(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179619
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】VCSELモジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20221125BHJP
H01S 5/02345 20210101ALI20221125BHJP
H01S 5/023 20210101ALI20221125BHJP
H01S 5/02208 20210101ALI20221125BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20221125BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20221125BHJP
H01S 5/02325 20210101ALI20221125BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/02345
H01S5/023
H01S5/02208
H01S5/0239
H01S5/183
H01S5/02325
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161135
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2022516276の分割
【原出願日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020107020
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021052423
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】秋山 貴
(72)【発明者】
【氏名】内村 仁
(72)【発明者】
【氏名】相原 健志
(72)【発明者】
【氏名】原 博昭
(57)【要約】
【課題】本発明に係るVCSELモジュールは、VCSEL及びスイッチング素子が一体化され且つ小型化が可能なVCSELモジュールを提供する。
【解決手段】VCSELモジュール150は、VCSEL316と、VCSEL316の下に配置され、VCSEL316と電気的に接続されたVCSEL316用のスイッチング素子315と、スイッチング素子315の下に配置され、スイッチング素子315と電気的に接続された基板と312、を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配置されるVCSEL第1端子、及び、裏面に配置されるVCSEL第2端子を有するVCSELと、
第1側面、前記第1側面に直交する第2側面及び第3側面、前記第1側面と対向する第4側面、上面、及び下面を備える矩形の平板形状を有し且つ前記VCSELの下に配置され、前記VCSEL第2端子と電気的に接続されたVCSEL用のスイッチング素子が内部に形成される半導体装置と、
前記第1側面に沿って配置される金属製の第1電極と、
前記半導体装置の下に配置される金属製の第2電極と、を有し、
前記半導体装置は、
前記第1側面に沿う辺、前記第1側面に直交し且つ前記第1側面に沿う辺よりも短い一対の辺、及び前記第1側面に沿う辺に対向する辺により形成される矩形の平面形状を有し、前記上面の端部に配置され、且つ、第1電極及び前記VCSEL第1端子と接続される第1端子と、
前記上面の中央部に配置され、前記VCSEL第2端子と接続される第2端子と、
前記第2電極と接続される第3端子と、
を更に有する、ことを特徴とするVCSELモジュール。
【請求項2】
前記半導体装置は、前記VCSELを流れる電流を制御する電流制御素子を有し、前記電流制御素子は、前記第2端子と前記スイッチング素子との間、又は、前記スイッチング素子と前記第3端子との間に接続される、請求項1に記載のVCSELモジュール。
【請求項3】
前記第3端子は、前記第2側面又は前記第3側面に沿った前記上面の端部に配置される、請求項2に記載のVCSELモジュール。
【請求項4】
前記第1電極と前記第1端子とは、複数のボンディングワイヤで接続されている、請求項3に記載のVCSELモジュール。
【請求項5】
前記第2電極と前記第3端子とは、複数のボンディングワイヤで接続されている、請求項3又は4に記載のVCSELモジュール。
【請求項6】
前記半導体装置は、前記VCSELの温度、前記VCSELを流れる電流、又は、前記VCSELから出射される光の光量を関する監視回路を有し、
前記監視回路と接続される監視回路用端子は、前記半導体装置の表面の前記第4側面に沿った端部に配置される、請求項3~5の何れか一項に記載のVCSELモジュール。
【請求項7】
前記監視回路用端子と接続される第3電極を更に有する、請求項6に記載のVCSELモジュール。
【請求項8】
前記第1電極及び前記第2電極の表面の一部、及び、前記第1端子及び第3端子の表面の一部を覆うように形成される樹脂製のフレームを更に有する、請求項2~7の何れか一項に記載のVCSELモジュール。
【請求項9】
前記フレームは、前記VCSELが視認可能な開口部が形成される支持面を有する、請求項8に記載のVCSELモジュール。
【請求項10】
前記支持面に支持され、前記VCSELから出射された光を透過する光学素子を更に有する、請求項9記載のVCSELモジュール。
【請求項11】
前記フレームは、前記光学素子の位置決めをするために、前記支持面の上方で、且つ、当該フレームの外壁から内側に迫り出した凸部を有する、請求項10に記載のVCSELモジュール。
【請求項12】
前記VCSELからの放熱を前記第2電極へ向けて伝達するための放熱経路が、前記半導体装置において、前記第2端子と前記半導体装置の前記下面との間に形成される、請求項3~11の何れか一項に記載のVCSELモジュール。
【請求項13】
前記半導体装置は、前記第2電極と接続される第4端子、を有し、
前記第4端子は、前記第3端子が配置された前記第2側面又は前記第3側面の他方に沿った前記上面の端部に配置され、
前記VCSEL第2端子から前記半導体装置内に流入した電流は、前記第3端子及び前記第4端子により、前記半導体装置の左右に分かれて前記第2電極へ流れる、請求項3~12の何れか一項に記載のVCSELモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を光源とするVCSELモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016―45066号公報には、光源から発したパルス光が対象物で反射して戻ってきた光(以下「反射光」という。)に基づいて距離を測定する測距装置が記載されている。上記の測距装置は、距離画像センサと、光源と、制御ユニットとを備えている。距離画像センサは、電荷振り分け型の距離画像センサであり、光源は、VCSELモジュール等のレーザ光照射装置やLEDなどで構成される。制御ユニットは、光源に駆動信号SDを印加しパルス光(光強度信号SLP)を出射させるとともに、第1転送信号S1及び第2転送信号S2を距離画像センサに出力する。
【0003】
図24は、上記の測距装置において距離を測定する方法を説明するためのタイミング チャートである。上記の測距装置では、測距精度に対する光強度信号S
LPの立ち上がり期間T
P及び立下り期間T
Fの影響が低減され、測距精度が向上する。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0278011号には、光源の立ち上がりを改善したレーザダイオードモジュール600が記載されている。
図25は、上記のレーザダイオードモジュール600の斜視図である。レーザダイオードモジュール600は、基板610、複数のレーザダイオードDLを含むレーザダイオード620、コンデンサC1、C2を含むコンデンサ630、及び、レーザダイオードDLと直列接続するトランジスタTLを含むドライバ回路640を含むIC4等を有している。レーザダイオード620からは、矢印Gの方向に光が出射する。
【0005】
図26は、
図25に示すレーザダイオードモジュール600の回路図である。レーザダイオードモジュール600は、電源端子Vs、制御端子ON及びグランド端子GNDを備えている。電源端子Vsとグランド端子GNDの間でスイッチング用のトランジスタTLとレーザダイオードDLが直列接続し、この直列回路にコンデンサC1、C2が並列接続している。制御端子ONは、トランジスタTLのゲート電極に接続している。
【0006】
