(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179840
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】単木モデリングシステム及び単木モデリング方法
(51)【国際特許分類】
G06T 17/20 20060101AFI20221129BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G06T17/20
G01B11/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086599
(22)【出願日】2021-05-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521224642
【氏名又は名称】株式会社マプリィ
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】山口 圭司
【テーマコード(参考)】
2F065
5B080
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB06
2F065DD06
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065MM16
2F065QQ17
2F065QQ31
2F065UU05
5B080AA13
5B080AA17
5B080CA00
5B080FA00
5B080FA05
5B080FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単木の幹の三次元モデルとして形成する単木モデリングシステム及び単木モデリング方法を提供する。
【解決手段】方法は、所定の測定地点から森林内の単木に向けて三次元レーザースキャナのレーザーを照射することで、単木の三次元点群データを取得しS101、取得した三次元点群データを、多角形で構成するメッシュデータに変換することで、単木の樹皮を示す単木メッシュデータを生成するS102。生成された単木メッシュデータに対して水平方向の同一面に位置する複数の点を、単木の樹皮が構成する円の一部とみなして、複数の点に円を外挿し、外挿した円の半径を用いて、単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを、単木の樹皮の仮想データとして推定しS103、単木メッシュデータと、推定された仮想データと、仮想データの円の半径と、単木の樹高情報とに基づいて、三次元円柱モデルを、単木の幹の三次元モデルとして形成するS104。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定地点から森林内の単木に向けて三次元レーザースキャナのレーザーを照射することで、当該単木の三次元点群データを取得する取得制御部と、
前記取得された三次元点群データを、多角形から構成されるメッシュデータに変換することで、前記単木の樹皮を示す単木メッシュデータを生成する生成制御部と、
前記生成された単木メッシュデータに対して水平方向の同一面に位置する複数の点を、前記単木の樹皮が構成する円の一部とみなして、当該複数の点に円を外挿し、当該外挿した円の半径を用いて、前記単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを、単木の樹皮の仮想データとして推定する推定制御部と、
前記単木メッシュデータと、前記推定された仮想データと、当該仮想データの円の半径と、前記単木の樹高情報と、に基づいて、三次元円柱モデルを、前記単木の幹の三次元モデルとして形成する形成制御部と、
を備える単木モデリングシステム。
【請求項2】
前記生成制御部は、前記メッシュデータのうち、単木の前面部分の樹皮に対応した円柱形に類似する形状のメッシュデータ、又は所定の高さを有するメッシュデータを、前記単木メッシュデータとして抽出して取得する、
請求項1に記載の単木モデリングシステム。
【請求項3】
前記形成制御部は、地面から、前記単木メッシュデータ及び前記仮想データの上端までのデータが存在する部分の第一の高さを算出し、前記単木の樹高情報から前記第一の高さを減算して、データが存在しない部分の第二の高さを算出し、前記単木メッシュデータ及び前記仮想データの上端から、前記単木の樹高情報まで、前記半径と前記第二の高さとを用いた三次元円柱モデルを形成して、当該三次元円柱モデルと、前記単木メッシュデータと、前記仮想データとの全部を、前記単木の幹の三次元モデルとして形成する、
請求項1又は2に記載の単木モデリングシステム。
【請求項4】
