(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179543
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】CLOSTRIDIUM DIFFICILEに対する免疫応答を誘導するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20221125BHJP
C07K 14/33 20060101ALI20221125BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221125BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221125BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20221125BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221125BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C12N15/31
C07K14/33 ZNA
C12P21/02 C
C07K19/00
A61K39/08
A61P31/04
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022153071
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2019550687の分割
【原出願日】2018-03-15
(31)【優先権主張番号】62/471,636
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/474,434
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507301246
【氏名又は名称】ノババックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ジン-フイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イエ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】グレン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フライヤー,デイビッド
(57)【要約】
【課題】細菌感染症を治療または予防するための方法および組成物が本明細書で開示される。特に、本方法および組成物は、C.difficile感染症のためのものである。
【解決手段】特定の態様では、本組成物は、細菌からの複数の毒素の部分を含有する多量体ポリペプチドを含有するワクチンである。ポリペプチドは、効果的な免疫応答を誘導し、この結果として感染症を治療または予防する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4つのC.difficile毒素タンパク質の部分を含む、多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項2】
前記部分が、二成分毒素(CDT)、毒素A(TcdA)タンパク質、および毒素B(TcdB)からなる毒素の群から選択される、請求項1に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項3】
前記部分が、CDTタンパク質、毒素Aタンパク質、および2つの毒素Bタンパク質からのものであり、前記毒素Bタンパク質が異なるC.difficile菌株からのものである、請求項2に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも1つの毒素B部分が流行性菌株.からのものである、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項5】
前記流行性菌株がNAP1菌株(TcdB(027))である、請求項4に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項6】
前記毒素B部分のうちの1つが630菌株(TcdB(003))からのものである、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項7】
前記部分が、前記2つの毒素B部分間の前記毒素A部分とともに配向されている、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項8】
前記CDT部分が、前記毒素B部分のうちの一方または両方のN末端である、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項9】
前記CDT部分が、配列番号22を含むか、もしくはそれからなるアミノ酸配列、または前記配列に対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項10】
前記毒素B部分のうちの1つが、配列番号23を含むか、もしくはそれからなるアミノ酸配列、または前記配列に対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項11】
前記第2の毒素B部分が、配列番号25を含むか、もしくはそれからなるアミノ酸配列、または前記配列に対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項12】
前記毒素A部分が、配列番号24を含むか、もしくはそれからなるアミノ酸配列、または前記配列に対して少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項13】
前記部分が、2アミノ酸リンカー、3アミノ酸リンカー、または4アミノ酸リンカーにより分離されている、請求項1に記載の多価の免疫原性ペプチド。
【請求項14】
前記部分が、2アミノ酸リンカーにより分離され、前記リンカーが、アラニン-セリン(AS)、ロイシン-グルタミン酸(LE)、およびセリン-アルギニン(SR)からなる群から選択される、請求項13に記載の多価の免疫原性ペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、核酸分子。
【請求項17】
(a)昆虫宿主細胞において前記ポリペプチドを発現させることと、
(b)ナノ粒子の形態の非イオン性洗剤の存在下で前記ポリペプチドを精製することと、
(c)薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤に前記ナノ粒子を懸濁することと、を含む請求項1に記載のポリペプチドの調製方法。
【請求項18】
前記昆虫宿主がSf9細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記昆虫宿主細胞が、前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、組換えバキュロウイルス構築物でトランスフェクトされる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれかに記載の免疫原性ポリペプチドと、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と、を含む、ワクチン組成物。
【請求項21】
前記組成物がアジュバントを含む、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記アジュバントがサポニン系アジュバントである、請求項20または21に記載の ワクチン組成物。
【請求項23】
前記サポニン系アジュバントが、画分Aマトリックスおよび画分Cマトリックスを含有する、請求項20~22のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記画分Aマトリックスの量が、約85%~約92%であり、残りが画分Cマトリックスである、請求項20~23のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項25】
Clostridium Difficile感染症の予防または治療のための薬剤の製造のための、請求項1~15のいずれかに記載のポリペプチド、または請求項16に記載の核酸の使用。
【請求項26】
請求項1~15のいずれかに記載の多価の免疫原性ポリペプチドと、非イオン性洗剤と、を含む、ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月15日出願の米国仮出願第62/471,636号および2017年3月21日出願の同第62/474,434号に対する優先権を主張し、それらの開示は全ての目的のために各々本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列リストのコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:NOVV_058_02WO_SeqList_ST25、記録日:2018年3月13日、ファイルサイズ187キロバイト)。
【0003】
サブユニット系ワクチンを使用する疾患に対するワクチン接種は、タンパク質が標的集団に投与されたときに効果的なままであるように、十分な量のタンパク質抗原を生成すること、および抗原の安定性を維持することに依存する。
【0004】
サブユニットワクチンを生成する際の複雑さは、生成中の複数工程で生じる。標的タンパク質が低レベルで生成される可能性があるか、または不溶性である可能性があり、タンパク質が特に好ましい免疫原性プロファイルを有していたとしても経済的に好ましくない生成となる。
【0005】
細菌感染症は依然として健康上の懸念である。実際、細菌が最先端の抗生物質に対して耐性を発達させるため、細菌ワクチンがますます求められている。細菌性サブユニットワクチンは、組換えタンパク質の生成に依存する。しかしながら、細菌タンパク質は、低発現および不溶性に起因して高レベルで生成することが難しいことが多く、それらはまた安定性の低減を被る場合もある。したがって、特に難しい抗原標的のためのワクチンを生成するより良いアプローチは、包括的な健康利益を提供するであろう。特に、クロストリジウム細菌、とりわけ、C.difficileによる感染症は依然として特定の問題である。Clostridium difficile感染症(CDI)は、発展途上国における院内抗生物質関連下痢の主な原因である。超病原性菌株が発達し、死亡率の増加を伴う重度の疾患をもたらしている。同族のグルコシル化毒素TcdAおよびTcdB、ならびに二成分ADPリボシル化毒素(CDT)が、病理発生を引き起こす主な病原性因子である。これらの毒素を標的とするワクチンの必要性が満たされていない。
【発明の概要】
【0006】
C.difficileに対する免疫応答を誘導する方法および組成物が本明細書で開示される。本組成物は、複数のC.difficile毒素を含有するポリペプチドを含有し、対象に投与されると有利な免疫応答を誘導する。多毒素ポリペプチドを生成するための方法も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】C.difficile三種混合毒素ワクチン構築物。図は、CDTbの活性化ドメインの後にフーリン切断部位を有する(構築物1420)、および有しない(構築物1470)CDTb、Tcd B、およびTcd Aの結合ドメインを含有するC.diff三種混合毒素ワクチンの図を示す。
【
図2】三種混合毒素ワクチンBV1470およびBV1420の発現および溶解度。Spodoptera frugiperda Sf9昆虫細胞を、0.1のMOIで組換えバキュロウイルスBV1420およびBV1470に感染させ、感染後48および72時間で回収し、SDS-PAGEおよびクーマシー染色によりタンパク質発現を分析した。等体積の総タンパク質(T、細胞および培地)および浄化培地(M)を、2X SDS-PAGE試料緩衝液と混合し、4%~12%のポリアクリルアミドNuPageゲルで実行した。ペレット状の感染細胞を1% NP9、25mMのTris、50mMのNaCL、pH8.0の緩衝液に可溶化した。溶解した細胞を9000xgで40分間遠心分離した。上清(S、可溶性)を除去し、ペレット(I、不溶性)を元の体積まで緩衝液に懸濁して、上述のようにSDS-PAGEにより分析した。三種混合毒素タンパク質の位置を矢印で印を付けた。
【
図3】三種混合毒素ワクチンBV1470およびBV1420の時間経過発現。
図6に記載するように、Spodoptera frugiperda Sf9昆虫細胞を組換えバキュロウイルスBV1420およびBV1470に感染させた。様々な感染後時間点で、総タンパク質、培地、可溶性、および不溶性タンパク質をSDS-PAGEおよびクーマシー染色により分析した。三種混合毒素タンパク質の位置を矢印で印を付ける。
【
図4】三種混合毒素ワクチンの精製。NP9を添加して0.2%の最終濃度にした後、感染Sf9細胞の全細胞培養物から三種混合毒素ワクチンを精製した。NP9抽出物を2回浄化し、連続してFractogel EMD TMAE、フェニルHP、およびSource 30Qカラムで精製した。三種混合毒素を各カラムから溶出し、示すように次のカラムに充填した。Source 30Qカラムから溶出した三種混合毒素陽性画分をプールし、0.2μMフィルタを通してフィルタ減菌した。