特開2009-105240号公報には、VCSELと、抵抗が正の温度特性を有し且つVCSELに直列接続される抵抗素子とを有する発光装置が記載される。上記の発光装置は、VCSELに直列接続される抵抗素子がVCSELのインピーダンス特性の温度変化を補償することで、インピーダンス不整合による高周波ノイズの発生及び駆動信号の劣化を防止することができる。
【0007】
特開2004-31456には、表面にICドライバを配置し且つ裏面にVCSELを配置したサブマウント基板を、基板の上部に配置して、小型化を図った光インタコネクション装置が記載されている。
【0008】
米国特許第8488921号の
図16には、プリント配線基板の上部にサブマウントを配置し、サブマウンの上部にICチップを配置し、ICチップの上部にVCSELを配置した装置が記載されている。
【0009】
特開2009-8721号公報の
図2には、プリント基板の上部に発光素子アレイを配置し、発光素子アレイの上部に駆動ICを配置し、駆動ICの上部にメモリICを配置した光モジュールが記載されている。
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、基板の上部にスイッチング素子が配置され、スイッチング素子の上部にVCSELが配置された3段階構造を有するVCSELモジュールは、何れの文献にも記載されていなかった。
【0011】
そこで、本発明に係るVCSELモジュールは、VCSEL及びスイッチング素子が一体化され且つ小型化が可能なVCSELモジュールを提供することを目的とする。
【0012】
本VCSELモジュールの一実施形態によると、VCSELと、VCSELの下に配置され、VCSELと電気的に接続されたVCSEL用のスイッチング素子と、スイッチング素子の下に配置され、スイッチング素子と電気的に接続された基板と、を有する。
【0013】
上記のVCSELモジュールでは、VCSELとスイッチング素子との間、又は、スイッチング素子と基板との間に配置された電流制御素子を有し、
電流制御素子は、VCSEL及びスイッチング素子と直列に電気的に接続される、ことが好ましい。
【0014】
上記のVCSELモジュールでは、基板上に形成された配線電極を、さらに有し、
スイッチング素子又は電流制御素子は、配線電極と、半田ボール、スタッドバンプ、又は、金属片を介して電気的に接続されている、ことが好ましい。
【0015】
上記のVCSELモジュールでは、電流制御素子のゲート電極と接続する配線電極の接続部分は、他の部分より厚く形成されている、ことが好ましい。
【0016】
上記のVCSELモジュールでは、VCSELと電気的に接続されたコンデンサ、をさらに有する、ことが好ましい。
【0017】
上記のVCSELモジュールでは、金属製の第1電極を更に有し、
基板は金属製の第2電極として機能し、
VCSELは、表面に配置されるVCSEL第1端子、及び、裏面に配置されるVCSEL第2端子を有し、スイッチング素子は半導体装置内に形成され、
半導体装置は、第1電極及びカソードと接続される第1端子、カソードと接続される第2端子、及び、前記第2電極と接続される第3端子、を有することが好ましい。
【0018】
上記のVCSELモジュールでは、半導体装置は、VCSELを流れる電流を制御する電流制御素子を有し、電流制御素子は、第2端子とスイッチング素子との間、又は、スイッチング素子と第3端子との間に接続される、ことが好ましい。
【0019】
上記のVCSELモジュールでは、半導体装置は、第1側面、第1側面に直交する第2側面及び第3側面、第1側面と対向する第4側面、上面、及び下面を備える、矩形の平板形状を有し、
第1端子は、第1電極に近接する第1側面に沿った上面の端部に配置され、
第2端子は、上面の中央部に配置され、
第3端子は、第2側面又は第3側面に沿った上面の端部に配置される、ことが好ましい。
【0020】
上記のVCSELモジュールでは、第1電極と第1端子とは、複数のボンディングワイヤで接続されている、ことが好ましい。
【0021】
上記のVCSELモジュールでは、第2電極と第3端子とは、複数のボンディングワイヤで接続されている、ことが好ましい。
【0022】
上記のVCSELモジュールでは、半導体装置は、VCSELの温度、VCSELを流れる電流、又は、VCSELから出射される光の光量を関する監視回路を有し、
監視回路と接続される監視回路用端子は、半導体装置の表面の第4面に沿った端部に配置される、ことが好ましい。
【0023】
上記のVCSELモジュールでは、監視回路用端子と接続される第3電極を更に有する、ことが好ましい。
【0024】
上記のVCSELモジュールでは、第1電極及び第2電極の表面の一部、及び、第1端子及び第3端子の表面の一部を覆うように形成される樹脂製のフレームを更に有する、ことが好ましい。
【0025】
上記のVCSELモジュールでは、フレームは、VCSELが視認可能な開口部が形成される支持面を有する、ことが好ましい。
【0026】
上記のVCSELモジュールでは、支持面に支持され、VCSELから出射された光を透過する光学素子を更に有する、ことが好ましい。
【0027】
上記の発光装置では、フレームは、光学素子の位置決めをするために、支持面の上方で、且つ、フレームの外壁から内側に迫り出した凸部を有する、ことが好ましい。
【0028】
上記のVCSELモジュールでは、VCSELからの放熱を第2電極へ向けて伝達するための放熱経路が、半導体装置において、第2端子と半導体装置の下面との間に形成される、ことが好ましい。
【0029】
上記のVCSELモジュールでは、半導体装置は、第2電極と接続される第4端子、を有し、
第4端子は、第3端子が配置された第2側面又は第3側面の他方に沿った上面の端部に配置され、
VCSELのカソードから半導体装置内に流入した電流は、第3端子及び第4端子により、半導体装置の左右に分かれて第2電極へ流れる、ことが好ましい。
【0030】
実施形態に係るVCSELモジュールでは、VCSEL及びスイッチング素子が一体化され且つ小型化が可能なVCSELモジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の実施形態に係るVCSELモジュール100の側面図である。
【
図2】(a)はVCSELモジュール100に含まれる第1のFET201の底面図であり、(b)は第1のFET201の上面図である。
【
図3】
図1に示すVCSELモジュール100の回路図である。
【
図4】
図1に示すVCSELモジュール100の特性図である。
【
図5】(a)~(f)は、VCSELモジュール100の製造方法の説明図である。
【
図6】(a)~(f)は、VCSEL100モジュールの第1変形例であるVCSELモジュール130の製造方法の説明図である。
【
図7】(a)~(f)は、VCSEL100モジュールの第2変形例であるVCSELモジュール140の製造方法の説明図である。
【
図8】(a)はフレーム付きVCSEL100モジュール100の上面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図である。
【
図9】(a)はフレーム付きVCSEL100モジュール100´の上面図であり、(b)は(a)に示すB-B線に沿う断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係るVCSELモジュール150の斜視図である。
【
図11】光学素子を除く
図10に示すVCSELモジュール150の斜視図である。
【
図12】光学素子及びフレームを除く
図10に示すVCSELモジュール150の斜視図である。
【
図13】
図10に示すC-C線に沿うVCSELモジュール150の断面図である。
【
図15】
図10に示すVCSELモジュール150の回路図である。
【
図16】
図10に示す第2電極、半導体装置及び発光素子の接続関係を概略的に示す図である。
【
図17】
図10に示すVCSELモジュール150の製造方法の説明図である。
【
図19】
図17に示す半導体装置実装工程に対応する上面図である。
【
図20】
図17に示す発光素子実装工程に対応する上面図である。
【
図21】
図17に示すボンディングワイヤ工程に対応する上面図である。
【
図22】
図17に示すフレーム形成工程に対応する上面図である。
【
図23】(a)はVCSELモジュール150においてフレーム318の基部以外を除いた部分の平面図であり、(b)は(a)のD-D線に沿う断面図であり、(c)は(a)のE-E線に沿う断面図である。
【
図24】従来技術として示す測距装置のタイミングチャートである。
【
図25】従来技術として示すレーザダイオードモジュール600の斜視図である。
【
図26】
図25に示すレーザダイオードモジュール600の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、VCSELモジュールの好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。説明のため部材の縮尺は適宜変更している場合がある。
