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特開2022-179833コンクリート養生装置およびコンクリート養生装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179833
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コンクリート養生装置およびコンクリート養生装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20221129BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20221129BHJP
   F28D 7/00 20060101ALI20221129BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
E04G21/02 104
F28F27/00 511D
F28D7/00 Z
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086592
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】東 邦和
【テーマコード(参考)】
2E172
3L103
4G055
【Fターム(参考)】
2E172EA11
2E172EA13
3L103AA35
3L103BB50
3L103CC01
3L103DD03
4G055AA01
4G055BA02
(57)【要約】
【課題】パイプに供給される冷媒の流量を制御することによりコンクリートを効果的に冷却すること。
【解決手段】コンクリート養生装置であって、打設後のコンクリートを冷却するために、コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を調整する場合に、冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、バイパスパイプに流れる冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、バイパスバルブよりも下流側に設けられ、少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御するための少なくとも1つの制御バルブと、バイパスバルブおよび所定バルブの少なくとも一方を制御して、少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御する制御部と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を調整する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御するための少なくとも1つの制御バルブと、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブの少なくとも一方を制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御部と、
を備えたコンクリート養生装置。
【請求項2】
前記バイパスバルブと前記制御バルブとの間に設けられた、前記冷媒供給部から供給される前記冷媒の流れの方向を反転させるための方向反転パイプ機構と、
前記方向反転パイプ機構に設けられ、前記方向反転パイプ機構に流れる前記冷媒の流量を制御するための反転機構バルブと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流れの方向を反転させる場合に、前記反転機構バルブをさらに制御する、請求項1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの冷却パイプに取り付けられ、前記冷媒の流量を計測する流量計をさらに備え、
前記制御部は、前記流量計で計測された前記冷媒の流量に基づいて、前記バイパスバルブおよび前記制御バルブの少なくとも一方を制御する、請求項1または2に記載のコンクリート養生装置。
【請求項4】
前記冷却パイプを複数有し、
前記流量計は、複数の前記冷却パイプのうちの1つに取り付けられ、
前記制御部は、前記流量計で計測された前記冷媒の流量に基づいて、前記バイパスバルブおよび前記制御バルブの少なくとも一方を制御して、前記流量計が取り付けられた冷却パイプ以外の冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する、請求項3に記載のコンクリート養生装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの冷却パイプは、前記冷媒供給部から送出された前記冷媒が、前記冷媒供給部へ戻り、前記冷媒供給部から再度送出されて循環するように構成された循環型のパイプ構成となっている、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート養生装置。
【請求項6】
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部の設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を調節する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御するための少なくとも1つの制御バルブと、
を備えたコンクリート養生装置の制御方法であって、
