を各ライン5に沿って相対的に移動させる。つまり、エキスパンドテープとは反対側から、第1溝290において露出したポリシリコン層の表面を介して、基板層110にレーザ光を入射させる。
【0058】
そして、このレーザ光の照射によって、各ライン5に沿って基板層110の内部に改質領域を形成する。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域であって、基板層110の厚さ方向に伸展する亀裂の起点となる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域(一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも何れか一つを意味する)、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、基板層110の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域等がある。基板層110の材料が単結晶シリコンである場合、改質領域は、高転位密度領域ともいえる。なお、各ライン5に対して基板層110の厚さ方向に配列される改質領域の列数は、基板層110の厚さによって適宜調整される。
【0059】
続いて、第2表面110b側に貼り付けられたエキスパンドテープを拡張させることで、基板層110の内部に形成された改質領域から基板層110の厚さ方向に亀裂を伸展させ、各ライン5に沿って基板層110を複数の基板11に切断する。このとき、第1溝290において第2ミラー層240のポリシリコン層が各ライン5に沿って切断されると共に、第2溝470において反射防止層410及び保護層460が各ライン5に沿って切断される。これにより、エキスパンドテープ上において互いに離間した状態にある複数のファブリペロー干渉フィルタ1及び複数のダミーフィルタ2が得られる。
[運搬方法の一実施形態]
【0060】
図8は、本実施形態に係る運搬方法の一例を示す模式的な断面図である。
図8に示されるように、本実施形態に係る運搬方法においては、ウェハ100が運搬の対象物100A,100Bである。すなわち、ここでは、
図5~8に示されるように、二次元状に配列された複数のファブリペロー干渉フィルタ1をファブリペロー干渉フィルタ部1Aとして含む対象物100A,100Bを運搬する。より具体的には、対象物100A,100Bは、複数のファブリペロー干渉フィルタ1及び複数のダミーフィルタ2が形成されたウェハ100である。ウェハ100には、上述したように、複数のファブリペロー干渉フィルタ1(ファブリペロー干渉フィルタ部1A)を含む有効エリア101と、有効エリア101を囲むように設けられて外縁を形成するダミーエリア102と、が形成されている。ウェハ100は、主面(第1表面)100sと、主面100sとは反対側の裏面(第2表面)100rとを含む。主面100sは、基板11(基板層110)に対して第1ミラー部31及び第2ミラー部32側の面である。ここでは、主面100sは、各ファブリペロー干渉フィルタ1のメンブレン構造部Mの主面Msを含む面であって、第2ミラー部32の外表面を含む面である。裏面100rは、主面100sとは反対側の面である。ここでは、裏面100rは、各ファブリペロー干渉フィルタ1のメンブレン構造部Mの主面Msと反対側の面であって、保護層460の外表面である。
【0061】
図8に示されるように、対象物100A,100Bには、フィルム500が貼着されている。フィルム500は、対象物100A,100Bの裏面100rに貼着されている。一方、対象物100A,100Bの主面100sは、接触が形成されておらず(すなわち、主面100sに当接する部材等は存在せず)雰囲気に晒されている。ここでは、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が互いに同一の向き(主面Msが接着層501と反対側に臨む向き)とされた状態において、二次元状に配列されることになる。すなわち、各ファブリペロー干渉フィルタ1のメンブレン構造部Mの主面Msは、互いに同一平面上に位置している。
【0062】
