(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179654
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221125BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20221125BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221125BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
C09J11/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163356
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2021091583の分割
【原出願日】2017-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】肥田 知浩
(57)【要約】
【課題】高温条件下においても、繊維布帛に対し良好な接着性を有する両面粘着テープを提供する。
【解決手段】アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を少なくとも1層有し、前記粘着剤層が、動的粘弾性測定装置においてせん断モードで昇温速度3℃/分、振動数10Hz、厚み1mm、幅6mm、長さ10mmの条件で測定した130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa以上であり、損失弾性率が9.0×103Pa以上である両面粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を少なくとも1層有する両面粘着テープであって、
前記粘着剤層が、動的粘弾性測定装置においてせん断モードで昇温速度3℃/分、振動数10Hz、厚み1mm、幅6mm、長さ10mmの条件で測定した130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa以上であり、損失弾性率が9.0×103Pa以上である、両面粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層の厚みが5~60μmである、請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
基材レス両面粘着テープである、請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記貯蔵弾性率が5.0×105Pa以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記損失弾性率が5.0×104Pa以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤組成物がさらに粘着付与樹脂(C)を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
一方の面の被着体が繊維布帛であり、他方の面の被着体が発熱体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
前記繊維布帛がポリエステル繊維布帛である、請求項7に記載の両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープに関し、例えば、高温条件下においてポリエステル等からなる繊維布帛に対して使用する両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れることから、養生、梱包、補修等を目的として、広く使用されている。例えば、アクリル系の粘着剤層を有する粘着テープは、耐候性、耐久性、耐熱性、透明性等の各種物性に優れているため、車両、住宅、電子機器内部等において部材を固定するために広く利用されている。
例えば特許文献1には、車両、住宅、電子機器内部等に用いられ、特に車両用エアーコンディショナーユニットに好適に用いられる粘着テープとして、所定条件で加熱したときの揮発成分濃度が所定量以下であるアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着テープが開示されている。
特許文献2には、低温から高温の粘着特性に優れ、特にウレタンフォームや低極性被着体に対する耐剥離性能に優れたアクリル系粘着剤組成物として、水酸基を有するアクリル系重合体、架橋剤及び特定の粘着付与剤を含有するアクリル系粘着剤組成物、及び該組成物からなる粘着剤層を有する粘着加工物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-315767号公報
【特許文献2】特開2007-291299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、家電ヒーターや車両用ヒーター等、人が接触しうる部分に用いられるヒーターにおいて、火傷防止のために、ポリエステル布等の保護布を貼付するための両面粘着テープの使用が検討されている。これらのヒーターは最大で130℃付近まで熱を発することがあるため、これに用いる両面粘着テープには高温条件下での耐熱接着性が求められる。
【0005】
しかしながら、布のような粗い面を有する被着体に対しては粘着テープの貼り付きが非常に悪い。布等の被着体に対する接着性を向上させるために粘着テープに用いる粘着剤を柔らかくすると、粘着剤の耐熱性不足により、ヒーターの熱で粘着テープが剥がれやすいという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、高温条件下においても、ポリエステル等からなる繊維布帛に対し良好な接着性を有する両面粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成され、所定条件下で測定した貯蔵弾性率及び損失弾性率が所定値以上である粘着剤層を少なくとも1層有する両面粘着テープとすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。
