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特開2022-179852冷媒漏洩検知装置および冷媒漏洩検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179852
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】冷媒漏洩検知装置および冷媒漏洩検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20221129BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01M3/16 F
F25B49/02 520M
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086620
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】生沼 学
(72)【発明者】
【氏名】野村 亜加音
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝也
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA12
2G067BB23
2G067CC01
2G067DD25
(57)【要約】
【課題】環境因子の影響を低減して誤検知を防ぐことができる冷媒漏洩検知装置および冷媒漏洩検知方法を提供する。
【解決手段】冷媒の流通方向に沿って延びる冷媒管の外周に設けられた断熱材の外周に配置された第1電極と、第1電極と冷媒の流通方向に離隔して、断熱材の外周に配置された第2電極と、第1電極と冷媒管との間の第1電極静電容量、および、第2電極と冷媒管との間の第2電極静電容量に基づいて冷媒の漏洩の検出をおこなう検出部と、を備えたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の流通方向に沿って延びる冷媒管の外周に設けられた断熱材の外周に配置された第1電極と、
前記第1電極と前記冷媒の流通方向に離隔して、前記断熱材の外周に配置された第2電極と、
前記第1電極と前記冷媒管との間の第1電極静電容量、および、前記第2電極と前記冷媒管との間の第2電極静電容量に基づいて前記冷媒の漏洩の検出をおこなう検出部と、
を備えた冷媒漏洩検知装置。
【請求項2】
前記第1電極静電容量および前記第2電極静電容量を測定する静電容量計測部を更に有する請求項1に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極とは、前記静電容量計測部に接続されており、前記第1電極と前記冷媒管との間の静電容量と、前記第2電極と前記冷媒管との間の静電容量と、が交互に測定される請求項2に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項4】
前記静電容量計測部は、静電容量に影響を及ぼす環境要因の変化時間よりも短い時間で、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、を測定する請求項2又は請求項3に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項5】
前記静電容量計測部に接続され、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の測定値を記憶するメモリを備えた静電容量演算部を更に備え、
前記静電容量演算部は、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の前記測定値の関係を演算する請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の関係を演算により求めた演算値の増減により、冷媒が漏洩した電極を特定する請求項5に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項7】
前記静電容量演算部は、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の比を演算する請求項5又は請求項6に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項8】
前記静電容量演算部は、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の比の変化速度を演算する請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項9】
前記検出部には、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の前記比の閾値が記憶されており、
前記静電容量演算部で演算された前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の前記比が、前記比の閾値を超えた場合に前記検出部により冷媒漏洩が検出される請求項7に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の前記比の変化速度の閾値を設定し、
前記静電容量演算部で演算された前記第1電極静電容量と、前記第2電極静電容量と、の前記比の変化速度が、前記比の変化速度の閾値を超えた場合に冷媒漏洩を検出する請求項8に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項11】
前記静電容量計測部と前記静電容量演算部と前記検出部とは、前記第1電極および前記第2電極に近接して配置されている請求項5~請求項10のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項12】
前記静電容量計測部と前記静電容量演算部と前記検出部とが一体化した冷媒漏洩検知回路を備えた請求項6~請求項11のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項13】
前記第1電極および前記第2電極は、
冷媒の流れる冷媒管の外表面を覆う断熱材の外表面に、独立して配置されている請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項14】
前記第1電極および前記第2電極は、2つ1組で検知部を構成している請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項15】
前記第1電極および前記第2電極は、前記断熱材の外表面に巻きつけて配置され、前記冷媒管の軸方向に見て環状または円弧状の電極により構成されている請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項16】
前記第1電極および前記第2電極は、可撓性を有する薄膜状の導電性の電極により構成されている請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項17】
前記第1電極および前記第2電極の間に空隙を有する請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の冷媒漏洩検知装置。
【請求項18】