フィルム500は、種々の機能を有する。すなわち、フィルム500は、接着層501と、吸湿層502と、吸着層503と、を含む。接着層501は、裏面100rに接着され、裏面100rとの接触を形成している。換言すれば、対象物100A,100Bは、裏面100rに接着された接着層501をさらに含む。接着層501は、例えば、運搬先におけるウェハ100のダイシングの際に上述したように用いられるエキスパンドテープである。吸湿層502は、接着層501における裏面100r(すなわち対象物100A,100B)と反対側の面に設けられている。吸着層503は、吸湿層502における接着層501と反対側の面に設けられている。吸着層503は、例えば、粘着力や静電気力により微小片を吸着して保持する。なお、接着層501においては、その表面の全体が接着力を有していても(すなわち接着可能であっても)よいし、当該表面の一部分のみが接着力を有していても(すなわち接着可能であって)もよい。例えば、接着層501においては、裏面100rが当接する部分が接着力を有する接着部となっており、その接着部においてウェハ100が接着層501に接着されて固定されていればよい。
【0063】
フィルム500(ここでは接着層501)の外縁部は、主面100sに交差(直交)する方向からみて、対象物100A,100Bの外縁から外部に突出している。フィルム500の対象物100Aから突出した外縁部には、支持体510が設けられている。支持体510は、例えば環状(一例として円環状)のフレームであって、フィルム500の下方において接着層501に接着されている。支持体510は、例えば、運搬先におけるウェハ100のダイシングの際に共通して利用され得る。
【0064】
対象物100A,100Bの運搬に際しては、収容容器Pを用いる。収容容器Pは、例えば箱状を呈しており、内部に複数(ここでは2つ)の対象物100A,100Bを収容する空間が形成されている。この空間は、複数の対象物100A,100Bを、その厚さ方向(主面100sから裏面100rに向かう方向)に互いに離間させつつ(特に、主面Msに接触が生じないようにしつつ)、並べて収容可能なように形成されている。収容容器Pの内面Psには、1つの対象物100A,100Bに対して一対の凸部Paと一対の凸部Pbとが設けられている。互いに対応する凸部Pa同士は、上下方向について互いに同一の位置に形成されている。互いに対応する凸部Pb同士は、凸部Paから下方に離間した位置において、上下方向に互いに同一の位置に形成されている。上下方向に並ぶ一対の凸部Pa,Pbは、支持体510を上下方向に挟持する挟持部を構成する。なお、1つの対象物100A,100Bに対する一対の凸部Pa,Pbのそれぞれは、平面視において(例えば、凸部Paから凸部Pbに向かう方向からみて)、互いにつながって(例えば、円環状、半円状、又は、U字状等の形状に)一体的に形成されていてもよいし、互いに分離して別体に形成されていてもよい。
【0065】
本実施形態に係る運搬方法においては、まず、対象物100A,100Bを収容容器Pに収容する(第1工程)。この工程においては、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列された状態において、対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持する。上述したように、対象物100A,100Bは、ウェハ100であるから、ここでは、ウェハ100として複数のファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列された状態において、対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持することになる。すなわち、ここでは、二次元状に配列されて実質的に変形しないシート状(すなわち薄い板状)とされた状態の複数のファブリペロー干渉フィルタ1を含む対象物100A,100Bを収容容器P内に収容する。対象物100A,100Bの主面100s(すなわち主面Ms、以下同様)に接触が生じないように、対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持する。ここでは、主面100sを下方に向けた状態において、凸部Pa,凸部Pbの間に支持体510を挿入し、凸部Pa,Pbにより支持体510を上下方向に挟持することにより、収容容器P内において対象物100A,100Bの全体が収容容器Pの内面Psに接触しないように、対象物100A,100Bを支持する。
【0066】
上述したように、対象物100A,100Bには、フィルム500が設けられている。したがって、この工程においては、対象物100A,100Bを収容容器Pに収容すると共に、吸湿層502及び吸着層503を収容容器P内に配置することになる。特に、この工程においては、一の対象物100Bにおける吸着層503が別の対象物100Aにおける主面100sの下方側において主面100sに対向するように対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持する。
【0067】