(1)アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を少なくとも1層有する両面粘着テープであって、前記粘着剤層が、動的粘弾性測定装置においてせん断モードで昇温速度3℃/分、振動数10Hz、厚み1mm、幅6mm、長さ10mmの条件で測定した130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa以上であり、損失弾性率が9.0×103Pa以上である、両面粘着テープ。
(2)前記粘着剤層の厚みが5~60μmである、上記(1)に記載の両面粘着テープ。
(3)基材レス両面粘着テープである、上記(1)又は(2)に記載の両面粘着テープ。
(4)前記貯蔵弾性率が5.0×105Pa以下である、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
(5)前記損失弾性率が5.0×104Pa以下である、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
(6)前記粘着剤組成物がさらに粘着付与樹脂(C)を含有する、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
(7)一方の面の被着体が繊維布帛であり、他方の面の被着体が発熱体である、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
(8)前記繊維布帛がポリエステル繊維布帛である、上記(7)に記載の両面粘着テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、130℃程度の高温条件下においても、ポリエステル等からなる繊維布帛に対し良好な接着性を有する両面粘着テープを提供することができる。当該両面粘着テープは、例えば、家電ヒーターや車両用ヒーター等の表面に保護布を貼付するために好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】両面粘着テープの耐熱接着性評価方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[両面粘着テープ]
本発明の両面粘着テープは、アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を少なくとも1層有する。該粘着剤層は、動的粘弾性測定装置においてせん断モードで昇温速度3℃/分、振動数10Hz、厚み1mm、幅6mm、長さ10mmの条件で測定した130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa以上であり、損失弾性率が9.0×103Pa以上であるものである。
両面粘着テープにおける上記粘着剤層は架橋剤(B)により架橋されたものであり、所定条件において測定した該粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率がいずれも所定値以上であることにより、高温条件下においてもポリエステル等からなる繊維布帛に対し良好な接着性を発現する(以下、この特性を「耐熱接着性」ともいう)。
【0011】
本発明により上記効果が得られる理由については、以下のように推定される。まず、所定条件において測定した粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa以上であると、熱による凝集破壊が起こりにくく、その結果、高温条件下でも両面粘着テープが被着体から剥がれにくくなり良好な耐熱接着性が得られる。
一方で、粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率が高いだけでは、ポリエステル等からなる繊維布帛に対する良好な接着性は得られないことが判った。
本発明の両面粘着テープにおける粘着剤層は、さらに、所定条件において測定した130℃における損失弾性率が9.0×103Pa以上であることで、粘着剤成分が被着体である繊維布帛に染み込み易くなり、その結果、粘着剤層と繊維布帛との間で界面剥離が起こりにくくなるため、耐熱接着性が良好になると考えられる。
【0012】
上記粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率の調整方法としては、粘着剤層を構成するアクリル系重合体(A)のモノマー組成及び分子量、アクリル系重合体(A)の含有量、架橋剤(B)の種類及び含有量、粘着剤層の形成条件(乾燥温度、乾燥時間)等を適宜選択することにより調整する方法が挙げられる。また、必要に応じて用いる粘着付与樹脂(C)の種類や軟化点、配合量等を適宜選択することにより調整してもよい。これらについては後述する。
【0013】
本発明の両面粘着テープは、アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を少なくとも1層有していればよい。両面粘着テープは、いわゆる基材レス両面粘着テープであり、上記粘着剤組成物から形成された粘着剤層のみからなる単層構成であってもよいし、基材を有し、基材の両面にそれぞれ粘着剤層を有する積層構成を有するものであってもよい。
両面粘着テープが基材を有する場合、該基材は特に限定されず、例えば、不織布、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン等のプラスチックフィルム、金属箔等を用いることができる。基材には顔料、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、柔軟性付与剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤が適宜配合されてもよい。
基材の厚みは特に限定されないが、強度及び熱伝導性をともに良好にする観点から、好ましくは10~50μmである。
【0014】
本発明の両面粘着テープは、基材レス両面粘着テープであって、アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層のみからなる単層構成であることが好ましい。両面粘着テープが単層構成であると、厚みを薄くすることができるとともに、被着体が繊維布帛である場合にはその形状に追従しやすい。