【
図5】Sf9細胞からの三種混合毒素ワクチンBV1470の精製
図8に記載されるように三種混合毒素ワクチンBV1470を感染細胞から精製した。Source 30Qカラムからのフィルタ処理した最終生成物をSDS-PAGEおよびクーマシー染色により純度について分析した。抗CDTb、抗TcdB、および抗TcdA抗体を使用して、三種混合毒素タンパク質をウエスタンブロットにより同定した。
【
図6】Sf9細胞からの三種混合毒素ワクチンBV1420の精製
図8に記載されるように三種混合毒素ワクチンBV1420を感染細胞から精製した。Source 30Qカラムからのフィルタ処理した最終生成物をSDS-PAGEおよびクーマシー染色により純度について分析した。抗TcdB抗体を使用して、三種混合毒素タンパク質をウエスタンブロットにより同定した。
【
図7】三種混合毒素BV1420の体積グラフによる粒径分布。Zeta Sizer Nanoを使用して動的光散乱により三種混合毒素BV1420の粒径を決定した。体積によるサイズ分布のグラフを示す。
【
図8】三種混合毒素BV1470の強度グラフによる粒径分布。Zeta Sizer Nanoを使用して動的光散乱により三種混合毒素BV1420の粒径を決定した。強度によるサイズ分布のグラフを示す。
【
図9A】陰性染色した三種混合毒素BV1420の電子顕微鏡写真。電子顕微鏡写真の精製された三種混合毒素BV1420を約10ug/mlに希釈し、酢酸ウラニルで陰性染色した。
【
図9B】陰性染色した三種混合毒素BV1420の電子顕微鏡写真。電子顕微鏡写真の精製された三種混合毒素BV1420を約10ug/mlに希釈し、酢酸ウラニルで陰性染色した。
【
図9C】陰性染色した三種混合毒素BV1420の電子顕微鏡写真。電子顕微鏡写真の精製された三種混合毒素BV1420を約10ug/mlに希釈し、酢酸ウラニルで陰性染色した。
【
図9D】陰性染色した三種混合毒素BV1420の電子顕微鏡写真。電子顕微鏡写真の精製された三種混合毒素BV1420を約10ug/mlに希釈し、酢酸ウラニルで陰性染色した。
【
図10】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究1。0日目および14日目に三種混合毒素ワクチンBV1420でマウスを免疫化し、35日目に致死用量のTcd AまたはCDTを接種し、接種後10日間監視した。示すようにマウスを出血させ、抗毒素IgGおよび毒素中和抗体について血清を分析した。毒素接種後10日間死亡率および罹患率について動物を監視した。
【
図11】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究1-血清抗毒素IgG応答。プレートに結合した天然毒素を使用して、ELISAにより抗Tcd A、抗Tcd B、および抗CDT IgGの力価について42日目に血清試料をアッセイした。
【
図12】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究1-毒素中和抗体(TNA)力価。毒素中和力価は比色Vero細胞に基づくアッセイを使用して決定した。示される力価は細胞を死滅させなかった血清の最高希釈の逆数である。
【
図13】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究1-動物の生存率。動物の生存率は接種10日後に決定された。20%を超える体重減少を示す動物は屠殺され、死亡と記録された。
【
図14】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究2-毒素Bの生存率。0日目および14日目に三種混合毒素ワクチンBV1420でマウスを免疫化し、35日目に致死用量のTcd Bを接種し、接種後10日間監視した。示すようにマウスを出血させ、抗毒素IgGおよび毒素中和抗体(TNA)について血清を分析した。毒素接種後10日間死亡率および罹患率について動物を監視した。
【
図15】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究2-抗毒素IgGレベル。プレートに結合した天然毒素を使用して、ELISAにより抗Tcd A、抗Tcd B、および抗CDT IgGの力価について42日目に血清試料をアッセイした。
【
図16】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究2-毒素B TNA力価。毒素中和力価は比色Vero細胞に基づくアッセイを使用して決定した。示される力価は細胞を死滅させなかった血清の最高希釈の逆数である。
【
図17】BV1420三種混合毒素ワクチンマウス致死毒素接種研究2-毒素Bの生存率。動物の生存率は接種10日後に決定された。20%を超える体重減少を示す動物は屠殺され、死亡と記録された。
【
図18】TcdB遺伝子転座ドメインを有する追加のワクチンタンパク質を示す。BV1512は下の図に示される。
【
図19】多量体タンパク質発現:多量体タンパク質BV1512の発現およびウエスタンブロット分析。
【
図20】四価の多量体タンパク質発現:
図25は、2つの四価の多量体タンパク質を図示する。両方の場合において、第2のTcdB菌株からのペプチドは、複数の菌株に対する免疫を広範化するために導入される。上の図では、菌株027からのTcdBペプチドがC末端に付加される。下の図では、ペプチドは、第1の菌株の菌株630からのTcdBタンパク質とTcdA(R19)タンパク質との間に導入される。
【
図21】四価の多量体タンパク質発現:
図20の上の図に示される四価のタンパク質の発現およびウエスタンブロット分析。
【
図22】四価の多量体タンパク質発現:
図20の下の図に示される四価のタンパク質の発現およびウエスタンブロット分析。
【
図23】difficile毒素ならびにキメラ三価(T)および四価(Q)の毒素融合タンパク質の設計。
図23Aは、キメラ三価および四価の毒素融合タンパク質を構築するために使用したC.difficile毒素A(TcdA)、毒素B(TcdB)、および二成分毒素(CDT)の機能性ドメインの図を示す。TcdAおよびTcdBは、酵素グルコシルトランスフェラーゼ(GT)ドメイン、自己触媒システインプロテアーゼ(CP)ドメイン、孔形成転座(PT)ドメイン(橙色)、および受容体結合ドメイン(RBD)を含む共通の機能性ドメインを共有する。二成分毒素(CDT)は、酵素ADPリボシルトランスフェラーゼ構成要素(CDTa)および受容体結合構成要素(CDTb)からなる。CDTbは、切断されると20kDaおよび75kDaの断片を作り出す2つのセリン型タンパク質分解切断部位(矢印)を有する42個のアミノ酸(aa)シグナル配列を含有する。
図24Bは、キメラ三価の毒素融合タンパク質(T毒素)およびキメラ四価の毒素融合タンパク質(Q毒素)の図を示す。T毒素融合タンパク質は、24の反復配列を含有するTcdB
(003)のRBDおよび19の反復配列を伴うTcdAの切り詰められたRBDを有するCDTbの完全長コード配列からなる。発現されたT毒素融合タンパク質は、205kDaの分子量(MW)の1813 aaからなる。Q毒素融合タンパク質は、24の反復配列を含有するTcdB
(003)のRBD、19の反復配列で切り詰められたTcdAのRBD、および24の反復配列を含有するTcdB
(027)のRBDに対するCDTbの完全長コード配列からなる。発現されたQ毒素融合タンパク質は、268kDaの分子量の2359 aaからなる。
【
図24A】T毒素およびQ毒素融合タンパク質の発現および精製。精製されたT毒素(レーン2および3)のSDS-PAGEは205kDaの分子量で移動し、Q毒素(レーン4および5)は268kDaの分子量で移動する。分子量マーカー(レーン1)。
図24Aは、T毒素およびQ毒素の純度が、SDS-PAGE走査デンシトメトリーにより決定されるとき、>90%であったことを示す。
図24Bは、ウサギ抗CDTb特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
図24Cは、ニワトリ抗TcdB特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
図24Dは、ニワトリ抗TcdA特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
【
図24B】T毒素およびQ毒素融合タンパク質の発現および精製。精製されたT毒素(レーン2および3)のSDS-PAGEは205kDaの分子量で移動し、Q毒素(レーン4および5)は268kDaの分子量で移動する。分子量マーカー(レーン1)。
図24Aは、T毒素およびQ毒素の純度が、SDS-PAGE走査デンシトメトリーにより決定されるとき、>90%であったことを示す。
図24Bは、ウサギ抗CDTb特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
図24Cは、ニワトリ抗TcdB特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
図24Dは、ニワトリ抗TcdA特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
【
図24C】T毒素およびQ毒素融合タンパク質の発現および精製。精製されたT毒素(レーン2および3)のSDS-PAGEは205kDaの分子量で移動し、Q毒素(レーン4および5)は268kDaの分子量で移動する。分子量マーカー(レーン1)。
図24Aは、T毒素およびQ毒素の純度が、SDS-PAGE走査デンシトメトリーにより決定されるとき、>90%であったことを示す。
図24Bは、ウサギ抗CDTb特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
図24Cは、ニワトリ抗TcdB特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
図24Dは、ニワトリ抗TcdA特異的抗体でプローブされたときのウエスタンブロット分析を示す。
【
図25A】マウスにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。0および14日目に、アルミニウム(50μg)でアジュバント化されたT毒素(100μg)もしくはQ毒素(100μg)、またはPBS(対照群)で、雌のC57BL/6マウスの群(N=10/群)をIM免疫化した。2回目のワクチン接種18日後に血清を収集した。
図25Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図25Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図25Cでは、マウスは、2回目の免疫化の21日後にIP投与された致死用量(MLD
100%=2.0μg)のTcdB
(003)を受けた。*有意性は、T毒素またはQ毒素群をPBS対照群と比較するマンテル-コックスログランク検定により決定された。
【
図25B】マウスにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。0および14日目に、アルミニウム(50μg)でアジュバント化されたT毒素(100μg)もしくはQ毒素(100μg)、またはPBS(対照群)で、雌のC57BL/6マウスの群(N=10/群)をIM免疫化した。2回目のワクチン接種18日後に血清を収集した。
図25Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図25Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図25Cでは、マウスは、2回目の免疫化の21日後にIP投与された致死用量(MLD
100%=2.0μg)のTcdB
(003)を受けた。*有意性は、T毒素またはQ毒素群をPBS対照群と比較するマンテル-コックスログランク検定により決定された。
【
図25C】マウスにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。0および14日目に、アルミニウム(50μg)でアジュバント化されたT毒素(100μg)もしくはQ毒素(100μg)、またはPBS(対照群)で、雌のC57BL/6マウスの群(N=10/群)をIM免疫化した。2回目のワクチン接種18日後に血清を収集した。
図25Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図25Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図25Cでは、マウスは、2回目の免疫化の21日後にIP投与された致死用量(MLD
100%=2.0μg)のTcdB
(003)を受けた。*有意性は、T毒素またはQ毒素群をPBS対照群と比較するマンテル-コックスログランク検定により決定された。
【
図26A】ハムスターにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。21日間隔で3回、120μgのアルミニウムでアジュバント化された30μgのQ毒素、またはPBS(対照群)で雄のハムスター(N=8/群)をIM免疫化した。3回目の投与の2週間後、試料を収集し分析した。
