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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179481
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20221125BHJP
   G02B 7/198 20210101ALI20221125BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B7/198
B81B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136890
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2020558330の分割
【原出願日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2018225146
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正吾
(57)【要約】
【課題】破損を抑制することができる駆動装置を提供する。
【解決手段】ベース部材4が、内周側に設けられた軸部によって可動部を回動可能に支持する枠状部41と、枠状部の外周側に延びる弾性構造部42と、を有する。ベース部材4の弾性構造部42が台座7に対して接合されることで、ベース部材4と台座7とに生じた熱変形量の差を、弾性構造部42の変形によって吸収させることができ、駆動装置の破損を抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と、
枠状部を有し、前記枠状部の内周側に設けられた軸部によって前記可動部を回動可能に支持するベース部材と、
前記可動部を駆動する駆動手段と、
前記ベース部材が固定される台座と、を備え、
前記ベース部材は、前記枠状部の外周側に延びる弾性構造部を有し、
前記弾性構造部が前記台座に対して接合されることを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体に対し、一対の梁部によって可動板を回転可能に支持するとともに、永久磁石の近傍にヨークを設けることにより、可動板を回転させる磁気力型駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された磁気力型駆動装置では、ヨークの一対の端部に互いに異なる磁極が現れるように、ヨークに巻回されたコイルに導通することにより、可動部の振角を大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-246362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された駆動装置では、枠体がヨーク上に配置されている。即ち、可動板を安定して回動させるためには、枠体(ベース部材)を何らかの台座に対して固定する必要がある。しかしながら、ベース部材は可動部と同様の材料によって構成されることが多いのに対し、台座はベース部材とは異なる材料によって構成されることがあり、これらの材料の熱膨張係数が異なる可能性があった。
【0005】
この場合、駆動装置に熱が加わると、台座部とベース部材との熱変形量の差によって、これらの間の接合部分やベース部材自体に大きな応力が加わり、破損の原因となる可能性があった。そこで、接合部分に用いる接着剤の量を増やすことによって熱変形量の差を吸収するという構成も考えられるものの、接着剤の量が増加すると、接着時の硬化収縮の影響が大きくなり、台座とベース部材との接合部分や、ベース部自体に応力が加わりやすくなってしまう。
【0006】
したがって、本発明の課題は、破損を抑制することができる駆動装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の駆動装置は、可動部と、枠状部を有し、前記枠状部の内周側に設けられた軸部によって前記可動部を回動可能に支持するベース部材と、前記可動部を駆動する駆動手段と、前記ベース部材が固定される台座と、を備え、前記ベース部材は、前記枠状部の外周側に延びる弾性構造部を有し、前記弾性構造部が前記台座に対して接合されることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
図2】前記駆動装置を示す分解斜視図である。
図3】前記駆動装置に支持部材を設けた様子を示す分解斜視図である。
