IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社水道技術開発機構の特許一覧

<>
  • 特開-管継手の組付方法 図1
  • 特開-管継手の組付方法 図2
  • 特開-管継手の組付方法 図3
  • 特開-管継手の組付方法 図4
  • 特開-管継手の組付方法 図5
  • 特開-管継手の組付方法 図6
  • 特開-管継手の組付方法 図7
  • 特開-管継手の組付方法 図8
  • 特開-管継手の組付方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179753
(43)【公開日】2022-12-02
(54)【発明の名称】管継手の組付方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
F16L21/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165161
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2019549859の分割
【原出願日】2018-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2017206170
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で、挿口管部と受口管部とを強固に固定できる管継手の組付方法を提供する。
【解決手段】リング部材31を挿口管部20の外周面に形成された環状凹部20aに嵌合させる第一工程と、環状一体構造の抜止部材32を、挿口管部20の第一端部20bの側から挿入してリング部材31の第一側面31aに当接させる第二工程と、一体構造の環状部材33を、挿口管部20における第一端部20bとは反対側の第二端部20cの側から挿入して抜止部材32に当接させる第三工程と、受口管部21に挿口管部20の第二端部20cを挿入して、フランジ部21a、環状部材33および抜止部材32を締結部材35で締結する第四工程と、を備え、リング部材31の第一側面31aとは反対側の第二側面31bが環状部材33に当接することにより、挿口管部20の受口管部21に挿入される方向への移動を規制するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部を有する受口管部に管軸芯方向に沿って挿口管部を挿入して接続する管継手の組付方法であって、
C字状のリング部材を拡径した状態で前記挿口管部の外周面に沿って挿入し、前記リング部材を前記外周面に形成された環状凹部に嵌合させる第一工程と、
環状一体構造の抜止部材を、前記挿口管部の第一端部の側から挿入して前記リング部材の第一側面に当接させる第二工程と、
一体構造の環状部材を、前記挿口管部における前記第一端部とは反対側の第二端部の側から挿入して前記抜止部材に当接させる第三工程と、
前記受口管部に前記挿口管部の前記第二端部を挿入して、前記フランジ部、前記環状部材および前記抜止部材を締結部材で締結する第四工程と、を備え、
前記リング部材の前記第一側面とは反対側の第二側面が前記環状部材に当接することにより、前記挿口管部の前記受口管部に挿入される方向への移動を規制するように構成されている管継手の組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水道管等の接合に用いられる管継手の組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳鉄製の可撓管を受口管部とし、ステンレス管を挿口管部とし、受口管部に挿口管部を挿入して接続する管継手が知られている(例えば、特許文献1参照)。地震等によって管継手に外力が作用した際には、可撓管が変位自在に構成されていることから管継手に曲げ力や管軸芯方向の引張力、圧縮力が集中する。
【0003】
特許文献1には、挿口管部の外周面に凸部又は凹部を設け、この凸部又は凹部に分割構造のロッキング部材を嵌合している。また、このロッキング部材の外周側に傾斜面を設け、この傾斜面に当接する押輪を受口管部のフランジ部にボルト締結することにより、地震等によって管継手に外力が作用した際には、該傾斜面によりロッキング部材を縮径させ、挿口管部の受口管部に対する相対移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-143524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のロッキング部材は分割構造であるため、管継手に曲げ力等が集中した場合にはロッキング部材の接合部が損傷し易い。その結果、ロック部材の分割部材どうしに位置ずれが発生してしまい、地震等による大きな外力が作用した際に管継手としての機能が低下し、挿口管部が受口管部から離脱するおそれがある。