続いて、収容容器Pの全体を真空パックに収容すると共に、当該真空パックの排気により収容容器P内を真空引きする(第2工程)。その後、収容容器P及び収容容器P内の対象物100A,100Bを真空パックごと所望の場所まで運搬する。これにより、複数のファブリペロー干渉フィルタ1を一括して運搬可能である。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る運搬方法においては、運搬の対象物100A,100Bが、複数のファブリペロー干渉フィルタ1(ファブリペロー干渉フィルタ部1A)を含む。そして、第1工程においては、ファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列された状態において、収容容器Pに収容して支持する。このように、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列されている状態であれば、ファブリペロー干渉フィルタ1を個別に取り扱う場合と比較して、第1ミラー部31及び第2ミラー部32といったミラー部(メンブレン構造部Mの主面Ms)に接触が生じないように、一括して、収容容器Pへの収容(挿入、配置)及び支持を行うことが容易である。よって、この方法によれば、簡単な構成により複数の(多数の)ファブリペロー干渉フィルタ1の破損のリスクを低減しつつ運搬することが可能となる。
【0069】
なお、メンブレン構造部Mは、ファブリペロー干渉フィルタ1の中において比較的破損しやすい構成である。したがって、そもそも早い段階(ウェハ100の段階)でメンブレン構造部Mを形成することは、破損リスクを高めるとも考えられる。例えばウェハ100の段階でメンブレン構造部Mを形成すると、その後の切断工程において水を使用した場合、空隙S上に浮いたメンブレン状の第2ミラー部32が水圧によって破損したり、空隙S内に水が浸入してスティッキング(第2ミラー部32が第1ミラー部31に接触して動かなくなる現象)が発生したりする可能性も考えられる。
【0070】
また、メンブレン構造部Mが配列されたウェハ100においては、異物の飛来等によって一度に多くのファブリペロー干渉フィルタ1が不良となる危険性も考えられる。さらには、運搬時には揺れや振動等によるメンブレン構造部Mへの影響も懸念される。よって、個別の容器を用いずに多数のファブリペロー干渉フィルタ1を運搬しようとしたときに、メンブレン構造部Mを含むウェハ100の状態での運搬を採用するためには、破損リスクを低減するような工夫の考慮が必要となる。これに対して、本実施形態に係る運搬方法によれば、上記のとおり、二次元状に配列した状態において多数のファブリペロー干渉フィルタ1を取り扱って収容容器P内に収容及び支持することにより、破損リスクを低減しつつ多数のファブリペロー干渉フィルタ1を一括して運搬することを実現できる。なお、上述したように、本実施形態においては、レーザ光の照射によって各ライン5に沿って基板層110の内部に改質領域を形成することでウェハ100を切断する方法を採用することにより、上述した水を用いた場合の問題を解決することができる。
【0071】
本実施形態に係る運搬方法においては、対象物100A,100Bは、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が形成されたウェハ100である。ウェハ100は、基板11(基板層110)に対して第1ミラー部31及び第2ミラー部32側の主面100s(第1表面)と、主面100sとは反対側の裏面(第2表面)100rと、を含む。そして、第1工程においては、ウェハ100として複数のファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列された状態において対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持する。このように、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が、ウェハ100として一体化されている。このため、より簡単な構成によって多数(複数)のファブリペロー干渉フィルタ1の破損のリスクを低減しつつ収容し、運搬することができる。
【0072】
本実施形態に係る運搬方法においては、ウェハ100における主面100sとは反対側の裏面100rには、接着層501が設けられている。接着層501の外縁部には、支持体510が設けられており、収容容器Pの内面Psには、支持体510を上下方向に挟持する凸部(挟持部)Pa,Pbが設けられている。そして、第1工程においては、凸部Pa,Pbにより支持体510を挟持することにより対象物100A,100Bを収容容器P内に支持する。このように、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が、ウェハ100として一体化されている。このため、対象物100A,100Bの収容時、及び支持時において、挟持部との接触によるファブリペロー干渉フィルタ1の破損が防止される。