図4】前記駆動装置を示す側面図である。
図5】本発明の第2実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
図6】前記駆動装置を示す分解斜視図である。
図7】前記駆動装置に支持部材を設けた様子を示す分解斜視図である。
図8】前記駆動装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る駆動装置は、可動部と、枠状部を有し、枠状部の内周側に設けられた軸部によって可動部を回動可能に支持するベース部材と、可動部を駆動する駆動手段と、ベース部材が固定される台座と、を備える。ベース部材は、枠状部の外周側に延びる弾性構造部を有し、弾性構造部が台座に対して接合される。
【0010】
ベース部材の弾性構造部が台座に対して接合されることで、ベース部材と台座とに生じた熱変形量の差を、弾性構造部の変形によって吸収させることができ、ベース部材、および、軸部とベース部材との接続部分の破損を抑制することができる。このとき、弾性構造部は、枠状部よりも弾性変形容易な形状を有する部位であればよい。
【0011】
弾性構造部は、枠状部に直交するように延びる直交部を有することが好ましい。これにより、枠状部から外側に突出するように直交部を形成すればよく、弾性構造部を容易に形成することができる。
【0012】
弾性構造部は、枠状部に沿って延びる平行部を有していてもよい。これにより、枠状部に沿って平行部の寸法を大きくしても、ベース部材が大型化しにくく、熱変形量の差を吸収させやすくすることができる。尚、直交部と平行部とが組み合わされていてもよい。
【0013】
枠状部が、台座に対して接合されていない。または、枠状部の一部のみが台座に対して接合されていてもよい。即ち、ベース部材と台座との接合強度と、弾性構造部の変形のしやすさと、が適宜なバランスとなるように、ベース部材における接合領域を設定すればよい。
【0014】
弾性構造部を台座に接合する接合部材が、複数の弾性構造部のそれぞれに対応するように、複数箇所に配置されていることが好ましい。これにより、接合部材の使用量を削減することができる。
【0015】
弾性構造部は、枠状部に連続し且つ前記台座に接合されない非接合部と、非接合部に連続し且つ台座に接合される接合部と、を有することが好ましい。これにより、非接合部を弾性変形させやすくすることができ、ベース部材と台座とに生じた熱変形量の差によって枠状部および接合部分に加わる応力を低減することができる。
【実施例0016】
以下、本発明の各実施例について具体的に説明する。尚、第2実施例においては、第1実施例で説明する構成部材と同じ構成部材及び同様な機能を有する構成部材には、第1実施例と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0017】
[第1実施例]
本実施例の駆動装置1Aは、図1~4に示すように、ミラー2と、中間フレーム3と、ベース部材4と、内側トーションバー5と、外側トーションバー6と、台座7と、駆動手段と、を備えた光偏向器である。駆動装置1Aは、例えば車両に搭載されて赤外線等の光を送受信することで他車両や設置物等との距離を検出する検出装置に用いられる。
【0018】
本実施例では、内側トーションバー5と外側トーションバー6とが略直交するように延びており、内側トーションバー5の延在方向(軸方向)をX方向とし、外側トーションバー6の延在方向(軸方向)をY方向とし、XY平面に略直交する方向をZ方向とする。
【0019】
ミラー2は、XY平面に沿って延びる板状に形成され、表面21が鏡面加工されて反射面となっている。ミラー2の外周側には一対の内側トーションバー5が接続されている。尚、図示の例ではミラー2が円板状であるものとしているが、ミラー2は、楕円板状であってもよいし、長方形状等の多角形板状であってもよく、用途に応じた適宜な形状を有していればよい。
【0020】
中間フレーム3は、XY平面に沿って延びる矩形枠状に形成され、ミラー2を囲むように配置される。中間フレーム3の内周側には一対の内側トーションバー5が接続され、外周側には一対の外側トーションバー6が接続されている。即ち、ミラー2は、内側トーションバー5を介して、中間フレーム3によって回動可能に支持されている。
【0021】
ベース部材4は、XY平面に沿って延びるとともに中間フレーム3を囲む矩形状の枠状部41と、枠状部41の外周側に延びる複数の弾性構造部42と、を有する。ベース部材4の内周側には一対の外側トーションバー6が接続されている。即ち、ミラー2と中間フレーム3と内側トーションバー5とを可動部とした際、可動部は、軸部としての外側トーションバー6を介して、ベース部材4によって回動可能に支持されている。