【0015】
<粘着剤層>
本発明の両面粘着テープにおける粘着剤層は、アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物により形成されたものであり、前述したように架橋剤(B)により架橋されたものである。粘着剤組成物は、さらに後述する粘着付与樹脂(C)を含有することが好ましい。
【0016】
(アクリル系重合体(A))
アクリル系重合体(A)は、少なくともアクリル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。当該アクリル系重合体(A)は、反応性官能基を有する重合体であることが好ましい。ここでいう反応性官能基とは、後述する架橋剤(B)との反応性を有する官能基である。
反応性官能基としては、活性水素を有し、後述する架橋剤(B)と反応可能な官能基であれば特に限定されず、例えば、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの官能基のなかでは、カルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基を含有することがより好ましい。カルボキシ基及び水酸基は、後述する架橋剤(B)との反応性が高く、容易に架橋構造を形成することが可能である。また、極性の高いカルボキシ基を有するアクリル系重合体(A)を使用することで、粘着剤層中のアクリル系重合体(A)が繊維布帛等の被着体の表面と化学的に結合するため、接着性が高くなりやすいからである。
【0017】
アクリル系重合体(A)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、反応性官能基含有モノマー(a2)との共重合体、又は、上記モノマー(a1)及び(a2)と、(a1)及び(a2)以外のその他のモノマー(a3)との共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)と、反応性官能基含有モノマー(a2)との共重合体が好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの一方又はこれら両方を意味する用語として使用する。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(a1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(a1)の中でも、良好な耐熱接着性を発現する観点から、アルキル基の炭素数が1~12のアルキルアクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が2~8のアルキルアクリレートがより好ましい。
【0019】
反応性官能基含有モノマー(a2)のうちカルボキシ基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられ、良好な耐熱接着性を得る観点からはアクリル酸及びメタアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、反応性官能基含有モノマー(a2)のうち水酸基を含有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、良好な耐熱接着性を得る観点からは水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
モノマー(a2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(a2)としては、カルボキシ基を含有するモノマー及び水酸基を含有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、少なくともカルボキシ基を含有するモノマーを含むことがより好ましい。また、カルボキシ基を含有するモノマー及び水酸基を含有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種としては、好ましくは、アクリル酸、メタアクリル酸、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
上記(a1)及び(a2)以外のその他のモノマー(a3)としては、モノマー(a1)及び(a2)と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル基を有する化合物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
モノマー(a3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
アクリル系重合体(A)に用いるモノマー成分の使用量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)100質量部に対して、反応性官能基含有モノマー(a2)が好ましくは1.5~20質量部、より好ましくは1.5~15質量部、さらに好ましくは2.0~12質量部の範囲である。
モノマー(a2)の使用量がモノマー(a1)100質量部に対して1.5質量部以上であると、アクリル系重合体(A)中の反応性官能基と架橋剤(B)との架橋反応が進行し易くなり、得られる粘着剤層の貯蔵弾性率を所定値以上に調整しやすくなる。またモノマー(a2)の使用量がモノマー(a1)100質量部に対して20質量部以下であると、架橋後の粘着剤層が硬くなりすぎず、被着体である繊維布帛への染み込みが容易になり、良好な接着性を維持できる。
(a1)及び(a2)以外のモノマー(a3)の使用量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下であり、粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率を所定値以上に調整する観点からは、2質量部以下であることがよりさらに好ましい。
【0022】
