(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179669
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1343 20060101AFI20221125BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20221125BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/1368
G02F1/1339
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163650
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2021155826の分割
【原出願日】2007-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2006266287
(32)【優先日】2006-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 最史
(72)【発明者】
【氏名】細谷 邦雄
(57)【要約】
【課題】TFTと重なる領域に柱状スペーサを配置すると、一対の基板の貼り合わせ時に
圧力がかかり、TFTに影響を与える恐れ、クラックが発生する恐れなどがある。
【解決手段】TFTと重なる位置に形成される柱状スペーサの下方に無機材料からなるダ
ミー層を形成する。このダミー層をTFTと重なる位置に配置することによって、一対の
基板の貼り合わせ工程時にTFTにかかる圧力を分散し、緩和する。このダミー層は、工
程数を増やすことなく形成するため、画素電極と同じ材料で形成することが望ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上方のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子と電気的に接続する画素電極と、
前記スイッチング素子上方に設けられ、且つ前記スイッチング素子と重なる領域を有する導電層と、
前記導電層上方に設けられ、且つ前記導電層と重なる領域を有する柱状スペーサと、
前記柱状スペーサ上方の第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶層と、を有し、
前記導電層は、前記画素電極と同じ材料を有する、液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で構成された回路を有する半導体装
置およびその作製方法に関する。例えば、液晶表示パネルに代表される電気光学装置や有
機発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数~数百nm程度)を用
いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタは
ICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置のスイッチ
ング素子として開発が急がれている。
【0004】
画像表示装置として液晶表示装置が知られている。パッシブマトリクス型の液晶表示装置
に比べ高精細な画像が得られることからアクティブマトリクス型の液晶表示装置が多く用
いられるようになっている。アクティブマトリクス型の液晶表示装置においては、マトリ
クス状に配置された画素電極を駆動することによって、画面上に表示パターンが形成され
る。詳しくは選択された画素電極と該画素電極に対応する対向電極との間に電圧が印加さ
れることによって、画素電極と対向電極との間に配置された液晶層の光学変調が行われ、
この光学変調が表示パターンとして観察者に認識される。
【0005】
一般的な透過型の液晶表示装置は、一対の基板の間に液晶層を配置し、第1の基板(画素
電極が形成されている基板)において液晶層に近接していない外面側に、第1の偏光板を
配置し、第2の偏光板を第2の基板(対向基板)において液晶層に近接していない外面側
に配置する。
【0006】
また、フルカラー表示させるためにカラーフィルタを用いる場合、一般的には、偏光板が