図26Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図26Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図26Cおよび26Dでは、3回目の免疫化の2週間後、胞子接種の1日前に全ての動物をクリンダマイシン(10mg/kg)でIP処置し、強制飼養により200cfuのC.difficile菌株630(C)または500cfuのC.difficile菌株B1/NAP1/027(D)を接種させた。接種後8日間、動物を観察した。
【
図26B】ハムスターにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。21日間隔で3回、120μgのアルミニウムでアジュバント化された30μgのQ毒素、またはPBS(対照群)で雄のハムスター(N=8/群)をIM免疫化した。3回目の投与の2週間後、試料を収集し分析した。
図26Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図26Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図26Cおよび26Dでは、3回目の免疫化の2週間後、胞子接種の1日前に全ての動物をクリンダマイシン(10mg/kg)でIP処置し、強制飼養により200cfuのC.difficile菌株630(C)または500cfuのC.difficile菌株B1/NAP1/027(D)を接種させた。接種後8日間、動物を観察した。
【
図26C】ハムスターにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。21日間隔で3回、120μgのアルミニウムでアジュバント化された30μgのQ毒素、またはPBS(対照群)で雄のハムスター(N=8/群)をIM免疫化した。3回目の投与の2週間後、試料を収集し分析した。
図26Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図26Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図26Cおよび26Dでは、3回目の免疫化の2週間後、胞子接種の1日前に全ての動物をクリンダマイシン(10mg/kg)でIP処置し、強制飼養により200cfuのC.difficile菌株630(C)または500cfuのC.difficile菌株B1/NAP1/027(D)を接種させた。接種後8日間、動物を観察した。
【
図26D】ハムスターにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性。21日間隔で3回、120μgのアルミニウムでアジュバント化された30μgのQ毒素、またはPBS(対照群)で雄のハムスター(N=8/群)をIM免疫化した。3回目の投与の2週間後、試料を収集し分析した。
図26Aは、ELISAにより決定されたTcdA、TcdB
(003)、およびCDTbに対する血清IgG力価を示す。
図26Bは、Vero細胞アッセイにおいて決定された各毒素の毒素中和抗体の力価を示す。
図26Cおよび26Dでは、3回目の免疫化の2週間後、胞子接種の1日前に全ての動物をクリンダマイシン(10mg/kg)でIP処置し、強制飼養により200cfuのC.difficile菌株630(C)または500cfuのC.difficile菌株B1/NAP1/027(D)を接種させた。接種後8日間、動物を観察した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本明細書で使用される、「アジュバント」という用語は、免疫原と組み合わせて使用されるとき、免疫原に対して誘導される免疫応答を増大するか、またはさもなければ変更もしくは修飾する化合物を指す。疫応答の修飾には、抗体および細胞の免疫応答のいずれかまたはその両方の強化またはその特異性の広範化が含まれ得る。
【0009】
本明細書で使用される、「免疫原」、「抗原」、および「エピトープ」という用語は、互換的に使用され、免疫応答を誘発することが可能なタンパク質およびペプチドなどの物質を指す。
【0010】
本明細書で使用される、「融合タンパク質」という用語は、1つのタンパク質のアミノ末端および別のタンパク質のカルボキシ末端で、連結ペプチドを介して直接もしくは間接的に接合または融合されて単一の連続したポリペプチドを形成する2つ以上のタンパク質もしくはタンパク質断片から構成されるタンパク質を意味する。いくつかの態様では、融合タンパク質は、「多価のタンパク質」とも称され得る。多価のタンパク質は、一緒に融合した2つ以上3つの別個のタンパク質抗原からのタンパク質またはタンパク質断片を含有する。
【0011】
本明細書で使用される、「治療する」、「治療」、および「治療すること」という用語は、有益なまたは所望の結果、例えば、臨床結果を得るためのアプローチを指す。本発明の目的のために、有益なまたは所望の結果は、感染症もしくは疾患の開始または進行を阻害もしくは抑制すること、感染症もしくは疾患の症状を寛解させる、またはその発達を低減すること、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。
【0012】
本明細書で使用される、「予防(Prevention)」は、「予防(prophylaxis)」と互換的に使用され、感染症もしくは疾患の完全な予防、またはその感染症もしくは疾患の症状の発達の予防、感染症もしくは疾患の開始、またはその症状の遅延、または後に発達する感染症もしくは疾患の重症度、またはその症状の減少を意味し得る。
【0013】
本明細書で使用される、「効果的な用量」または「効果的な量」とは、マラリアの少なくとも1つの症状を低減する免疫応答を誘導するのに十分な免疫原の量を指す。効果的な用量または効果的な量は、例えば、分泌および/または血清抗体を中和する量を測定することにより、例えば、プラーク中和、補体結合、酵素結合免疫吸着(ELISA)、またはマイクロ中和アッセイにより決定され得る。
【0014】
本明細書で使用される、「ワクチン」という用語は、病原体に由来する免疫原を含む調製物(例えば、本明細書に記載の融合タンパク質)を指し、防御免疫(例えば、病原体の感染から対象を保護する、および/または病原体の感染により生じる疾患もしくは状態の重症度を低減する免疫)を提供する、病原体に対する免疫応答を誘導するために使用される。防御免疫応答は、抗体および/または細胞媒介応答の形成を含み得る。文脈により、「ワクチン」という用語は、防御免疫をもたらすために脊椎動物に投与される免疫原の懸濁液または溶液も指し得る。
【0015】
本明細書で使用される、「対象」という用語は、ヒトおよび他の動物を含む。一実施形態では、対象はヒトである。
【0016】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、哺乳動物、そして特にヒトにおける使用のために、連邦もしくは州政府の規制機関により承認されているか、または米国薬局方、欧州薬局方、または他の一般的に認識される薬局方に列記されていることを意味する。これらの組成物は、脊椎動物における防御免疫応答を誘導するためのワクチンおよび/または抗原組成物として有用であり得る。
【0017】
本明細書で使用される、「約」という用語は、示される数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
概要
本開示は、昆虫細胞からの大きなタンパク質、特に複数の抗原を含有する多価のタンパク質の高発現を達成するための方法および組成物を提供する。本明細書に開示される高レベルのタンパク質の生成は、本分野の以前の経験を考慮して特に意外なことである。
【0018】
多価のタンパク質
本明細書に開示される多価の(多価のタンパク質は本明細書で多量体とも称され得る)タンパク質は、複数の病原体および/または同じ生物からの複数の病原性タンパク質からの作用から保護することができる。例えば、ある特定の病原体は、各々が対象に悪影響を及ぼす複数の分子を生成し得る。より効果的な応答は、複数の別個の抗原に対する応答を誘導することによりもたらされる。
【0019】
タンパク質である多価のタンパク質は、複数の細菌毒素からのタンパク質部分を含有する。いくつかの態様では、多価のタンパク質は、例えば毒素など、同じ生物からのタンパク質の部分を含むか、またはそれからなる。他の態様では、多価のタンパク質は、2つ以上の生物からのタンパク質を含むか、またはそれからなる。特定の態様では、多価のタンパク質の2つのタンパク質は同じ生物からのものではない。いくつかの態様では、異なる菌株からの同じタンパク質(すなわち、同種集合)を使用して、その部分を生成することができる。異なる菌株からの同じタンパク質を使用することにより、複数の菌株に対する保護を可能にし、毒性のある菌株が新しく生じる状況において特に有用である。他の例としては、A~Hの8つの血清型を有するC.botulinumが挙げられる。本明細書に開示される方法および組成物を使用して、8つ全ての血清型に対して単一のワクチンを提供することができる。他の特定の例としては、コレラ、ジフテリア、およびシゲラ、または破傷風、百日咳、およびジフテリアから保護するのための組み合わせ毒素ワクチンが挙げられる。したがって、いくつかの態様では、多量体タンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の異なるタンパク質からの部分を含有し得る。その部分を構成要素として使用して、多量体の免疫原性ポリペプチドを生成する。
【0020】
ワクチンを生成するために使用される例示的な多量体および構成要素は下の表に記載される。Q毒素およびBV1512をコードする核酸配列、ならびにBV1420およびBV1470の代替的な核酸配列は、標準的なコドン変換を使用して示されるアミノ酸をコードするそれらの適切な縮重コドンである。
【表1】
【0021】
さらなるワクチン構築物は、異なる配向で上記の様々な構成要素を使用し得る。加えて、これらの開示される配列の各々に少なくとも90%の同一性を有するタンパク質を構成要素として使用して、多量体タンパク質を生成することができる。
【0022】
リンカー
いくつかの態様では、リンカーは、多価のタンパク質において、1つ以上のタンパク質間で使用され得る。いくつかの態様では、リンカーは、ポリ-(Gly)nリンカーであり、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、17、18、19、または20である。他の態様では、リンカーは、GG、GGG、またはGGGG(配列番号26)である。また他の態様では、リンカーは、ジペプチド、トリペプチド、およびクアドリペプチドからなる群から選択される。好ましいジペプチドは、アラニン-セリン(AS)、ロイシン-グルタミン酸(LE)、セリン-アルギニン(SR)である。
【0023】
多価の抗原は、複数の毒素を対象に放出する生物からの保護に特に適している。例えば、細菌は、ヒトにおいて疾患を引き起こす毒素を生成することが知られている。したがって、本開示の主な焦点はC.difficileであり、本開示の多量体ポリペプチドは、他の種からのタンパク質毒素の部分を使用して調製され得る。
【0024】
毒素生成種としては、C.perfringes、C.botulinum、C.difficile、およびC.tetani)、Bacillus(例えば、B.anthracis)、Vibrio(例えば、Vibrio cholerae)、Shigella、およびCorynebacteriumが挙げられる。C.difficileは、2つの腸内毒素AおよびBを放出し、これは毒素産生性菌株により生成される。毒素Aは最小細胞傷害性活性を有する腸内毒であり、一方、毒素Bは強力な細胞毒であるが、限られた腸内毒活性を有する。第3の毒素である二成分毒素はCDTとしても知られ、同じく細菌により生成される。毒素AおよびBをコードする配列が既知である(Moncrief et al.,Infect.Immun.65:1105-1108(1997)、Barroso et al.,Nucl.Acids Res.18:4004(1990)、Dove et al.Infect.Immun.58:480-488(1990))。二成分毒素をコードする配列も既知である(受入番号ABS57477、AAB67305、AAF81761)。
【0025】
病原体感染から保護するための本開示の有用性は、C.difficileに対する三価のタンパク質ワクチンにより図示される。
図1は、2つの例示的な多量体タンパク質(BV1420およびBV1470)の構造を示す。各多量体は、C.difficileからの3つの毒素タンパク質である毒素A(TcdA)、毒素B(TcdB)、および二成分毒素(CDTb)の部分を含有する。三種混合毒素1420はフーリン切断部位も含有する。これらのタンパク質は、大きく、つまり1800アミノ酸超であり、昆虫細胞において発現される場合、使用可能な量のタンパク質をもたらすことが以前には予想されていなかったであろう。しかしながら、驚くべきことに、両タンパク質は高レベルで発現される。
図3を参照されたい。実際、
図5が示すように、BV1470の収量は269mg/Lであった。同様に、BV1420の収量は166mg/Lであった。
【0026】
精製された多量体タンパク質の分析により、それらは、BV1420についてはおよそ約16nm、そしてBV1470については約18nmのピーク直径を有するナノ粒子構造であることが確認された。特に、
図7および8に示す直径の分布は、精製後、高い割合の多量体タンパク質がナノ粒子構造を保持したことを図示する。
【0027】
BV1420の三価のナノ粒子のマウスへの投与は、3つ全てのタンパク質に対する免疫応答が得られたことを示す。さらに、