前記少なくとも1つの冷却パイプに前記冷媒を連続供給する冷媒供給ステップと、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブの少なくとも一方を制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御ステップと、
を含むコンクリート養生装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生装置およびコンクリート養生装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水とセメントとの化学反応によって硬化する際に熱を発生する。特に、コンクリート打設後数日は、反応が急速に進み多量の熱が発生するため、熱の影響によりコンクリートのひび割れが生じる場合がある。そのため、コンクリート打設時のひび割れ対策として、パイプクーリングによってコンクリートの温度上昇を抑制して、ひび割れの低減が図られている。パイプクーリングを行う場合、パイプの配置やパイプ径、クーリング水の流量や温度設定等について適切に管理する必要がある。
【0003】
上記技術分野において、特許文献1には、コンクリートを冷却するために、パイプを循環させる流体の温度をコンクリートの外部温度と内部温度との温度差に基づいて、自動制御する技術が開示されている(同文献請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-89357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリートの内部温度と外部温度とに基づいた温度制御を行うものであり、パイプに供給される冷媒の流量を制御することによりコンクリートを冷却することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置は、
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部に設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を連続供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を調整する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御するための少なくとも1つの制御バルブと、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブの少なくとも一方を制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御部と、
を備えた。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置の制御方法は、
打設後のコンクリートを冷却するために、前記コンクリートの内部の設置された少なくとも1つの冷却パイプに冷媒を供給する冷媒供給部と、
前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を調節する場合に、前記冷媒を迂回させるためのバイパス経路を形成するバイパスパイプと、
前記バイパスパイプに流れる冷媒の流量を制御するためのバイパスバルブと、
前記バイパスバルブよりも下流側に設けられ、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる冷媒の流量を制御するための少なくとも1つの制御バルブと、
を備えたコンクリート養生装置の制御方法であって、
前記少なくとも1つの冷却パイプに前記冷媒を連続供給する冷媒供給ステップと、
前記バイパスバルブおよび前記制御バルブの少なくとも一方を制御して、前記少なくとも1つの冷却パイプに流れる前記冷媒の流量を制御する制御ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パイプに供給される冷媒の流量を制御することによりコンクリートを効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置によるコンクリート養生の概要を説明するための図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を説明するための図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るコンクリート養生装置によるコンクリート養生の概要を説明するための図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を説明するための図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を説明するための図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るコンクリート養生装置の他の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の好ましい実施形態としてのコンクリート養生装置100について、図1および図2を用いて説明する。コンクリート養生装置100は、打設後のコンクリート110を冷却するために、コンクリート110の内部に配置された冷却パイプ122に水などの冷媒を供給する。
【0012】
