(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179558
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20221125BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154683
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2021035123の分割
【原出願日】2016-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2015244467
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 和弘
(57)【要約】
【課題】
コンバイナを迅速に展開可能とすること、展開状態にあるコンバイナの位置の微調整を可能とすること、または単純な機構によってコンバイナを移動させること等を課題としている。
【解決手段】
本願発明の表示装置は、対向する一対の側板部と、前記側板部の少なくとも一方に摺動自在に設けられており、第1のカム構造及び第2のカム構造を有する摺動部材と、前記前記第1のカム構造に係合する第1のピン構造及び前記第2のカム構造に係合する第2のピン構造を有する表示部材と、を有し、前記第1のカム構造は、前記摺動部材の摺動方向と角度をもって伸長する第1のカム領域及び前記第1のカム領域の端部から連続して形成されておりかつ前記摺動部材の摺動方向と平行に伸長する第2のカム領域を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の側板部と、
前記側板部の少なくとも一方に摺動自在に設けられており、第1のカム構造及び第2のカム構造を有する摺動部材と、
前記前記第1のカム構造に係合する第1のピン構造及び前記第2のカム構造に係合する第2のピン構造を有する表示部材と、を有し、
前記第1のカム構造は、前記摺動部材の摺動方向と角度をもって伸長する第1のカム領域及び前記第1のカム領域の端部から連続して形成されておりかつ前記摺動部材の摺動方向と平行に伸長する第2のカム領域を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両の運転席付近にいわゆるヘッドアップディスプレイが搭載され始めている。ヘッドアップディスプレイは、例えば、イメージコンバイナ(以下、単にコンバイナとも称する)と呼ばれる透光性の表示部材に、自車情報や道路情報、ナビゲーション情報等の運転支援情報を画像表示する表示装置である。
【0003】
ヘッドアップディスプレイは、例えば、上記したような運転支援情報を、フロントガラスの前方に虚像として表示する。当該運転支援情報は、運転者からは車両前方の景色に重なって視認される。従って、ヘッドアップディスプレイは、運転者の視線をほとんど移動させることなく、運転者に当該運転支援情報を提供することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、円筒カム機構によって、コンバイナを展開位置と収納位置との間で昇降させるコンバイナ移動機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/100535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヘッドアップディスプレイ装置のコンバイナは、例えば、エンジンオフ時にはヘッドアップディスプレイ装置の筐体内に格納され、エンジンスタート時等の使用時には迅速に筐体外へ展開されて、使用可能な状態にされるのが好ましい。その一方で、展開状態におけるコンバイナの適正な位置は、運転者の体格等によって異なる場合がある。コンバイナは展開状態にある際にはゆっくりと動作し、その位置を細かく調整できるのが好ましい。
【0007】
また、コンバイナの移動機構は、単純な機構であるのが好ましく、ヘッドアップディスプレイ装置の形状または寸法の変更に容易に対応できる機構であるのが好ましい。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、例えば、コンバイナを迅速に展開可能とすること、展開状態にあるコンバイナの位置の微調整を可能とすること、または単純な機構によってコンバイナを移動させること等を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、対向する一対の側板部と、前記側板部の少なくとも一方に摺動自在に設けられており、第1のカム構造及び第2のカム構造を有する摺動部材と、前記前記第1のカム構造に係合する第1のピン構造及び前記第2のカム構造に係合する第2のピン構造を有する表示部材と、を有し、前記第1のカム構造は、前記摺動部材の摺動方向と角度をもって伸長する第1のカム領域及び前記第1のカム領域の端部から連続して形成されておりかつ前記摺動部材の摺動方向と平行に伸長する第2のカム領域を有することを特徴とする表示装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る表示装置の表示動作時における斜視図である。
