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特開2022-179617疾患及び障害の処置及び予防のための短鎖脂肪酸の使用
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  • 特開-疾患及び障害の処置及び予防のための短鎖脂肪酸の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179617
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】疾患及び障害の処置及び予防のための短鎖脂肪酸の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20221125BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20221125BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20221125BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K31/19
A61K31/4035
A61K31/593
A61K33/06
A61K47/60
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/06
A61P27/02
A61P35/00
A61P37/08
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P11/14
A61P9/00
A61K9/52
A23L33/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161035
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2019562212の分割
【原出願日】2018-01-26
(31)【優先権主張番号】62/510,867
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/588,961
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/530,371
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,572
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/510,872
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/451,192
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591135163
【氏名又は名称】テンプル・ユニバーシティ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】TEMPLE UNIVERSITY-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(71)【出願人】
【識別番号】519273452
【氏名又は名称】イラ シー.スペクター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】イラ シー.スペクター
(72)【発明者】
【氏名】マーク エー.フェイテルソン
(72)【発明者】
【氏名】アラ アーズマーニャン
(57)【要約】
【課題】疾患及び障害の処置又は予防における使用のためのSCFAを含む安全で効果的な組成物が当技術分野で必要とされている。
【解決手段】本発明は、疾患又は障害の処置又は予防のための、短鎖脂肪酸(SCFA)、関連する処置化合物、及び他の化合物(それらの組み合わせを含む)を含む組成物及び方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短鎖脂肪酸(SCFA)、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SFCA部分を含む化合物、その誘導体、及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、少なくとも1つのさらなる部分に連結された少なくとも1つのSCFA部分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのさらなる部分がポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が低pH条件下で加水分解して、PEG及びSCFAを生じる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記SCFA又はSCFA部分が、酢酸、酪酸(BA)、C3-C12脂肪酸、C3-C10脂肪酸、C3-C8脂肪酸、メトキシ酢酸、バルプロ酸(VPA)、プロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、エトキシ酢酸、ギ酸、イソ酪酸、トリブチリン、ブチレート、プロピオネート、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート、例えばフェニルブチレート、イソブチレート、ピバロイルオキシメチルブチレート、モノアセトングルコース3-ブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸、ドデカン酸、(4R)-4-ヒドロキシペンタン酸、2-エチルヒドルアクリル酸、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタノエート、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2-メチルブタ-2-エン酸、2-オキソブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-メチルブタ-2-エン酸、ブテン酸、メチル酪酸、ジメチル酪酸、ペンタジエン酸、ペンテン酸、ピバリン酸、プロピン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記SCFA前駆体又は前記SCFA前駆体誘導体のSCFA前駆体部分は、乳酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、1,2-プロペンドール、トリパミン、インドール、インドール-3-アセテート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記SCFA生合成前駆体又は前記SCFA生合成前駆体誘導体のSCFA生合成前駆体部分が、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)活性化因子、ビタミンD、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物がブチレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が少なくとも2つのSCFAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がブチレート及びプロピオネートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項12】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、100ミリグラム(mg)~6グラム(g)の少なくとも1つのSCFAを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が腸溶コーティングされた徐放性カプセルである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が600mgのブチレートを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、900mgのブチレート、100mgのプロピオネート、10mgのアプレミラスト、10mgのマグネシウム、及び50IUのビタミンD3を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が点眼剤として処方される、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が10マイクロモル(μM)~100μMのブチレートを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が10μM~100μMのプロピオネートを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が10μM~100μMのブチレート及び10~100μMのプロピオネートを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与することを含む、疾患又は障害を処置又は予防する方法。
【請求項22】
前記疾患又は障害が、皮膚疾患又は障害、アレルギー又は自己免疫疾患又は障害、眼疾患又は障害、免疫療法に関連する有害効果、癌及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、100mg~6gのブチレートを含む組成物を投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、少なくとも1週間、毎日前記組成物を投与することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、少なくとも1週間、1日1~3回前記組成物を投与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのさらなる処置剤又は治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つのさらなる処置が免疫療法である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患が皮膚疾患又は障害であり、さらに前記方法が、
a)腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも900mgのブチレート及び少なくとも100mgのプロピオネートの用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、b)少なくとも900mgのブチレートの1日経口用量を、1日2回、少なくとも2週間にわたって投与することをさらに含み、ステップb)が前記少なくとも2週間のステップa)の完了後に行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患が皮膚疾患又は障害であり、さらに前記方法が、
腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも900mgのブチレート、少なくとも100mgのプロピオネート、及び少なくとも10mgのアプレミラストの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患が眼疾患又は障害であり、さらに前記方法が、
腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも4gのブチレート及び少なくとも1.5gのプロピオネートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が眼疾患又は障害であり、さらに前記方法が、
少なくとも20μMのブチレート及び少なくとも10μMのプロピオネートを含有する点眼剤を、少なくとも1日2回、少なくとも3日間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患が免疫療法に関連する有害効果であり、さらに前記方法が、
腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも5gのブチレート及び少なくとも2gのプロピオネートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が、免疫療法の前、免疫療法と同時、免疫療法の後、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される時に実施される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患が、アレルギー性疾患、自己免疫疾患及び喘息からなる群から選択され、さらに前記方法が、
腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも1のブチレート、少なくとも0.5gのプロピオネート、及び少なくとも0.5gのアセテートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が、Cセクションで分娩された新生児におけるアレルギー性疾患、自己免疫疾患及び喘息からなる群から選択され、さらに前記方法が、
少なくとも80mgのブチレート、少なくとも20mgのプロピオネート、及び少なくとも20mgのアセテートの1日経口用量を、栄養補助食品として投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患が血管炎であり、さらに前記方法が、
a)腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも5gのブチレートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、b)少なくとも3gのブチレートの1日経口用量を、1日2回、少なくとも2週間にわたって投与することをさらに含み、ステップb)が前記少なくとも2週間のステップa)の完了後に行われる、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/451,192号、2017年5月25日に出願された米国仮特許出願第62/510,867号、2017年5月25日に出願された米国仮特許出願第62/510,872号、2017年7月10日に出願された米国仮特許出願第62/530,371号、2017年8月1日に出願された米国仮特許出願第62/539,572号、及び2017年11月21日に出願された米国仮特許出願第62/588,961号につき、35U.S.C.§119(e)に基づく優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
短鎖脂肪酸(SCFA)は、腸内での嫌気性細菌発酵の主な代謝産物であり、脂肪組織、免疫及び神経系において、胃腸(GI)管の様々なプロセス(代謝機能や恒常性など)を調節することが示されている。腸内マイクロバイオームの定量的及び定性的な変化、及びその結果として、産生される代謝産物の濃度の変化は、炎症性腸疾患(IBD)、結腸癌、肥満、1型及び2型糖尿病などの病理的状態の発症を促進することが示唆されている。
【0003】
SCFAは、1つの極性カルボン酸部分及び疎水性炭化水素鎖からなる飽和脂肪酸であり、その中でアセテート(C2)、プロピオネート(C3)及びブチレート(C4)が最も一般的でよく研究されている分子である。
【0004】
SCFAは、G蛋白質共役受容体(GPCR)の活性化、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害、及びいくつかの転写因子の遺伝子プロモーター領域におけるブチレート応答要素への結合(これは、ブチレートの多面的効果を説明し得る)を介して、遺伝子発現、走化性、分化、増殖及びアポトーシスを含むいくつかの細胞プロセスに影響を及ぼす。SCFAは、免疫細胞の炎症部位への移動を制御し、その活性化状態を調節することによる、炎症の重要な調節因子である。重要なことに、SCFAは前炎症性細胞と抗炎症性細胞とのバランスに影響を与え、微生物叢と免疫系間との連絡の手段として機能する。SCFAが抗炎症効果を発揮する主な機構は、TNFα及びNF-κBの活性化の抑制、IFN-γ産生の阻害、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ、NF-κB依存性転写活性化を阻害できる核ホルモン受容体)の上方制御である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のSCFA治療化合物は、小腸での急速な吸収及び非常に短い半減期のために、限られた又は不十分な効力を有する。したがって、疾患及び障害の処置又は予防における使用のためのSCFAを含む安全で効果的な組成物が当技術分野で必要とされている。本発明は、この未解決課題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、短鎖脂肪酸(SCFA)、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SFCA部分を含む化合物、その誘導体、及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する。
【0007】
一実施形態では、組成物は、少なくとも1つのさらなる部分に連結された少なくとも1つのSCFA部分を含む。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる部分は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0009】
一実施形態では、組成物は、低pH条件下で加水分解して、PEG及びSCFAを生じる。
【0010】
一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は、酢酸、酪酸(BA)、C3-C12脂肪酸、C3-C10脂肪酸、C3-C8脂肪酸、メトキシ酢酸、バルプロ酸(VPA)、プロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、エトキシ酢酸、ギ酸、イソ酪酸、トリブチリン、ブチレート、プロピオネート、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート、例えばフェニルブチレート、イソブチレート、ピバロイルオキシメチルブチレート、モノアセトングルコース3-ブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸、ドデカン酸、(4R)-4-ヒドロキシペンタン酸、2-エチルヒドルアクリル酸、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタノエート、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2-メチルブタ-2-エン酸、2-オキソブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-メチルブタ-2-エン酸、ブテン酸、メチル酪酸、ジメチル酪酸、ペンタジエン酸、ペンテン酸、ピバリン酸、プロピン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0011】
一実施形態では、SCFA前駆体又はSCFA前駆体誘導体のSCFA前駆体部分は、乳酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、1,2-プロペンドール(propenedol)、トリパミン(trypamine)、インドール、インドール-3-アセテート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0012】
一実施形態では、SCFA生合成前駆体又はSCFA生合成前駆体誘導体のSCFA生合成前駆体部分は、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)活性化因子、ビタミンD、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
一実施形態では、組成物はブチレートを含む。
【0014】
一実施形態では、組成物は少なくとも2つのSCFAを含む。
【0015】
一実施形態では、組成物はブチレート及びプロピオネートを含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、短鎖脂肪酸(SCFA)、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SFCA部分を含む化合物、その誘導体、及びその組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0017】
一実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる部分に連結された少なくとも1つのSCFA部分を含む。一実施形態では、少なくとも1つのさらなる部分は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0018】
一実施形態では、医薬組成物は、低pH条件下で加水分解して、PEG及びSCFAを生じる。
【0019】
一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は、酢酸、酪酸(BA)、C3-C12脂肪酸、C3-C10脂肪酸、C3-C8脂肪酸、メトキシ酢酸、バルプロ酸(VPA)、プロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、エトキシ酢酸、ギ酸、イソ酪酸、トリブチリン、ブチレート、プロピオネート、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート、例えばフェニルブチレート、イソブチレート、ピバロイルオキシメチルブチレート、モノアセトングルコース3-ブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸、ドデカン酸、(4R)-4-ヒドロキシペンタン酸、2-エチルヒドルアクリル酸、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタノエート、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2-メチルブタ-2-エン酸、2-オキソブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-メチルブタ-2-エン酸、ブテン酸、メチル酪酸、ジメチル酪酸、ペンタジエン酸、ペンテン酸、ピバリン酸、プロピン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0020】
一実施形態では、SCFA前駆体又はSCFA前駆体誘導体のSCFA前駆体部分は、乳酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、1,2-プロペンドール(propenedol)、トリパミン(trypamine)、インドール、インドール-3-アセテート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0021】
一実施形態では、SCFA生合成前駆体又はSCFA生合成前駆体誘導体のSCFA生合成前駆体部分は、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)活性化因子、ビタミンD、又はそれらの組み合わせを含む。
【0022】
一実施形態では、医薬組成物は、100ミリグラム(mg)~6グラム(g)の少なくとも1つのSCFAを含む。
【0023】
一実施形態では、医薬組成物はブチレートを含む。一実施形態では、医薬組成物は、900~1800mgのブチレートを含む。
【0024】
一実施形態では、医薬組成物は少なくとも2つのSCFAを含む。
【0025】
一実施形態では、医薬組成物は、ブチレート及びプロピオネートを含む。一実施形態では、医薬組成物は、900~1800mgのブチレート及び100mg~200mgのプロピオネートを含む。
【0026】
一実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0027】
一実施形態では、医薬組成物は、腸溶コーティングされた徐放性カプセルである。
【0028】
一実施形態では、医薬組成物は、900mgのブチレート、100mgのプロピオネート、10mgのアプレミラスト、10mgのマグネシウム、及び50IUのビタミンD3を含む。
【0029】
一実施形態では、医薬組成物は点眼剤として製剤化される。一実施形態では、点眼剤は、10マイクロモル(μM)~100μMのブチレートを含む。一実施形態では、点眼剤は、10μM~100μMのプロピオネートを含む。一実施形態では、点眼剤は、10μM~100μMのブチレート及び10~100μMのプロピオネートを含む。
【0030】
一実施形態では、本発明は、短鎖脂肪酸(SCFA)、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SFCA部分を含む化合物、その誘導体、及びその組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物又は医薬組成物を対象に投与することを含む、疾患又は障害を処置又は予防する方法に関する。
【0031】
一実施形態では、疾患又は障害は、皮膚疾患又は障害、アレルギー又は自己免疫疾患又は障害、眼疾患又は障害、免疫療法に関連する有害効果、癌又はそれらの組み合わせである。
【0032】
一実施形態では、方法は、100mg~6gのブチレートを含む組成物又は医薬組成物を投与することを含む。
【0033】
一実施形態では、方法は、組成物又は医薬組成物を毎日、少なくとも1週間にわたって投与することを含む。
【0034】
一実施形態では、方法は、組成物又は医薬組成物を1日1~3回、少なくとも1週間にわたって投与することを含む。
【0035】
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのさらなる処置剤又は治療剤を対象に投与することをさらに含む。
【0036】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる処置は免疫療法である。
【0037】
一実施形態では、本発明は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも900mgのブチレート及び少なくとも100mgのプロピオネートを含む組成物を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、皮膚疾患又は障害を処置又は予防する方法に関する。一実施形態では、方法は、第1の投与レジメンの完了後、少なくとも900mgのブチレートの用量を、1日2回、少なくとも2週間にわたって投与することをさらに含む。
【0038】
一実施形態では、本発明は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも900mgのブチレート、少なくとも100mgのプロピオネート、及び少なくとも10mgのアプレミラストの用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、皮膚疾患又は障害を処置又は予防する方法に関する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも4gのブチレート及び少なくとも1.5gのプロピオネートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、眼疾患又は障害を処置又は予防する方法に関する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、少なくとも20μMのブチレート及び少なくとも10μMのプロピオネートを含有する点眼剤を、少なくとも1日2回、少なくとも3日間にわたって投与することを含む、眼疾患又は障害を処置又は予防する方法に関する。
【0041】
一実施形態では、本発明は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも5gのブチレート及び少なくとも2gのプロピオネートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、免疫療法に関連する有害効果を処置又は予防する方法に関する。一実施形態では、投与は、免疫療法の前、免疫療法と同時に、免疫療法の後に、又はそれらの組み合わせで実施される。
【0042】
一実施形態では、本発明は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも1のブチレート、少なくとも0.5gのプロピオネート、及び少なくとも0.5gのアセテートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、アレルギー疾患、自己免疫疾患又は喘息を処置又は予防する方法に関する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、少なくとも80mgのブチレート、少なくとも20mgのプロピオネート、及び少なくとも20mgのアセテートの1日経口用量を、Cセクションで分娩された新生児に、栄養補助食品として投与することを含む、アレルギー疾患、自己免疫疾患及び喘息を処置又は予防する方法に関する。
【0044】
一実施形態では、本発明は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の少なくとも5gのブチレートの1日経口用量を、1日3回、少なくとも2週間にわたって投与することを含む、血管炎を処置又は予防する方法に関する。一実施形態では、方法は、第1の投与レジメンの完了後、少なくとも3gのブチレートの1日経口用量を、1日2回、少なくとも2週間にわたって投与することをさらに含む。
【0045】
本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとより良好に理解されるであろう。本発明は、図面に示されている実施形態の正確な配置及び手段に限定されないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】SCFAの影響を受けるシグナル伝達経路を示す図である。図に含まれるタンパク質のうち、IL-18、TLR3、IFN-γ、TNFα、TGF-β、MyD88、PI3K/Akt、JAK/STAT、Smad2/3、Smad4及びIL-10がSCFA処置により下方制御されていることがわかった。この試験では、IL-6、TRIF、PKR、TRAF2、TAK1、及びTRAF6のレベルは評価されなかった。
図2図2A図2Cを含み、ブチレート処置レジメンを受けている乾癬患者の画像を示す。使用した処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、16日間であった。図2Aは、処置前後の患者の左肘の画像を示す。図2Bは、処置前後の患者の右肘の画像を示す。図2Cは、患者がブチレート処置レジメンを20日間中止した後、患者の左肘に乾癬が再出現した画像を示す。
図3】ブチレート処置レジメンを受けている別の乾癬患者の画像を示す。使用した処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、10日間、次いでブチレート錠剤1錠を1日3回、3週間であった。
図4】ブチレート処置レジメンを受けている第3の乾癬患者の画像を示す。使用した処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、7日間、次いで600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、24日間であった。画像は、処置前後の患者の左肘のものである。患者は処置期間中に高用量のアルコールを摂取した。
図5図5A図5Cを含み、ブチレート処置レジメンを受けている、皮膚の約50%を超える重度の乾癬を有する第4の患者からの画像を示す。患者は、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、4週間、続いて600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、数ヶ月間、のレジメンを開始した。有意な改善が認められ、長期間の処置中に副作用は認められなかった。観察されたプラスの効果が本発明者らの製剤による処置によるものであることを確認するために、患者はレジメンを中止するように求められた。乾癬は約20~25日で再発した(前の写真)。患者は、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、10日間、次いで600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、3週間、のレジメンを開始し、乾癬は消失した(後の写真)。図5Aは、2回目の処置レジメンの処置前後の患者の左臀部の画像を示す。図5Bは、2回目の処置レジメンの前後の患者の右臀部の画像を示す。図5Cは、2回目の処置レジメンの前後の患者の尾骨の画像を示す。
図6】斑状乾癬を有する患者の画像を示す。使用した最初の処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、20日間であり、次いでレジメンは用量が低下し、600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、25日間であった。患者がその処置を中止して3~5ヶ月後に有意な改善が観察された。患者は、処置前(少なくとも3ヶ月)、処置中及び処置後(少なくとも2ヶ月)にいかなる薬も服用していなかった。
【発明を実施するための形態】
【0047】
一実施形態では、本発明は、対象における1つ以上の疾患及び/又は障害の処置又は予防のための少なくとも1つのSCFAを含む組成物に関する。
【0048】
一実施形態では、SCFAは、限定されないが、SCFA、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SCFA部分を含む化合物、その誘導体、その塩、そのエステル、そのコンジュゲート塩基(例えば、PEG化コンジュゲート)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つを含む。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分としては、限定されないが、酢酸、酪酸(BA)、C3-C12脂肪酸、C3-C10脂肪酸、C3-C8脂肪酸、メトキシ酢酸、バルプロ酸(VPA)、プロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、エトキシ酢酸、ギ酸、イソ酪酸、トリブチリン、ブチレート、プロピオネート、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート、例えばフェニルブチレート、イソブチレート、ピバロイルオキシメチルブチレート、モノアセトングルコース3-ブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸、ドデカン酸、(4R)-4-ヒドロキシペンタン酸、2-エチルヒドルアクリル酸、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタノエート、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2-メチルブタ-2-エン酸、2-オキソブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-メチルブタ-2-エン酸、ブテン酸、メチル酪酸、ジメチル酪酸、ペンタジエン酸、ペンテン酸、ピバリン酸、プロピン酸及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は、少なくとも12個の炭素原子、少なくとも11個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも9個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも7個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも5個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、及び少なくとも2個の炭素原子を有する化合物又は構造を含む。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は分岐脂肪酸ではない。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は、13個未満の炭素原子、12個未満の炭素原子、11個未満の炭素原子、10個未満の炭素原子、9個未満の炭素原子、8個未満の炭素原子、又は7個未満の炭素原子を有する化合物又は構造を含む。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は分岐脂肪酸ではない。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は分岐脂肪酸である。