冷媒の流通方向に沿って延びる冷媒管の外周に設けられた断熱材の外周に配置された第1電極と、前記冷媒管との間の第1電極静電容量、および、前記第1電極と前記流通方向に離隔して、前記断熱材の外周に配置される第2電極と、前記冷媒管との間の第2電極静電容量に基づいて前記冷媒管を流通する前記冷媒の漏洩の検出をおこなう検出ステップを有する冷媒漏洩検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒管からの冷媒の漏洩を検知する冷媒漏洩検知装置および冷媒漏洩検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響が強く懸念される中、温室効果の高いフロン等冷媒の大気への漏洩を抑制する動きがある。冷媒の大気への漏洩は、冷凍機および空調機等に封入されている冷媒が廃棄時に回収されないことで大気中に漏洩する場合と、冷凍機または空調機等の使用中に機器の冷媒管等が破損し漏洩する場合とがある。大気中へと漏洩する冷媒量のうち機器の使用中に漏洩する冷媒量は、廃棄時に漏洩する冷媒量に比べて多く、これを抑制することが必要である。そのためには、機器の使用中における冷媒の漏洩を簡易かつ精度よく検知する技術が必要となる。また、冷媒管等が破損し冷媒が漏洩してしまった場合には、該当箇所の修理をしなければ、再度機器を使用することができない。従って、冷媒の漏洩を検知すると同時に冷媒の漏洩箇所も特定できる技術が要求されている。
【0003】
特許文献1には、冷媒管からの冷媒の漏洩を検知する手段として、冷媒管に対してその外表面を覆う断熱材の外周に電極を取り付け、冷媒管と電極との間の静電容量を測定する冷媒漏洩検知装置が開示されている。特許文献1の冷媒漏洩検知装置では、冷媒の漏洩に伴って増加した静電容量が、閾値を超えた場合に、冷媒の漏洩が検知される。
【0004】
また、冷媒管近傍に二つのセンサを配置し、センサを構成する二枚の板状電極の間に冷媒の漏洩に伴う冷媒を含む流体を捉え、静電容量の変化またはインピーダンスの変化から冷媒の漏洩を検知する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-173259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような技術においては、冷媒の漏洩に伴う静電容量の変化を捉え冷媒の漏洩を検知する。特許文献1に記載の冷媒漏洩検知装置は、屋内に取り付けられた場合、空調機の動作状況または季節の変化により温度および湿度の変化に晒される。また、特許文献1に記載の冷媒漏洩検知装置は、屋内に限らず屋外への取り付けも想定されるが、この場合、屋内よりもさらに温度および湿度などの環境因子の変化に晒されることとなる。また、冷媒管を流れる冷媒の温度は外気温と異なるため、機器の動作状況によって冷媒の温度に差異が生じる。また、温度変化により湿度の変動が発生する。これらの環境因子の変化は、部材の寸法の微小な増減、誘電率の変動または電気備品の特性の変動をもたらし、測定される静電容量の値が変動することとなる。冷媒の漏洩に伴う静電容量の変化は微小であるため、特許文献1に記載の手法では、環境因子による静電容量の変化によって冷媒の漏洩を誤検知することがある。
【0007】
そこで、本開示は環境因子の影響を低減して誤検知を防ぐことができる冷媒漏洩検知装置および冷媒漏洩検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される冷媒漏洩検知装置は、冷媒の流通方向に沿って延びる冷媒管の外周に設けられた断熱材の外周に配置された第1電極と、前記第1電極と前記冷媒の流通方向に離隔して、前記断熱材の外周に配置された第2電極と、前記第1電極と前記冷媒管との間の第1電極静電容量、および、前記第2電極と前記冷媒管との間の第2電極静電容量に基づいて前記冷媒の漏洩の検出をおこなう検出部と、を備えたものである。
【0009】
また、本願に開示される冷媒漏洩検知方法は、冷媒の流通方向に沿って延びる冷媒管の外周に設けられた断熱材の外周に配置された第1電極と、前記冷媒管との間の第1電極静電容量、および、前記第1電極と前記流通方向に離隔して、前記断熱材の外周に配置される第2電極と、前記冷媒管との間の第2電極静電容量に基づいて前記冷媒管を流通する前記冷媒の漏洩の検出をおこなう検出ステップを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る冷媒漏洩検知装置によれば、冷媒管を覆う断熱材に配置された第1電極と冷媒管間の第1電極静電容量と、冷媒管を覆う断熱材に配置された第2電極と冷媒管間の第2電極静電容量と、に基づいて冷媒漏洩を検出する検出部を備える。このため、冷媒の漏洩の検出における環境因子の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置の設置の変形例1を示す模式図である。
図3】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置の設置の変形例2を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置の冷媒管の長手方向に対して垂直な面を示す模式図である。
図5】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置の静電容量計測部の回路構成を示す回路図である。
図6】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置による冷媒漏洩検知方法のフローチャートである。
図7】実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置の静電容量計測部から取得した第1電極静電容量、および、第2電極静電容量の計測値の一例を示すグラフである。
図8】実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置を示す構成図である。
図9】実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置による冷媒漏洩検知方法のフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置の静電容量計測部5から取得した第1電極静電容量および第2電極静電容量の計測値の一例を示すグラフである。
図11図10の計測値を静電容量演算部にて演算した演算値を示すグラフである。
図12】実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置において、静電容量計測部と、静電容量演算部と、検出部とが一体化された構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願が開示する冷媒漏洩検知装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100を示す構成図である。図1に示すように、実施の形態1の冷媒漏洩検知装置100は、検知部3と、静電容量計測部5と、検出部6とを有する。検知部3は、冷媒管1を覆う断熱材2の外表面に配置された第1電極4aと、断熱材2の外表面に第1電極4aと独立して配置された第2電極4bとを備えている。静電容量計測部5は、冷媒管1と検知部3との間の静電容量を計測する。検出部6は、第1電極4aと冷媒管1間の静電容量と、第2電極4bと冷媒管1間の静電容量と、に基づいて冷媒漏洩を検出する。以下、第1電極4aおよび第2電極4bを総称するときには単に電極4と称する場合がある。
【0014】