まず、図1を参照して、コンクリート養生装置100の動作の概要を説明する。打設されたコンクリート110の内部に設置される冷却パイプ122は、コンクリート110の内部を冷媒が循環するように設置されている。そして、冷却パイプ122に接続された送水用パイプ121を介して冷媒供給装置120から冷媒を供給すると、供給された冷媒は、コンクリート110の内部を通過して、図示した例では、再び冷媒供給装置120へと戻ってくるようになっている。このように、コンクリート養生装置100においては、コンクリート110の内部に冷媒を流すことにより、コンクリート110を冷却している。
【0013】
そして、コンクリート養生装置100は、冷却パイプ122に流す冷媒の流量を制御する際に、バイパスパイプ123に冷媒を流しつつ、冷却パイプ122に流す冷媒の流量を調整する。図示していないが、冷却パイプ122には、後述する制御バルブが取り付けられており、コンクリート養生装置100は、この制御バルブの開閉度を制御することにより、冷却パイプ122に流す冷媒の流量を調整している。
【0014】
冷却パイプ122に冷媒を流している状態では、制御バルブが取り付けられている部分には、高い水圧がかかっている状態となっている。このような状態において、制御バルブの開閉度を制御しようとすると、バルブ部分にかかる高水圧(衝撃圧)により、所望の流量制御が達成できない場合が発生する。そのため、このような高水圧を回避するために、一旦、バイパスパイプ123に冷媒を逃がしてやり、制御バルブに係る圧力を低減させることにより、制御バルブによる冷媒流量の制御を容易に行えるようにしている。
【0015】
すなわち、冷却パイプ122に流れる冷媒の流量を調整したい場合には、バイパスパイプ123に設けられた後述するバイパスバルブ(不図示)を開放することにより、別の流路(バイパス経路)を形成して、冷却パイプ122にかかる水圧を低減する。このように、コンクリート養生装置100においては、バイパス経路を利用しつつ、冷却パイプ122に流れる冷媒の流量を制御している。
【0016】
また、冷媒供給装置120は、冷媒の供給を止めることなく、供給し続ける(連続供給)。そのため、冷却パイプ122に供給される冷媒の流量の調整は、冷却パイプ122のそれぞれに設けられた制御バルブ(不図示)の開閉度合により行われる。
【0017】
コンクリート養生装置100においては、冷媒供給装置120から供給された冷媒は、冷却パイプ122を通過し、再び、冷媒供給装置120に戻るような、冷媒が循環する循環型の養生装置となっているが、冷媒が循環しないものであってもよい。
【0018】
例えば、山間部などの現場において、付近に河川などの水源があれば、河川から冷媒としての水を取水し、冷却に使用した水を循環させずに、コンクリート110の冷却に使用した冷却水を取水した河川に戻すようにしてもよい。なお、冷媒を循環させる場合には、冷媒供給装置120に戻ってきた冷媒の温度を調節するための温度調節機構を設けるのが好ましい。
【0019】
ここで、冷却パイプ122に供給される冷媒は、水が代表的であるが、供給される冷媒はこれには限定されず、コンクリート110を冷却するのみ適した他の液体であってもよい。また、冷却パイプ122に供給される冷媒は、液体には限定されず、例えば、ガスなどの気体であってもよい。
【0020】
次に、図2を参照して、コンクリート養生装置100の構成の詳細について説明する。コンクリート養生装置100は、冷媒供給部としてのポンプ210、冷却パイプ220および制御部230を備えている。
【0021】
ポンプ210の流出口211から送出された冷媒としての冷却水は、第1送水用パイプ213を通過し、さらに、冷却パイプ220の流入口部分に設けられた制御バルブ221を通過して、冷却パイプ220に流れ込む。
【0022】
冷却パイプ220を通過し、冷却パイプ220の流出口部分に到達した冷却水は、冷却パイプ220の流出口に接続されている第2送水用パイプ214に流れ込む。第2送水用パイプ214に流れ込んだ冷却水は、第2送水用パイプ214を通過し、最終的に、ポンプ210の流入口212に到達し、ポンプ210へと戻される。
【0023】
なお、図示していないが、上述したように、第2送水用パイプ214と流入口212との間に、冷却パイプ220などを循環してきた冷却水を冷やすための冷却部(温度調節機構)を設けることが好ましい。冷却水を循環させない場合、第2送水用パイプ214を通過してきた冷却水を排水し、河川等の水源から取水した水を、ポンプ210の流入口212に供給するのが好ましい。
【0024】
また、図示したように、冷却パイプには、流量計222が設けられていることが好ましいが、流量計222は、設けられていなくてもよい。
【0025】
そして、制御部230は、制御バルブ221を制御して、冷却パイプ220に流れる冷却水の流量を制御する。制御部230は、例えば、流量計222で計測された冷却水の流量に応じて、制御バルブ221の開閉度合を制御し、冷却水の流量を調節する。また、流量計222が設けられていない場合には、制御バルブ221の開閉度と流量との関係を事前に計測しておき、制御部230は、これに基づいて、冷却水の流量を制御してもよい。なお、制御バルブ221は、ポンプ210から見て下流側に設けられている。
【0026】
そして、冷却パイプ220に流れる冷却水の流量を制御する場合、制御バルブ221の開閉度を調整する前に、まず、制御部230は、バイパスバルブ242を開放して、バイパスパイプ241に冷却水を流して、制御バルブ221側に係る冷却水の水圧を低減させる。
【0027】
