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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179626
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】バイオ多段式水素発生システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/02 20060101AFI20221125BHJP
   C10J 3/60 20060101ALI20221125BHJP
   C10J 3/20 20060101ALI20221125BHJP
   C10K 3/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
C10J3/60
C10J3/20
C10K3/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022162153
(22)【出願日】2022-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】721004802
【氏名又は名称】高橋 廣存
(72)【発明者】
【氏名】高橋 廣存
(57)【要約】
【課題】バイオマスや石炭から純度の高い水素を製造するための装置は複雑である。コストアップの要因である。水素純度が高くなくても、ガス中に二酸化炭素や一酸化炭素が含まれて燃焼熱が低くても、ガスタービン燃料として利用できる。水性ガス化の効率を向上。
【解決手段】加熱炉と炭化・水性ガス化炉を隣り合わせに組み合わせた炉が複数ある水素発生装置を利用する。水性ガス化触媒を共存させながらバイオマスや石炭を炭化させ、その後スチームを供給し、水性ガス化反応を行わせる。反応時間が短縮でき、さらに水性ガス中に一酸化炭素と二酸化炭素が含まれたままガスタービン発電などに利用できるので、コストダウンにつながる。水素と二酸化炭素主成分の水性ガス化も可能で、二酸化炭素の分離だけで高純度の水素が容易に得られる。さらに一酸化炭素と水素が主成分の水性ガス化も可能なので、メタノール合成のコストダウンにもなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形可燃物である丸太のように大きいサイズからペレットのような小さいサイズのバイオマス及び石炭と水性ガス化触媒を炭化・水性ガス化炉に充填する工程、隣接の加熱炉からの高温加熱で乾留する工程、得られた炭化物に加熱炉上部を通した高温スチームを炭化物に吹き込んで水性ガス化反応を行わせ炭化物をすべてガス化する工程、 固形可燃物の乾留で発生した可燃性ガスをタンクに集めた後そのガスを供給して燃焼させて加熱炉を高温に維持する工程を含み、前記工程に炭化・水性ガス化炉と加熱炉が交互にサンドイッチ型に組み合った熱効率の良い多段式水素発生装置を利用して水性ガスを発生させるバイオ多段式水素発生システム。
【請求項2】
炭化・水性ガス化炉の上部に、シフト反応触媒を充填してガスが抜けることができる容器を設置し、さらに水性ガス収集本管につながるパイプ中にも水性ガス化触媒を充填し、水性ガス中の一酸化炭素を二酸化炭にし易い請求項1に記載のバイオ多段式水素発生システム。ただし、2か所のうちどちらか1か所のみに触媒を充填しただけでも良い。
【請求項3】
炭化・水性ガス化炉の上部に、逆シフト反応触媒を充填してガスが抜けることができる容器を設置し、さらに水性ガス収集本管につながるパイプ中にも逆水性ガス化触媒を充填し、水性ガス中の二酸化炭素を一酸化炭にし易い請求項1に記載のバイオ多段式水素発生システム。ただし、2か所のうちどちらか1か所のみに触媒を充填しただけでも良い。
【請求項4】
加熱炉からの高温排ガスの熱を利用して高温スチームを発生させて発電に利用し、さらに熱回収を繰り返して熱を有効利用し、その他にも高温の水性ガスの熱も発電に利用する請求項1~3に記載の多段式水素発生システム。
【請求項5】