【0006】
一方、特許文献1には、ロッキング部材を一体構造にして挿口管部の外周面の凸部における受口管部とは反対側の側面に当接させる構成も開示されているが、管軸芯方向の圧縮力が作用した場合には受口管部が挿口管部の側に移動してしまう。その結果、挿口管部の端部が受口管部に強く当接して、挿口管部の破損を招くおそれがある。また、挿口管部の端部に絶縁部材をコーティングした構成も開示されているが、管軸芯方向の圧縮力が作用した場合には該絶縁部材が破損して、異種管どうしの電気的な接触により水等の流体を介した腐食が進行するおそれがある。
【0007】
そこで、簡便な構成で、挿口管部と受口管部とを強固に固定できる管継手および管継手の組付方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の特徴構成は、フランジ部を有する受口管部に管軸芯方向に沿って挿口管部を挿入して接続する管継手であって、前記挿口管部の外周面に固定された状態で径方向外側に突出する一体構造の突出部と、前記挿口管部の前記受口管部から離脱する方向への移動を規制するように前記突出部の第一側面と当接する環状一体構造の抜止部材と、前記フランジ部と前記抜止部材とを締結する締結部材と、を備え、前記突出部には、前記第一側面に対して前記管軸芯方向の反対側に位置する第二側面に、前記挿口管部の前記受口管部に挿入される方向への移動を規制する規制面が形成されている点にある。
【0009】
本構成では、一体構造の突出部を挿口管部の外周面に固定し、挿口管部の受口管部から離脱する方向への移動を規制するように突出部の第一側面と当接する環状一体構造の抜止部材を設けている。つまり、一体構造の突出部および抜止部材は剛性が高いので、地震等による大きな外力が作用した際でも、突出部および抜止部材が破損し難く、挿口管部が受口管部から離脱することを確実に防止できる。
【0010】
しかも、一体構造の突出部の第二側面に、挿口管部の受口管部に挿入される方向への移動を規制する規制面を形成しているので、管軸芯方向の圧縮力が作用した場合でも受口管部が挿口管部の側に移動することを防止できる。これによって、挿口管部の端部と受口管部の内面との間隔を確実に維持することが可能となり、両管部を異種管で構成した場合でも電気的な接触による腐食を回避できる。
【0011】
このように、一体構造の突出部および抜止部材を備えるといった簡便な構成で、挿口管部と受口管部とを強固に固定できる管継手を提供できた。
【0012】
他の特徴構成は、前記フランジ部と前記抜止部材との間に配置される一体構造の環状部材をさらに備え、前記締結部材は、前記フランジ部、前記環状部材および前記抜止部材を締結しており、前記規制面が前記環状部材に当接することにより前記挿口管部の前記受口管部に挿入される方向への移動が規制される点にある。
【0013】
本構成のように、締結部材によりフランジ部および抜止部材と共に締結される一体構造の環状部材に対して、突出部の規制面を当接させている。つまり、剛性の高い環状部材に剛性の高い突出部の規制面を当接させることにより、管軸芯方向の圧縮力が作用した場合でも受口管部が挿口管部の側に移動することを確実に防止できる。
【0014】
他の特徴構成は、前記突出部は、前記挿口管部の外周面に形成された環状凹部に嵌合されたC字状のリング部材で構成されている点にある。
【0015】
本構成のように、突出部をC字状のリング部材で構成し、挿口管部の外周面に形成された環状凹部に該リング部材を嵌合する構成であると、組付けが容易である。
【0016】
他の特徴構成は、前記突出部は、前記挿口管部の外周面から一体的に延出させた環状凸部で形成されている点にある。
【0017】
本構成のように、突出部を挿口管部の外周面から一体的に延出させた一体構造の環状凸部で構成すれば、環状凸部の剛性が高いので、挿口管部と受口管部とを強固に固定できる。
【0018】
他の特徴構成は、前記突出部は、前記挿口管部の外周面に溶接された環状リングで構成されている点にある。
【0019】
本構成のように、突出部として環状リングを挿口管部の外周面に溶接して形成すれば、挿口管部の外周面に凹部や凸部を加工する必要がなく、製造コストを低減できる。
【0020】
本開示の特徴方法は、フランジ部を有する受口管部に管軸芯方向に沿って挿口管部を挿入して接続する管継手の組付方法であって、C字状のリング部材を拡径した状態で前記挿口管部の外周面に沿って挿入し、前記リング部材を前記外周面に形成された環状凹部に嵌合させる第一工程と、環状一体構造の抜止部材を、前記挿口管部の第一端部の側から挿入して前記リング部材の第一側面に当接させる第二工程と、一体構造の環状部材を、前記挿口管部における前記第一端部とは反対側の第二端部の側から挿入して前記抜止部材に当接させる第三工程と、前記受口管部に前記挿口管部の前記第二端部を挿入して、前記フランジ部、前記環状部材および前記抜止部材を締結部材で締結する第四工程と、を備え、前記リング部材の前記第一側面とは反対側の第二側面が前記環状部材に当接することにより、前記挿口管部の前記受口管部に挿入される方向への移動を規制するように構成されている点にある。