図13が図示するように、得られた免疫応答は、毒素Aおよび二成分毒素による致死接種から100%のマウスを保護し、同様に、毒素Bによる致死接種に応答して67%~83%のマウスを保護した。対照的に、PBS対照群のマウスは二成分毒素対照群の2匹のマウスを除いて全て死亡した。
【0028】
四価の毒素も多量体免疫原性ペプチドの好ましい種類である。
図20は、4つの部分または構成要素が順番に配置された2つの図示的な例を示す。多量体の実質的な長さにかかわらず、良好なタンパク質生成が得られた。
図22。
【0029】
図23は、第2のTcdB型からの毒素の部分を付加することによる、3毒素融合タンパク質の四価の毒素への変換を図示する。これら2つのタンパク質の比較は、昆虫細胞発現が高レベルの生成をもたらすことができることを示す。
図24A~Dを参照されたい。
【0030】
したがって、例示的な多量体は、様々な配向で構造化された部分を含む。例えば、N末端から出発して、第1の部分は、TcdA部分、TcdB部分、またはCDTb部分であり得る。第2の部分は、TcdA部分、TcdB部分、またはCDTb部分であり得る。第3の部分は、TcdA部分、TcdB部分、またはCDTb部分であり得る。第4の部分は、存在する場合、TcdA部分、TcdB部分、またはCDTb部分であり得る。したがって、各部分は各位置を占有し得る。常にではないが、典型的には、2つの隣接する部分は同じ種類の毒素からの部分ではない。好ましい実施形態では、N末端部分は、CDTb部分である。
【0031】
分子生物学的技法
本明細書に開示される多価のタンパク質は、分子生物学的アプローチを通して調製される。クローニング、変異、細胞培養などの本発明に適用できる分子生物学的技法を説明する一般書には、Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.(Berger)、Sambrook et al.,Molecular Cloning--A Laboratory Manual(3rd Ed.),Vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,2000(「Sambrook」)、およびCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols(Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.との合併企業)(「Ausubel」)が含まれる。これらの書は、変異誘発、ベクターの使用、プロモーター、ならびに例えば、PfCSPなどのクローニングおよび変異に関連する多くの他の関連のある論題を記載する。したがって、本発明は、本発明の融合タンパク質上またはその中に発現されるタンパク質の特徴を改善または変更するために、既知のタンパク質工学および組換えDNA技術の方法を使用することも包含する。様々な種類の変異誘発を使用して、タンパク質分子をコードする変異型核酸を生成および/もしくは単離する、かつ/または本発明の融合タンパク質中またはその上のタンパク質をさらに修飾/変異させることができる。それらには、限定されないが、部位特異的、ランダム点変異誘発、相同組換え(DNAシャッフリング)、ウラシル含有テンプレートを使用する変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発、ホスホロチオエート修飾されたDNA変異誘発、ギャップのある二本鎖DNAを使用する変異誘発が含まれる。さらなる好適な方法には、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主菌株を使用する変異誘発、制限-選択および制限-精製、欠失変異誘発、完全遺伝子合成による変異誘発、二本鎖切断修復などが含まれる。例えば、キメラ構築物を伴う変異誘発も本発明に含まれる。一実施形態では、変異誘発は、既知の天然に存在する分子または変更されたもしくは変異した天然に存在する分子の情報、例えば、配列、配列比較、物理特性、結晶構造などにより導かれてもよい。
【0032】
タンパク質のクローニング方法は当該技術分野において既知である。遺伝子は、DNAインサートとしてベクター内にクローニングすることができる。「ベクター」という用語は、核酸が生物、細胞、または細胞構成要素間で伝播および/または移動することができる手段を指す。ベクターには、自己複製する、または宿主細胞の染色体内に組み込むことができるプラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体などが含まれる。ベクターは、自己複製しないネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内のDNAおよびRNAの両方から構成されるポリヌクレオチド、ポリ-リジンコンジュゲートされたDNAまたはRNA、ペプチドコンジュゲートされたDNAまたはRNA、リポソームコンジュゲートされたDNAなどでもあり得る。全てではないが、多くの一般的な実施形態では、本発明のベクターは、プラスミドまたはバクミドである。
【0033】
したがって、本発明は、本発明の融合タンパク質の形成を誘導する細胞において発現され得る発現ベクター内にクローニングされる、キメラ分子を含むタンパク質をコードするヌクレオチドを含む。「発現ベクター」は、その中に組み込まれた核酸の発現ならびに複製を促進することが可能なベクター(プラスミドなど)である。典型的には、発現される核酸は、プロモーターおよび/またはエンハンサーに「作動可能に連結」され、プロモーターおよび/またはエンハンサーにより転写調節制御を受ける。一実施形態では、ヌクレオチドは、マラリア原虫タンパク質(上記に論じられる)をコードする。別の実施形態では、発現ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、特定の宿主のコドン発現を最適化するために(ヒトmRNAにおけるコドンをSf9細胞などの昆虫細胞が好むものに変更する)、サイレント置換、付加、または欠失をもたらす変更を含有する変異を含み得る。例えば、米国特許公開第2005/0118191号(全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0035】
加えて、ヌクレオチドを配列決定して、正しいコード領域がクローニングされ、あらゆる望ましくない変異を含有しないことを確実にする。ヌクレオチドは、任意の細胞における発現のために、発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)内にサブクローニングされ得る。上記は、タンパク質がどのようにクローニングされ得るかの単に1つの例である。当業者はさらなる方法が使用され得ることを理解する。
【0036】
宿主細胞
高レベルの発現が昆虫細胞の発現系において得られた。昆虫細胞の非限定的な例は、Spodoptera frugiperda(Sf)細胞、例えば、Sf9、Sf21、Trichoplusia ni細胞、例えば、High Five細胞およびDrosophila S2細胞である。
【0037】
ベクター、例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターは、当該技術分野において周知の方法に従い宿主細胞にトランスフェクトすることができる。例えば、核酸の真核生物細胞内への導入は、リン酸カルシウム共沈殿、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、およびポリアミントランスフェクション試薬を用いるトランスフェクションにより達成され得る。一実施形態では、ベクターは組換えバキュロウイルスである。
【0038】
ナノ粒子生成
ナノ粒子は、組換えタンパク質が発現される条件下で発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を成長させることによって生成され得る。一態様では、多価のタンパク質の生成方法は、タンパク質をコードするベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトすることと、ナノ粒子形成を可能にする条件下でタンパク質を発現させることとを含む。別の実施形態では、真核生物細胞は、酵母、昆虫、両生類、鳥類、または哺乳類の細胞からなる群から選択される。適切な成長条件の選択は、技術内であるか、または当業者の技術内である。
【0039】
宿主細胞を成長させる方法は、限定されないが、回分、流加、連続、および灌流細胞培養技法を含む。細胞培養は、細胞が精製および単離のためにタンパク質(例えば、組換えタンパク質)を伝播し発現するバイオリアクター(例えば、発酵チャンバ)内での細胞の成長および伝播を意味する。典型的には、細胞培養は、バイオリアクター内で、減菌の制御された温度および大気条件下で行われる。バイオリアクターは、温度、大気、攪拌、および/またはpHなどの環境条件が監視され得る、細胞を培養するために使用されるチャンバである。一実施形態では、バイオリアクターはステンレススチールのチャンバである。別の実施形態では、バイオリアクターは、予め減菌されたプラスチック袋(例えば、Cellbag(登録商標)、Wave Biotech,Bridgewater,N.J.)である。他の実施形態では、予め減菌されたプラスチック袋は、約50L~1000Lの袋である。
【0040】
ナノ粒子の洗剤抽出および精製
ナノ粒子は、洗剤を使用して宿主細胞から回収され得る。好適な洗剤には、非イオン性界面活性剤が含まれる。例えば、非イオン性界面活性剤は、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、ノノキシノール-9、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイル カルボニル])、Brij(登録商標)35、Brij(登録商標)56、Brij(登録商標)72、Brij(登録商標)76、Brij(登録商標)92V、Brij(登録商標)97、Brij(登録商標)58P、Cremophor(登録商標)EL、デカエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-デカノイル-N-メチルグルカミン、n-デシルアルファ-Dグルコピラノシド、デシルベータ-D-マルトピラノシド、n-ドデカノイル-N-メチルグルカミド、nドデシルアルファ-D-マルトシド、n-ドデシルベータ-D-マルトシド、n-ドデシルベータ-D-マルトシド、ヘプタエチレングリコールモノデシルエーテル、ヘプタエチレングリコール、モノドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、n-ヘキサデシルベータ-D-マルトシド、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、Igepal CA-630、Igepal CA-630、メチル-6-0-(N-ヘプチルカルバモイル)-アルファ-D-グルコピラノシド、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-ノナノイル-N-メチルグルカミン、N-ノナノイルN-メチルグルカミン、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、オクチル-ベータ-Dグルコピラノシド、ペンタエチレングリコールモノデシルエーテル、ペンタエチレングリコール、モノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールエーテルW-1、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン100ステアレート、ポリオキシエチレン20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン40ステアレート、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシエチレン8ステアレート、ポリオキシエチレンビス(イミダゾリルカルボニル)、ポリオキシエチレン25ステアリン酸プロピレングリコール、キラヤ樹皮からのサポニン、Span(登録商標)20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)65、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、Tergitol Type 15-S-12、Tergitol Type 15-S-30、Tergitol Type 15-S-5、Tergitol Type 15-S-7、Tergitol Type 15-S-9、Tergitol Type NP-10、Tergitol Type NP-4、Tergitol Type NP-40、Tergitol、Type NP-7 Tergitol Type NP-9、Tergitol Type TMN-10、Tergitol Type TMN-6、テトラデシル-ベータ-D-マルトシド、テトラエチレングリコールモノデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、トリエチレングリコールモノデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、Triton CF-21、Triton CF-32、Triton DF-12、Triton DF-16、Triton GR-5M、Triton QS-15、Triton QS-44、Triton X-100、Triton X-102、Triton X-15、Triton X-151、Triton X-200、Triton X-207、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Triton(登録商標)X-165、Triton(登録商標)X-305、Triton(登録商標)X-405、Triton(登録商標)X-45、Triton(登録商標)X-705-70、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)21、TWEEN(登録商標)40、TWEEN(登録商標)60、TWEEN(登録商標)61、TWEEN(登録商標)65、TWEEN(登録商標)80、TWEEN(登録商標)81、TWEEN(登録商標)85、チロキサポール、n-ウンデシルベータ-D-グルコピラノシド、それらの半合成誘導体、またはそれらの組み合わせであり得る。Tergitol NP-9が好ましい洗剤である。