所定の測定地点から森林内の単木に向けて三次元レーザースキャナのレーザーを照射することで、当該単木の三次元点群データを取得する取得制御工程と、
前記取得された三次元点群データを、多角形から構成されるメッシュデータに変換することで、前記単木の樹皮を示す単木メッシュデータを生成する生成制御工程と、
前記生成された単木メッシュデータに対して水平方向の同一面に位置する複数の点を、前記単木の樹皮が構成する円の一部とみなして、当該複数の点に円を外挿し、当該外挿した円の半径を用いて、前記単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを、単木の樹皮の仮想データとして推定する推定制御工程と、
前記単木メッシュデータと、前記推定された仮想データと、当該仮想データの円の半径と、前記単木の樹高情報と、に基づいて、三次元円柱モデルを、前記単木の幹の三次元モデルとして形成する形成制御工程と、
を備える単木モデリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単木モデリングシステム及び単木モデリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単木(樹木)が密集した森林には、水土保全機能、地球環境保全機能、生物保護機能等の多面的な機能があるため、森林を構成する単木の情報を正確に把握する取り組みが行われている。最も原始的な方法は、例えば、測定者が、森林の中に入って、複数の単木のうち、一つの単木の情報、例えば、樹木位置、胸高直径、樹高等の樹木情報を1本ずつ測定する方法が挙げられるが、このような方法では、多大な作業時間が掛かるとともに、測定者の技量によって、正確な樹木情報を取得することが出来ないという課題があった。
【0003】
そこで、近年では、スキャナを用いた樹木情報の取得方法が開発されている。例えば、特開2010-96752号公報(特許文献1)には、距離データ取得手段と、特徴データ抽出手段と、マッチング手段と、単木抽出手段と、樹木情報検出手段と、を有する樹木情報計測装置及び樹木情報計測方法が開示されている。距離データ取得手段は、複数の地点で被計測物の任意の部位までの距離データを計測し、特徴データ抽出手段は、距離データから、樹木の幹に相当するひとまとまりの特徴データを抽出する。マッチング手段は、複数地点の距離データをスキャンマッチングにより対応させ、三次元の座標系に特定し、単木抽出手段は、三次元の座標系に特定された座標点データから単木を抽出する。樹木情報検出手段は、樹高、幹の直径、樹冠長又は樹冠直径の1以上を含む樹木情報を単木毎に検出する。これにより、高精度な樹木情報を少ない労力で取得出来るとしている。
【0004】
又、特開2012-98247号公報(特許文献2)には、上空からレーザパルスを掃射し、その反射信号波形を計測する航空レーザー計測により取得された森林の三次元の点群データを用いて樹木の位置を検出する樹木位置検出装置が開示されている。この樹木位置検出装置には、正規化手段と、枝下層設定手段と、平面投影手段と、位置検出手段と、を備える。正規化手段は、点群データが表す高さを地表からの実質高さに換算して正規化点群データを生成し、枝下層設定手段は、当該森林の樹冠領域とその下の枝下領域とでの正規化点群データの分布の違いに基づいて、当該森林内で一定した高さ範囲を枝下層として設定する。平面投影手段は、枝下層に属する前記正規化点群データを抽出し、地表に沿った平面に投影して二次元頻度分布を求め、位置検出手段は、所定基準に基づいて、二次元頻度分布にて正規化点群データが集まる箇所を検出して樹木位置とする。これにより、航空レーザー計測のデータを用いて現地調査に頼らずに、かつ、精度が向上した樹木位置の検出が可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-96752号公報
【特許文献2】特開2012-98247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、複数地点の距離データをマッチングするため、複数地点の距離データを必要とし、距離データの取得に時間や手間を要するという課題がある。又、複数地点の距離データは情報量が極めて多く、処理に時間が掛かるという課題がある。更に、特許文献2に記載の技術では、正規化処理が必要で、航空レーザー計測のデータが必要であるという課題がある。
【0007】