配置された基板(対向基板)の面とは異なる面にカラーフィルタを配置する。即ち、対向
基板と液晶層の間にカラーフィルタを配置することが一般的である。
【0007】
また、一対の基板間には、基板間隔を保持するためのスペーサが設けられており、粒子状
のビーズスペーサ、或いは柱状のスペーサを配置している。対向基板に透明な樹脂からな
る柱状スペーサを設ける場合、もう一方の基板と貼り合わせる際の圧力で柱状スペーサと
重なるTFTを破壊する恐れがあった。従って、一対の基板の貼り合わせ精度が歩留まり
に影響してしまう。
【0008】
本出願人は、画素部のスイッチング素子となるTFTを形成する基板上に柱状スペーサを
形成する技術を特許文献1に開示している。また、本出願人は、TFT上に有機樹脂によ
るブラックマトリクスを形成する技術を特許文献2に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-75500号公報
【特許文献2】特開平9-105953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、液晶表示装置は、さらなる表示画像の高精細化が求められている。液晶表示装置の
高精細化が向上するに従って高開口率が要求される。
【0011】
TFTを形成する基板上に柱状スペーサを形成する場合、画素電極の面積を十分に確保し
つつ、高開口率を実現するためには、TFTと重なる領域に柱状スペーサを配置すること
が好ましい。TFTと重なる領域に柱状スペーサを配置する場合、画素電極と柱状スペー
サの位置を離すことができる。
【0012】
しかし、TFTと重なる領域に柱状スペーサを配置すると、一対の基板の貼り合わせ時に
圧力がかかり、TFTに影響を与える恐れ、クラックが発生する恐れなどがある。
【0013】
本発明は、高開口率、且つ高精細化を実現できる液晶表示装置を提供する。また、工程を
増やすことなく、外光下で高い表示品質を実現できる液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
アクティブマトリクス型の液晶表示装置において、TFTと重なる位置に形成される柱状
スペーサの下方に無機材料からなるダミー層を形成する。このダミー層をTFTと重なる
位置に配置することによって、一対の基板の貼り合わせ工程時にTFTにかかる圧力を分
散し、緩和する。このダミー層は、工程数を増やすことなく形成するため、画素電極と同
じ材料で形成することが望ましい。
【0015】
このダミー層は、一対の基板、即ち、素子基板と対向基板のいずれか一方に形成し、一対
の基板の貼り合わせ工程時にTFTにかかる圧力を分散し、緩和する。
【0016】
本明細書で開示する発明の構成は、絶縁表面を有する第1の基板上にスイッチング素子と
、スイッチング素子と電気的に接続する画素電極と、第1の基板上に前記スイッチング素
子と重なるダミー層と、ダミー層と重なる柱状スペーサが設けられた第2の基板と、第1
の基板と第2の基板との間に液晶材料とを有し、画素電極と前記ダミー層は同じ材料の半
導体装置である。
【0017】
一対の基板の貼り合わせ時に圧力がかかっても、対向基板に柱状スペーサを設け、且つ、
素子基板上にダミー層を設けることによってTFTにかかる圧力を分散し、緩和すること
ができる。
【0018】
また、素子基板上に柱状スペーサを形成してもよく、本発明の他の構成は、絶縁表面を有
する基板上にスイッチング素子と、スイッチング素子と電気的に接続する画素電極と、基
板上にスイッチング素子と重なるダミー層と、基板上に前記ダミー層を覆う柱状スペーサ
とを有し、画素電極とダミー層は同じ材料である半導体装置である。
【0019】
また、ダミー層は、圧力を分散し、緩和するのであれば、特に形状や個数は限定されず、
複数、または、複雑な形状、例えばS字形状、M字形状、十字形状などであってもよい。
【0020】
TFTを形成する基板、即ち素子基板上に柱状スペーサを形成する場合、フォトリソグラ
フィ技術を用いて形成するため、マスクの合わせ精度によって所望の位置からズレが生じ
ることがある。TFTと重なる位置に柱状スペーサの形成位置を合わせることで、所望の
位置からズレてしまった場合でも、TFTと重なる位置の周辺は、隣り合う画素電極との
間隔が他の箇所に比べて広い領域であるので、画素電極の一部に柱状スペーサが重なって