炭化・水性ガス化炉に上下二段以上スチーム吹込み部分を有し、固形可燃物(バイオマスや石炭)を乾留して装置内に付着した煤やタールも水性ガス化する請求項1~4に記載のバイオ多段式水素発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸太のように大きいサイズからペレットのような小さいサイズのバイオマス(特に竹や樹木)及び石炭などの固形可燃物から多段式装置で水素を発生させるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を効率良くガス化して効率の高い発電方法として石炭ガス化複合化火力発電がある〔特許文献1〕〔特許文献2〕〔特許文献3〕。
【0003】
水素の需要は高まっている。内燃機関の燃料・化学品の原料・発電・製鉄など。しかし、製造方式は主にメタンガスの高温分解と水の電気分解であり、コストが高い。メタンガスは化石燃料のため、二酸化炭素の発生源になってしまうし、地球温暖化効果は二酸化炭素の25倍もある化合物〔非特許文献1〕である。すなわち、メタンとは 温室効果ガスである。そこで、バイオマスや石炭の高温スチーム分解を一段もしくは二段で行う方法も研究されている。しかし、発生するガスは多種類であり、追加の二酸化炭素化工程も必要になっている。また、少量でもバイオマスや石炭に含まれている硫黄化合物や窒素化合物がガス化によって硫黄酸化物や窒素酸化物になるため、その除去装置が必要になっている。その分離工程は複雑となり、コストが高くなってしまう。本発明ではガス精製の処理量が大幅に減る。
【0004】
〔特許文献4〕には低品位石炭からの水素製造方法及びシステムが記載されている。しかし、〔特許文献4〕の方法では低品位石炭やバイオマスのスチームによるガス化の後、さらにスチームで一酸化炭素をシフト反応させて二酸化炭素と水素ガスにする。その上、冷却してから触媒を使用して残りの一酸化炭素を酸素による二酸化炭素化を行っている。水素を製造するためには何段階もの工程を必要とする。また、ガス化の温度を1000°C以上にするために空気を深冷分離した酸素を使用しているので、よりコストアップになる。また、石炭やバイオマス中に含まれている硫黄や窒素の酸化物の除去装置が述べられていない。よって、低品位炭を使用しても水素製造単価は下がらないと予想される。ただ、水素製造や二酸化炭素の処理について近年の技術状況については良く調べてある。二酸化炭素と水素の分離方法についても詳しく述べている。本発明でも得られた水性ガスの用途によっては、二酸化炭素と水素の分離を必要とする時は、本発明のシステムに組み込むこともあり得る。
【0005】
〔特許文献1〕には石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)空気吹きについて記載されている。石炭から発生させた水性ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素にシフト反応させ、二酸化炭素を除去し、ガスタービン発電の燃焼安定性を向上させている。ただ、二酸化炭素を除去した分、ガスタービン出力は低下するという問題が残るようである。
【0006】
〔特許文献2〕には石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)酸素吹きについて記載されている。
【0007】
〔特許文献3〕および〔特許文献11〕には石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)の改良について記載されている。
【0008】
上記のいずれの場合も原料を一段でガス化する装置のため、ガスを利用する前に一酸化炭素を二酸化炭素化し、脱硫・脱硝などいくつかの装置も必要になっている。
【0009】
〔非特許文献2〕には間伐材を原料とした木炭から水性ガスを発生させて、非エンジン式発電及び地域内利活用システムを構築する事について記載されている。しかし、〔非特許文献2〕の方法では間伐材を木炭化した後、別の装置に移して一段で加熱と水性ガスの発生を行うため、一酸化炭素の発生は避けられない。よって、二酸化炭素化への反応装置も必要になっている。また、木炭にする時、通常は加熱した時の熱と可燃性ガスを大気中に方出しているので、間伐材の持っているエネルギーの何10パーセントもロスしてしまう。本発明ならロスがわずかでほとんど利用できる。
【0010】