【0073】
本実施形態に係る運搬方法においては、第1工程において、主面100sを下方に向けた状態において、凸部Pa,Pbにより支持体510を挟持することにより、対象物100A,100Bを収容容器P内に支持する。このため、収容容器P内においてミラー部(メンブレン構造部Mの主面Ms)が下方に向くようにされる。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタ1においてミラー部(メンブレン構造部M)の破損が生じた場合であっても、その破片の影響が他のファブリペロー干渉フィルタ1に及びにくい。
【0074】
本実施形態に係る運搬方法においては、接着層501における主面100sと反対側の面には、吸湿層502が設けられており、吸湿層502における接着層501と反対側の面には、吸着層503が設けられている。そして、第1工程においては、一の対象物100Bにおける吸着層503が別の対象物100Aにおける主面100sの下方側において主面100sに対向するように対象物100A,100Bを収容容器Pに収容して支持する。このため、対象物100A,100Bの収容容器Pへの収容と同時に、収容容器P内に吸湿層502及び吸着層503を配置することができる。特に、この場合には、例えば収容容器Pの底部等に吸湿部材を配置する場合と比較して、ファブリペロー干渉フィルタ1に近い位置に吸湿層502を配置可能である。また、吸着層503が、メンブレン構造部Mの主面Msの下方において主面Msに対向するように配置される。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタ1においてメンブレン構造部Mの破損が生じた場合であっても、その破片が収容容器P内の吸着層503(例えば破損が生じたファブリペロー干渉フィルタ1を含む対象物に隣接する対象物の裏面100rの吸着層503)に吸着されるので、その影響が他のファブリペロー干渉フィルタ1に及ぶことを防止できる。
【0075】
本実施形態に係る運搬方法は、第1工程の後に、収容容器Pを真空パックに収容すると共に、真空パックの排気により収容容器P内を真空引きする第2工程を備えている。この場合、ファブリペロー干渉フィルタ1に影響を与えることなく収容容器P内を真空引き可能である。
【0076】
以上の実施形態は、本発明に係る運搬方法の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る運搬方法は、上述した方法に限定されず、上述した方法を任意に変形したものとすることができる。引き続いて、運搬方法の変形例について説明する。ウェハ100では、基板層110の厚さ方向から見た場合に、ファブリペロー干渉フィルタ部1Aの外形とダミーフィルタ部2Aの外形とが同一でなくてもよい。また、ウェハ100から複数のファブリペロー干渉フィルタ1を切り出す際には、全てのダミーフィルタ部2Aを切り出さなくてもよい(つまり、全てのダミーフィルタ部2Aを個片化しなくてもよい)。また、ダミーエリア102の構成は、上述したものに限定されない。例えば、ダミーエリア102に対応する領域において、少なくとも第2ミラー部32が、環状に連続する第1溝290によって囲まれていなくてもよい(例えば、第1溝290が、ダミーエリア102に対応する領域を単に横切っていてもよい)し、デバイス層200に第1溝290が形成されていなくてもよい。また、ダミーエリア102に対応する領域において、デバイス層200の一部の層又はデバイス層200の全体が設けられていなくてもよい。つまり、運搬の対象物となるウェハにおいては、ダミーエリアは必須の構成ではない。
【0077】
図9は、変形例に係る運搬方法の一例を示す模式的な断面図である。
図9に示されるように、ここでは、対象物100A,100Bは、接着層501と、互いに別体に構成されると共に二次元状に配列されて接着層501に接着された複数のファブリペロー干渉フィルタ1と、を含む。複数のファブリペロー干渉フィルタ1は、互いに接触して破損するのを避けるために、互いに離間した状態で固定されているのが好ましい。この場合には、二次元状の配列は、周期的な配列(例えば二次元格子状の配列)に限定されず、所定の平面内にランダムに分散されるような配列であってもよい。また、各ファブリペロー干渉フィルタ1のメンブレン構造部Mの主面Ms(ファブリペロー干渉フィルタ1の基板11に対して第1ミラー部31及び第2ミラー部32側の第1表面、及び、その第1表面とは反対側の第2表面)は、互いに同一平面上に位置している。