【0021】
本方法では、C字状のリング部材を挿口管部の外周面に形成された環状凹部に嵌合させ、環状一体構造の抜止部材を挿口管部の第一端部の側から挿入してリング部材の第一側面に当接させ、一体構造の環状部材を、挿口管部の第一端部とは反対側の第二端部の側から挿入して抜止部材に当接させ、これらフランジ部、環状部材および抜止部材を締結している。このため、管継手の組付方法が簡便である。
【0022】
また、一体構造のリング部材および抜止部材によって挿口管部の受口管部から離脱する方向(第一端部の側)への移動が規制され、一体構造のリング部材および抜止部材によって挿口管部の受口管部に挿入される方向(第二端部の側)への移動が規制されている。これによって、地震等による大きな外力が作用した際でも、一体構造のリング部材、環状部材および抜止部材が破損し難く、挿口管部の端部と受口管部との間隔を確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第一実施形態に係る管継手を備えた可撓管ユニットを示す半断面側面図である。
図2】第一実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
図3】第一実施形態に係る管継手の組付方法を示す図である。
図4】第二実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
図5】第三実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
図6】第四実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
図7】第五実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
図8】第六実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
図9】第七実施形態に係る管継手を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本開示に係る管継手の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、管継手の一例として、水道管等の流体管1に設けられた可撓管ユニットYの一部を構成する管継手3として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0025】
図1には、可撓管ユニットYが示されている。この可撓管ユニットYは、流体配管系統のうち、水道本管1Aと建物等に配置された配管1Bとを接続する箇所や、水道本管1Aと河川に架設させた水管橋等の配管1Bとを接続する箇所などに固定される。地震等で大きな外力が発生した場合には、図1の2点鎖線で示すように、可撓管ユニットYが曲げ力、引張力や圧縮力を受け止めて、流体配管系統における管の破損が防止される。
【0026】
可撓管ユニットYは、ステンレス鋼等の材料で構成される水道本管1Aや配管1Bが固定される挿口管部20と、挿口管部20が管軸芯X方向から挿入される受口管部21を有する可撓管2と、挿口管部20と受口管部21とを接続する管継手3とを備えている。
【0027】
挿口管部20は、ステンレス鋼等の材料で構成される円筒状部材であり、外周面の全周には後述するリング部材31が嵌合する環状凹部20aが形成されている(図2参照)。
挿口管部20における受口管部21側とは反対側の第一端部20bは、水道本管1Aや配管1Bが溶接等によって固定される。また、挿口管部20における受口管部21側(第一端部20bとは反対側)の第二端部20cは、管軸芯X方向に沿って受口管部21に挿入される。
【0028】
可撓管2は、ダクタイル鋳鉄等の材料で構成される筒状部材であり、受口管部21と、受口管部21の内側に設けられ、回動可能な中空球体22と、中空球体22の内側に設けられる直管23とを有している。同じ口径(呼び径)である場合、ダクタイル鋳鉄製である可撓管2の外径は、ステンレス製の水道本管1A又は配管1Bの外径に比べて大きくなる。例えば、呼び径150mmに対して可撓管2の外径が169mm、水道本管1A又は配管1Bの外径が165.2mmであり、呼び径350mmに対して可撓管2の外径が374mm、水道本管1A又は配管1Bの外径が355.6mmである。
このため、挿口管部20の外径は、受口管部21に覆われず且つ第一端部20bが水道本管1A又は配管1Bに接続される第一領域20Aが、可撓管2の受口管部21に対向する第二領域20Bに比べて小さくなっており、第一領域20Aと第二領域20Bとの境界付近に傾斜状の段部20eが形成されている(図1図2参照)。この段部20eおよび第一領域20Aは、同一外径で製作された挿口管部20の一部を切削加工することにより形成される。なお、傾斜状の段部20eに代えて、段落ちした段差で構成しても良く、段部20eの形状は特に限定されない。