【0041】
宿主細胞を48~72時間成長させたら、細胞を培地から単離し、洗剤含有溶液を添加して細胞膜を可溶化し、洗剤抽出物にナノ粒子を放出させる。洗剤は約0.1%~約1.0%の最終濃度に添加され得る。例えば、濃度は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.5%、約0.7%、約0.8%、または約1.0%であり得る。ある特定の態様では、範囲は約0.1%~約0.3%であり得る。好ましくは、濃度は約0.2%である。
【0042】
ナノ粒子は、その後、遠心分離など、その完全性を保存する方法を使用して単離され得る。いくつかの態様では、塩化物、ショ糖、イオジキサノールの使用など、勾配遠心分離を使用することができる。他の技法、例えば、イオン交換およびゲルろ過クロマトグラフィーを含む標準的な精製技法が代替的にまたは追加で使用され得る。
【0043】
一態様では、洗剤抽出物は順次複数のカラムに添加される。例えば、第1のカラムはTMAEなどのイオンクロマトグラフィーカラムであってよく、第2のカラムはフェニルHPなどの疎水性相互作用カラムであってよく、第3のカラムはSource 30Qカラムなどの強アニオン交換カラムであってよい。純度の増加は3工程手順を繰り返すことによって得ることができる。
【0044】
以下は単離および精製タンパク質を作製するための一般的な手順を提供する。当業者は、利用することができる変形があることを理解するであろう。
【0045】
生成は、Sf9細胞(非感染)をシェーカーフラスコに播種し、細胞を拡張させ、細胞が成長し倍加するにつれて規模を拡大する(例えば、125-mlのフラスコから50LのWave袋に)ことによって開始される。細胞を成長させるために使用される培地は、適切な細胞系(好ましくは無血清培地、例えば、昆虫培地ExCell-420,JRH)のために配合される。次いで、細胞を最も効率的な感染多重度(例えば、細胞当たり約1~約3のプラーク形成単位)で組換えバキュロウイルスに感染させる。感染が生じたら、融合タンパク質(および任意選択で、他の免疫原)をウイルスゲノムから発現させる。通常、感染は、細胞が成長の中対数期(4~8×106細胞/ml)にあるとき最も効率的であり、少なくとも約90%生存可能である。
【0046】
本開示のタンパク質は、感染のおよそ48~96時間後に回収することができる。いくつかの態様では、回収は、約48時間、約72時間、または約48~約72時間で行われる。典型的には、回収は、細胞培養培地のVLPのレベルが最大に近いが広範な細胞溶解前であるときに行われる。回収時のSf9細胞密度および生存率は、約0.5×106細胞/ml~約1.5×106細胞/mlであり得、色素排除アッセイにより示されるとき、少なくとも20%の生存率を有する。
【0047】
粒子を可溶化するために、0.2%NP9/25mMのTris/50mMのNaCl/pH8.0の最終濃度までTergitol NP9を細胞培養物に直接添加する。室温で1時間インキュベートし、その後可溶化液を2回9000gで30分間遠心分離する。ナノ粒子を含有する上清を収集する。次いで、上清を緩衝液Aに添加し、緩衝液B(緩衝液A:25mMのTris pH8.0/50mMのNaCl緩衝液B:25mMのTris pH8.0/1MのNaCl)に溶出する。溶出液をフェニルHPカラム(緩衝液A:350mMのクエン酸Na/25mMのTris pH7.5、および緩衝液B: 5mMのTris pH8.0)、次いでSource 30Qカラム(緩衝液A: 25mMのTris pH8.0/250mMのNaCl緩衝液B:25mMのTris pH8.0/1MのNaCl)に適用する。生成物を含有するプールした画分を2ミクロンのフィルタに通す。
図8~10を参照されたい。
【0048】
上述の手順は、150mg/L~約300mg/Lの収量で少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約98%の純度を可能にする。純度は総タンパク質を示すゲルに基づくアプローチにより測定され得る。
【0049】
所望する場合、無傷のバキュロウイルスが不活性化され得る。不活性化は、化学方法、例えば、ホルマリンまたはβ-プロピオラクトン(BPL)により達成され得る。無傷のバキュロウイルスの除去および/または不活性化は、上記に例示するように、当該技術分野で既知の選択的沈殿およびクロマトグラフ方法を使用しても大規模に達成され得る。不活性化の方法は、VLPを含有する試料を、0.2% BPL中で3時間、約25℃~約27℃でインキュベートすることを含む。バキュロウイルスは、VLPを含有する試料を、4℃で、0.05% BPL中で3日間、次いで37℃で1時間インキュベートすることによっても不活性化することができる。
【0050】
上記の技法は、様々な規模にわたって実践することができる。例えば、Tフラスコ、振盪フラスコ、スピナーボトル、最大工業規模のバイオリアクター。バイオリアクターは、ステンレススチールのタンクまたは予め減菌されたプラスチック袋(例えば、Wave Biotech,Bridgewater,N.J.により販売されるシステム)のいずれかを含み得る。当業者は、特定の状況に何が最も望ましいかを知っているであろう。
【0051】
タンパク質のサイズおよび収量
本明細書に開示される方法を使用した多量体タンパク質の収量は際立っている。いくつかの例では、収量は約150mg/L~約300mg/Lである。いくつかの実施形態では、収量は、約40mg/L、約60mg/L、約80mg/L、約100mg/L、約150mg/L、約200mg/L、約250mg/L、または約300mg/Lである。特定の態様では、収量は、約40mg/L~約300mg/L、約80mg/L~約250mg/L、または約100mg/mL~約300mg/Lの範囲である。
【0052】
本明細書に開示される大きい多量体タンパク質は、典型的には、約1500~2500個のアミノ酸の範囲である。いくつかの態様では、それらは、約1500~約2000個のアミノ酸の範囲である。他の態様では、それらは、約1800~約2000個のアミノ酸の範囲である。
【0053】
多量体タンパク質は、約11nm~約35nmの典型的な直径を有するナノ粒子を形成する。直径の範囲は、約15nm~約25nmであり得る。これらの範囲の多量体タンパク質ナノ粒子の図示的な例は
図9に示される。
【0054】
重要なことには、タンパク質が大きくても、それらは可溶性のままである。例えば、精製された多量体タンパク質は、約80%可溶性性、約85%可溶性、約90%可溶性、約95%可溶性、約97%可溶性、または約99%可溶性であり得る。いくつかの態様では、溶解度は、約90%~約99%または約90%~約95%である。
【0055】
修飾された抗原およびポリペプチド
本明細書に開示される抗原は、それらの抗原の変形および変異体を包含する。ある特定の態様では、抗原は開示される抗原に対して同一性を共有し得る。一般に、また具体的に特定された抗原の文脈において具体的に定義されない限り、同一性パーセンテージは、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも98%であり得る。同一性パーセンテージは、デフォルトパラメータを使用して、www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustaloにおいて利用可能なアライメントプログラムClustal Omegaを使用して計算することができる。
【0056】
特定の態様では、ナノ粒子に含有されるタンパク質は、そのタンパク質からなる。他の態様では、ナノ粒子に含有されるタンパク質は、そのタンパク質を含む。タンパク質自体への拡張は様々な目的のためであり得る。
【0057】
いくつかの態様では、抗原は、N末端、C末端、またはその両方で拡張され得る。いくつかの態様では、拡張部は、精製または検出などの機能に有用なタグである。いくつかの態様では、タグはエピトープを含有する。例えば、タグは、ポリグルタメートタグ、FLAGタグ、HAタグ、ポリHisタグ(約5~10のヒスチジンを有する)、Mycタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグ、緑色蛍光タンパク質タグ、マルトース結合タンパク質タグ、チオレドキシンタグ、またはFcタグであり得る。他の態様では、拡張部は、タンパク質に融合して発現を強化するN末端シグナルペプチドであり得る。そのようなシグナルペプチドは細胞における発現中に切断されることが多いが、一部のナノ粒子は無傷のシグナルペプチドを有する抗原を含有し得る。したがって、ナノ粒子が抗原を含む場合、抗原は拡張部を含有し得、したがって、ナノ粒子に組み込まれるとき、融合タンパク質であり得る。配列に対する同一性を計算する目的のため、拡張部は含まれない。いくつかの態様では、抗原は切り詰められてもよい。例えば、N末端は、約10個のアミノ酸、約30個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約75個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、または約200個のアミノ酸だけ切り詰められ得る。例えば、C末端は、約10個のアミノ酸、約30個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約75個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、または約200個のアミノ酸だけ切り詰められ得る。
【0058】
医薬組成物
本明細書に開示される医薬組成物は、多量体タンパク質および薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体は、過度の毒性、刺激、またはアレルギー反応なく対象に投与することができる任意の医薬品を含む。薬学的に許容される担体は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤も含み得る。薬学的に許容される賦形剤は、一般的に安全で非毒性の医薬組成物を調製する際に有用である任意の賦形剤であり、獣医学ならびにヒトの製薬学的用途に許容される。
【0059】
本明細書で有用な医薬組成物は、それ自体が組成物を受ける脊椎動物に対して有害な免疫応答の生成を誘導しない任意の医薬品を含み、過度の毒性および免疫原なく投与され得る(例えば、多量体融合タンパク質)、任意の好適な希釈剤または賦形剤を含む薬学的に許容される担体を含有する。
【0060】
いくつかの態様では、製剤は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含み得る。薬学的に許容される担体には、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、減菌等張水性緩衝液、およびそれらの組み合わせを含む。薬学的に許容される担体、希釈剤、および他の賦形剤の完全な詳解は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.N.J.最新版)に述べられている。製剤は、投与モードに適するように適応される。例示的な実施形態では、製剤は、ヒトへの投与に適しており、減菌であり、微粒子ではなく、かつ/または発熱性ではない。
【0061】
本組成物は、湿潤剤、または乳化剤、またはpH緩衝剤、またはそれらの混合物も含有し得る。本組成物は、再構築(例えば、水または生理食塩水で)に適した凍結乾燥粉末などの固体形態、液体溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤、または粉末であり得る。経口用製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体が含まれ得る。
【0062】
アジュバント
特定の組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる免疫応答の非特異的刺激物質の使用により強化され得る。アジュバントは、抗原に対する免疫の一般的増加を促進するために実験的に使用されている(例えば、米国特許第4,877,611号)。免疫化プロトコルは、長年、応答を刺激するためにアジュバントを使用しており、そのためアジュバントは当業者に周知である。一部のアジュバントは、抗原が提示される方法に影響を及ぼす。例えば、免疫応答は、タンパク質抗原がアルミニウムによって引き起こされるときに増加する。抗原の乳化も抗原提示の持続時間を延長する。任意のアジュバントの包含は、Vogel et al.,「A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients(2nd Edition)」に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれ、本開示の範囲内に想定される。
