(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017982
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート組成物、活性エネルギー線硬化性組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/67 20060101AFI20220119BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08G18/67 010
C08F290/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120889
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】592019589
【氏名又は名称】ダイセル・オルネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大下 徹
(72)【発明者】
【氏名】相模 貴雄
【テーマコード(参考)】
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J034FA02
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(57)【要約】
【課題】
硬化物において高い硬度、優れた柔軟性及び耐候性を実現する、ウレタン(メタ)アクリレート組成物、活性エネルギー性硬化性組成物を提供する。また、高い硬度、優れた柔軟性及び耐候性を示す硬化物を提供する。
【解決手段】
(i)下記化合物(A)と下記化合物(B)との反応物、(A)と下記化合物(C)との反応物、及び下記化合物(D)を含む混合物、又は
(ii)(A)と(B)と(C)との反応物、及び(D)を含む混合物であり、
(C)由来の構成単位及び(D)の合計(C+D)に対する(B)由来の構成単位の重量比(B/(C+D))が0.30~2.00であり、
(C)由来の構成単位及び(D)の合計(C+D)中の(C)由来の構成単位の重量割合(C/(C+D))が0.28~0.67である、ウレタン(メタ)アクリレート組成物。
(A):ポリイソシアネート
(B):水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート
(C):水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート
(D):水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記化合物(A)と下記化合物(B)との反応物、化合物(A)と下記化合物(C)との反応物、及び下記化合物(D)を含む混合物、又は
(ii)化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物、及び化合物(D)を含む混合物であり、
化合物(C)由来の構成単位及び化合物(D)の合計(C+D)に対する化合物(B)由来の構成単位の重量比(B/(C+D))が0.30~2.00であり、
化合物(C)由来の構成単位及び化合物(D)の合計(C+D)中の化合物(C)由来の構成単位の重量割合(C/(C+D))が0.28~0.67である、ウレタン(メタ)アクリレート組成物。
化合物(A):ポリイソシアネート
化合物(B):水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート
化合物(C):水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート
化合物(D):水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート
【請求項2】
化合物(C)が、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートであり、化合物(D)が、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである、請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート組成物。
【請求項3】
60℃における粘度が1,000~5,000mPa・sである、請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレート組成物。
【請求項4】
重量平均分子量が500~2,500である、請求項1~3の何れか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート組成物。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート組成物と、光重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
さらに反応性希釈剤及び/又は揮発性有機溶剤を含む、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウレタン(メタ)アクリレート組成物、該ウレタン(メタ)アクリレート組成物を含む活性エネルギー線硬化性組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性のウレタンアクリレートは、種々の骨格構造を組み合わせて有することにより、硬度、柔軟性、強靭性、耐溶剤性など、様々な性能を実現できることから、粘着剤、インク、コーティング剤などの広汎な分野において使用されている。
【0003】
例えば、各種ディスプレイの表面保護フィルムなどに用いられるハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどからなる表面硬度が低いプラスチックフィルムについて、表面にコーティング剤によるコート層(硬化物層、硬化膜)を設けたものであるが、そのコート層には、硬度が高く耐擦傷性に優れるうえに、柔軟性が良好で耐摩耗性、耐カール性に優れ、さらに耐候性に優れることが求められる。
【0004】
特許文献1には、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールと1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを反応させたポリイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを反応させたウレタンアクリレートを含む紫外線硬化型樹脂組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、有機ポリイソシアネートと、脂環式構造を有するポリカーボネートポリオールと、分子内に1個以上の水酸基を含有するアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレートを含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-062499号公報
【特許文献2】特開2009-227915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化膜には、表面硬度は高いものの、柔軟性に劣り、耐カール性が不十分であるとともに、耐候性も不十分という問題があり、特許文献2の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化膜には、柔軟性は優れるものの、硬度、耐擦傷性が不十分という問題があった。
【0008】
従って、本開示の目的は、硬化物において高い硬度、優れた柔軟性及び耐候性を実現する、ウレタン(メタ)アクリレート組成物、そのウレタン(メタ)アクリレート組成物を含む活性エネルギー線硬化性組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の、イソシアネート化合物(ジイソシアネート由来のヌレート化合物等)、単官能(メタ)アクリレート、及び水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートとを、特定の重量比で反応させた反応物、及び特定の水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレートを含む、ウレタン(メタ)アクリレート組成物において、高い硬度、優れた柔軟性及び耐候性をバランスよく有する硬化物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本開示は、(i)下記化合物(A)と下記化合物(B)との反応物、化合物(A)と下記化合物(C)との反応物、及び下記化合物(D)を含む混合物、又は
(ii)化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物、及び化合物(D)を含む混合物であり、