一方、立木の材積(体積)や森林の蓄積の算出には、森林を構成する単木の三次元モデルがあると便利であるが、単木の三次元モデルの作成には、少なくとも単木の前面部分と背面部分の二方向から三次元点群データを取得する必要があり、三次元点群データの取得に時間や手間が掛かるという課題がある。上述の特許文献1-2に記載の技術では、このような課題を解決することが出来ない。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、単木の一部分に対する三次元レーザースキャナのスキャンにより、単木の三次元モデルを簡単に素早く形成することが可能な単木モデリングシステム及び単木モデリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る単木モデリングシステムは、取得制御部と、生成制御部と、推定制御部と、形成制御部と、を備える。取得制御部は、所定の測定地点から森林内の単木に向けて三次元レーザースキャナのレーザーを照射することで、当該単木の三次元点群データを取得する。生成制御部は、前記取得された三次元点群データを、多角形から構成されるメッシュデータに変換することで、前記単木の樹皮を示す単木メッシュデータを生成する。推定制御部は、前記生成された単木メッシュデータに対して水平方向の同一面に位置する複数の点を、前記単木の樹皮が構成する円の一部とみなして、当該複数の点に円を外挿し、当該外挿した円の半径を用いて、前記単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを、単木の樹皮の仮想データとして推定する。形成制御部は、前記単木メッシュデータと、前記推定された仮想データと、当該仮想データの円の半径と、前記単木の樹高情報と、に基づいて、三次元円柱モデルを、前記単木の幹の三次元モデルとして形成する。
【0010】
本発明に係る単木モデリング方法は、取得制御工程と、生成制御工程と、推定制御工程と、形成制御工程と、を備える。単木モデリング方法の各工程は、単木モデリングシステムの各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単木の一部分に対する三次元レーザースキャナのスキャンにより、単木の三次元モデルを簡単に素早く形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る単木モデリングシステムの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る単木モデリング方法の実行手順を示すためのフローチャートである。
【
図3】測定者が三次元レーザースキャナでスキャンする場合の一例を示す図(
図3A)と、測定者が三次元レーザースキャナでスキャンした三次元点群データの一例を示す図(
図3B)と、である。
【
図4】三次元点群データの一例を示す図(
図4A)と、実際に得られた三次元点群データの一例を示す図(
図4B)と、である。
【
図5】メッシュデータの一例を示す図(
図5A)と、実際に得られたメッシュデータの一例を示す図(
図5B)と、である。
【
図6】単木メッシュデータの複数の点に円を外挿する場合の一例を示す図(
図6A)と、単木メッシュデータに対して鉛直方向に段階的に円を外挿する場合の一例を示す図(
図6B)と、である。
【
図7】単木メッシュデータと仮想データとを組み合わせた場合の一例を示す図である。
【
図8】単木の幹の三次元モデルを形成する場合の一例を示す図である。
【
図9】複数の単木メッシュデータの一例を示す図(
図9A)と、複数の単木の幹の三次元モデルの一例を示す図(
図9B)と、である。
【
図10】測定者が森林で動き周ってスキャンする場合の一例を示す図である。
【
図11】森林の三次元データプラットフォームの一例を示す図(
図11A)と、木取りシミュレーションの一例を示す図(
図11B)と、である。
【
図12】単木の幹の三次元モデルに樹冠データを合成した場合の一例を示す図(
図12A)と、単木の幹の三次元モデルに対応するデータベースの一例を示す図(
図11B)と、である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0014】
本発明に係る単木モデリングシステム1は、
図1に示すように、三次元レーザースキャナ10と、端末装置11とから基本的に構成される。三次元レーザースキャナ10は、森林内の単木の三次元点群データを取得することが出来る。
【0015】
ここで、三次元レーザースキャナ10の構成に特に問題ないが、例えば、三次元レーザースキャナ10は、対象物にパルス状のレーザーを発光するレーザー照射部と、対象物に照射したレーザーに対する散乱光を検出する散乱光検出部と、検出された散乱光に基づいて、三次元レーザースキャナ10から対象物までの距離や対象物の表面における散乱光が散乱した位置の点群の三次元データを算出する点群算出部と、を備える。三次元レーザースキャナ10の種類に特に限定は無いが、例えば、Lidar(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)センサーを挙げることが出来る。