冷媒漏洩検知装置100は、冷凍機または空調機等の冷凍サイクル装置に設けられた冷媒管1に取り付けられるものである。冷媒管1は、内部に冷媒が流通する。冷媒管1は、金属製の円管から構成されている。冷媒管1の外周には、冷媒管1の外表面を覆う断熱材2が設けられている。冷媒管1を構成する金属としては、例えば銅が用いられる。冷媒管1の内部を流れる冷媒と、冷媒管1の周囲の気温との間には、温度差が生じる。特に、冷媒管1が屋外に配置されている場合には、冷媒管1が屋内に配置されている場合に比べて、冷媒管1の内部を流れる冷媒と、冷媒管1の周囲の気温との温度差が増大する。冷媒管1を覆う断熱材2は、当該温度差を考慮し、周囲の気温によって冷媒管1内の冷媒の温度が変化することを抑制する目的で設けられている。冷媒管1は、予め断熱材2に覆われた状態で市販されている場合もある。断熱材2を構成する材質としては、例えば発泡ポリエチレンが用いられる。なお、以下の説明においては、図1に示すように、冷媒管1を基準にして、他の部材についても、冷媒管1が延びる方向を「長手方向L」と呼び、「長手方向L」に直交する冷媒管1の径方向Rを「径方向R」と呼ぶこととする。
【0015】
電極4は冷媒の流れる冷媒管1と、冷媒管1の外表面を覆う断熱材2の外周に取り付けられている。電極4は、導電体である。電極4は、それぞれ、金属製の冷媒管1との間に、誘電体である断熱材2を挟む構成であり、これにより、冷媒管1との間でコンデンサを形成している。冷媒管1から冷媒が漏洩すると、液体状の冷媒、または、冷媒と冷凍機油との混合流体は、電極4と冷媒管1との間の空間に侵入する。電極4は、電極4と冷媒管1との間の空間に侵入した冷媒による電極4と冷媒管1との間の静電容量の変化を検出するものである。
【0016】
電極4は、例えばアルミニウム薄板、ステンレス薄板または銅薄板などを選択できる。電極4としてアルミニウムを用いた場合には、冷媒漏洩検知装置100が軽量かつ安価で加工性が良好になる。電極4としてステンレスを用いた場合には、冷媒漏洩検知装置100の耐食性が良好になる。電極4として銅を用いた場合には、導電性が良好になるため、静電容量の変化が正確に検知される。また、電極4は、断熱材2表面上に配置できるものであれば、その形状や取り付けの方法は問わない。電極4は、一枚の金属板を断熱材2表面に巻き付けたものでよい。この場合、電極4は、冷媒管1の軸方向に見て環状または円弧状を有する。電極4は、例えば、断熱材2上に導電性のペーストを直接塗布して硬化させたものでもよい。この場合、電極4は、冷媒管1、または、断熱材2の寸法の影響を受けず、且つ、容易に備え付けることができる。電極4は、例えば、絶縁体上に貼り付けた導電体層、または、絶縁体上に蒸着あるいは塗布された導電体層を有するものであってもよい。電極4として、例えば、薄い絶縁体フィルム上に金属箔を張り付けた場合には、金属薄板で形成された電極4よりも柔らかく取り付け性を向上できる。また、絶縁体フィルムは、金属箔を保護する効果を期待でき、より長期間劣化しない電極4を実現できる。ただし、電極4と断熱材2表面との間には、隙間がないようにすることが好ましい。電極4は、断熱材2の外周表面を一周するように取り付けられていることが好ましい。これは、原理上、冷媒漏洩検知装置100は、冷媒が漏洩した際に電極4と冷媒管1との間の空間に侵入した冷媒による静電容量の増加を検出するものであるため、冷媒管1を一周させるように電極4を配置することで確実に静電容量の変化を検出できるからである。
【0017】
なお、電極4は、例えば、可撓性を有する薄膜状の金属板から構成してもよい。この場合、電極4は、断熱材2に隙間がないように巻きつけ、導電性のテープ、または、接着材で固定することで、電極4を断熱材表面に密着させて配置すればよい。電極4と断熱材2との間の隙間を排除することで、空調機器の運転状態において、冷媒管1の振動に伴って電極4が振動しても電極4と冷媒管1との距離が変化しにくくなるため、ノイズ要因となる静電容量の変動が抑制され、誤検知が防止される。
【0018】
電極4を構成する第1電極4aと第2電極4bとは、冷媒管1を覆う断熱材2の表面に配置されている。第1電極4aと第2電極4bとは、独立して配置されている。つまり、第1電極4aと第2電極4bとは、互いに電気的に接続されておらず絶縁されている。第1電極4aと第2電極4bとは、隙間を有し、独立して配置されている。第1電極4aと第2電極4bとは、交互に充電され、第1電極4aと冷媒管1間の静電容量と、第2電極4bと冷媒管1間の静電容量とが、独立して測定される。第1電極4aと第2電極4bとは、冷媒管1が延びる方向に沿って配置されている。第1電極4aと第2電極4bとは、例えば、冷媒管1が直線上に延びている場合、冷媒管1の長手方向Lに配置されている。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100の設置の変形例1を示す模式図である。図2に示すように、冷媒漏洩検知装置100の設置の変形例1において、第1電極4aおよび第2電極4bは、L字状の冷媒管1に取り付けられており、第1電極4aおよび第2電極4bの長手方向Lが互いに直交する方向に配置されている。
【0020】
図3は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100の設置の変形例2を示す模式図である。図3に示すように、冷媒漏洩検知装置100の設置の変形例2において、第1電極4aおよび第2電極4bは、U字状の冷媒管1に取り付けられており、互いに対向するように配置されている。第1電極4aおよび第2電極4bの長手方向Lは、それぞれ平行に延びている。第1電極4aおよび第2電極4bの配置の態様は、図1図3の配置の態様に限定されず、冷媒管1の形状に合わせて適宜変更し得る。
【0021】
静電容量計測部5および検出部6は、例えば、制御装置50に設けられている。制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)により構成されている。制御装置50は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)等により構成されたメモリを有している。制御装置50は、メモリに格納されたプログラムにより処理を実現する。
【0022】
静電容量計測部5は、1対の端子5aによりそれぞれ冷媒管1と電極4とに電気的に接続されている。各端子は、例えば、ピンから構成されている。静電容量計測部5は、端子5aにより接続された電極4と冷媒管1との間の静電容量を計測する。静電容量計測部5は、電極4に近接した位置に配置されている。
【0023】
静電容量計測部5と冷媒管1とを接続する端子5aから延びる配線、および、静電容量計測部5と電極4とを接続する端子5aから延びる配線は、可能な限り短いことが望ましい。静電容量計測部5が計測する静電容量には、配線が有する浮遊容量も含まれているが、冷媒の漏洩の検知において、配線の浮遊容量は不要であるからである。また、配線が長くなると、配線を通じた電磁ノイズなどの影響を受けやすいからである。静電容量計測部5と、電極4とが、配線を短縮できる位置に配置されることで、誤検知の要因となる配線の浮遊容量および電磁ノイズを低減できる。ただし、静電容量計測部5と電極4とは、静電容量計測部5と電極4とが直接接触しないように、離間して配置される。静電容量計測部5の本体と電極4とが離間することで、静電容量計測部5の本体と電極4とで導通することによる静電容量への影響が防止され、冷媒の漏洩の誤検出が低減される。
【0024】