【
図2】実施例1に係る表示装置の非表示動作時における斜視図である。
【
図3】実施例1に係る表示装置のコンバイナユニットの斜視図である。
【
図4】実施例1に係る表示装置の移動機構の分解斜視図である。
【
図5】実施例1に係る表示装置のコンバイナユニットの昇降動作時における側面図である。
【
図6】実施例1に係る表示装置のコンバイナユニットの昇降動作時における側面図である。
【
図7】実施例1に係る表示装置のコンバイナユニットのチルト動作状態における側面図である。
【
図8】実施例1に係る表示装置のコンバイナユニットのチルト動作状態における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。以下の説明においては、表示装置として、例えば表示部としてコンバイナを有するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)を例に説明する。
【実施例0012】
[全体構造]
図1は、実施例1に係る表示装置10の表示動作時(コンバイナ展開時)における斜視図である。また、
図2は、表示装置10の非表示動作時(コンバイナ収納時)の斜視図で
ある。表示装置10は、例えば自動車等の移動体に搭載される。例えば、自動車に搭載される際、表示装置10は、例えばダッシュボード内に収納して搭載される。
【0013】
筐体11は、板状の天板部TPを有している。天板部TPには、略矩形状の開口部OPが形成されている。また、筐体11は、天板部TPの対向する側部から天板部TPに対して略垂直に伸長し、互いに対向している板状の一対の側板部SPを有している。
【0014】
以下の説明においては、天板部TPの板面Sと側板部SPの板面Tの交線に略沿った方向を奥行き(前後)方向(X軸方向)として説明する。また、側板部SPの板面Tに垂直な方向を幅方向(Y軸方向)として説明する。また、天板部TPの板面Sに略垂直な方向を高さ(上下)方向(Z軸方向)として説明する。
【0015】
表示部材としてのイメージコンバイナユニット(以下、コンバイナユニットと称する)13は、透光性を有する板状のコンバイナ部13Aを有する部材である。コンバイナ部13Aは、その板面が一方の方向(図中矢印PD方向)に凸に湾曲している。例えば、コンバイナ部13Aは、凹面側から照射光が入射すると凸面側空間領域に虚像を形成するように構成されている。
【0016】
図1に示すように、表示動作時には、コンバイナユニット13は、筐体11内、すなわち側板部SPの間の空間から突出して立ち上がった状態となる。すなわちコンバイナユニット13は、展開位置にある。また、
図2に示すように、コンバイナユニット13は、非表示動作時には、コンバイナ筐体11内、すなわち側板部SPの間の空間に収納される。すなわち、非表示動作時において、コンバイナユニット13は、2つの側板部SPの間に形成される収納空間内の収納位置にある。
【0017】
また、非表示動作時において、開口部OPは、シャッタ14によって覆われている。シャッタ14は可動であり、動作時においては、開口部OPを開放するように移動して、筐体11内に収納される。
【0018】
具体的には、例えば、表示装置10の電源投入前(自動車のエンジンの始動前、またはイグニションオン前)においては、コンバイナユニット13が筐体11内の収納位置に収納されている。その後、表示装置10の電源が投入されると、コンバイナユニット13が収納位置から移動し、展開位置に配置される。コンバイナユニット13は、側板部SPに対して摺動(スライド移動)可能に支持され、収納位置と展開位置との間で移動する。
【0019】
図3にコンバイナユニット13の拡大図を示す。なお、以下の説明において、表示動作時におけるコンバイナ部13Aの凸に向かう方向(図中矢印PD方向)を表示装置10の前方と、その逆を後方として説明する。
【0020】
図3に示すように、コンバイナ部13Aは、保持部13Bによって固定保持されている。保持部13Bの両側面の各々には、保持部13Bから表示装置10の幅方向(Y軸方向)に突出している3つのピン構造が形成されている。
【0021】
第1のピン構造としての昇降駆動ピンDPは、3つのピンのうちの最前方のピンであり、側板部SPに沿って摺動(スライド移動)自在に設けられている駆動板(図示せず)に形成されているカム構造によって駆動されてスライド移動するピンである。