【0016】
又、端末装置11は、画面を表示する表示部と、ユーザの操作により所定の指示の入力を受け付ける受付部(入力部)と、データを記憶させる記憶部と、各部を制御する制御部と、データを出力する出力部と、端末装置11の位置情報(例えば、GPS位置情報、2周波マルチGNSS受信機で得られる位置情報)を取得する通信部と、を備えている。
【0017】
端末装置11は、例えば、ディスクトップ型の端末装置、タブレット型端末装置、携帯用のノートパソコン、タッチパネル付きの携帯端末装置(スマートフォン)等を挙げることが出来る。尚、端末装置11は、三次元レーザースキャナで取得した単木の三次元点群データを分析したり解析したりすることが出来る装置であれば、特に限定は無い。
【0018】
ここで、端末装置11に三次元レーザースキャナ10が内蔵されている場合もあるため、その場合は、端末装置11が三次元レーザースキャナ10を兼ねても構わない。
【0019】
さて、端末装置11は、図示しないCPU、ROM、RAM、HDD、SSD等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD、SSD等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各制御部についても、CPUがプログラムを実行することで当該各制御部を実現する。
【0020】
次に、
図1-
図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、森林内の単木の樹木情報を収集する測定者が、単木モデリングシステム1の三次元レーザースキャナ10と端末装置11とを携帯して森林内に訪れ、三次元レーザースキャナ10と端末装置11を起動させる。そして、測定者が、測定を希望する単木の近くの所定の測定地点へ行き、三次元レーザースキャナ10を単木に向けて、端末装置11に測定キーを入力する。すると、端末装置11の取得制御部101は、三次元レーザースキャナ10のレーザーを照射することで、単木の三次元点群データを取得する(
図2:S101)。
【0021】
ここで、取得制御部101の取得方法に特に限定は無い。例えば、測定者は、
図3Aに示すように、三次元レーザースキャナ10のレーザーの発光部を単木に向けて、測定キーを端末装置11に入力する。すると、取得制御部101は、測定キーの入力を受けて、三次元レーザースキャナ10のレーザーの照射を開始する。森林内の単木に照射されたレーザーは、三次元レーザースキャナ10に対向する単木の前面部分(例えば、樹皮の表面の前面部分)で反射して散乱光として散乱する。そして、三次元レーザースキャナ10は、散乱光を検出することで、散乱光が散乱した位置の三次元点群データを取得する。
【0022】
ここで、三次元レーザースキャナ10は、単木の前面部分以外から散乱した散乱光も検出するため、三次元点群データには、
図3Bに示すように、単木の前面部分を示すデータの他に、単木の根本付近の地面を示すデータも含まれる場合がある。
【0023】
さて、取得制御部101は、三次元点群データを取得する際に、測定地点における位置情報を取得してもよい。例えば、取得制御部101は、三次元点群データを取得すると、端末装置11の通信部を使って、端末装置11の位置情報を取得し、当該端末装置11の位置情報を三次元点群データに関連付けて記憶させる。これにより、三次元点群データを測定地点の位置情報に関連付けておくことが出来る。この位置情報は、例えば、単木の樹高情報を取得する際に利用してもよい(後述する)。又、この位置情報は、後述で形成される単木の幹の三次元モデルの設置位置を示す緯度や経度、標高等を求める際に利用しても良い。
【0024】
さて、取得制御部101の取得が完了すると、次に、端末装置11の生成制御部102は、取得された三次元点群データを、多角形から構成されるメッシュデータに変換することで、単木の樹皮を示す単木メッシュデータを生成する(
図2:S102)。
【0025】
ここで、生成制御部102の生成方法に特に限定は無い。例えば、得られた三次元点群データは、
図4Aに示すように、森林内の複数の単木と、単木の根元の地面とが表現される。
図4Bには、実際に森林内の単木を三次元レーザースキャナ10でスキャンすることで得られた三次元点群データを示す。このように、三次元点群データのままでは、点の集合体となり、単木の形状を認識することが出来ない。
【0026】
そこで、生成制御部102は、三次元点群データを、例えば、