開口率が低下することを防ぐことができる。即ち、本発明において、柱状スペーサは画素
電極は重ならない位置、且つ、TFTと重なる位置とする。
【0021】
また、素子基板上に柱状スペーサを形成する場合、圧力をさらに分散するため、柱状スペ
ーサの断面形状を台形とすることが好ましい。望ましくは、柱状スペーサは、ダミー層の
外側の位置に裾を有する断面形状とする。また、柱状スペーサを錐形台状として、対向基
板側と接触する柱状スペーサの上面面積よりもTFT側の底面面積を広くすることが好ま
しい。また、さらに好ましくは、複数のダミー層の合計上面面積を柱状スペーサの上面面
積よりも広くする。また、柱状スペーサの上端部は曲率を有している形状とする。
【0022】
また、柱状スペーサの密着性を向上させるために、一つの柱状スペーサと重なるダミー層
を複数設けることが好ましい。特に、液晶表示装置においては、平坦性が重要であるため
、TFTで形成される凹凸を覆うための平坦化樹脂膜を設ける場合が多いが、平坦な表面
、即ち平坦化樹脂膜上に柱状スペーサを形成すると接着強度が弱く、密着性が低下しやす
い。平坦化樹脂膜を用いても、柱状スペーサを形成する領域に複数のダミー層を設けるこ
とで凹凸を部分的に形成し、柱状スペーサの密着性を向上させることができる。また、T
FTとダミー層との間に平坦化樹脂膜を設けると、さらに圧力を分散できるため好ましい
。
【0023】
また、TFTを作製した箇所は他の箇所よりも積層数が多くトータルの膜厚が厚くなりや
すいため、TFTと重なる位置に柱状スペーサを形成すると、基板間隔を調節しやすい。
TFTと重なる位置に柱状スペーサを形成すると、柱状スペーサが液晶層の厚さが最も薄
い領域に設けられることになるため、柱状スペーサの高さを低くすることができる。柱状
スペーサの高さを低くすることができれば、基板間隔を狭めることができるため、液晶層
の厚さを薄く制御したい場合に有効である。
【0024】
また、液晶層の動作モードは、特に限定されず、ツイストネマティック型(TNモード)
、または、垂直配向型(VAモード)、インプレーンスイッチング型(IPSモード)な
どとすることができる。
【0025】
IPSモードとする場合、共通電極もダミー層と同じ材料を用いることができ、本発明の
他の構成は、絶縁表面を有する第1の基板上にスイッチング素子と、スイッチング素子と
電気的に接続する画素電極と、第1の基板上に共通電極と、第1の基板上にスイッチング
素子と重なるダミー層と、ダミー層と重なる柱状スペーサが設けられた第2の基板と、第
1の基板と第2の基板との間に液晶材料を含む液晶層とを有し、画素電極、共通電極、及
びダミー層は同じ材料の半導体装置である。
【0026】
また、ダミー層上に柱状スペーサを設けてもよく、本発明の他の構成は、絶縁表面を有す
る第1の基板上にスイッチング素子と、スイッチング素子と電気的に接続する画素電極と
、第1の基板上に共通電極と、第1の基板上に前記スイッチング素子と重なるダミー層と
、第1の基板上に前記ダミー層と重なる柱状スペーサと、第1の基板と対向する第2の基
板と、第1の基板と第2の基板との間に液晶材料を含む液晶層とを有し、画素電極、共通
電極、及びダミー層は同じ材料の半導体装置である。
【0027】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決する。
【0028】
上述したこれらの手段は単なる設計事項ではなく、柱状スペーサやダミー層を表示部に配
置し、それらを用いた表示装置を作製し、画像表示させ、発明者らの深い検討の後、発明
された事項である。
【発明の効果】
【0029】
工程数を増やすことなく、ダミー層をTFTと重なる位置に形成でき、柱状スペーサをT
FTと重なる位置に形成できる。複数のダミー層や複雑な形状のダミー層を設けることで
、柱状スペーサの密着性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1(A)は、アクティブマトリクス型の液晶表示装置の画素部における1画素の上面図
を示している。また、
図1(C)に
図1(A)中の線A-Bで切断した断面図を示す。
【0033】
ソース配線101とゲート配線103の交点付近にアクティブ素子を配置する。ここでは
アクティブ素子としてTFTを用い、このTFTが画素電極109と電気的に接続され、