静電容量計測部5は、例えば、静電容量計測部5と電極4とが重ならないように、冷媒管1の長手方向Lに沿って、電極4の設置位置から冷媒の流通方向の上流方向または下流方向のいずれかにシフトした位置に配置されているとよい。また、静電容量計測部5は、断熱材2の上から、冷媒管1および断熱材2に固定するように配置して取り付けられていることが好ましい。静電容量計測部5が断熱材2の外表面に配置されることで、断熱材2を取り外す必要なく冷媒漏洩を検知できる。
【0025】
検出部6は、静電容量計測部5と電気的に接続されている。検出部6は、静電容量計測部5より得られた第1電極4aと冷媒管1との間の静電容量と、第2電極4bと冷媒管1との間の静電容量と、を比較し冷媒漏洩を検出する。
【0026】
次に、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100が、冷媒漏洩を検知する動作原理について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100の冷媒管1の長手方向Lに対して垂直な面を示す模式図である。金属製の冷媒管1の内部には、冷媒と冷凍機油とが混合した流体が流れている。冷媒管1と断熱材2と電極4とは、コンデンサを形成している。つまり、冷媒管1と断熱材2と第1電極4aとから第1コンデンサC1が形成され、冷媒管1と断熱材2と第2電極4bとから第2コンデンサC2が形成されている。
【0027】
図4に示すように、冷媒管1と断熱材2との間には、わずかな空隙14が生じている。従って、電極4と空隙14との間と、空隙14と冷媒管1との間にコンデンサが生じており、これら2つのコンデンサは直列接続されたものとして考えることができる。このとき、空隙14の径方向Rの幅gが、冷媒管1の外周全体において一様であると仮定すると、コンデンサの静電容量Cは、電極4と空隙14との間の静電容量Cinsと空隙14と冷媒管1との間の静電容量Cgapとの合成である静電容量となる。従って、静電容量は、下記の数1~数3で表される。
【0028】
【数1】
【数2】
【数3】
【0029】
ここで、εは空気の誘電率、εinsは断熱材2の比誘電率、Lは電極4の長手方向Lの幅、Dは冷媒管1の外径、Dは電極4の内径、gは空隙14の径方向Rの幅である。
【0030】
経年劣化等の要因で冷媒管1にピンホールまたは亀裂が生じ、冷媒の漏洩が発生すると、冷媒もしくは冷凍機油などの流体が冷媒管1から流出し、冷媒管1と電極4との間に流入する。冷媒管1と電極4との間に流入する冷媒もしくは冷凍機油などの流体の比誘電率は、空気の誘電率よりも大きい。そのため、この流体が冷媒管1と断熱材2との間の空隙14に溜まると、冷媒管1と空隙14との間の静電容量Cgapが増加し、それに伴い冷媒管1と断熱材2と電極4との間の静電容量Cが増加する。そして、検出部6において、静電容量計測部5より得られた静電容量Cに基づいて冷媒の漏洩の有無が判定される。
【0031】
次に、静電容量計測部5の構成および動作について説明する。
【0032】
図5は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100の静電容量計測部5の回路構成を示す回路図である。図5に示すように、静電容量計測部5は、充放電回路11と、カウンター回路12と、カウント計測部13とを備えている。
【0033】
充放電回路11は、電源9と、第1スイッチ10aと、第2スイッチ10bとを有している。電源9は、定電流源である。第1スイッチ10aの一端は電源9に接続され、他端は第1電極4aに接続されている。第1スイッチ10a側には、第1コンデンサC1が形成され、第1電極静電容量8aを有している。第2スイッチ10bの一端は電源9に接続され、他端は第2電極4bに接続されている。第2スイッチ10b側には、第2コンデンサC2が形成され、第2電極静電容量8bが生じている。第1スイッチ10aと第2スイッチ10bとは、接続点で接続されている。第1電極4aおよび第2電極4bの他端は、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2を介し、冷媒管1に接続されている。冷媒管1は、接地されている。
【0034】
充放電回路11は、電極4の電圧値に応じて、第1スイッチ10aおよび第2スイッチ10bのいずれか一方がONになり、他方がOFFになるように動作する。第1スイッチ10aがONで、第2スイッチ10bがOFFとなっている場合は、電源9から出力された電流により、第1コンデンサC1が充電されて第1電極4aの電圧が増加する。この状態を第1の状態と呼ぶ。一方、第1スイッチ10aがOFFで、第2スイッチ10bがONとなっている場合は、電源9から出力された電流により、第2コンデンサC2が充電されて第2電極4bの電圧が増加する。この状態を第2の状態と呼ぶ。充放電回路11において、第1の状態と第2の状態とが交互に切り替わることで、電極4の電圧は予め設定された範囲内に維持される。また、第1の状態と第2の状態とが切り替わる時間は、静電容量に影響を及ぼす環境因子が変化する時間より短いことが望ましい。
【0035】
環境因子が変化する時間とは、例えば、後述の環境因子が一定の変動幅を超えて変化した場合、当該変化に要すると考えられる時間である。環境因子が変化する時間は、冷凍機または空調機等の冷凍サイクル装置の動作状況、季節毎の温度および湿度の変動、冷媒管1を流れる冷媒と外気との温度差、機器の動作状況の変化による冷媒の温度差、外気の温度変化による湿度の変動などから決定される。
【0036】
カウンター回路12は、予め設定された一定期間の間に、第1スイッチ10aがONになった回数をカウントする。一定期間は、少なくとも環境因子が変化する時間よりも長い期間である。カウンター回路12でカウントされるカウント数は、冷媒管1と電極4との間に生じるコンデンサの静電容量Cに応じて変化する。具体的には、コンデンサの静電容量Cが増大すると、カウント数が減少し、コンデンサの静電容量Cが減少すると、カウント数が増大する。
【0037】
カウント計測部13には、カウント信号として、カウンター回路12からカウント数が入力される。カウント計測部13には、カウント数をコンデンサの静電容量に変換する変換式が記憶されている。変換式は、例えば下記の数4で表される。カウント計測部13は、変換式を用いて、カウント数からコンデンサの静電容量を算出する。
【0038】
【数4】
【0039】
ここで、Cはコンデンサの静電容量、AおよびBは充放電回路11の動作条件によって定まる補正係数、Countsはカウント数である。
【0040】
このようにしてカウント計測部13によってコンデンサの静電容量Cが算出され、静電容量計測部5で計測された第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bの計測値となる。
【0041】
なお、カウンター回路12は、第1スイッチ10aがONになった回数をカウントすると説明したが、この場合に限定されない。カウンター回路12は、第2スイッチ10bがONになった回数をカウントしてもよい。
【0042】
さらに、カウンター回路12は、コンデンサの静電容量Cに応じてカウント回数が変動するものであるならば、他のものをカウントしてもよい。例えば、カウンター回路12は、コンデンサの電圧、すなわち、接続点の電圧の変動幅を実験などにより求め、当該変動幅の最大値と最小値との間の中央値を閾値として設定する構成であってもよい。この場合、予め設定された一定期間に、カウンター回路12は、接続点の電圧が閾値を超えた回数をカウントする。