水素の利用はいくらでもある。内燃機関の燃料・化学品の原料・発電・製鉄など。水の電気分解やメタンガスの分解ではコストが高いので、社会的にも困っている。石炭や石油を使えば二酸化炭素の排出になり、世界的に困っている。バイオマス(主に竹や樹木)を利用し、植林すれば、二酸化炭素の排出にならない。竹は適切に切れば、自力で芽を出し成長する。3年目には切れるので、再生産が非常に容易で人手はほとんどかから無い。でも、利用されずにいる竹林が多い。本発明では長さ10メートルでも利用できるので、水素製造のコストダウンになる。
【0011】
〔特許文献7〕石炭、重油などに酸素、水蒸気などを高温、高圧で反応させる。発生させたガスに鉄―酸化クロム触媒を用いて400℃で水蒸気シフト反応をさせる。そして、ガスを深海に圧入し、二酸化炭素を深海に溶解させを除去し水素を分離した。ただし、用途によっては二酸化炭素化やその分離は必要ない。〔特許文献13〕には水性ガスシフト反応触媒の製造方法、水性ガスシフト反応触媒、及び水素の製造方法について、〔特許文献14〕には逆シフト反応触媒およびそれを用いた合成ガスの製造方法について記載されている。
【0012】
〔特許文献8〕低品位石炭でも炭酸カリウムを触媒とすれば、650℃以下でも水蒸気ガス化できた。すなわち、水性ガス化できたということである。
【0013】
〔非特許文献3〕には石炭の熱分解やスチームとの反応(すなわち水性ガス化反応)、触媒、さらに、噴流式ガス化法や炉内脱硫ガス化法の化学反応までが記載されている。
【0014】
〔非特許文献4〕 ガスタービン技術 2007年 3 月 財団法人 エネルギー総合工学研究所 発熱量の低いガスでも使用していると記載されている。
【0015】
〔非特許文献5〕 接触水素化反応による二酸化炭素のメタノール変換技術 の評価 (キーワー ド 二酸化炭素,接 触水素化反応,メ タノール合成,銅 一亜鉛酸化物系触媒,錯 体触媒) メタノール合成で一酸化炭素のほうが二酸化炭素より合成率が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】JPB 002870929-石炭ガス化複合発電プラント
【特許文献2】JPB 002910283-石炭ガス化複合発電装置
【特許文献3】JPB 003649456-石炭ガス化発電方法(三菱重工株式会社)
【特許文献4】JPA1011007493-水素製造方法及び水素製造システム
【特許文献5】JPA 2004182501-バイオマスからの水素製造方法
【特許文献6】JPB 002869525-改質ガス中の一酸化炭素除去方法及び装置
【特許文献7】PA 1991242301-水素製造方法
【特許文献8】JPA 2009013320-水素の製造方法
【特許文献9】JPA 1982074391-000000コークスのガス化方法
【特許文献10】JPA 1985123592-コークス製造工場における石炭およびコークス類のガス化方法
【特許文献11】JPA 2019178230-ガス化炉システム≪三菱日立パワーシステムズ株式会社≫
【特許文献12】JPB 007089809-多段式水素発生方法
【特許文献13】JPA 2019214023-000000水性ガスシフト反応触媒の製造方法、水性ガスシフト反応触媒、及び水素の製造方法
【特許文献14】WO2011065194A1逆シフト反応触媒およびそれを用いた合成ガスの製造方法
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】https://denki.k-server.info/methane/電力と環境の情報 メタンとは 温室効果ガスであり、天然ガス資源でもある化合 物について
【非特許文献2】oene.co.jp/wpcontent/themes/standard_black_cmspro/img/woodbiomass_reportwww.emssy_03_1.pdf 間伐材を原料とした木炭水性ガスによる非エンジン式発電及び地域内利活用システムの構築 富士古河E&C株式会社
【非特許文献3】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jie1922/58/2/58_2_141/_pdf 石炭化学特集石炭 ガス化 反応 の基礎 ―1978.11.29受 理 ―早 稲 田 大 学森 田 義 郎