化合物(C)由来の構成単位及び化合物(D)の合計(C+D)に対する化合物(B)由来の構成単位の重量比(B/(C+D))が0.30~2.00であり、
化合物(C)由来の構成単位及び化合物(D)の合計(C+D)中の化合物(C)由来の構成単位の重量割合(C/(C+D))が0.28~0.67である、ウレタン(メタ)アクリレート組成物を提供する。
化合物(A):ポリイソシアネート
化合物(B):水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート
化合物(C):水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート
化合物(D):水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート
【0011】
前記ウレタン(メタ)アクリレート組成物において、化合物(C)は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートであり、化合物(D)は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0012】
前記ウレタン(メタ)アクリレート組成物は、60℃における粘度が1,000~5,000mP・sであることが好ましい。
【0013】
前記ウレタン(メタ)アクリレート組成物は、重量平均分子量が500~2,500であることが好ましい。
【0014】
本開示は、また、前記のウレタン(メタ)アクリレート組成物と光重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【0015】
前記の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに反応性希釈剤及び/又は揮発性有機溶剤を含むことが好ましい。
【0016】
また、本開示は、前記の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、上記構成を有するため、該ウレタン(メタ)アクリレート組成物を含む活性エネルギー線硬化性組成物として使用することにより、優れた柔軟性及び耐候性を実現する硬化物(コート層など)を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ウレタン(メタ)アクリレート組成物>
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、
(i)下記化合物(A)と下記化合物(B)との反応物、化合物(A)と下記化合物(C)との反応物、及び下記化合物(D)を含む混合物、又は
(ii)化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物、及び化合物(D)を含む混合物であり、
化合物(C)由来の構成単位及び化合物(D)の合計(C+D)に対する化合物(B)由来の構成単位の重量比(B/(C+D))が0.30~2.00であり、
化合物(C)由来の構成単位及び化合物(D)の合計(C+D)中の化合物(C)由来の構成単位の重量割合(C/(C+D))が0.28~0.67である。
化合物(A):ポリイソシアネート
化合物(B):水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート
化合物(C):水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート
化合物(D):水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート
【0019】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物の60℃における粘度は、例えば、1,000~5,000mPa・sが好ましく、より好ましくは1,250~4,000mPa・s、更に好ましくは1,500~3,500mPa・s、特に好ましくは1,750~3,000mPa・sである。粘度が上記範囲内であると硬化物の耐擦傷性、耐カール性が十分なものとなりやすい。なお、ウレタン(メタ)アクリレート組成物の粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業(株)製、TV-25)を使用し、60℃の条件にて測定することができる。
【0020】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、500~2,500が好ましく、より好ましくは800~2,200、更に好ましくは1,000~2,000ある。重量平均分子量が上記範囲内であると硬化物の耐摩耗性、耐カール性が十分なものとなりやすい。本開示における「重量平均分子量」は、GPCの測定によるポリスチレン換算の値であり、例えば、本開示の実施例にて記載する方法により測定することができる。
【0021】
[ポリイソシアネート、化合物(A)]
化合物(A)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられるが、黄変しにくく、柔軟性に優れた硬化物を得られやすい点から、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、又は脂肪族ジイソシアネートのビウレット化合物、アダクト化合物、若しくはヌレート化合物(3量体)が挙げられるが、硬化物に優れた耐候性を付与できる点から、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート由来のヌレート化合物が好ましく、脂肪族ジイソシアネート(例えば、炭素の総数4~30、好ましくは6~14のもの、具体的には、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等)由来のヌレート化合物がより好ましく、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物が更に好ましい。
【0023】
上記ヌレート化合物のイソシアネート基濃度は、硬化物に優れた耐擦傷性、耐摩耗性を付与できる点から、例えば、18.0~25.0重量%であることが好ましく、より好ましくは19.0~24.0重量%、更に好ましくは20.0~23.5重量%である。なお、上記イソシアネート基濃度は、JIS K1603-1:2007のB法に準拠して測定することができる。
【0024】
また、上記ヌレート化合物の25℃における粘度は、硬化物に優れた耐擦傷性、耐摩耗性を付与できる点から、例えば、100~5000mPa・sが好ましく、より好ましくは200~4000mPa・s、更に好ましくは250~3500mPa・sである。なお、上記ヌレート化合物の粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業(株)製、TV-25)を使用して測定することができる。
【0025】
直鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等、分岐鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートや、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを水添して得られる脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
【0027】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、芳香族テトライソシアネート等が挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートは市販品を用いてもよく、例えば、「VESTANAT IPDI(イソホロンジイソシアネート)、エボニック(株)製」、「TMDI(2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)、エボニック(株)製」、「水添MDI(ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート)、エボニック(株)製」、「HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、東ソー(株)製」、「MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、東ソー(株)製」、「デュラネートTUL-100(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物)、旭化成(株)製」、「タケネートD-170N(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物)、三井化学ポリウレタン(株)製」、「スミジュールN3300(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物)、住化バイエルウレタンウレタン(株)製」等が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネート(化合物(A))は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(A)由来の構成単位の含有量は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、35~55重量%が好ましく、より好ましくは38~52重量%、更に好ましくは40~50重量%、特に好ましくは42~48重量%である。化合物(A)由来の構成単位の含有量が上記範囲内であると硬化物の耐候性、耐カール性が十分なものとなりやすい。