図5Aに示すように、全ての面が三つの頂点の三角形から構成されるメッシュデータに変換する。このように、三次元点群データをメッシュ化することで、大量の点群データを単純なメッシュデータに変換し、簡単に取り扱えるようにすることが可能となる。
【0027】
尚、上述では、メッシュ形状として三角形を採用したが、このメッシュ形状の種類に特に限定は無く、三角形の他に、例えば、四角形、五角形等を挙げることが出来る。
【0028】
ここで、生成制御部102は、三次元点群データをメッシュ化する前に、点のバラつきを除去するためのノイズ処理を行うことで、単木や地面と無関係な点を三次元点群データから除去し、単木の形状や地面の形状を精度高くメッシュデータにしても良い。ノイズ処理として、例えば、三次元点群データに対して箱ひげ図を算出し、バラつきが大きい点を除去する処理を挙げることが出来る。
【0029】
さて、メッシュデータには、単木の前面部分の樹皮を示す単木メッシュデータや地面の形状を示す地面メッシュデータなどが含まれる。そこで、生成制御部102は、メッシュデータのうち、単木の前面部分の樹皮に対応した円柱形に類似する形状のメッシュデータ、又は所定の高さ(例えば、数m)以上の高さを有するメッシュデータを、単木メッシュデータとして抽出する。円柱形に類似する形状は、例えば、円弧を有する形状や半円柱の形状、かまぼこ形状等を挙げることが出来る。所定の高さは、例えば、地面よりも高い高さに設定され、これにより、単木に相当する高さのメッシュデータを抽出することが出来る。単木メッシュデータの抽出方法は、円柱形に類似する形状のメッシュデータを抽出する抽出方法を採用しても良いし、所定の高さ以上の高さを有するメッシュデータを抽出する抽出方法を採用しても良いし、いずれの抽出方法でも良いし、両方を組み合わせても良い。これにより、メッシュデータのうち、単木に相当する単木メッシュデータだけを抽出することが出来る。
【0030】
さて、生成制御部102の生成が完了すると、次に、端末装置11の推定制御部103は、生成された単木メッシュデータに対して水平方向の同一面に位置する複数の点を、単木の樹皮が構成する円の一部とみなして、当該複数の点に円を外挿し、当該外挿した円の半径を用いて、単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを、単木の樹皮の仮想データとして推定する(
図2:S103)。
【0031】
ここで、推定制御部103の推定方法に特に限定は無い。例えば、得られた単木メッシュデータは、基本的に、三次元レーザースキャナ10のレーザーが照射された単木の前面部分の樹皮しか対応しておらず、例えば、レーザーが照射されていない単木の背面部分の樹皮のデータは存在しない。又、測定者のスキャン範囲やスキャン形態によっては、単木メッシュデータは、三次元レーザースキャナ10により三次元点群データを取得することが出来た部分に対応し、単木メッシュデータが存在しない部分は、三次元レーザースキャナ10により三次元点群データを取得することが出来なかった部分に対応する。
【0032】
そのため、原理的には、測定者が、三次元レーザースキャナ10を持って、単木の背面側に周って、三次元レーザースキャナ10でレーザーを単木の背面側に照射すれば、単木の背面部分の樹皮に対応する単木メッシュデータを得ることが出来るが、その場合は、測定者が単木の背面側に周る必要があり、手間や時間が掛かる。又、単木の前面部分の樹皮の単木メッシュデータと、単木の背面部分の樹皮の単木メッシュデータとをマッチングする必要があり、処理時間が掛かる。
【0033】
そこで、本発明では、基本的に、1回の三次元レーザースキャナ10のスキャンにより得られた三次元点群データを活用して、単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを推定する。具体的には、
図6Aに示すように、先ず、推定制御部103が、単木メッシュデータのうち、地面から所定の高さhの水平方向の同一面に位置する複数の点を取得する。次に、推定制御部103は、取得した複数の点を、単木の樹皮が構成する円の一部とみなして、当該複数の点に円Cを外挿する。ここで、円の外挿方法に特に限定は無く、例えば、所定の半径の円の式を想定した上で、最小二乗法を適用することで、複数の点に外挿された円Cの式を得ることが出来る。
【0034】
そして、推定制御部103は、
図6Aに示すように、外挿された円Cの式で求められる半径Rを用いて、複数の点が存在しない円のデータを仮想データとして形成して、仮想データを推定する。ここでは、半径Rを用いた円Cの一部であって、単木メッシュデータが存在しない一部のデータが仮想データとなる。
【0035】