【非特許文献4】ガスタービン技術 2007年 3 月 財団法人 エネルギー総合工学研究所
【非特許文献5】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jie1992/74/3/74_3_137/_pdf/-char/ja接触水素化反応 によ る 二酸化炭素 のメ タノール変換技術 の評価 (キーワー ド 二酸化炭素,接 触水素化反応,メ タノール合成,銅 一亜鉛酸化物系触媒,錯 体触媒) 財団法人 電力中央研究所 大 山 聖 一
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
バイオマスや石炭のスチームによるガス化が検討され、一部実用化されているが、純度の高い水素を製造するためにはいくつもの装置を使う必要性がある〔特許文献1〕〔特許文献2〕〔特許文献3〕〔特許文献11〕。バイオマスのガス化からの水素製造方法としては〔特許文献5〕。石炭ガス化複合発電では連続操業にこだわり、一段でガス化し、多種類の化合物を発生させているため、ガス精製や水素の高純度化にいくつもの装置を必要としている。さらに従来の連続的ガス化方法では装置の一部に『異常反応・配管詰まり・異常加熱等々』の異常を生じた時、安定操業へのコントロールが困難になり易い。最悪、操業停止に追い込まれる。
【0019】
回分式反応装置を複数利用する事により、一定量の水素が連続的に発生させられる。方法としては、製鉄所のコークス炉からコークスを冷却装置に移して、酸素か空気と水を供給してコークスの一部を水性ガス化し、さらに反応室に移して酸素又は空気及びスチームで水性ガス化する方法〔特許文献9〕。製鉄所のコークス炉からコークスを冷却装置に移して、酸素か空気と水を供給してコークスの水性ガス化する方法〔特許文献10〕。しかしながら、コークスを炉から移動せずに炭化炉でコークスのガス化をする事により、熱効率の良い・追加の装置を不要とした固形可燃物の水性ガス化方法として〔特許文献12〕多段式水素発生方法 を出願した。さらに水素の利用促進のためにコストダウンを図る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明でも、硫黄化合物や窒素酸化物など不純物の除去を容易にするために、敢えてバイオマスや石炭を乾留してから水性ガス化反応を行っている。さらに、熱効率を格段に良くするために加熱炉と炭化・水性ガス化炉をサンドイッチ型に組み合わせている。排ガス処理は乾留ガスを燃焼させたガスだけで済む。さらに、竹や丸太のような大きい固形可燃物でも大鋸屑(おがくず)のように小さい固形可燃物でも充填して、水素を発生させられるため、産業廃棄物として放置してあるバイオマスや山林に放置されている間伐材でも資源として利用できる。
【0021】
その上、回分式反応装置を複数利用する事により、一定量の水素が連続的に発生させられる。よって、水素を集めるまでは、複数の同じ装置で操業するため、『異常反応・配管詰まり・異常加熱等々』の異常を生じた時でも異常を起こした装置を切り離し、修理すれば良い。そのため、安定的な操業が行い易い装置であり、システムである。さらに、水素を高純度に精製する前のガス成分は一酸化炭素と二酸化炭素と過剰なスチーム及び水素だけなので、精製が容易である。よって、本発明では、従来のガス化からの水素システムの精製工程の一部がすでに組み込まれているようなシステムである。
【0022】
さらに、石炭ガス化複合発電はじめ水素エンジンなどは高純度の水素を利用する方法である。しかしながら、ガスタービンは一酸化炭素や二酸化炭素を含む水素純度の低いガスでも作動し、燃焼熱相当の出力が得られることが分かった〔特許文献1〕〔非特許文献4〕。また、〔特許文献8〕には石炭と触媒(炭酸カリウム)を混合し水蒸気と熱風を供給すると、触媒を混合しなかった時よりガス化が進んだと記載されている。そこで、多段式水素発生装置で水素製造コストのダウンを図るため、バイオマスや石炭と一緒に水性ガス化触媒を炭化・水性ガス化炉に充填し、炭化後の水性ガス化時間の短縮を図り、水性ガス化の生産効率を向上させる本発明に至った。すなわち、一酸化炭素や二酸化炭素を含む水素純度の低いガスのまま次の装置に供給する。