【0049】
一実施形態では、本発明は、対象にSCFAを含む少なくとも1つの組成物を投与することを含む、対象における1つ以上の疾患及び/又は障害を処置又は予防する方法に関する。一実施形態では、SCFAを含む少なくとも1つの組成物は、対象における疾患及び/又は障害の処置又は予防のために、少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて対象に投与される。一実施形態では、少なくとも1つのSCFA及び少なくとも1つのさらなる治療剤は、1つの組成物で併せて投与される。一実施形態では、少なくとも1つのSCFA及び少なくとも1つのさらなる治療剤は、2つ以上の組成物として別々に投与される。
【0050】
一実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は非ヒト動物である。
【0051】
定義
本発明の図及び説明は、明確性のために、本発明に見られる他の多くの要素を排除する一方、本発明の明確な理解に関連する要素を示すために簡略化されていることを理解すべきである。当業者であれば、他の要素及び/又は工程が本発明の実施に望ましい及び/又は必要であることを認識し得る。しかしながら、このような要素及び工程は当技術分野で周知であり、それらは本発明のより良い理解を促すものではないので、このような要素及び工程の議論は、本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に公知のこのような要素及び方法に対する全ての変形及び改変を対象とする。
【0052】
特に他の箇所で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び材料が記載される。
【0053】
本明細書で使用される場合、以下の各用語は、本セクションにおけるそれに関連する意味を有する。
【0054】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0055】
量、時間的な期間などの測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」は、指定値から±20%、±10%、±5%、±1%又は±0.1%の変動を、このような変動が適切であるように、包含することを意味する。
【0056】
生物、組織、細胞又はその構成要素との関連で使用される場合の「異常な」という用語は、少なくとも1つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、時刻など)が、「正常な」(予想される)各特徴を示す生物、組織、細胞又はその構成要素と異なる生物、組織、細胞又はその構成要素を指す。ある細胞又は組織型にとって正常な又は予想される特徴は、異なる細胞又は組織型にとっては異常であり得る。
【0057】
本明細書で使用される「癌免疫療法の有害効果」という用語は、癌免疫療法の有害効果の以下のタイプ:サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、オンターゲット/オフ腫瘍認識、アナフィラキシー、移植片対宿主病(GVHD)、オフターゲット抗原認識、及びマクロファージ活性化症候群(MAS)、の少なくとも1つを指し得る。
【0058】
「アレルギー」又は「アレルギー性疾患又は障害」とは、環境中の1つ以上の物質に対する免疫系の過敏によって引き起こされる多くの状態の1つ以上を意味する。
【0059】
対象は、その個体が集団(例えば、一般集団、年齢が一致した集団、同性の集団)と比較して状態を発症する可能性が高い場合、状態を発症する「リスクがある」。高い可能性は、遺伝子の特定の対立遺伝子/突然変異の存在又は特定の環境への暴露を含む要因の1つ又は組み合わせに起因し得る。
【0060】
「自己免疫疾患又は障害」とは、対象の健康な組織の炎症又は破壊を生じる自己抗原に対する免疫応答を意味する。望ましくは、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。例示的な自己免疫疾患としては、限定されないが、関節炎(例えば、急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、及び若年発症性関節リウマチなどの関節リウマチ、骨関節炎、進行性慢性関節炎、変形性関節炎、初期慢性多発性関節炎、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、斑状乾癬、滴状(gutatte)乾癬、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、逆型乾癬、乾癬性紅皮症、脂漏性乾癬及び爪乾癬などの乾癬、接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、X連鎖性高IgM症候群、慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹(慢性自己免疫性蕁麻疹を含む)などの蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、全身性硬化症などの硬化症、多発性硬化症(MS)(スピノオプティカルMS、原発性進行性MS(PPMS)及び再発寛解型MS(RRMS)など)、進行性全身性硬化症、播種性硬化症、及び運動失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎(潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、潰瘍性大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、ポリープ性大腸炎、壊死性腸炎、貫壁性大腸炎など)、及び自己免疫性炎症性腸疾患)、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群(成人又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む)、髄膜炎、ブドウ膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液障害、リウマチ性脊椎炎、突発難聴、アナフィラキシーならびにアレルギー性及びアトピー性鼻炎などのIgE媒介疾患、ラスムッセン脳炎ならびに辺縁系及び/又は脳幹脳炎などの脳炎、ブドウ膜炎(前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、又は自己免疫性ブドウ膜炎など)、慢性又は急性糸球体腎炎などのネフローゼ症候群を伴う又は伴わない糸球体腎炎(GN)(原発性GN、免疫媒介性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GN又は特発性膜性腎症など)、I型及びII型を含む膜性増殖性(membranoproliferative)又は膜性増殖性(membranous proliferative)GN(MPGN)、及び急速進行性GN、アレルギー状態、アレルギー反応、アレルギー性又はアトピー性湿疹を含む湿疹、喘息(気管支喘息(asthma bronchiale)、気管支喘息(bronchial asthma)、及び自己免疫性喘息など)、T細胞の浸潤及び慢性炎症反応を伴う状態、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)(SLE)又は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)(皮膚SLEなど)、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児エリテマトーデス症候群(NLE)、播種性紅斑性狼瘡、狼瘡(腎炎、脳炎、小児、非腎、腎外、円板状、脱毛症を含む)、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症型(I型)糖尿病、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球が媒介する急性及び遅延型過敏症に関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、リンパ腫様肉芽腫症を含む肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(大血管血管炎(リウマチ性多発筋痛症及び巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中血管血管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、CNS血管炎、壊死性、皮膚、又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びチャーグ・ストラウス血管炎又は症候群(CSS)などのANCA関連血管炎を含む)を含む複数の血管炎、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイヤモンドブラックファン貧血、溶血性貧血又は自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫溶血性貧血、悪性貧血(pernicious anemia)(悪性貧血(anemia perniciosa))、アジソン病、真正赤血球性貧血又は赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、多臓器損傷症候群(敗血症、外傷又は出血に続発するものなど)、抗原抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベチェット病又はベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、水疱性類天疱瘡及び皮膚類天疱瘡などの類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜性天疱瘡、及び紅斑性天疱瘡を含む)自己免疫性多内分泌症、ライター病又は症候群、免疫複合腎炎、抗体媒介腎炎、視神経脊髄炎、多発神経障害、IgM多発神経障害又はIgM媒介性神経障害などの慢性神経障害、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少症(慢性又は急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)など)を含む血小板減少症(例えば、心筋梗塞患者で発症)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌疾患(自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、又は亜急性甲状腺炎などの甲状腺炎を含む)、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性内分泌障害症候群)などの多腺性症候群、ランバート・イートン筋無力症候群又はイートン・ランバート症候群などの神経腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、スティッフマン症候群又はスティッフパーソン症候群、アレルギー性脳脊髄炎(allergic encephalomyelitis)又はアレルギー性脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)などの脳脊髄炎、重症筋無力症(胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性、神経性筋強直症、オプソクローヌス又はオプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、及び感覚神経障害など)多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線形IgA皮膚症、原発性胆汁性肝硬変、肺硬変、自己免疫性腸症症候群、セリアック(Celiac)病、セリアック(Coeliac)病、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリッグ病)、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患(自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)など)、難治性又は再発性多発性軟骨炎などの多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増加症、モノクローナルB細胞リンパ球増加症を含む原発性リンパ球増加症(例えば、良性の単クローン性ガンマグロブリン血症及び意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、MGUS)、末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病(てんかん、片頭痛、不整脈、筋肉障害、難聴、失明、周期性麻痺、及びCNSのチャネル病など)、自閉症、炎症性ミオパシー、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、ブドウ膜網膜炎、絨毛網膜炎、線維筋痛症、多発性内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期認知症、自己免疫性脱髄性疾患などの脱髄性疾患、糖尿病性腎症、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、及び毛細血管拡張症)、男性及び女性の自己免疫不妊、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性流産、農夫肺、多形紅斑、心臓切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、アレルギー性肺胞炎及び線維化性肺胞炎などの肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、臓器又は組織の線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持続性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性顔面炎(eosinophilic faciitis)、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症(flariasis)、毛様体炎(慢性毛様体炎、異時性(heterochronic)毛様体炎、虹彩毛様体炎、又はフックス毛様体炎など)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、エコーウイルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン・バーウイルス感染症、流行性耳下腺炎、エヴァン症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞性多発筋痛、内分泌性眼症、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化腎症、良性家族性及び虚血再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、精子形成不全(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、アレルギー性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマン・リッチ病、感覚性難聴、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症、地域性回腸炎、白血球減少症、伝染性単球増加症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感性眼炎、肉芽腫性精巣炎、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルベイン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタイン・バーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、リーシュマニアなどの寄生虫病、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤、白血球接着不全症、サイトカイン及びTリンパ球が媒介する急性及び遅延型過敏症に関連する免疫応答、白血球吸収を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多内分泌症、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感神経性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、インスリン炎、多内分泌不全、末梢神経障害、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、前頭、上顎、又は蝶形骨洞炎、好酸球関連障害(好酸球増加症、肺浸潤性好酸球増加症、好酸球増加筋痛症候群、ロフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギローマ、又は好酸球含有肉芽腫など)、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎、多内分泌自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜
、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブルートン症候群、乳児の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、膠原病に関連する自己免疫疾患、リウマチ、神経疾患、虚血性再灌流障害、血圧反応の低下、血管機能不全、血管拡張症(antgiectasis)、組織損傷、心血管虚血、痛覚過敏、脳虚血、及び血管新生に伴う疾患、アレルギー性過敏障害、糸球体腎炎、再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流障害、急性炎症性成分を伴う皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性障害、眼及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺硬変、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈障害、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症が挙げられる。自己免疫疾患の他の例は、本明細書の他の箇所に開示されている場合がある。
【0061】
本明細書で使用される「癌」という用語は、異常細胞の急速で制御されない成長を特徴とする疾患として定義される。癌細胞は局所的に、又は血流及びリンパ系を介して体の他の部位に拡がり得る。様々な癌の例としては、限定されないが、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、膀胱癌、腎癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌などが含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「第2の薬剤と組み合わせた第1の薬剤」という語句における「組み合わせ」は、例えば同じ薬学的に許容される担体に溶解又は混合され得る第1の薬剤と第2の薬剤の共投与、又は第1の薬剤とそれに続く第2の薬剤の投与、又は第2の薬剤とそれに続く第1の薬剤の投与を含む。
【0063】
「併用治療処置」という語句における「併用」という用語は、第2の薬剤の存在下で薬剤を投与することを含む。併用治療処置方法は、第1の薬剤、第2の薬剤、第3の薬剤、又はさらなる薬剤が共投与される方法を含む。併用治療処置は、第2の薬剤又はさらなる薬剤の存在下で第1の薬剤又はさらなる薬剤を投与する方法も含み、ここで、第2の薬剤又はさらなる薬剤は、例えば、先に投与されていてもよい。併用治療処置方法は、異なる行為者によって段階的に実行され得る。例えば、第1の薬剤(及びさらなる薬剤)が、第2の薬剤(及びさらなる薬剤)の存在下での投与後である限りにおいて、ある行為者は対象に第1の薬剤を投与し得、第2の行為者は対象に第2の薬剤を投与し得、投与ステップは同時に、又はほぼ同時に、又は離れた時間に実行され得る。行為者と対象は同じ実体(人間など)であり得る。
【0064】
本明細書で使用される「組み合わせ療法」という用語は、2つ以上の療法、2つ以上の治療剤、又は少なくとも1つの治療剤と、少なくとも1つの放射線、免疫療法及び化学療法などの治療方法との組み合わせの投与を指す。
【0065】
「疾患」は、動物が恒常性を維持し得ず、疾患が改善されなければ、動物の健康が悪化し続ける動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が障害の非存在下よりも不良な健康状態である。処置せずに放置しても、障害は、動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こすわけではない。
【0066】
疾患又は障害の徴候又は症候の重症度、患者がこのような徴候又は症候を経験する頻度、又はそれらの両方が軽減される場合、疾患又は障害は、「緩和される」。
【0067】
「ヒト微生物叢」という用語は、微生物の全体、その遺伝的要素(ゲノム)、及び人体における環境相互作用を指す。
【0068】
「免疫応答」という用語は、サイトカイン産生の刺激、免疫細胞の増殖の刺激、免疫細胞の活性化の刺激、又は免疫細胞の溶解活性の刺激を含む、細胞性及び体液性免疫応答の両方を包含する。本発明の方法により刺激される免疫応答の例は、サイトカインの分泌、NK細胞の活性化、B細胞、T細胞、マクロファージ、単球、及びその他の免疫細胞の増殖、ならびにその他の免疫応答である。細胞性免疫応答を検出するために、例えば、抗原を発現する細胞に対するT細胞エフェクター活性は、標準アッセイ、例えば、標的細胞死滅、マクロファージ活性化、B細胞活性化又はリンホカイン産生を使用して検出することができる。体液性応答は、ELISAなどの当技術分野で公知の方法を使用して、例えば抗原特異的抗体の出現又は力価の増加を検出することにより測定することができる。抗体応答の進行は、初期IgM応答から後のIgG応答への切り替えなどのクラス切り替えを測定することで判断できる。
【0069】
本明細書で使用される「阻害する」という用語は、活性又は機能を、コントロール値と比べて少なくとも約10%抑制又は遮断することを意味する。例として、活性は、コントロール値と比較して50%、75%、又は95%以上抑制又は遮断される。
【0070】
本明細書で使用する「乾癬」という用語には、少なくとも7種類の乾癬:尋常性乾癬(plaque psoriasis)、滴状乾癬、逆型乾癬、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、脂漏性乾癬、乾癬性紅皮症、爪乾癬、及び乾癬性関節炎、が含まれる。
【0071】
「制御性T細胞」又は「Treg」という用語は、異常又は過剰な免疫応答を抑制し、免疫寛容における役割を果たすT細胞を指す。制御性T細胞は、典型的には転写因子Foxp3陽性CD4陽性T細胞である。本発明の制御性T細胞には、IL-10産生CD4陽性T細胞である転写因子Foxp3陰性制御性T細胞も含まれる。
【0072】
「制御性T細胞の増殖又は蓄積を誘導する」という用語は、未成熟T細胞の制御性T細胞への分化を誘導する効果を指し、この分化は制御性T細胞の増殖及び/又は蓄積をもたらす。さらに、「制御性T細胞の増殖又は蓄積を誘導する」という意味には、in vivo効果、in vitro効果、及びex vivo効果が含まれる。
【0073】
本明細書で使用される「ブドウ膜炎」という用語は、ブドウ膜、又は眼の中間層だけでなく、水晶体、網膜、視神経、及び硝子体腔にも影響を及ぼし得る眼の炎症を指す。ブドウ膜炎(Uveitis、you-vee-EYE-tisと発音する)は、虹彩、毛様体、脈絡膜を含む目の中間層であるブドウ膜の炎症であり得る。ブドウ膜炎は、(1)自己免疫障害(炎症によって誘発され、網膜又は交差反応性抗原に対する、異常なT細胞媒介反応による)、(2)感染、(3)外傷によって引き起こされるか、又は(4)特発性であり得る(原因不明)。ブドウ膜炎のタイプは、ブドウ膜のどこで炎症が起こるかによって分類される。前部ブドウ膜炎は、虹彩(虹彩炎)又は虹彩及び毛様体の炎症である。中間部ブドウ膜炎は毛様体の炎症である。後部ブドウ膜炎は脈絡膜の炎症である。びまん性ブドウ膜炎(全ブドウ膜炎とも呼ばれる)は、ブドウ膜の全ての領域の炎症である。ブドウ膜炎には、眼全体(全ブドウ膜炎)又は眼の一部(前部、中間部、又は後部)が関与し得る。ブドウ膜炎の例としては、限定されないが、前部ブドウ膜炎(虹彩炎、虹彩毛様体炎、及び前部毛様体炎(anterior cylitis)を含む)、中間部ブドウ膜炎(毛様体扁平部炎、後部毛様体炎、及び白内障を含む)、後部ブドウ膜炎(限局性、多病巣性又はびまん性脈絡膜炎、脈絡網膜炎、網脈絡膜炎、網膜炎、及び神経網膜炎)、全ブドウ膜炎、急性ブドウ膜炎、再発ブドウ膜炎及び慢性ブドウ膜炎が挙げられる。一実施形態では、ブドウ膜炎は非感染性ブドウ膜炎である。非感染性ブドウ膜炎の原因の例としては、限定されないが、全身性自己免疫障害(例えば、ベーチェット病及びフォークト・小柳・原田(VKH)病など);外傷及び手術が挙げられる。一例では、非感染性ブドウ膜炎は特発性非感染性ブドウ膜炎である。
【0074】
「耐性」及び「免疫耐性」という用語は、免疫系が抗原を攻撃しないプロセスを指す。
【0075】
「耐性誘導」又は「耐性の誘導」という用語は、免疫系を操作することにより外部抗原に対する耐性を作り出すことができるプロセスを指す。
【0076】
「処置」、「処置すること」などの用語は、本明細書では一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、疾患もしくは障害、又はその症候を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であり得、及び/又は、疾患もしくは障害及び/又は疾患もしくは障害に起因する有害効果を部分的もしくは完全に治癒するという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「処置」という用語は、対象における疾患又は障害の任意の処置を包含し、(a)疾患又は障害の素因を有し得る対象において起こる疾患又は障害の予防;(b)疾患又は障害の阻害、すなわち、その進行の阻止、又は(c)疾患又は障害の軽減、すなわち、疾患又は障害の退縮を引き起こすこと、を含む。
【0077】
「有効量」及び「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的結果を提供するための薬剤の十分な量を指す。その結果は、疾患もしくは障害の徴候、症候もしくは原因の軽減及び/又は緩和、又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。
【0078】
本明細書で使用される「白血病」という用語は、以下のタイプの白血病:骨髄増殖性腫瘍(MPN)、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、特発性/骨髄線維症(MF)、急性骨髄性白血病(AML)、及び小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)、の少なくとも1つを指し得る。「白血病」という用語はまた、一般に、血液形成組織の癌、又は血液癌も指し得る。
【0079】
「微生物叢」という用語は、集合的に、ヒトなどの高等生物に関連して見られる微生物全体を指す。
【0080】
「治療有効量」は、所定の状態及び投与レジメンのための治療効果を提供する量を指す。特に、「治療有効量」は、疾患もしくは障害の症候を予防、緩和もしくは改善し、又は処置される対象(これは、ヒト又は非ヒト動物であり得る)の生存を延長するために有効な量を意味する。
【0081】
本明細書で使用される「黄斑変性」という用語は、「湿潤」及び「乾燥」黄斑変性を含む黄斑変性のあらゆる形態を指す。加齢性黄斑変性症(AMD)には、乾燥(萎縮)型と湿潤(滲出)型の2種類がある。乾燥型のAMDは、AMD患者の約90パーセントに影響を及ぼし、通常、黄斑におけるドルーゼンと呼ばれる小さな黄色の沈着物の形成から始まる。ドルーゼンは通常、深刻な視力喪失を引き起こさないが、視力の歪みを引き起こし得る。しかしながら、まだ理解されていない理由により、ドルーゼンが黄斑を薄くして破壊し、緩徐に視力喪失を引き起こすことがある。湿潤型のAMDは、AMD患者の約10パーセントに発生する。これは、黄斑の下の異常な血管の成長によって引き起こされ、体液及び血液が漏出して滲出液を形成し得る。湿潤型のAMDは、典型的には、罹患した眼に重大な視力の問題を引き起こし、非常に急速に進行して永久的な中心視力の喪失を引き起こし得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの本発明の化合物と、他の化学的な成分及び実体、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤及び/又は賦形剤との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。当技術分野では、化合物を投与する複数の技術が存在し、限定されないが、静脈内投与、経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、眼投与、肺内投与及び局所投与が挙げられる。
【0083】
「薬学的に許容される」は、薬理学的/毒物学的観点から患者に許容される、及び組成、製剤、安定性、患者許容性及びバイオアベイラビリティに関する物理的/化学的観点から製薬化学者に許容される、特性及び/又は物質を指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明内で有用な化合物を、それがその目的の機能を果たし得るように患者内に又は患者に運搬又は輸送することに関与する、液体もしくは固体の充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒又は封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物又は担体を意味する。典型的には、このような構築物は、体のある器官又は部分から体の別の器官又は部分に運搬又は輸送される。各担体は、本発明内で有用な化合物を含む製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して有害なものではないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール及びグリセロールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;界面活性剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、本発明内で有用な化合物の活性と適合性であり、患者に生理学的に許容されるあらゆるコーティング、抗菌剤及び抗真菌剤ならびに吸収遅延剤などを含む。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。「薬学的に許容される担体」は、本発明内で有用な化合物の薬学的に許容される塩をさらに含み得る。本発明の実施に使用される医薬組成物に含まれ得る他のさらなる成分は当技術分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Genaro,Ed.,Mack Publishing Co.,1985,Easton,PA)に記載され、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
本明細書で使用される「新生児」という用語は、一般に、乳児又は若い哺乳類、例えばヒトを指す。
【0086】
「栄養組成物」という用語は、ヒトが消費するための食品製品、例えば飲物、飲料、バー、スナック、アイスクリーム、乳製品、例えば冷蔵の又は常温保存可能な乳製品、発酵乳製品、飲料、例えば乳性飲料、乳児用調製粉乳、成長期用ミルク、菓子製品、チョコレート、朝食用シリアルなどのシリアル製品、ソース、スープ、インスタント飲料、電子レンジもしくは従来型のオーブンで加熱後に消費するための冷凍製品、調理済み製品、ファーストフード又は栄養製剤を指し得る。
【0087】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、in vitro又はin situにかかわらず、本明細書に記載される方法に適した任意の動物又はその細胞を指す。患者、対象、又は個体は、ヒト又は非ヒト動物であり得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「容器」という用語は、医薬組成物を保持するための任意の入れ物を含む。例えば、一実施形態では、容器は、医薬組成物を含有するパッケージである。他の実施形態では、容器は、医薬組成物を含有するパッケージではない、すなわち、容器は、パッケージされた医薬組成物又はパッケージされていない医薬組成物と、医薬組成物の使用説明書とを含有する、箱又はバイアルなどの入れ物である。また、パッケージ技術は、当技術分野で周知である。医薬組成物の使用説明書は、医薬組成物を含有するパッケージに含まれ得、そのような説明書は、パッケージされた製品との高い機能的関係を形成することを理解すべきである。しかしながら、説明書は、その目的の機能を果たす(例えば、対象における疾患を治療又は予防する)化合物の能力に関する情報を含有し得ることを理解すべきである。
【0089】
本明細書で使用される「説明資料」という用語は、本明細書に列挙される様々な疾患又は障害を同定又は緩和又は処置するためのキット中の本発明の成分の有用性を伝達するために使用され得る刊行物、記録、ダイアグラム又は任意の他の表現媒体を含む。任意選択により又は代替的に、説明資料は、対象の細胞又は組織における疾患又は障害を同定又は緩和する1つ以上の方法を記載し得る。キットの説明資料は、例えば、本発明の組成物を含有する容器に添付され得るか、又は本発明の組成物を含有する容器と一緒に送付され得る。代替的に、受取人が説明資料及び組成物を協調的に使用することを意図して、説明資料は、容器と別に送付され得る。
【0090】
本明細書で使用される「リンパ腫」という用語は、以下のタイプのリンパ腫:活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、ホジキンリンパ腫(HL)、及び原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)の少なくとも1つを指し得る。
【0091】
「短鎖脂肪酸」(SCFA)は、典型的には、長鎖脂肪酸の脂肪族尾部よりも短い脂肪族尾部を有する脂肪酸である。本明細書で使用する場合、短鎖脂肪酸という用語はまた、脂肪酸の塩又はエステル、特に薬学的に許容される脂肪酸の塩及びエステル(例えば、酪酸ナトリウム、酪酸アルギニン)も指し得る。
【0092】
本明細書で使用する場合、「免疫応答を刺激する」という用語は、新しい免疫応答又は既存の免疫応答の刺激を刺激、誘発、増加、増強、持続、及び/又は改善することを含む。したがって、免疫療法としての「免疫応答の刺激」とは、治療効果の増強、生存時間の延長、癌性腫瘍の進行の遅延もしくは癌性腫瘍のサイズの縮小、腫瘍もしくは転移の拡散の防止、処置された癌の再発の予防又は遅延、以前の処置で死滅されなかった癌細胞の排除、潜在的な癌細胞の標的化、又は癌に関連するウイルスに由来する抗原の標的化を指す。本発明の方法において、免疫療法剤及び式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)から選択される化合物は、許容できない毒性を有することなく有効な免疫応答を生成するのに十分な用量で、対象個体の免疫応答を刺激するのに有効な量で投与される。当業者によって理解されるように、免疫応答の大きさ及びその応答の維持は、潜在的な治療的又は予防的利益を有すると認識される様々な程度を有し得る。
【0093】