また、粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率を所定値以上に調整しやすくする観点から、アクリル系重合体(A)に用いる全モノマー成分中のモノマー(a1)及びモノマー(a2)の合計量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、上限は100質量%である。
【0023】
アクリル系重合体(A)は、質量平均分子量(Mw)が30万~200万であることが好ましく、50万~200万であることがより好ましく、60万~150万であることがさらに好ましい。質量平均分子量を上記範囲とすることで、粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率をいずれも所定値以上に調整しやすくなり、繊維布帛に対する良好な耐熱接着性が得られる。質量平均分子量は、重合開始剤の使用量、重合温度等の重合条件を調整するか、重合方法を選択することにより調整できる。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0024】
また、粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率を所定値以上に調整しやすくする観点からは、アクリル系重合体(A)の分散度(Mw/Mn)は小さいことが好ましい。例えばアクリル系重合体(A)の分散度Mw/Mnは、好ましくは10以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.5以下である。また製造容易性の観点からは、分散度Mw/Mnは、好ましくは1.2以上である。
分散度Mw/Mnは、質量平均分子量と同様の方法で測定できる。
【0025】
アクリル系重合体(A)は、前述したモノマー成分を通常の重合方法、例えば、溶液重合(沸点重合、沸点未満重合)、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等により重合することで得られる。これらの重合方法のうち、高分子量体が得られやすく、粘着性に影響を及ぼしやすい界面活性剤や分散剤を含まないという観点からは溶液重合が好ましく、沸点重合がより好ましい。また、高分子量体が得られやすく、分散度を小さくしやすいという観点からは、沸点未満重合が好ましく、沸点未満重合の中でも、沸点未満の温度で一定温度で所定時間重合を行ういわゆる定温重合が好ましい。
【0026】
重合開始剤としては、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、o-クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート又はジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。またアゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0027】
重合を行う際には、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としてはチオール化合物が好ましく、例えば、ラウリルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸オクチル、β-メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)、チオグリコール酸ブチル;プロパンチオール類;ブタンチオール類;チオホスファイト類等が挙げられる。
連鎖移動剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0028】
アクリル系重合体(A)は、粘着剤組成物の主成分となるものであり、粘着剤組成物全量(不揮発分基準)に対して、通常、50質量%以上、好ましくは60~98質量%、より好ましくは70~95質量%である。
【0029】
(架橋剤(B))
架橋剤(B)は、アクリル系重合体(A)が有する反応性官能基との反応により粘着剤層を架橋しうる成分であり、貯蔵弾性率及び損失弾性率を所定値以上に調整して、両面粘着テープに対し良好な耐熱接着性を付与する。
上記架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0030】
イソシアネート系架橋剤は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、コロネートL-45E、コロネートL-55E(東ソー社製)等の各種ポリイソシアネート化合物、スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)等のビューレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、HL(バイエルAG社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン社製)等のイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)、コロネートL、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0031】
エポキシ系架橋剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E-AX、E-5C(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0032】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、N,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N′-ジフェニルメタン-4,4′-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
また、金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられ、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、アルミキレートA、アルミキレートM(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