【0043】
なお、静電容量計測部5は、例えばマイクロコントローラを用いて構成することができる。すなわち、静電容量計測部5を構成しているカウント計測部13、カウンター回路12および充放電回路11を、1つのマイクロコントローラで構成することが可能である。マイクロコントローラは、廉価であり、且つ、小型の部品であるため、静電容量計測部5をコンパクトかつ低コストに構成することができる。
【0044】
また、静電容量計測部5は、全体を1つのマイクロコントローラで構成してもよいが、この構成に限定されない。すなわち、静電容量計測部5は、その一部分を1つのマイクロコントローラで構成し、他の部分を別の部品で構成するようにしてもよい。
【0045】
また、静電容量計測部5において、カウント計測部13を用いてコンデンサの静電容量Cを演算するとして説明したが、必ずしも、静電容量計測部5においてこの処理を行う必要はない。例えば、カウント計測部13を静電容量計測部5に設けずに、静電容量計測部5が、カウンター回路12でカウントしたカウント値を検出部6に送信するようにしてもよい。つまり、検出部6が、カウント計測部13の機能を担っていてもよい。この場合、検出部6が、カウント計測部13の代わりに、カウント値に基づいて、コンデンサの静電容量Cを演算して、当該静電容量Cに基づいて冷媒の漏洩を判定する。
【0046】
静電容量の演算方法は、例えば、上記の数4などの変換式を用いて演算すればよい。検出部6は、静電容量Cを求めずに、静電容量計測部5から送信されたカウント値を静電容量Cに応じて変化する信号として直接読み取り、冷媒の漏洩を検知する構成としても構わない。静電容量計測部5にカウント計測部13を設けない構成にすれば、冷媒漏洩検知装置100内でカウント計測部13として使用する部品の数を削減でき、冷媒漏洩検知装置100の製造コストを低減することができる。また、カウント計測部13に限らず、静電容量計測部5を構成する他の部材も検出部6と共用にしても構わない。
【0047】
さらに、静電容量計測部5と検出部6とは、一体化されていても構わない。その場合には、静電容量計測部5と検出部6とは、同一の回路で形成され、同一基板上に配置される。静電容量計測部5と検出部6とを一体化した場合には、静電容量計測部5または検出部6は、その一部分の部品を静電容量計測部5と検出部6とで共用される。そのため、冷媒漏洩検知装置100の構成に必要な部品数を減らすことができ、冷媒漏洩検知装置100の製造コストの低減およびコンパクト化ができる。
【0048】
また、静電容量計測部5は、コンデンサの静電容量C、もしくは、静電容量Cに応じて変動する物理量を計測できるものであれば、図5の構成に限定されない。静電容量計測部5は、例えば自動平衡ブリッジ回路あるいはホイートストンブリッジを用いた回路などから構成されてもよい。
【0049】
図6は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100による冷媒漏洩検知方法のフローチャートである。図6に示すように、冷媒漏洩検知方法は、検出ステップS01を有する。検出ステップS01は、例えば、制御装置50により実施される。検出ステップS01において、制御装置50は、第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bに基づいて冷媒の漏洩の検出を行う。
【0050】
検出ステップS01は、例えば、計測ステップS11と、判定ステップS12と、を含む。計測ステップS11において、制御装置50は、静電容量計測部5により、一定時間ごとに、第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bを計測し取得する。判定ステップS12において、制御装置50は、検出部6により、計測ステップS11において取得した第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bの計測値に基づいて冷媒の漏洩を判定する。なお、検出ステップS01は、例えば、冷媒漏洩検知装置100が取り付けられた冷凍機または空調機等の冷凍サイクル装置が運転または停止している場合に、定期的に繰り返して実施されればよい。
【0051】
図7は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100の静電容量計測部5から取得した第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bの計測値の一例を示すグラフである。図7において、横軸は時間を示し、縦軸は静電容量を示している。
【0052】
図7に示すように、第1電極4aと冷媒管1との間、および、第2電極4bと冷媒管1との間で冷媒の漏洩が発生していない場合、第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bは、類似の環境因子の影響を受けているため、類似の変動を示す。一方、第1電極4aと冷媒管1との間で冷媒の漏洩が発生した場合、第1電極静電容量8aが増加する。冷媒または冷凍機油の比誘電率は、空気の誘電率よりも大きいため、冷媒の漏洩がある第1電極静電容量8aが冷媒の漏洩の影響を受け、冷媒の漏洩の影響がある第1電極静電容量8aと、冷媒の漏洩の影響がない第2電極静電容量8bとに差が生じる。従って、検出部6は、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の関係に基づき冷媒の漏洩を判定する。つまり、検出部6は、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、が一定の大小関係を有する場合、冷媒の漏洩があると判定することができる。
【0053】
なお、検出部6は、冷媒の漏洩の判定において、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の関係より、すぐに冷媒管1からの冷媒の漏洩があると判定する構成でよい。また、検出部6は、冷媒が漏洩していると判定する第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の関係が、予め設定された一定時間の間、連続した場合に、冷媒管1からの冷媒の漏洩があると判定する構成であってもよい。静電容量は、ノイズの影響を受けやすいため、ノイズの影響により瞬時的に静電容量の大きな変化が検出された場合に、一過性の静電容量の計測値で、冷媒漏洩の有無を判定すると、誤検出になる可能性がある。そのため、検出部6は、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの関係を検知してもすぐに冷媒漏洩として判定せずに、一定時間の間、状態が連続するか否かをモニタリングする。このような構成とすることで、検出部6は、ノイズによる誤検知が抑制され、より正確に冷媒の漏洩を検知できる。
【0054】
下記に冷媒漏洩検知装置100の検知精度を阻害する原因となる環境要因の影響に関して説明する。冷媒漏洩検知装置100は、屋内の空調機へ取り付けられた場合には、空調機の動作状況や季節の変化により温度や湿度の変化に晒される。また、冷媒漏洩検知装置100は、屋内の空調機に限らず屋外の空調機にも取り付けられるが、この場合には、屋内の空調機よりもさらに温度または湿度などの環境因子の変化に晒されることとなる。
【0055】