【0022】
第3のピン構造としてのガイドピンGPは、3つにピンのうちの前後方向における真ん中のピンであり、側板部SPに形成されているガイド溝(図示せず)に沿って摺動自在である。第2のピン構造としての調整駆動ピンAPは、3つのピンの内の最後方のピンであ
り、上記駆動板に形成されているカム構造によって駆動されてスライド移動するピンである。
【0023】
以下の説明において、表示動作時において保持部13Bからみたコンバイナ部13Aの先端の方向を表示装置10の上方と、その逆を下方として説明する。例えば、表示装置10を移動体のダッシュボード内に搭載する際は、表示装置10の前方、すなわち図中矢印PD方向に移動体(例えば自動車)のフロントガラスが存在する。また、移動体の搭乗者は表示装置10の後方側からコンバイナユニット13を見るものとする。
【0024】
[移動機構]
次に、筐体11の側板部SPの構造並びにコンバイナユニット13を移動させる移動機構について説明する。
【0025】
図4は、表示装置10の側板部SPに形成されている移動機構の分解斜視図である。移動機構は、一対の側板部SPの少なくとも一方に沿って設けられ、コンバイナユニット13の昇降駆動ピンDP、ガイドピンGP及び調整駆動ピンAPと係合し、すなわち係わり合って互いに相対的に移動可能になっており、表示部材であるコンバイナユニット13を移動させる。なお、移動機構は、一対の側面部SPの両方に対称に設けられていてもよい。
【0026】
移動機構は、側板部SPの最も内側に形成されている内側案内板SP1、案内板SP1の外側に設けられている外側案内板SP2を有している。移動機構は、さらに、内側案内板SP1と外側案内板SP2との間に設けられ、これらによって案内されて移動する摺動部材として駆動板15を有している。
【0027】
内側案内板SP1には、表示装置10の前後方向に伸長する長手溝状の2つのスライドレールSR1が設けられている。2つのスライドレールSR1は互いに平行に伸長しかつ前後方向にオフセットして形成されている。
【0028】
2つのスライドレールSR1の間の領域には、長手穴状の貫通穴としてのガイド穴GHが設けられている。ガイド穴GHは、表示装置10の後方にいくにつれて上方に向かっていく傾斜を有している。すなわち、ガイド穴GHは、2つのスライドレールSR1と角度を持って形成されている。ガイド穴GHには、コンバイナユニット13の昇降駆動ピンDPが挿入されている。すなわち、昇降駆動ピンDPはガイド穴GHに案内されて、ガイド穴GHの伸長方向に沿ってスライド自在になっている。
【0029】
ガイド穴GHの後方には、ガイド穴GHと平行に伸長している長手溝状のガイド溝GGが設けられている。ガイド溝GGは、内側案内板SP1の内側面、すなわち外側案内板SP2に向いた面と反対側の面に形成されている。ガイド溝GGには、コンバイナユニット13のガイドピンGPが挿入されている。すなわち、ガイドピンGPは、ガイド溝GGに案内されて、ガイド溝GGの伸長方向に沿ってスライド自在になっている。
【0030】
ガイド溝GGは、その上端部において、屈曲部GGVを有している。屈曲部GGVは、ガイド穴GHの最上部に昇降駆動ピンDPが持ち来された際の昇降駆動ピンDPを中心とした円弧に沿って伸長している。
【0031】
ガイド溝GGの後方には、ガイド穴GHと平行に伸長している逃げ穴PHが形成されている。逃げ穴PHは、その上端部においての屈曲部PHVを有している。屈曲部PHVは、ガイド穴GHの最上部に昇降駆動ピンDPが持ち来された際の昇降駆動ピンDPを中心とした円弧に沿って伸長している。
【0032】
逃げ穴PHには、コンバイナユニット13の調整駆動ピンAPが挿入されている。調整駆動ピンAPは、逃げ穴PHに沿って移動自在であるが、逃げ穴PHに案内されてはいない。すなわち、逃げ穴PHは、調整駆動ピンAPの逃げとなっている。
【0033】
内側案内板SP1の内側には、駆動源としての例えば電気モータである駆動部Mが設けられている。駆動部Mの駆動シャフト(図示せず)は、内側案内板SP1を貫通して内側案内板SP1の外側に設けられている駆動ギアDGに接合されている。駆動ギアDGは、駆動部Mの駆動シャフトが回転すると、内側案内板SP1の板面と垂直な回転軸回りに回転するようになされている。
【0034】
中継ギアTGは、内側案内板SP1の外側に、内側案内板SP1の板面と垂直な回転軸周りに回転自在に設けられている。中継ギアTGは、駆動ギアDGと噛み合っており駆動ギアDGが回転するとそれに応じて回転するようになされている。
【0035】
外側案内板SP2には、内側案内板SP1に設けられている2つのスライドレールSR1のそれぞれと対向する位置に、2つのスライドレールSR2が形成されている。
【0036】