このような対象物100A,100Bは、例えば、上述したようにウェハ100のダイシングによりファブリペロー干渉フィルタ1を製造した後にピックアップし、接着層501に接着することにより構成され得る。すなわち、複数のファブリペロー干渉フィルタ1を含むシート状の対象物100A,100Bを形成する。この状態においては、接着層501の可撓性に応じて変形可能なシート状とされている。そして、接着層501の外縁部が支持体510に支持されることにより、複数のファブリペロー干渉フィルタ1が二次元状に配列され、且つ、互いの位置関係が変化しないように固定された状態(実質的に変形しないシート状)とされる。ここでは、対象物100A,100Bは、ダミーフィルタ2を含まない。この場合にも、第1工程においては、各ファブリペロー干渉フィルタ1のメンブレン構造部Mの主面Ms(上述した第1表面)を下方に向けた状態において、凸部Pa,Pbにより支持体510を挟持することにより、上記のとおりシート状の対象物100A,100Bを収容容器P内に収容(挿入、配置)し、支持することができる。
【0078】
この場合にも、互いに別体に構成された複数のファブリペロー干渉フィルタ1が、二次元状のシート状に配列されて接着層501に接着(固定)されている。このため、ミラー部(メンブレン構造部Mの主面Ms(第1表面))に接触が生じないように収容及び支持を行うことがより容易である。しかもこの場合には、ウェハ100のダイシングによりファブリペロー干渉フィルタ1を製造した後にピックアップする際に、事前の検査で不良品と判断したファブリペロー干渉フィルタ1を排除すれば、不良品を含まずに良品のみを運搬の対象物とすることができる。また、収容容器P内において第1表面が下方に向くようにされる。このため、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタ1においてミラー部(メンブレン構造部M)の破損が生じた場合であっても、その破片の影響が他のファブリペロー干渉フィルタ1に及びにくい。また、仮に、1つのファブリペロー干渉フィルタ1においてミラー部(メンブレン構造部M)の破損が生じた場合であっても、その破片が吸着層503に吸着されるので、その影響が他のファブリペロー干渉フィルタ1に及ぶことを防止できる。
【0079】
なお、以上の例では、フィルム500及び支持体510を介して、対象物100A,100Bを収容容器P内に支持する態様について説明したが、フィルム500及び支持体510を用いなくてもよい。すなわち、収容容器Pの内面Psに、ダミーエリア102においてウェハ100である対象物を上下方向に挟持する挟持部を設け、第1工程においては、主面100sを下方に向けた状態において、当該挟持部によりダミーエリア102を挟持することにより対象物を収容容器P内に支持するようにしてもよい。この場合、支持体510等の部材を別途用いることなく、対象物を収容容器P内において支持可能である。また、対象物であるウェハ100の外縁部にダミーエリア102が設けられるので、ウェハ100の強度が向上すると共に反りが抑制される。このため、対象物の収容容器Pへの収容が容易となる。
【0080】
また、
図10に示されるように、第1ウェハ610と第2ウェハ620とが接合されることで構成された実質的に変形しないシート状(すなわち板状)のウェハ600が運搬の対象物とされてもよい。ウェハ600は、複数のファブリペロー干渉フィルタ部650Aを含んでいる。複数のファブリペロー干渉フィルタ部650Aは、第1ウェハ610及び第2ウェハ620のそれぞれに設定された各ライン5に沿ってウェハ600が切断されることで、複数のファブリペロー干渉フィルタ650になる予定の部分である。ウェハ600の厚さ方向から見た場合に、複数のファブリペロー干渉フィルタ部650Aは二次元にされている。
【0081】
第1ウェハ610は、基板層611と、複数の第1ミラー部612と、複数の駆動電極613と、を備えている。基板層611は、互いに対向する表面611a及び表面611bを有している。基板層611は、光透過性材料によって形成されている。各第1ミラー部612は、例えば、金属膜、誘電体多層膜、又はそれらの複合膜である。各駆動電極613は、例えば金属材料によって形成されている。
【0082】
第2ウェハ620は、基板層621と、複数の第2ミラー部622と、複数の駆動電極623と、を備えている。基板層621は、互いに対向する表面621a及び表面621bを有している。基板層621は、光透過性材料によって形成されている。各第2ミラー部622は、例えば、金属膜、誘電体多層膜、又はそれらの複合膜である。各駆動電極623は、例えば金属材料によって形成されている。
【0083】