【0029】
受口管部21は、挿口管部20側の端部において径方向外側に円環状に突出した第一フランジ21a(フランジ部の一例)と、第一フランジ21aとは反対側の端部において径方向外側に円環状に突出した第二フランジ21bとを有している。受口管部21における第二フランジ21b側の管本体には、径方向外側に円弧状に膨らんだ球面部21cが形成されている。この球面部21cの内周面に形成された環状溝21c1には、第一シール部材S1が設けられており、受口管部21と中空球体22との間が密封されている。また、第二フランジ21bと直管23の外周面とに亘って、異物の侵入を防止するダストカバー21eが固定されている。
【0030】
中空球体22のうち、直管23に当接する部位には環状溝22aが形成されており、この環状溝22aに第二シール部材S2が設けられ、中空球体22と直管23との間が密封されている。直管23の端部には、ロックリング23aが設けられており、受口管部21および中空球体22が直管23から離脱することが防止されている。
【0031】
[第一実施形態]
図2図3に示すように、管継手3は、一体構造であるC字状のリング部材31(突出部の一例)と、リング部材31の第一側面31aと当接する環状一体構造の抜止部材32と、第一フランジ21aと抜止部材32との間に配置される一体構造の押輪33(環状部材の一例)と、挿口管部20と受口管部21との間に配置され、押輪33に押圧されるゴム輪34と、第一フランジ21a,押輪33および抜止部材32を締結する締結部材35と、を備えている。
【0032】
リング部材31は、ステンレス鋼等の材料で構成されるCリングであり、挿口管部20の外周面に固定された状態で径方向外側に突出している。具体的には、挿口管部20の外周面に形成された環状凹部20aにリング部材31が嵌合している。
【0033】
抜止部材32は、ダクタイル鋳鉄等の材料で構成されており、表面がナイロンコーティング等の絶縁材料で覆われている。抜止部材32は、環状本体部32aと、環状本体部32aの一端から管軸芯X方向に突出するように延出した段差部32bとを有している。この段差部32bの内面32b1と環状本体部32aの端面32a1とで構成される環状空間32cにはリング部材31が収容されており、段差部32bの内面32b1がリング部材31の第一側面31aに当接している。
【0034】
押輪33は、ダクタイル鋳鉄等の材料で構成されており、表面がナイロンコーティング等の絶縁材料で覆われている。押輪33は、第一フランジ21aと抜止部材32とで挟まれる環状平板部33aと、ゴム輪34を押圧する押圧部33bとを有している。押圧部33bには、環状平板部33aよりも厚みが薄く構成され、ゴム輪34の一端が入り込む段部33a1が形成されている。本実施形態では、押圧部33bとリング部材31との間には隙間が形成されており、挿口管部20が受口管部21に挿入される方向(近接する方向)への移動に伴って、リング部材31の第一側面31aとは反対側の第二側面31bが押圧部33bに当接する。つまり、リング部材31の第二側面31bには、挿口管部20の受口管部21に挿入される方向への移動を規制する規制面31b1が形成されており、この規制面31b1が押輪33に当接可能に構成されている。
【0035】
ゴム輪34は、第一フランジ21aの内周面に形成された傾斜面21a1と平行な面を有する傾斜部34aと、挿口管部20の挿入方向の先端側に形成され、受口管部21の内周面に形成された環状突起21dに当接する球状部34bと、を有している。挿口管部20を受口管部21に挿入したとき、ゴム輪34の傾斜部34aが圧縮されると共に、球状部34bが傾斜部34aよりも大きく圧縮されて挿口管部20と受口管部21との間が密封される。
【0036】
締結部材35は、外面が樹脂で被覆された公知の絶縁ボルト35aおよび絶縁ナット35bで構成されており、周方向に複数配置されている。本実施形態では、絶縁ボルト35aをT字状のボルトで形成しており、絶縁ナット35bを回転させることにより、第一フランジ21a,押輪33および抜止部材32が互いに引き寄せられて締結される。
【0037】
続いて、図3を用いて、管継手3の組付方法を説明する。
【0038】
まず、C字状のリング部材31を拡径した状態で挿口管部20の外周面に沿って挿入し、リング部材31を挿口管部20の外周面に形成された環状凹部20aに嵌合させる(第一工程)。次いで、環状一体構造の抜止部材32を、挿口管部20の第一端部20bの側から挿入してリング部材31の第一側面31aに当接させる(第二工程)。なお、管継手3の組付けに先行して、挿口管部20の第一端部20bを水道本管1Aや配管1Bに溶接等によって固定する場合は、第一工程と第二工程の順番が入れ替えられる。つまり、挿口管部20の第一端部20bを水道本管1A等に溶接固定した後、環状一体構造の抜止部材32を、挿口管部20の第二端部20cの側から挿入する。次いで、C字状のリング部材31を拡径した状態で挿口管部20の第二端部20cの側から挿入し、リング部材31を環状凹部20aに嵌合させ、抜止部材32をリング部材31の第一側面31aに当接させる。