本明細書で使用される「血管炎」という用語は、以下のタイプ:巨細胞性動脈炎、高安病、チャーグ・ストラウス症候群、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、本態性クリオグロブリン血症性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、川崎病、結節性多発動脈炎、抗好中球細胞質抗体血管炎、壊死性及び半月体形成性(cresentic)糸球体腎炎、の血管炎の少なくとも1つを指し得る。
【0094】
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様は、範囲の形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上及び簡潔性のためのものであると理解されるべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値全てを具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0095】
説明
本発明は、短鎖脂肪酸(SCFA)が、IL-18、TLR3、IFN-γ、TNFα、TGF-β、MyD88、PI3K/Akt、JAK/STAT、Smad2/3、Smad4、IL-10、Notch、ヘッジホッグ、Wnt(ベータカテニン)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9及び10、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、結節性及びNF-κBシグナル伝達を含むがこれらに限定されない、複数の細胞シグナル伝達タンパク質のモジュレーターとして機能するという発見に部分的に基づくものである。種々の実施形態では、SCFAにより調節されるシグナル伝達タンパク質自体が、炎症、免疫、増殖、分化、アポトーシス、腫瘍形成、DNAの転写、サイトカイン産生、細胞生存、血管形成、線維形成、ならびにストレス、サイトカイン、フリーラジカル、重金属、紫外線照射などの刺激に対する細胞応答を含むがこれらに限定されない、生物学的経路又はプロセスを調節する。
【0096】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのSCFAを含む組成物、及びIL-18、TLR3、IFN-γ、TNFα、TGF-β、MyD88、PI3K/Akt、JAK/STAT、Smad2/3、Smad4又はIL-10シグナル伝達のうち少なくとも1つのレベルの上昇又は異常発現を特徴とする医学的疾患又は障害を処置又は予防するための使用方法に関する。一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのSCFAを含む組成物、及びNF-κBシグナル伝達の低下又は異常発現を特徴とする医学的疾患又は障害を処置又は予防するための使用方法に関する。
【0097】
組成物
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの短鎖脂肪酸(SCFA)、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、それらの誘導体、SCFA部分又はそれらの組み合わせを含む組成物を提供する。
【0098】
一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物を含む。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分としては、限定されないが、酢酸、酪酸(BA)、C3-C12脂肪酸、C3-C10脂肪酸、C3-C8脂肪酸、メトキシ酢酸、バルプロ酸(VPA)、プロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、エトキシ酢酸、ギ酸、イソ酪酸、トリブチリン、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート、例えばフェニルブチレート、イソブチレート、ピバロイルオキシメチルブチレート、モノアセトングルコース3-ブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸、ドデカン酸、(4R)-4-ヒドロキシペンタン酸、2-エチルヒドルアクリル酸、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタノエート、2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2-メチルブタ-2-エン酸、2-オキソブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-メチルブタ-2-エン酸、ブテン酸、メチル酪酸、ジメチル酪酸、ペンタジエン酸、ペンテン酸、ピバリン酸、プロピン酸及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は、少なくとも12個の炭素原子、少なくとも11個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子、少なくとも9個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも7個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも5個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、及び少なくとも2個の炭素原子を有する化合物又は構造を含む。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は、13個未満の炭素原子、12個未満の炭素原子、11個未満の炭素原子、10個未満の炭素原子、9個未満の炭素原子、8個未満の炭素原子、又は7個未満の炭素原子を有する化合物又は構造を含む。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は分岐脂肪酸ではない。一実施形態では、SCFA又はSCFA部分は分岐脂肪酸である。
【0099】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFAの前駆体又はその部分を含む少なくとも1つの化合物を含む。一実施形態では、前駆体又はその部分は、限定されないが、植物細胞壁多糖類、食物非デンプン多糖類(NSP)、乳酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、1,2-プロペンドール(propenedol)、トリパミン(trypamine)、インドール、インドール-3-アセテート、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0100】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFAの生合成前駆体又はその部分を含む少なくとも1つの化合物を含む。一実施形態では、生合成前駆体又はその部分は、限定されないが、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)活性化因子、ビタミンD、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0101】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFAの塩又はその誘導体を含む。例えば、酪酸の塩は、酪酸ナトリウム、酪酸マグネシウム又は酪酸カルシウムのうち1つ以上であり得る。一実施形態では、組成物は、1つ以上の酪酸マグネシウム及び酪酸カルシウムを含む。
【0102】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFAの誘導体を含む。一実施形態では、誘導体は、少なくとも1つのさらなる部分に連結された少なくとも1つのSCFA部分を含む。一実施形態では、誘導体は、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)部分に連結された少なくとも1つのSCFA部分を含む。一実施形態では、少なくとも1つのPEG部分に連結された少なくとも1つのSCFA部分は、低pH条件下で加水分解して、少なくとも1つのSCFA分子及び少なくとも1つのPEG分子を生じる。
【0103】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFA及び/又はその誘導体の組み合わせを含む。一実施形態では、組成物は、組成物の各化合物もしくは全ての化合物につき、少なくとも10mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、又はそれを超える量で調製される。
【0104】
例えば、O、S、N、メチル、エチル、ハロゲン、及び化合物の治療活性に干渉しない他の基などの炭素鎖上の置換基を有する、SCFAの誘導体もまた、本発明の組成物を形成するために使用され得る。一実施形態では、本発明の化合物は、O、S、N、メチル、エチル、ハロゲン、及び化合物の治療活性を妨害しない他の基などの、少なくとも1つのさらなる部分に結合した少なくとも1つのSCFAを含む。
【0105】
いくつかの場合には、本発明のSCFAはペグ化することができる。ポリエチレングリコール(PEG)は、主にPEGが生体適合性、非毒性、非免疫原性、及び水溶性のポリマーであるため、生体材料、バイオテクノロジー、医療において広く使用されている(Zhao and Harris,ACS Symposium Series 680:458-72,1997)。薬物送達の分野において、PEG誘導体は、免疫原性、タンパク質分解及び腎臓クリアランスを低下させ、溶解度を高めるために、タンパク質への共有結合(すなわち、「PEG化」)において広く使用されている(Zalipsky,Adv.Drug Del.Rev.16:157-82,1995)。同様に、PEGは、溶解性を高め、毒性を低減し、生体内分布を変化させるために、低分子量の比較的疎水性の薬物に結合されている。典型的には、PEG化薬は溶液として注射される。しかしながら、それらは経口又は別の経路で投与され得る。
【0106】
密接に関連する用途は、分解性の可溶性薬物担体の設計に使用されるのと同じ化学物質の多くが分解性ゲルの設計にも使用できるため、薬物送達における使用のための架橋分解性PEGネットワーク又は製剤の合成である(Sawhney et al.,Macromolecules 26:581-87,1993)。また、2つの相補的なポリマーの溶液を混合することにより、高分子間複合体を形成できることも知られている。そのような複合体は、一般に、関与するポリマー間の静電相互作用(ポリアニオン-ポリカチオン)及び/又は水素結合(ポリ酸-ポリ塩基)、及び/又は水性環境におけるポリマー間の疎水性相互作用によって安定化される(Krupers et al.,Eur.Polym J.32:785-790,1996)。例えば、ポリアクリル酸(PAAc)及びポリエチレンオキシド(PEO)の溶液を適切な条件下で混合すると、主に水素結合に基づく複合体が形成される。生理的条件でのこれらの複合体の解離は、遊離薬物(すなわち、非PEG化)の送達に使用されてきた。さらに、相補的なポリマーの複合体は、ホモポリマー及びコポリマーの両方から形成されている。
【0107】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFAの前駆体を単独で、又は1つ以上のSCFAと組み合わせて含む。SCFAの前駆体としては、限定されないが、ギ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、1,2-プロペンドール、トリパミン、インドール、及びインドール-3-アセテートが挙げられる。
【0108】
一実施形態では、本発明の組成物は、SCFA生合成の前駆体を単独で、又は1つ以上のSCFAと組み合わせて含む。SCFA生合成の前駆体としては、限定されないが、ギ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)活性化因子、及びビタミンDが挙げられる。
【0109】
SCFAは制御性T(Treg)細胞機能を刺激し、これは、その抗炎症特性の一部を説明する。アセチルCoAカルボキシラーゼの阻害剤もTreg細胞機能を促進することを考えると、一実施形態では、組成物は、ビオチン又はその天然又は化学的に合成された類似体(アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤であるもの)単独又は1つ以上の他のSCFAとの組み合わせを含むがこれらに限定されない、アセチルCoAカルボキシラーゼの阻害剤を含んで、Treg機能を刺激する。
【0110】
様々な実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む化合物、又は本発明のSCFA部分を含む化合物は、特定の疾患又は障害のため、1つ以上のさらなる治療剤などの1つ以上の化合物と組み合わせてもよい。一実施形態では、本発明の1つ以上のSCFAは、1つ以上のさらなる治療剤と同じ組成物中にあってもよい。様々な実施形態では、組成物は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個又は10個を超える、追加の治療剤を含み得る。本発明の組成物に含まれ得る例示的なさらなる治療剤及び/又は化合物は、本明細書の他の箇所で詳細に議論される。
【0111】
方法
本発明は、治療有効量の本発明の組成物を前記対象に投与することにより、それを必要とする対象における哺乳動物疾患を処置又は予防する方法を提供する。
【0112】
組成物が治療(有害作用の軽減又は予防)に有用な対象疾患の一般的な例としては、自己免疫疾患、アレルギー疾患、感染性疾患、及び臓器移植における拒絶反応である、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、スプルー、自己免疫性関節炎、リウマチ性関節炎、I型糖尿病、多発性硬化症、骨髄移植に続く移植片対宿主拒絶反応、変形性関節症、若年性慢性関節炎、ライム病関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、乾癬、強皮症皮膚炎(dermatitis scleroderma)、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主拒絶反応、臓器移植に関連した急性又は慢性の免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病(バセドゥ病)、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーライン紫斑病、腎臓における顕微鏡的血管炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症候群、悪液質、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変症、溶血性貧血、多腺性機能不全症候群I型及び多腺性機能不全症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、クラミジア感染症、エルシニア・サルモネラ感染関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/動脈硬化、アレルギー性大腸炎、アトピー性アレルギー、食物アレルギー(ピーナッツアレルギー、ナッツアレルギー、卵アレルギー、乳アレルギー、大豆アレルギー、小麦アレルギー、魚介アレルギー、貝アレルギー又はゴマアレルギーなど)、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス試験陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋肉脊髄炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全関連疾患、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、線維性肺疾患、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺炎、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織関連疾患肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺(1ung)疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺炎、痛風性関節炎、自己免疫性低血糖、黒色表皮腫によるB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に関連した急性免疫疾患、臓器移植に関連した慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎疾患NOS、糸球体腎炎、腎臓における顕微鏡的血管炎、円板状エリテマトーデス、特発性男子不妊症又はNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプに関する)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ様脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑、アレルギー性鼻炎(花粉アレルギー)、アナフィラキシー、ペットアレルギー、ラテックスアレルギー、薬物アレルギー、アレルギー性鼻炎結膜炎、好酸球性食道炎、好酸球増加症候群、好酸球性胃腸炎、皮膚エリテマトーデス、好酸球性食道炎、好酸球増加症候群、好酸球性胃腸炎、ならびに下痢などが挙げられる。
【0113】
一実施形態では、本発明は、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む少なくとも1つの組成物を、任意選択により少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、対象に投与することを含む、対象における少なくとも1つの疾患又は障害の処置又は予防のための方法を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の投与された組成物は、対象において無病日数を増加させ得るか、疾患又は障害の重症度を低減し得るか、疾患又は障害を発症するリスクを低減し得るか、疾患又は障害の再発のリスクを低減し得るか、又はそれらの組み合わせである。本発明の投与された組成物は、対象の無病日数を、処置を受けていない対象と比較して、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%又はそれを超えて増加させることができる。本発明の投与された組成物は、対象の疾患又は障害の重症度を、処置を受けていない対象と比較して、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%又はそれを超えて減少させることができる。本発明の投与された組成物は、対象の疾患又は障害の発症リスクを、処置を受けていない対象と比較して、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%又はそれを超えて減少させることができる。本発明の投与された組成物は、対象の疾患又は障害の再発リスクを、処置を受けていない対象と比較して、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%又はそれを超えて減少させることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、処置、予防又は改善することができる疾患及び障害としては、限定されないが、炎症性疾患及び様々な癌疾患が挙げられる。いくつかの実施形態では、処置又は改善することができる炎症性疾患及び障害としては、限定されないが、喘息、関節炎、アレルギー性鼻炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患、クローン病、新生児のCセクション分娩に伴うアレルギー性又は自己免疫性疾患又は障害、ブドウ膜炎、及び血管炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、処置又は改善することができる癌性疾患及び障害としては、限定されないが、白血病及びリンパ腫が挙げられる。
【0116】
例示的な疾患及び障害を処置する方法を以下に提供する。
【0117】
皮膚障害
本発明は、SCFAが皮膚障害の処置に有効であるという発見に部分的に基づくものである。一実施形態では、少なくとも1つのSCFAと少なくとも1つの他の皮膚障害処置との組み合わせは、皮膚障害の処置のための治療的アプローチとして有効であり得る。
【0118】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFAを含む組成物を、任意選択により、少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、皮膚疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明の方法を使用して処置され得る皮膚疾患及び障害としては、限定されないが、乾癬、尋常性乾癬(plaque psoriasis)、滴状乾癬、逆型乾癬、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、脂漏性乾癬、乾癬性紅皮症、爪乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)発疹、強皮症(全身性硬化症)、糖尿病関連の皮膚状態、関節リウマチ及び関連する皮膚発疹(リウマチ性血管炎)、黒色腫、白斑、湿疹(アトピー性皮膚炎)、異汗性湿疹、酒さ、蕁麻疹、膿痂疹、蜂巣炎、接触皮膚炎、口内炎、ざ瘡、扁平苔癬、日光角化症、尋常性魚鱗癬、皮膚筋炎、類天疱瘡が挙げられる。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFAを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、皮膚疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。
【0119】
一実施形態では、皮膚障害に罹患している対象は、ヒトである。一実施形態では、皮膚障害に罹患している対象は、非ヒト動物である。
【0120】
一実施形態では、本発明は、皮膚障害の処置のための治療剤としての使用のための少なくとも1つのSCFA及び少なくとも1つの第2の化合物を含む組成物に関する。一実施態様では、SCFAは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、トリブチリン、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸及びドデカン酸のうち1つ以上を含む。一実施形態では、第2の化合物は、PDE4阻害剤、抗炎症性化合物、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、免疫抑制剤、生物学的薬剤、及びCox-2阻害剤のうち1つ以上を含む。
【0121】
一実施形態では、皮膚障害を処置する方法における使用のための組成物は、900mgのブチレート、100mgのプロピオネート、10mgのアプレミラスト、10mgのマグネシウム、及び50IUのビタミンD3を含む。
【0122】
一実施形態では、血管炎の処置のための例示的な方法は、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1g、少なくとも2g、少なくとも3g、少なくとも4g、少なくとも5g、少なくとも6g、又は6gを超える、少なくとも1つのSCFAの1日経口用量を、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、又は1日3回より多く、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、又は6か月超、にわたって投与することを含む。
【0123】
一実施形態では、皮膚障害を処置する方法における使用のための例示的な毎日の経口投与量は、3600mgのブチレート、400mgのプロピオネート、40mgのマグネシウム、及び200IUのビタミンD3を含む。一実施形態では、皮膚障害を処置する方法における使用のための例示的な毎日の経口投与量は、1日に1~4回投与される、900~1800mgのブチレート、100~200mgのプロピオネート、10~20mgのマグネシウム、及び50~100IUのビタミンD3を含む。一実施形態では、組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は3週間を超えて、1日1~4回投与される。
【0124】
一実施形態では、皮膚障害を処置する方法における使用のための例示的な投与量は、1~2gのブチレート、100mgのプロピオネート、10~15mgのOtezla、10~20mgのマグネシウム、及び80~100IUのビタミンD3を含む。
【0125】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、腸溶コーティングされた徐放性及び持続放出カプセルである。
【0126】
一実施形態では、皮膚障害を処置する方法は、局所軟膏と組み合わせたSCFAの経口製剤の投与を含む。皮膚障害の処置における使用のための例示的な局所軟膏は、40%クロベタゾール(0.05%)クリーム、20%カルシポトリエン(ビタミンD、0.005%)クリーム、20%ビタミンE(0.5%)クリーム及び20%サリチル酸(10%)クリームを含み得る。皮膚障害の処置における使用のための代替の例示的な局所軟膏は、40%クロベタゾール(0.05%)クリーム、20%カルシポトリエン(ビタミンD、0.005%)クリーム、20%ビタミンE(0.5%)クリーム及び20%亜鉛クリームを含み得る。一実施形態では、局所軟膏において亜鉛をサリチル酸と併せて使用され得る。
【0127】
眼疾患
一実施形態では、本発明は、眼疾患又は障害の処置のための治療剤としての使用のためのSCFAを含む組成物に関する。一実施形態では、眼疾患又は障害は炎症性である。一実施形態では、炎症性眼疾患又は障害はブドウ膜炎である。一実施形態では、組成物は1つ以上のSCFAを含む。一実施態様では、SCFAは、限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、トリブチリン、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸及びドデカン酸のうち少なくとも1つを含む。一実施形態では、組成物は、本明細書に開示される化合物の1つ以上のマグネシウム塩及びカルシウム塩の1つ以上を含む。
【0128】
一実施形態では、本発明は、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む、製剤化された組成物を含む。一実施形態では、組成物は、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む、経口医薬品又は食品組成物を含む。
【0129】
一実施形態では、本発明は、SCFAを含む組成物を対象に投与することを含む、眼疾患又は障害を処置する方法に関する。一実施形態では、眼疾患又は障害は炎症性である。一実施形態では、炎症性眼障害はブドウ膜炎である。一実施形態では、組成物は経口的に投与される。一実施形態では、組成物は局所的に(例えば、クリームで)投与される。一実施形態では、眼障害に罹患している対象は、ヒトである。一実施形態では、眼疾患に罹患している対象は、非ヒト動物である。
【0130】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFAを含む組成物を、任意選択により、少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、眼疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明の方法を使用して処置され得る眼疾患及び障害としては、限定されないが、ブドウ膜炎、黄斑変性、加齢性黄斑変性(AMD)、手術後の炎症(例えば白内障手術)、眼のベーチェット病、シェーグレン症候群関連疾患又は障害(例えばドライアイ)、眼瞼炎関連疾患又は障害(例えば、酒さ)及び本明細書の他の箇所で詳細に議論されている他の疾患に関連する眼疾患又は障害が挙げられる。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、眼疾患又は障害に関連する疾患の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明は、SCFAが炎症性眼疾患又は障害を含む眼疾患又は障害の処置のための治療的アプローチとして有効であり得るという発見に部分的に基づくものである。
【0131】
一実施形態では、眼疾患又は障害の処置又は予防のための例示的な方法は、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1g、少なくとも2g、少なくとも3g、少なくとも4g、少なくとも5g、少なくとも6g、又は6gを超える、少なくとも1つのSCFAを含む組成物の1日経口用量を、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、又は1日3回より多く、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、又は6か月超、にわたって投与することを含む。
【0132】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、腸溶コーティングされた徐放性カプセルである。一実施形態では、例示的な1日経口用量は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の4~5gのブチレート及び1.5~2gのプロピオネートで、1日2回である。
【0133】
一実施形態では、眼疾患又は障害の処置又は予防のための例示的な方法は、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、少なくとも900nM、少なくとも1μM、少なくとも2μM、少なくとも3μM、少なくとも4μM、少なくとも5μM、少なくとも6μM、少なくとも7μM、少なくとも8μM、少なくとも9μM、少なくとも10μM、少なくとも15μM、少なくとも20μM、少なくとも25μM、少なくとも30μM、少なくとも35μM、少なくとも40μM、少なくとも45μM、少なくとも50μM、又は50μMを超える、少なくとも1つのSCFAを含む組成物の1日の局所用量を、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、又は1日3回より多く、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、又は6か月超、にわたって投与することを含む。
【0134】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、点眼製剤である。一実施形態では、20~30μMのブチレート及び10~20μMのプロピオネートを含有する例示的な点眼製剤は、潤滑剤と組み合わせて少なくとも1日2回投与することができる。
【0135】
一実施形態では、点眼剤は、SCFAの経口投与と組み合わせて、1日4回(疾患再燃の場合)、及び1日2回を最大数ヶ月投与すべきである。
【0136】
一実施形態では、眼疾患又は障害の処置又は予防のための方法は、SCFAと抗生物質及び/又はステロイドとの組み合わせを投与することを含む。例えば、感染性ブドウ膜炎の場合:最初の3~5日間は、抗生物質/ステロイド(医師により処方された用量)を含む点眼剤(又は眼注射)を使用し、次いでその後の2~3週間は、SCFA(20~30μM)及び抗生物質/ステロイド(処方された用量の半分)の混合物を含む点眼剤を使用し、次いでSCFA(20~30μM)のみを含む点眼剤を継続する。
【0137】
一実施形態では、眼疾患又は障害を処置又は予防する方法は、少なくとも1つのSCFAを含む組成物の組み合わせを投与することを含む。例えば、一実施形態では、方法は、経口投与用に製剤化された少なくとも1つのSCFAと点眼剤としての使用のために製剤化された少なくとも1つのSCFAとの組み合わせを含む。
【0138】
アレルギー、自己免疫及び喘息
本発明は、アレルギー、自己免疫疾患及び喘息の処置又は予防を企図している。本発明は、SCFAがアレルギー性、自己免疫及び/又は喘息の疾患又は障害の処置及び予防のための治療的アプローチとして有効であるという発見に部分的に基づくものである。
【0139】
一実施形態では、自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害は、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性鼻炎、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、喘息、自己免疫性内耳疾患(AIED)、軸索及び神経細胞神経障害(AMAN)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病(CD)、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、食物アレルギー、胃腸炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、妊娠性疱疹又は妊娠性類天疱瘡(PG)、低ガンマグロブリン血症、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、封入体筋炎(IBM)、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎(IC)、若年性関節炎、若年性リウマチ、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、ループス、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、混合性結合組織疾患(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ(PR)、PANDAS(連鎖球菌と関連する小児自己免疫精神神経障害)、傍腫瘍性小脳変性症(PCD)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、ペイリー・ロンベルグ症候群、毛様体扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血(PA)、POEMS症候群(多発神経障害、臓器腫大、内分泌障害、モノクローナル、免疫グロブリン血症、皮膚変化)、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、尋常性乾癬(plaque psoriasis)、滴状乾癬、逆型乾癬、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、脂漏性乾癬、乾癬性紅皮症、爪乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆(PRCA)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群(RLS)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ(RA)、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子&精巣自己免疫、全身硬直症候群(SPS)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎(SO)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ・ハント症候群(THS)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC)、未分化結合組織疾患(UCTD)、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症(GPA))の少なくとも1つである。
【0140】
一実施形態では、アレルギー性疾患としては、限定されないが、花粉症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、アナフィラキシーなどが挙げられる。症状には、赤目、かゆみを伴う発疹、鼻水、息切れ、又は炎症が含まれ得る。例示的なアレルギー性疾患としては、限定されないが、食物アレルギー(例えば、牛乳、大豆、卵、小麦、ピーナッツ、木の実、魚、貝類)、ラテックスアレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性湿疹、アナフィラキシー、昆虫毒、薬物アレルギー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。アレルギー疾患の有病率は、過去20年間で、世界中で増加している。