【0022】
枠状部41は、X方向に沿って延びる第1辺部411および第2辺部412と、Y方向に沿って延びる第3辺部413および第4辺部414と、によって構成されている。複数の弾性構造部42は、それぞれ、第1辺部411または第2辺部412に連続してY方向に沿って延び、第3辺部413または第4辺部414に連続してX方向に沿って延びている。即ち、弾性構造部42全体が、枠状部41に直交するように延びる直交部421となっている。弾性構造部42は、全体が直交部421であることで、枠状部41よりも弾性変形容易となっている。
【0023】
上記のミラー2と中間フレーム3とベース部材4と内側トーションバー5と外側トーションバー6とは、例えばSi等からなる基板に一体に形成され、ミラーユニット10を構成する。
【0024】
台座7は、例えばアルミニウム合金や樹脂等の材料によって構成され、ベース部材4よりも剛性が高く、その熱膨張係数はベース部材4とは異なっていてもよい。台座7は、XY平面に沿って延びる矩形枠状に形成されている。本実施例では、枠状部41の内側の開口と、台座7の内側の開口と、が略一致しているものとする。尚、台座7は、例えばベース部材4の形状や、駆動装置1Aの取付対象の形状に応じた適宜な形状を有していればよい。
【0025】
駆動手段は、ミラー2および中間フレーム3を駆動する(回動させる)ためのものである。駆動手段の駆動方式は限定されず、例えばコイルおよび磁気素子によって構成されていてもよいし、圧電素子によって構成されていてもよい。
【0026】
ここで、台座7に対するベース部材4の接合構造の詳細について説明する。台座7には、弾性構造部42のそれぞれの先端部422に対応する複数箇所に、接合部材8が設けられる。この接合部材8を硬化させることによって弾性構造部42が台座7に接合される。尚、接合部材8は、例えば、アクリル系接着剤や、エポキシ系接着剤、永久膜用レジスト等の硬化後も弾性を有するものが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
このとき、弾性構造部42のうち接合部材8に対応した先端部422が、台座7に接合される接合部となり、接合部材8が設けられない位置に対応した基端部423が、台座7に接合されない非接合部となる。このとき、基端部423は枠状部41に連続しており、先端部422は基端部423に連続している。また、枠状部41は、台座7に対して接合されていない(枠状部41は接合部を有していない)。
【0028】
上記のように台座7に対してベース部材4を固定する際、Z方向においてベース部材4と台座7とを位置決めするために、支持部材9を設けることが好ましい。支持部材9は、枠状部41に対応するように枠状に形成されるとともに、接合部材8よりも内側に配置されている。尚、支持部材9の形状は枠状に限定されず、支持部材9の少なくとも一部が枠状部41に突き当たるように配置されればよい。これにより、接合部材8の硬化前において、ベース部材4が台座7に対して過度に接近してしまったり傾いてしまったりすることを抑制することができる。
【0029】
上記の構成により、ベース部材4の弾性構造部42が台座7に対して接合されることで、ベース部材4と台座7とに生じた熱変形量の差を、弾性構造部42の変形によって吸収させることができ、ベース部材4、および、ベース部材4と台座7との接合部分の破損を抑制することができる。
【0030】
また、弾性構造部42全体が直交部421となっていることで、枠状部41から外側に突出するように直交部421を形成すればよく、弾性構造部42を容易に形成することができる。
【0031】
また、弾性構造部42を台座7に接合する接合部材8が、複数の弾性構造部42のそれぞれに対応するように、複数箇所に配置されていることで、接合部材8の使用量を削減することができる。
【0032】
弾性構造部42が、接合部としての先端部422と、非接合部としての基端部423と、を有することで、基端部423を弾性変形させやすくすることができ、ベース部材4と台座7とに生じた熱変形量の差によって枠状部41および接合部分に加わる応力を低減することができる。
【0033】
[第2実施例]
本実施例の駆動装置1Bは、図5~8に示すように、ミラー2と、中間フレーム3と、ベース部材4Bと、内側トーションバー5と、外側トーションバー6と、台座7と、駆動手段と、を備えた光偏向器である。即ち、駆動装置1Bは、第1実施例の駆動装置1Aのベース部材4をベース部材4Bに置換したものである。