粘着剤組成物における架橋剤(B)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.3~10質量部、よりさらに好ましくは0.5~5.0質量部である。架橋剤(B)の含有量が上記範囲であることで、粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率をいずれも所定値以上に調整することが容易になり、被着体が繊維布帛である場合にも良好な耐熱接着性を発現することができる。
【0034】
(粘着付与樹脂(C))
粘着剤組成物は、アクリル系重合体(A)及び架橋剤(B)に加えて、さらに粘着付与樹脂(C)を含有することが好ましい。粘着付与樹脂(C)としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン系樹脂、ケトン系樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、良好な耐熱接着性を得る観点から、粘着付与樹脂(C)としてはロジン系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ロジン系樹脂単独、又はロジン系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂を併用することがより好ましい。
【0035】
ロジン系樹脂としては、例えば、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン等が挙げられ、重合ロジン及び不均化ロジンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
重合ロジンとしては、ロジンを重合した重合ロジン、重合ロジンのエステル化物、例えば、ジアビエチン酸エステル等が挙げられる。重合ロジンの市販品としては、ぺンセルKK、ぺンセルD160、ぺンセルD135、ぺンセルD125(以上、荒川化学工業社製)等が挙げられる。
不均化ロジンとしては、ロジンを不均化した不均化ロジン、不均化ロジンのエステル化物、例えば、デヒドロアビエチン酸エステル等が挙げられる。不均化ロジンの市販品としては、スーパーエステルA125、スーパーエステルA115、W125、W100(以上、荒川化学工業社製)等が挙げられる。
テルペンフェノール系樹脂はテルペン構造とフェノール構造とを有する樹脂であり、テルペンフェノールの市販品としては、YSポリスターG150、YSポリスターT130(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
粘着付与樹脂(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
粘着剤組成物中の粘着付与樹脂(C)の含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、好ましくは1~50質量部、より好ましくは3~45質量部、さらに好ましくは5~40質量部、よりさらに好ましくは5~25質量部である。
粘着付与樹脂(C)がロジン系樹脂である場合、その含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、好ましくは1~35質量部、より好ましくは3~25質量部である。粘着付与樹脂(C)がテルペンフェノール系樹脂である場合、その含有量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対し、好ましくは1~15質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0037】
粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、充填剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、粘度調節剤等がさらに配合されてもよい。
また、粘着剤組成物は、有機溶剤等により希釈されていてもよい。希釈溶剤は、アクリル系重合体(A)を合成するときに使用した溶媒でもよいし、アクリル系重合体(A)を合成した後に加えられたものでもよい。
【0038】
本発明の両面粘着テープにおける粘着剤層は上記粘着剤組成物から形成され、当該粘着剤層は、動的粘弾性測定装置においてせん断モードで昇温速度3℃/分、振動数10Hz、厚み1mm、幅6mm、長さ10mmの条件で測定した130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa以上であり、損失弾性率が9.0×103Pa以上である。
上記所定条件において測定した粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率が1.5×104Pa未満であると、粘着剤層の耐熱性が不足するため、熱による凝集破壊が起こり易く、高温条件下で両面粘着テープが被着体から剥がれ易くなる。また、上記所定条件において測定した130℃における損失弾性率が9.0×103Pa未満であると、被着体が繊維布帛である場合に粘着剤層と繊維布帛との間で界面剥離が起こり易くなり、接着性が低下する。
上記観点から、上記所定条件において測定した粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率は、好ましくは1.5×104Pa以上、より好ましくは1.8×104Pa以上である。粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、5.0×105Pa以下である。
また、上記所定条件において測定した粘着剤層の130℃における損失弾性率は、好ましくは9.5×103Pa以上、より好ましくは1.0×104Pa以上である。粘着剤層の130℃における損失弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、5.0×104Pa以下である。
粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率は、動的粘弾性測定装置においてせん断モードで昇温速度3℃/分、振動数10Hz、厚み1mm、幅6mm、長さ10mmの条件で測定した130℃における値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0039】
粘着剤層の架橋度を示すゲル分率は、20~60質量%であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましい。ゲル分率が上記範囲であると、粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率をいずれも所定値以上に調整しやすく、良好な耐熱接着性を発現することができる。
粘着剤層のゲル分率は以下の方法により測定できる。
両面粘着テープから粘着剤層(試料)をW1(g)採取し、採取した試料を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した際の不溶解分を200メッシュの金網で濾過する。金網上の残渣を110℃の条件下で1時間乾燥し、乾燥後の質量W2(g)を測定し、下記式によりゲル分率(架橋度)を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
(W0:基材の質量、W1:浸漬前の質量、W2:浸漬、乾燥後の試料の質量)
【0040】
粘着剤層のガラス転移温度(Tg)は、繊維布帛に対する良好な接着性を発現する観点から、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは12℃以下である。Tgの下限は特に限定されないが、例えば、-50℃以上である。粘着剤層のTgは示差走査熱量計により測定でき、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0041】
本発明の両面粘着テープにおける粘着剤層の厚みは、好ましくは5~60μm、より好ましくは15~60μm、さらに好ましくは20~55μmである。粘着剤層の厚みが5μm以上であれば粘着テープとしての良好な接着性を発現することができ、60μm以下であれば粘着剤層の熱伝達性を良好に維持することができる。
ここでいう粘着剤層の厚みは、粘着剤層1層あたりの厚みをいう。例えば、両面粘着テープが粘着剤組成物から形成された粘着剤層のみからなる場合は、両面粘着テープの厚みが好ましくは5~60μm、より好ましくは15~60μm、さらに好ましくは20~55μmである。
【0042】
本発明の両面粘着テープの製造方法は特に限定されない。例えば、両面粘着テープが前記粘着剤組成物から形成された粘着剤層のみからなる場合は、前記粘着剤組成物を、剥離シート等の支持体に塗布して加熱乾燥することにより粘着剤層を形成し、次いで支持体から該粘着剤層を剥離することにより製造できる。両面粘着テープが基材の両面に粘着剤層を有する構成である場合は、粘着剤組成物を基材の両面に塗布し、次いで加熱乾燥することにより粘着剤層を形成して両面粘着テープを製造することができる。
粘着剤組成物の加熱乾燥条件は適宜選択できるが、粘着剤組成物中に含まれる有機溶剤等の揮発成分を除去し、かつ、得られる粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率を所定値以上に調整する観点から、90~110℃で1~3分加熱乾燥することが好ましい。
【0043】
<用途>
本発明の両面粘着テープは、例えば、車両、住宅、電子機器内部等において使用することができる。特に、130℃程度の高温条件下においても繊維布帛に対し良好な接着性を有することから、本発明の両面粘着テープの好ましい使用態様として、例えば、両面粘着テープの一方の面の被着体が繊維布帛であり、他方の面の被着体が発熱体である態様が挙げられる。
繊維布帛としては特に制限されないが、耐熱性の観点からは、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等からなる合成繊維布帛が好ましい。これらの中でもポリエステル繊維布帛が好適である。
発熱体としては特に制限されないが、例えば、家電ヒーターや車両用ヒーター等が挙げられる。車両用ヒーターは、例えば自動車等の車両の足元に設置されるものである。
本発明はまた、上記発熱体の表面に、本発明の両面粘着テープを介して、ポリエステル繊維布帛等の繊維布帛からなる保護布が貼付された保護布付ヒーターを提供することができる。両面粘着テープは発熱体表面の全面に存在していてもよく、繊維布帛を固定する目的で、発熱体表面に部分的に存在していてもよい。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0045】
[評価方法]
本発明においては、各物性の測定、及び評価は以下の要領で行った。
<質量平均分子量及び分散度>
質量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、GPC装置「HLC822GPC」(東ソー社製)により測定した。
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計「DSC220C」(SIIナノテクノロジー社製)により、昇温速度5℃/分にて測定した。
<粘着剤層のゲル分率>
各例で得られた両面粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、200メッシュのステンレスメッシュを用いて濾過し、その後110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の質量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×W2/W1
(W1:浸漬前の試験片の質量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の質量)
<弾性率>
貯蔵弾性率及び損失弾性率は、高分子動的粘弾性測定装置「itkDVA-200」(アイティー計測制御社製)により下記条件にて測定した。
測定モード:せん断モード
昇温速度:3℃/分
振動数:10Hz