【0033】
図1は、第1の実施形態に係るVCSELモジュール100の側面図である。
図1に示すように、VCSELモジュール100は、基板101、VCSEL105、第1のFET201、第2のFET202を備えている。基板101上には、第2のFET202、第1のFET201、VCSEL105が、図の下側からこの順番で積層している。なお、基板101には、コンデンサ113(
図3参照)が実装されていたり、外部回路と接続するための端子電極が形成されたりするが、
図1では、スタック構造を構成する部材、すなわち、VCSEL105、第1のFET201、第2のFET202、及び、これらの実装に係る部材のみを図示している。なお、レンズ等のVCSEL105の配光を制御する光学部品をVCSEL105上に配置したり、スタック構造の外側に壁状構造体を設けたりすることもあるが、これらについては後述する。
【0034】
基板101は、基材が窒化アルミからなる平板であり、上面にパタン化した金属層(配線電極110a~110d等)を備えている。基材は、窒化アルミに限らず、FR4等の樹脂であっても良い。
【0035】
VCSEL105は、上面にアノードが、下面にカソードが配置されたレーザダイオードの集合体である面発光型の光源である。アノードは、ボンディングワイヤ109により配線電極110aに接続し、カソードは、第1導電性接着部材103を介して第1のFET201のドレイン電極206に接続している。VCSEL105は、厚さが200μm、平面サイズが1.0mm×1.0mmであるが、大きさはこれに限定されない。
【0036】
第1のFET201は、FETダイ203の上面全体にわたってドレイン電極206が設けられるとともに、下面にソース電極204とゲート電極205を備えている。第1のFET201に含まれるソース電極204は、第1導電性接着部材103を介して第2のFET202に含まれるドレイン電極206に接続し、ゲート電極205は、第2導電性部材107を介して配線電極110bに接続している。第2のFET202は、第1のFET201と同じものであり、第2のFET202に含まれるソース電極204及びゲート電極205は、それぞれ第1導電性接着部材103を介して配線電極110d及び配線電極110cに接続している。第1及び第2のFET201、202は、厚さが100μm、平面サイズが1.4mm×1.4mmであり、各電極204~206は、Ni-Auメッキされている。
【0037】
第1導電性接着部材103は、焼結Ag、AuSn、半田など、接着性と導電性を有する部材であり、接着性と導電性を備えていればこれらに限定されるものではない。第2導電性部材107は、高さを出せる部材として、半田ボール107a(
図5参照)を含む。その他、第2導電性部材107に、はんだプレート、金バンプ、金属プレートなどが使用できる。第1導電性接着部材103及び第2導電性部材107は、電気抵抗率の低い金属材料が好ましい。インピーダンスを低く抑えることができ、VCSELモジュール100は、短い期間に大きな電流を流しやすくなる。
【0038】
図2は、VCSELモジュール100に含まれる第1のFET201の底面図(a)と上面図(b)である。
図2(a)に示すように、第1のFET201を底面には、「D」と示した小面積のドレイン電極206、「S」と示した大面積のソース電極204、「G」と示した小面積のゲート電極205が配置されている。
図2(b)に示すように、第1のFET201の上面には、「D」と示した上面全体を占めるドレイン電極206が配置されている。
【0039】
裏面のドレイン電極206は、上面のドレイン電極206と第1のFET201の内部で接続しているが、基板101(
図1参照)の配線電極110a~110d等とは接続していない。第1のFET201は、トレンチ構造をとっているため、電流が上面から下面に向かって流れる。また、第2のFET202は、第1のFET201と構造や特性が全く同じものなので説明は省略する。
【0040】
図3は、VCSELモジュール100の回路図である。
図1では、回路素子として、VCSEL105、第1及び第2のFET201、202が示されているだけであるが、前述のように、基板101にはコンデンサ113も実装されている。そこで、
図3では、コンデンサ113及びコンデンサ113に係る回路を点線で示した。
【0041】
図3に示すように、VCSELモジュール100は、電源端子111a、第1のFET201のゲート端子111b、第2のFET202のゲート端子111c、及び、ソース端子111dを有する。
図3に示すように、電源端子111aとソース端子111dの間に、VCSEL105、第1のFET201及び第2のFET202が直列接続しており、コンデンサ113は、この直列回路に並列接続している。それぞれの端子111a~111dは、外部の装置と接続するために基板101の下面に形成された端子電極であり、配線電極110a~110dとは基板101に設けられたスルーホールやビアを介して電気的に接続されている
。
【0042】
外部電源(不図示)は、主に非発光時、電源端子111aを介してコンデンサ113を充電する。一方、発光時、VCSELモジュール100には、10(ns)程度しかない短い期間に大きな電流を流す必要があるが、外部電源は、この期間には応答することができず、電源端子111aからだけではこの10(ns)の期間に必要な電流が供給できない。そこで、VCSEL105を発光させる電流は、ほとんどがコンデンサ113の放電によるものとなる。
【0043】
ゲート端子111bには、外部から所定の定電圧が印加され、第1のFET201を電流制御素子として機能させている。ゲート端子111cには、外部から幅が10(ns)程度の制御パルスが印加され、第2のFET202をスイッチング素子として機能させている。
【0044】
図4は、ゲート端子111c(
図3参照)に幅が10(ns)の制御パルスを印加したとき、VCSEL105に流れる電流401をシミュレーションにより求めた特性図である。縦軸は電流(A)を表しており、横軸は時間(ns)を表している。
図4には、比較のため、従来例として
図25及び
図26に示したレーザダイオードモジュール600のレーザダイオードDLに流れる電流402も示した。
【0045】
シミュレーションでは、コンデンサ113からVCSEL105を経てコンデンサ113に戻る電流径路のインダクタンスを1(nH)としている。
図4に示されるように、VCSEL105は、ゲート端子111cに制御パルスが印加されると、電流の立ち上がりから1(ns)以内に定電流動作に入る。一方、従来例の電流402は、制御パルスが印加されると、制御パルスの印加が終了するまで電流値が上昇し続ける。このように、VCSELモジュール100では、VCSEL105の電流401の波形は、制御パルスに対し、立ち上がりが1(ns)以下で頂部が平坦となり、平坦部が8(ns)程度確保できている。VCSEL105からの出射光の光量は入力される電流に比例するので、平坦部の期間ではVCSEL105からの出射光の光量を一定に保つことが可能となる。
【0046】
図5は、VCSELモジュール100の製造方法の説明図である。
図5(a)~(f)では、各工程における特徴的な状態の側面図を示している。
図5(a)~(f)では、
図1と同ように、VCSEL105、第1及び第2のFET201、202、及び、これらに係る部材以外は図示していない。
【0047】
図5(a)に示すように、最初に、上面に配線電極110a~110d等を備えた基板101を準備する。次に、
図5(b)に示すように、ボンディングワイヤ用の配線電極110aを除き、配線電極110b~110dの上面に第1導電性接着部材103を塗布する。次に、
図5(c)に示すように、第2のFET202を、基板101に接続する。このとき、第1導電性接着部材103を介して、ゲート電極205とソース電極204がそれぞれ配線電極110c、110dに重なるよう第2のFET202を配置する。
【0048】
次に、
図5(d)に示すように、半田ボール107aを配線電極110b上に配置するとともに、第2のFET202の上面に第1導電性接着部材103を塗布する。なお、半田ボール107aと配線電極110bの間にはんだボール107aを固定するため第1導電性接着剤103が介在しているが、フラックスなど他の方法ではんだボール107aを固定できれば、第1導電性接着部材103は必ずしも必要ではない。
【0049】
次に、
図5(e)に示すように、第1のFET201を第2のFET202の上面に接続する。なお、第1のFET201の上面には、予めVCSEL105が第1導電性接着部材103で接続しているものとする。また、第1のFET201に含まれるゲート電極205は、半田ボール107aに接続し、ソース電極204は、第1導電性接着部材103を介して第2のFET202のドレイン電極206と接続する。