【0034】
ベース部材4Bは、枠状部41と、8つの弾性構造部43と、を有する。弾性構造部43は、枠状部41の4つの角部から延びている。弾性構造部43は、枠状部41に直交するように延びる直交部431と、枠状部41の各辺に沿って延びる平行部432と、を有する。即ち、枠状部41の第1辺部411の両端の角部から突出した弾性構造部43は、Y方向に沿って延びる直交部431と、第1辺部411の外側においてX方向に沿って延びる平行部432と、を有する。第2~第4辺部412~414のそれぞれの両端の角部から突出する弾性構造部43も同様である。尚、弾性構造部43は、枠状部41の辺部のうち外側トーションバー6から離間した位置から延びるようにしてもよいし、枠状部41の3つの角部から延びるようにしてもよい。枠状部41のうち外側トーションバー6から離間した位置から弾性構造部43が延びるようにすることで、ベース部材4と台座7とに生じた熱変形量の差によって枠状部41に加わる応力が、外側トーションバー6の付け根に伝わることを抑制することができる。
【0035】
接合部材8は、平行部432のうち先端部432Aに対応して設けられる。即ち、先端部432Aが、台座7に接合される接合部となり、接合部材8が設けられない位置に対応した基端部432Bが、台座7に接合されない非接合部となる。基端部432Bは枠状部41に連続しており、先端部432Aは基端部432Bに連続している。また、枠状部41は、台座7に対して接合されていない(枠状部41は接合部を有していない)。
【0036】
第1実施例と同様に、台座7に対してベース部材4Bを固定する際、Z方向においてベース部材4Bと台座7とを位置決めするために、支持部材9を設けることが好ましい。
【0037】
上記の構成により、第1実施例と同様に、ベース部材4Bの弾性構造部43が台座7に対して接合されることで、ベース部材4Bと台座7とに生じた熱変形量の差を、弾性構造部43の変形によって吸収させることができ、ベース部材4B、および、ベース部材4Bと台座7との接合部分の破損を抑制することができる。
【0038】
また、弾性構造部43が平行部432を有することで、枠状部41の各辺部に沿って平行部432の寸法を大きくしても、ベース部材4Bが大型化しにくく、熱変形量の差を吸収させやすくすることができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0040】
例えば、前記第1実施例および第2実施例では、弾性構造部が直交部を有するものとしたが、弾性構造部は、枠状部に対して斜めに交差するように延びる部分を有していてもよい。また、枠状部が円環状の場合には、弾性構造部のうち、例えば円の接線に対して直交する部分を直交部としてもよい。
【0041】
また、前記第1実施例および第2実施例では、枠状部41が台座7に対して接合部を有していないものとしたが、枠状部の一部が台座に対して接合されてもよい。例えば、枠状部のうち一辺を台座に対して接合するとともに、対向する辺を接合せずに弾性構造部を設けてもよい。
【0042】
また、前記第1実施例および第2実施例では、接合部材8が、複数の弾性構造部のそれぞれに対応するように複数箇所に配置されているものとしたが、連続した形状の接合部材を設けてもよい。例えば、弾性構造部が配置される位置に応じて、接合部材を環状に設けてもよい。
【0043】
また、前記第1実施例および第2実施例では、弾性構造部が接合部と非接合部とを有するものとしたが、例えば弾性構造部が充分な厚さを有する場合や、接合部材によって弾性構造部の変形が阻害されにくい場合等、弾性構造部が変形容易である場合には、弾性構造部全体が接合部となっていてもよい(即ち弾性構造部が非接合部を有していなくてもよい)。
【0044】
また、前記第1実施例および第2実施例では、ミラー2と中間フレーム3と内側トーションバー5とを可動部が可動部を構成し、可動部が、軸部としての外側トーションバー6を介して、ベース部材4によって回動可能に支持されているものとしたが、ミラーを可動部とし、ミラーが軸部を介してベース部材によって回動可能に支持されていてもよい。
【0045】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1A、1B 駆動装置
4、4B ベース部材
41 枠状部
42、43 弾性構造部
422 先端部(接合部)
423 基端部(非接合部)
431 直交部
432 平行部
7 台座
8 接合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8