【0031】
[化合物(B)、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート]
化合物(B)は、1つの(メタ)アクリロイル基と、水酸基を有する(メタ)アクリレートである。水酸基の数は1つであることが好ましい。化合物(B)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びアルキロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、硬化物に優れた耐摩耗性、耐候性を付与できる点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、炭素の総数が、好ましくは4~20、より好ましくは5~10であって、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
アルキロール(メタ)アクリルアミドとしては、炭素の総数が4~20のアルキロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、具体的には、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
化合物(B)(水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(B)由来の構成単位の含有量は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、15~32重量%が好ましく、より好ましくは18~31重量%、更に好ましくは20~30重量%、特に好ましくは23~29重量%である。化合物(B)由来の構成単位の含有量が上記範囲内であると硬化物の耐カール性、耐候性、耐擦傷性が十分なものとなりやすい。
【0037】
[化合物(C)、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート]
化合物(C)は、2以上の(メタ)アクリロイル基と1以上の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートである。(メタ)アクリロイル基の数は2~7であることが好ましく、より好ましくは3~5である。水酸基の数は1~6であることが好ましく、より好ましくは1~3、更に好ましくは1つである。
【0038】
化合物(C)は、炭素の総数が、好ましくは5~40、より好ましくは9~30であって、具体的には、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物に高い表面硬度を付与しやすい点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(C)由来の構成単位の含有量は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、5~20重量%が好ましく、より好ましくは6~19重量%、更に好ましくは7~18重量%である。
【0040】
化合物(C)(水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
[化合物(D)、水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート]
化合物(D)は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有し水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレートである。(メタ)アクリロイル基の数は2~8であることが好ましく、より好ましくは3~6である。
【0042】
化合物(D)は、炭素の総数が、好ましくは8~44、より好ましくは12~34であって、具体的には、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物に優れた耐擦傷性、耐摩耗性を付与できる点から、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(D)の含有量は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、9~20重量%が好ましく、より好ましくは10~19重量%、更に好ましくは11~18重量%である。
【0044】
化合物(D)(水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(C)由来の構成単位と化合物(D)の合計(C+D)は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、20~50重量%が好ましく、より好ましくは21~40重量%、更に好ましくは22~35重量%、特に好ましくは24~30重量%である。合計(C+D)が上記範囲内であると硬化物の表面硬度、耐カール性が十分なものとなりやすい。
【0046】
上記合計(C+D)中の、化合物(C)由来の構成単位の重量割合(C/(C+D))は、0.28~0.67であり、好ましくは0.29~0.66、より好ましくは0.30~0.65である。重量割合(C/(C+D))が上記範囲内であると硬化物の耐擦傷性、耐カール性が十分なものとなりやすい。
【0047】
化合物(C)由来の構成単位と化合物(D)の合計(C+D)に対する化合物(B)由来の構成単位の重量比(B/(C+D))は、0.30~2.00であり、好ましくは0.40~1.70、より好ましくは0.50~1.30である。重量比(B/(C+D))が上記範囲内であると硬化物の耐カール性、耐候性、耐擦傷性が十分なものとなりやすい。
【0048】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、(i)化合物(A)と化合物(B)との反応物、化合物(A)と化合物(C)との反応物、及び化合物(D)を含む混合物、(ii)化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物、及び化合物(D)を含む混合物である。上記(i)の混合物が、硬化物について、硬さを示す相と柔軟性を示す相とが適度に相容して、硬さと柔軟性とをバランスよく示すこととなる内部構造を実現しやすいと考えられる点から好ましい。
【0049】
化合物(A)と化合物(B)との反応物とは、化合物(A)(ポリイソシアネート)のイソシアネート基と化合物(B)(水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)の水酸基とが結合したウレタン結合と、化合物(B)由来の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
【0050】
化合物(A)と化合物(C)との反応物とは、化合物(A)のイソシアネート基と化合物(C)(水酸基を有しない単官能(メタ)アクリレート)の水酸基とが結合したウレタン結合と、化合物(C)由来の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
【0051】
化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物とは、化合物(A)のイソシアネート基と化合物(B)の水酸基とが結合したウレタン結合と、化合物(A)のイソシアネート基と化合物(C)の水酸基とが結合したウレタン結合と、化合物(B)及び化合物(C)由来の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである。
【0052】