【0050】
最後に、
図5(f)に示すように、VCSELモジュール100を加熱して接続状態を安定化する。このとき、まず、最初の加熱で第1導電性接着部材103を硬化させる。次に、温度を上げて半田ボール107aを溶融させ、半田ボール107aを第1導電性接着部材103と接続する。このとき、半田ボール107aと第2のFET202のゲート電極205も接続する。このようにして、半田ボール107aと第1導電性接着部材103の接続により第2導電性部材107が完成する。その後、ボンディングワイヤ109でVCSEL105のアノードと配線電極110aの間を接続する。なお、第2導電性部材107において第1導電性接着部材103を使用しない場合、半田ボール107は、電極110bに直接的に接続される。
【0051】
前述のように、VCSELモジュール100は、VCSEL105と、電流制御素子である第1のFET201と、スイッチング素子である第2のFET202と、基板101と4段に積み重なる様な構造を有している。また、第1のFET201は必ずしも必要がないので、VCSELモジュール100は、VCSEL105と、スイッチング素子となる第2のFET202と、基板101とが、3段に積み重なる様な構造(3段スタック構造)を有していても良い。
【0052】
VCSEL105では、上面のアノードから下面のカソードに向かってほぼ直線的に電流が流れる。同様に、第1のFET201及び第2のFET202も、上面のドレイン電極206から下面のソース電極204に向かってほぼ直線的に電流が流れる。つまり、VCSEL105と第1及び第2のFET201、202からなるスタック構造では、短い距離で、上部から下部に向かって電流が直線的に流れる。この結果、VCSELモジュール100のスタック構造では、インダクタンスが最小化するため、電流の立ち上り及び立ち下がり特性が改善する。また、このスタック構造は、電流径路中に電流制御素子として機能する第1のFET201を備えているため、極めて短いパルス電流が印加されたとしても、その間で電流が上昇し続けることがなくなる(
図4の電流401参照)。
【0053】
以上のように、VCSELモジュール100は、VCSEL105を含む電流径路のインダクタンスを最小化することにより、VCSEL105に流れるパルス電流の立ち上り及び立ち下り時間を1(ns)以下に抑えられるのに加え、制御パルス幅が極めて短くても、その制御パルス幅の中で、電流制御素子として機能する第1のFET201により電流波形の頂部を平坦にする。したがって、VCSELモジュール100は、VCSEL105に流すパルス電流の波形が方形波に近づくように改善する(
図4の電流401参照)。
【0054】
VCSELモジュール100では、第1のFET201を電流制御素子として機能させ、第2のFET202をスイッチング素子として機能させていたが、第1のFET201及び第2のFET202の配置を上下で逆にしても良い。
【0055】
図5(e)で説明したように、第1のFET201上に予めVCSEL105が実装されている状態で、第1のFET201を第2のFET202の上部に配置していたが、第1のFET201を第2のFET202の上部に配置してから第1のFET201上にVCSEL105を実装しても良い。
【0056】
VCSELモジュール100では、第1のFET201及び第2のFET202に同じ素子を利用していたが、それぞれにサイズの異なるFETを用いてもスタック構造を実現することは可能であり、そのようにしても同様の効果を得ることができる。
【0057】
図6は、VCSELモジュール100の第1変形例であるVCSELモジュール130とその製造方法の説明図である。
図6(a)~(f)では、各工程における特徴的な状態の側面図を示している。なお、
図6(a)~(f)でも、コンデンサ113(
図3参照)など、VCSEL105、第1及び第2のFET201、202並びにこれらの実装に係る部材以外は表示していない。また、付加する可能性がある光学素子やフレームも図示していない。
【0058】
前述のように、第1のFET201のゲート電極205と基板101の配線電極110bとを接続する第2導電性部材107は、半田ボール107aを含む部材に限られない。そこで、VCSELモジュール130では、第2導電性部材107に金属片を含むVCSELモジュール130について説明する。
【0059】
最初に、
図6(f)を用いて、VCSELモジュール130の構造を説明する。
図6(f)に示すように、VCSELモジュール130でも、基板101上に、第2のFET202、第1のFET201、VCSEL105が、図の下側からこの順番で積層している。このとき、第2導電性部材107cでは、下から、第1導電性接着部材103、金属片107b、第1導電性接着部材103が積層している。
図6(f)と
図1とを比較すると、VCSELモジュール130は、VCSELモジュール100に対し、基本的な構造は共通であり、第1のFET201のゲート電極205と配線電極110bとを接続する第2導電性部材107cだけが相違する。なお、VCSELモジュール100と同様に、VCSELモジュール130においても、必ずしも第1のFET201は必要ではない。
【0060】
図6(a)に示すように、最初に、上面に配線電極110a~110dを備えた基板101を準備する。次に、
図6(b)に示すように、ボンディングワイヤ用の配線電極110aを除き、配線電極110b~110dの上面に第1導電性接着部材103を塗布する。次に、
図6(c)に示すように、第2のFET202と金属片107bを、基板101に接続する。このとき、第1導電性接着部材103を介して、ゲート電極205とソース電極204がそれぞれ配線電極110c、110dに重なるよう、第2のFET202を配置する。同時に、第1導電性接着部材103を介して、配線電極110bに重なるよう、金属片107bを配置する。
【0061】
次に、
図6(d)に示すように、金属片107b及び第2のFET202の上面に第1導電性接着部材103を塗布する。次に、
図6(e)に示すように、VCSEL105を搭載した第1のFET201を金属片107b及び第2のFET202の上面に接続する。最後に、
図6(f)に示すように、VCSELモジュール100を加熱して第1導電性接着部材103を硬化させる。このとき、第2導電性部材107cも完成する。
【0062】
第2導電性部材107が半田ボール107aを含むVCSELモジュール100では、配線電極110b上の硬化した第1導電性接続部材103に半田ボール107aを溶融させて接続させることとなるため、温度プロファイルが複雑化し製造条件が難しくなる。これに対し、VCSELモジュール130では、第1導電性接続部材103の硬化だけで金属片107bとの接続が完了するので、VCSELモジュール130の温度プロファイルが簡略化する。つまり、加熱に対し、主に第1導電性樹脂103の硬化だけを考慮すればよいので、製造条件が容易になる。また、金属片107bは、
図6(c)に示す工程内で、第2のFET202と一緒に配置されるため、同工程の負担増は僅かである。また、金属片107bは、半田ボール107に比べ外形形状のばらつきが少ないことも製造工程の容易化に寄与する。
【0063】
図7は、VCSELモジュール100の第2変形例であるVCSELモジュール140とその製造方法の説明図である。
図7(a)~(f)では、各工程における特徴的な状態の側面図を示している。なお、
図7(a)~(f)でも、コンデンサ113(
図3参照)、VCSEL105、第1及び第2のFET201、202並びにこれらの実装に係る部材以外は表示していない。また、付加する可能性がある光学素子やフレームも図示していない。
【0064】
VCSELモジュール100及びVCSELモジュール130は、それぞれ半田ボール107a及び金属片107bを含む第2導電性部材107、107cを採用していた。しかしながら、必ずしも第1のFET201のゲート電極205と基板101の配線電極110bとの接続に第2導電性部材107を必要としない。そこで、第2導電性部材107、107b等を使用しないVCSELモジュール140について説明する。
【0065】
最初に、
図7(f)により、VCSELモジュール140の構造を説明する。
図7(f)に示すように、VCSELモジュール140も、基板101上に、第2のFET202、第1のFET201、VCSEL105が、図の下側からこの順番で積層している。このとき、配線電極110bの上部には、厚銅メッキ層107が形成され、第1のFET201のゲート電極205は、第1導電性接着部材103及び厚銅メッキ層107dを介して配線電極110bと接続している。
図7(f)と