このように、本発明では、単木の樹皮が、水平方向の同一面でほぼ円形であることと、単木メッシュデータの水平方向の複数の点が、円の一部を構成することとを利用することで、1回の三次元点群データから、単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを得ることが可能となる。そのため、測定者が、単木の前面部分の樹皮をスキャンした後に、更に、単木の背面部分に周って、再度、単木の背面部分の樹皮をスキャンする必要は無く、測定者の手間や時間を削減することが可能となる。
【0036】
ここで、円Cを外挿する際の所定の高さhは、測定者や管理者等によって任意に設定することが出来る。又、例えば、
図6Bに示すように、地面から鉛直方向に沿って所定の間隔iで、単木メッシュデータの複数の点に対する円Cの外挿を段階的に繰り返すことで、鉛直方向に沿った段階的な高さに対応した段階的な円Cやその半径Rを算出することが出来る。このように段階的な円Cやその半径Rを算出することで、高さに応じた仮想データを求めることが出来るとともに、高さに応じた単木の直径の違いや単木の曲がり等を確認することが可能となる。
【0037】
図7には、
図5Aで示した単木メッシュデータから、単木メッシュデータが存在しない単木の樹皮のデータを推定した場合を示す。このように、単木メッシュデータが存在しない場合であっても、円Cを外挿して、円Cの半径Rを算出することで、単木メッシュデータに加えて、仮想データを補充し、一本の単木を作り出すことが可能となる。尚、
図7では、単木メッシュデータが存在しない部分も、円Cの半径Rから推定している。
【0038】
さて、推定制御部103の推定が完了すると、次に、端末装置11の形成制御部104は、単木メッシュデータと、推定された仮想データと、当該仮想データの円Cの半径Rと、単木の樹高情報と、に基づいて、三次元円柱モデルを、単木の幹の三次元モデルとして形成する(
図2:S104)。
【0039】
ここで、測定者が三次元レーザースキャナ10を森林内の単木に向けるスキャン範囲は、通常、限定されることから、三次元点群データは、測定者の背丈よりも高い単木の全ての三次元点群データを取得することは困難である。
【0040】
一方、森林の多面的な機能に関係する立木の材積や森林の蓄積の算出には、単木の幹の情報があれば、概算することは可能である。つまり、これらの概算には、単木の樹冠情報は必要なく、単木の幹の情報があれば十分である。
【0041】
そこで、本発明では、必要最低限の情報を用いて、単木の幹の三次元モデルを形成することで、立木の材積や森林の蓄積の算出に活用する。
【0042】
ここで、形成制御部104の形成方法に特に限定は無い。例えば、
図8に示すように、既に、単木の根元付近の幹に対応する単木メッシュデータと、仮想データと、円Cの半径Rは取得されているため、単木の樹高情報があれば、高さと半径で構成される三次元円柱モデルを形成することは可能であり、この三次元円柱モデルを単木の幹の三次元モデルとして形成することが出来る。
【0043】
ここで、形成制御部104の単木の樹高情報の取得方法に特に限定は無い。例えば、測定者が、単木の高さHを目視で確認することで、当該単木の樹高情報を取得した場合、その樹高情報を端末装置11に直接入力することで、形成制御部104は、単木の樹高情報を取得することが出来る。
【0044】
又、測定者が、三次元レーザースキャナ10の他に、レーザー測距機器を保有している場合は、レーザー測距機器を用いて、単木の高さHを測定することで、当該単木の樹高情報を取得し、その樹高情報を端末装置11に直接入力するか、Bluetooth等の無線通信によって端末装置11に入力することで、形成制御部104は、単木の樹高情報を取得することが出来る。
【0045】
更に、三次元点群データの取得の際に、測定地点の位置情報が取得された場合であって、当該測定地点の位置情報に対応するDEM(Digital Elevation Model、数値標高モデル)とDSM(Digital Surface Model、数値表層モデル)が存在する場合は、DEMとDSMを用いて単木の樹高情報を取得しても良い。DEMは、所定の地点における地表面の標高を示し、DSMは、所定の地点における建物や樹木を含む地球表面の高さを示す。DEMとDSMは、例えば、航空レーザー測量、ドローン写真測量、ドローンレーザー測量、人工衛星を用いた測量等で得られる。そこで、形成制御部104は、単木の三次元点群データの位置情報に対応する地点のDEMとDSMとを取得し、DSMからDEMを減算した値を、当該位置情報の測定地点における単木の樹高情報として算出することで、単木の樹高情報を取得することが出来る。この単木の樹高情報は、位置情報の周辺に広がる複数の単木の樹高情報の平均値と考えることが出来る。