【0141】
一実施形態では、本発明は、Cセクションで分娩された新生児における自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害の予防に有用である。したがって、一態様における本発明は、新生児における自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害を発症するリスクを低減する有効な方法として、妊婦、母親、及び新生児を含む対象へのSCFAの投与を包含し、新生児における自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害の処置においても有効であり得る。
【0142】
一実施形態では、本発明は、Cセクションで分娩された新生児における自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害の処置及び予防のための治療剤としての使用のためのSCFAを含む組成物に関する。一実施形態では、組成物は1つ以上のSCFAを含む。一実施形態では、組成物は、1つ以上のSCFAの1つ以上の塩を含む。一実施形態では、組成物は、1つ以上のSCFAの1つ以上の生物学的に活性な誘導体を含む。一実施形態では、組成物は、1つ以上のSCFAの1つ以上の前駆体を含む。一実施形態では、組成物は、SCFA、その塩、その生物学的に活性な誘導体、又はその前駆体の1つ以上の組み合わせを含む。一実施形態では、組成物は、少なくとも1つの他の化合物と組み合わせた、SCFA、その塩、その生物学的に活性な誘導体、又はその前駆体の1つ以上の組み合わせを含む。一実施態様では、組成物は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、トリブチリン、N-アセチルブチレート(及び他の形態のブチレート)、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸及びドデカン酸のうち1つ以上を含む。一実施形態では、組成物は、妊娠後期の女性が使用できるカプセル(腸溶コーティング、徐放性)の形態である。別の実施形態では、組成物は、乳児用調製粉乳、搾乳した母乳、ベビーフードなどに添加することができる、SCFAの緩衝液の形態である。
【0143】
一実施形態では、本発明は、SCFAを含む組成物を1人以上の対象に投与することを含む、Cセクションで分娩された新生児における自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害を処置又は予防する方法に関する。一実施形態では、組成物を投与するステップは、新生児の出生前に行われ、組成物は妊婦に投与される。一実施形態では、妊婦は出産間近(妊娠の約8又は9ヶ月目)である。一実施形態では、SCFAは、2ヶ月以下の期間にわたって経口的に妊婦に投与される。一実施形態では、SCFAは、1日6錠の用量で1週間にわたって妊婦に投与され、続いて、Cセクションが実施されるまで1日3錠が投与される。一実施形態では、単一の錠剤の用量は、600mgの1つ以上のSCFA又はその塩である。一実施形態では、1つ以上のSCFAの塩が使用され、ここで、塩は1つ以上のSCFAのナトリウム、マグネシウム、及び/又はカルシウム塩である。一実施形態では、組成物を投与するステップは、新生児の出生後に行われ、ここで、組成物は、母親、新生児、又は母親と新生児の両方に投与される。一実施形態では、SCFAは、食物又は飲料との混合物の形態で新生児に投与される。一実施形態では、SCFAは、生後少なくとも最初の18~24ヶ月にわたって、乳児用調製粉乳又は食物への補給剤の形態で新生児に投与される。
【0144】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、任意選択により少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、新生児のCセクション分娩に関連する自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。一実施形態では、対象は妊婦である。一実施形態では、対象は胎児である。一実施形態では、対象は母親である。一実施形態では、対象は新生児である。本発明の方法を用いて処置し得る自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害としては、限定されないが、本明細書の他の箇所に記載された自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害が挙げられる。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害に関連する疾患の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。
【0145】
一実施形態では、自己免疫又はアレルギー性疾患又は障害を発症するリスクがあるか、すでに発症している対象は、ヒトである。一実施形態では、対象は非ヒト動物である。
【0146】
一実施形態では、自己免疫及び/又はアレルギー疾患又は障害の処置又は予防のための例示的な方法は、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1g、少なくとも2g、少なくとも3g、少なくとも4g、少なくとも5g、少なくとも6g、又は6gを超える、少なくとも1つのSCFAを含む組成物の1日経口用量を、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、又は1日3回より多く、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、又は6か月超、にわたって投与することを含む。
【0147】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、腸溶コーティングされた徐放性カプセルである。
【0148】
一実施形態では、組成物は、例えば、Cセクションで分娩された新生児を母乳哺育している母親に投与され得る。そのような実施形態では、健康な母親への典型的な1日経口用量は、最初の1ヶ月は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の1~2gのブチレート及び0.5~1gのプロピオネート及びアセテートで、1日3回、次いで、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、又は3か月を超える、さらなる期間にわたり、その用量の半分(例えば、0.5~1gのブチレート及び0.25~0.5gのプロピオネート及びアセテート)である。
【0149】
一実施形態では、組成物は、例えば、Cセクションで分娩された新生児に投与され得る。そのような実施形態では、例示的な1日経口用量は、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、少なくとも1日4回、少なくとも1日5回、少なくとも1日6回、少なくとも1日7回、又は1日7回よりも多い、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、又は1gを超える、少なくとも1つのSCFAである。そのような実施形態は、Cセクションで分娩された新生児への投与のために、例えば、乳児用調製粉乳などの栄養製剤への添加物として製剤化することができる。そのような実施形態において、Cセクションで分娩された新生児への投与のための例示的な1日経口用量は、分娩後最初の1ヶ月間の80~100mgのブチレート、20~30mgのアセテート及びプロピオネート、続く3~5ヶ月間の100~120mgのブチレート及び30~40mgのアセテート及びプロピオネートを含む。
【0150】
血管炎
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、任意選択により、少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、血管炎疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明の方法を使用して処置され得る血管炎疾患及び障害としては、限定されないが、リンパ管炎、リウマチ性多発筋痛、高安動脈炎、側頭動脈炎、バージャー病、川崎病、結節性多発動脈炎、ベーチェット症候群、多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症、皮膚血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、顕微鏡的多発肉芽腫症(polyannulomatosis)、皮膚小血管血管炎、多発血管炎を伴う肉芽腫症、ベーチェット病、及び巨細胞性動脈炎が挙げられる。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、血管炎に関連する疾患の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。
【0151】
様々な実施形態では、1つ以上のSCFA又はSCFA部分を含む化合物は、血管炎の処置のために、プレドニゾン又はメチルプレドニゾロン(メドロール)などの1つ以上のコルチコステロイド薬と組み合わせて使用され得る。他の実施形態では、1つ以上のSCFA又はSCFA部分を含む化合物は、炎症を引き起こす免疫系細胞の機能を低下させる1つ以上の細胞毒性薬又は免疫抑制薬と組み合わせて使用され得る。それらには、アザチオプリン(Azasan、Imuran)、メトトレキサート(Trexall、Rheumatrex)及びシクロホスファミドが含まれる。他の実施形態では、1つ以上のSCFA又はSCFA部分を含む化合物は、いくつかのタイプの血管炎を処置するために、リツキシマブ(リツキサン)と組み合わせて使用され得る。
【0152】
一実施形態では、血管炎の処置のための例示的な方法は、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1g、少なくとも2g、少なくとも3g、少なくとも4g、少なくとも5g、少なくとも6g、又は6gを超える、少なくとも1つのSCFAの1日経口用量を、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、又は1日3回より多く、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、又は6か月超、にわたって投与することを含む。
【0153】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、腸溶コーティングされた徐放性カプセルである。
【0154】
一実施形態では、血管炎を処置するための例示的な方法は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の5g~6gのブチレートの1日経口用量を、少なくとも1日3回、1ヶ月にわたって投与すること、続いて、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の3g~4gのブチレートの1日経口用量を、少なくとも1日2回、少なくとも2ヶ月にわたって投与することを含む。一実施形態では、ストレス誘発性疾患再燃を含むがこれに限定されない疾患再燃の処置のために、より高用量を使用することができる。
【0155】
一実施形態では、方法は、SCFAを含む組成物を他のステロイド及び/又は化学療法剤と組み合わせて投与することを含む。そのような実施形態では、他のステロイド及び/又は化学療法剤の投与量レベルは、ステロイド及び/又は化学療法剤単独での処置を受けている対象につき推奨される又は投与される投与量と比較して低減され得る。
【0156】
リンパ腫
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、任意選択により、少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、リンパ腫疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明の方法を使用して処置され得るリンパ腫疾患及び障害としては、限定されないが、活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、ホジキンリンパ腫(HL)、及び原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)が挙げられる。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、リンパ腫に関連する疾患の処置、阻害、予防、もしくは軽減、又は腫瘍再発の予防のための方法を提供する。
【0157】
種々の実施形態では、1つ以上のSCFA又はSCFA部分を含む化合物は、1つ以上の他のリンパ腫処置療法と組み合わせて使用され得る。様々な実施形態では、1つ以上の他のリンパ腫処置療法には、放射線療法、及び/又はリツキシマブ(抗CD20抗体)が含まれる。様々な実施形態では、本発明の組成物は、リンパ腫の別の処置の前、間、又は後に投与される。様々な実施形態では、リンパ腫の別の処置は、1つ以上の化学療法剤、抗増殖剤、抗腫瘍剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、及び/又は本明細書の他の箇所で開示される他の抗癌剤を含む。
【0158】
一実施形態では、この方法は、化学療法剤、細胞毒性/抗新生物剤及び抗血管新生剤を含む、他の抗リンパ腫又は抗腫瘍剤と組み合わせて、SCFAを含む組成物を投与することを含む。そのような実施形態では、他の抗リンパ腫又は抗腫瘍剤の投与量レベルは、他の抗リンパ腫又は抗腫瘍剤単独での処置を受けている対象につき推奨される又は投与される投与量と比較して低減され得る。
【0159】
白血病
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、任意選択により、少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、白血病疾患又は障害の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明の方法を使用して処置され得る白血病疾患及び障害としては、限定されないが、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、特発性/骨髄線維症(MF)、急性骨髄性白血病(AML)、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び血液癌が挙げられる。一実施態様では、本発明は、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、白血病に関連する疾患を治療、阻害、予防又は軽減するための、又は少なくとも1つのタイプの白血病の、再発の処置もしくは予防又は原発性腫瘍の発症の予防のための、又はMPNの白血病への進化を防ぐための方法を提供する。一実施形態では、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物は、白血病の処置又は予防のための少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法の投与の前、中、又は後に投与される。特定の実施形態では、白血病の再発の予防又は原発性腫瘍の発症の予防のための戦略の一部として、治療段階後に投与される。様々な実施形態では、本発明の組成物は、白血病の別の処置の前、間、又は後に投与される。様々な実施形態では、白血病の別の処置は、1つ以上の化学療法剤、抗増殖剤、抗腫瘍剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、及び/又は本明細書の他の箇所で開示される他の抗癌剤を含む。
【0160】
一実施形態では、処置は2つの段階を含む。導入と称される第1段階には、化学療法、例えば、アラビノシルシトシン(ara-C)及びダウノマイシンによる、任意選択によりクラドリビン(ロイスタチン、2-CdA)と組み合わせた処置が含まれ得る。寛解が達成された場合、導入は成功したとみなされる。強化と称される第2段階には、長期高用量ara-Cが含まれる。あるいは、同種又は自己幹細胞移植を使用してもよい。一実施形態では、本発明のSCFA治療化合物は、導入の前、間、及び/又は後に、対象に投与される。別の実施形態では、本発明のSCFA治療化合物は、強化の前、間、及び/又は後に、対象に投与される。一実施形態では、本発明のSCFA治療化合物は、導入の前、間、及び/又は後、ならびに強化の前、間、及び/又は後に、対象に投与される。
【0161】
様々な実施形態では、本発明の組成物は、白血病の再発を予防する、又は原発性腫瘍の発症を処置又は予防する方法の一部として投与される。一実施形態では、少なくとも1つの白血病は、JAK/STATシグナル伝達の構成的活性化に依存する。一実施形態では、少なくとも1つの白血病はBCR/ABL陰性である。一実施形態では、処置方法は、白血病の再発又はぶり返しを遅延又は予防するか、又は原発腫瘍の発症を予防する。一実施形態では、処置方法は、診断時に開始される標準処置の毒性プロファイルを低下させ、それにより長期的な生活の質を向上させる。
【0162】
一実施形態では、この方法は、化学療法剤、細胞毒性/抗新生物剤及び抗血管新生剤を含む、他の抗白血病又は抗腫瘍剤と組み合わせて、SCFAを含む組成物を投与することを含む。そのような実施形態では、他の抗白血病又は抗腫瘍剤の投与量レベルは、他の抗白血病又は抗腫瘍剤単独での処置を受けている対象につき推奨される又は投与される投与量と比較して低減され得る。
【0163】
免疫療法
一実施形態では、本発明は、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物と組み合わせて免疫治療剤を対象に投与することを含む、対象個体(個体)における免疫応答を刺激、誘発又は増強するための方法を提供する。一実施形態では、対象は、疾患を有するリスクがあるか、疾患を有すると診断されているか、以前に疾患の処置を受けたことがあるか、又は同時期に処置方法(例えば、本明細書に記載の本発明の組成物の使用を含まない処置方法)を用いて疾患の処置を受けているものであり得る。
【0164】
本発明は、少なくとも1つの短鎖脂肪酸(SCFA)の投与が、癌の免疫療法に関連する有害効果の処置又は予防のための治療的アプローチとして有効であり得るという発見に部分的に基づくものである。少なくとも1つのSCFAを含む組成物を使用する処置の治療効果は、免疫療法の利益を著しく妨げることはないが、癌の免疫療法に関連する望ましくない有害効果を処置又は予防すると予想される。したがって、一実施形態では、本発明は、癌の免疫療法に関連する有害効果の処置又は予防のための治療剤としての使用のための少なくとも1つのSCFAを含む組成物に関する。
【0165】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、任意選択により少なくとも1つのさらなる薬剤又は療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、癌免疫療法に関連する有害効果の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。本発明の方法を使用して処置され得る癌免疫療法に関連する有害効果としては、限定されないが、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、オンターゲット/オフ腫瘍認識、アナフィラキシー、移植片対宿主病(GVHD)、オフターゲット抗原認識、及びマクロファージ活性化症候群(MAS)が挙げられる。一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌免疫療法に関連する有害効果に関連する疾患の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。一実施形態では、有害効果には有害効果の組み合わせが含まれる。
【0166】
一実施形態では、癌の免疫療法に関連する副作用に罹患している対象は、ヒトである。一実施形態では、癌の免疫療法に関連する副作用に罹患している対象は、非ヒト動物である。
【0167】
一実施形態では、免疫応答を刺激するために、対象個体に(i)少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物、及び(ii)少なくとも1つの免疫療法剤を投与する。典型的には、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物及び免疫療法剤の投与は、ワクチンの形態であるか、又はワクチンレジメンで投与されるものであろう。少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物及び免疫療法剤は、ほぼ同時に対象個体に投与することができ、又は別々に及び/又は連続して投与することができる。
【0168】
本発明の方法に従って投与され得る免疫療法剤としては、限定されないが、1つ以上の癌抗原、癌に関連するウイルスに由来する1つ以上の抗原、及び抗癌抗体が挙げられる。
【0169】
癌抗原は、(a)悪性細胞上に見られ得る細胞表面抗原、(b)悪性細胞内に見られ得る抗原、又は(c)腫瘍細胞増殖のメディエーターであり得る。「癌抗原」という用語は、(i)腫瘍特異的抗原、(ii)腫瘍関連抗原、(iii)腫瘍特異的抗原を発現する細胞、(iv)腫瘍関連抗原を発現する細胞、(v)腫瘍上の胚抗原、(vi)自己腫瘍細胞、(vii)腫瘍特異的膜抗原、(viii)腫瘍関連膜抗原、(ix)成長因子受容体、(x)成長因子リガンド、及び(xi)その他の任意のタイプの癌に関連する抗原又は抗原提示細胞又は物質を指す。
【0170】
癌抗原は、細胞、タンパク質、ペプチド、融合タンパク質、ペプチド又はタンパク質をコードするDNA、ペプチド又はタンパク質をコードするRNA、糖タンパク質、リポタンパク質、リン酸化タンパク質、炭水化物、リポ多糖、脂質、それらの2つ以上の化学的に結合された組み合わせ、融合もしくはそれらの2つ以上、又はそれらの2つ以上の混合物であり得る。別の実施形態では、癌抗原は約6~約24個のアミノ酸;約8~約20個のアミノ酸;約8~約12個のアミノ酸;約8~約10個のアミノ酸;又は約12~約20個のアミノ酸を含むペプチドである。一実施形態では、癌抗原は、MHCクラスI結合モチーフ又はMHCクラスII結合モチーフを有するペプチドである。別の実施形態では、癌抗原は、1つ以上の細胞毒性Tリンパ球(CTL)エピトープに対応するペプチドを含む。
【0171】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されるように、SCFA又はSCFA部分を含む化合物を含む組成物を、任意選択により少なくとも1つの免疫療法剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによる、癌免疫療法に関連する有害効果の処置、阻害、予防、又は軽減のための方法を提供する。
【0172】
一実施形態では、免疫療法はキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、癌の処置のためのCAR-T療法の前、間、又は後に、CAR-T療法に関連する少なくとも1つの有害効果の処置又は予防のために投与される。本発明の組成物によって処置可能及び/又は予防可能な特定の有害効果としては、限定されないが、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、オンターゲット/オフ腫瘍認識、アナフィラキシー、移植片対宿主病(GVHD)、オフターゲット抗原認識、及びマクロファージ活性化症候群(MAS)が挙げられる。これらの有害効果の既存又は開発中の処置又は予防には、薬理学的免疫抑制(すなわち、IL-6R遮断、デキサメタゾンなどの全身性コルチコステロイド、モノクローナル抗体、シクロホスファミドなどの薬剤によるリンパ球枯渇化学療法)、自殺遺伝子又は除去遺伝子(すなわち、CAR-T細胞の死滅)、及び標的活性化(すなわち、薬物又は別の薬剤によるCAR-T細胞の条件付き活性化)が含まれる。したがって、一実施形態では、本発明の処置組成物は、癌の免疫療法に関連する1つ以上の有害効果を軽減、予防、処置、又は改善するための少なくとも1つの他の戦略と組み合わされる。一実施形態では、本発明は、癌の免疫療法に関連する有害効果の発症を処置又は予防するための組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物を含む。一実施形態では、免疫療法はCAR-T療法を含む。別の実施形態では、免疫療法は、少なくとも1つの他の抗癌組成物を含む療法を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、癌の処置のための化学療法の前、間、又は後に投与される。
【0173】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、化学療法と並行して投与される:CAR-T細胞注入の数日前(SCFAのみ)、及びCAR-T細胞注入の数週間後まで(化学療法のみを受けている対象と比較して低いレベルの化学療法剤と組み合わせたSCFA)。
【0174】
一実施形態では、免疫療法の方法における使用のための例示的な1日経口用量は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、又は6か月超にわたる、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、又は1日3回より多い、少なくとも2g、少なくとも3g、少なくとも4g、少なくとも5g、少なくとも6g、又は6gを超える、少なくとも1つのSCFAの1日経口用量である。
【0175】
一実施形態では、免疫療法の方法における使用のための例示的な1日経口用量は、5~6gのブチレート及び2~3gのプロピオネートの1日経口用量である。一実施形態では、少なくとも1つのSCFAを含む組成物は、腸溶コーティングされた徐放性カプセルである。一実施形態では、組成物は、1日3回投与される。
【0176】
さらなる薬剤との組み合わせ
本発明はまた、1つ以上のさらなる薬剤と組み合わせて、上記の疾患又は障害を処置又は予防する方法を対象とする。
【0177】
組み合わせは、単一製剤であってもよく、順に別々に投与(最初に少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子を含む、組成物、次いでさらなる薬剤を含む組成物、又は最初にさらなる薬剤、次に少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子を含む、組成物)してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子は、少なくともさらなる薬剤を含む組成物が対象に投与される、約30秒、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、又は8週間前に、対象に投与することができる。他の実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬剤を含む組成物は、少なくとも1つのSCFA又はSCFA部分を含む分子を含む組成物が対象に投与される、約30秒、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、又は8週間前に、対象に投与することができる。
【0178】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのこれらの薬剤又はその生物学的に活性な誘導体を、少なくとも1つの短鎖脂肪酸(SCFA)又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体と組み合わせて、それを必要とする対象の疾患又は障害を処置又は予防するための療法として投与するための一般概念を提供する。一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つのこれらの薬剤又はその生物学的に活性な誘導体、及び少なくとも1つのSCFA又はその生物学的に活性な誘導体又は前駆体を含む。
【0179】
本発明の組成物に含まれ得るか、又は本発明の組成物と組み合わせて投与され得る例示的な治療剤が提供される。
【0180】
チェックポイント阻害剤
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書で使用される「チェックポイント阻害剤」には、癌免疫療法の分野で一般に理解されている免疫チェックポイントを遮断する阻害剤又は分子が含まれる。一般的に、チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を遮断する抗体である。免疫チェックポイントタンパク質としては、限定されないが、PD1、PDL1、PDL2、CTLA-4、LAG3、TIM3、B7-H3、BTLA、VISTA、CD40、CEACAM1、CD80、CD86、OX40、CD27、GITR、DNAM-1、TIGIT、TMIGD2及びDC-SIGNが挙げられる。公知のチェックポイント阻害剤のいくつかの例としては、限定されないが、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ドルブバルマブ他が挙げられる。一実施形態では、上記の組成物は、チェックポイントタンパク質に対する抗体と組み合わせて、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子を含み得る。
【0181】
一実施形態では、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子と、チェックポイント阻害剤との組み合わせは、チェックポイント阻害剤単独よりも効率的に免疫系を誘導する。このより効率的な免疫応答は、特定の疾患又は障害の処置及び/又は予防において高められた有効性を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、約0.5倍~約15倍、約0.5倍~約10倍、又は約0.5倍~約8倍に増加し得る。あるいは、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子、及びチェックポイント阻害剤の組み合わせを投与された対象における免疫応答は、少なくとも約0.5倍、少なくとも約1.0倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3.0倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4.0倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5.0倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6.0倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7.0倍、少なくとも約7.5倍、少なくとも約8.0倍、少なくとも約8.5倍、少なくとも約9.0倍、少なくとも約9.5倍、少なくとも約10.0倍、少なくとも約10.5倍、少なくとも約11.0倍、少なくとも約11.5倍、少なくとも約12.0倍、少なくとも約12.5倍、少なくとも約13.0倍、少なくとも約13.5倍、少なくとも約14.0倍、少なくとも約14.5倍、又は少なくとも約15.0倍に増加し得る。
【0183】
さらに他の代替的な実施形態では、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子、及びチェックポイント阻害剤の組み合わせを投与された対象における免疫応答は、約50%~約1500%、約50%~約1000%、又は約50%~約800%増加し得る。他の実施形態では、少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む分子、及びチェックポイント阻害剤の組み合わせを投与された対象における免疫応答は、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約650%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、少なくとも約1200%、少なくとも約1250%、少なくとも約1300%、少なくとも約1350%、少なくとも約1450%、又は少なくとも約1500%増加し得る。
【0184】
抗炎症剤
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上の抗炎症剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の組成物と組み合わせて使用できる例示的な抗炎症剤としては、限定されないが、ジクロフェナク(例えば、Arthrotec(登録商標))、ジフルニサル(例えば、Dolobid(登録商標))、エトドラク(例えば、Lodine(登録商標))、フェノプロフェン(例えば、Nalfon(登録商標))、イブプロフェン(例えば、Advil(登録商標)、Motrin(登録商標)、他)、インドメタシン(例えば、Arthrexin(登録商標))、ケトプロフェン(例えば、Oruvail(登録商標))、ケトロラック(例えば、Toradol(登録商標))、ホスホマイシントロメタミン(例えば、Monural(登録商標))、メクロフェナメート(例えば、Meclomen(登録商標))、ナブメトン(例えば、Relafen(登録商標))、ナプロキセン(例えば、アナプロックス(登録商標)、他)、オキサプロジン(例えば、Daypro(登録商標))、ピロキシカム(例えば、Feldene(登録商標))、スリンダク(例えば、Clinoril(登録商標))、トルメチン(例えば、Tolectin(登録商標)、他)、フラベノイド(例えば、ルテオリン、フィセチン、及びアピゲニン)、ステロイド、抗ヒスタミン薬、ロラタジン、テオフィリン、ドキサントラゾール、ケルセチン、8-ブロモサイクリックAMP、クロモグリク酸二ナトリウム、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、ブデソニド/ホルモテロール、フルチカゾン、フルチカゾン吸入粉末、フルチカゾン/サルメテロール、モメタゾン、モメタゾン/ホルモテロール、クロモリン、オマリズマブ、吸入型短時間作用型又は長時間作用型β2-アゴニスト、ロイコトリエン修飾薬、及びテオフィリンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上の抗炎症剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上の抗炎症剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0185】
PDE4阻害剤
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。PDE4阻害剤の非限定的な選択は、米国特許出願公開第2002/0111495号明細書に提示され、これは参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のPDE4阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のPDE4阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0186】
疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含み、又は免疫抑制剤が本発明の組成物に含まれてもよい。DMARDは当技術分野で公知であり、メトトレキサート(Rheumatrex(登録商標))、スルファサラジン(Azulfidine(登録商標))、ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標))、及びシクロスポリン(Sandimmune(登録商標)、又はNeroal(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のDMARDを、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のDMARDを含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0187】
生物学的薬剤