図1とを比較すると、VCSELモジュール140は、VCSELモジュール100に対し、基本的な構造は共通であり、第1のFET201のゲート電極205と配線電極110bとを接続する構造だけが相違する。なお、VCSELモジュール100と同様に、VCSELモジュール130においても、必ずしも第1のFET201は必要ではない。
【0066】
図7(a)に示すように、最初に、上面に配線電極110a~110d等を備えた基板101を準備する。このとき、配線電極110bは、上部にメッキ法で形成した厚銅メッキ層107dを備え、他の配線電極110a、110c、110dよりも厚くなっている。次に、
図7(b)に示すように、ボンディングワイヤ用の配線電極110a及び厚銅メッキ層107dを備える配線電極110bを除き、配線電極110c、110dの上面に第1導電性接着部材103を塗布する。次に、
図7(c)に示すように、第2のFET202を、基板101に接続する。このとき、第1導電性接着部材103を介して、ゲート電極205とソース電極204がそれぞれ配線電極110c、110dに重なるよう第2のFET202を配置する。
【0067】
次に、
図7(d)に示すように、厚銅メッキ層107d及び第2のFET202の上面に第1導電性接着部材103を塗布する。次に、
図7(e)に示すように、VCSEL105を搭載した第1のFET201を厚銅メッキ層107d及び第2のFET202の上面に接続する。最後に、
図7(f)に示すように、VCSELモジュール140を加熱して第1導電性接着部材103を硬化させる。このとき、第2のFET202のゲート電極205と配線電極110bとの接続も完成する。
【0068】
図7(b)~(f)に示したVCSELモジュール140の製造工程は、
図6(b)~(f)に示したVCSELモジュール130の製造工程よりも簡略化している。すなわち、VCSELモジュール140の製造工程では、第2導電性部材107cを構成する工程がない。
【0069】
図8は、第1フレーム500を追加したVCSELモジュール100を示す図である。
図8(a)は上面図を示し、
図8(b)は
図8(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0070】
第1フレーム500は、黒色の樹脂製の部材であり、中央の開口部501の部分からVCSEL105の一部が露出している箇所を除いて、VCSELモジュール100全体を覆うように基板101の上部に配置される。第1フレーム500によってVCSELモジュール100が覆われることによって、環境耐性が向上し、長期間の使用に適した状態となる。VCSEL105から出射した光は、開口部501を介して外部に出射される。
【0071】
所定の光学特性を有する光学素子を、開口部501を覆うように配置しても良い。光学素子としては、例えばポリアリレート樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、及びエポキシ樹脂等の紫外線硬化樹脂で形成された光透過性部材を利用することができる。光学素子を利用することにより、VCSEL105から出射された光を成形及び均一化することで、所望の配光分布を有する光を出射することが可能となる。
【0072】
図9は、第2フレーム510を追加したVCSELモジュール100´を示す図である。
図9(a)は上面図を示し、
図9(b)は
図9(a)のB-B線に沿う断面図である。
【0073】
VCSELモジュール100´は、VCSELモジュール100をボンディングワイヤ109の代わりに、第1のFET201の上面に配置された中継電極512、第1ボンディングワイヤ513、及び、第2ボンディングワイヤ514を用いたものであって、他の構成は同一である。配線電極110aと中継電極512とが第1ボンディングワイヤ513で接続され、中継電極512とVCSEL105のアノードが第2ボンディングワイヤ514で接続される。
【0074】
第2フレーム510は、黒色の樹脂製の部材であり、中央の開口部511の部分からVCSEL105全体及び中継電極512の一部が露出している箇所を除いて、VCSELモジュール100´全体を覆うように基板101の上部に配置される。第2フレーム510によってVCSELモジュール100´が覆われることによって、環境耐性が向上し、長期間の使用に適した状態となる。VCSEL105から出射した光は、開口部511を介して外部に出射される。なお、
図8の例と同ように、所定の光学特性を有する光学素子を、開口部511を覆うように配置しても良い。
【0075】
図9の例では、開口部511の開口面積を大きくしたので、VCSEL105及び第2ボンディングワイヤ514を除いたVCSELモジュール100´をフレーム510で覆った後に、VCSEL105を実装し且つ第2ボンディングワイヤ514で接続することが可能となった。これにより、設計の自由度が増加する。
【0076】
本実施形態に係るVCSELモジュールによれば、光源として実装面に対し垂直方向に面発光する垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)に流すパルス電流が短いパルス幅であっても、立ち上がり時間を1(ns)以下に抑え、さらに、この波形が方形波に近づくよう改善されたVCSELモジュールを提供することが可能となる。
【0077】
VCSELモジュールの一実施形態によると、VCSELと、VCSELの下に配置された第1のFETと、第1のFETの下に配置された第2のFETとを備え、第1のFET又は第2のFETの一方は、スイッチング素子であって、他方は、電流制御素子であることを特徴とする。
【0078】
上記のVCSELモジュールでは、VCSELとスイッチング素子と電流制御素子が4段スタック構造を構成している。VCSELモジュールに含まれるVCSELは、上面のアノードから下面のカソードに向かってほぼ直線的に電流が流れる。同ように、スイッチング素子及び電流制御素子として使用する第1及び第2のFETも、上面のドレイン電極から下面のソース電極に向かってほぼ直線的に電流が流れる。したがって、VCSELと第1及び第2のFETからなるスタック構造では、上部から下部に向かって電流が直線的に流れる。この結果、このスタック構造は、電流径路が直線的で短くなっているため、インダクタンスが最小化する。また、スタック構造は、電流径路中に電流制御素子を備えているため、パルス幅で与えられる短い期間中、電流が上昇し続けることがなくなる。
【0079】
上記のVCSELモジュールでは、さらに、VCSELに電流を供給するコンデンサを備えていても良い。
【0080】
上記のVCSELモジュールでは、さらに、回路基板を備え、第1のFETのゲート電極と回路基板の配線電極とは、半田ボール、スタッドバンプ又は金属片を介して接続していても良い。
【0081】
上記のVCSELモジュールでは、さらに、回路基板を備え、前記第1のFETのゲート電極と接続する前記回路基板の配線電極は、前記回路基板に形成された他の配線電極より厚くても良い。
【0082】
上記のVCSELモジュールでは、VCSELを含む電流径路のインダクタンスを最小化することにより、VCSELに流れるパルス電流の立ち上りが1ns以下に抑えられるのに加え、パルス電流の幅で与えられる短い期間中であっても、電流制御素子により電流波形の頂部が平坦になる。したがって、上記のVCSELモジュールでは、VCSELに流すパルス電流の波形が方形波に近づくよう改善される。
【0083】
図10は、第2の実施形態に係るVCSELモジュール150の斜視図であり、
図11は光学素子を除く
図10に示すVCSELモジュール150の斜視図であり、
図12は光学素子及びフレームを除く
図10に示すVCSELモジュール150の斜視図であり、
図13は
図10に示すC-C線に沿うVCSELモジュール150の断面図である。
【0084】
VCSELモジュール150は、第1電極311と、第2電極312と、9個の監視制御電極313と、一対のダミー電極314と、半導体装置315と、VCSEL316と、光学素子317と、フレーム318と、複数のボンディングワイヤ319とを有するリードフレームパッケージである。VCSELモジュール150では、第2電極312、半導体装置315及びVCSEL316は、重畳して配置される。半導体装置315は、矩形の平面形状を有し、第1辺321、第2辺322、第3辺323及び第4辺324を有する。
【0085】
第1電極311、第2電極312、9個の監視制御電極313及び一対のダミー電極314のそれぞれは、アルミニウム及び銅等の放熱性が高い導電性部材で形成され、互いに離隔して配置される。なお、電極の数は一例であって、上記に限定されない。第1電極311は、長手方向が延伸する略矩形状の平面形状を有し、矩形の平面形状を有する半導体装置315の第1辺321の延伸方向に平行に長手方向が延伸するように配置される。第1電極311は、第1辺321の延伸方向に沿って配置される複数のボンディングワイヤ319を介して半導体装置315の表面に配置される第1端子31を介してVCSEL316のアノードに電気的に接続される。