【0046】
そして、形成制御部104が、単木の樹高情報を取得すると、
図8に示すように、地面から、単木メッシュデータ及び仮想データの上端までのデータが存在する部分の第一の高さH1を算出し、単木の樹高情報Hから第一の高さH1を減算して、データが存在しない部分の第二の高さH2を算出する。次に、形成制御部104は、単木メッシュデータ及び仮想データの上端から、単木の樹高情報まで、半径Rと第二の高さH2とを用いた三次元円柱モデルを形成して(半径Rと第二の高さH2の三次元円柱を単木メッシュデータ及び仮想データの上端から伸ばして)、三次元円柱モデルと、単木メッシュデータと、仮想データとの全部を、単木の幹の三次元モデルとして形成する。
【0047】
ここで、使用する半径Rは、例えば、仮想データの上端の円Cの半径Rでも良いし、段階的に複数の円Cの半径Rが存在する場合は、これらの半径Rの平均値を用いても良い。これにより、簡単に単木の幹の三次元モデルを形成することが出来る。
【0048】
尚、地面から、単木メッシュデータ及び仮想データの下端までにデータが存在しない場合は、形成制御部104は、地面から、単木メッシュデータ及び仮想データの下端までのデータが存在しない部分の第三の高さH3を算出し、単木メッシュデータ及び仮想データの下端から、地面まで、半径Rと第三の高さH3とを用いた三次元円柱モデルを形成して(半径Rと第三の高さH3の三次元円柱を単木メッシュデータ及び仮想データの下端から伸ばして)、三次元円柱モデルを形成すれば良い。
【0049】
このような単木の幹の三次元モデルは、単木の直径や樹高情報、スキャン範囲内の歪み等が含まれるため、所定の設定により、単木の幹の三次元モデルを分割することで、伐採前の単木の製材や建築用材等の利用が可能となる。又、単木の幹の三次元モデルは、三次元CADのデータ(DXF、OBJ、STLファイル等)で出力することが出来るため、製材所や工務店、建築士等で活用することが出来る。尚、形成した単木の幹の三次元モデルの設置位置は、例えば、予め取得された測定地点の位置情報に、単木の円(直径)の中心位置情報を加算することで算出することが出来る。
【0050】
さて、形成制御部104の形成が完了すると、次に、端末装置11の繰り返し制御部105は、メッシュデータのうち、単木の幹の三次元モデルを形成していない他の単木メッシュデータについて、仮想データの推定と、単木の幹の三次元モデルの形成と、を繰り返す(
図2:S105)。
【0051】
ここで、繰り返し制御部105の繰り返し方法に特に限定は無い。例えば、繰り返し制御部105は、メッシュデータのうち、単木の幹の三次元モデルを形成していない他の単木メッシュデータが存在するか否かを判定する(
図2:S105)。
【0052】
ここで、
図9Aに示すように、先ほどのメッシュデータには、3つの単木メッシュデータが存在し、一つの単木メッシュデータについては仮想データの推定と、単木の幹の三次元モデルの形成とを行っている。そのため、単木の幹の三次元モデルを形成していない2つの単木メッシュデータが存在する。
【0053】
そこで、繰り返し制御部105は、他の単木メッシュデータが存在すると判定し(
図2:S105YES)、S103に戻って、繰り返し制御部105は、推定制御部103を介して、他の単木メッシュデータから仮想データを推定する(
図2:S103)。次に、S104において、繰り返し制御部105は、形成制御部104を介して、他の単木メッシュデータと仮想データから、単木の幹の三次元モデルを形成する(
図2:S104)。尚、残りの他の単木メッシュデータについても、同様に、仮想データの推定と、単木の幹の三次元モデルの形成とを繰り返す。このように、メッシュデータに存在する単木メッシュデータの全てを、単木の幹の三次元モデルに形成することで、
図9Bに示すように、複数の単木の幹の三次元モデルを蓄積することが出来る。又、測定者が1回のスキャンで得られたスキャン範囲の単木の幹の三次元モデルを簡単に作ることが出来る。
【0054】
さて、全ての単木メッシュデータが処理された場合、S105において、繰り返し制御部105は、他の単木メッシュデータが存在しないと判定する(
図2:S105NO)。これにより、繰り返し制御部105の繰り返しが完了する。
【0055】
ここで、測定者が、他の測定地点において三次元レーザースキャナ10でスキャンするか否かを判断する(
図2:S106)。例えば、
図10に示すように、他にも複数の単木が広がっており、他の測定地点においてスキャンする必要があれば、測定者が、スキャンすると判断し(