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上の生物学的薬剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明によって企図される例示的な生物学的薬剤としては、限定されないが、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、アプレミラスト(Otezla(登録商標))、及びアダリムマブ(Humira(登録商標))が挙げられる。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上の生物学的薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上の生物学的薬剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0188】
Cox-2阻害剤
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のCox-2阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。Cox-2阻害剤としては、限定されないが、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、バルデコキシブ(Bextra(登録商標))、及びメロキシカム(Mobic(登録商標))が挙げられる。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のCox-2阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のCox-2阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0189】
マグネシウム、ビタミンD3、及びビタミンE
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的にマグネシウム、ビタミンD3、及びビタミンE(d-α-酢酸トコフェロール)のうち1つ以上を、それを必要とする対象に投与することを含む。マグネシウムは、血糖値の調節、解毒及びその他を含む多様な生化学反応を調節する300を超える酵素の補因子である。ビタミンD3欠乏は、免疫障害を有する患者によく見られる。ビタミンEは独特の抗酸化作用を有する。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的にマグネシウム、ビタミンD3、及びビタミンEのうち1つ以上を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、マグネシウム、ビタミンD3、及びビタミンEのうち1つ以上を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0190】
他の薬剤
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のさらなる治療剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のさらなる治療剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の方法による投与が企図されるさらなる治療剤としては、限定されないが、ロフェコキシブ、セレコキシブ、葉酸、スルファサラジン、ナプロキセン、レフルノミド、酢酸メチルプレドニゾロン、非経口金、経口金、インドメタシン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、スリンダク、プレドニゾン、ベタメタゾンジプロップ増強剤、葉酸塩、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク、ジメチルスルホキシド、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、メロキシカム、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、トルメチンナトリウム、カルシポトリエン、シクロスポリン、ジクロフェナク、ナトリウム/ミソプロストール、フルオシノニド、グルコサミン硫酸塩、金チオリンゴ酸ナトリウム、重酒石酸ヒドロコドン/apap、リセドロン酸ナトリウム、スルファジアジン、チオグアニン、バルデコキシブ、KDR(ABT-123)の小分子阻害剤、Tie-2の小分子阻害剤、プロピオン酸クロベタゾール、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸ハロベタゾール、タザロテン、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロップ増強剤、フルオシノロン、アセトニド、アシトレチン、タールシャンプー、吉草酸ベタメタゾン、モメタゾンフロエート、ケトコナゾール、プラモキシン/フルオシノロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フルランドレノリド、尿素、ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール/皮膚軟化剤(emoll)、プロピオン酸フルチカゾン、アジスロマイシン、ヒドロコルチゾン、保湿製剤、葉酸、デソニド、コールタール、二酢酸ジフロラゾン、葉酸、乳酸、メトキサレン、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、日焼け止め剤、サリチル酸、ハルシノニド、アントラリン、ピバル酸クロコルトロン、石炭抽出物、コールタール/サリチル酸、コールタール/サリチル酸/硫黄、デソキシメタゾン、ジアゼパム、皮膚軟化剤、ピメクロリムス皮膚軟化剤、フルオシノニド/皮膚軟化剤、鉱油/ヒマシ油/乳酸ナトリウム(na lact)、鉱油/ピーナッツ油、石油/ミリスチン酸イソプロピル、ソラレン、サリチル酸、石鹸/トリブロムサラン、チメロサール/ホウ酸、セレコキシブ、アレファセプト、エファリズマブ、タクロリムス、ピメクロリムス、PUVA、UVB、スルファサラジン、アレムツズマブ、ドロナビノール、ユニメド、ダクリズマブ、ミトキサントロン、塩酸キサリプロデン、ファムプリジン、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、シンナビドール、a-イムノカインNNSO3、ABR-215062、AnergiX.MS、ケモカイン受容体アンタゴニスト、BBR-2778、カラグアリン、CPI-1189、LEM(リポソームカプセル化ミトキサントロン)、THC.CBD(カンナビノイドアゴニスト)MBP-8298、メソプラム(PDE4阻害剤)、MNA-715、抗IL-6受容体抗体、neurovax、ピルフェニドンアロトラップ1258(RDP-1258)、sTNF-R1、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNF-α IgG4抗体)、CDP870(ヒト化モノクローナル抗TNF-α抗体フラグメント)、抗TNFdAb(Peptech)、CNTO148(ゴリムマブ;Medarex and Centocor、国際公開第02/12502号パンフレット参照)、及びアダリムマブ(Humira(登録商標)Abbott Laboratories、ヒト抗TNF mAb、米国特許第6,090,382号明細書にD2E7として記載)が挙げられる。本発明で使用することができるさらなるTNF抗体は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,593,458号明細書;同第6,498,237号明細書;同第6,451,983号明細書;及び同第6,448,380号明細書に記載されるもの、タランパネル、テリフルノミド、TGF-ベータ2、チプリモチド、VLA-4アンタゴニスト(例えば、TR-14035、VLA4 Ultrahaler、Antegran-ELAN/Biogen)、インターフェロンガンマアンタゴニスト、IL-4アゴニスト、ヒト化IL-6抗体トシリズマブ、ステロイド(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオロメトロン、及びジフルプレドネート)、ラパマイシン、ランパリズマブ、フルオシノロンアセトタニド、macuCLEAR点眼剤、骨髄CD34幹細胞、その他の幹細胞、ラニビズマブ、ブリモニジン、LFG316、ORACEA(登録商標)、塩酸エミクススタット、シロリムス、コパキソン、その他の点眼剤、AL-78898A、及びエクリズマブである。
【0191】
インターロイキンIL-17阻害剤
インターロイキンIL-17は、TNFα産生を刺激することが示されている。抗IL-17薬としては、限定されないが、ブロダルマブ、イキセキズマブ及びセクキヌマブが挙げられる。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のIL-17の阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のIL-17の阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0192】
IFN-γ阻害剤
炎症性疾患の病因に関与する重要なTh1型サイトカインは、抗アポトーシスタンパク質Bcl-xの発現を刺激することによりケラチノサイトのアポトーシスを阻害するIFN-γである。これは炎症性疾患の進行に寄与する。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物を1つ以上のIFN-γの阻害剤と組み合わせて投与することを含み得る。一実施形態では、IFN-γの阻害剤は、抗IFN-γ抗体、可溶性IFN-γ受容体、及びそれらの組み合わせのうち少なくとも1つであり得る。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のIFN-γの阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のIFN-γの阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0193】
VEGF阻害剤
血管内皮成長因子(VEGF)は、mRNA及びタンパク質レベルでのVEGFの発現の増加(表皮ケラチノサイトによる)、及びVEGF受容体(真皮上部の蛇行性微小血管による)を特徴とする炎症性疾患で観察される病理学的血管新生に関与している(Man et al.,2008,J Cell Mol Med.,12(2):649-60;Marina et al.,2015,Clujul Med,88(3):247-52)。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物を少なくとも1つのVEGF阻害剤と組み合わせて投与することを含み得る。一実施形態では、VEGF阻害剤は抗体、例えばモノクローナル抗体である。一実施形態では、VEGF阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、ブリバニブアラニネート、セジラニブ、バンデタニブ、モテサニブ、リニフィニブ、アキシチニブ、及びアフリベルセプトのうち少なくとも1つである。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のVEGF阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のVEGF阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0194】
HDAC阻害剤
酪酸は、最も強力なヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の1つである。HDAC阻害は、ナイーブT細胞の、TCD4細胞のサブセットであるTreg細胞(Treg発現に重要な転写因子FoxP3を発現している)への分化を刺激し得る。Treg細胞は、自己反応性リンパ球の活性化及び増殖を抑制することにより自己寛容の維持に関与しており、そのため、自己免疫の予防に重要な役割を果たしている。したがって、本発明は、少なくとも部分的にHDAC阻害により、FoxP3に関連するTreg及び/又は細胞及び/又は経路を促進し得る多くの組成物を提供する。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、ナイーブT細胞のTreg細胞への分化を促進する少なくとも1つの化合物を含む。
【0195】
したがって、一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物を1つ以上のHDAC阻害剤と組み合わせて投与することを含み得る。例示的なHDAC阻害剤としては、限定されないが、TSA、SAHA、CBHA、LAQ-824、PDX-101、LBH-589、ITF2357、PCI-24781、FK-228、バルプロ酸、酪酸フェニル、ブチレート、AN-9、MS-275、MGCD0103(Dokmanovic,M.et al.,2007,5(10):981-989)が挙げられる。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のHDAC阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のHDAC阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0196】
AMPK活性化因子
アデノシン一リン酸キナーゼ(AMPK)は、転写因子FoxP3の発現を促進し、これはまた一方でTreg細胞の分化及び機能を刺激する。一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物をローズヒップ(イヌバラ(Rosa canina)から)及びジャオグラン抽出物(アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)から)又は他の天然AMPKアクティベーターを含むがこれらに限定されない1つ以上の天然AMPKアクティベーターと組み合わせて投与することを含み得る。天然産物由来の例示的なAMPK活性化因子は、Uddin et al.,2013,Natural Product Sciences,19(1):1-7に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0197】
IDO阻害剤
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物を1つ以上のIDO阻害剤と組み合わせて投与することを含み得る。1-メチル-DL-トリプトファン;p-(3-ベンゾフラニル)-DL-アラニン;p-[3-ベンゾ(b)チエニル]-DL-アラニン;及び6-ニトロ-L-トリプトファンを含むがこれらに限定されないIDO阻害剤は、トリプトファン及びトリプトファン代謝産物の局所細胞外濃度を変更することにより、T細胞媒介性免疫を調節するために使用されている(国際公開第99/29310号パンフレット)。IDO阻害活性を有する化合物は、国際公開第2004/094409号パンフレットにさらに報告されており、その内容の両方は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0198】
一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物、及び追加的に1つ以上のIDO阻害剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1つのSCFA、又はその生物学的に活性な誘導体もしくは前駆体を含む組成物を、1つ以上のIDO阻害剤を含む組成物と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0199】
糖尿病又は糖尿病関連症状の処置のための薬剤
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物を、糖尿病又は糖尿病関連状態の処置のための1つ以上の薬剤と組み合わせて投与することを含み得る。他の薬剤(例えば、インスリン)及び食事(低糖)の使用は、本発明のSCFA又はSCFA部分を含む化合物と組み合わせて使用して、その治療効果を高めることができる。本発明のSCFA又はSCFA部分を含む化合物と組み合わせ得る抗糖尿病化合物としては、限定されないが、短時間作用型インスリン(例えば、レギュラーインスリン)、速効型インスリン(例えば、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、及びインスリンリスプロ)、中間作用型インスリン(例えば、インスリンイソファン)、長時間作用型インスリン(例えば、インスリンデグルデク、インスリンデテミル、インスリングラルギン、及びインスリングラルギン)、組み合わせインスリン(例えば、70/30(インスリンアスパルトプロタミン-インスリンアスパルト)、75/25(インスリンリスプロプロタミン-インスリンリスプロ)、50/50(インスリンリスプロプロタミン-インスリンリスプロ)、70/30(ヒトインスリンNPH-ヒトインスリンレギュラー)、70/30(ヒトインスリンNPH-ヒトインスリンレギュラー)、及び(インスリンデグルデク-インスリンアスパルト))、及びアミリン模倣薬のプラムリンチドが挙げられる。
【0200】
化学療法剤
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の組成物を1つ以上の化学療法剤と組み合わせて投与することを含み得る。化学療法剤としては、限定されないが、ara-C、ダウノマイシン、クラドリビン(ロイスタチン、2-CdA)、細胞毒性剤(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムスチン(estramucine)リン酸エステルナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ-2a組み換え体、パクリタキセル、テニポシド及びストレプトゾシン)、細胞毒性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、又はエチルスルホン酸(ethylesulfonic acid))、アルキル化剤(例えば、アサリー、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラート白金(carboxyphthalatoplatinum)、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、cis-白金、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド(iphosphamide)、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾールアミド(mitozolamide)、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード及びYoshi-864)、抗有糸分裂剤(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン及び硫酸ビンクリスチン)、植物性アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン及びタキソテール)、生物学的製剤(例えば、アルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF及びインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトセシン、カンプトセシン誘導体及びモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン(mitoxantron)、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール(oxanthrazole)、ルビダゾン(rubidazone)、VM-26及びVP-16)及び合成物質(例えば、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、cis-ジアミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、all-transレチノイン酸、グリアデル及びポルフィマーナトリウム)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、癌の処置のための少なくとも1つの抗増殖剤の投与の前、間、又は後に投与される。抗増殖剤は、細胞の増殖を減少させる化合物である。抗増殖剤としては、限定されないが、アルキル化剤、代謝拮抗物質、酵素、生物学的応答調節剤、雑多な薬剤、ホルモン及びアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミド及びロイプロリド酢酸塩)、抗エストロゲン剤(例えば、クエン酸タモキシフェン及びその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン及びロロキシフェン(roloxifene))が挙げられる。特定の抗増殖剤のさらなる例としては、限定されないが、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチムストロンチウム-89クロライド、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン及びオンダンセトロンが挙げられる。
【0201】
本発明の組成物は、単独で又は細胞毒性剤/抗新生物剤及び抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。細胞毒性剤/抗新生物剤は、癌細胞を攻撃及び死滅する薬剤として定義される。いくつかの細胞毒性剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤、例えばシスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロルナファジン(chlomaphazin)及びダカルバジン(dacabazine)である。他の細胞毒性剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞の代謝拮抗物質、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン(mercaptopuirine)、アザチオプリム(azathioprime)及びプロカルバジンである。他の細胞毒性剤/抗新生物剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシン(mytomycin)C及びダウノマイシンである。これらの化合物について市販されている多数のリポソーム製剤がある。さらに、他の細胞毒性剤/抗新生物剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)である。これらには、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びエトポシドが含まれる。その他の細胞毒性剤/抗新生物剤としては、タキソール及びその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロンならびにビンデシンが挙げられる。
【0202】
抗血管新生剤は、当業者に周知である。本開示の組成物と組み合わせるのに適した抗血管新生剤としては、ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマーならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。他の公知の血管新生阻害剤としては、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(α及びβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸ならびにメタロプロテイナーゼ-1及び-2の組織阻害剤が挙げられる。(TIMP-1及び-2)。抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなどの、トポイソメラーゼを含む小分子もまた使用することができる。
【0203】
本発明の組成物と組み合わせて使用され得る他の抗癌剤としては、限定されないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸エステルナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン(fluorocitabine);ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシウレア;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII又はrIL2を含む);インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジンスルファート;ビングリシナートスルファート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジンスルファート;ビンゾリジンスルファート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩が挙げられる。他の抗癌薬としては、限定されないが、20-エピ-1,25 ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背側化形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン薬(前立腺癌);抗エストロゲン薬;抗新生物薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシン塩;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシイミン;カルシポトリオール;カルフォスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリアポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRestM3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジヒドロタキソール(dihydrotaxol,9-);ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin);ホルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゲラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン(imidazoacridone);イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子-1レセプター阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;4-イポメアノール(ipomeanol,4-);イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン;ジャスプラキノライド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセタート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン(lentinan sulfate);レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;親油性二糖類ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解ペプチド;メイタンシン(maitansine);マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(gonadotrophin);モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多発腫瘍サプレッサー1-ベース療法;マスタード抗癌剤;ミカペルオキシドB;ミコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン(napavin);ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペグアスパラガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチン(placetin)A;プラセチン(placetin)B;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソー
ム阻害剤;プロテインAベースの免疫モジュレーター;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤(微細藻);タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186(rhenium Re 186 etidronate);リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプト酸ナトリウム(sodium borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチンレセプターアゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリンスズ;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼレセプターアンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン(veramine);ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ及びジノスタチンスチマラマーが挙げられる。一実施形態では、抗癌薬は、5-フルオロウラシル、タキソール又はロイコボリンである。
【0204】
抗ウイルス剤
本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物を、抗ウイルス剤と組み合わせて含む組成物を企図する。抗ウイルス剤としては、限定されないが、ウイルス脱コーティングの阻害剤(例えば、アマンタジン及びリマンチジン)、逆転写酵素阻害剤(例えば、アシクロビル、ジドブジン、及びラミブジン)、インテグラーゼを標的とする薬剤;ウイルスDNAへの転写因子の付着を遮断する薬剤;翻訳に影響を与える薬剤(例えば、アンチセンス分子)(例えば、フォミビルセン);翻訳/リボザイム機能を調節する薬剤;プロテアーゼ阻害剤;ウイルスアセンブリモジュレーター(例えば、リファンピシン);例えばヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤(例えば、アジドチミジン(AZT)、ddl、ddC、3TC、d4T)などの抗レトロウイルス剤;非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、エファビレンツ、ネビラピン);ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤;及びウイルス粒子の放出を防止する薬剤(例えば、ザナミビル及びオセルタミビル)、アバカビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ボセプレビレルテット(boceprevirertet)、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、様々なインターフェロン(例えば、ペグインターフェロンアルファ-2a)、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネキサビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、スタブジン、テラプレビル、テノフォビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、及びザルシタビンが挙げられる。
【0205】
駆虫剤
本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物を、駆虫剤と組み合わせて含む組成物を企図する。そのような薬剤としては、限定されないが、チアベンダゾール、パモ酸ピランテル、メベンダゾール、プラジカンテル、ニクロサミド、ビチオノール、オキサムニキン、メトリフォネート、イベルメクチン、アルベンダゾール、エフロルニチン、メラルソプロール、ペンタミジン、ベンズニダゾール、ニフルチモックス、及びニトロイミダゾールが挙げられる。当業者は、寄生虫障害の処置に有用性を見出し得る他の薬剤を認識している。
【0206】
抗菌剤
本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つのSCFA、又はSCFA部分を含む化合物を、細菌性障害の処置又は予防に有用な薬剤と組み合わせて含む組成物を企図する。抗菌剤は、作用機序に基づくもの、化学構造に基づくもの、及び活性スペクトルに基づくものを含む、様々な方法で分類することができる。抗菌剤の例には、細菌の細胞壁(例えば、セファロスポリン及びペニシリン)又は細胞膜(例えば、ポリミキシン)を標的とするもの、又は必須の細菌酵素(例えば、スルホンアミド、リファマイシン、及びキノリン)を妨害するものが含まれる。タンパク質合成を標的とする抗菌剤の大部分(例えば、テトラサイクリン及びマクロライド)は静菌性である一方、アミノグリコシドなどの薬剤は殺菌性である。抗菌剤を分類する別の手段は、標的特異性に基づくものであり、「狭域スペクトル」の薬剤は特定のタイプの細菌(例えば、連鎖球菌(Streptococcus)などのグラム陽性細菌)を標的とし、「広域スペクトル」の薬剤はより広い範囲の細菌に対して活性を有する。当業者は、特定の細菌感染症での使用に適したタイプの抗菌剤を認識している。
【0207】
処置方法
本発明の一態様は、本発明の組成物を使用して疾患又は障害を処置又は予防するための処置レジメンに関する。本発明の組成物の対象への投与は、対象の疾患又は障害を処置又は予防するのに有効な用量及び期間で、公知の手順を使用して実施され得る。治療効果を達成するために必要な治療化合物の有効量は、対象の疾患又は障害の状態、対象の年齢、性別、体重などの要因によって異なり得る。
【0208】
投与レジメンは、有効量を構成するものに影響を与え得る。さらに、治療的又は予防的状況の緊急性によって示されるように、組成物の投与量は比例的に増加又は減少され得る。本発明の治療化合物の有効用量範囲の非限定的な例は、約1~約5,000mg/kg体重/日である。有効用量は、1μg~10mg活性成分/kg体重/時間であり得、20μg~10mg成分/kg体重/時間であり得る。治療化合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又は31日ごとに投与することができる。効果的な処置のための投与回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10超であり得る。
【0209】
当業者は、関連する因子を研究し、過度の実験をすることなく治療化合物の有効量に関する決定を行うことができよう。
【0210】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象、組成物、及び投与様式に対する所望の治療応答を、対象に有毒であることなく達成するのに有効な量の活性成分が得られるように変化し得る。
【0211】
特に、選択される投与レベルは、使用される特定の化合物の活性、投与時間、化合物の排泄速度、治療期間、化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物又は材料、年齢、性別、体重、状態、処置される対象の一般的な健康及び以前の病歴、及び医学分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存する。
【0212】
当技術分野の通常の技術を有する医学者、例えば医師又は獣医は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方し得る。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで医薬組成物に使用される本発明の化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増やし得る。
【0213】