【0039】
次いで、一体構造の押輪33を、挿口管部20における第二端部20cの側から挿入して抜止部材32に当接させる(第三工程)。次いで、ゴム輪34が挿口管部20の外周面と受口管部21の内周面との間に位置するように、受口管部21に挿口管部20の第二端部20cを挿入して、第一フランジ21a、押輪33および抜止部材32を締結部材35で締結する(第四工程)。このように、挿口管部20の外周面に形成された環状凹部20aにリング部材31を嵌合し、抜止部材32および押輪33を順番に挿入して締結部材35で締結する構成であると、組付けが極めて容易である。
【0040】
また、本実施形態では、一体構造のリング部材31を挿口管部20の外周面に固定し、挿口管部20の受口管部21から離脱する方向への移動を規制するようにリング部材31の第一側面31aと当接する環状一体構造の抜止部材32を設けている。つまり、一体構造のリング部材31および抜止部材32は剛性が高いので、地震等による大きな外力が作用した際でも、リング部材31および抜止部材32が破損し難く、挿口管部20が受口管部21から離脱することを確実に防止できる。また、一体構造のリング部材31が環状凹部20aに嵌合しているので、挿口管部20が受口管部21から離脱しようとしたとき、リング部材31の浮き上がりが防止される。さらに、一体構造の抜止部材32と一体構造のリング部材31とが面で当接するため、リング部材31および抜止部材32の損傷を防止することができる。
【0041】
しかも、一体構造の突出部の第二側面31bに、挿口管部20の受口管部21に挿入される方向への移動を規制する規制面31b1を形成しているので、管軸芯X方向の圧縮力が作用した場合でも受口管部21が挿口管部20の側に移動することを防止できる。これによって、挿口管部20の第二端部20cと受口管部21の内面との間隔を確実に維持することが可能となり、両管部20,21を異種管で構成した場合でも電気的な接触による腐食を回避できる。
【0042】
以下、管継手3の別実施形態について、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。
なお、図面の理解を容易にするため、同じ部材には同じ名称及び符号を用いて説明する。
【0043】
[第二実施形態]
図4に示すように、押輪33の押圧部33bとリング部材31との間に形成された隙間にゴムや樹脂等で構成される絶縁保護材36を設けても良い。
この絶縁保護材36は、押輪33の押圧部33bに固定しても良いし、リング部材31に固定しても良い。これによって、押輪33の絶縁コーティングを省略できるので、製造コストを低減できる。
【0044】
[第三実施形態]
図5に示すように、押輪33を省略して、リング部材31を第一実施形態に比べて高く設定することにより、リング部材31の第二側面31bの上部を規制面31b1として、第一フランジ21aに当接可能に構成されている。また、リング部材31の第二側面31bの下部でゴム輪34を押圧するように構成されている。これにより、押輪33を省略できると共に第一実施形態における第三工程を省略できるので、作業効率を高めて、製造コストをさらに低減することが可能となる。
【0045】
[第四実施形態]
図6に示すように、挿口管部20の外周面に固定された状態で径方向外側に突出する一体構造の突出部として、挿口管部20の外周面から一体的に延出させた環状凸部20dで形構成しても良い。本実施形態では、第三実施形態のように、環状凸部20dの第二側面20d1の上部が第一フランジ21aに当接可能に構成されている。また、環状凸部20dの第二側面20d1の下部でゴム輪34を押圧するように構成されている。本実施形態のように挿口管部20の外周面から一体的に延出させた一体構造の環状凸部20dは剛性が高いので、挿口管部20と受口管部21とを強固に固定できる。しかも、本実施形態の管継手3の組付方法では、第一実施形態における第一工程および第三工程を省略できるので、作業効率を高めて、製造コストをさらに低減することが可能となる。なお、第一実施形態や第二実施形態のように、押輪33や絶縁保護材36を設けても良く、特に限定されない。
【0046】
[第五実施形態]