この場合、冷却水は、バイパス流路部240を流れ、ポンプ210へ戻ってくる。つまり、バイパスバルブ242を開放した場合、ポンプ210の流出口211から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を通過し、冷却水の一部が、バイパスパイプ241側へ流れ込む。バイパスパイプ241へ流れ込んだ冷却水は、バイパスパイプ241の内部を進み、その後、第2送水用パイプ214へ流れ込む。第2送水用パイプ214へ流れ込んだ冷却水は、第2送水用パイプ214を進み、ポンプ210の流入口212へ到達し、流入口212からポンプ210へ流れ込むようになっている。
【0028】
このように、制御部230は、バイパスバルブ242の開閉度を制御しつつ、制御バルブ221部分にかかる水圧が低減した段階で、制御バルブ221の開閉度を調整する。そして、制御部230は、制御バルブ221の開閉度の調整が完了したら、バイパスバルブ242を閉じて、バイパス流路部240への冷却水の流入を遮断する。以上により、制御バルブ221の開閉度の制御が完了し、冷却パイプ220へ流れる冷却水の流量の制御が完了する。なお、制御部230は、バイパスバルブ242を開くことにより、冷却水の一部をバイパス流路部240へ流すことにより、冷却パイプ220へ流れる冷却水の流量を制御するようにしてもよい。
【0029】
本実施形態によれば、バイパス流路部を設け、設けたバイパス流路部に冷却水を逃がしつつ、制御バルブの開閉度を調整するので、冷却パイプ220へ流れる冷却水の流量の制御を容易に行うことが可能となり、効果的、迅速にコンクリートを冷却することが可能となる。
【0030】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るコンクリート養生装置300について、図3および図4を参照して説明する。本実施形態に係るコンクリート養生装置300は、上記第1実施形態と比べると、冷却パイプを複数有している点で異なる。その他の構成および動作は上記第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0031】
図3を参照して、コンクリート養生装置300の動作の概要を説明する。打設されたコンクリート110の内部には、3系統(3本)の冷却パイプ122が設けられている。このように、コンクリート110の内部に複数の冷却パイプ122を設けているのは、冷却対象となるコンクリート110が、いわゆるマスコンクリートと呼ばれる、大規模なコンクリート構造物であるからである。すなわち、大規模なコンクリート構造物の場合には、より広い範囲を冷却しなければならないため、複数の冷却パイプ122を設ける必要があるからである。
【0032】
そして、コンクリート養生装置300では、送水用パイプ121が途中で3系統に分岐し、分岐した送水用パイプ121が、3系統ある冷却パイプ122のそれぞれに接続され、冷媒が、冷却パイプ122に供給されるようになっている。冷却パイプ122のそれぞれに供給された冷媒は、3系統の冷却パイプ122の内部を通過して、再び冷媒供給装置120へと戻ってくる。本実施形態においては、このようにして、コンクリート110を冷却している。
【0033】
次に、図4を参照して、コンクリート養生装置300の構成の詳細について説明する。コンクリート養生装置300は、冷却パイプ410,420をさらに備える。
【0034】
ポンプ210の流出口211から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を通過し、まず、分岐部422において、2方向に分岐され、一方は、冷却パイプ420へ流れ込み、他方は、さらに、第1送水用パイプ213を進む。そして、第1送水用パイプ213を進んだ冷却水は、分岐部412において、さらに、2方向に分岐され、一方は、冷却パイプ410へ流れ込み、他方は、第1送水用パイプ213を進んで、冷却パイプ220へ流れ込む。
【0035】
このように、コンクリート養生装置300においては、ポンプ210から送出された冷却水は、3系統の冷却パイプ220,410,420に流れ込むように分岐され、より広い範囲を冷却できるようにしている。なお、ここでは、3系統に分岐された冷却パイプ220,410,420を例に説明をしたが、冷却パイプの分岐数は、3系統には限定されず、2系統であっても、4系統以上であってもよく、冷却対象範囲の大きさなどに応じて、適宜決定すればよい。
【0036】
3系統の冷却パイプ220,410,420を通過した冷却水は、第2送水用パイプ214において、合流し、最終的には、ポンプ210の流入口212からポンプ210へ戻るような、循環経路を通過するようになっている。なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、冷却水を循環させないで、流入口212の手前で排出し、新たに取水した水などを流入口212へ供給してもよい。
【0037】
また、冷却パイプ220には、冷却パイプ220に流れる冷却水の流量を計測するための流量計222が取り付けられているが、他の2系統の冷却パイプ410,420には、流量計が取り付けられていない。
【0038】
この場合、制御部430は、流量計222で計測された冷却パイプ220に流れる冷却水の流量に基づいて、流量計が取り付けられていない他の冷却パイプ410,420に流れる冷却水の流量を制御する。例えば、制御部430は、流量計222の計測値から、冷却パイプ410に流す冷却水の流量を、冷却パイプ220に流れている冷却水の流量と同じ流量とする場合、制御バルブ411の開度を、制御バルブ221の開度に所定係数(1.0)を乗じた開度とするようにして、流量を制御する。
【0039】
また、例えば、制御部430は、冷却パイプ420に流す冷却水の流量を冷却パイプ220に流れている冷却水の流量よりも小さくしたい場合には、制御バルブ421の開度を、制御バルブ221の開度に所定係数(例えば、0.8)を乗じた開度とするようにして、流量を制御する。