投与のための本発明の組成物は、約1μg~約10,000mg、約20μg~約9,500mg、約40μg~約9,000mg、約75μg~約8,500mg、約150μg~約7,500mg、約200μg~約7,000mg、約3050μg~約6,000mg、約500μg~約5,000mg、約750μg~約4,000mg、約1mg~約3,000mg、約10mg~約2,500mg、約20mg~約2,000mg、約25mg~約1,500mg、約50mg~約1,000mg、約75mg~約900mg、約100mg~約800mg、約250mg~約750mg、約300mg~約600mg、約400mg~約500mg、及びそれらの間のあらゆる全体的及び部分的な増分の範囲内であり得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の用量は約1mg~約2,500mgである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物において使用される本発明の化合物の用量は、約10,000mg未満、又は約8,000mg未満、又は約6,000mg未満、又は約5,000mg未満、又は約3,000mg未満、又は約2,000mg未満、又は約1,000mg未満、又は約500mg未満、又は約200mg未満、又は約50mg未満、又は約40mg未満、又は約30mg未満、又は約25mg未満、又は約20mg未満、又は約15mg未満、又は約10mg未満、又は約5mg未満、又は約2mg未満、又は約1mg未満、又は約0.5mg未満、及びそれらの間のあらゆる全体的及び部分的な増分である。
【0215】
一実施形態では、処置レジメンは、本発明の組成物の毎日の投与を含む。一実施形態では、処置レジメンは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年又は1年を超えて、少なくとも1日1回、短鎖脂肪酸を投与することを含む。一実施形態では、処置レジメンは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年又は1年を超えて、1日3回、短鎖脂肪酸を投与することを含む。一実施形態では、処置レジメンは、疾患又は障害の出現時に少なくとも1日1回、短鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸前駆体、短鎖脂肪酸生合成前駆体、又はそれらの組み合わせを含む組成物を投与することを含む。
【0216】
一実施形態では、処置レジメンは、短鎖脂肪酸の毎日の経口投与を含む。例示的な一実施形態では、少なくとも1週間にわたって、600mgのブチレートが1日3回(合計1800mg/日)投与される。一実施形態では、処置レジメンは、少なくとも1週間にわたって、600mgのブチレートを含有する2つのブチレートカプセルを1日3回(合計3600mg/日)経口投与することを含む。一実施形態では、処置レジメンは、少なくとも1週間にわたって、600mgのブチレートを含有する2つのブチレートカプセルを1日3回(合計3600mg/日)経口投与すること、その後、少なくとも1週間にわたって、600mgのブチレートを含有する2つのブチレートカプセルを1日3回(合計1800mg/日)経口投与することを含む。
【0217】
本明細書に記載されるように、本発明の組成物の個体への投与は、耐性を誘導し、腸バリアの完全性を強化し、個体の炎症を軽減することを可能にする。方法は、本明細書に記載の組成物を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は1つ以上のSCFA又はSCFA誘導体を含む。組成物は、耐性を誘導し、腸バリアを強化し、炎症を軽減するという望ましい効果を生み出すのに十分な量で個体に投与される。それは、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、又は感染性疾患から選択される少なくとも1つの疾患の処置、重症度の軽減又は予防を必要とする個体に投与され得る。
【0218】
組成物の投与が耐性を誘導するかどうかは、以下:制御性T細胞(Treg)の数、結腸のT細胞群におけるTregの比率、Tregの機能、又はTregのマーカーの発現の少なくとも1つの増加又は強化を指標として使用することにより決定できる。具体的なアプローチは、生検もしくは血液サンプルなどの患者サンプル中のFoxp3発現Tregの測定カウント又はパーセンテージ、IL-10発現の促進(強化)、CTLA4発現の促進(強化)、IDO発現の促進(強化)、又は制御性T細胞の増殖又は蓄積の誘導の指標としてのIL-4発現の抑制である。組成物の投与がバリア機能を強化するかどうかは、腸上皮細胞による活性型TGF-β及び/又は密着結合関連タンパク質の産生の増加を指標として使用することにより決定できる。組成物の投与が炎症を低減するかどうかは、IL-10及び/又はTGF-βなどの抗炎症性サイトカインの産生の増加、又はIL-4などの炎症誘発性サイトカインの産生の減少を指標として使用することにより決定できる。
【0219】
そのような発現を検出する方法には、転写レベルでの遺伝子発現の検出のためのノーザンブロット、RT-PCR、及びドットブロット;翻訳レベルでの遺伝子発現の検出のためのELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット、免疫沈降、及びフローサイトメトリーが含まれる。そのような指標の測定に使用され得るサンプルには、血液、生検、又は糞便サンプルなどの、個体から得られた組織及び体液が含まれる。
【0220】
医薬組成物
本発明は、1つ以上の本発明の組成物を含む医薬組成物を含む。本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学分野で公知の又は今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、このような調製方法は、活性成分を担体又は1つ以上の他の補助成分と合わせ、次いで、必要な場合又は望ましい場合には、生成物を所望の単回投与単位又は複数回投与単位に成形又はパッケージする工程を含む。
【0221】
前記組成物は、目的の使用及び用途に応じて、さらなる医薬剤、医薬品、担体、緩衝剤、アジュバント、分散剤、希釈剤などを含み得る。
【0222】
適切な医薬担体、賦形剤及び/又は希釈剤の例は、当技術分野で周知であり、ガム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリラート(例えば、ポリメチルアクリラート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
液体製剤のための薬学的に許容し得る担体は、水性又は非水性の溶液、懸濁液、エマルジョン又は油である。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。油の例は、動物起源、植物起源又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ヒマワリ油、ウコン油、魚肝油、別の海産物油、又は牛乳もしくは卵由来の脂質である。
【0224】
水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられ、リン酸緩衝生理食塩水溶液などの生理食塩水及び緩衝媒体、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液などを含む。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤することができる。適切な担体は、本発明の生物学的に活性な化合物と組み合わせたときに生物学的活性を保持する任意の物質を含み得る。非経口投与のための調製物は、滅菌された水性又は非水性の溶液、懸濁液及びエマルジョンを含み得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル又は固定油が挙げられ得る。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充物、電解質補充物(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが挙げられ得る。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなどを含む保存剤及び他の添加剤も存在し得、加えて、本発明の医薬組成物は、例えば、血清アルブミン又は免疫グロブリンのようなタンパク質性担体を含み得る。
【0225】
本明細書で提供される医薬組成物はまた、制御放出組成物、すなわち、活性成分が投与後に一定期間にわたって放出される組成物として投与され得る。制御放出組成物又は持続放出組成物は、親油性デポ剤(例えば、脂肪酸、ワックス、油)の製剤を含む。別の実施形態では、組成物は、即時放出組成物、すなわち、全ての活性成分が投与直後に放出される組成物である。
【0226】
さらに、本発明による、及び様々な実施形態において本明細書に記載される、医薬組成物、又は前記化合物を含む組成物は、食品、機能性食品、飲料、医療食品に混合して投与され得る。
【0227】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は主に、ヒトへの倫理的投与に適した医薬組成物に関するものであるが、当業者であれば、このような組成物は一般に、全ての種類の動物への投与に適切であることを理解するであろう。組成物を様々な動物への投与に適したものにするためのヒトへの投与に適した医薬組成物の改変は十分に理解されており、通常の獣医薬理学者であれば、たとえ必要であったとしても、単に通常の実験で、このような改変を設計及び実施することができる。本発明の医薬組成物の投与が企図される対象としては、限定されないが、ヒト及び他の霊長類、商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ及びイヌ、非哺乳類動物及びその他の獣医学的用途が挙げられる。
【0228】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、眼、経口、直腸、膣内、非経口、局所、肺内、鼻腔内、口腔、腫瘍内、硬膜外、脳内、脳室内又は別の投与経路に適した製剤で調製、パッケージ又は販売され得る。他の企図される製剤としては、射出ナノ粒子、リポソーム調製物、活性成分を含有する再封赤血球、及び免疫学系製剤が挙げられる。
【0229】
本発明の医薬組成物は、バルクで、単回単位用量として、又は複数の単回単位用量として調製、パッケージ又は販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の有効成分を含む医薬組成物の別個の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量、又はこのような投与量の便利な一部分、例えばこのような投与量の1/2もしくは1/3などに等しい。
【0230】
本発明の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される担体及び任意のさらなる成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ及び状態に応じて、ならびにさらに組成物を投与すべき経路に応じて変動するであろう。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0231】
活性成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1つ以上のさらなる薬学的に活性剤をさらに含み得る。
【0232】
本発明の医薬組成物の制御放出製剤又は持続放出製剤は、従来の技術を使用して作製され得る。
【0233】
医薬組成物はまた、経口摂取のための、及び任意選択により経腸吸収のための、経口栄養組成物などの栄養組成物を含み、栄養組成物は、本発明の化合物を含む。したがって、一実施形態では、本発明は栄養補助組成物に関する。
【0234】
栄養組成物を製剤化して経口投与する場合、組成物は、液体経口栄養補給剤(例えば、不完全な栄養補給物)又は完全な栄養補給物であり得る。このように、栄養組成物は、例えば、便利な剤形の、錠剤、カプセル、液体、チュアブル、軟質ゲル、サシェ、粉末、シロップ、液体懸濁液、エマルジョン、乳児用調製粉乳及び溶液を含む任意の公知の形態で投与され得る。
【0235】
栄養製剤は、任意の栄養的に完全な又は補助的な製剤(例えば、栄養補給剤)を包含する。本明細書で使用される場合、「栄養的に完全な」は、好ましくは、十分な種類及びレベルの主要栄養素(タンパク質、脂肪及び炭水化物)と、それが投与される対象にとって唯一の栄養源であるのに十分な微量栄養素とを含有する栄養製品である。患者は、このような完全な栄養組成物から栄養所要量の100%を摂取し得る。一実施形態によれば、栄養製剤は、補助栄養素を提供する補助的な製剤である。「補助的な製剤」は、栄養的に完全でなくてもよいが、好ましくは、例えば、肉体運動、さらに本発明の有益な効果と組み合わせて支援的な、及び/又は対象の特定のもしくはさらなる要求に対処する特定の栄養素を含有する。
【0236】
栄養製剤は、一般に、適用可能な栄養製剤、例えば特定の年齢の対象に適合されたもの、例えば、子供用の製剤、であり得るが、それはまた、例えば、高齢患者用の製剤、集中治療患者用の製剤、又は特定の疾患に罹患している患者用に特別に適合された製剤でもあり得る。任意の栄養製剤は、例えば、再構成可能なもの、すなわち、実質的に乾燥した状態、例えば粉末形態で存在するもの、又は液体製剤の形態のレディ・トゥ・ドリンクであり得る。
【0237】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水又は滅菌等張生理食塩水と組み合わせた活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、パッケージ又は販売され得る。注射用製剤は、アンプル、又は保存剤を含有する複数回投与容器、などの単位剤形で調製、パッケージ又は販売され得る。非経口投与のための製剤としては、限定されないが、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、及び埋め込み可能な持続放出性又は生分解性製剤が挙げられる。このような製剤は、限定されないが、懸濁剤、安定化剤又は分散剤を含む1つ以上のさらなる成分をさらに含み得る。非経口投与のための製剤の一実施形態では、活性成分は、再構成組成物の非経口投与の前に、適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0238】
医薬組成物は、滅菌された注射用の水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で調製、パッケージ又は販売され得る。この懸濁液又は溶液は、公知の技術に従って製剤化され得、活性成分に加えてさらなる成分、例えば本明細書に記載される分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を含み得る。このような滅菌注射用製剤は、例えば、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒、例えば水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容される希釈剤及び溶媒としては、限定されないが、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドなどの固定油が挙げられる。有用な他の非経口投与可能な製剤としては、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、又は生分解性ポリマー系の成分として、含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー又は難溶性塩などの、薬学的に許容されるポリマー材料又は疎水性材料を含み得る。
【0239】
本明細書に記載の本発明の組成物は、完全な食品として、食品の成分として、栄養補助食品として、又は栄養補助食品の一部として、飼料添加物として使用されてもよく、液体、半固体、又は固体の形態のいずれであってもよい。本明細書に記載の本発明の組成物は、さらに医薬組成物の形態であってもよい。本発明の組成物、栄養補助食品、食品、ベビーフード製品、飼料添加物、及び/又は医薬組成物は、個体の健康を促進するための方法において有利に利用され得る。
【0240】
上で示したように、組成物は、液体、半固体、又は固体の形態であり得る。例えば、組成物は、錠剤、ゲルパック、カプセル、ゼラチンカプセル、フレーバードリンクとして、そのようなドリンクに再構成できる粉末、調理油、サラダ油又はドレッシング、ソース、シロップ、マヨネーズ、マーガリンなどとして、投与され得る。さらに、本発明の食品、栄養補助食品などとしては、限定されないが、乳製品、乳児食、乳児用人工乳、飲料、バー、粉末、食品トッピング、ドリンク、シリアル、アイスクリーム、キャンディー、スナックミックス、焼成食品、及びフライ食品が挙げられる。本発明の飲料としては、限定されないが、エナジードリンク、栄養ドリンク、スムージー、スポーツドリンク、オレンジジュース、及びその他のフルーツドリンクが挙げられる。本発明のバーとしては、限定されないが、食事代替品、栄養バー、スナックバー、エネルギーバー、押し出しバーなどが挙げられる。本発明の乳製品としては、限定されないが、ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、チーズ及びミルクが挙げられる。
【0241】
本発明の食品又は栄養補助食品は、ハーブ、ハーブ抽出物、真菌抽出物、酵素、繊維源、ミネラル、及びビタミンをさらに含み得る。本発明の微細藻類油及び微細藻類バイオマスは、治療的使用及び非治療的使用の両方のために、本発明の組成物において使用され得る。したがって、本発明の組成物、食品及び動物飼料添加物は、治療目的又は非治療目的のために使用され得る。
【0242】
経口投与を意図した組成物は、栄養補助食品又は医薬調製物の製造のための任意の公知の方法に従って調製され得、そのような組成物は、栄養学的又は薬学的に口当たりの良い調製物を提供するために、甘味料又は香味料、安定剤、乳化剤、着色剤及び保存剤などの味改善物質からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。生理学的に許容される供給源からのビタミン、ミネラル、及び微量元素も、本発明の組成物に含まれ得る。
【0243】
本発明の医薬組成物は、治療有効量の本発明の前記組成物を含む。組成物は、処方薬又は非処方薬をさらに含んでもよい。組み合わせは、以下の効果:(1)相加的及び/又は相乗的効果;(2)前記製剤の非存在下での処方薬の使用に関連する副作用及び/又は有害効果の低減;及び/又は(3)前記製剤の非存在下で必要な処方薬の量と比較して、処方薬の投与量を減らす能力、のうちの1つ以上を有利に生みだし得る。
【0244】
本発明の活性剤は、それらの薬学的に許容される塩の形態で調製することができる。当業者によって理解されるように、薬学的に許容される塩は、親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を与えない塩である。本明細書で定義される「薬学的に許容される塩」には、開示されるSCFA又はSCFA部分を含む化合物の誘導体が含まれ、ここで親化合物はそのカルボキシレート基の非毒性塩を作ることにより修飾され、さらに、薬学的に許容される水和物及びそのような化合物の溶媒和物を指す。薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、SCFAのカルボン酸基の鉱酸塩又は有機酸塩が挙げられる。例えば、従来の非毒性酸塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から得られたもの;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシルマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH-COOH(nは0~4)などの有機酸から調製された塩が含まれる。さらなる適切な塩のリストは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,p.1418(1985)に見出される。いくつかの実施形態では、SCFAは、SCFAのカルボン酸と炭素数1~6の分岐又は非分岐アルキルアルコールとのエステルとして存在し得る。例えば、SCFAは、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、イソプロピルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、又はヘキシルエステルとして存在し得る。
【0245】
活性剤は、既知の薬学技術に従って投与するために製剤化することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(9th Ed.1995)を参照。本発明による医薬組成物の製造において、活性剤(生理学的に許容されるその塩を含む)は、典型的には、とりわけ許容される担体と、混合される。担体は、当然ながら、製剤中の他のあらゆる成分と適合性があるという意味で許容されるものでなければならず、対象にとって有害であってはならない。担体は、固体又は液体、又はその両方であり得、単位用量製剤、例えば錠剤として、活性剤と共に製剤化することができ、これは、活性剤の重量で、0.01%又は0.5%~95%又は99%、又は0.01%~99%の間の任意の値を含み得る。1つ以上の活性剤を本発明の組成物に組み込むことができ、これは薬学の任意の周知技術(任意選択により1つ以上の補助成分を含む、成分を混合することを含む)によって調製することができる。さらに、本明細書で上記したように、担体は保存剤を含まなくてもよい。
【0246】
いくつかの実施形態では、活性薬剤は、組成物の重量の約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10%の範囲の下限から、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100%の範囲の上限までを含む。いくつかの実施形態では、活性剤は、組成物の約0.05重量%~約99重量%超を含む。
【0247】
本発明の実施形態による医薬組成物は、一般に、処置されている症状の性質及び重症度、ならびに使用されている特定の活性剤の性質に応じて、任意の所与の場合に最も適切な経路によって、経口又は局所(すなわち、皮膚、眼及び粘膜表面)投与用に製剤化される。
【0248】
局所製剤
本発明の組成物及び前記化合物を含有する医薬組成物は、局所投与され得、したがって、局所投与に適した形態で、すなわち、pHバランスのとれたクリーム調製物として、製剤化され得る。医薬品の局所投与の障害は、表皮の角質層である。角質層は、タンパク質、コレステロール、スフィンゴ脂質、遊離脂肪酸、及びその他の様々な脂質で構成される高耐性層であり、角質化細胞及び生細胞を含む。角質層を通る化合物の浸透速度(フラックス)を制限する要因の1つは、皮膚表面にロード又は適用され得る活性物質の量である。皮膚の単位面積あたりに適用される活性物質の量が多いほど、皮膚表面と皮膚の下層との間の濃度勾配が大きくなり、その結果、皮膚を通る活性物質の拡散力が大きくなる。したがって、より高い濃度の活性物質を含有する製剤は、他のものが全て等しければ、より低い濃度を有する製剤よりも、皮膚を通して活性物質が浸透する可能性がより高く、より多くの活性物質が浸透し、より一貫した速度で浸透する。
【0249】
局所投与に適した製剤としては、限定されないが、リニメント剤、ローションなどの液体又は半液体製剤、クリーム、軟膏、ペーストなどの水中油又は油中水エマルジョン、及び溶液又は懸濁液が挙げられる。さらに、局所投与に適した製剤は、例えば、シロップ、懸濁液又は乳液、吸入剤、スプレー、ムース、油、ゲル、固体などを含む、クリーム及び液体の形態であり得る。局所投与可能な製剤は、例えば、約1%~約10%(w/w)の活性成分を含むが、活性成分の濃度は、溶媒中の活性成分の溶解限度と同様の高さであってもよい。局所投与用の製剤は、本明細書に記載の1つ以上のさらなる成分をさらに含んでもよい。
【0250】
浸透促進剤を使用してもよい。これらの材料は、皮膚への薬物の浸透率を高める。当技術分野における典型的な促進剤には、エタノール、グリセロールモノラウレート、PGML(ポリエチレングリコールモノラウレート)、ジメチルスルホキシドなどが含まれる。他の促進剤には、オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質、又はN-メチル-2-ピロリドンが含まれる。
【0251】
本発明のいくつかの組成物の局所送達のための1つの許容されるビヒクルは、リポソームを含有し得る。リポソームの組成及びそれらの使用は当技術分野で公知である(例えば、米国特許第6,323,219号明細書を参照)。
【0252】
別の実施形態では、局所活性医薬組成物は、アジュバント、抗酸化剤、キレート剤、界面活性剤、発泡剤、湿潤剤、乳化剤、増粘剤、緩衝剤、保存剤などの他の成分と任意選択により組み合わせ得る。別の実施形態では、浸透又は浸透促進剤が組成物に含まれ、浸透促進剤を欠く組成物に関して角質層への及び角質層を通る活性成分の経皮浸透を改善するのに有効である。オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質、又はN-メチル-2-ピロリドンを含む様々な浸透促進剤は、当業者に公知である。別の態様では、組成物は、ハイドロトロピー剤をさらに含んでもよく、これは、角質層の構造における障害を増加させるように機能し、したがって角質層を横切る輸送を増加させる。イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、又はキシレンスルホン酸ナトリウムなどの様々なハイドロトロピー剤は、当業者に公知である。
【0253】
局所的に活性な医薬組成物は、所望の変化に影響を及ぼすのに有効な量で適用されるべきである。本明細書で使用される「有効量」は、変化が望まれる皮膚表面の領域を覆うのに十分な量を意味するものとする。様々な実施形態では、活性化合物は、組成物の重量の約0.0001%~約15%、組成物の約0.0005%~約5%、又は組成物の約0.001%~約1%の量で存在し得る。そのような化合物は、合成由来又は天然由来であり得る。
【0254】
経口製剤
本発明の組成物及び前記化合物を含有する医薬組成物は、経口投与され得、したがって、経口投与に適した形態で、すなわち、固体又は液体調製物として、製剤化され得る。適切な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレットなどが挙げられる。適切な液体経口製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油などが挙げられる。カプセルの形態で製剤化される場合、本発明の組成物は、活性化合物及び不活性な担体又は希釈剤に加えて、硬質ゲル化カプセルを含む。一実施形態では、経口投与用の製剤は、腸溶コーティングされた徐放性カプセルである。
【0255】
経口投与に適した製剤は、それぞれが所定量の活性化合物を含む、カプセル、カシェ剤、ロゼンジ、もしくは錠剤など;粉末もしくは顆粒など;水性又は非水性液体中の溶液もしくは懸濁液など;又は水中油型もしくは油中水型エマルジョンなどの個別の単位で提供できる。そのような製剤は、活性化合物と適切な担体(上記の1つ以上の補助成分を含み得る)を関連させることを含む、任意の適切な薬学的方法によって調製することができる。一般に、本発明の製剤は、活性化合物を液体又は微粉化固体担体、又はその両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要に応じて得られた混合物を成形することにより調製される。例えば、錠剤は、活性化合物を含有する粉末又は顆粒を、任意選択により1つ以上の補助成分と共に、圧縮又は成形することにより調製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械で、任意選択により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、及び/又は界面活性剤/分散剤と混合された、粉末又は顆粒などの自由流動形態の化合物を圧縮することにより調製できる。成形錠剤は、不活性液体結合剤で湿らせた粉末化合物を適切な機械で成形することにより作製できる。
【0256】
他の投与経路用の製剤
本発明の組成物及び前記化合物を含有する医薬組成物は、さらに鼻腔内、すなわち、吸入によって投与され得、したがって、鼻腔内投与に適した形態で、すなわち、エアロゾル又は液体調製物として、製剤化され得る。
【0257】
本発明の組成物はまた、例えば、非経口投与用に製剤化してもよい。非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水又は滅菌等張生理食塩水と組み合わせた活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、パッケージ又は販売され得る。注射用製剤は、アンプル、又は保存剤を含有する複数回投与容器、などの単位剤形で調製、パッケージ又は販売され得る。非経口投与のための製剤としては、限定されないが、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、及び埋め込み可能な持続放出性又は生分解性製剤が挙げられる。このような製剤は、限定されないが、懸濁剤、安定化剤又は分散剤を含む1つ以上のさらなる成分をさらに含み得る。非経口投与のための製剤の一実施形態では、活性成分は、再構成組成物の非経口投与の前に、適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0258】
医薬組成物は、滅菌された注射用の水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で調製、パッケージ又は販売され得る。この懸濁液又は溶液は、公知の技術に従って製剤化され得、活性成分に加えてさらなる成分、例えば本明細書に記載される分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を含み得る。このような滅菌注射用製剤は、例えば、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒、例えば水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容される希釈剤及び溶媒としては、限定されないが、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドなどの固定油が挙げられる。有用な他の非経口投与可能な製剤としては、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、又は生分解性ポリマー系の成分として、活性成分を含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー又は難溶性塩などの、薬学的に許容されるポリマー材料又は疎水性材料を含み得る。
【0259】
製剤は、安全かつ有効であると考えられる材料で構成される薬学的に許容される「担体」を使用して調製され、望ましくない生物学的副作用又は望まれない相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る。「担体」は、単数又は複数の活性成分以外の医薬製剤中に存在する全ての成分である。「担体」という用語には、限定されないが、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、及びコーティング組成物が含まれる。「担体」には、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、及び滑剤を含み得るコーティング組成物の全ての成分も含まれる。遅延放出投薬製剤は、錠剤及びカプセル剤、ならびに錠剤、カプセル剤、及び顆粒剤の遅延放出剤形を調製するための担体、材料、装置、プロセスに関する情報を提供する、“Pharmaceutical dosage form tablets”,eds.Liberman et.al.(New York,Marcel Dekker,Inc.,1989)、“Remington--The science and practice of pharmacy”,20th ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,Md.,2000、及び“Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems”,6th Edition,Ansel et.al.,(Media,Pa.:Williams and Wilkins,1995)などの参考文献に記載されているように調製され得る。
【0260】
適切なコーティング材料の例としては、限定されないが、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースポリマー;ポリ酢酸ビニルフタレート、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、及び商品名Eudragit(登録商標)(Roth Pharma,Westerstadt,Germany)で市販されているメタクリル樹脂、ゼイン、シェラック、及び多糖類が挙げられる。
【0261】
さらに、コーティング材料は、可塑剤、顔料、着色剤、滑剤、安定化剤、細孔形成剤及び界面活性剤などの従来の担体を含有し得る。
【0262】
薬物含有錠剤、ビーズ、顆粒又は粒子中に存在する任意選択による薬学的に許容される賦形剤としては、限定されないが、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、安定剤、及び界面活性剤が挙げられる。希釈剤は、「充填剤」とも呼ばれ、典型的には、錠剤の圧縮又はビーズ及び顆粒の形成につき実用的なサイズが提供されるように、固体剤形のバルクを増加させるために必要である。適切な希釈剤としては、限定されないが、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、加水分解澱粉、アルファ化澱粉、二酸化ケイ素、酸化チタン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム及び粉砂糖が挙げられる。
【0263】
結合剤は、固体剤形に凝集性を付与するために使用され、したがって、剤形の形成後に錠剤又はビーズ又は顆粒がインタクトなままであることを保証する。適切な結合剤材料の例としては、限定されないが、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖類(ショ糖、グルコース、デキストロース、乳糖及びソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、セルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを含む)、及びヴィーガム(veegum)などの天然及び合成ゴム、及びアクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸及びポリビニルピロリドンなどの合成ポリマーが挙げられる。
【0264】
潤滑剤は、錠剤の製造を容易にするために使用される。適切な潤滑剤の例には、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルク、及び鉱油が含まれる。
【0265】
崩壊剤は、投与後の剤形の崩壊又は「ブレークアップ」を促進するために使用され、一般的に、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファ化デンプン、粘土、セルロース、アルギニン、ゴム、又は架橋PVP(GAF Chemical CorpのPolyplasdone XL)などの架橋ポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0266】
安定剤は、例として酸化反応を含む、薬物分解反応を阻害又は遅延させるために使用される。