【0086】
第2電極312は、半導体装置315が実装され、半導体装置315の第2辺322、第3辺323及び第4辺324のそれぞれに近接して配置される第1突出部312a、第2突出部312b及び第3突出部312cを有する。第2電極312は、一端が第1突出部312a、第2突出部312b及び第3突出部312cに接続される複数のボンディングワイヤ319を介して半導体装置315に電気的に接続される。第2電極312は、金属を含有する樹脂材等の熱伝導率が高い接着部材を介して半導体装置315に熱的に接続される。
【0087】
9個の監視制御電極313のうち、5個の監視制御電極313は、第1突出部312aと第3突出部312cとの間に半導体装置315の第2辺322及び第4辺324に沿うように配置される。9個の監視制御電極313の他の4個の監視制御電極313は、第2突出部312bと第3突出部312cとの間に半導体装置315の第3辺323及び第4辺324に沿うように配置される。9個の監視制御電極313のそれぞれは、ボンディングワイヤ319を介して半導体装置315に電気的に接続される。
【0088】
一対のダミー電極314は、第1電極311の長手方向の両端のそれぞれに第1電極311から離隔して配置される。
【0089】
半導体装置315は、第1端子331と、第2端子332と、第3端子333と、第4端子334と、第5端子335と、9個の監視制御端子336とを有し、VCSEL316のアノードとカソードとの間に流れる駆動電流を監視制御する。
【0090】
第1端子331は、矩形の平面形状を有し、第1電極311に対向する第1辺321に沿って半導体装置315の表面に配置される。第1端子331の第1電極311に対向する第1辺321に沿う辺の長さは、VCSEL316の第1電極311に対向する第1辺321に沿う辺よりも長い方が好ましい。VCSEL316の少なくとも1つの辺のほぼ全てに配置されるアノード端子からのワイヤの数を最大とすることができ、配線抵抗による電圧降下が抑制される。また、第1端子331の第1電極311に対向する第1辺321に直交する辺の長さは、VCSEL316の第1電極311に対向する第1辺321に沿う辺よりも短い方が好ましい。経路が短くなるので、配線抵抗による電圧降下が抑制される。なお、第1端子331の第1電極311に対向する第1辺321に直交する辺の長さは、半導体装置315及びVCSEL316のサイズに応じて決定され、第1電極311に対向する第1辺321に沿う辺よりも長くてもよく、同一であってもよい。第1端子331の第1辺321に近接する領域には、第1電極311と第1端子331との間を電気的に接続する複数のボンディングワイヤ319が第1辺321の延伸方向に沿って配置される。第1端子331の第1辺321から離隔する領域には、第1電極311とVCSEL316のアノードとの間を電気的に接続する複数のボンディングワイヤ319が第1辺321の延伸方向に沿って配置される。
【0091】
第2端子332は、矩形の平面形状を有し、半導体装置315の表面の中央に配置される。第2端子332には、VCSEL316が実装され、第2端子332とVCSEL316のカソードとの間が電気的に接続される。
【0092】
第3端子333及び第4端子334のそれぞれは、第1辺321に直交する第2辺322及び第3辺323に長手方向が延伸する矩形状の平面形状を有し、第2辺322及び第3辺323のそれぞれに沿って半導体装置315の表面に配置される。第3端子333には、第1突出部312aと第3端子333との間を電気的に接続する複数のボンディングワイヤ319が第2辺322の延伸方向に沿って配置される。第4端子334には、第2突出部312bと第4端子334との間を電気的に接続する複数のボンディングワイヤ319が第3辺323の延伸方向に沿って配置される。
【0093】
第5端子335は、矩形の平面形状を有し、第4辺324の中央部の近傍に配置される。第5端子335には、第3突出部312cと第5端子335との間を電気的に接続するボンディングワイヤ319が配置される。
【0094】
9個の監視制御端子336のそれぞれは、矩形の平面形状を有し、第2辺322、第3辺323及び第4辺324の近傍に配置される。9個の監視制御端子336のそれぞれには、9個の監視制御電極313との間を電気的に接続するボンディングワイヤ319が配置される。
【0095】
半導体装置315は、複雑な回路構成が可能な片面の配線板とも言え、配線設計の自由度が高い。なお、配線設計の自由度が高いとは、配線の幅が1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であり、50μm以下、100μm以下、又は200μmよりも狭くてよく、配線のピッチが1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であり、50μm以下、100μm以下、又は200μmよりも狭く構成された配線があることである。また、例えば、半導体装置315の各辺の好適な位置に、第1端子331、第2端子332、第3端子333、第4端子334、第5端子335、9個の監視制御端子336を容易に配置できる。このとき、ワイヤ長が最短となるように、それぞれの端子の近傍に、第1電極311、第2電極312、監視制御電極313、ダミー電極314を配置することも容易であり、各端子と各電極のワイヤ長を最短にできるから、ボンディングワイヤ319が断線するリスクが低くなる。また、各電極の配置が容易であるから、配線設計の自由度が低いリードフレームを使用できる。なお、配線設計の自由度が低いとは、例えば、配線の幅が200μm以上、又は300μm以上であり、配線のピッチが200μm以上である。リードフレームは、例えば、銅などの金属材料で構成されてもよく、単一や単層の金属材料で構成されてもよく、また、表層には、全周に渡って、金及び銀などのメッキが形成されてもよい。
【0096】
VCSEL316では、レーザ光を出射する複数のエミッタが表面に等間隔にアレイ状に配置される。VCSEL316は、例えば364(26×14)個のエミッタを有し、364個のエミッタは、0.0385mmのピッチで配列される。VCSEL316は、表面に配置されるアノードと、裏面に配置されるカソードとを有し、アノードとカソードとの間に電流が供給されることに応じて発光する。
【0097】
光学素子317は、例えばポリアリレート樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、及びエポキシ樹脂等の紫外線硬化樹脂で形成された光透過性部材である。光学素子317の表面及び裏面の少なくとも一方には、VCSEL316から出射された光を拡散するシボ加工等された拡散面が形成される。光学素子317は、VCSEL316から出射された光を成形及び均一化することで、所望の配光分布を有する光を出射する。光学素子317は、VCSELモジュール150の発光効率が低下しないようにVCSEL316から出射された光の波長を透過する材質であることが好ましい。光学素子317の透過率は、90%以上が好ましく、95%以上が更に好ましい。
【0098】
【0099】
フレーム318は、黒色の樹脂製の部材であり、第1壁部341と、第2壁部342と、第3壁部343と、第4壁部344と、支持面345と、第1凸部346と、第2凸部347とを有する。フレーム318は、第1電極311及び第2電極312の表面、及び第1端子331の一部、及び第3端子333及び第4端子334を覆うように配置される。なお、第1電極311、第2電極312、監視制御電極313及びダミー電極314の底面は、フレーム318に覆われない。フレーム318の底面は、第1電極311、第2電極312、監視制御電極313及びダミー電極314の底面と同一面を形成する。第1電極311、第2電極312、監視制御電極313及びダミー電極314の底面は、例えば、不図示のヒートシンクに面接触可能であるから、大きな放熱経路を有すると言える。
【0100】
第1壁部341、第2壁部342、第3壁部343及び第4壁部344のそれぞれは、半導体装置315の第1辺321、第2辺322、第3辺323及び第4辺24のそれぞれに平行に延伸する。支持面345は、第1壁部341、第2壁部342、第3壁部343及び第4壁部344に囲まれ、且つVCSEL316が視認可能な矩形の開口部348が中央に形成される。
【0101】
第1凸部346は、第2壁部342に対向する第3壁部343の方向に突出するように、第2壁部342の内壁の中央部に配置される。第2凸部347は、第3壁部343に対向する第2壁部342の方向に突出するように、第3壁部343の内壁の中央部に配置される。第1凸部346及び第2凸部347のそれぞれは、光学素子317の端部に対向するように配置される。