【0063】
例示的なアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死滅させたMycobacterium tuberculosisを含有する免疫応答の非特異的刺激物質)、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。他のアジュバントには、GMCSP、BCG、MDP化合物(thur-MDPおよびnor-MDPなど)、CGP(MTP-PE)、脂質A、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、MF-59、RIBI(細菌から抽出された3つの構成要素を含有する)、MPL、トレハロースジマイコレート(TDM)、ならびに2%スクアレン/Tween(登録商標)80エマルジョン中の細胞壁骨格(CWS)が含まれる。他の好ましい態様では、2% Alhydrogel(Al(OH)3)などのアルミニウムが使用される。いくつかの態様では、アジュバントは、小重膜(paucilamellar)脂質小胞、例えば、Novasomes(登録商標)であり得る。Novasomes(登録商標)は、約100nm~約500nmの範囲の小重膜非リン脂質小胞である。それらは、Brij 72、コレステロール、オレイン酸、およびスクアレンを含む。Novasomesは、効果的なアジュバントであることが示されている(米国特許第5,629,021号、同第6,387,373号、および同第4,911,928号を参照されたい。
【0064】
サポニンアジュバント
サポニンを含有するアジュバントはまた、本明細書に開示される免疫原と組み合わせることもできる。サポニンは、Quillaja saponaria Molinaの木の樹皮から得られるグリコシドである。典型的には、サポニンは、複数の画分をもたらす多工程精製プロセスを使用して調製される。本明細書で使用される、「Quillaja saponaria Molinaからのサポニン画分」という用語は、一般的にQuillaja saponariaの半精製されたもしくは定義されたサポニン画分、またはその実質的に純粋な画分を説明するために使用される。
【0065】
サポニン画分
いくつかのアプローチがサポニン画分の生成に適している。画分A、B、およびCは、米国特許第6,352,697号に記載されており、以下のように調製され得る。粗製の水性Quillaja saponaria Molina抽出物のQuil Aからの親油性画分をクロマトグラフィーによって分離し、水中70%のアセトニトリルで溶出して親油性画分を回収した。次いで、この親油性画分を、酸性水中25%~60%のアセトニトリルの勾配を使用する溶出で、半分取HPLCにより分離した。 「画分A」または「QH-A」として本明細書で言及される画分は、およそ39%のアセトニトリルで溶出される画分であるか、またはそれに対応する。「画分B」または「QH-B」として本明細書で言及される画分は、およそ47%のアセトニトリルで溶出される画分であるか、またはそれに対応する。「画分C」または「QH-C」として本明細書で言及される画分は、およそ49%のアセトニトリルで溶出される画分であるか、またはそれに対応する。画分の精製に関する追加の情報は、米国特許第5,057,540号に見出すことができる。本明細書に記載されるように調製される場合、Quillaja saponaria Molinaの画分A、B、およびCは各々、限定可能な特性を有する化学的に密接に関係している分子の族またはファミリーを表す。それらが得られるクロマトグラフィー条件は、溶出プロファイルの観点から、回分間の再現性および生物学的活性が非常に一貫しているような条件である。
【0066】
他のサポニン画分が記載されている。画分B3、B4、およびB4bがEP0436620に記載されている。画分QA1~QA22がEP03632279(B2)、Q-VAC(Nor-Feed,AS Denmark)、Quillaja saponaria Molina Spikoside(lsconova AB,Ultunaallen 2B,756 51 Uppsala,Sweden)に記載されている。EP03632279(B2)の画分QA-1、QA-2、QA-3、QA-4、QA-5、QA-6、QA-7、QA-8、QA-9、QA-10、QA-11、QA-12、QA-13、QA-14、QA-15、QA-16、QA-17、QA-18、QA-19、QA-20、QA-21、およびQA-22、特にQA-7、QA-17、QA-18、およびQA-21が使用され得る。それらは、EP03632279(B2)、特にページ6、ならびにページ8および9の実施例1に記載されているように得られる。
【0067】
本明細書で記載され、アジュバントの形成に使用されるサポニン画分は実質的に純粋な画分であることが多い、つまり、画分は実質的に他の材料からの汚染がない。特定の態様では、実質的に純粋なサポニン画分は、他のサポニンまたは他のアジュバント材料など、最大40重量%、最大30重量%、最大25重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%、最大7重量%、最大5重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、または最大0.1重量%の他の化合物を含有し得る。
【0068】
ISCOM構造
サポニン画分は、ISCOMと称されるケージのような粒子の形態で投与され得る(Immune StimulatingCOMplex)。ISCOMは、EP0109942(B1)、EP0242380(B1)、およびEP0180546(B1)に記載されているように調製され得る。特定の実施形態では、EP9600647-3(PCT/SE97/00289)に記載されるように、輸送および/または随伴抗原が使用され得る。
【0069】
マトリックスアジュバント
いくつかの態様では、ISCOMは、ISCOMマトリックス複合体である。ISCOMマトリックス複合体は、少なくとも1つのサポニン画分と、脂質とを含む。脂質は、コレステロールなど、少なくともステロールである。特定の態様では、ISCOMマトリックス複合体はリン脂質も含む。ISCOMマトリックス複合体は、1つ以上の他の免疫調節(アジュバント活性)物質も含有し得るが、必ずしもグリコシドでなくてもよく、EP0436620(B1)に記載されるように生成され得る。
【0070】
他の態様では、ISCOMはISCOM複合体である。ISCOM複合体は、少なくとも1つのサポニン、少なくとも1つの脂質、および少なくとも1種類の抗原またはエピトープを含有する。ISCOM複合体は、抗原の部分が粒子内に組み込まれるように、洗剤処理によって会合した抗原を含有する。対照的に、ISCOMマトリックスは、抗原との混和物として製剤化され、ISCOMマトリックス粒子と抗原との間の会合は、静電および/または疎水性相互作用によって媒介される。
【0071】
一実施形態によると、ISCOMマトリックス複合体もしくはISCOM複合体、あるいはISCOMもしくはISCOMマトリックス複合体にも組み込まれるか、またはそれと混合される少なくとも1つの追加のアジュバントに組み込まれるサポニン画分は、Quillaja saponariaの画分A、画分B、もしくは画分C、Quillaja saponariaの半精製された調製物、Quillaja saponariaの精製された調製物、または任意の精製された細画分、例えば、QA1~21から選択される。
【0072】
特定の態様では、各ISCOM粒子は、少なくとも2つのサポニン画分を含有し得る。異なるサポニン画分の重量%の任意の組み合わせを使用することができる。任意の2つ画分の重量%の任意の組み合わせを使用することができる。例えば、粒子は、それぞれ、任意の重量%の画分Aと、粗製サポニン画分もしくは画分Cなどの、任意の重量%の別のサポニン画分とを含有し得る。したがって、特定の態様では、各ISCOMマトリックス粒子または各ISCOM複合体粒子は、0.1~99.9重量、5~95重量%、10~90重量%、15~85重量%、20~80重量%、25~75重量%、30~70重量%、35~65重量%、40~60重量%、45~55重量%、40~60重量%、または50重量%の1つのサポニン画分、例えば、画分Aと、各々の場合において残余が最大100%の別のサポニン、例えば、任意の粗製画分、または任意の他の画分、例えば、画分Cとを含有し得る。重量は、サポニン画分の総重量として計算される。ISCOMマトリックス複合体およびISCOM複合体アジュバントの例は、米国公開出願第2013/0129770号に開示されている。
【0073】
特定の実施形態では、ISCOMマトリックスまたはISCOM複合体は、5~99重量%の1つの画分、例えば、画分Aと、残余が最大100重量%の別の画分、例えば、粗製サポニン画分または画分Cとを含む。重量は、サポニン画分の総重量として計算される。
【0074】
別の実施形態では、ISCOMマトリックスまたはISCOM複合体は、40%~99重量%の1つの画分、例えば、画分Aと、1重量%~60重量%の別の画分、例えば、粗製サポニン画分または画分Cとを含む。重量は、サポニン画分の総重量として計算される。
【0075】
また別の実施形態では、ISCOMマトリックスまたはISCOM複合体は、70%~95重量%の1つの画分、例えば、画分Aと、30重量%~5重量%の別の画分、例えば、粗製サポニン画分または画分Cとを含む。重量は、サポニン画分の総重量として計算される。他の実施形態では、Quillaja saponaria Molinaからのサポニン画分は、QA1~21のうちのいずれか1つから選択される。
【0076】
サポニン画分の混合物を含有する粒子に加えて、ISCOMマトリックス粒子およびISCOM複合体粒子は各々、1つのサポニン画分のみを使用して形成され得る。本明細書に開示される組成物は、各粒子が1つのサポニン画分のみを含有する複数の粒子を含有し得る。つまり、ある特定の組成物は、各個々の粒子がQuillaja saponaria Molinaからの1つのサポニン画分を含有する、1つ以上の異なる種類のISCOMマトリックス複合体粒子および/または1つ以上の異なる種類のISCOM複合体粒子を含有し得、1つの複合体中のサポニン画分は、他の複合体粒子中のサポニン画分とは異なる。
【0077】
特定の態様では、1種類のサポニン画分または粗製サポニン画分が1つのISCOMマトリックス複合体または粒子に組み込まれ得、別の種類の実質的に純粋なサポニン画分もしくは粗製サポニン画分が別のISCOMマトリックス複合体または粒子に組み込まれ得る。組成物またはワクチンは、各種類が物理的に異なる粒子に組み込まれた1種類のサポニンを有する、少なくとも2種類の複合体または粒子を含み得る。
【0078】
本組成物において、1つのサポニン画分Quillaja saponaria Molinaおよび別のサポニン画分Quillaja saponaria Molinaが異なるISCOMマトリックス複合体粒子および/またはISCOM複合体粒子に別個に組み込まれるISCOMマトリックス複合体粒子および/またはISCOM複合体粒子の混合物が使用され得る。
【0079】
各々が1つのサポニン画分を有するISCOMマトリックスまたはISCOM複合体粒子が、任意の組み合わせの重量%で組成物中に存在し得る。特定の態様では、組成物は、残りの部分が異なるサポニン画分を含有するISCOMマトリックスまたは複合体で構成された第1のサポニン画分を含有する、0.1重量%~99.9重量%、5重量%~95重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~55重量%、40~60重量%、または50重量%のISCOMマトリックスまたは複合体を含有し得る。いくつかの態様では、残りの部分は、各マトリックスまたは複合体粒子が1つのサポニン画分のみを含有する、1つ以上のISCOMマトリックスまたは複合体である。他の態様では、ISCOMマトリックスまたは複合体粒子は、2つ以上のサポニン画分を含有し得る。
【0080】
好ましい組成物では、第1のISCOMマトリックス中のサポニン画分は画分A(「画分Aマトリックス」)であり、第2のISCOMマトリックスまたはISCOM複合体粒子中のサポニン画分は画分C(「画分Cマトリックス」)である。したがって、好ましい組成物は、アジュバントとして、画分Aマトリックスアジュバントと、画分Cマトリックスアジュバントとを含む。組成物中の各マトリックスの量は異なり得る。例えば、画分Aマトリックスの量は、約80%(w/w)、約85%(w/w)、約90%(w/w)、約92%(w/w)、または約95%(w/w)であり、残余が画分Cマトリックスであり得る。好適な85:15画分Aマトリックおよび画分Cマトリックスの組み合わせの好適な例は、約85対約15の比率の画分Aマトリックスと画分Cマトリックスとの混合物であるMatrix-M(商標)(Novavax AB,Uppsala,Sweden)である。
【0081】
QS-7およびQS-21画分などの他のサポニン画分、それらの生成、およびそれらの使用は、米国特許第5,057,540号、同第6,231,859号、同第6,352,697号、同第6,524,584号、同第6,846,489号、同第7,776,343号、および同第8,173,141号に記載されている。これらの画分は、本明細書に開示される方法および組成物において使用され得る。