上述したように、静電容量は、2つ以上の導電体が誘電体を挟んで絶縁されて配置されている場合に発生するが、この場合の静電容量の値は、誘電体の誘電率と導電体の幾何形状とによって決定される。冷媒漏洩検知装置100は、2つの導電体である冷媒管1と電極4とが、誘電体である断熱材2を挟んで絶縁されて配置された構成である。従って、冷媒管1と電極4との間の静電容量は、断熱材2の誘電率と、冷媒管1と電極4との幾何形状によって変化する。
【0056】
誘電体である断熱材2の誘電率は、周囲の湿度の変化による断熱材2が保持できる水分量の変化、または、周囲の湿度の変化による冷媒管1と断熱材2との間の空隙14に含まれる水分量の変化により変化する。また、導電体である電極4および冷媒管1は、周囲の気温の変化が発生すると、少なくとも一方が膨張もしくは収縮し、寸法または形状が変化するため、その幾何形状が変化する。従って、2つの導電体である冷媒管1と電極4とが、誘電体である断熱材2を挟んだ構成においては、冷媒の漏洩がない場合も、冷媒管1と電極4と断熱材2とで環境要因の影響により生じる微小な変化に伴い、冷媒管1と電極4との間の静電容量に変動が生じる。
【0057】
冷媒漏洩検知装置100における第1電極4aと第2電極4bとは、類似の環境因子の影響を受けると考えられる。そのため、冷媒が漏洩していない定常状態においては、第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bは、類似の環境因子の影響に起因した類似の変動を示す。一方、例えば、第1電極4aと冷媒管1との間で冷媒が漏洩した場合、第1電極静電容量8aは、環境因子の影響に加え、冷媒の漏洩の影響を受けて変動するため、冷媒の漏洩の影響を受けていない第2電極静電容量8bと異なった変動を示す。
【0058】
従って、実施の形態1は、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとを比較することで、冷媒漏洩に起因する静電容量の変化を導き出すことができる。第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの変動を観察することで環境因子による静電容量の変動が取り除かれ、冷媒の漏洩に起因する静電容量の変化に基づいて冷媒の漏洩が検出される。
【0059】
以上説明した、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置100によれば、検出部6において、第1電極4aと冷媒管1との間の第1電極静電容量8aと、第2電極4bと冷媒管1との間の第2電極静電容量8bと、に基づき冷媒の漏洩が判定される。第1電極4aと第2電極4bとは、図1から図3に示すように、2つ1組となって空間を開けて独立して配置されているため、類似の環境因子の影響を受ける。また、第1電極4aと第2電極4bとは、電気的に接続されておらず、独立している。冷媒が漏洩していない定常状態においては、第1電極4aと冷媒管1との間の第1電極静電容量8aと、第2電極4bと冷媒管1との間の第2電極静電容量8bとは、類似の変動を示す。そのため、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとを比較することで環境因子の影響による静電容量の変化量が排除される。従って、冷媒漏洩検知装置100は、第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bの比較から、冷媒の漏洩に起因する静電容量の変化のみを取り出して冷媒の漏洩を検出することで誤検知を防ぎ、冷媒の漏洩の検知の正確化および高精度化に貢献できる。
【0060】
また、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの関係を評価することで、冷媒の漏洩が発生している電極4を特定することができる。
【0061】
また、冷媒管1全体における電極4の設置数を削減し、冷媒漏洩検知装置100のコストを低減できるとともに、配置箇所に尤度を持たせることもできる。
【0062】
また、冷媒漏洩検知装置100においては電極4を、冷媒管1の外表面を覆う断熱材2の外表面に配置するようにしたので、電極4の冷媒管1への取り付けが容易である。また、電極4を断熱材2の外表面に配置するようにしたので、電極4を無理に冷媒管1に直接取り付けるために断熱材2を破壊する必要がない。また、静電容量計測部5は、電極4の外表面に対向して配置されるため、静電容量計測部5は、電極4の外表面に隣接して配置されるので、静電容量計測部5の冷媒管1への取り付けが容易である。
【0063】
特に、第1電極4aおよび第2電極4bが可撓性を有する薄膜状の構成であると、既設配管に対して第1電極4aおよび第2電極4bの取り付けが容易となる。
【0064】
さらに、検知部3は、独立した2つの第1電極4aおよび第2電極4bにより構成され、第1電極4aおよび第2電極4bが間隔を開けて配置されている。このため、第1電極4aと第2電極4bと間の距離を任意に設定できるとともに、第1電極4aおよび第2電極4bに対する環境因子の影響を同様とすることができ、環境因子の影響を抑制することができる。
【0065】
また、第1電極4aおよび第2電極4bは、静電容量計測部5に接続され、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとが交互に測定されている。1つの静電容量計測部5を使用して2つの第1電極4aおよび第2電極4bが交互に測定されることで、環境因子の影響を受けることによる静電容量値の変動量を、2つの第1電極4aおよび第2電極4bで等しくすることができる。
【0066】
また、第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bそれぞれを測定する時間は、環境因子の変化時間よりも短い。そのため、環境因子の影響が抑制された第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bを計測できる。
【0067】
また、静電容量計測部5と電極4との間の配線、および、静電容量計測部5と冷媒管1との間の配線の長さをできる限り短縮するとよい。これにより、配線の浮遊容量および電磁ノイズが検出値に与える影響を低減できるため、冷媒漏洩の検知精度を向上させることができる。
【0068】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置200を示す構成図である。実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置200は、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の比を演算する静電容量演算部7を有する点で、実施の形態1と相違する。その他の構成は、実施の形態1と同じであるので、実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分についての詳しい説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、実施の形態2の冷媒漏洩検知装置200は、検知部3と、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6と、を有する。検知部3は、実施の形態1同様、冷媒管1を覆う断熱材2の外表面に配置された第1電極4aと、断熱材2の外表面に第1電極4aと独立して配置された第2電極4bとを備えている。静電容量計測部5は、実施の形態1同様、第1電極4aと冷媒管1との間の第1電極静電容量8aと、第2電極4bと冷媒管1との間の第2電極静電容量8bと、を測定する。