駆動板15は、板状の部材である。駆動板15の前端部領域及び後端部領域のそれぞれには、駆動板15の板面の両側から垂直に突出したスライドピンSLPが設けられている。スライドピンSLPは、内側案内板SP1のスライドレールSR1及び外側案内板SP2のスライドレールSR2にそれぞれ挿入されている。すなわち、スライドピンSLPの各々は、それぞれスライドレールSR1及びSR2に沿ってスライド移動可能になされている。換言すれば、駆動板15はスライドレールSR1及びSR2の伸長方向に沿ってスライド移動可能になっている。
【0037】
駆動板15には、表示装置10の前後方向に沿って形成されているラックギアLGが設けられている。ラックギアLGは、駆動板15の外側面、すなわち外側案内板SP2を向いた面に、外側案内板SP2に向かって突出しかつ表示装置の前後方向に伸長している略直方体の突出部の下面に形成されている。ラックギアLGは、中継ギアTGと噛み合っている。すなわち、中継ギアTGの回転に応じて、駆動板15がスライドレールSR1及びSR2の伸長方向に沿ってスライド移動するようになされている。
【0038】
駆動板15は、内側面、すなわち内側案内板SP1側の面に、ラックギアLGと垂直に交叉するように形成されている第1のカム領域としてのカム溝CGを有している。カム溝CGには、内側案内板SP1のガイド穴GHを通り抜けて突出している昇降駆動ピンDPが挿入されている。すなわち、昇降駆動ピンDPは、カム溝CGに沿ってスライド移動自在になっている。
【0039】
カム溝CGは、駆動板15のスライド移動の方向(摺動方向)に対して角度をもって伸長しており、かつガイド穴GHと角度をもって伸長している。従って、昇降駆動ピンDPは、駆動板15のスライド移動に従ってガイド穴GH及びカム溝CGに拘束されつつスライド移動する。具体的には、駆動板15が後方にスライド移動するに従って、昇降駆動ピンDPは、ガイド穴GHに沿って上方に移動する。なお、カム溝CGは、駆動板15のスライド移動の方向に対して角度を有していればよく、必ずしもラックギアLGと垂直に伸長していなくともよい。
【0040】
駆動板15には、カム溝CGの上端から連続して形成されている第2のカム領域としての第1のカム面CS1が形成されている。第1のカム面CS1は、カム溝CGと角度をもって形成されており、表示装置10の前方に向かってラックギアLGと平行に伸長している。すなわち、第1のカム面CS1は、駆動板15のスライド移動の方向と平行に形成されている。
【0041】
上述のように、駆動板15が後方にスライド移動していく際、昇降駆動ピンDPは、ガイド穴GH及びカム溝CGに沿って上方に移動していく。昇降駆動ピンDPが上方に移動していき、カム溝CGの終端部に達すると、昇降駆動ピンDPは、カム面CS1上に乗り上がり、第1のカム面CS1に接して係合しつつ第1のカム面CS1と相対的にスライド移動する。
【0042】
上述のように、第1のカム面CS1は駆動板15のスライド移動の方向と平行に形成されているので、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1上に乗り上がって係合している間は、昇降駆動ピンDPは第1のカム面CS1上を滑りそこから移動しない。すなわち、昇降駆動ピンDPは、第1のカム面CS1と係合している間は、駆動板15と相対的に移動するがガイド穴GHの最上部において静止している。なお、カム溝CG及び第1のカム面CS1を含めて第1のカム構造とする。
【0043】
駆動板15のカム溝CGより後方の領域には、第2のカム構造としての第2のカム面CS2が形成されている。第2のカム面CS2は、表示装置10の前後方向に伸長している。また、第2のカム面CS2は、ラックギアLGと角度をもって伸長している。すなわち、第2のカム面CS2は、駆動板15のスライド移動の方向と角度をもって伸長している。また、第2のカム面CS2は、表示装置10の後方いくにつれて、駆動板15のスライド移動の方向に対して下方に向かうように傾斜して伸長している。
【0044】
[非動作状態から動作状態への遷移動作及びチルト動作]
次に、表示装置の側面図である
図5、
図6、
図7及び
図8を参照して非動作状態から動作状態への遷移およびその後のチルト動作について説明する。
図5、
図6、
図7及び
図8においては、図の簡略化のため、移動機構及びコンバイナユニット13以外の構造は示していない。また、
図5、
図6、
図7及び
図8においては、外側案内板SP2を省略している。
【0045】
図5に非動作状態における表示装置10を示す。非動作状態の際には、駆動板15は、スライドレールSR1及びSR2に沿った最前位置にある。この際、昇降駆動ピンDPは、ガイド穴GHの最下位置にある。すなわち、コンバイナユニット13は、内側案内板SP1の間、すなわち側板部SP(
図1または