【0023】
さらにガスタービン技術を調べると、二酸化炭素を含む水素ガスでも発熱量相当のタービン出力が得られると〔特許文献1〕の2ページ目に記載されている。製鉄所の高炉から発生しているガスの可燃性成分は一酸化炭素が主で窒素や二酸化炭素などの不燃成分が多く、単位体積当たりの発熱量はメタン(天然ガス)の10分の1ぐらいだが、ガスタービン発電が実用化されている〔非特許文献4〕。よって水性ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素にして分離しなくても、一酸化炭素と二酸化炭素を含んだままの水素でもガスタービンを回転させられ、発電その他に利用できる。
【0024】
すなわち、熱効率の良い方法として、加熱炉と炭化・水性ガス化炉が隣り合わせの組み合わせが複数ある水素発生装置を利用する。両側の加熱炉から1000°C以上の熱で数時間以上かけて炭化・水性ガス化炉内の〔水性ガス化触媒を共存させたバイオマスや石炭〕を加熱して、揮発分をほぼ100パーセント分離する。すると炭素成分がほぼ100パーセントの炭化物と触媒が残るので、二段階目の反応として、高温スチームを圧入し、水性ガス化反応を行わせる。すると、一酸化炭素と二酸化炭素と水素を発生し、過剰なスチームがH2O(酸化水素)のガスとして残る。あとバイオマスや石炭の灰分が少量残る。そして、触媒が無い時よりも短時間で水性ガス化反応が進む。さらに、一酸化炭素を減らしたい時は、スチームを過剰に圧入すると、二酸化炭素は増えて一酸化炭素は減る。水性ガス化触媒としては、石灰,ドロマイト,マグネシア,炭酸ナトリウム,炭酸カリウムなどの塩基性物質のほか,ニッケルや鉄などの遷移金属がある〔非特許文献3〕。
【0025】
その上に、シフト反応触媒を炉と水性ガス収集の本管に繋ぐ配管の中に充填するか、炉の最上部に容器を設置して充填しておけば、条件によっては一酸化炭素が微量になる。その後は、容易に二酸化炭素を除去でき、高純度の水素ガスが得られる。シフト反応触媒としては、酸化鉄―酸化クロム〔特許文献7〕、硫黄化合物が含まれていても触媒活性に低下が少ない触媒としてモリブデンーロジウム系触媒が開発されている〔特許文献13〕。
CO+H2O=CO2+H2ー9,8kcal発熱
【0026】
逆シフト反応触媒としては、アルカリ土類金属―遷移金属系の触媒が開発されている〔特許文献14〕。
CO2+H2=CO+H2O+9,8kcal 吸熱
【0027】
本発明では、さらに、炭化・水性ガス化炉に上下二段以上スチーム吹込みパイプなどを有し、固形可燃物(バイオマスや石炭)を乾留して炉壁などに付着した煤やタールなどを水性ガス化して装置内に残らなくすることができる。一般的には、可燃性固形物を加熱して揮発分を蒸発させる時は高沸点のタールなどが排出部や配管に付着する例が多い。そこで、高温スチームを圧入して、水性ガス化し、水素の生成率を高くする。
【0028】
本発明では、さらに、スチーム吹込みパイプなどに空気を送り込めるようにパイプをつないである。すなわち、通常操業中は両側の加熱炉からの加熱で十分操業できるが、水性化ガス発生時の吸熱反応により、炉の温度が下がり過ぎた時、空気を吹き込み、炭化物を燃焼させ、炉内温度の温度を上昇させる。そして、水性ガス反応が進み易いようにした装置を用いる。ただし、水性ガス化触媒を共存させると、より低い温度でも反応が進むので、空気の吹込みはほぼ不要かと思われる。
【0029】
操業中は、バイオマスや石炭を1000°C近くまで加熱し、可燃性ガスを分離し、そのガスを燃焼させ、加熱炉の熱源にする。十分に炭化したバイオマスや石炭に高温スチームを過剰に圧入すると、水性ガスが発生することは既知のことである〔非特許文献3〕。スチームを過剰に存在させれば、一酸化炭素も二酸化炭素になり、その分水素が多く得られる。従来は反応性の高い一酸化炭素を多く発生させ、メタノールを合成していた。それよりも、高純度の水素を多く必要とする時代になったので、一酸化炭素を二酸化炭素にし、より多く水素を発生させて二酸化炭素を除去する方法が選ばれるようになった。そこで、〔特許文献12〕多段式水素発生方法 を出願した。
【0030】