【0070】
静電容量演算部7は、静電容量計測部5から第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの計測値を取得し、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の比を演算する。静電容量演算部7は、静電容量計測部5に接続されており、静電容量計測部5が取得した第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの計測値を記憶するメモリを備えている。静電容量演算部7は、メモリに記憶された第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの計測値から、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の比を演算し、演算値を検出部6に出力する。
【0071】
検出部6には、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比の閾値があらかじめ設定されて記憶されている。検出部6は、静電容量演算部7から出力された第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの比に基づいて冷媒漏洩の有無を判定する。検出部6は、静電容量演算部7より得られた第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比が閾値qを超えた場合に冷媒管1から冷媒の漏洩があると判断する。
【0072】
図9は、実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置200による冷媒漏洩検知方法のフローチャートである。図9に示すように、冷媒漏洩検知方法は、検出ステップS02を有する。検出ステップS02は、例えば、制御装置50により実施される。検出ステップS02において、制御装置50は、第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bに基づいて冷媒の漏洩の検出を行う。
【0073】
検出ステップS02は、例えば、計測ステップS21と、演算ステップS22と、判定ステップS23と、を含む。計測ステップS21において、制御装置50は、静電容量計測部5により、一定時間ごとに、第1電極静電容量8a、および、第2電極静電容量8bを計測する。演算ステップS22において、制御装置50は、静電容量演算部7により、計測ステップS21において計測した第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの比の演算を行う。判定ステップS23において、制御装置50は、検出部6により、演算ステップS22で演算した比と、予め記憶している閾値との比較に基づいて冷媒の漏洩を判定する。
【0074】
図10は、実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置200の静電容量計測部5から取得した第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの計測値の一例を示すグラフである。図10において、横軸は時間を示し、縦軸は静電容量を示している。図10に示すように、例えば、第1電極4aで冷媒の漏洩が発生した場合、冷媒または冷凍機油の比誘電率は、空気の誘電率よりも大きいため、第1電極静電容量8aは増加する。静電容量計測部5による計測値は、冷媒の漏洩がある第1電極静電容量8aと、冷媒の漏洩のない第2電極静電容量8bとで差が生じる。
【0075】
図11は、図10の計測値を静電容量演算部7にて演算した演算値を示すグラフである。図11において、横軸は時間を示し、縦軸は第2電極静電容量8bに対する第1電極静電容量8aの比を示している。図11に示すように、静電容量演算部7は、静電容量計測部5で計測された第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの計測値から、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比を演算する。第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比は、検出部6において、予め記憶された閾値と比較される。第1電極静電容量8aで冷媒の漏洩が生じると、第1電極静電容量8aと、冷媒の漏洩のない第2電極静電容量8bとの比が増大する。検出部6は、第1電極静電容量8aと、冷媒の漏洩のない第2電極静電容量8bとの比を閾値と比較することで、冷媒管1からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【0076】
冷媒漏洩検知装置200は、実施の形態1と同様、温度または湿度などの環境因子の変化に晒され、冷媒管1と電極4との間の静電容量に変動が生じる。例えば、温度変化の際には、電極4および冷媒管1のうちの少なくとも1つが膨張もしくは収縮し、電極4および冷媒管1の寸法または形状が変化する。そのため、上述の数1の冷媒管1の外径D、電極4の内径D、空隙14の径方向Rの幅gが変化する。また、例えば、周囲の湿度の変化の際には、誘電体である断熱材2に保持される水分量、または、冷媒管1と断熱材2との間の空隙14に含まれる水分量が変化し、上述の数1の断熱材2の比誘電率εinsが変化する。
【0077】
このように、環境因子に変化があると、環境因子の変化に伴い、数1の冷媒管1の外径D、電極4の内径D、空隙14の径方向Rの幅g、または、断熱材2の比誘電率εinsが変化する。従って、2つの導電体である冷媒管1と電極4とが、誘電体である断熱材2を挟んだ構成においては、冷媒の漏洩がない場合であっても、環境要因の影響による冷媒管1と電極4と断熱材2とで生じる微小な変化に伴い、静電容量に変動が生じる。
【0078】
図10に示すように、第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの変化量は、第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの絶対値に対して相対的に変化する場合がある。例えば、第1電極4aと冷媒管1との間の第1電極静電容量8aが10pFで、第2電極4bと冷媒管1との間の第2電極静電容量8bが20pFであるとする。環境因子の変化によって第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bが10%増加すると仮定した場合、第1電極静電容量8aは11pFであって、第2電極静電容量8bは22pFとなる。環境因子の変動前の第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの差分は、10pFであるのに対し、環境因子の変動後の第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの差分は、11pFとなる。つまり、環境因子の変動前後において、第1電極静電容量8aの変化量は、1pFであって、第2電極静電容量8bの変化量は、2pfとなるため、それぞれの変化量が相対的に変化し、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの差分も変動する。従って、冷媒の漏洩がない場合であっても、環境因子の変動前後の第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの差分は、変動する。