上記(i)の混合物に係るウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(A)と化合物(B)との反応物における化合物(A)由来の構成単位と化合物(B)由来の構成単位の合計(A+B)は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、40~76重量%が好ましく、より好ましくは50~73重量%、更に好ましくは55~71重量%であって、かつ、化合物(A)と化合物(C)との反応物における化合物(A)由来の構成単位と化合物(C)由来の構成単位の合計(A+C)は、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)由来の構成単位並びに化合物(D)の合計100重量%に対して、13.9~40重量%が好ましく、より好ましくは14.1~30重量%、更に好ましくは14.3~24重量%である。
【0053】
上記(i)の混合物に係るウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(A)と化合物(B)との反応物と、化合物(A)と化合物(C)との反応物との重量比((A+B)/(A+C))は、0.90~6.00が好ましく、より好ましくは2.30~5.00、更に好ましくは2.50~4.90、特に好ましくは2.70~4.70である。
【0054】
上記(i)の混合物に係るウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(A)と化合物(B)との反応物、及び、化合物(A)と化合物(C)との反応物の合計の重量割合は、50重量%以上が好ましく、より好ましくは50~95重量%、更に好ましくは65~93重量%、特に好ましくは75~91重量%である。
【0055】
上記(ii)の混合物に係るウレタン(メタ)アクリレート組成物中の、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物の重量割合は、50重量%以上が好ましく、より好ましくは50~95重量%、更に好ましくは65~93重量%、特に好ましくは75~91重量%である。
【0056】
上記(i)の混合物は、例えば、化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)の何れか一方とを反応させた反応物と、化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)の何れか他方とを反応させた反応物とを別々に得てから、これら2つの反応物を混合するものであってよい。化合物(D)は、少なくとも一方の反応の際に混合されてもよいし、2つの反応物を混合する際に混合されてもよい。
【0057】
上記(i)の混合物は、化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)の何れか一方とを反応させてから、そこに追加の化合物(A)と、化合物(B)及び化合物(C)の何れか他方とを加えて、さらに反応させて得られた混合物であってもよい。化合物(D)は、先及び/又は後の反応の際に混合されてもよいし、後の反応後に混合されてもよい。
【0058】
上記(ii)の混合物は、例えば、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)とを一括混合して反応させた反応物について、化合物(D)を反応前及び/又は反応後に混合して得られるものであってよい。
【0059】
上記(i)の混合物には、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との反応物が含まれていてもよいし、上記(ii)の混合物には、化合物(A)と化合物(B)との反応物、及び/又は、化合物(A)と化合物(C)との反応物が含まれていてもよい。
【0060】
上記(i)、(ii)の混合物において、未反応のイソシアネート基が多量に残存すると、硬化性組成物の硬化において、ゲル化や硬化不良等の不具合が生じるおそれがある。このような不具合を避けるため、反応液中の残存するイソシアネート基濃度が、例えば、0.05重量%以下になるまで反応させるのが好ましい。残存するイソシアネート基濃度は、例えば、以下の方法により分析することができる。
【0061】
(イソシアネート基濃度の測定)
滴定法によるイソシアネート基濃度の測定は、例えば、以下のように実施する。なお、測定は100mLのガラスフラスコでスターラーによる撹拌の下で行う。まず、以下のように、ブランク値を測定する。15mLのTHFに、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)15mLを加える。さらにブロモフェノールブルー(1重量%メタノール希釈液)を3滴加えて加えて青色に着色させた後、規定度が0.1NであるHCl水溶液で滴定する。変色がみられた時点のHCl水溶液の滴定量をVb(mL)とする。次に、実測イソシアネート基濃度を測定する。まず、サンプルをWs(g)秤量し、15mLのTHFに溶解させ、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)を15mL加える。溶液化したことを確認した後、ブロモフェノールブルー(1重量%メタノール希釈液)を3滴加えて青色に着色させた後、規定度が0.1NであるHCl水溶液で滴定する。変色がみられた時点のHCl水溶液の滴定量をVs(mL)とする。そして、以下の計算式により、サンプル中のイソシアネート基濃度を算出する。
イソシアネート基濃度(重量%)=(Vb-Vs)×1.005×0.42÷Ws
【0062】
反応の終点におけるイソシアネート基濃度とは、系内に仕込んだ水酸基の全てがウレタン化したと仮定した場合の理論上のイソシアネート基濃度、あるいは、反応液中のイソシアネート基濃度がもはや変化しなくなった時のイソシアネート基濃度の、いずれか高いほうのイソシアネート基濃度である。
【0063】
なお、化合物(A)(ポリイソシアネート)と化合物(B)(水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)及び/又は化合物(C)(水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート)とを配合する際の、水酸基に対するイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)は、例えば、1.00~1.3モルが好ましく、より好ましくは1.01~1.2モル、更に好ましくは1.02~1.1モル、特に好ましくは1.02~1.05モルである。
【0064】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物を得るための反応は、重合禁止剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等)の存在下において、重合を防止しつつ行うことが好ましい。重合禁止剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物に対して1~10000ppm(重量基準)が好ましく、より好ましくは100~5000ppm、更に好ましくは200~1000ppmである。重合禁止剤の添加量が上記範囲内であると十分な重合禁止効果が得られやすく、硬化物の物性に悪影響が及びにくくなる。
【0065】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物を得るための反応は、分子状酸素含有ガス雰囲気下において行うことが好ましい。酸素濃度は安全面を考慮して適宜選択される。
【0066】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物を得るための反応は、十分な反応速度を得るために、触媒(ウレタン化触媒)を用いて行ってもよい。触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、塩化スズ等を用いることができ、反応速度面からジブチルスズジラウレートが好ましい。触媒の添加量は特に限定されないが、例えば、得られるウレタン(メタ)アクリレート組成物に対して1~3000ppm(重量基準)が好ましく、より好ましくは10~1000ppmである。触媒添加量が上記範囲内であると十分な反応速度の向上が得られやすく、硬化物の諸物性に悪影響を及びにくくなる。
【0067】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物を得るための反応は、公知の揮発性有機溶剤の存在下で行うことができる。揮発性有機溶剤はウレタン(メタ)アクリレート組成物の製造後、あるいは活性エネルギー線硬化性組成物の成型後、減圧等により留去することができる。揮発性有機溶剤としては、例えば、1.0気圧における沸点が200℃を超えない有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族系溶剤;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤等)が挙げられる。
【0068】
本開示のウレタン(メタ)アクリレート組成物を得る反応の反応温度は、特に限定されないが、例えば、130℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは30~100℃である。反応温度が上記範囲内であると実用上十分な反応速度が得られやすく、二重結合部のラジカル重合による架橋、ゲル化物が生じにくくなる。