【0102】
図15は、VCSELモジュール150の回路図である。
【0103】
半導体装置315は、電流制御素子351と、スイッチング素子352と、監視制御回路353とを更に有する。半導体装置315は、VCSEL316に直列接続される電流制御素子351及びスイッチング素子352を制御すると共に、監視制御回路353がVCSEL316に流れる電流等を監視することで、VCSEL316の発光を監視制御する。
【0104】
電流制御素子351及びスイッチング素子352は、n型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor、MOSFET)である。電流制御素子351及びスイッチング素子352は、VCSEL316を介して第2端子332と、第3端子333及び第4端子334に接続され、電流制御素子351は駆動電流量を制御し、スイッチング素子352は、駆動電流のオンとオフの切り替えを制御する駆動素子である。
【0105】
電流制御素子351のゲートは、監視制御端子336の1つを介して監視制御電極313の1つに接続される。電流制御素子351のソースはスイッチング素子352のドレインに接続され、電流制御素子351のドレインは第2端子332を介してVCSEL316のカソードに接続される。スイッチング素子352のゲートは監視制御回路353に接続され、スイッチング素子352のソースは第3端子333及び第4端子334を介して第2電極に接続される。
【0106】
電流制御素子351は、監視制御電極313に印加される電流設定信号に基づいて、VCSEL316のアノード(VCSEL第1端子とも言う)とカソード(VCSEL第2端子とも言う)との間及び電流制御素子351のソースとドレインとの間に流れる駆動電流の電流量を制御する。
【0107】
スイッチング素子352は、監視制御回路353によって生成される周期信号に基づいてオンオフすることで、VCSEL316のアノードとカソードとの間及びスイッチング素子352のソースとドレインとの間に流れる駆動電流を所定の周期でオンオフする。。
【0108】
監視制御回路353は、電流駆動回路354と、温度監視回路355と、電流監視回路356と、光量監視回路357とを有する。電流駆動回路354は、監視制御端子336を介して監視制御電極313から入力される信号に基づいて周期信号を生成し、生成した周期信号をスイッチング素子352のゲートに印加する。監視制御回路353は、監視制御端子336から電源電圧が供給されると共に、第5端子335を介して第2電極312に接続されることで、接地される。
【0109】
温度監視回路355は、サーミスタを有し、半導体装置315の表面に配置されるVCSEL316の温度を測定し、サーミスタによって測定される温度が所定の閾値温度を越えたとき、警報信号を、監視制御端子336を介して監視制御電極313から出力する。光量監視回路357は、VCSEL316から出射される光の光量を示す光量信号が不図示の光電変換素子から入力され、入力される光量信号に対応する光量が所定の光量範囲を外れたとき、警報信号を、監視制御端子336を介して監視制御電極313から出力する。なお、VCSELモジュール150では、監視制御回路353は、電流駆動回路354と、温度監視回路355、電流監視回路356及び光量監視回路357を、必ずしも全て有していなくてよいが、少なくとも何れか1つは有していることが好ましい。
【0110】
図16は、第2電極312、半導体装置315及びVCSEL316の接続関係を概略的に示す図である。
【0111】
半導体装置315は、シリコン基板360と、第1配線層361と、第2配線層362と、第3配線層363と、第4配線層364と、絶縁層365とを更に有する。シリコン基板360は、ホウ素等がドープされたp型半導体、リン等がドープされたn型半導体等が表面に形成される。シリコン基板360の表面に形成されるn型半導体、p型半導体は、電流制御素子351、スイッチング素子352及び監視制御回路353のそれぞれに含まれる半導体素子を形成する。
【0112】
第1配線層361~第4配線層364のそれぞれは、アルミ等の導電性部材により形成される複数の配線層、及びビアとも称され、複数の配線層の間を接続する層間接続部を有する。第1配線層361は第2端子332と電流制御素子351との間を電気的に接続し、第2配線層362は電流制御素子351とスイッチング素子352との間を電気的に接続する。第3配線層363は第3端子333とスイッチング素子352との間を電気的に接続し、第4配線層364は第4端子334とスイッチング素子352との間を電気的に接続する。絶縁層365は、シリコン酸化膜であり、第1配線層361~第4配線層364のそれぞれの層間を絶縁する。
図16では、絶縁層365はシリコン基板360に比べて厚く記載しているが、これは層構造の説明の為であり、実際は絶縁層365は数1000Åと薄い膜であり、シリコン基板360は200μmと厚い構造となっている。
【0113】
図17は、VCSELモジュール150の製造方法を示すフローチャートである。
図18は
図17に示す電極準備工程に対応する平面図であり、
図19は
図17に示す半導体装置実装工程に対応する平面図であり、
図20は
図17に示す発光素子実装工程に対応する平面図である。
図21は
図17に示すワイヤボンディング工程に対応する平面図であり、
図22は
図17に示すフレーム形成工程に対応する平面図である。
図17~
図22では、単一のVCSELモジュール150が製造される製造方法を示しているが、
図17~
図22を参照して説明される製造方法と同様な製造方法によって複数のVCSELモジュール150を同時に製造し、その後個別化するようにしても良い。
【0114】
まず、
図18に示すように、電極準備工程において、第1電極311、第2電極312、複数の監視制御電極313及び一対のダミー電極314のそれぞれは、互いに離隔する所定の位置に配置される(S101)。なお、
図18では、フレーム形成工程で追加されるフレーム318の外形を点線で示している。
【0115】
次に、
図19に示すように、半導体装置実装工程において、半導体装置315は、第2電極312に実装される(S102)。半導体装置315は、金属を含有する樹脂材等の熱伝導率が高い導電性接着部材を介して第2電極312の表面に接着することで、第2電極312に実装される。
【0116】
次に、
図20に示すように、発光素子実装工程において、VCSEL316は、半導体装置315の表面に配置される第2端子332に実装される(S103)。VCSEL316のカソードは、金錫はんだ等の導電性の接着部材を介して第2端子332の表面に接着することで、第2端子332と電気的に接続される。VCSEL316は、第2電極312及び半導体装置315に重畳して配置される。
【0117】
次に、
図21に示すように、ワイヤボンディング工程において、第1電極311等の電極と第1端子331等の端子の間、及び第1端子331とVCSEL316のアノードの間がボンディングワイヤ319によって電気的に接続される(S104)。第1電極311等の電極と第1端子331等の端子の間、及び第1端子331とVCSEL316のアノードの間がボンディングワイヤ319によって電気的に接続されることで、外部装置に電気的に接続可能な電極と、半導体装置315及びVCSEL316との間が電気的に接続される。
【0118】
次に、
図22に示すように、フレーム形成工程において、フレーム318は、第1電極311及び第2電極312の表面、及び第1端子331の一部、及び第3端子333及び第4端子334を覆うように形成される(S105)。フレーム318は、フレーム318の形状に対応する形状を有する金型にフレーム318の原材料を注入した後に、フレーム318の原材料を加熱して固化することで、形成される。
【0119】
次に、光学素子実装工程において、光学素子317は、フレーム318の支持面345に実装され(S106)、VCSELモジュール150が完成される。光学素子317は、シリコーン樹脂等の樹脂材料により形成される接着剤を介して支持面345に接着することで、支持面345に実装される。
【0120】
VCSELモジュール150では、VCSEL316がVCSEL316を駆動する駆動装置である半導体装置315に重畳するように配置されるので、半導体装置315とVCSEL316とが一体化され且つ小型化が可能である。さらに、VCSELモジュール150では、VCSEL316と、VCSEL316を駆動(スイッチング)する半導体装置315と、半導体装置315を接地する第2電極312とが、3段に積み重なる様な構造(3段スタック構造)を有しているので、更なる小型化が可能である。
【0121】