【0079】
一方、図11に示すように、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比を求めた場合では、冷媒の漏洩がなければ、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比は、環境因子の変動前後で等しくなる。従って、実施の形態2は、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比を求めることで、環境因子による静電容量の変動を取り除いて、冷媒の漏洩に起因する第1電極静電容量8aおよび第2電極静電容量8bの変動を検出することができる。
【0080】
また、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比の増減を検出することで、冷媒の漏洩が発生している電極を特定することもできる。例えば、第1電極静電容量8aを第2電極静電容量8bで割った値を比とした場合において、比が増大すれば第1電極4aで冷媒が漏洩しており、比が減少すれば第2電極4bで冷媒が漏洩していることを特定することができる。
【0081】
上述では、静電容量演算部7は、静電容量計測部5で得られた第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比を演算した演算値を検出部6に出力し、検出部6において冷媒の漏洩を判定する構成を例に挙げているが、この限りではない。静電容量演算部7は、例えば、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの比の変化速度を演算し、検出部6において冷媒の漏洩を判定する構成であってもよい。
【0082】
図12は、実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置200において、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6とが一体化された構成を示す模式図である。図12に示すように、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6とは、装置本体20として一体化された構成であってもよい。その場合には、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6とは、同一の回路に形成し、同一基板上に配置されていればよい。静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6と、を一体化した場合には、一部分の部品を、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6とで共用することができる。そのため、冷媒漏洩検知装置200の構成に必要な部品数を減らすことができ、冷媒漏洩検知装置200の製造コストの低減およびコンパクト化ができる。
【0083】
以上説明した、実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置200によれば、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比を用いて冷媒の漏洩が検出される。第1電極4aと第2電極4bとは、空間を開けて独立して配置されており、第1電極4aと冷媒管1との間の第1電極静電容量8aと、第2電極4bと冷媒管1との間の第2電極静電容量8bとが、類似の環境因子の影響により変動する。そのため、実施の形態2は、第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bと、の比を求めることで、環境因子による静電容量の変動を取り除いて、冷媒の漏洩に起因する第1電極静電容量8aと、第2電極静電容量8bとの変動を検出することができる。これにより、冷媒漏洩検知装置200の誤検知が防止され、正確化および高精度化に貢献できる。
【0084】
また、静電容量演算部7において、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの測定値が記憶され、第1電極静電容量8aと第1電極静電容量8aとの関係が演算される。このため、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとを互いに比較することができる。
【0085】
また、検出部6は、静電容量演算部7において第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比などの関係に基づいて求めた演算値の増減により、第1電極4aまたは第2電極4bのいずれにより冷媒が漏洩した状態が検出されたかを特定することができる。
【0086】
また、静電容量演算部7は、第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比の変化速度を演算する構成であってもよい。これにより、環境因子の影響による静電容量の変動量をキャンセルし、冷媒漏洩検知装置200の誤検知が防止され、冷媒漏洩検知装置200の正確化、高精度化に貢献できる。
【0087】
また、検出部6は第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比の閾値を設定し、閾値を超えた場合に冷媒漏洩を検出する構成であってもよい。これにより、冷媒漏洩検知装置200の誤検知が防止され、冷媒漏洩検知装置200の正確化、高精度化に貢献できる。
【0088】
また、検出部6は第1電極静電容量8aと第2電極静電容量8bとの比の変化速度の閾値を設定し、閾値を超えた場合に冷媒漏洩を検出する構成であってもよい。これにより、冷媒漏洩検知装置200の誤検知が防止され、冷媒漏洩検知装置200の正確化、高精度化に貢献できる。
【0089】
また、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6とは、検知部3に近接して配置されている。そのため、検知部3と、静電容量演算部7と、検出部6とを接続している配線を短くでき、配線の静電容量値による影響を低減することができる。
【0090】
また、静電容量計測部5と、静電容量演算部7と、検出部6とは、一体化された冷媒漏洩検知回路を構成していてもよい。これにより、冷媒漏洩検知装置200の体積が減少し、省スペース化できる。
【0091】
その他の効果は実施の形態1の冷媒漏洩検知装置100の場合と同じであるので、実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分は、ここでは詳しい説明は省略する。
【符号の説明】
【0092】
1 冷媒管、2 断熱材、3 検知部、4 電極、4a 第1電極、4b 第2電極、5 静電容量計測部、5a 端子、6 検出部、7 静電容量演算部、8a 第1電極静電容量、8b 第2電極静電容量、9 電源、10a 第1スイッチ、10b 第2スイッチ、11 充放電回路、12 カウンター回路、13 カウント計測部、14 空隙、20 装置本体、50 制御装置、100 冷媒漏洩検知装置、200 冷媒漏洩検知装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12