【0069】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物を少なくとも含む。本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物及び光重合開始剤を含むものであってもよい。本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、揮発性有機溶剤及び/又は反応性希釈剤が配合されてもよい。
【0070】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、活性エネルギー線の種類や、ウレタン(メタ)アクリレート組成物によって異なり、特に限定されないが、公知の光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を用いることができ、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等が挙げられる。なお、光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂分全量100重量部に対して1~20重量部が好ましく、より好ましくは1~5重量部である。光重合開始剤の使用量が上記範囲内であると、硬化不良を引き起こしにくく、硬化物に光重合開始剤由来の臭気が残存しにくくなる。なお、「樹脂分」とは、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる硬化性の樹脂を意味し、上記のウレタン(メタ)アクリレート組成物、及び後述の単官能(メタ)アクリレート等を指す。光重合開始剤や揮発性有機溶剤は「樹脂分」には該当しない。
【0072】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物には、本開示の効果を損ねない範囲において、揮発性有機溶剤、反応性希釈剤である単官能(メタ)アクリレート、種々の添加剤が配合されてもよい。
【0073】
揮発性有機溶剤としては、例えば、上記のウレタン(メタ)アクリレート組成物において説明した揮発性有機溶剤を使用することができる。
【0074】
上記揮発性有機溶剤の配合量は特に限定されないが、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物100重量部に対して、例えば、100重量部以下が好ましく、より好ましくは50重量部以下である。
【0075】
反応性希釈剤である単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、シクリヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレートが好ましく、n-オクチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。単官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
上記単官能(メタ)アクリレートの配合量は特に限定されないが、上記ウレタン(メタ)アクリレート組成物100重量部に対して、例えば、0~100重量部が好ましく、より好ましくは0~20重量部である。
【0077】
添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂分全量100重量部に対して、例えば、0~10重量部が好ましく、より好ましくは0.05~5重量部である。
【0078】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート組成物と、必要に応じて光重合開始剤、反応性希釈剤、揮発性有機溶媒、添加剤等を混合して製造することができる。混合の手段としては、公知乃至慣用の手段、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式攪拌装置等を使用できる。混合の際の温度、回転数等の条件は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0079】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、層間充填剤(層間充填用硬化性組成物)、粘着剤用組成物やコーティング剤用組成物として用いることができる。
【0080】
<硬化物>
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線照射によって硬化させることにより、硬化物を得ることができる。本開示の硬化物は、シート(フィルム状又はシート状の形状、硬化塗膜)であることが好ましい。
【0081】
本開示の硬化物は、例えば、本開示の活性エネルギー線硬化性組成物を基材等の対象物に塗布した後、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化することにより得られる硬化塗膜とすることができる。塗布の方法としては、公知乃至慣用の方法を用いることができ、例えばコーティング法、キャスティング法等が挙げられる。紫外線照射を行う際の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。紫外線の照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件等により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。紫外線照射後は、さらに、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。一方、電子線照射の場合は、例えば、50~1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2~5Mradの照射量とすることが好ましい。通常、ランプ出力80~300W/cm程度の照射源が用いられる。また、硬化塗膜の厚さは、通常、10~1000μm程度であり、好ましくは30~500μm程度である。
【0082】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布する対象物(被塗布物)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の物品、上記物品のプラスチック表面に金属蒸着を行ったもの、ガラス、木材、金属板、紙等の各種物品が挙げられる。塗布面に離型処理が施されていてもよい。また、対象物(被塗布物)の形状も特に限定されないが、シート状(平面)であることが好ましい。
【0083】
本開示の硬化物の、実施例に記載の評価方法による鉛筆硬度は、B以上であることが好ましく、B~HBであることがより好ましい。
【0084】
本開示の硬化物の、実施例に記載の耐擦傷性の評価方法による光沢保持率は、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0085】
本開示の硬化物の、実施例に記載の耐摩耗性の評価方法によるΔHazeは、35%未満であることが好ましく、30%未満であることがより好ましい。
【0086】
本開示の硬化物の、実施例に記載の耐カール性の評価方法による四隅の水平面からの高さの平均値は、0mm以上15mm以下であることが好ましく、0mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0087】
本開示の硬化物は、高い硬度及び優れた柔軟性をバランスよく備え、耐候性にも優れるため、エレクトロニクス分野で用いられる基材、光学部材、ディスプレイ基材等の光学用基材、粘着シート用基材等として特に好適に用いられる。また、本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば、物品の表面に硬化塗膜を形成する用途、具体的には、コーティング剤(コーティング用途)、塗料(塗料用途)、接着剤(接着剤用途)等としても使用できる。
【0088】
以上、本開示の各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換、及び変更が可能である。また、本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例0089】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0090】
以下に、合成例及び比較合成例、粘度の測定方法、重量平均分子量の測定方法についてについて説明する。なお、「ppm」は、特別な記載がない限り(理論的に)得られるウレタンアクリレート組成物に対する濃度(重量基準)である。
【0091】
[粘度の測定]