スイッチング素子として機能する。TFTのオン状態或いはオフ状態をゲート配線103
に印加する電圧で制御することで画素電極109近傍の液晶層の配向を変化させることに
より、液晶表示装置を駆動させる。本発明は、このTFTと重なる位置に第1のダミー層
113、第2のダミー層114、及び柱状スペーサ112を形成する。ここでは非晶質半
導体膜を用いたボトムゲート型のTFTを形成する例を示す。
【0034】
また、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTに限定されず、TFT構造に関係なく本発明
を適用することが可能であり、例えば、トップゲート型TFTや、順スタガ型TFTを用
いることが可能である。また、シングルゲート構造のトランジスタに限定されず、複数の
チャネル形成領域を有するマルチゲート型トランジスタ、例えばダブルゲート型トランジ
スタとしてもよい。TFTの作製方法は特に限定されず、公知の技術を用いて作製すれば
よい。
【0035】
まず、ガラス基板などの絶縁表面を有する基板100上にゲート配線103及び容量配線
102を形成する。次いで、ゲート配線103及び容量配線102を覆うゲート絶縁膜1
05を形成する。
【0036】
次いで、ゲート絶縁膜105上に非晶質半導体膜、例えばアモルファスシリコン膜をPC
VD法で形成し、非晶質半導体膜のエッチングを選択的に行って所望の上面形状とし、ゲ
ート絶縁膜105を介してゲート配線103と重なる半導体層104を形成する。次いで
、半導体にn型を付与する不純物元素を含む半導体膜を形成し、その半導体膜のエッチン
グを選択的に行って所望の上面形状とし、半導体層104上に第1のn型半導体層を形成
する。次いで、第1のn型半導体層上に導電膜を形成し、導電膜のエッチングを選択的に
行って所望の上面形状とし、ソース配線101と、ドレイン電極107と、容量電極を形
成する。なお、容量電極は、ゲート絶縁膜105を介して容量配線102と重なり、ゲー
ト絶縁膜105を誘電体とする補助容量を形成している。次いで、ソース配線101及び
ドレイン電極をマスクとして、第1のn型半導体層を自己整合的なエッチングを行って第
2のn型半導体層106を形成する。さらにソース配線101及びドレイン電極をマスク
として、露呈している半導体層104の上部をエッチングして、ソース配線101及びド
レイン電極と重なる領域よりも膜厚の薄い部分を形成する。こうしてチャネルエッチ型の
TFTが形成される。次いで、露呈している半導体層を覆う保護膜108を形成する。以
上の工程は、公知の技術を応用することで実施が可能である。
【0037】
また、本実施の形態では、非晶質半導体膜をチャネル形成領域とするTFTの例を示した
が、特に限定されず、結晶質半導体膜、例えばポリシリコン膜や微結晶シリコン膜をチャ
ネル形成領域とするTFTとしてもよい。
【0038】
次いで、層間絶縁膜として機能する平坦化膜110を形成する。次いで、平坦化膜110
及び保護膜108のエッチングを選択的に行い、ドレイン電極に達する第1の開口と、容
量電極に達する第2の開口を形成する。次いで、平坦化膜110上に透明導電膜を形成す
る。
【0039】
透明導電膜の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)の他、例えば、Si元素を含
むインジウム錫酸化物(ITSO)や酸化インジウムに酸化亜鉛(ZnO)を混合したI
ZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電材料、もしくはこれらを組
み合わせた化合物を用いることができる。
【0040】
次いで、透明導電膜のエッチングを選択的に行い、TFTと重なる第1のダミー層113
及び第2のダミー層114と、ドレイン電極及び容量電極と電気的に接続する画素電極1
09を形成する。また、ダミー層は、TFTと重なる位置に配置され、後に行われる一対
の基板の貼り合わせ工程時にTFTにかかる圧力を分散し、緩和することができる。第1
のダミー層113、第2のダミー層114、及び画素電極109は同じ材料である。
図1
(A)では、第1のダミー層113は、少なくともTFTのチャネル形成領域の一部、ソ
ース電極の一部、及びドレイン電極の一部と重なっている。また、第2のダミー層114