図2参照)の間に収容されている収納位置におかれている。
【0046】
図6に非動作状態から動作状態に遷移中の表示装置10を示す。上記非動作状態から、電気モータ(図示せず)が駆動して駆動ギアDGが時計回りに回転し、駆動板15が後方にスライド移動する。駆動板15が後方に移動すると、昇降駆動ピンDPは、カム溝CG及びガイド穴GHに拘束されつつガイド穴GHに沿って上方に移動し、コンバイナユニット13も上方に移動していく。
【0047】
コンバイナユニット13の移動に従って、ガイドピンGPはガイド溝GGに案内されつつ上方にスライド移動する。また、調整駆動ピンAPは、逃げ穴PHに沿って上方に移動していく。この際、調整駆動ピンAPと駆動板15は互いに衝突しないように構成されている。
【0048】
図7に動作状態における表示装置10を示す。上記遷移状態から、電気モータが駆動して中継ギアTGがさらに時計回りに回転して、駆動板15がさらに後方に移動すると、昇降駆動ピンDPはガイド穴GHの最上部に達するとともにガイド溝GGの最上部に達する。
【0049】
昇降駆動ピンDPがガイド溝GGの最上部に達した後に、駆動板15がさらに後方に移動すると、昇降駆動ピンDPは第1のカム面CS1上に乗り上がる。上記したように、昇降駆動ピンDPは、第1のカム面CS1に乗り上がって係合している間は、駆動板15がスライド移動してもガイド穴GHの最上部で回動可能に固定されて移動しない。
【0050】
なお、昇降駆動ピンDPは、第1のカム面CS1と係合している間において、バネ機構(図示せず)によって第1のカム面CS1に向かって付勢されている。この付勢により、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1上を滑っている際の昇降駆動ピンDPのがたつきを防止することが可能である。
【0051】
昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1に乗り上がる位置まで駆動板15が後方にスライド移動すると、調整駆動ピンAPが駆動板15の第2のカム面CS2と接して係合する。すなわち、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1と係合している間に、調整駆動ピンAPが第2のカム面CS2と係合する。
【0052】
図8に示すように、調整駆動ピンAPが駆動板15の第2のカム面CS2と接した後に、駆動板15がさらに後方スライド移動すると、調整駆動ピンAPは、第2のカム面CS2上を滑りながら移動する。
【0053】
上述のように、第2のカム面CS2は、駆動板15のスライド移動方向に対して傾斜している。従って、調整駆動ピンAPは、駆動板15が後方に移動すると、それにつれて逃げ穴PHに沿って上方に移動していく。この際、上述のように昇降駆動ピンDPは、ガイド穴GHの最上部において回動可能に固定されている。よって、調整駆動ピンAPは、昇降駆動ピンDPを中心とした円の円弧に沿って、屈曲部PHV内を移動する。
【0054】
このように、調整駆動ピンAPが、固定されている昇降駆動ピンDPを中心とした円の円弧上を移動することで、コンバイナユニット13全体の傾きが変化する。すなわち、コンバイナユニット13の傾きを調整するチルト動作が行われる。
【0055】
具体的には、駆動板15が後方に移動するほど、コンバイナユニット13が前方に向かって回動し、直立状態に近づく、すなわちコンバイナユニット13の角度が垂直に近づく。また、駆動板15が前方に移動するほど、コンバイナユニット13が後方に回動して倒れ、コンバイナユニット13の傾斜が大きくなる。
【0056】
なお、このチルト動作の際、ガイドピンGPも昇降駆動ピンDPを中心とした円の円弧に沿って、屈曲部GGVに沿って移動する。すなわち、屈曲部GGVは、昇降駆動ピンDPがガイド穴GHの最上部に持ち来された際、言い換えれば昇降駆動ピンDPが第2のカム面CS2と係合している間における昇降駆動ピンDPの位置を中心とした円弧に沿って伸長している。
【0057】
この屈曲部GGVは、ガイドピンGPの直径よりも広い幅を有して、ガイドピンGPに対する逃げとして形成されていてもよい。すなわち、屈曲部GGVは、ガイドピンGPと接触しないように形成され、ガイドピンGPを案内しなくともよい。
【0058】
なお、調整駆動ピンAPは、第2のカム面CS2と係合している間において、バネ機構(図示せず)によって第2のカム面CS2に向かって付勢されている。この付勢により、調整駆動ピンAPがカム面C2上を滑って移動する際に、調整駆動ピンAPがカム面C2から離れてしまうことを防止することができる。また、調整駆動ピンAPのがたつきを防
止することが可能である。
【0059】