ウレタンアクリレート組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業(株)正、TV-25型)を用い、60℃の条件にて測定した。その結果を表1、2に記載した。
【0092】
[重量平均分子量の測定]
ウレタンアクリレート組成物の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー)法により、下記の測定条件で、標準ポリスチレンを基準にして求めた。その結果を表1、2に記載した。
使用機器 : TOSO HLC-8220GPC
ポンプ : DP-8020
検出器 : RI-8020
カラムの種類: Super HZM-M, Super HZ4000, Super HZ3000, Super HZ2000
溶剤 : テトラヒドロフラン
相流量 : 1mL/分
カラム内圧力: 5.0MPa
カラム温度 : 40℃
試料注入量 : 10μL
試料濃度 : 0.2mg/mL
【0093】
合成例、比較合成例で用いた化合物(A)(ポリイソシアネート)、化合物(B)(水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)、化合物(C)(水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート)及び化合物(D)(水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート)は、以下の通りである。
【0094】
[化合物(A)(ポリイソシアネート)]
・TUL-100:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、製品名「デュラネートTUL-100」、旭化成(株)製、イソシアネート基濃度23.0重量%、粘度(25℃)300mPa・s
・D-170N:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、三井化学ポリウレタン(株)製、製品名「タケネートD-170N」、イソシアネート基濃度20.7重量%、粘度(25℃)2000mPa・s
・N3300:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、住化バイエルウレタン(株)製、製品名「スミジュールN3300」、イソシアネート基濃度21.8重量%、粘度(25℃)3000mPa・s
【0095】
[化合物(B)(水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)]
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート、製品名「β-HEA アクリル酸2-ヒドロキシエチル」、日本触媒(株)製
・HPA:2-ヒドロキシプロピルアクリレート、製品名「アクリル酸2-ヒドロキシプロピル」、日本触媒(株)製
・HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート、製品名「4-ヒドロキシブチルアクリレート」、日本触媒(株)製
【0096】
[化合物(C)(水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート)]
・PETIA:ペンタエリスリトールトリアクリレート、製品名「PETIA」、ダイセル・オルネクス(株)製
[化合物(D)(水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート)]
・PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、製品名「ライトアクリレートPE-4A」、共栄社化学(株)製
【0097】
(合成例1、X-1の合成)
1段階目として、温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、化合物(A)(ポリイソシアネート)として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、(TUL-100)194.2g、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)800ppmを充填した。内温を70℃にし、1時間攪拌して系内を均一化させた後、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)200ppmを加えた。その後、化合物(B)(水酸基を有する単官能アクリレート)としてヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)140.8gを4時間かけて滴下投入した。滴下終了後、80℃まで昇温し、2時間攪拌を継続した。
【0098】
反応液中のイソシアネート基濃度が、0.05重量%以下となったことを確認した後、2段階目として、さらに、TUL-100を33.0g、BHTを800ppm、DBTDLを200ppm、化合物(C)(水酸基を有する多官能アクリレート)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)70.0g、および、化合物(D)(水酸基を有しない多官能アクリレート)として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)62.0gを投入し(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.53)、2時間攪拌を継続した。イソシアネート基濃度が0.05重量%以下になったことを確認し、反応を終了させて、ウレタンアクリレート組成物(X-1)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、45.4:28.2:14.0:12.4、重量比(B/(C+D))は1.06であった。
【0099】
(合成例2、X-2の合成)
1段階目として、173.9gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、126.1gのHPAを用いたこと、2段階目として、40.0gのTUL-100、-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、84.8gのPETIA、および、75.2gのPETA(合計(C+D)160.0g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-2)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、42.8:25.2:15.0:15.0、重量比(B/(C+D))は0.79であった。
【0100】
(合成例3、X-3の合成)
1段階目として、203.4gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、化合物(B)として131.6gのヒドロキシプロピルアクリレート(HEA)を用いたこと、2段階目として、33.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、70.0gのPETIA、および、62.0gのPETA(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-3)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、47.3:26.3:14.0:12.4、重量比(B/(C+D))は1.00であった。
【0101】
(合成例4、X-4の合成)
1段階目として、185.8gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、化合物(B)として149.2gのヒドロキシブチルアクリレート(HBA)を用いたこと、2段階目として、33.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、70.0gのPETIA、および、62.0gのPETA(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-4)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、43.8:29.8:14.0:12.4、重量比(B/(C+D))は1.13であった。
【0102】
(合成例5、X-5の合成)
1段階目として、202.9gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、147.1gのHPAを用いたこと、2段階目として、30.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、63.6gのPETIA、および、56.4gのPETA(合計(C+D)120.0g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-5)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、46.6:29.4:12.7:11.3、重量比(B/(C+D))は1.23であった。