【0082】
免疫刺激物質
本開示の組成物はまた、「免疫刺激物質」とともに製剤化されてもよい。それらは、免疫系の応答を増加させるための身体自体の化学メッセンジャー(サイトカイン)である。免疫刺激物質には、限定されないが、免疫刺激性、免疫増強、および炎症促進活性を伴う様々なサイトカイン、リンホカイン、およびケモカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)-コロニー刺激因子(CM);ならびに他の免疫刺激性分子、例えば、マクロファージ炎症因子Flt3リガンド、B7.1;B7.2などが含まれる。免疫刺激性分子は、本開示の組成物と同じ製剤において投与され得るか、または別個に投与され得る。タンパク質またはタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかが、免疫刺激作用をもたらすように投与され得る。したがって、一実施形態では、本開示は、アジュバントおよび/または免疫刺激物質を含む抗原性およびワクチン製剤を含む。
【0083】
免疫応答の誘導方法
病原体に対する免疫応答を誘発する方法も本開示において提供される。本方法は、多量体タンパク質を含む、免疫学的に効果的な量の組成物を対象に投与することを伴う。免疫学的に効果的な量の本開示の組成物の投与は、融合タンパク質上に存在するエピトープに特異的な免疫応答を誘発する。そのような免疫応答は、B細胞応答および/またはT細胞応答を含み得る。対象に投与されるとき、多量体タンパク質は、好ましくは中和抗体を誘導する。好ましくは、免疫応答は、多量体タンパク質に含有される各タンパク質に存在する少なくとも1つの立体構造エピトープに特異的な要素を含む。
【0084】
投与
投与は、任意の好適な経路によるものであり得る。好適な経路は、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、静脈内、および皮下)、硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内および経口もしくは肺経路、または坐剤による)、経皮的、または皮内を含む。投与は、注入もしくはボーラス注射による、上皮もしくは粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、結腸、結膜、上咽頭、中咽頭、膣、尿道、膀胱、および腸粘膜など)によるものであってよく、他の生物学的活性剤と一緒に投与され得る。いくつかの態様では、鼻腔内または他の粘膜投与経路は、他の投与経路よりも実質的に高い抗体または他の免疫応答をもたらし得る。投与は、全身性または局所であり得る。
【0085】
いくつかの態様では、投与は、針およびシリンジを使用する注射による、無針注射デバイスによるものであり得る。他の態様では、投与は、液滴による、大きな粒子エアロゾル(約10ミクロンより大きい)、または上気道内への噴霧によるものである。
【0086】
いくつかの態様では、製剤の構成要素のうちの1つ以上で充填された1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットが提供される。特定の態様では、キットは、多量体タンパク質を含有する第1の容器、およびアジュバントを含有する第2の容器の2つの容器を含み得る。製造、薬剤もしくは生物学的製品の使用もしくは販売を規制する政府機関により規定される形態の通知がそのような容器(複数可)に付随してもよく、その通知は、ヒト投与のための製造、使用、または販売機関による承認を反映する。製剤はまた、組成物の量を示すアンプルまたはサシェなどの気密密封された容器にパッケージされ得る。
【0087】
いくつかの態様では、投与は標的化され得る。例えば、本組成物は、免疫化部位で免疫応答を誘発するために、粘膜組織を標的とするような方法で投与され得る。腸管関連リンパ組織(GALT)などの粘膜組織も、特定の粘膜標的化特性を有するアジュバントを含有する組成物の経口投与の使用により免疫化を標的とすることができる。鼻咽頭リンパ組織(NALT)および気管支関連リンパ組織(BALT)などのさらなる粘膜組織も標的とすることができる。
【0088】
いくつかの態様では、各々異なる抗原の集まりを有する複数の組成物が投与され得る。2つ以上の多量体タンパク質が投与される場合、タンパク質は、例えば、多量体タンパク質を含有する1つ以上の容器からの材料の注射により、対象の同じ位置に同時に共投与することができる。他の態様では、それらは、短期間内で異なる部位に順次共投与され得、例えば、1つの投与は大腿であってよく、第2の投与は腕であってよく、両投与は短期間内に生じる(例えば、最大30分)。
【0089】
ヒトの好ましい効果的な用量を決定するために、ヒト臨床研究が当業者によって行われ得る。そのような臨床研究は、日常的であり、当該技術分野で周知である。用いられる正確な用量はまた、投与経路にもよる。効果的な用量は、インビトロまたはインビボ試験系から導かれる用量応答曲線から推定することができる。用量は、例えば、健康状態、体重、性別、食事、投与時間、および他の臨床要因に基づいて調整され得る。
【0090】
単一の用量で免疫を刺激するが、所望の効果を達成するために、追加の投与量が同じまたは異なる経路で投与され得る。例えば、新生児および乳児においては、十分なレベルの免疫を誘発するために、複数投与が必要とされ得る。投与は、感染に対する十分なレベルの保護を維持する上で必要であるため、投与は小児期を通して周期的に継続され得る。同様に、例えば、医療従事者、保育士、幼児の家族、高齢者、易感染心肺機能を有する個人など、反復性または重度の感染症に特にかかりやすい成人は、防御免疫応答を確立および/または維持するために、複数の免疫化を必要とし得る。誘導された免疫のレベルは、例えば、分泌および血清抗体の量を測定することにより監視され、投与量が調整されるか、必要に応じてワクチン接種を繰り返して所望の防御レベルを誘発および維持することができる。
【0091】
ワクチン組成物は、受動的投与療法に有用な毒素に対して抗体を調製するためにも使用され得る。Casadevall.“Passive Antibody Administration(Immediate Immunity)as a Specific Defense Against Biological Weapons,”Emerging Infectious Diseases.2002;8(8):833-841を参照されたい。
【実施例0092】
実施例1
C.difficile三種混合毒素ワクチン構築物
2つの三種混合毒素ワクチンを構築した。タンパク質構築物の図を
図1に示す。三種混合毒素1420(BV1420とも称される)は、N末端からC末端に、活性化ドメインペプチド、成熟CDTbペプチド、TcdB RBDペプチド、および19の反復配列(R19)を含有するTcdA RBDペプチドを含有する。フーリン切断部位(RARRRKKR;配列番号27)は活性化ドメインと成熟CDTbペプチドとの間に位置した。
図2および3は、それぞれ、BV1470のタンパク質および遺伝子配列を示す。リンカーはTcdBペプチドのいずれかの端部に位置する。
【0093】
実施例2
三種混合毒素ワクチンの発現
Sf9細胞を、単一の転写物として三種混合ワクチンを発現するバキュロウイルスベクターで形質転換した。Sf9細胞からの発現データを
図2に示す。
図2は、48時間および72時間で回収した各タンパク質の発現を示す。注目すべきことに、各タンパク質は200kDaを超えるが、高レベルの生成が達成される。
図7は、48時間~96時間の発現の時間経過を示す。データは、両タンパク質について、タンパク質が非常に可溶性であることを示す。
【0094】
実施例3
三種混合毒素ワクチンの精製
粒子を可溶化し精製するために、0.2% NP9/25mMのTris/50mMのNaCl/pH8.0の最終濃度までTergitol(NP9)を細胞培養物に直接添加する。室温で1時間インキュベートし、その後可溶化液を2回9000gで30分間遠心分離する。ナノ粒子を含有する上清を収集する。次いで、上清を緩衝液Aに添加し、緩衝液B(緩衝液A:25mMのTris pH8.0/50mMのNaCl緩衝液B:25mMのTris pH8.0/1MのNaCl)に溶出する。溶出液をフェニルHPカラム(緩衝液A:350mMのクエン酸Na/25mMのTris pH7.5、および緩衝液B:5mMのTris pH8.0)、次いでSource 30Qカラム(緩衝液A:25mMのTris pH8.0/250mMのNaCl緩衝液B:25mMのTris pH8.0/1MのNaCl)に適用する。生成物を含有するプールした画分を2ミクロンのフィルタに通す。
図4~6を参照されたい。Sf9からの1470の精製により269mg/リットルのタンパク質を得た。Sf9細胞からの1420の精製により166mg/リットルを得た。
【0095】
実施例4
三種混合毒素ワクチン粒子の分析
三種混合毒素BV1420の体積グラフによる粒径分布を、Zeta Sizer Nanoを使用して動的光散乱により分析した。体積によるサイズ分布のグラフを
図7に示す。平均直径は約30nmであった。
図8は、三種混合毒素BV1470の強度グラフによる粒径分布を示す。平均直径は約18nmであった。
【0096】
図9は、陰性染色した三種混合毒素BV1420の様々な電子顕微鏡写真を示す。電子顕微鏡写真の精製された三種混合毒素BV1420を約10ug/mlに希釈し、酢酸ウラニルで陰性染色した。
【0097】
実施例5
C.difficile三種混合毒素ワクチン:致死毒素接種および動物の生存率
図10は、毒素Aおよび二成分毒素に対する三種混合毒素ワクチンのマウス試験の結果を提供する。群1~6は、示されるようにBV1420抗原(30μg)またはPBSを投与された。群1および4は50μgの水酸化アルミニウムを含有する。群2および5は50μgの水酸化アルミニウムおよび50μgのISCOMマトリックスMアジュバントを含有した。マウスを0日目および14日目に免疫化し、0、14、および32日目に出血させた。35日目にマウスに毒素Aまたは二成分毒素を接種した。
【0098】
図11は血清IgG応答を示す。PBSは予想どおり抗体を誘導しなかった。水酸化アルミニウムを含むか、またはAlum OJおよびマトリックスMの両方のいずれかを含む三種混合毒素ワクチンは、毒素A、毒素B、およびCDTbに対して約10
4~約10
6の範囲の力価を誘導した。
図12は、抗体が毒素AおよびCTDbの両方を中和したことを確立する。
図13は、6つの群の動物の生存率を示す。群1、2、4、および5は、100%の生存率を示した。二成分毒素接種の2匹のマウスを除き、対照PBS群の動物は全て死亡した。これらのデータは、三種混合毒素ワクチンが毒素の作用から保護することを確立する。
【0099】
第2の接種研究では、毒素Bに関していくつかの構築物を生成し、単独でまたは組み合わせで試験した。群1のマウスには、水酸化アルミニウムとともにBV1420(30μg)を投与した。群2のマウスには、水酸化アルミニウムとともにBV1470(30μg)を投与し、群3には、水酸化アルミニウムとともにロタウイルスVP6およびTcdB RBD(10μg)を含有するタンデムタンパク質を投与した。群4のマウスには、BV1470およびVP6/TcdB RBDを投与した。群5には、トキソイドB(10μg)を投与した。群6は対照であり、PBSを投与した。抗IgG応答は
図15に示される。各場合において、高い力価の抗体が得られた。毒素Aペプチドを含有する群の各々は、10
4~約10
5の範囲の高い力価の抗毒素A応答を誘導した。全ての群に毒素Bペプチドを投与し、各々10
4~約10
6の範囲の高い力価を示した。二成分毒素ペプチドを含有する群の各々は、10
5~約10
6の範囲の高い力価の応答を誘導した。
図16は、毒素Bの両方を中和した抗体を生成し、トキソイドBがより高いレベルを示すことを確立する。
【0100】
群1~6のマウスの生存率を
図17に示す。PBS対照群の全てのマウスは3日目までに死亡し、6匹中5匹が1日以内に死亡した。毒素Bの生存率は100%であった。群1~4に関して、生存率は67%~83%の範囲であった。
【0101】
実施例6
さらなる三種混合毒素ワクチン
高発現レベルを得ると同時に、さらなるワクチンを生成することができる。
図18および19は、TcdB遺伝子の転座遺伝子を伴うさらなる三価のワクチンタンパク質を示す。BV1512は下の図に示される。
図18は、さらなるワクチンの構造を示す。多量体タンパク質配列: CDTbタンパク質がA-Sリンカーによって転座ドメイン(TD)から分離され、TDがS-RリンカーによってTcdAR19タンパク質から分離されることを示すBV1512多量体ワクチンタンパク質の配列。
図19は、Sf9細胞からの多量体タンパク質BV1512の発現を示す。
【0102】
実施例7
四価のワクチン
4つのペプチドを含有する多量体タンパク質を生成した。
図20。この例では、第2のTcdB菌株からのペプチドは、さらなるC.difficile菌株に対する免疫を広範化するために導入された。第1の四価の多量体タンパク質(CBABまたはpCDTb/TcdB
630/TcdAR19/TcdB
027)は、C末端に付加された菌株027からのTcdBペプチド含んだ(
図20、上の図を参照されたい)。第2の四価の多量体ペプリドでは、菌株027ペプチドからのTcdBペプチドは、第1の菌株である菌株630からのTcdBタンパク質とTcdA(R19)タンパク質との間に導入された(
図20、下の図を参照)。