ウェハ600では、1つの第1ミラー部612、1つの駆動電極613、1つの第2ミラー部622及び1つの駆動電極623によって、1つのファブリペロー干渉フィルタ部650Aが構成されている。以下、1つのファブリペロー干渉フィルタ部650Aに着目して、ウェハ600の構成について説明する。
【0084】
基板層611の表面611aには、凹部614が形成されている。凹部614の底面614aには、凸部615が設けられている。凸部615の高さは、凹部614の深さよりも小さい。つまり、凸部615の端面615aは、基板層611の表面611aに対して凹んだ状態にある。第1ミラー部612は、凸部615の端面615aに設けられている。駆動電極613は、凸部615を囲むように凹部614の底面614aに設けられている。駆動電極613は、例えば、基板層611に設けられた配線(図示省略)を介して、電極パッド(図示省略)と電気的に接続されている。当該電極パッドは、例えば、基板層611のうち外部からアクセス可能な領域に設けられている。
【0085】
基板層621の表面621bは、例えばプラズマ重合膜等によって、基板層611の表面611aと接合されている。基板層621の表面621bには、第2ミラー部622及び駆動電極623が設けられている。第2ミラー部622は、空隙Sを介して第1ミラー部612と対向している。駆動電極623は、第2ミラー部622を囲むように基板層621の表面621bに設けられており、空隙Sを介して駆動電極613と対向している。駆動電極623は、例えば、基板層621に設けられた配線(図示省略)を介して、電極パッド(図示省略)と電気的に接続されている。当該電極パッドは、例えば、基板層621のうち外部からアクセス可能な領域に設けられている。
【0086】
基板層621の表面621aには、ウェハ600の厚さ方向から見た場合に、第2ミラー部622及び駆動電極623を囲むように溝621cが形成されている。溝621cは、円環状に延在している。基板層621のうち溝621cに囲まれた部分は、溝621cが形成された部分をダイヤフラム状の保持部621dとして、ウェハ600の厚さ方向に変位可能である。なお、ダイヤフラム状の保持部621dは、ウェハ600の厚さ方向から見た場合に第2ミラー部622及び駆動電極623を囲む溝が、基板層621の表面621a及び表面621bの少なくとも一方に形成されることで、構成されていてもよい。また、ウェハ600の厚さ方向から見た場合に第1ミラー部612及び駆動電極613を囲む溝が、基板層611に形成されることで、基板層611においてダイヤフラム状の保持部が構成されていてもよい。また、ダイヤフラム状の保持部に代えて、放射状に配置された複数の梁によって保持部が構成されていてもよい。
【0087】
以上のように各ファブリペロー干渉フィルタ部650Aが構成されたウェハ600では、各ファブリペロー干渉フィルタ部650Aにおいて、駆動電極613と駆動電極623との間に電圧が印加されると、当該電圧に応じた静電気力が駆動電極613と駆動電極623との間に発生する。当該静電気力によって、基板層621のうち溝621cに囲まれた部分が基板層611側に引き付けられ、第1ミラー部612と第2ミラー部622との間の距離が調整される。これにより、第1ミラー部612と第2ミラー部622との間の距離に応じた波長を有する光が透過する。
【0088】
運搬の対象物としてのウェハ600は、二次元状に配列された複数のファブリペロー干渉フィルタ650を含む。ファブリペロー干渉フィルタ650は、基板層611から形成される基板と、当該基板上に設けられ、空隙Sを介して互いに対向すると共に互いの距離が可変とされた第1ミラー部612及び第2ミラー部622と、を備えている。また、ウェハ600及びファブリペロー干渉フィルタ650において、基板層611を基準とすると、基板層611(及び基板層611から形成される基板)に対して第1ミラー部31及び第2ミラー部32側の第1表面は、基板層621(及び基板層621から形成される基板)の表面621aである。また、その第1表面とは反対側の第2表面は、基板層611(及び基板層611から形成される基板)の表面611bである。
【0089】
このようなウェハ600を対象物として運搬する場合にも、上記の場合と同様に、第1工程において、対象物を収容容器Pに収容する。このとき、第1工程においては、複数のファブリペロー干渉フィルタ650が二次元状に配列された状態において、当該対象物を収容容器Pに収容して支持することになる。
【符号の説明】
【0090】
1,650…ファブリペロー干渉フィルタ、2…ダミーフィルタ、11…基板、31…第1ミラー部、32…第2ミラー部、100,600…ウェハ、100A,100B…対象物、101…有効エリア、102…ダミーエリア、501…接着層、502…吸湿層、503…吸着層、P…収容容器、Ps…内面、Pa,Pb…凸部(挟持部)。