ところが、良く調査すると、固形可燃物から発生させた水性ガスでもガスタービン発電ができ、バイオマスを固形可燃物として利用すれば、二酸化炭素を除去しなくても良いので、水性ガスの生産効率を向上させれば、よりコストダウンにつながることがわかり、本発明に至った。そして、前記の発明と同じく炭化・水添ガス化炉と加熱炉をサンドイッチ型にすれば、熱効率が飛躍的に向上する。そして、必要に応じてシフト反応触媒を炉の上部や炉上部配管中に充填し、スチームの圧入条件などをコントロールして二酸化炭素を多くすることも可能である。また、逆シフト触媒を充填すれば、一酸化炭素化と水素のガスにできる。その後の用途に応じて操業条件を変えれば良い。メタノール合成では一酸化炭素の方が反応収率が高い。
【0031】
加熱炉の高温排ガスの熱を有効利用する方法として図4に示した。加熱炉の排ガスは1000℃以上の高温なので、ボイラータイプの熱回収器で高温スチームを発生させ、蒸気タービン発電機での発電をする。排出されたスチームは工場内の他の加熱源として利用すれば良い。また、ボイラーを出た排気ガスは加圧ポンプで加圧し、熱交換器で熱回収し、工場内の熱源として利用できる。さらに、もう一回くらいは熱交換器での熱回収が可能と思われる。そして、100℃ぐらいに下がってもバイオマスの乾燥やハウス栽培の熱源として利用できる。システムさえ適切に組めば、熱の有効利用は多くある。ハウス栽培でも単独で熱を発生させようとするので、石油代がかさむと嘆きが多いのです。
【0032】
バイオマスを使用すれば、二酸化炭素発生とは換算されない。日本には森林に切り倒されたままの樹木が大量に放置されている。よって、本発明では二酸化炭素発生対策にもなる。

以下、添付の図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明を実施するための装置の概念的な説明図。
図2】炭化・水性ガス化炉201~250~のサイズおよび触媒を充填する部分を示すための概念的な説明図。加熱炉のサイズも炭化・水性ガス化炉とほぼ同じ。
図3】灰や触媒を押し出す機構を示す概念図。
図4】加熱炉からの燃焼排ガスの熱回収と有効利用についての概念図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照して本発明方法の原理を説明する。
炭化・水性ガス化炉201~250~に触媒とバイオマスチップや小枝などは炉の上部から充填する。長さ10メートル以上の竹や丸太のように大きい樹木などは横からでも上からでも挿入可能である。加熱炉からの熱で乾留ガスが発生しなくなったら、スチームを圧入する。炭化物はすべて水性ガス化し、次の装置に供給する。乾留ガスは加熱炉の燃料として使用。排ガスは高温なので、高温スチーム発生に利用して発電するだけでなく、加圧ポンプで加圧し熱回収を容易にする。熱回収器の後もバイオマス乾燥やハウス栽培の熱源としても利用できる。酸素が少なくなっている分バイオマスの変質が少ないかもしれない。排気煙突の高さが低くても排気ガスは充分拡散できる。
【0035】
加熱炉101~150~と炭化・水性ガス化炉201~250~が交互にサンドイッチ型に並んでいる。それぞれの炭化・水性ガス化炉から集めた乾留ガスは加圧ポンプで加圧してから乾留ガスタンクに集め、その後、それぞれの加熱炉に供給し、燃焼ガスとして利用する。加圧しなくても良いが、加圧した方が燃焼後のガスの流れがスムーズで、熱回収率が良くなる。加熱炉はスタートアップの時のみ外部から可燃性ガスを供給するが、通常は乾留ガスのみで操業でき、供給するバイオマスや石炭と操業条件によっては乾留ガスが余る。
【0036】
加熱炉101~105~は耐火レンガが一般的であるが1000°C以下で操業できるなら耐熱鋼でも良い。炭化・水性ガス化炉201~205~は1000°C以下での操業になるので、耐熱鋼で十分である。
【0037】
加熱炉101~150~のサイズ。炉内厚さは0,20m~0,80m厚過ぎると加熱効率が悪くなる。幅は3m~20mサイズが大きい方が生産量を増やせるが、炉の温度を均一にするのが難しくなる。そして、保守点検が大変になる。高さは3m~10m。幅と同じ理由で大き過ぎない方が良い。
【0038】
炭化・水性ガス化炉201~250~の炉内厚さは0,20m~1,0m、もっと厚みがあっても良いが、乾留時の熱伝導のためには薄いほうが良い。
【0039】