【0040】
さらに、例えば、制御部430は、冷却パイプ420の全長が冷却パイプ220の全長よりも短い場合や、冷却パイプ420の直径が冷却パイプ220の直径よりも小さい場合などに、上述の所定係数を用いた同様の制御を行う。
【0041】
このように、制御部430においては、所定係数を用いた制御を行うので、例えば、設置スペースやコスト等の関係で、冷却パイプの全てに流量計を取り付けられない場合などに、このような制御を行うと有利となる。なお、冷却パイプ410,420に流量計を取り付けてもよい。この場合、制御部430は、冷却パイプ410,420のそれぞれに取り付けた流量計の計測値に基づいて、制御バルブ411,421を制御せいて、冷却パイプ410,420に流れる冷却水の流量を制御する。なお、制御バルブ411,421は、ポンプ210から見て下流側に設けられている。
【0042】
本実施形態によれば、複数の冷却パイプによりコンクリートを冷却できるので、広範囲のコンクリートであっても効率的に、迅速に冷却することができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係るコンクリート養生装置500について、図5および図6を参照して説明する。本実施形態に係るコンクリート養生装置500は、上記第1実施形態および第2実施形態と比べると、方向反転機構を有している点で異なる。その他の構成および動作は上記第1実施形態および第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0044】
コンクリート養生装置500は、方向反転機構510を備える。方向反転機構510は、反転機構バルブ511,512,513,514、第1反転用パイプ515および第2反転用パイプ516を含む。第1反転用パイプ515および第2反転用パイプ516は、冷却水の流れの方向を反転させる場合に、冷却水の流れの方向を反転させるための流路を形成する。
【0045】
上記第1実施形態および第2実施形態に示した、コンクリート養生装置100,300においては、冷却水を一定の方向に流しているが、コンクリート養生装置500においては、冷却水の流れの方向を反転させて、順方向(黒矢印)の冷却水の流れと、逆方向(破線矢印)の冷却水の流れを作りだすことができるようになっている。
【0046】
マスコンクリートのような、大規模なコンクリート建造物の場合、コンクリート110の内部に設置する冷却パイプ220,410,420の全長は長くなる傾向にある。このように、冷却パイプ220,410,420の全長が長くなると、各冷却パイプの入口付近の冷却水の温度と、出口付近の冷却水の温度とに差が生じる。そのため、入口付近のコンクリート110の冷却は、促進されるのに対して、出口付近においては、コンクリート110の冷却は、鈍化するようになる。
【0047】
すなわち、冷却パイプ220,410,420の全長が長くなると、内部を通過する冷却水は、入口付近では、より多くの熱を吸収して、コンクリート110をよく冷やすことができる。これに対して、出口付近では、冷却水は、そこに到達するまでの過程において、多くの熱を吸収してきているため、熱の吸収量が減り、コンクリート110の冷却能力が弱くなる。
【0048】
そのため、コンクリート養生装置500においては、方向反転機構510を設けて、冷却水の流れの方向を入れ替えることにより、冷却パイプ220,410,420の入口付近と出口付近とにおける温度差を解消できるようにしている。これにより、冷却パイプ220,410,420の入口付近と出口付近とにおける冷却効率やコンクリート温度の不均衡を是正できるようにしている。
【0049】
ここで、冷却水を順方向(黒矢印)に流す場合の流路について説明する。冷却水を順方向に流す場合、方向反転機構510における各バルブの開閉状況は、反転機構バルブ511,512が開(オープン)となり、反転機構バルブ513,514が閉(クローズ)となっている。
【0050】
そして、ポンプ210から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を流れ、反転機構バルブ512を直進し、分岐部412,422へ向けて流れていく。そして、冷却パイプ220,410,420を流れてきた冷却水は、第2送水用パイプ214で合流し、第2送水用パイプ214を流れ、反転機構バルブ511を直進し、ポンプ210の流入口212へと到達する。以上が、冷却水が順方向に流れる場合の流路となる。
【0051】
次に、冷却水を逆方向(破線矢印)に流す場合の流路について説明する。冷却水を逆方向に流す場合、方向反転機構510における各バルブの開閉状況は、反転機構バルブ511,512が閉(クローズ)となり、反転機構バルブ513,514が開(オープン)となっている。なお、方向反転機構510は、順方向において、ポンプ210から見て下流側で、ポンプ210と制御バルブ221,411,4112との間に設けられている。
【0052】
そして、ポンプ210から送出された冷却水は、第1送水用パイプ213を流れていくが、反転機構バルブ512が閉じられているので、順方向の場合とは、異なる経路へ進入する。冷却水は、反転機構バルブ514の方向、つまり、第1反転用パイプ515を進み、その後、第2送水用パイプ214を通過して、冷却パイプ220,410,420の第2送水用パイプ214における各分岐部から冷却パイプ220,410,420へ向けて進んで行く。
【0053】