は少なくともTFTのチャネル形成領域の一部、及びドレイン電極の一部と重なっている
。また、ここでは図示しないが、後にFPCと接続させるための端子電極も画素電極と同
一工程で同一基板上に形成する。
【0041】
次いで、第1のダミー層113、第2のダミー層114、及び画素電極109を覆う絶縁
膜を形成する。この絶縁膜の材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹
脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いる。他にも、絶縁
膜の材料としてベンゾシクロブテン、パリレン、ポリイミドなどの有機材料、シロキサン
系ポリマー等の重合によってできた化合物材料、水溶性ホモポリマーと水溶性共重合体を
含む組成物材料等を用いることができる。また、遮光膜としての機能を持たせるために、
上述した材料にカーボンなどの顔料を含ませて黒色の樹脂としてもよい。
【0042】
次いで、この絶縁膜のエッチングを選択的に行い、第1のダミー層113及び第2のダミ
ー層114と重なる柱状スペーサ112を形成する。また、柱状スペーサ112はTFT
と重なる。
図1(A)では、柱状スペーサ112は少なくともTFTのチャネル形成領域
、ソース電極の一部、及びドレイン電極の一部と重なっている。なお、
図1(A)を分か
りやすくするために、
図1(B)の上面図には、平坦化膜110上に形成する第1のダミ
ー層113、第2のダミー層114、画素電極109、及び柱状スペーサ112のみを示
している。
【0043】
図1(B)に示すように第1のダミー層113、及び第2のダミー層114は円状のスリ
ットにより離間されており、第1のダミー層113を覆うように柱状スペーサ112を形
成している。また、後に行われる一対の基板の貼り合わせ工程時にかかる圧力を分散する
ため、
図1(C)に示すように柱状スペーサ112の断面形状を台形とすることが好まし
い。なお、
図1(C)中の白抜きの矢印が一対の基板の貼り合わせ工程時にかかる圧力を
模式的に表しており、複数の黒矢印が分散された圧力を模式的に表している。また、柱状
スペーサ112を錐形台状として、対向基板側と接触する柱状スペーサの上面面積よりも
TFT側の底面面積を広くすることが好ましい。
【0044】
第1のダミー層113及び第2のダミー層114は、柱状スペーサ112の密着性を向上
させている。また、この柱状スペーサ112は、第1のダミー層113と画素電極109
とが短絡するのを防ぐ効果も果たしている。また、柱状スペーサ112として黒色の樹脂
を用いた場合、TFTと重なる遮光膜として機能させることもできる。
【0045】
なお、柱状スペーサ112と重なるダミー層の個数や形状は、限定されず、例えば
図2(
A)で示すような上面形状としてもよい。
図2(A)はダミー層の形状及び個数が異なる
以外は、
図1(A)と構造が同一である。また、
図2(B)は、
図2(A)を分かりやす
くするため平坦化膜上に形成する第1のダミー層201、第2のダミー層202、第3の
ダミー層203、第4のダミー層204、画素電極109、及び柱状スペーサ112のみ
を示している。柱状スペーサの外周縁よりも内側の位置に配置するダミー層の個数が多い
ほうが、柱状スペーサと層間絶縁膜との密着性の向上がより一層図れる。
【0046】
また、
図1または
図2では、ダミー層を柱状スペーサの外周縁よりも内側の位置に配置す
る例を示したが、特に限定されず、各画素電極と間隔を空けて網目状に連続するパターン
形状としてもよい。網目状に連続するパターン形状としたダミー層と一部重なり、且つ、
TFTと重なるように柱状スペーサを設ければよい。網目状に連続するパターン形状とし
たダミー層は、隣り合う画素電極間で発生する電界の乱れに起因する光漏れ、所謂ディス
クリネーションを防止することもできる。即ち、網目状に連続するパターン形状としたダ
ミー層は、電界遮蔽パターンとして機能する。
【0047】
こうして基板100上に柱状スペーサ112を形成した後、基板100と対向基板119
とを所定の間隔を保持したまま貼り合わせる。基板間隔は、ダミー層及び柱状スペーサで
決定される。本実施の形態では、液晶材料の種類や特性によっても異なってくるが、3~
4μmとする。
【0048】
また、一対の基板間には液晶層116を充填する。液晶滴下法を用いる場合は、一方の基