【0267】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性の界面活性剤であり得る。適切な陰イオン界面活性剤としては、限定されないが、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、及び硫酸イオンを含有するものが挙げられる。陰イオン性界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの、長鎖アルキルスルホネート及びアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホコハク酸ジアルキルナトリウム;ビス-(2-エチルチオキシル)-スルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸ジアルキルナトリウム;及びラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレン及びココナッツアミンなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル-4-オレエート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、PEG-150ラウレート、PEG-400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、Poloxamer(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、及びポリオキシエチレン硬化獣脂アミドが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N-ドデシル-ベータ-アラニンナトリウム、N-ラウリル-ベータ-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンフォアセテート、ラウリルベタイン及びラウリルスルホベタインが挙げられる。
【0268】
必要に応じて、錠剤、ビーズの顆粒又は粒子は、湿潤剤又は乳化剤、染料、pH緩衝剤、及び保存剤などの非毒性補助物質を少量含有してもよい。
【0269】
当業者によって理解されるように、また、関連する文書及び文献に記載されているように、様々な薬物放出プロファイルを提供する薬物含有錠剤、ビーズ、顆粒又は粒子を調製するための多くの方法が利用可能である。このような方法としては、限定されないが、以下:適切なコーティング材料で薬物又は薬物含有組成物をコーティングすること(典型的には、必ずしもポリマー材料を組み込む必要はない)、薬物粒子サイズを増加させること、薬物をマトリックス内に配置すること、及び薬物と適切な錯化剤との複合体を形成すること、が挙げられる。
【0270】
遅延放出投薬単位は、従来の技術、例えば、従来のコーティングパン、エアレススプレー技術、流動床コーティング装置(Wursterインサートを有する又は有しない)などを使用して、遅延放出ポリマーコーティングでコーティングされてもよい。錠剤及び遅延放出剤形を調製するための材料、装置、及びプロセスに関する詳細な情報は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,eds.Lieberman et al.(New York:Marcel Dekker,Inc.,1989)、及びAnsel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,6th Ed.(Media,Pa.:Williams & Wilkins,1995)を参照されたい。
【0271】
徐放性錠剤を調製するための例示的な方法は、薬物含有混合物、例えば、直接混合、湿式造粒、又は乾式造粒プロセスを使用して調製された顆粒の混合物を圧縮することによるものである。徐放性錠剤はまた、適切な水溶性潤滑剤を含む湿潤材料から出発して、圧縮ではなく成形してもよい。しかしながら、錠剤は成形ではなく圧縮を使用して製造される。徐放性薬物含有混合物を形成する方法は、薬物粒子を、希釈剤(又は充填剤)、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、滑剤、及び着色剤などの1つ以上の賦形剤と直接混合することである。直接混合の代替として、湿式造粒又は乾式造粒プロセスを使用して、薬物含有混合物を調製してもよい。活性剤を含有するビーズはまた、典型的には分散液から出発して、多くの従来技術のいずれか1つによって調製され得る。例えば、薬物含有ビーズを調製するための典型的な方法は、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、タルク、ステアリン酸金属塩類、二酸化ケイ素、可塑剤などの医薬賦形剤を含有するコーティング懸濁液又は溶液に活性剤を分散又は溶解することを伴う。混合物は、およそ60~20メッシュのサイズを有する糖球(又はいわゆる「ノンパレル」)などのビーズコアをコーティングするために使用される。
【0272】
薬物ビーズを調製するための代替手順は、薬物を微結晶セルロース、乳糖、セルロース、ポリビニルピロリドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、崩壊剤などの1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と混合し、混合物を押し出し、押し出し物を球状化し、乾燥し、任意選択によりコーティングして、即時放出ビーズを形成することによるものである。
【0273】
遅延放出製剤は、胃の酸性環境中で不溶性であり、小腸の中性環境中で可溶性であるポリマーのフィルムで固体剤形をコーティングすることにより作られる。遅延放出投与単位は、例えば、選択されたコーティング材料で薬物又は薬物含有組成物をコーティングすることにより、調製することができる。薬物含有組成物は、例えば、カプセルに組み込むための錠剤、「コーティングされたコア」剤形の内部コアとして使用するための錠剤、又はタブレットもしくはカプセルに組み込むための複数の薬物含有ビーズ、粒子もしくは顆粒であり得る。例示的なコーティング材料には、生侵食性、徐々に加水分解性、徐々に水溶性、及び/又は酵素的に分解可能なポリマーが含まれ、従来の「腸溶性」ポリマーであってもよい。腸溶性ポリマーは、当業者に理解されるように、下部消化管のより高いpH環境中で可溶性になるか、又は剤形が胃腸管を通過するにつれて緩徐に侵食され、一方、酵素的に分解可能なポリマーは、下部消化管、特に結腸中に存在する細菌酵素によって分解される。遅延放出をもたらすための適切なコーティング材料の例としては、限定されないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸エチルから形成される、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、ならびにEudragit(登録商標).L30D-55及びL100-55(pH5.5以上で可溶性)、Eudragit(登録商標).L-100(pH6.0以上で可溶性)、Eudragit(登録商標).S(高度のエステル化の結果としてpH7.0以上で可溶性)、及びEudragits(登録商標).NE、RL及びRS(異なる程度の透過性及び膨張性を有する水不溶性ポリマー)を含む、商品名Eudragit(登録商標).(Rohm Pharma;Westerstadt,Germany)で市販されている他のメタクリル樹脂;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸ビニルフタレート、酢酸ビニルクロトン酸コポリマー、及びエチレン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマー及びコポリマー;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロース、及びグアーガムなどの酵素分解性ポリマー;ゼイン及びシェラックが挙げられる。異なるコーティング材料の組み合わせを使用してもよい。異なるポリマーを使用した多層コーティングも適用され得る。
【0274】
コーティング組成物は、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、滑剤などの従来の添加剤を含んでもよい。可塑剤は通常、コーティングの脆弱性を低減するために存在し、一般的に、ポリマーの乾燥重量に対し約10重量%~50重量%に相当する。典型的な可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、ヒマシ油及びアセチル化モノグリセリドが含まれる。安定化剤は、分散体中の粒子を安定させるために使用される。典型的な安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベート、及びポリビニルピロリドンなどの非イオン性乳化剤である。流動促進剤は、フィルム形成及び乾燥中の粘着効果を低減するために推奨され、一般的に、コーティング溶液中のポリマー重量の約25重量%~100重量%に相当する。1つの効果的な滑剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウム及びモノステアリン酸グリセロールなどの他の滑剤も使用され得る。二酸化チタンなどの顔料も使用され得る。シリコーン(例えば、シメチコン)などの少量の消泡剤もコーティング組成物に添加され得る。
【0275】
粒子は、完全に治療剤から、又は治療剤及び界面活性剤の組み合わせから、調製することができる。粒子は様々な材料で作製することができる。無機材料及び有機材料の両方を使用することができる。例えば、セラミックを使用してもよい。高分子材料及び脂肪酸などの非高分子材料を使用して、空気力学的に軽い粒子が形成され得る。他の適切な材料としては、限定されないが、ゼラチン、ポリエチレングリコール、トレハロース、及びデキストランが含まれる。粒子材料などの要因に基づいて、数秒から数か月の範囲の分解及び放出時間を有する粒子を設計及び製造できる。
【0276】
治療剤又は診断剤(又はおそらく送達のための他の望ましい分子)に加えて、粒子は、ラクトースなどの糖、アルブミンなどのタンパク質、及び/又は界面活性剤、などの賦形剤を含み得る。
【0277】
腸溶性カプセル:本明細書で使用する「胃耐性天然ポリマー」とは、胃の酸性pH中で不溶性の天然ポリマー又は天然ポリマーの混合物を指す。本明細書で使用される「フィルム形成性天然ポリマー」は、フィルム形成を受ける、噴霧、刷毛塗り、又は様々な工業プロセスによって適用される表面コーティングに有用なポリマーを指す。ほとんどのフィルム形成プロセスでは、比較的低粘度の液体コーティング剤が固体基材に適用され、硬化されて、使用者が望む特性を有する固体高分子量ポリマー系接着フィルムになる。大部分の一般的な用途では、このフィルムの厚さは0.5~500マイクロメートル(0.0005~0.5ミリメートル、又は0.00002~0.02インチ)である。
【0278】
本明細書で使用される「ゲル化剤」とは、分散媒中に水和及び分散されるとき、又は分散媒中に溶解されるときに高度の架橋又は会合を受ける物質を指す。分散相のこの架橋又は結合により、分散媒の粘度が変化する。分散媒の動きは分散相によって制限され、粘度が増加する。
【0279】
(1)胃耐性天然ポリマー;(2)フィルム形成天然ポリマー;及び任意選択により、(3)ゲル化剤、を含有する胃耐性フィルム形成性組成物が本明細書に記載される。例示的な胃耐性天然ポリマーには、限定されないが、典型的には線状多糖鎖を形成するガラクツロン酸及びガラクツロン酸メチルエステル単位から主に構成される、ペクチン及びペクチン様ポリマーが含まれる。典型的には、これらの多糖類は、ガラクツロン酸、ラムノース、アラビノース、及びガラクトースが豊富であり、例えば、ポリガラクツロナン、ラムノガラクツロナン、及びいくつかのアラビナン、ガラクタン、及びアラビノガラクタンである。これらは通常、エステル化の程度に応じて分類される。高(メチル)エステル(「HM」)ペクチンでは、カルボキシル基の比較的大部分がメチルエステルとして発生し、残りのカルボン酸基は遊離酸、又はそのアンモニウム、カリウム、カルシウム又はナトリウム塩としての形態である。有用な特性は、エステル化の程度及び重合の程度によって異なり得る。カルボキシル酸単位の50%未満がメチルエステルとして生じるペクチンは、通常、低(メチル)エステル又はLM-ペクチンと称される。一般に、低エステルペクチンは、穏やかな酸性又はアルカリ性条件での処置により、高エステルペクチンから得られる。アンモニアがアルカリ脱エステル化プロセスで使用される場合、アミド化ペクチンは高エステルペクチンから得られる。このタイプのペクチンでは、残りのカルボン酸基の一部が酸アミドに変換されている。アミド化ペクチンの有用な特性は、エステル単位とアミド単位の割合及び重合度によって異なり得る。一実施形態では、胃耐性天然ポリマーはペクチンである。胃耐性天然ポリマーは、組成物の重量の約5%未満、例えば、組成物の重量の約2~約4%の量で存在する。
【0280】
例示的なフィルム形成天然ポリマーとしては、限定されないが、ゼラチン及びゼラチン様ポリマーが挙げられる。例示的な実施形態では、フィルム形成天然ポリマーはゼラチンである。多数の他のゼラチン様ポリマーが市販されている。皮膜形成天然ポリマーは、組成物の重量の約20重量%~約40重量%、例えば、組成物重量の約25重量%~約40重量%の量で存在する。
【0281】
組成物は、任意選択によりゲル化剤を含有し得る。例示的なゲル化剤には、Ca2+及びMg2+などの二価カチオンが含まれる。これらのイオン源としては、無機カルシウム及びマグネシウム塩、及びカルシウムゼラチンが挙げられる。ゲル化剤は、組成物の重量の約2%未満、例えば、組成物の重量の約1%未満の量で存在する。
【0282】
1つ以上の可塑剤を組成物に添加して、フィルム形成プロセスを促進することができる。適切な可塑剤には、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、3~6個の炭素原子を有するポリアルコール、クエン酸、クエン酸エステル、クエン酸トリエチル及びそれらの組み合わせが含まれる。1つ以上の可塑剤の濃度は、組成物の約8重量%~約30重量%である。一実施形態では、可塑剤はグリセリン及び/又はソルビトールである。
【0283】
フィルム形成性組成物を使用して、活性剤及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含有する液体又は半固体充填材料又は固体錠剤(Softlet(登録商標))をカプセル化できるソフト又はハードシェルゼラチンカプセルを調製することができる。あるいは、組成物は、活性剤が組成物中に溶解又は分散した液体として投与することができる。
【0284】
フィルム形成組成物は、当技術分野で周知の技術を使用して、ソフトカプセル又はハードカプセルを調製するために使用され得る。例えば、ソフトカプセルは、典型的にはロータリーダイカプセル化プロセスを使用して製造される。充填製剤は、重力によってカプセル化機に供給される。
【0285】
カプセルシェルは、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、3~6個の炭素原子を有するポリアルコール、クエン酸、クエン酸エステル、クエン酸トリエチル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の可塑剤を含み得る。
【0286】
可塑剤に加えて、カプセルシェルは、乳白剤、着色剤、保湿剤、保存剤、香味料、緩衝塩及び酸などの他の適切なシェル添加剤を含み得る。
【0287】
カプセル化された活性剤が光に敏感である場合、乳白剤を使用してカプセルシェルを不透明化する。適切な乳白剤には、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0288】
着色剤は、マーケティング及び製品の識別/差別化の目的で使用できる。適切な着色剤には、合成及び天然染料及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0289】
保湿剤を使用して、ソフトジェルの水分活性を抑制することができる。適切な保湿剤にはグリセリン及びソルビトールが含まれ、これらは可塑剤組成物の成分であることが多い。適切に保存された乾燥ソフトジェルは水分活性が低いため、微生物による最大のリスクはカビ及び酵母から生じる。このため、カプセルシェルに保存剤を組み込むことができる。適切な保存剤には、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びヘプチル(総合的に「パラベン」として知られる)などのp-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0290】
香味料は、充填製剤の不快な臭気及び味をマスキングするために使用することができる。適切な香味料には、合成香味料及び天然香味料が含まれる。香味料の使用は、ゼラチンを架橋することができるアルデヒドの存在のために、問題になり得る。その結果、ゼラチンの架橋を阻害するために、緩衝塩及び酸を、アルデヒドを含有する香味料と組み合わせて使用することができる。
【0291】
ソフト又はハードカプセルを使用して、様々な薬学的に活性剤を送達することができる。適切な薬剤には、小分子、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、及び完全な生物が含まれる。
【0292】
充填製剤は、安全かつ有効であると考えられる材料で構成される薬学的に許容される「担体」を使用して調製され得、望ましくない生物学的副作用又は望まれない相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る。担体は、単数又は複数の活性成分以外の医薬製剤中に存在する全ての成分である。本明細書で一般的に使用される「担体」には、限定されないが、界面活性剤、保湿剤、可塑剤、結晶化阻害剤、湿潤剤、バルク充填剤、可溶化剤、バイオアベイラビリティ増強剤、pH調整剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0293】
あるいは、組成物は、活性剤が組成物中に溶解した液体(例えば、溶液)又は分散した液体(例えば、懸濁液)として投与することができる。適切な活性剤は上に記載されている。溶液又は懸濁液は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を使用して調製され得る。適切な賦形剤には、限定されないが、界面活性剤、保湿剤、可塑剤、結晶化阻害剤、湿潤剤、バルク充填剤、可溶化剤、バイオアベイラビリティ増強剤、pH調整剤、香味剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0294】
粘膜付着性粒子及び製造方法:一般的に、組織へのポリマーの接着は、(i)物理的又は機械的結合、(ii)一次又は共有化学結合、及び/又は(iii)二次化学結合(例えば、イオン性)によって達成され得る。物理的又は機械的結合は、粘液の裂け目又は粘膜のひだにおける接着材料の堆積及び包接から生じ得る。生体接着特性に寄与する二次化学結合は、分散相互作用(例えば、ファンデルワールス相互作用)、及び水素結合を含むより強力な特異的相互作用から構成される。水素結合の形成に関与する親水性官能基は、ヒドロキシル基(-OH)及びカルボキシル基(-COOH)である。
【0295】
接着性高分子ミクロスフェアは、以下に詳細に説明するように、化学組成と表面積などの物理的特性の関数として形成される物理的及び化学的結合に基づいて選択されている。これらのミクロスフェアは、11mN/cmを超える粘膜への接着力によって特徴付けられる。これらのミクロスフェアのサイズは、ナノ粒子~直径1ミリメートルの範囲である。接着力は、ポリマー組成、生体基質、粒子の形態、粒子の形状寸法(例えば、直径)、及び表面改質の関数である。
【0296】
生体接着性ミクロスフェアの形成に有用なポリマーのクラス:生体接着性ミクロスフェアを形成するために使用できる適切なポリマーには、可溶性及び不溶性、生分解性及び非生分解性ポリマーが含まれる。これらは、天然又は合成のヒドロゲル又は熱可塑性プラスチック、ホモポリマー、コポリマー又は混合物である。しかしながら、重要な特徴は、ラット腸の粘膜表面に適用した場合、ポリマーが110N/m2(11mN/cm2)~100,000N/m2の生体接着相互作用を生まなければならないことである。
【0297】
生体接着性粒子が胃腸管を覆う粘液にそれ自身を埋め込むか、又は貪食されるためには、個々の粒子の半径は、天然の粘液層と同様の厚さでなければならない。胃粘膜層の厚さは、典型的には、ラットで5~200mμ、ヒトで10~400mμまで異なることが示されている。ただし、場合によっては、Spiro,R.G.,“Glycoproteins,” Annual Review of Biochemistry,39,599-638,1970;Labat-Robert,J.& Decaeus,C.,“Glycoproteins du Mucus Gastrique:Structure,Fonction,et Pathologie,” Pathologie et Biologie(Paris),24,241,1979;Allen,A.,Hutton,D.A.,Pearson,J.P.,& Sellers,L.A.,“Mucus Glycoprotein Structure,Gel Formation and Gastrointestinal Mucus Function” in Mucus and Mucosa,Ciba Foundation Symposium 109(eds.J.Nugent & M.O’Connor),pp.137(London:Pitman,1984)に記載されるように、ヒトにおいて1000mμもの厚さに達することもある。過去には、親水性ポリマーとヒドロゲルの2つのクラスのポリマーが有用な生体接着特性を示すようであった。親水性ポリマーの大クラスでは、カルボキシル基(例えば、ポリ[アクリル酸])を含有するポリマーが最高の生体接着特性を示す。カルボキシル基の濃度が最も高いポリマーは、軟部組織への生体接着に好まれる材料であろうと推測できよう。他の研究では、最も有望なポリマーは、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びメチルセルロースであった。これらの材料のいくつかは水溶性であり、他の材料はヒドロゲルである。
【0298】
ポリ[ラクチド-コ-グリコリド]、ポリ無水物、及びポリオルトエステルなどの急速生体侵食性のポリマーは、そのカルボキシル基が、その滑らかな表面が侵食されるにつれ外面に露出し、生体接着性薬剤送達システムの優れた候補である。さらに、ポリ無水物及びポリエステルなどの不安定な結合を含有するポリマーは、その加水分解反応性でよく知られている。それらの加水分解速度は、一般的にポリマー骨格の単純な変化により変化する。
【0299】
代表的な天然ポリマーには、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、又はコラーゲンなどのタンパク質、セルロース、デキストラン、ポリヒアルロン酸、アクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー、及びアルギン酸などの多糖類が含まれる。代表的な合成ポリマーには、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそれらのコポリマーが含まれる。合成修飾天然ポリマーには、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、及びニトロセルロースが含まれる。目的の他のポリマーとしては、限定されないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルフェノールが含まれる。代表的な生侵食性ポリマーには、ポリラクチド、ポリグリコリド及びそのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ[ラクチド-コ-グリコリド]、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ブレンド及びそれらのコポリマーが含まれる。
【0300】
本発明の薬学的に許容される化合物は、通常、毎日の投与レジメンで対象に投与される。成人対象の場合、これは、例えば、少なくとも1つのSCFA又はSCFA部分を含む化合物の、0.1グラム~15グラムの経口用量であり得る。さらなる実施形態では、少なくとも1つのSCFA又はSCFA部分を含む化合物の経口用量は、0.5グラム~10グラムであり得る。なおさらなる実施形態では、少なくとも1つのSCFA又はSCFA部分を含む化合物の経口用量は、0.5グラム~6グラムであり得る。
【0301】
医薬組成物は、1日あたり1、2、3、4回又はそれを超えて投与され得る。したがって、特定の実施形態では、例えば局所投与用に製剤化された組成物は、毎日複数回投与され得る。
【0302】
一実施形態では、第1及び第2のSCFAの1:1(w/w)比を含む組成物が企図され、第1のSCFAは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10グラム存在し得る。他の実施形態では、第1及び第2のSCFAの比率は、2:1、3:1、4:1、5:1;6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1(w/w)であり得、第1のSCFAは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10グラム存在し得る。当然ながら、投与される第1及び第2のSCFAの比は、本明細書で上記に開示されたものとは異なり得る。例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10グラムの第1のSCFAを含む第1のSCFAの任意の量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10グラムの第2のSCFAを含む第2のSCFAの任意の量と共に投与され得る。このような量のいずれかの補給剤は、1つの組成物に混合されてもよく、別個の組成物であってもよい。
【0303】
キット
本発明はまた、本発明の方法に有用な化合物と、例えば本明細書の他の箇所に記載される本発明の組成物の投与方法を記載する、説明資料とを含むキットを含む。一実施形態では、キットは本発明の組成物を含む。
【実施例0304】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例は、例示目的でのみ提供されるものであり、特に指定がない限り、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されると決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意かつ全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【0305】
さらなる説明がなくとも、当業者であれば、上記説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明を作製及び利用し、特許請求の範囲に記載の方法を実施し得ると考えられる。したがって、以下の実施例は、本開示の他の部分をいかなる形で限定するものとも解釈されるべきではない。
【0306】
実施例1:短鎖脂肪酸による皮膚障害の処置
乾癬は慢性の自己炎症性疾患で、皮膚に隆起した赤い鱗状の斑点が現れる。これは、典型的には、肘、膝、又は頭皮の外側に影響を及ぼすが、どの場所にも現れる可能性がある。一部の人は、乾癬が、かゆみ、灼熱感、及び刺痛を有することを報告している。乾癬は、糖尿病、心臓病、及びうつ病などの他の深刻な健康状態に関連している。
【0307】
乾癬の現在の処置法には、局所(クリーム、軟膏、及び光線療法)及び全身(経口及び注射薬)療法が含まれる。局所クリームと軟膏には、コルチコステロイド(過剰使用は皮膚の薄化及び耐性を引き起こし得る)、レチノイド、アントラリン(皮膚細胞の成長を正常化する)及びビタミンD類似体(レチノイド、アントラリン又はビタミンD類似体による処置は皮膚を刺激し得る)、カルシニューリン阻害剤(T細胞の活性化を妨害し、継続的な使用は皮膚癌及びリンパ腫のリスク増加に関連する)、ならびに非処方保湿剤及びサリチル酸が含まれる。
【0308】
光線療法(UV光)には、紫外線A(UVA)又は紫外線B(UVB)の単独使用又は薬剤と組み合わせた使用が含まれる。短期的な副作用には、悪心、頭痛、灼熱感、及びかゆみが含まれる。長期的な副作用には、乾燥してしわのよった肌、そばかす、及び黒色腫を含む皮膚癌のリスク増加が含まれる。
【0309】
現在利用可能な全身性乾癬治療には、レチノイド(副作用には、唇の炎症、脱毛、及び重度の先天性異常が含まれ得る:女性は、薬を摂取してから少なくとも3年間は妊娠を避けなければならない);メトトレキサート及びシクロスポリンなどの化学療法薬(肝臓の損傷、赤血球及び白血球ならびに血小板の産生の減少、感染症及び癌のリスクの増加を含む、いくつかの重度な副作用を引き起こし得る);ならびに免疫調節薬又は生物製剤(免疫系に強い影響を与え、生命にかかわる感染症を許容し得る)の使用が含まれる。現在利用可能な処置の副作用及び高い毒性は、乾癬に罹患している多くの患者にとって望ましくない。
【0310】
SCFAは、いかなる形態の乾癬の処置にも使用されたことがない。このアプローチの主な利点は、現在利用可能な他の処置と比較して毒性がほとんど又は全くないことである。SCFAは、3週間にわたって1日に3回まで経口投与された。投与スケジュールは、600mgのブチレート錠剤1~2錠を1日3回、7日間から4週間、続いて600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、数週間~数ヶ月間であった。これらの処置には、酪酸のナトリウム、マグネシウム、又はカルシウム塩が使用された。処置を中止すると、乾癬の皮膚病変が再び現れた。処置を再開すると、病変は再び消失した。ブチレートを摂取している4人の個体の処置前後の結果を図2図5に示す。ブチレートカプセルを3~4週間にわたって経口摂取した乾癬を有する個体は、皮膚病変の顕著な改善又は完全な消散を示した。
【0311】
例えば、臨床試験では、健康な個体(フェーズ1)及び乾癬を有する患者(フェーズII)において、選択されたSCFAの異なる組み合わせ及び投与スケジュールを評価できる。
【0312】
例えば、SCFAの単一又は組み合わせの毒性は、用量漸増試験で評価され、毒性のレベル及び影響を受ける組織又は臓器を特定する。マウスで薬物動態(PK)試験を実施して、さらなる前臨床試験のために経口投与量を最適化する。後者のカテゴリーでは、先のマウス試験で乾癬の病因を媒介すると考えられていた分子が、SCFAで処置されたマウスで阻害されるのと同じ経路であるかどうかを確認することが重要である。この研究では、乾癬の2つのマウスモデルを使用する。これらの前臨床試験は、乾癬を有するマウスのSCFAが標的とする炎症誘発性分子が、ヒトの乾癬を媒介すると考えられるものと同じものであることを示す、先のヒト試験によっても検証される。この研究は、SCFAの経口投与がマウスの乾癬病変を解決するかどうかを判断する。これは、経口的に酪酸を摂取しているヒトの場合のようである。SCFAを含有するクリームの投与量を最適化するために、クリームは乾癬を有するマウスにおいて一部の病変に適用され、他の病変には適用されない。処置された病変のみが回復する場合、SCFAの効果は局所的であるが、一部の病変への適用が全ての病変の回復を生じる場合、SCFAの効果は全身分布によって媒介される可能性がある。結果に応じて、患者において並行臨床試験が実施される。
【0313】
実験で使用した材料及び方法を次に記載する。
【0314】
材料及び方法
SCFA
酪酸ナトリウム、酪酸マグネシウム、及び酪酸カルシウムからなるSCFAは、商業的に購入され、BodyBioによって製造された。
【0315】
SCFAによる処置
全ての場合において、ブチレートレジメン中に乾癬処置のためのさらなる薬物は使用されなかった。
【0316】
少なくとも2週間、中程度から重度の乾癬を有する対象に、600mgのブチレートを1日3回経口投与した。重度の乾癬を有する対象に、3週間にわたって1200mgのブチレートを1日3回経口投与し、その後、長期間にわたって600mgのブチレートを1日3回経口投与した。処置の前後に病変を評価した。
【0317】
次に、実験の結果を記載する。
【0318】
図1は、SCFAの影響を受けるシグナル伝達経路を示す図である。図に含まれるタンパク質のうち、IL-18、TLR3、IFN-γ、TNFα、TGF-β、MyD88、PI3K/Akt、JAK/STAT、Smad2/3、Smad4及びIL-10がSCFA処置により下方制御されていることがわかった。この試験では、IL-6、TRIF、PKR、TRAF2、TAK1、及びTRAF6のレベルは評価されなかった。
【0319】
図2は、ブチレート処置レジメンを受けている乾癬患者の結果を示す。使用した処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、16日間であった。画像は、処置前後の患者の左肘、処置前後の患者の右肘、及び患者がブチレート処置レジメンを20日間中止した後の患者の左肘における乾癬の再出現である。
【0320】
図3は、ブチレート処置レジメンを受けている別の乾癬患者の結果を示す。使用した処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、10日間、次いでブチレート錠剤1錠を1日3回、3週間であった。
【0321】
図4は、ブチレート処置レジメンを受けている第3の乾癬患者の結果を示す。使用した処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、7日間、次いで600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、24日間であった。画像は、処置前後の患者の左肘のものである。患者は処置期間中に高用量のアルコールを摂取した。
【0322】
図5は、ブチレート処置レジメンを受けている、皮膚の約50%を超える重度の乾癬を有する第4の患者の結果を示す。患者は、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、4週間、続いて600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、数ヶ月間、のレジメンを開始した。有意な改善が認められ、長期間の処置中に副作用は認められなかった。観察されたプラスの効果が本発明者らの製剤による処置によるものであることを確認するために、患者はレジメンを中止するように求められた。乾癬は約20~25日で再発した(前の写真)。患者は、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、10日間、次いで600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、3週間、のレジメンを開始し、乾癬は消失した(後の写真)。画像は、2回目の処置レジメンの処置前後の患者の左臀部、2回目の処置レジメンの前後の患者の右臀部、及び2回目の処置レジメンの前後の患者の尾骨のものである。
【0323】
図6は、斑状乾癬を有する患者の結果を示す。使用した最初の処置レジメンは、600mgのブチレート錠剤2錠を1日3回、20日間であり、次いでレジメンは用量が低下し、600mgのブチレート錠剤1錠を1日3回、25日間であった。患者がその処置を中止して3~5ヶ月後に有意な改善が観察された。患者は、処置前(少なくとも3ヶ月)、処置中及び処置後(少なくとも2ヶ月)にいかなる薬も服用していなかった。
【0324】
【表1】
【0325】
実施例2:短鎖脂肪酸を使用した皮膚障害の組み合わせ処置
この例は、少なくとも1つの第2の化合物と組み合わせた少なくとも1つのSCFAの投与が、乾癬を含む皮膚疾患及び障害を処置するための効果的なアプローチである、という発見に部分的に基づくものである。理論に拘束されるものではないが、少なくとも1つのSCFAと少なくとも1つの第2の化合物との組み合わせは、皮膚障害の効果的な処置を提供することが予想される。使用が企図される追加の化合物には、PDE4阻害剤、抗炎症性化合物、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、免疫抑制剤、生物学的薬剤、Cox-2阻害剤、アプレミラスト又はその組み合わせ、及び/又は別の薬剤が含まれる。本発明において有用なこれら及び他の化合物の非限定的な例は上記に提供されている。
【0326】
推奨される処置:
アプレミラストとの組み合わせ処置:1日経口用量は、1~2gのブチレート、100mgのプロピオネート、10~15mgのアプレミラスト、10~20mgのマグネシウム、80~100IUのビタミンD3、50~100IUのビタミンE(d-アルファ-トコフェロールアセテート)である。
【0327】
手のひら及び足の乾癬は、処置に対する応答が不良である(体のこれらの部分は、日常の活動により常に「妨害されている」)。手及び足の乾癬が患者の生活の質に及ぼす影響は極めて高い(患者は靴を快適に履くこと、又は手を使用することができない)。
【0328】
このような乾癬では、局所軟膏との組み合わせが重要である。SCFA製剤の1日経口用量は、
2/5部のクロベタゾール(0.05%)、
1/5部のカルシポトリエン(ビタミンD、0.005%)、
1/5部のサリチル酸(10%)、
1/5部のビタミンE(0.5%)
からなる軟膏の適用を伴って使用されるべきである。
【0329】
これらのコンポーネントは全て(別々に)局所処置として使用される。
【0330】
実施例3:眼疾患及び障害の処置における短鎖脂肪酸の使用