冷却パイプ220,410,420を進んだ冷却水は、第1送水用パイプ213において、合流し、ポンプ210へ向けて第1送水用パイプ213を下って行く。その後、冷却水は、第2反転用パイプ516へ進入し、反転機構バルブ513を通過し、第2送水用パイプ214へと戻る。その後は、第2送水用パイプ214を進んで、ポンプ210の流入口212へと到達する。以上が、冷却水が逆方向に流れる場合の流路となる。
【0054】
次に、制御部530による冷却水の流量制御および水流反転制御について説明する。制御部530は、制御バルブ221,411,421および反転機構バルブ511,512,513,514の開閉度や開閉を制御する。
【0055】
<1>まず、冷却パイプ220,410,420に流す冷却水の流量の制御について説明する。ポンプ210を稼働し、各パイプに冷却水を流している間は、ポンプ210は、定速で回転し続け、冷却水を送出し続けている。そのため、制御バルブ221,411,421には、大きな水圧がかかり続けている。本実施形態のように、マスコンクリートのような大規模な構造物の場合には、相当な水圧をかけなければ、冷却水を全体にいきわたらせることができない。
【0056】
このように、高水圧の冷却水が流れている場合、制御バルブ221,411,421を制御しようとする場合、例えば、冷却パイプ220に流れ込む冷却水の流量をゼロにするために、制御バルブ221を閉じたとしても、冷却パイプ220の流量はわずかながら残ってしまうことがある。
【0057】
そのため、制御部530は、制御バルブ221,411,421の開閉を制御する前に、これらのバルブの近傍にかかる冷却水の水圧を低減するために、冷却水をバイパス流路部240へ流すようにバイパス流路部240の各構成を制御する。具体的には、制御部530は、バイパスバルブ242を開けて、バイパスパイプ241へ冷却水が流れ込むようにする。このように、バイパス流路部240へ冷却水が流れ込むと、制御バルブ221,411,421へ到達する冷却水の量が減少し、当該部分における水圧を下げることができるようになる。
【0058】
そして、制御部530は、冷却水をバイパス流路部240へ流すように制御しつつ、制御バルブ221,411,421の開閉度を制御し、冷却パイプ220,410,420のそれぞれに流れ込む冷却水の流量を制御する。
【0059】
<2>次に、冷却水の水流を反転させる場合の制御について説明する。上述したように、ポンプ210は、冷却水を送出し続けているため、例えば、順方向であれば、反転機構バルブ511,512に水圧がかかった状態における、反転機構バルブ511,512,513,514の制御は、困難な場合がある。
【0060】
そのため、制御部530は、まず、反転機構バルブ511,512,513,514を制御する前に、これらのバルブ等にかかる冷却水の水圧を低減するために、冷却水をバイパス流路へ流すようにバイパス流路部240の各構成を制御する。具体的には、制御部530は、上述したのと同様に、バイパスバルブ242を開けて、バイパスパイプ241へ冷却水が流れ込むようにする。これにより、反転機構バルブ511,512,513,514にかかる水圧を低減することができるので、制御部530は、このような状態において、反転機構バルブ511,512,513,514を制御して、冷却水の水流を反転させる。制御部530は、冷却水の水流の反転が必要になる度に、このような制御を行う。
【0061】
次に、図6を参照して、コンクリート養生装置600について説明する。図5に示したコンクリート養生装置500においては、冷却パイプ220にのみ流量計222が設けられていたが、図6に示したコンクリート養生装置600においては、冷却パイプ410,420にも流量計612,622が設けられている。つまり、図5に示したコンクリート養生装置500においては、流量計222に基づいて、他の冷却パイプ410,420に流れる冷却水の流量を制御していたが、図6に示したコンクリート養生装置600においては、冷却パイプ220,410,420のそれぞれに流れる冷却水の流量の制御は、冷却パイプ220,410,420のそれぞれに取り付けられた流量計222,612,622に基づいて行われる。このように、冷却パイプ220,410,420のそれぞれに流量計222,612,622を取り付けることにより、それぞれの冷却パイプ220,410,420をそれぞれの流量計222,612,622に基づいて、個別に流量制御することが可能となり、より細かいコンクリート110の温度制御を行うことが可能となる。
【0062】
本実施形態によれば、冷却水の流れの方向を反転させることができるので、マスコンクリートのような大規模なコンクリート建造物であっても効率的、迅速に冷却することができる。
【0063】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
100 コンクリート養生装置
110 コンクリート
120 冷媒供給装置
121 送水用パイプ
122 冷却パイプ
123 バイパスパイプ
210 ポンプ
211 流出口
212 流入口
213 第1送水用パイプ
214 第2送水用パイプ
220 冷却パイプ
221 制御バルブ
222 流量計
230 制御部
240 バイパス流路部
241 バイパスパイプ
242 バイパスバルブ
300 コンクリート養生装置
410 冷却パイプ
411 制御バルブ
412 分岐部
420 冷却パイプ
421 制御バルブ
422 分岐部
430 制御部
500 コンクリート養生装置
510 方向反転機構
511 反転機構バルブ
512 反転機構バルブ
513 反転機構バルブ
514 反転機構バルブ
515 第1反転用パイプ
516 第2反転用パイプ
520 反転用バルブ及び流量計
530 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6