板に閉ループ形状のシール材を形成し、そのシール材に囲まれた領域に液晶材料を滴下し
た後、減圧雰囲気とし、もう一方の基板を貼り合わせる。また、液晶注入法を用いる場合
には、一対の基板を貼り合わせた後、シール材パターンの液晶注入口から毛細管現象を用
いて液晶材料を注入する。シール材にフィラーを含ませることによって一対の基板間隔を
維持してもよい。
【0049】
また、液晶層116の液晶分子を配向させるための配向膜を両方の基板にそれぞれ形成す
る。
図1(C)に示すように、基板100上には第1の配向膜115を形成し、対向基板
119上には対向電極118及び第2の配向膜117を形成する。そして、それぞれラビ
ング処理を行う。液晶の配向モードとしては、液晶分子の配列が光の入射から射出に向か
って90°ツイスト配向したTNモードを用いる場合が多い。TNモードの液晶表示装置
を作製する場合には、基板100上の配向膜に施したラビング処理のラビング方向と、対
向基板119上の配向膜に施したラビング処理のラビング方向が直交するように貼り合わ
せる。ここでは液晶分子を配向させるために配向膜を用いる例を示したが、特に限定され
ず、他の配向方法、例えば光配向方法などを用いてもよい。
【0050】
なお、端子電極が形成されている部分には、配向膜を形成しない。また、対向基板119
と基板100とを貼り合わせた後、端子電極が形成されている部分は、対向基板とも重な
らないように対向基板の一部を除去する。次いで、外部回路と接続するためのFPC(フ
レキシブルプリント配線板)を端子電極に貼り合わせる。FPCを実装する方法は異方導
電性材料もしくはメタルバンプを用いた接続方法またはワイヤボンディング方式を採用す
ることができる。また、外部回路と接続させるコネクターとしてはFPCに限定されず、
他のコネクター、TAB(Tape Automated Bonding)テープもし
くはTCP(Tape Carrier Package)を用いてもよい。TCPはT
ABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続し
てICを実装する。
【0051】
また、画素部の周辺には、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたICチップを
異方導電性材料により電気的に接続してもよい。また、カラー表示に対応した画素部を形
成するためには、例えば、XGAクラスでデータ線の本数が3072本であり走査線が7
68本必要となる。このような数で形成されたデータ線及び走査線は画素部の端部で数ブ
ロック毎に区分して引出線を形成し、ICチップの出力端子のピッチに合わせて集める。
ICチップは、公知の方法、例えばCOG(Chip On Glass)方式により実
装すればよい。
【0052】
また、必要であれば、基板100または対向基板119に偏光板、又は円偏光板(楕円偏
光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを
適宜設けてもよい。
【0053】
以上の工程でアクティブマトリクス型の液晶表示装置を有する表示モジュールを作製で
きる。
【0054】
また、上述した液晶表示装置としては、特に限定されず、TN液晶、IPS液晶、OCB
液晶、STN液晶、VA液晶、ECB型液晶、GH液晶、高分子分散型液晶、ディスコテ
ィック液晶などを用いることができるが、中でもノーマリーブラック型の液晶パネル、例
えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置とすることが好ましい。垂
直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi- Dom
ain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned
Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることがで
きる。具体的には、1画素を複数のサブピクセルに分割し、各サブピクセルの中央に位置
する対向基板の箇所に凸部を設けることで1画素をマルチドメイン化する。1画素を複数
のサブピクセルとし、各サブピクセルの中央に位置する対向基板に凸部を設けることで、