【0103】
(合成例6、X-6の合成)
1段階目として、194.2gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、140.8gのHPAを用いたこと、2段階目として、33.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、39.6gのPETIA、および、92.4gのPETA(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.30)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-6)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、45.4:28.2:7.9:18.5、重量比(B/(C+D))は1.06であった。
【0104】
(合成例7、X-7の合成)
1段階目として、194.2gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、140.8gのHPAを用いたこと、2段階目として、33.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、140.8g、85.8gのPETIA、および、46.2gのPETA(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.65)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-7)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、45.4:28.2:17.2:9.2、重量比(B/(C+D))は1.06であった。
【0105】
(合成例8、X-8の合成)
1段階目として、化合物(A)として202.2gの1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、(D-170N)、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、140.8g、132.8gのHPAを用いたこと、2段階目として、35.7gのD-170N、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、68.5gのPETIA、および、60.8gのPETA(合計(C+D)129.3g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-8)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、47.6:26.6:13.7:12.2、重量比(B/(C+D))は1.03であった。
【0106】
(合成例9、X-9の合成)
1段階目として、化合物(A)として198.8gの1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物、(N3300)、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、136.2gのHPAを用いたこと、2段階目として、34.6gのN3300、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、69.1gのPETIA、および、61.3gのPETA(合計(C+D)130.4g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(X-9)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、46.7:27.2:13.8:12.3、重量比(B/(C+D))は1.04であった。
【0107】
(比較合成例1、CA-1の合成)
1段階目として、194.2gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、140.8gのHPAを用いたこと、2段階目として、33.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、35.6gのPETIA、および、96.4gのPETA(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.27)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(CA-1)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、45.4:28.2:7.1:19.3、重量比(B/(C+D))は1.06であった。
【0108】
(比較合成例2、CA-2の合成)
1段階目として、194.2gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、140.8gのHPAを用いたこと、2段階目として、33.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、89.8gのPETIA、および、42.2gのPETA(合計(C+D)132.0g、重量割合(C/(C+D))0.68)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(CA-2)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、45.4:28.2:18.0:8.4、重量比(B/(C+D))は1.06であった。
【0109】
(比較合成例3、CA-3の合成)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、289.8gのTUL-100、800ppmのBHTを充填した。内温を70℃にし、1時間攪拌して系内を均一化させた後、200ppmのDBTDLを加えた。その後、210.2gのHPAを4時間かけて滴下投入した。滴下終了後、80℃まで昇温し、2時間攪拌を継続した。イソシアネート基濃度が0.05重量%以下になったことを確認し、反応を終了させて、ウレタンアクリレート組成物(CA-3)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、58.0:42.0:0:0であった。
【0110】
(比較合成例4、CA-4の合成)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、100.1gのTUL-100、800ppmのBHTを充填した。内温を70℃にし、1時間攪拌して系内を均一化させた後、200ppmのDBTDLを加えた。その後、211.9gのPETIA、および、188.0gのPETA(合計(C+D)399.9g、重量割合(C/(C+D))0.53)を、4時間かけて滴下投入した。滴下終了後、80℃まで昇温し、2時間攪拌を継続した。その後、イソシアネート基濃度が0.05重量%以下になったことを確認し、反応を終了させて、ウレタンアクリレート組成物(CA-4)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、20.0:0:42.4:37.6であった。
【0111】
(比較合成例5、CA-5の合成)
1段階目として、95.6gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、69.4gのHPAを用いたこと、2段階目として、67.1gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、69.4g69.4gのPETIA、および、42.2gのPETA(合計(C+D)267.9g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(CA-5)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、32.5:13.9:28.4:25.2、重量比(B/(C+D))は0.26であった。
【0112】
(比較合成例6、CA-6の合成)
1段階目として、231.8gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、69.4g168.2gのHPAを用いたこと、2段階目として、20.0gのTUL-100、800ppmのBHT、200ppmのDBTDL、69.4g69.4gのPETIA、および、42.2gのPETA(合計(C+D)80.0g、重量割合(C/(C+D))0.53)を投入したこと以外は、合成例1と同様にして、ウレタンアクリレート組成物(CA-6)を得た。本合成に用いた化合物A~Dの重量比(A:B:C:D)は、50.4:33.6:8.5:7.5、重量比(B/(C+D))は2.10であった。