VCSELモジュール150では、発光中にVCSEL316から放射される熱は、半導体装置315を介して、熱伝導率が高い材料で形成される第2電極312に放熱されるので、VCSELモジュール150は、良好な放熱特性を有する。
図16において矢印で示すように、VCSEL316から放射される熱は、第2端子332、第1配線層361、絶縁層365、及び電流制御素子351とスイッチング素子352などが形成されているシリコン基板360を介して第2電極312に放熱される。主の構成部材となるシリコン基板360は熱伝導率が160W/mKと高いため良好な放熱を実現できる。また、前述したように絶縁層365の熱伝導率は、シリコン基板360に比べると低いが、絶縁層365は数1000Åと薄いため放熱性に影響はない。
【0122】
VCSELモジュール150では、第1電極311と第1端子331との間は、複数のボンディングワイヤ319によって接続される。例えば、第1端子331にVCSEL316を実装するとき、半導体装置315の第1辺321からはみ出さないように、第1辺321の上端から離隔した位置に配置されるので、離隔した距離だけボンディングワイヤ319の長さが長くなる。また、VCSEL316と第1電極311との間を接続するボンディングワイヤ319は、半導体装置315の第1辺の上端に触れないように第1辺の上端のVCSELモジュール1506から離れる方向へ離隔させるから、離隔した距離だけワイヤが長くなる。一方、VCSELモジュール150は、第1端子331の第1辺321の近傍にボンディングワイヤ319が配置できるから、VCSELモジュール150は、第1端子331にVCSEL316を実装したときよりも、第1電極311と第1端子331との間の配線の抵抗による電圧降下が抑制される。例えば、VCSEL316から第1電極311へのワイヤは半導体装置315の第1辺の上端に触れないように第1辺の上端のVCSELモジュール1506から離れる方向へ離隔させるから、離隔した距離だけボンディングワイヤ319の長さが長くなる。一方、VCSELモジュール150は、VCSEL316から発光素子の高さだけ低い位置にある第1端子331にボンディングワイヤ319を直接接続でき、面積が大きく幅も広く配線抵抗が小さい第1端子331を経由して、前述のワイヤ経路で第1電極1に接続できるから、VCSELモジュール150は、VCSEL316と第1電極311との間をボンディングワイヤ319により接続したときよりも、第1電極311とアノードとの間の配線抵抗による電圧降下が抑制されるとともに、配線のインダクタンスも低減する。また、VCSELモジュール150では、第2電極312と第3端子333及び第4端子334のそれぞれとの間は、複数のボンディングワイヤ319によって接続されるので、接地される第2電極312と半導体装置315との間の配線抵抗による電圧上昇が抑制される。
【0123】
VCSELモジュール150では、第1端子331は第1電極311に対向する第1辺321に沿って配置され、第2端子332は半導体装置315の表面の中央に配置され、第3端子333及び第4端子334は第2辺322及び第3辺323に沿って配置される。VCSELモジュール150では、第1端子331と、第2端子332と、第3端子333及び第4端子334とを離隔して配置することで、第1端子331、第2端子332、第3端子333及び第4端子334の間に流れる駆動電流が干渉して、駆動電流にノイズが発生するおそれを低くすることができる。
【0124】
VCSELモジュール150は、監視制御回路353に接続される複数の監視制御端子336は、第4辺324に沿って配置されるので、監視制御回路353から入出力される信号に駆動電流が干渉してノイズが発生するおそれを低くすることができる。また、複数の監視制御端子336のそれぞれに接続される監視制御電極313は、第4辺324に沿って配置されるので、監視制御回路353から入出力される信号に駆動電流が干渉して、駆動電流にノイズが発生するおそれを更に低くすることができる。
【0125】
VCSELモジュール150では、第1電極311及び第2電極312の表面、第1端子331の一部、並びに前記第3端子333及び第4端子334は、ワイヤボンディング工程の後に配置される樹脂製のフレーム318によって覆われる。VCSELモジュール150は、枠材として機能するフレーム318を配置する前にワイヤボンディング工程が実行されるので、ワイヤボンディング工程における離隔距離を確保することなく小型化が可能である。
【0126】
VCSELモジュール150は、第2電極312及び半導体装置315がフレーム318によって固定されるので、第2電極312と半導体装置315との間の接着強度がフレーム318によって補強され、半導体装置315が第2電極312から剥離することを防止できる。
【0127】
VCSELモジュール150では、光学素子317は、第1壁部341、第2壁部342、第3壁部343及び第4壁部344に囲まれ且つVCSEL316が視認可能な開口部348が中央に形成される支持面345によって支持される。VCSELモジュール150では、光学素子317が支持面345によって支持されるので、製造コストが高い光学素子317の大きさを最小化できるので、VCSELモジュール150の製造コストを低減することができる。
【0128】
VCSELモジュール150では、フレーム318は、光学素子317を挟むように配置される一対の第1凸部346及び第2凸部347を有するので、VCSELモジュール150を製造するときに、光学素子317の配置位置を容易に決定することができる。
【0129】
図23は、VCSELモジュール150における電流の流れを説明するための図である。
図23(a)はフレーム318の基部以外を除いたVCSELモジュール150の平面図であり、
図23(b)は
図23(a)のD-D線に沿うVCSELモジュール150の断面図であり、
図23(c)は
図23(a)のE-E線に沿うVCSELモジュール150の断面図である。
図23(a)~(c)において、VCSELモジュール150の厚さ方向を+Z方向、
図23(a)における図面中の上方向を+Y方向、図面中の左方向を+X方向とする。
【0130】
図23(b)の矢印F3及びF4に示すように、第1電極311から流入した電流はボンディングワイヤ319を介して半導体装置315の第1端子331に流入する(+Z方向から+X方向)。次に、矢印F5及びF6に示すように、第1端子331からボンディングワイヤ319を介してVCSEL316のアノード(VCSEL105の表面に配置)に流入する(+Z方向から+X方向)。次に、矢印F7に示すように、VCSEL316のアノードに流入した電流は、VCSEL316のカソード(VCSEL105の裏面に配置)から半導体装置315に流入する(-Z方向)。さらに、半導体装置315から流出した電流は、第2電極312へ戻り、矢印F8の方向(-X方向)へ回り込む。
【0131】
図23(c)の矢印F9及びF10に示すように、半導体装置315に流入した電流は、半導体装置315内に形成される電流制御素子351とスイッチング素子352を介して第3端子333からボンディングワイヤ319を介して第2電極312へ流れ(-Y方向から-Z方向)、矢印F11及びF12に示すように、半導体装置315の第4端子334からボンディングワイヤ319を介して第2電極312へ流れる(+Y方向から-Z方向)。矢印F9及びF10と矢印F11及びF12のそれぞれの電流ループは対象な形状となる。全体でみると、
図23(a)に示すように、図中の左側から下側周り(矢印F1方向)及び上側周り(矢印F2方向)に、電流ループが形成されることとなる。この結果、VCSELモジュール150では、スタック構造を有することと相まって、小さい電流ループがX方向、Y方向及びZ方向に、同時に、立体的に形成されることから、全体のインダクタンスを低くすることが可能となった。
【0132】
VCSELモジュール150では、VCSEL316、半導体装置315、第2電極が、Z方向において3段スタック構造となっているため、VCSEL316から流出する電流経路を短くすることが可能となっている。また、電流ループを小さくすることができている。また、VCSEL316と半導体装置315との間は、ボンディングワイヤではなく、金属同士を接続しているため、インダクタンスを低くすることができ、高周波スイッチング特性が向上する構成となっている。また、半導体装置315から流出する電流を、一方向ではなく、図中の上下2方向(±Y方向)に均等に分割しているので、さらにインダクタンスの低い電流経路を確保することが可能となっている。
【0133】
また、VCSEL316のアノードに流入する電流経路の方向(+X方向)に対して、垂直な方向(-Z方向、及び/又は、±Y方向)にVCSEL316から電流が流出するようにしたので、インダクタンスの低い電流経路を確保することが可能となっている。