1画素を配向分割(マルチドメイン化)し、広視野角を実現する駆動方法は、サブピクセ
ル駆動と呼ばれる。なお、凸部は、対向基板または素子基板の一方または両方に設けても
よく、放射状に液晶分子を配向させ、配向規制力を向上させる。
【0055】
また、液晶駆動用の電極、即ち画素電極の上面形状を櫛歯状やジグザグ状として、電圧の
かかる方向を多様化させてもよい。また、光配向を用いて1画素をマルチドメイン化して
もよい。
【0056】
また、画素電極に接続するスイッチング素子としては、非晶質構造を有する半導体膜を用
いたアモルファスTFTに限定されず、有機トランジスタや、ポリシリコンTFTなどの
3端子型のアクティブ素子、或いは、ダイオード、MIM、ZnOバリスタなどの2端子
型のアクティブ素子を用いることができる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1では、素子基板上に柱状スペーサを形成する例を示したが、本実施の形態で
は、対向基板上に柱状スペーサを形成する例を示す。
【0058】
まず、実施の形態1と同様にしてダミー層と画素電極を同一の素子基板上に形成する。な
お、ダミー層は、スイッチング素子と重なる位置に配置される。本実施の形態では、スイ
ッチング素子として、結晶構造を有する半導体膜、例えばポリシリコン膜を用いたトップ
ゲート型TFTを用いる。トップゲート型TFTは、nチャネル型TFTであってもpチ
ャネル型TFTであってもよい。また、ここでは、電気特性のバラツキを低減させるため
、ダブルゲート構造とする。また、オフ電流値を低減するため、nチャネル型TFTを低
濃度ドレイン(LDD:Lightly Doped Drain)構造としてもよい。
このLDD構造はチャネル形成領域と、高濃度に不純物元素を添加して形成するソース領
域またはドレイン領域との間に低濃度に不純物元素を添加した領域を設けたものであり、
この領域をLDD領域と呼んでいる。LDD構造はドレイン近傍の電界を緩和してホット
キャリア注入による劣化を防ぐ効果がある。また、ホットキャリアによるオン電流値の劣
化を防ぐため、nチャネル型TFTをGOLD(Gate-drain Overlap
ped LDD)構造としてもよい。ゲート絶縁膜を介してLDD領域をゲート電極と重
ねて配置させた構造であるGOLD構造は、LDD構造よりもさらにドレイン近傍の電界
を緩和してホットキャリア注入による劣化を防ぐ効果がある。このようなGOLD構造と
することで、ドレイン近傍の電界強度が緩和されてホットキャリア注入を防ぎ、劣化現象
の防止に有効である。また、画素電極は、スイッチング素子と電気的に接続させる。
【0059】
ダミー層も画素電極も透明導電膜、代表的にはITOで形成するため、工程を増やすこと
なく、緩衝材を設けることができる。また、ダミー層が透光性を有しているため、光の乱
反射などがほとんど生じない。そして、ダミー層及び画素電極を接して覆う配向膜を形成
する。
【0060】
素子基板と貼り合わせるための対向基板を用意する。対向基板には、カラーフィルタや対
向電極を形成する。これらの積層順は特に限定されないが、ここでは、カラーフィルタ上
に対向電極を形成する。
【0061】
そして、対向基板の対向電極上に、柱状スペーサを設ける。必要があれば、柱状スペーサ
を接して覆う配向膜を形成する。柱状スペーサとダミー層が重なるように、素子基板と対
向基板とを貼り合わせる。従って、柱状スペーサもスイッチング素子と重なる位置に配置
される。また、この柱状スペーサとして、カーボンなどの顔料を含ませた黒色樹脂を用い
てスイッチング素子の遮光膜として機能させることが好ましい。
【0062】
ダミー層は、素子基板と対向基板とを貼り合わせる工程時にスイッチング素子にかかる圧
力を分散し、緩和することができる。また、ダミー層は、圧力を分散し、緩和するのであ
れば、特に形状や個数は限定されず、複数、または、複雑な形状、例えばS字形状、M字
形状、十文字形状などであってもよい。特に柱状スペーサを対向基板に設ける場合、柱状
スペーサの頂部とダミー層とが配向膜を介して重なるため、柱状スペーサの頂部の面積よ
りも総面積が広いダミー層とすることが好ましい。この場合、ダミー層の端部が柱状スペ
ーサの外側に突出する形状となる。
【0063】
また、柱状スペーサをスイッチング素子と重なるように配置する場合、スイッチング素子