【0113】
【0114】
【0115】
以下に、実施例及び比較例として、活性エネルギー線硬化性組成物の調製、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、耐カール性、耐候性の評価方法について説明する。
【0116】
[活性エネルギー線硬化性組成物の調製]
100重量部のウレタンアクリレート組成物(X-1)~(X-9)、(CA-1)~(CA-6)のそれぞれについて、揮発性有機溶剤として42重量部の酢酸エチル(「AE」、(株)ダイセル製)と、光重合開始剤として3重量部の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「Irg184」、BASFジャパン(株)製)を加えて、活性エネルギー線硬化性組成物とした。
【0117】
[鉛筆硬度]
厚さ100μm、長さ100mm×幅100mmの矩形のPETフィルム(東洋紡(株)製)に、バーコーダーNo.12を用いて、各活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した後、オーブンにて80℃で5分間乾燥させた。その後、120W/cmの高圧水銀ランプにより800mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射して、上記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させ、膜厚12~14μmのコート層(硬化物層)を有する鉛筆硬度試験用サンプルを作製した。
【0118】
上記サンプルのコート層について、JIS K-5600に準拠して測定した。すなわち、積層体の硬化側表面を鉛筆(鉛筆の芯)によってこすり、表面に傷が確認できたものをNG(不良)とした。具体的には、ある硬さの鉛筆を用いて評価を行い、傷がつかなかった場合に、1つ上の硬さの鉛筆により評価を行うという作業を繰り返した。傷が確認できたらその1つ下の硬さによって再評価し、また、傷が確認できなかったら、再度1つ上の硬さの鉛筆を用いて評価した。2回以上の再現性が確認できた場合、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬度をその硬化被膜の鉛筆硬度とした。結果を表3に示した。
評価用鉛筆:三菱鉛筆(株)製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重:500gf
引っ掻き距離:7mm以上
引っ掻き角度:45°
測定環境:23℃、50%RH
【0119】
[耐擦傷性]
鉛筆硬度試験用サンプルと同様にして作製した、耐擦傷性試験用サンプルについて、ラビングテスター(標準型、日本理化工業(株)製)にスチールウール(B-204、ボンスター業務用#0000)を取付け、荷重1kg/cm2をかけた状態でコート層上を200往復させることで擦傷試験を行った。光沢計(Gloss Master VG7000、日本電色工業(株)製)を用いて、耐擦傷試験前の塗膜の初期光沢(60度グロス、G0)と、擦傷試験後のコート層の光沢(60度グロス、G1)を測定し、下式により光沢保持率を算出し下記の評価基準により擦傷耐性を評価した。結果を表3に示した。
式(光沢保持率):(G1/G0)×100 (%)
【0120】
○(耐擦傷性が良好):光沢保持率が50%以上
△(耐擦傷性がやや不良):光沢保持率が45%以上、50%未満
×(耐擦傷性が不良):光沢保持率が45%未満
【0121】
[耐摩耗性]
厚さ1mm、長さ100mm×幅100mmの矩形のポリカーボネート板(「標準試験板」、日本テストパネル(株)製)に、バーコーダーNo.12を用いて、各活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した後、オーブンにて80℃で5分間乾燥させた。その後、120W/cmの高圧水銀ランプにより400mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射して、上記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させ、膜厚10~12μmのコート層を有する耐摩耗性試験用サンプルを作製した。
【0122】
上記サンプルについて、ASTM D-1044に準拠して測定した。すなわち、テーバー摩耗試験機((株)安田精機製作所製)を用いて、摩耗輪CS-10F、荷重500g、回転数300サイクルの条件で、コート層を摩耗させた。摩耗後、サンプルを洗浄し、ヘーズメータ(「HAZE METER NDH2000」、日本電色(株)製)によりサンプルのヘーズ(摩耗後ヘーズ(%))を測定し、摩耗前のサンプルのヘーズ(初期ヘーズ(%))との差異△Haze(摩耗後ヘーズ-初期ヘーズ)を算出した。得られた△Haze(%)の値に基づき、耐摩耗性を評価した。結果を表3に示した。
○(耐摩耗性が良好):△Hazeが30%未満
△(耐摩耗性がやや不良):△Hazeが30%以上、35%未満
×(耐摩耗性が不良):△Hazeが35%以上
【0123】
[耐カール性]
厚さ100μm、長さ100mm×幅100mmの矩形のPETフィルム(東洋紡(株)製)に、バーコーダーNo.8を用いて、各活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した後、オーブンにて80℃で5分間乾燥させた。その後、120W/cmの高圧水銀ランプにより800mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射して、上記硬化物を硬化させ、膜厚8~10μmのコート層を有する耐カール性試験用サンプルを作製した。
【0124】
上記サンプルについて、カールが生じているかどうかを目視で確認し、カールが生じていた場合、凸方向を下側にして水平面に載置し、四隅(4つの角)の水平面からの高さを測定して、これらの平均値を算出した。この平均値(高さの平均値)の値から、下記基準で耐カール性を評価した。結果を表3に示した。
○(耐カール性が良好):高さの平均値が0mm以上、10mm未満
△(耐カール性がやや不良):高さの平均値が10mm以上、15mm未満
×(耐カール性が不良):高さの平均値が15mm以上
【0125】
[耐候性]
厚さ100μm、長さ100mm×幅100mmの矩形のPETフィルム(東洋紡(株)製)に、バーコーダーNo.10を用いて、各活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した後、オーブンにて80℃で5分間乾燥させた。その後、120W/cmの高圧水銀ランプにより800mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射して、上記硬化物を硬化させ、膜厚10~12μmのコート層を有する耐候性試験用サンプルを作製した。
【0126】
上記サンプルについて、紫外線蛍光灯ウェザーメーターFUV(スガ試験機(株)製、光照射時:26W/m2、ブラックパネル温度70℃、湿潤時:湿度90%以上、50℃、光照射/湿潤サイクル=8時間/4時間)を用いて、1500時間暴露試験した。1500時間で表面を観察し、促進耐候性を以下の判定基準に従い評価した。
○(耐候性が良好):サンプルにクラックなし
×(耐候性が不良):サンプルにクラックあり
【0127】
【0128】
実施例1~9に示したように、化合物(C)(水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート)と化合物(D)(水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート)の合計(C+D)に対する化合物(B)(水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート)の重量比(B/(C+D))が0.79~1.23であって、化合物(C)と化合物(D)(水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレート)の合計(C+D)中の化合物(C)の重量割合(C/(C+D))が0.30~0.65であるウレタンアクリレート組成物を硬化した硬化物は、何れについても優れた鉛筆硬度(B~HB)、耐擦傷性、耐摩耗性、耐カール性耐候性を示し、高い硬度、優れた柔軟性及び耐候性を有することが分った。一方、比較例1、2は、重量割合(C/(C+D))が0.27、0.68、比較例3、4は化合物(B)又は化合物(C)を含まず、比較例5、6は重量比(B/C)が0.26、2.10と本開示の範囲外であって、鉛筆硬度(2B)、耐擦傷性、耐摩耗性、耐カール性、耐候性の何れかにおいて劣るものであった。