図2:S106YES)、三次元レーザースキャナ10と端末装置11とを携帯して、他の測定地点へ移動する。そして、S101に戻って、他の測定地点でのスキャンを行うと、取得制御部101は、単木の三次元点群データを取得する(
図2:S101)。後の処理は、S102からS105まで繰り返すことになる。
【0056】
ここで、本発明では、
図10に示すように、測定者は、森林内の単木の前面部分(片面部分)の樹皮だけをスキャンしていけば良いため、スキャンの手間が削減され、測定者は、容易にスキャンしていくことが可能となる。
【0057】
一方、他の測定地点でスキャンする必要がなく、測定者が、スキャンしないと判断し(
図2:S106NO)、全ての処理を完了する。ここで、測定者がスキャンした範囲では、単木の幹の三次元モデルが全て形成していることになる。このような単木の幹の三次元モデルは、例えば、
図11Aに示すように、森林の三次元データプラットフォームとして活用することが出来る。森林の三次元データプラットフォームでは、森林内の単木の位置を示す三次元マップの作成や、三次元モデルを二次元データに変換することで得られる二次元マップの作成が可能になる。又、測定者が、定期的に、森林内の単木をスキャンすることで、単木の幹の三次元モデルを更新し、単木の幹の三次元モデルの経時的な変化を蓄積することが出来る。
【0058】
又、単木の幹の三次元モデルがあれば、
図11Bに示すように、単木を切断した際の木取りのシミュレーションを行うことが出来る。木取りシミュレーションでは、形成した単木の幹の三次元モデルを所定の設定範囲で分割することで、取得可能な単木の材積(体積)を算出し、木取りの価値を算出することが出来る。又、木取り後の森林の変化などもシミュレーションすることが出来るため、木取り後における、水土保全機能、地球環境保全機能、生物保護機能の低下など、予測することも可能となる。
【0059】
又、単木の幹の三次元モデルについて、単木の樹冠に相当する樹冠データが存在する場合は、
図12Aに示すように、単木の幹の三次元モデルM1に、樹冠データM2を追加して合成しても良い。単木の幹の三次元モデルM1は、測定者のスキャンにより得ることが出来て、樹冠データM2は、例えば、DEM、DSM等の外部データにより得ることが出来る。樹冠データM2を外部データから得る場合は、例えば、三次元点群データに関連付けられた測定地点の位置情報や単木の幹の三次元モデルの位置情報に対応する位置情報の樹冠データM2を取得すれば良い。このように、単木の幹の三次元モデルM1に樹冠データM2を合成することで、より現実味のある単木の三次元モデルを形成することが出来る。
【0060】
又、単木の幹の三次元モデルがあれば、その出力形態として、視覚的に分かり易い三次元モデルの他に、三次元モデルを構成する要素の数値をデータベース化して出力することも可能となる。例えば、
図12Bに示すように、データベース1200には、単木の幹に付与された番号(No)1201と、単木の幹の設置位置を示す緯度1202と、経度1203と、標高1204と、単木の樹種1205と、単木の幹の三次元モデルの円の直径1206と、樹高(情報)1207と、単木の幹の直径1206と樹高1207から算出される材積量1208とが関連付けて記憶されている。尚、材積量1208の算出方法に特に限定は無い。そして、単木モデリングシステム1がこのデータベース1200を出力することで、測定者等は、森林内の単木の樹木情報を一見して確認することが出来る。
【0061】
このように、本発明では、単木の一部分に対する三次元レーザースキャナのスキャンにより、単木の三次元モデルを簡単に素早く形成することが可能となる。
【0062】
尚、本発明の実施形態では、端末装置11が各制御部を備えるよう構成したが、当該各制御部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを装置に読み出させ、当該装置が各制御部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。さらに、各制御部が実行する工程をハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る単木モデリングシステム及び単木モデリング方法は、単木全体の三次元モデルを取得し、共有し、活用する林業における川上から川下までの分野に有用であり、単木の一部分に対する三次元レーザースキャナのスキャンにより、単木の三次元モデルを簡単に素早く形成することが可能な単木モデリングシステム及び単木モデリング方法として有効である。
【符号の説明】
【0064】
1 単木モデリングシステム
10 三次元レーザースキャナ
11 端末装置
101 取得制御部
102 生成制御部
103 推定制御部
104 形成制御部
105 繰り返し制御部