図21は、上述のSf9細胞からのCBBAの四価の多量体の発現を示す。データは、得られた収量が42mg/Lであったことを示す。第2のタンパク質(
図26に示すように、CBBAまたはpCDTb/TcdB
630/TcdAR19/TcdB
027)もSf9系において生成され、40mg/Lの収量を達成した。
図22を参照されたい。
【0103】
実施例8
T毒素およびQ毒素融合タンパク質の設計、発現および精製
C.difficile TcdAのRBD、TcdB(003)、TcdB(027)、およびCDTbをコードするために、キメラ融合タンパク質を構築した。TcdAのRBDアミノ酸配列はC.difficile菌株VPI 10463(ATCC 43255)、NCBI P16154(毒素型0、リボ型003)に由来し、TcdB(003)は菌株VPI 10463(ATCC 43255)、NCBI P18177(毒素型0、リボ型003)に由来し、TcdB(027)は菌株CD196、NCBI WP_009888442.1(毒素型III、リボ型027)に由来し、CDTbは菌株CD196、GenBank ABS57477.1(毒素型III、リボ型027)に由来する。
【0104】
TcdA RBD(38のうち19の反復配列で切り詰められた)、TcdB(003)およびTcdB(027)RBD(各々24の反復配列)、ならびにCDTbのコード配列は、昆虫細胞(GenScript)における発現のためにコドン最適化された。
【0105】
CDTb遺伝子断片(アミノ酸1~835)、TcdA RBD(1314塩基対[bp]、6816~8130bp)、およびTcdB
(003)RBD(1608bp、5493~7098bp)をコードするヌクレオチド配列は、合成遺伝子からのPCR増幅により得た。PCR増幅した遺伝子断片を制限酵素で消化した:BamHI/NheIでCDTb、NheI/XbaIでTcdB
(003)RBD、そしてXbaI/HindIIIでTcdA RBD。消化後、3つの遺伝子を、pFastBac1(Invitrogen)のBamH1およびHindIIIの部位にライゲートした。3つのRBDをコードするプラスミドを使用して、三価の融合タンパク質(以後、T毒素と称する)を発現させるためにSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞のBac-to-Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen)を使用した、組換えAutographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)バキュロウイルスを構築した(
図23B)。
【0106】
Spel/HinIIIで消化させたTcdB
(027)RBD(1608bp、5493-7098)を三価の融合遺伝子のC末端に融合して、プラスミド、および4つ全てのRBDの毒素をコードするバキュロウイルス構築物を形成し、これを、同様にSf9細胞に発現させて、四価の融合タンパク質(以後、Q毒素と称する)を生成した(
図23B;配列番号21)。
【0107】
したがって、構築物は、pCDTb:1~835からの835個のアミノ酸;菌株:CD196;毒素型:III、リボ型:027;GenBank:ABS57477.1;TcdB003:838~1373からの536個のアミノ酸;NCBI:P18177、菌株=ATCC4325/VPI 10463、毒素型0、リボ型:087;TcdA:1376~1813からの438個のアミノ酸;NCBI:P16154、菌株=ATCC4325/VPI 10463、毒素型0;リボ型:087、およびTcdB027:1815~2351からの536個のアミノ酸;NCBI:013315、菌株CD196;毒素型:III、イボ型:027を含有する。部分の各々は、2つのアミノ酸リンカー:pCDTb部分とTcdB003部分との間のAS、TcdB003部分とTcdA部分との間のSR、TcdA部分とTcdB027部分との間のTSによって分離されている。
【0108】
融合タンパク質を、25mMのTris緩衝液(pH8.0)中の0.2%Tergitol NP-9、250mMのNaCl、および2μg/mLのロイペプチンを含む緩衝液に洗剤溶解により抽出した。遠心分離により可溶化液を精製し、融合タンパク質を、Fractogel EMD TMAE、フェニルHP、および30Qカラムクロマトグラフィーで精製した。精製されたT毒素およびQ毒素を、およそ4.0mg/mLで25mMのTrisおよび250mMのNaCl(pH8.0)に製剤化し、<-60℃で保存した。精製されたT毒素およびQ毒素の回収は、それぞれ、267および154mg/Lであった。T毒素およびQ毒素は、それぞれ、205kDaおよび268kDaの分子量でSDS-PAGEゲルに移動し、>90%の純度であった(
図23A)。毒素特異的抗体によるウエスタンブロット分析により、各融合タンパク質のCDTb、TcdB、およびTcdAの発現が確認された(
図23B~D)。
【0109】
実施例9
マウスにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性
T毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性を評価するために、Noble Life Sciences’ Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認されたプロトコルに従い、マウス研究を行った。0および14日目に、50μgの水酸化アルミニウム(alum)を用いて製剤化されたT毒素(30または100μg)もしくはQ毒素(100μg)、またはPBS(対照)で、雌のC57BL/6マウス(6~8週齢)をIM免疫化した。2回目の投与の18日後に血清を収集した。2回目の免疫化3週間後に、マウスに100%の最小致死用量(MLD100%)のTcdA、TcdB(003)、またはCDTa、およびCDTbを腹腔内(IP)接種した。
【0110】
ELISAにより、毒素に対する抗体についてマウスの血清を評価した。96ウェルのMaxiSorpマイクロタイタープレート(Thermo Scientific)を、各毒素(2μg/mL)で一晩、2~8℃でコーティングした。血清の5倍系列希釈液を2つ組でプレートに添加した。結合した抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG(Southern Biotech)で検出した。3,3′,5,5′テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma)を添加し、TMB停止緩衝液(Scytek Laboratories)で反応を停止させた。SpectraMax Plusプレートリーダー(Molecular Devices)で、450nmでプレートを読み取った。SoftMax Proソフトウェアを使用して結果を分析した。力価は、最大OD
450nmの50%の読み取りをもたらした逆数希釈として報告された。検出の下限(LLOD)を下回ると記録された力価値は、GMTを計算するために力価50が割り当てられた。免疫化後のマウス血清IgG力価は、TcdA、TcdB、およびCDTに関して高く、T毒素とQ毒素との間で比較可能であった(
図25A)。
【0111】
Vero細胞(CCL-81、ATCC)を、20%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)および抗生物質(Gibco)で補足されたDMEM中で維持した。マウス血清の2倍系列希釈を、96ウェルの平底組織培養プレート(Thermo Scientific)において調製した。2×最小細胞傷害性用量のTcdA、TcdB、またはCDTを含有する、等体積(50μL)のアッセイ培地(5%熱不活性化FBSを含む1×DMEM、1×NEAA、0.3%デキストロース、1×ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン、0.006%フェノールレッド)を希釈した血清に添加し、37℃で1時間インキュベートした。50μLの培地および150μLの減菌鉱油(Sigma)に懸濁したVero細胞(7.5×10
4細胞/mL)を添加し、プレートを37℃で6~7日間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルの色に関してプレートを観察した。培地および毒素処理された対照ウェルは赤/赤色を帯びたピンクであり、細胞対照ウェルは黄色/黄色を帯びた橙色であった。各試料希釈に関して、黄色/黄色を帯びた橙色であった最後のウェルは、エンドポイント中和抗体力価として記録された。<LLODと記録された力価値はGMTを計算するために値5が割り当てられた。3つの毒素の各々に対する毒素中和抗体(TNA)力価は、T毒素とQ毒素融合タンパク質との間で比較可能であった(
図25B)。
【0112】
2回目の免疫化の3週間後に、マウスにTcdB
(003)を接種した。Q毒素でワクチン接種された群は、80%の生存率を有し(p=0.0043)、一方、T毒素群の65%(p=0.018)が接種を生き延びた。対照的に、対照群においては、20%のみが毒素接種を生き延びた(
図25C)。
【0113】
実施例10
ハムスターにおけるT毒素およびQ毒素融合タンパク質の免疫原性
70~100グラムの雄の5~7週齢のゴールデンシリアンハムスター(HsdHan:Aura;Harlan Laboratories)は、3週間間隔で、30μgのQ毒素および120μgのアルミニウム、またはPBS(対照)で、3回の免疫化を受け、交互に大腿にIM投与された。3回目の免疫化の2週間後に血清を収集し、動物を10mg/kgのクリンダマイシンでIP処置した。1日後、動物に強制飼養により菌株630またはNAP1を接種させ、8日間観察した。
【0114】
ELISAにより、毒素に対する抗体についてハムスターの血清を評価した。96ウェルのMaxiSorpマイクロタイタープレート(Thermo Scientific)を、各毒素(2μg/mL)で一晩、2~8℃でコーティングした。血清の5倍系列希釈液を2つ組でプレートに添加した。結合した抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートされたウサギ抗ハムスターIgG(Southern Biotech)で検出した。3,3′,5,5′テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma)を添加し、TMB停止緩衝液(Scytek Laboratories)で反応を停止させた。SpectraMax Plusプレートリーダー(Molecular Devices)で、450nmでプレートを読み取った。SoftMax Proソフトウェアを使用して結果を分析した。力価は、最大OD
450nmの50%の読み取りをもたらした逆数希釈として報告された。検出の下限(LLOD)を下回ると記録された力価値は、GMTを計算するために力価50が割り当てられた。3週間間隔で、Q毒素で3回免疫化されたハムスターは、TcdA、TcdB、およびCDTb毒素に対して高いIgG力価をもたらした(
図26A)。
【0115】
Vero細胞(CCL-81、ATCC)を、20%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)および抗生物質(Gibco)で補足されたDMEM中で維持した。ハムスター血清の2倍系列希釈を、96ウェルの平底組織培養プレート(Thermo Scientific)において調製した。2×最小細胞傷害性用量のTcdA、TcdB、またはCDTを含有する、等体積(50μL)のアッセイ培地(5%熱不活性化FBSを含む1×DMEM、1×NEAA、0.3%デキストロース、1×ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン、0.006%フェノールレッド)を希釈した血清に添加し、37℃で1時間インキュベートした。50μLの培地および150μLの減菌鉱油(Sigma)に懸濁したVero細胞(7.5×10
4細胞/mL)を添加し、プレートを37℃で6~7日間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルの色に関してプレートを観察した。培地および毒素処理された対照ウェルは赤/赤色を帯びたピンクであり、細胞対照ウェルは黄色/黄色を帯びた橙色であった。各試料希釈に関して、黄色/黄色を帯びた橙色であった最後のウェルは、エンドポイント中和抗体力価として記録された。<LLODと記録された力価値はGMTを計算するために値5が割り当てられた。3つの毒素の各々に対するTNA力価は、T毒素とQ毒素融合タンパク質との間で比較可能であった(
図31B)。
【0116】
クリンダマイシン処置後、C.difficile菌株630を感染させた動物は90%の生存率を有し(
図26C)、一方、NAP1を感染させた動物は75%の生存率を有した(
図31D)。プラセボ群の全ての動物はいずれかの菌株を感染させた後48~72時間以内に死亡した。
【0117】
参照による組み込み
本明細書に特定される特許および公開出願の各々は、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
前記部分が、2アミノ酸リンカーにより分離され、前記リンカーが、アラニン-セリン(AS)、ロイシン-グルタミン酸(LE)、およびセリン-アルギニン(SR)からなる群から選択される、請求項4に記載の多価の免疫原性ポリペプチド。