ブドウ膜炎の発症は突発的であることが多く、様々なブドウ膜炎疾患の処置及び予後は非常に多岐にわたる。処置の遅れは、深刻な合併症(剥離、失明)を引き起こし得る。疾患の進行を止めるために最初に強力な薬を使用することが重要である。達成された治療効果(特に、炎症の軽減)を維持するために、SCFAを(経口及び/又は点眼剤の形態で)使用することができる。これにより、通常、生物製剤及びステロイドによる長期処置後に観察される負の副作用(緑内障、白内障を含む)が排除される(慢性又は自己免疫性ブドウ膜炎の場合)。SCFAは、抗生物質(点眼剤として)及び/又はステロイド(低減された用量で投与される)との混合物でも使用できる。
【0331】
臨床試験では、健康な個体(フェーズ1)及びブドウ膜炎を有する患者(フェーズII)において、SCFAの異なる組み合わせ及び投与スケジュールを評価する。ブドウ膜炎の一部の症例は細菌又はウイルス感染に関連しているため、製剤はまた、SCFAと共に、適切な抗生物質又は抗ウイルス化合物をそれぞれ含有し得る。
【0332】
さらなる研究には、毒性を評価するために用量漸増試験において単一又は組み合わせのSCFAを試験すること、及びその毒性がどのような形態をとるか(すなわち、どの組織又は臓器が影響を受けるか)を試験することが含まれる。さらなる前臨床試験に使用すべき経口用量を理解するために、マウスで薬物動態(PK)試験を実施してもよい。先の動物試験でブドウ膜炎の病因を媒介すると考えられていた分子が、ここで、SCFAで処置された動物モデルで阻害されるのと同じ経路であるかどうかを確認することが重要である。
【0333】
この研究では、ブドウ膜炎の2つのマウスモデルが使用される。1つのモデルでは、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)は、完全フロイントアジュバント(CFA)に結合した網膜抗原S-ag及びIRBPによる免疫化、及び百日咳菌(B.pertussis)毒素ブーストによって誘発される。第2のモデルは、B10.RIIIバックグラウンド上のIRBP161-180ペプチド特異的トランスジェニックT細胞受容体を使用し、これにより、自発性ブドウ膜炎が発症する。これらの前臨床試験は、ブドウ膜炎を有するマウスのSCFAが標的とする炎症誘発性分子が、ヒトのブドウ膜炎を媒介すると考えられるものと同じ分子であることを示す、先のヒト試験によっても検証される。この研究は、SCFAの経口投与がマウスのブドウ膜炎病変を解決することを確認する。
【0334】
ドライアイは、涙液の量及び/又は質が目の表面を十分に潤滑に保つことができない場合に発生する。涙液は、油、水、粘液、及び目を保護する1500種類を超えるタンパク質からなる。涙液は光の集束に重要な役割を果たすため、ドライアイ疾患における視力に影響を与え得る。ドライアイに関与し得る要因には、薬(抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、経口避妊薬、パーキンソン病の薬、高血圧など)、加齢、酒さ、自己免疫障害(シェーグレン症候群、ループス、強皮症など)、ビタミンA欠乏などが含まれる。
【0335】
結果として、マイボーム腺によって産生される外側(脂質層)、涙腺によって産生される中間(水層)、及び杯細胞によって産生される内側(ムチン層)の涙液が損なわれた。
【0336】
人工涙液又は他の潤滑点眼剤の頻繁な使用は、主なドライアイ処置である。ただし、ドライアイが炎症に関連している場合は、シクロスポリンA、コルチコステロイド、タクロリムス、テトラサイクリン誘導体などが使用される(このような処置により、測定可能な臨床的改善が実証された)。そのような場合、ブチレート処置が有用である可能性がある。
【0337】
ベーチェット病(BD)は、自己免疫反応であり、血管(眼の血管を含む)が炎症を起こす(眼のBD)。目の内側の炎症はBDを有する人の半数超で発生し、かすみ目、痛み、発赤を引き起こし得る。疾患の他の症状には、血栓、ならびに中枢神経系及び消化器官の炎症が含まれる。一部の人は、盲目又は重度の障害者になり得る。炎症を軽減するために、コルチコステロイド及び免疫系を抑制する薬物が処方され得る。
【0338】
疾患の発生は主に遺伝因子(ヒト白血球抗原(HLA)-B51抗原)に関連しているが、分子メカニズムには好中球の運動性の増加、TNF-α及びIL-17の産生の増加、IL-10の産生の減少(全てSCFAによって制御される)が関与する。抗TNF-α療法は、ブドウ膜炎を有するBD患者のエフェクターT細胞分化を抑制することが示された。ブチレートはTNF-αを抑制するため、SCFA(経口)による処置はBDにおける炎症からの保護を提供し得る。
【0339】
白内障手術後の炎症は持続し得る。コルチコステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、炎症の処置(予防的又は術後)に使用されるが、白内障手術によって誘導される炎症の処置に関する確立されたガイドラインはない。コルチコステロイドの長期使用は、特に眼内圧の上昇に関して、安全性の懸念を生じている。外科的外傷は、アラキドン酸カスケード(活性化COX-1及びCOX-2酵素によりプロスタグランジン(PG)に変換される)を誘発し、PGはこの疾患で最も重要な炎症媒介物である。ブチレートは、COX-2の発現及びPGの産生を阻害することが示されたため、処置に(点眼剤で)使用できる。
【0340】
動物データに基づくと、治療効果を有するためには、SCFAの経口用量は高くなければならない。
【0341】
推奨される処置:
1日経口用量は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の4~5gのブチレート及び1.5~2gのプロピオネートで、1日2回である。
【0342】
20~30μMのブチレート及び10~20μMのプロピオネートの両方を含む点眼剤も使用できる(これらのSCFAの血漿濃度は最大約30μMであるため)。
【0343】
ドライアイの場合、点眼剤は潤滑剤と組み合わせて1日2回連続して投与する必要がある。
【0344】
他の眼疾患では、点眼剤は、SCFAの経口投与と組み合わせて、1日4回(疾患再燃の場合)、及び1日2回を最大数ヶ月投与すべきである。
【0345】
SCFAは、抗生物質及び/又はステロイドとの混合物で使用できる。
【0346】
例えば、感染性ブドウ膜炎の場合:最初の3~5日間は、抗生物質/ステロイド(医師により処方された用量)を含む点眼剤(又は眼注射)を使用し、次いでその後の2~3週間は、SCFA(20~30μM)及び抗生物質/ステロイド(処方された用量の半分)の混合物を含む点眼剤を使用し、次いでSCFA(20~30μM)のみを含む点眼剤を継続する。疾患の種類及び重症度に基づいて、経口SCFAも、単独で、又は抗生物質と組み合わせて、投与され得る。これにより、治癒が促進され、副作用が最小限に抑えられ得る。
【0347】
SCFAを使用したブドウ膜炎を有する個体の処置
実験は、感染性ブドウ膜炎を有する対象を処置するために設計された。いくつかの場合には、ブチレートが対象に投与される。ブチレート療法の完了後、対象は炎症の大幅な軽減を経験する。
【0348】
実施例4:黄斑変性の処置における短鎖脂肪酸の使用
加齢性黄斑変性(AMD)は、黄斑(網膜の中心部の小さな領域)への損傷を引き起こす。AMDの乾燥型では、脂質凝集体(ドルーゼン)が網膜に蓄積する。乾燥型AMD(地図上萎縮)の後期は、網膜色素上皮細胞及びその上にある光を感知する網膜視細胞の変性を特徴とする。「乾燥型AMDを処置する方法はない。」加齢性眼疾患試験(AREDS)は、高用量のビタミン(ビタミンE及びC)及びミネラル(酸化亜鉛)の毎日の摂取が疾患の進行を遅らせることができることを発見した。湿潤型AMDでは、脈絡膜の血管新生が発生する(新たに未熟な血管が下層の脈絡膜から外側の網膜に向かって成長する)。これらの血管は体液を漏出させ、黄斑の瘢痕化を引き起こす。血管新生に寄与する主要な要因は、血管内皮成長因子(VEGF)である。最も広く使用されている抗血管新生FDA承認療法(眼内注射)には、ペガプタニブ、ルセンティス、及びVEGF-TRAP-Eye(Ambati J,Fowler BJ.Mechanisms of age-related macular degeneration.Neuron,2012;75(1):26-39)が含まれ、これは大半の患者の視力を改善又は安定させる。ブチレートは、in vitro及びin vivoで血管新生を抑制し、低酸素誘導因子(HIF-1a)及びVEGFを含む血管新生促進因子の発現を低下させることが見出された(Canani B,Di Costanzo M,Leone L.The epigenetic effects of butyrate:potential therapeutic implications for clinical practice.Clinical Epigenetics,2012;4(1):4)。したがって、酪酸はAMD処置(点眼剤)に使用できる。
【0349】
臨床試験では、健康な個体(フェーズ1)、次いで成人黄斑変性症(AMD)を有する患者(フェーズII)において、選択されたSCFAの異なる組み合わせ及び投与スケジュールを評価できる。いくつかの試験では、地中海食を摂ることにより、進行性AMDがわずかに改善することが示されているため、一部のヒト試験では、この食事をSCFAと組み合わせて相加効果又は相乗効果を求めても良い。しかしながら、ヒトの試験では、統計的に有意な結果を得るまでに2年以上かかり得る。
【0350】
さらなる研究には、毒性を求めるために用量漸増試験において単一又は組み合わせのSCFA(+/-食事性抗酸化物質)を試験すること、及びその毒性がどのような形態をとるか(すなわち、どの組織又は臓器が影響を受けるか)を試験することが含まれ得る。さらなる前臨床試験に使用すべき経口用量を把握するために、マウスで薬物動態(PK)試験を実施することもできる。後者のカテゴリーでは、先の動物試験で黄斑変性の病因を媒介すると考えられていた分子が、ここで、SCFAで処置された動物モデルで阻害されるのと同じ経路であるかどうかを確認することが重要であり得る。
【0351】
この研究では、AMDの2つのマウスモデルを使用することができる。乾燥型AMDの1つのモデルでは、カルボキシエチルピロール(CEP)修飾アルブミン(CEP-MSA)による免疫化により、免疫介在性網膜変性の新規マウスモデルが誘導された。CEPアルブミン付加物は、酸化ストレスに応答して網膜視細胞で生成した。AMDを有する患者は、循環CEP自己抗体も有する。別のモデルでは、CCL2/CX3CR1 KOマウスは、マクロファージ/網膜ミクログリアの移動(及び補充)に欠陥があり、4~6週齢以内に一部のAMD病変に特徴的な変性変化を発症する。ここでは、酸化ストレスに対する組織の応答は機能的でない(炎症の継続に対する修復)。SCFAが酸化ストレスを遮断し、血管新生を遮断し(VEGF及びPDGFの発現を下方制御することによる)、炎症反応を下方制御することを考慮すると、SCFAは、AMDの予防及び/又は回復に有効であり得る。このような前臨床試験は、AMDを有するマウスのSCFAが標的とする炎症誘発性分子が、ヒトのAMDと関連するものと同じものであることを示す、先のヒト試験によっても検証できる。この研究は、SCFAの経口投与がマウスのAMD病変を解決することを確認できる。
【0352】
推奨される処置:
1日経口用量は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の4~5gのブチレート及び1.5~2gのプロピオネートで、1日2回である。
【0353】
20~30μMのブチレート及び10~20μMのプロピオネートの両方を含む点眼剤も使用できる(これらのSCFAの血漿濃度は最大約30μMであるため)。点眼剤は、SCFAの経口投与と組み合わせて、1日4回(疾患再燃の場合)、及び1日2回を最大数ヶ月投与すべきである。
【0354】
SCFAは、抗生物質及び/又はステロイドとの混合物で使用できる。
【0355】
実施例5:Cセクションで分娩された新生児における自己免疫及びアレルギー疾患の短鎖脂肪酸を用いた処置及び予防
帝王切開(Cセクション)で生まれた乳児は、1型糖尿病(Cardwell et al.,2008,Diabetologia,51(5):726-35)及び喘息(Thavagnanam et al.,2008,Clin Exp Allergy,38(4):629-33)のリスク増加を経験する。これらの乳児(満期又は未熟児)は、産道ではなく、母体の皮膚に特徴的である腸内微生物叢を得る。これにより、新生児はアレルギー性鼻炎、胃腸炎、炎症性腸疾患、喘息、若年性関節リウマチ、食物アレルギー、肥満、及び1型糖尿病などのアレルギー及び自己免疫疾患及び障害の発症の影響を受けやすくなる。1996~2005年の間に米国におけるCセクションの数は約50%増加し、30.2%に達し、これは、WHOが推奨する最適な限度である10~15%をはるかに上回っている。20%を超える比率を有するその他の国には、カナダ、イギリス、メキシコ、ブラジルが含まれ、増加する乳児の数がアレルギー性疾患及び自己免疫疾患のリスクにさらされることを示唆している。最初の子供がCセクションによって分娩された後の2番目の出産のCセクションの割合は、約90%である。現在、これら及びC-セクション分娩後に現れ得るその他のアレルギー性/自己免疫疾患につき標準的な処置法はない。一部のクリニックでは、出生後2分以内に母親の膣液でそれらの乳児を拭くことにより、母親の不足している微生物をCセクションで生まれた乳児に部分的に回復させようと試みる。しかしながら、この実務には賛否両論がある。このアプローチが乳児を不注意に母親の疾患に曝露し得るという証拠さえある。
【0356】
実験は、対象における少なくとも1つの自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害の発症を予防、遅延、又は増強するためにSCFAを使用することの有効性を評価するために設計された。本明細書で議論されるように、Cセクションによって分娩された乳児は、自己免疫及びアレルギー性疾患及び障害を発症するリスクの上昇を経験し、Cセクションの数及び頻度は増加している。したがって、本明細書に開示される少なくとも1つの自己免疫及び/又はアレルギー性疾患又は障害を予防するために、妊婦又はCセクションによって分娩される新生児にSCFAを送達するように実験が設計された。
【0357】
本発明の1つ以上のSCFAは、2ヶ月間にわたって1日3回まで経口投与することができる。投与スケジュールは、1日6錠(600mg/錠)で1週間、続いて、Cセクションが実施されるまで1日3錠(600mg/錠)の摂取であり得る。これらの処置には、SCFAのナトリウム、マグネシウム、又はカルシウム塩を使用することができる。あるいは、Cセクションを予定している妊婦にSCFAが与えられていない場合、SCFAは幼児に提供される食物又は飲料に混ぜることができる。
【0358】
いくつかの態様では、SCFAを補給剤又は栄養補助食品として開発するための実験が設計された。あるいは、SCFAは、母体用の徐放製品を提供する腸溶コーティングカプセルとして再パッケージ化するか、少なくとも生後6~12ヶ月又は18~24ヶ月間、乳児用人工乳又は乳児食への補給剤として添加することができる。臨床試験では、健康な個体(フェーズI)、次いでCセクションで出産する女性及びCセクションで女性に生まれた乳児(フェーズII)において、選択されたSCFAの異なる組み合わせ及び投与スケジュールを評価できる。
【0359】
さらなる実験は、毒性を求めるために用量漸増試験において単一又は組み合わせのSCFAを試験すること、及びその毒性がどのような形態をとるか(すなわち、どの組織又は臓器が影響を受けるか)を試験することが含まれるように設計された。さらなる前臨床試験に使用すべき経口用量を把握するために、マウスで薬物動態(PK)試験を実施することもできる。後者のカテゴリーでは、先のマウス試験で適切なアレルギー又は自己免疫疾患の病因を媒介すると考えられていた分子が、SCFAで処置されたマウスで阻害されるのと同じ経路であるかどうかを確認することが重要である。この研究では、適切なマウスモデルを使用することができる。これらの前臨床試験は、マウスモデルにおけるSCFAが標的とする炎症誘発性分子が、対応するヒトの疾患を媒介すると考えられるものと同じものであることを示す、先のヒト試験によっても検証され得る。この研究により、SCFAの経口投与がマウスの関連疾患又は障害(例えば、病変)を解決するかどうかを判断できる。妊娠後期にCセクション分娩を予定している女性、及びCセクション分娩で出産された新生児の間で並行臨床試験を実施できる。
【0360】
このアプローチの主な利点は、現在利用可能な他の処置と比較して毒性がほとんど又は全くないこと、及び同時に腸の恒常性を再確立するのに役立つことである。
【0361】
Cセクションで生まれた乳児は通常、いかなる定期的な介入も受けない。しかしながら、Similac Pro-Advance及びSimilac Pro-Sensitiveは、大半の母乳に見られるようなプレバイオティクスであるヒト乳オリゴ糖を有する。本実施例は、1つ以上のSCFAとこれらの製品の1つ以上との組み合わせを企図している。
【0362】
推奨される処置:
母乳哺育の乳児の場合:健康な母親への1日経口用量は、最初の1ヶ月は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の1~2gのブチレート及び0.5~1gのプロピオネート及びアセテートで、1日3回、次いで、続く3ヶ月にわたり、その用量の半分である。
【0363】
論文(Xu J,Chen X,Yu S,et al.Effects of Early Intervention with Sodium Butyrate(SB)on Gut Microbiota and the Expression of Inflammatory Cytokines in Neonatal Piglets.PLoS One,2016;11(9):e0162461)では、酪酸ナトリウムでの早期介入は、腸内微生物構造に対し低影響を有する新生仔ブタにおいて回腸炎症性サイトカインを調節し、これは、SBの経口投与は新生仔ブタ(1及び7日齢)の健康に有益な役割を有していた可能性がある。経口用量は150mmol/Lで約10mlであった(仔ブタは約150mmol/Lの酪酸ナトリウムを10ml消費したが、これは約165mgに相当する)。人工乳の補給については、推奨される処置レジメンでは漸増用量を用いる:低濃度から開始し(最初の月は80~100mgのブチレート、20~30mgのアセテート及びプロピオネート)、その後、次の3~5ヶ月の間は用量を100~120mgのブチレートならびに30~40mgのアセテート及びプロピオネートに増加させる)。
【0364】
実施例6:血管炎の処置における短鎖脂肪酸の使用
血管炎は、血管、動脈、静脈、又は毛細血管の炎症を伴うまれな自己免疫疾患であり、あらゆる年齢の人々に影響を及ぼし得る。血管炎はまた、特定の血液癌(白血病及びリンパ腫)に関連している場合がある。異なる種類の血管炎は、影響を受ける血管のサイズ及び位置に従って分類される。一般的な血管炎の処置には、コルチコステロイド及び細胞毒性薬が含まれる。血管炎の病因のいくつかの分子機構は、本発明者らの特許出願において概説されている。GPR-109a経路も重要な役割を果たすことが示された(Chai JT,Digby JE,Choudhury RP.GPR109A and vascular inflammation.Curr.Atheroscler.Rep.2013;15(5):325)。GPR-109a受容体の活性化はNF-κBを下方制御し、多くの選択的GPR109AアゴニストがMerck、GSK、及び他の企業によって開発された。この受容体は、ブチレート(EC50約1.5mM)及びナイアシンによって活性化される。
【0365】
臨床試験では、健康な個体(フェーズ1)、次いで血管炎を有する患者(フェーズII)において、選択されたSCFAの異なる組み合わせ及び投与スケジュールを評価する。この時点で、処置にはシクロホスファミド又はグルココルチコイドが最も頻繁に使用されるが、メトトレキサート、アザチオプリン、及びミコフェノレートも使用されている。問題は、これらが患者への適用を制限する毒性の高い治療アプローチであることである。TNFβ、IL-1又はIL-6に対するモノクローナル抗体を使用したより具体的な生物学的療法には評価が必要である。血管炎の大半の形態であるアテローム形成、及び動脈瘤における炎症プロセスが多くの特徴を共有していることを考慮すると、SCFAを用いた介入は、これらの様々な疾患状態の間で恒常性を再確立する際により幅広い用途を示す可能性が高い。
【0366】
さらなる研究には、毒性を求めるために用量漸増試験において単一又は組み合わせのSCFAを試験すること、及びその毒性がどのような形態をとるか(すなわち、どの組織又は臓器が影響を受けるか)を試験することが含まれる。さらなる前臨床試験に使用すべき経口用量を把握するために、マウスで薬物動態(PK)試験を実施しなければならない。後者のカテゴリーでは、動物試験において血管炎の病因を媒介すると考えられていた分子が、ここで、SCFAで処置された動物モデルで阻害されるのと同じ標的/経路であるかどうかを確認することが重要である。
【0367】
この研究では、ANCA関連血管炎の2つのマウスモデルを使用することができる。それは、これらがかなり良好に特徴付けられているためである。1つのモデルでは、MPOノックアウトマウス(MPO-/-マウス)をMPOで免疫する。次いで、これらの動物に照射し、同系の野生型骨髄で再構成する。抗体産生プラズマ細胞は、比較的放射線抵抗性であるため、循環抗MPOレベルが維持される。骨髄は好中球を再構成し、それが抗MPOの結合に利用可能となる。その後、マウスは、骨髄移植後8週間までに半月体形成性糸球体腎炎及び尿異常を発症する。特定の理論に拘束されるものではないが、MPOを発現する好中球もヒト血管炎における標的であり、SCFAはマクロファージのNF-kB活性を遮断することによりMPO発現を下方制御する(それにより好中球を活性化するマクロファージによる因子の分泌を遮断する)ことを考慮すると、SCFAの投与により、この動物モデルにおける血管炎の発症を遮断できることが提唱される。
【0368】
別のモデルは、野生型C57BL/6マウスをヒト又はマウスMPOで免疫することを含み、これは、MPOに対する体液性及び細胞性の両方の応答の誘導につながる。これ単独では疾患を生じないが、ポリクローナル糸球体結合抗体の受動的移送により、糸球体における好中球の蓄積が生じる。これらの好中球のMPOは、次いで抗原特異的CD4+T細胞の標的となり、ANCA血管炎を有する患者の約50%に見られる自己免疫性糸球体腎炎を引き起こす。必要に応じて、他の動物モデルも利用できる。特定の理論に拘束されるものではないが、SCFAがT細胞のTreg表現型への分化を促進することを考慮すると、SCFAの投与は自己免疫性糸球体腎炎の発症を遮断又は改善できると仮定される。
【0369】
このような前臨床試験は、血管炎を有するマウスのSCFAが標的とする炎症誘発性分子が、ヒトの血管炎と関連するものと同じものであることを示す、文献中の先のヒト試験によっても検証できる。この研究により、SCFAの経口投与がマウスの血管炎を解決するかどうかを判断できる。
【0370】
この実施例で概説されたモデルは、血管炎の病因の全ての側面を網羅していない可能性があり、多くの形態の血管炎について、利用可能な動物モデルはない。例えば、ANCA血管炎に関して、肉芽腫性PR3-ANCAの再現可能なモデルはない。しかしながら、使用されるモデルは、血管炎に対するヒト臨床試験にSCFAを取り入れるべきかどうかに関する原理証明を確立できる。
【0371】
推奨される処置:
1日経口用量は、最初の1ヶ月は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の5~6gのブチレートで、1日3回、次いで、数ヶ月にわたり、3~4gのブチレートで、1日2回である。再燃の場合、高用量を使用すべきである。
【0372】
ブチレートは、低減した用量のステロイド及び化学療法剤と組み合わせて使用され得る。
【0373】
実施例7:選択されたリンパ腫を処置するための短鎖脂肪酸の使用
本例は、長期寛解の達成及び選択されたリンパ腫の再発の防止の困難さを組み合わせた、SCFAの特性に基づいた着想であるため、選択された各リンパ腫の1-2前臨床モデルでこのアプローチを試験して、ヒト試験の原理証明を確立するのに有用であり得る。本発明自体は、単純に、診断時のSCFAの、単独又は標準治療療法と組み合わせた経口投与を含むものである。さらに、マウスモデルでは、リンパ腫の発症前の処置により、SCFAが腫瘍の発症を遅延又は遮断できるかが確証できる。ヒトにおけるこれらの癌は、疾患の臨床段階の前に存在し得る複数の遺伝子異常を伴うことが多いこと、及びこれらの腫瘍の一部が関連する遺伝的素因を有し得ることを考慮すると、SCFAが再発/ぶり返しの予防に(少なくとも)役立ち得ることを示唆している。
【0374】
SCFAは、(1)本明細書で使用されるSCFAはNF-B活性を遮断するため、NF-Bの構成的活性化に依存する選択されたリンパ腫に対し、単独又は標準治療処置と組み合わせて、(2)リンパ腫の再発/ぶり返しを遅延又は防止するため、(3)標準治療処置の毒性プロファイルを低下させ、それにより長期的な生活の質を向上させるため、(4)リンパ腫が出現する前にリスクの高い患者に介入できるように、及び(5)SCFAヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害活性によって、リンパ腫を標的とするために使用され得、これは、実際の又は開発中の他の治療アプローチの一部ではない。これらの特徴は、本発明を拡張して、高い腫瘍負荷を有する患者をより良好に処置するのに役立つだろう。
【0375】
推奨される処置:
1日経口用量は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の4~5gのブチレートで、連続的に1日3回である。
【0376】
ブチレートによる処置は、低減した用量のステロイド及び化学療法剤と組み合わせて行われ得る。
【0377】
実施例8:白血病を処置するための短鎖脂肪酸の使用
フィラデルフィア染色体陰性(Ph-)骨髄増殖性新生物(MPN)には、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、及び骨髄線維症(MF)が含まれ、これらは全て急性骨髄性白血病(AML)に発展し得る。MPNは、骨髄増殖性白血病(MPL)癌遺伝子及びシグナル伝達分子、JAK2(通常は突然変異による)の構成的活性化を特徴とする。STAT-1、-3、及び-5、MAPK、ERK、ならびにAKT/PI3Kは全て、PV、ET、及びMFのサイトカインに依存しない成長をサポートする。腫瘍抑制因子及びエピジェネティック修飾因子である10-11転座2(TET2)もこれらの細胞で頻繁に変異しており、JAK2の活性化及びTET2の不活性化がAMLのドライバーであることを示唆している。それらは分化を遮断し、自己再生を促進する。Ph-MPNは比較的まれであり、100,000あたり90~120症例である。様々なチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)がJAK/STATの過剰活性化を遮断するために開発されたが、これは多くの患者において治癒的でなく、有意な毒性に関連している。
【0378】
ブチレートは、STAT1の核移行を遮断し、JAK2の活性化を遮断することが示されている。さらに、ブチレート及びプロピオネートはHDAC阻害剤である。HDAC活性の上昇はレチノイン酸(RA)誘導分化を阻害するため、ブチレート/プロピオネート+レチノイン酸はMPNの進行及び/又は再発を予防し得ることが予想される。
【0379】
小児ALLはまた、ブチレートによって阻害されるJAK/STAT経路の構成的活性化によっても特徴付けられる。さらに、ブチレートはp53を活性化するが、それ以外ではp53はALLで下方制御される。さらに、バルプロ酸SCFAは、ALLにおいてTGFベータ1及びPI3Kシグナル伝達を阻害し、これらは全て、この状況でSCFA介入が有効性を示すことを示唆している。これは、小児及び成人のALLでは特に重要である。初期化学療法後の残存病変は最小限であることが一般的であり、再発時間は特徴的に短いためである。
【0380】
本例は、長期寛解の達成及びAML及びその他の白血病の再発の防止の困難さを組み合わせた、SCFAの特性に基づいているため、選択された各白血病の1-2前臨床モデルでこのアプローチを試験して、ヒト試験の原理証明を確立するのに有用であり得る。本発明自体は、診断時の1つ以上のSCFA治療化合物の、単独又は標準治療療法と組み合わせた投与を含むものである。さらに、マウスモデルでは、診断時に開始された処置により、SCFAが腫瘍の進行を遅延又は遮断できるかが確証できる。ヒトにおけるこれらの癌は、疾患の臨床段階の前に存在し得る複数の遺伝子異常を伴うことが多いこと、及びこれらの腫瘍の一部が関連する遺伝的素因を有し得ることを考慮すると、SCFAが再発/ぶり返しの予防に(少なくとも)役立ち得ることを示唆している。
【0381】
実験には、AML又はALL細胞株(又は同じ疾患を有する患者のバンクされた初代細胞)を免疫不全マウス(NOD/SCID)に導入し、SCFA処置又はプラセボを様々な期間で投与することが含まれる。定期的な血液サンプルは、臨床サンプルのAML又はALLにおいて一般的である、又は注射に使用された特定の細胞株に関連することが知られている、遺伝子再編成のPCR増幅により、最小残存病変について分析される。AML又はALLに特徴的な主要な遺伝的病変を保有する市販のトランスジェニックマウスが市販されている場合、SCFAが疾患の病因を変え得るかどうかを試験するための実験が計画され得る。
【0382】
SCFAは、(1)本明細書で使用されるSCFAはJAK/STAT活性を遮断するため、JAK/STATの構成的活性化に依存する選択された白血病(AML及びALL)に対し、単独又は標準治療処置と組み合わせて、(2)白血病の再発/ぶり返しを遅延又は防止するため、(3)診断時に開始される標準治療処置の毒性プロファイルを低下させ、それにより長期的な生活の質を向上させるために使用され得る。これらの特徴は、本発明を拡張して、高い腫瘍負荷を有する患者をより良好に処置するのに役立つだろう。
【0383】
現在、処置は2つの段階を含む。導入と称される第1段階には、ara-C及びダウノマイシンによる化学療法が含まれることが多く、これにより白血球数が減少し、骨髄が破壊される。第3の薬剤であるクラドリビン(ロイスタチン、2-CdA)も投与される場合がある。寛解が達成された場合、導入は成功したとみなされる。しかしながら、導入により、患者は数週間まで致命的な感染症にかかりやすくなり、その間、入院したままになる。強化と称される第2段階には、長期高用量ara-Cが含まれる。あるいは、同種又は自己幹細胞移植を検討することができるが、強化は死亡リスクの増加と関連している。
【0384】
構成的に活性化されたHDACは多くのタイプの白血病において観察されているため、介入戦略として合成HDAC阻害剤が提案されている。しかしながら、バルプロエート及びフェニルブチレートは選択されたリンパ腫について評価されているが、ヒト臨床試験に入っているものはない。AMLの変異体である急性骨髄性白血病(APL)では、HDAC1/2の阻害は分化及びアポトーシスを促進する。しかしながら、同じHDAC阻害剤で前白血病細胞を処置すると細胞増殖が促進され、これは、SCFAは腫瘍の再発を遮断するのに役立ち得るが、腫瘍の発症を防ぐことはできないことを示唆している。AML再発につきブチレート及びプロピオネートを含むSCFAの混合物を使用する潜在的な利点は、それらが認識できる副作用を伴わず有効であろうことである。SCFA関連HDAC阻害活性は可逆的であるため、本例は、他の治療アプローチで一般的な毒性又は他の有害効果のリスクを低下させながら、有効性のバランスをとる、潜在的に健全な方法を提供する。これは、組み合わせ療法が最良の選択肢であることが判明し得る、腫瘍の再発/ぶり返しに対処する状況で、特に当てはまり得る。
【0385】
推奨される処置:
1日経口用量は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の4~5gのブチレートで、連続的に1日3回である。
【0386】
ブチレートによる処置は、低減した用量のステロイド及び化学療法剤と組み合わせて行われ得る。
【0387】
実施例9:CAR-T療法に関連する有害効果の処置又は予防における短鎖脂肪酸の使用
癌免疫療法の目標及びSCFAの既知の免疫調節機能を考慮すると、本例が前臨床モデルで機能する可能性は高い。SCFAは経口摂取でき、非毒性であり、腸上皮及び血液脳関門の両方を通過するのに問題はなく、これらは、他のアプローチでは利用できない組み合わせの利点である。SCFAによる免疫調節は可逆的であるため、本例は、CAR-T及び他の癌免疫療法的アプローチの有害効果のリスクを低下させながら、有効性のバランスをとる、健全な方法を提供する。
【0388】
例えば、一態様において、本発明は、(1)CAR-Tを投与された一部の患者で見られるサイトカインストームを改善し、(2)これらの有害効果を経験している患者に神経保護を提供し、(3)細胞毒性化学療法又は全身性コルチコステロイドを使用せずにCAR-T細胞活性を免疫調節し、(4)また、ワーバーグ効果がSCFAを核にシャントする液体及び固形腫瘍の両方で、SCFAヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害活性による抗腫瘍特性を有し、(5)SCFAがサイトカイン放出症候群(CRS)で全て一般的に上昇するIL-6、TNFα、及びIFNγの産生を直接刺激するNF-Bを調節するため、広く抗炎症性である、補助療法を提供する。SCFAはまた、マクロファージからのTNFα及びIL-6の産生を下方制御し、それにより、マクロファージ活性化症候群(これはまた、CAR-T療法の実証された有害効果である)を潜在的に改善する。これは、本発明を拡張して、高い腫瘍負荷を有する患者をより良好に処置するのに役立つだろう。
【0389】
2つのCD-19標的CAR-T療法は、急性リンパ芽球性白血病を有する小児及び進行性リンパ腫を有する成人の処置につきFDAによって承認されている。
【0390】
サイトカイン放出ストーム(CRS)は、「オンターゲット」の副作用であると考えられており、これは、T細胞が活性であることを意味する。しかしながら、それは危険なほどの高熱及び血圧の急速な低下につながり得る。重度のCRSを経験している患者は全て、特に高レベルのサイトカインIL-6を有していた(炎症に応答してT細胞及びマクロファージにより分泌される)。トシリズマブ(IL-6活性を遮断する)は、CRSを管理するための標準療法になる。このアプローチは機能し、大部分の患者の問題を解決した。しかしながら、トシリズマブで処置された患者は、入院又は死亡につながり得る重篤な感染症を発症するリスクが非常に高い。
【0391】
ブチレート(Yuan H,Liddle FJ,Mahajan S,Frank DA.IL-6-induced survival of colorectal carcinoma cells is inhibited by butyrate through down-regulation of the IL-6 receptor.Carcinogenesis.2004;25(11):2247-55)及びプロピオン酸塩(Nastasi C,Fredholm S,Willerslev-Olsen A,et al.Butyrate and propionate inhibit antigen-specific CD8(+)T cell activation by suppressing IL-12 production by antigen-presenting cells.Sci Rep.2017;7(1):14516)はIL-6を阻害することが示されたため、共処置の選択肢と見なすことができる。
【0392】
SCFAは化学療法と並行して投与されるべきである:CAR-T細胞注入の数日前(SCFAのみ)、及びCAR-T細胞注入の数週間後まで(有意に減少された化学療法薬と組み合わせたSCFA)。1日経口用量は、腸溶コーティングされた徐放性カプセル中の5~6gのブチレート及び2~3gのプロピオン酸で、1日3回である。
【0393】
本明細書に引用されるそれぞれの及びあらゆる特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。特定の実施形態に関して本発明を開示したが、当業者であれば、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態及び変形を考案し得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのこのような実施形態及び同等の変形を含むと解釈されることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短鎖脂肪酸(SCFA)、SCFA前駆体、SCFA生合成前駆体、SFCA部分を含む化合物、その誘導体、及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物。