図7に示すように、第四実施形態の環状凸部20dに代えて、挿口管部20の外周面に固定された状態で径方向外側に突出する一体構造の突出部として、挿口管部20の外周面に溶接された環状リング37で構成しても良い。本実施形態のように、環状リング37を挿口管部20の外周面に溶接して形成すれば、挿口管部20の外周面に凹部や凸部を加工する必要がなく、製造コストを低減できる。しかも、本実施形態の管継手3の組付方法では、第一実施形態における第三工程を省略できるので、作業効率を高めて、製造コストをさらに低減することが可能となる。なお、第一実施形態や第二実施形態のように、押輪33や絶縁保護材36を設けても良く、特に限定されない。
【0047】
[第六実施形態]
図8に示すように、第1実施形態における管継手3において、ステンレス鋼の材料で構成される円筒状部材である挿口管部20のうち、受口管部21に対向する第二領域20Bの表面(外周面および第二端部20c)がエポキシ樹脂等の絶縁材料で構成される粉体により塗装されている。本実施形態では、挿口管部20と受口管部21との間で電気的な接触があった場合でも、第二領域20Bの表面に被覆された絶縁材料によって両管部20,21の腐食を防止することができる。
【0048】
[第七実施形態]
上述したように、呼び径150mmに対して可撓管2の外径が169mm、水道本管1A又は配管1Bの外径が165.2mmであり、呼び径350mmに対して可撓管2の外径が374mm、水道本管1A又は配管1Bの外径が355.6mmであるため、呼び径が大きくなるほど可撓管2の外径と水道本管1A又は配管1Bの外径との差が大きくなる。このため、可撓管2の外径と水道本管1A又は配管1Bの外径との差が所定値(例えば15mm)以上となると、挿口管部20を切削加工して段部20eを形成する場合、加工コストが上昇すると共に加工効率が悪化する。
【0049】
そこで、本実施形態では、図9に示すように、第1実施形態における管継手3において、挿口管部20を第一管部24と第二管部25とで構成し、挿口管部20のうち受口管部21に対向する第二領域20Bに、挿口管部20の外径を増大させる第二管部25を設けている。つまり、挿口管部20の受口管部21側の端部は、第二管部25の第二端部20cで構成されており、挿口管部20の受口管部21側とは反対側の端部は、第一管部24の第一端部20bで構成されている。第一管部24および第二管部25は、共にステンレス鋼の材料で構成される円筒状部材であり、互いに溶接等で固定されている。また、第一管部24の第一端部20bとは反対側の端部および第二管部25の第二端部20cとは反対側の端部には、傾斜状の段部20fが形成されており、且つ第一管部24と第二管部25とは径方向視で重複する重複領域20Cが設けられているため、互いの接合強度を高めている。受口管部21に対向する第二管部25の表面(外周面および第二端部20c)は、エポキシ樹脂等の絶縁材料で構成される粉体により塗装されている。これによって、本実施形態では、挿口管部20(第二管部25)と受口管部21との間で電気的な接触があった場合でも、第二管部25の表面に被覆された絶縁材料によって両管部20,21の腐食を防止することができる。しかも、第二管部25を設けるだけで、挿口管部20の第一領域20Aと第二領域20Bとの外径差を補うことが可能となるため、挿口管部20を切削加工する場合に比べて製造が容易である。
【0050】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態における受口管部21を、中空球体22を有する可撓管2の一部として構成せずに、蛇腹構造の可撓管等であっても良く、特に限定されない。
(2)上述した実施形態の構成に加えて、第一フランジ21aと押輪33との間や押輪33とリング部材31との間にさらに他の補強部材を設けても良い。
(3)上述した実施形態では押圧部33bとリング部材31との間に隙間を形成したが、押圧部33bとリング部材31とを常時当接させても良い。
(4)上記実施形態では、流体配管系統を構成する流体管1の一例として水道管を用いて説明したが、流体管としては気体や他の液体が通流する管であっても良い。
(5)上述した実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、第六実施形態又は第七実施形態の構成を、第二実施形態~第五実施形態に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、水道管等の接合に用いられる管継手および管継手の組付方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
3 :管継手
20 :挿口管部
20a :環状凹部
20b :第一端部
20c :第二端部
20d :環状凸部(突出部)
20d1 :第二側面
21 :受口管部
21a :第一フランジ(フランジ部)
31 :リング部材(突出部)
31a :第一側面
31b :第二側面
31b1 :規制面
32 :抜止部材
33 :押輪(環状部材)
35 :締結部材
37 :環状リング(突出部)
X :管軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9