本発明の表示装置10によれば、スライド移動する1つの駆動板15に形成されたカム溝CG及び第2のカム面CS2という駆動板15のスライド方向に対する傾斜の異なる2つのカム機構によってコンバイナユニット13の展開収納及びチルト動作が行われる。
【0060】
すなわち、駆動板15のスライド移動の方向に対する角度の大きいカム溝CGによって、コンバイナユニット13の迅速な展開収納が行われる。そして、当該スライド方向に対する角度がカム溝CGより小さい第2のカム面CS2によってコンバイナユニット13の精密かつ微細なチルト動作が行われる。なお、上記スライド移動の方向に対するカム溝CG及び第2のカム面CS2の各々の角度とは、スライド移動方向とカム溝CG及び第2のカムCS2の各々とがなす角度のうち90度以下のものをいう。
【0061】
これにより、スライド移動する1つの部材である駆動板15によって、コンバイナユニット13の迅速な展開収納、及び展開時の精密かつ微細なチルト動作が可能になる。すなわち、単純かつコンパクトな移動機構によってコンバイナユニット13の迅速な展開収納、及び展開時の精密かつ微細なチルト動作を実現可能である。
【0062】
このように、コンバイナユニット13の移動機構を単純かつコンパクトにすることを可能とすることにより、表示装置10のコンパクト化が可能になる。また、駆動板15の形状は必要に応じて柔軟に変更可能であるので、コンバイナの移動機構、ひいては表示装置10の形状及び寸法の変更を容易に行うことが可能となる。
【0063】
上述したように、第2のカム面CS2は、駆動板15の移動方向に対して、カム溝CGよりも緩やかな傾斜を有している。従って、第2のカム面CS2によって調整駆動ピンAPが駆動されているチルト動作の際、カム溝CGによって昇降駆動ピンDPが駆動されている際よりも、駆動板15の移動量、すなわち駆動部Mのモータの回転量に対してのコンバイナユニット13の移動量が少なくなる。
【0064】
すなわち、チルト動作時において、コンバイナユニット13は、駆動板15の移動に伴い、コンバイナユニット13を収納位置から展開位置に持ち来す時、いわゆる展開時よりもゆっくりかつ少しずつ回動移動する。
【0065】
このゆっくりとした少量の回動移動は、駆動板15の移動速度を、展開時から変えずに達成可能である。このことにより、コンバイナユニット13の回動角度位置を高い精度で調整することが可能となる。また、例えばモータの駆動量制御の精度を変更せずにコンバイナユニット13の回動角度位置の位置決め精度を高めることが可能である。
【0066】
さらに、駆動板15の移動速度を変えずに、すなわち駆動部Mのモータの回転速度を変えずに、コンバイナユニット13の移動速度を展開時には高速に、その後のチルト動作では低速とすることが可能である。すなわち、コンバイナユニットの回動動作中に駆動部Mのモータの回転速度を変更する必要が無いので、駆動部Mの動作安定性を高めることが可能である。また、駆動部Mのモータの回転速度が変化する際に発生するコンバイナユニット13の不自然な動作を抑制することが可能である。
【0067】
上記実施例においては、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1に乗り上がる位置まで駆動板15が後方にスライド移動すると、調整駆動ピンAPが駆動板15の第2のカム面CS2と接して係合するとした。この調整駆動ピンAPと第2のカム面CS2とが接して係合するタイミングは、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1に乗り上がって係合するのと同時であってもよい。また、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1と係合する前か
らまたは昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1と係合した後に調整駆動ピンAPと第2のカム面CS2が係合してもよい。
【0068】
また、上記実施例においては、第1のカム面CS1が、駆動板15のスライド方向と平行に形成されている場合を例に説明した。しかし、第1のカム面CS1は、駆動板15のスライド方向に対して傾斜していてもよい。その場合、昇降駆動ピンDPがガイド穴GHの最上部に達する前に第1のカム面CS1に乗り上がって係合し、チルト動作が開始されるように構成される。また、昇降駆動ピンDPが第1のカム面CS1と係合している間にコンバイナユニット13の角度が変化するように、第1のカム面CS1と第2のカム面CS2とが非平行となるように形成されてもよい。
【0069】
また、上記実施例においては、移動機構が一対の側板部SPの両方に対称に設けられていてもよいものとした。この場合、駆動板15は、一方の側板部SPにあれば足りる。
【0070】
上述した実施例における種々の構成等は、例示に過ぎず、用途等に応じて、適宜選択することができる。