周辺は、他の場所に比べ隣合う画素電極との間隔が広くマージンが十分あるため、貼り合
わせ時に位置ズレが生じてもほとんど問題ない。即ち、貼り合わせ工程によって柱状スペ
ーサが画素電極と重なり開口率が低下してしまうことを低減することができる。また、画
素電極と柱状スペーサが重ならなければ、意図的にダミー層の端部が柱状スペーサの外側
に位置するように貼り合わせてもよい。
【0064】
対向基板に柱状スペーサを設けても、スイッチング素子と柱状スペーサの間に緩衝材とな
るダミー層を画素電極と同じ材料で形成することにより、工程を増やすことなく、スイッ
チング素子を保護することができる。
【0065】
また、本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0066】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行う
こととする。
【実施例0067】
本実施例では、垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置の一例を
図3、
図4、及び
図5を用いて説明する。
【0068】
図3は、VA型液晶パネル(具体的にはPVAモードのパネル)の画素構造の平面図を示
す図である。各画素電極505の上面形状は、
図3に示すように、複雑な八角形となって
いる。画素部には、ゲート配線501と、ソース配線503と、容量配線506とが配置
され、ゲート配線とソース配線の交点付近に半導体層502が配置されている。ここでは
ゲート配線、ソース配線、及び半導体層を含むボトムゲート型のTFTをスイッチング素
子としている。ドレイン電極は、TFTのドレイン領域と画素電極505との電気的な接
続を行うための電極である。ドレイン電極504は、容量配線506と一部重なり、保持
容量を形成している。
【0069】
また、画素電極と同じ材料で形成されているダミー層507がTFTと重なる位置に4つ
設けられている。これらのダミー層507を覆うように柱状スペーサ508を設けている
。柱状スペーサ508もTFTと重なる位置に設けられ、基板間隔を調節している。これ
らのダミー層507をTFTと重なる位置に配置することによって、一対の基板の貼り合
わせ工程時にTFTにかかる圧力を分散し、緩和する効果がある。また、これらのダミー
層507は、柱状スペーサ508の密着性を向上させるために形成している。また、柱状
スペーサ508は、3つの画素電極に対して一つ設けているが、特に限定されず、例えば
各画素電極にそれぞれ設けてもよい。また、柱状スペーサ508として黒色樹脂を用いて
ブラックマトリクスの機能を持たせてもよい。また、黒色樹脂を用いた場合、TFTの遮
光膜としても機能させることができる。
【0070】
図4は、カラーフィルタの一部の上面図を示す図である。
図4は、第1着色層401(R
)、第2着色層402(G)、及び第3着色層403(B)の3色を用いて1つの画素群
を構成している。各着色層の上面形状は、画素電極505の形状と同様に、複雑な八角形
となっている。
【0071】
図5に対向基板側の構造を示す。対向電極510は異なる画素間で共通化されている電極
であるが、スリット511が形成されている。このスリット511と、画素電極505及
び画素電極505側のスリット(隣り合う画素電極の間隙)とを交互に咬み合うように配
置することで、斜め電界を効果的に発生させて液晶の配向を制御することができる。これ
により、液晶が配向する方向を場所によって異ならせることができ、視野角を広げている
。
【0072】
このようにダミー層507及び柱状スペーサ508を設けることで、柱状スペーサの密着
性を向上させることができる。また、TFTを作製した箇所は他の箇所よりも積層数が多
くトータルの膜厚が厚くなりやすいため、TFTと重なる位置に柱状スペーサを形成する
と、基板間隔を調節しやすいというメリットを有する。また、本発明は、ダミー層507
及び柱状スペーサ508を設けることで、高開口率、且つ高精細化を実現できる液晶表示
装置を実現できる。また、工程を増やすことなく、外光下で高い表示品質を実現できる液
晶表示装置を実現できる。
【0073】
また、本実施例は、実施の形態1、または実施の形態2と自由に組み合わせることができ
る。