測定試料は、各例で調製した粘着剤組成物溶液を、最終的に得られる試料形状が厚み1mm、幅6mm、長さ10mmとなるように成形し、各例における粘着剤層の形成時と同じ条件で加熱乾燥することにより作製した。
<耐熱接着性>
耐熱接着性評価方法を
図1を用いて説明する。
図1(a)は耐熱接着性評価に用いる評価用試験板の平面模式図、
図1(b)はその断面模式図である。
まず、幅50mm×長さ70mmのポリイミド板11の一方の面の下端に、幅25mm×長さ12.5mmに切り出した両面粘着テープ12を載置した。この上に幅25mm×長さ50mmのポリエステル繊維布帛13を、両面粘着テープ12の上端と、ポリエステル繊維布帛13の上端とが合うように重ねて載置した。これを23℃環境下で、10kgローラを4往復することで圧着させ、130℃で20分間養生し、評価用試験板10を作製した。
図1に示すように、試験板10のポリエステル繊維布帛13の下端に1kgの錘14を掛けて、130℃環境下で試験板10を垂直に配置し、錘14が落ちるまでの時間を測定した。錘14が落ちるまでの時間が10秒以上である場合を“A1”、3秒以上10秒未満である場合を“A2”と評価し、3秒未満である場合を“B”と評価した。
【0046】
[実施例1]
(アクリル系重合体溶液の調製)
温度計、攪拌機、冷却管及び滴下漏斗を備えた反応器に、n-ブチルアクリレート54質量部、2-エチルヘキシルアクリレート30質量部、エチルアクリレート16質量部、アクリル酸3質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部からなるモノマー混合物を酢酸エチル100質量部に溶解した溶液を仕込んだ。ここに、重合開始剤であるラウロイルパーオキサイド0.3質量部を添加して、還流下にて10時間重合を行い、アクリル系重合体溶液を得た。アクリル系重合体の質量平均分子量は140万、分散度(Mw/Mn)は5.4であった。
【0047】
(粘着剤組成物溶液の調製)
上記アクリル共重合体溶液100質量部(不揮発分換算)に対し、(B)成分であるイソシアネート系架橋剤1.5質量部、及び、(C)成分である、後述するロジン系樹脂1を24質量部及びテルペンフェノール系樹脂10質量部を配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。
(両面粘着テープの作製)
支持体である剥離紙(住化加工紙社製「SLB-80WD」)に粘着剤組成物溶液を塗布し、110℃で2分間加熱乾燥した後、支持体から剥離して、粘着剤組成物から形成された粘着剤層のみからなる厚さ50μmの両面粘着テープを得た。得られた両面粘着テープを用いて前記方法によりガラス転移温度の測定及び耐熱接着性評価を行った。
また、得られた粘着剤組成物溶液を用いて、前記方法により130℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2~3]
モノマーの組成を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体溶液を得た。次いで、架橋剤の配合量、粘着付与樹脂の種類及び配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4]
(アクリル系重合体溶液の調製)
モノマーの組成を表1のとおりに変更し、かつ、重合温度70℃、反応時間6時間で行う定温重合で重合した以外実施例1と同様にアクリル系重合体を得た。アクリル系重合体の質量平均分子量は80万、分散度(Mw/Mn)は1.8であった。
次いで、架橋剤の配合量、粘着付与樹脂の種類及び配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
モノマーの組成を表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体溶液を得た。次いで、架橋剤の配合量、粘着付与樹脂の種類及び配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例2]
実施例1で調製したアクリル系重合体溶液を用いて、架橋剤の種類及び配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例3]
モノマーの組成を表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体溶液を得た。次いで、架橋剤の配合量、粘着付与樹脂の種類及び配合量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0053】
[比較例4]
実施例4で調製したアクリル系重合体溶液を用いて、架橋剤の配合量を表1のとおり変更した以外は実施例4と同様にして両面粘着テープを作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
(粘着剤組成物の各成分)
各例で使用したアクリル系重合体以外の各成分は以下のとおりである。
<架橋剤(B)>
イソシアネート系架橋剤:トリレンジイソシアネート、東ソー社製「コロネートL-55E」
エポキシ系架橋剤:綜研化学社製「E-5C」
<粘着付与樹脂(C)>
ロジン系樹脂1:重合ロジンエステル、荒川化学工業社製「ペンセルD135」
ロジン系樹脂2:水素化ロジンエステル、荒川化学工業社製「エステルガムH」
テルペンフェノール系樹脂:ヤスハラケミカル社製「YSポリスターG150」
【0056】
表1の結果から明らかなように、粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率がいずれも所定値以上である実施例1~4の両面粘着テープは耐熱接着性が良好であった。粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率が所定値以上であることで熱による凝集破壊が起こりにくくなり、また130℃における損失弾性率が所定値以上であることで、粘着剤がポリエステル繊維布帛に染み込み易くなり、粘着剤層とポリエステル繊維布帛との間で界面剥離が起こりにくくなるため、耐熱接着性が良好になったと考えられる。
これに対し、粘着剤層の130℃における貯蔵弾性率又は損失弾性率が所定値を下回る比較例1~4の両面粘着テープは、いずれも耐熱接着性が低下した。