石炭化・水性ガス化炉201~250~に触媒やバイオマス(主に竹や樹木)や石炭を充填し、水性ガス化を何回か繰り返すと灰が溜まるので、押し出す。触媒とスチーム圧入量の選択により、水性ガスガス中の一酸化炭素と二酸化炭素の比率をコントロールできる。
【符号の説明】
【0040】
1 各加熱炉で乾留ガスを燃焼させた後の排ガスを集めるパイプ
2出 各炭化・水性ガス化炉の乾留ガスを集めるパイプ
2入 2出で集めた乾留ガスを貯めておいたタンクから、ガスを加熱炉に送るパイプ
3 各炭化・水性ガス化炉で発生させた水性ガスを集めるパイプ
4 水性ガス化反応のために炭化・水性ガス化炉に圧入する高温スチームを送るパイプ
5 各炭化・水性ガス化炉に空気を吹き込むためのパイプ
○ 開閉バルブ
11 各加熱炉で乾留ガスを燃焼させた後の排ガス流量を調節する。操業中はほぼ開放
12 各炭化・水性ガス化炉から乾留ガスが出なくなったら閉める。
13 スチームを供給する時開ける。
14 乾留ガスを加熱炉に供給する時の流量を調節する
15 炭化・水性ガス化炉の乾留中は閉め、乾留ガスの流出を防ぎ、乾留終了後に水性ガスを取り出す時開ける。
16 乾留中で炭化・水性ガス化炉上部にスチームを供給する時、開ける。
17 水性ガス化反応のため、炭化・水性ガス化炉下部にスチームを供給する時開ける。
18 炭化・水性ガス化炉の温度が下がり過ぎて、炉に空気を吹き込む時に開ける。
19 加熱炉の燃焼具合を調整するため、加圧空気の流量をコントロールする。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明では丸太のように大きいサイズからペレットのような小さいサイズのバイオマス(主に竹や樹木)及び石炭などの固形可燃物が効率的に利用出来る。本発明では乾留して残った炭素分の大部分を水と反応させて水素を発生させるため、コークスなどの炭素分のみの燃焼よりも熱量が増える。
〔非特許文献3〕によると 炭素の燃焼熱はC+O2=CO2―94,0Kcal
炭素による水の分解による水素の発生はC+2H2O=CO2+2H2+21,6Kcal
二つの式から水素の燃焼熱を求めると 式の左辺と右辺は等しいので、左辺と次の式の右辺を加えて右辺と次の式の左辺と加えることができる。よって、
C+O2+CO2+2H2+21,6Kcal=CO2―94,0Kcal+C+2H2O
左辺と右辺の同じものは消去 O2+2H2+21,6Kcal=2H2O―94,0Kcal
よって、2H2+O2=2H2O―105,6 Kcal
炭素1分子で水素2分子生成するので、炭素の燃焼熱よりも発生させた水素は20%以上多い燃焼熱を持っていることになる。
【0042】
本発明では、丸太のように大きいサイズからペレットのような小さいサイズのバイオマス(主に竹や樹木)なども利用できるので、二酸化炭素ゼロの切り札と成り得る。価格の安い石炭を使用しても、石炭には硫黄化合物や窒素化合物が含まれるため、それらの除去装置が必須となる。本発明では、石炭を全量ガス化したり燃焼させたりするより、硫黄化合物や窒素酸化物除去の負担を軽減するので、産業上の利用価値は高い。
その上、炭化・水性ガス化炉からの水性ガスは900°C以上あり、メタノール合成の反応温度は300°C以下で良いため、原料ガスの加熱は不要となる〔非特許文献7〕。炭化・水性ガス化炉から出てきたガスを熱交換器などでスチームの加熱をして発電に利用しても、十分な反応温度を維持できる。よって、熱の有効利用も可能となり、製造コストをより下げられる可能性が高い。
【0043】
メタノール合成
従来は CO+2H2=CH3OH―91,0kJ 発熱
二酸化炭素利用 CO2+3H2=CH3OH+H2O―49,8kJ 発熱
水素をより多く必要とするので、水素価格がメタノール価格に大きく影響する。
【0044】
本発明では炭素でH2Oを分解するので、COが含まれる条件にするか、すべてCO2まで反応させるかの違いだけである。不純物の分離が不要のため、メタノール合成条件によっては水性ガスを直接メタノール合成工程に送っても良い。本発明では必要とした熱をスチーム発生に利用して発電できるので、メタノール合成はコストダウンの可能性が高い。
【0045】
メタノールはF1レースの燃料として利用されたこともあり、価格さえ下がれば、ガソリンの代替燃料として利用可能である。
図1
図2
図3
図4