(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179867
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086648
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
(72)【発明者】
【氏名】千代 憲隆
(57)【要約】
【課題】電力伝送特性と通信特性の両立が可能なコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、ワイヤレス電力伝送用の送電コイルC1と、送電コイルC1を囲むように配置された近距離無線通信用のアンテナコイルC2とを備える。送電コイルC1は、y方向に延在する第1区間S1と、x方向に延在する第2区間S2と、第1区間S1と第2区間S2の間に位置する第3区間S3とを含む。z方向から見た送電コイルC1の第1、第2及び第3区間S1,S2,S3とアンテナコイルC2の間のギャップは、それぞれ第1、第2及び第3幅W1,W2,W3を有し、第2幅W2は、第1幅W1よりも広く、且つ、第3幅W3よりも狭い。これによれば、電力伝送特性と通信特性の両立が可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと、
前記第1コイルを囲むように配置された第2コイルと、を備え、
前記第1コイルは、第1方向に延在する第1区間と、前記第1方向と直交する第2方向に延在する第2区間と、前記第1区間と前記第2区間の間に位置する第3区間とを含み、
コイル軸方向から見た前記第1コイルの前記第1、第2及び第3区間と前記第2コイルの間のギャップは、それぞれ第1、第2及び第3幅を有し、
前記第2幅は、前記第1幅よりも広く、且つ、前記第3幅よりも狭い、コイル部品。
【請求項2】
前記第1コイル及び前記第2コイルが形成された基材をさらに備え、
前記第2コイルは、前記基材の一方の表面に設けられた第1コイルパターンと、前記基材の他方の表面に設けられた第2コイルパターンを含み、
前記第1コイルパターンと前記第2コイルパターンは、前記コイル軸方向に重なる区間と重ならない区間を有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1及び第2コイルパターンは、前記第1方向に延在する第4区間と、前記第2方向に延在する第5区間と、前記第4区間と前記第5区間の間に位置する第6区間とを含み、
前記第1コイルパターンの第4区間は、前記第2コイルパターンの第4区間と重なり、
前記第1コイルパターンの第5区間は、前記第2コイルパターンの第5区間と重なり、
前記第1コイルパターンの第6区間は、前記第2コイルパターンの第6区間と重ならない、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1及び第2コイルパターンの前記第6区間は、前記第4区間側に位置し、前記第4区間から前記第5区間に向かって延在方向が前記第1方向から前記第2方向に徐々に変化する湾曲部と、前記第5区間側に位置し、前記第5区間の前記第1方向における位置を前記基材の面内方向における外側に広げる遷移部とを含む、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1コイル及び前記第2コイルと前記コイル軸方向に重なる磁性シートをさらに備え、
前記コイル軸方向から見た前記第1コイルの前記第3区間と前記第2コイルの前記第6区間の距離よりも、前記コイル軸方向から見た前記第2コイルの前記第6区間と前記磁性シートのコーナー部の距離の方が大きい、請求項3又は4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2コイルと前記磁性シートの前記コイル軸方向における距離よりも、前記第2コイルと前記磁性シートの端縁の前記基材の面内方向における距離よりの方が大きい、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1コイルは、前記基材の前記一方の表面に設けられた第3コイルパターンと、前記基材の前記他方の表面に設けられた第4コイルパターンを含み、
前記第3コイルパターンの内周端は、前記基材を貫通して設けられたスルーホール導体を介して前記第4コイルパターンの内周端に接続され、
前記第3コイルパターンの外周端は、第1端子電極に接続され、
前記第4コイルパターンの外周端は、第2端子電極に接続され、
前記第1コイルパターンの一部は、前記コイル軸方向から見て前記第4コイルパターンの前記外周端と前記第4コイルパターンの最外周ターンの間を横切るよう、前記第4コイルパターンと重なり、
前記第2コイルパターンの一部は、前記コイル軸方向から見て前記第3コイルパターンの前記外周端と前記第3コイルパターンの最外周ターンの間を横切るよう、前記第3コイルパターンと重なる、請求項2乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第2コイルの一端は、第3端子電極に接続され、
前記第2コイルの他端は、第4端子電極に接続され、
前記第1及び第2端子電極は、前記第3端子電極と前記第4端子電極に挟まれるよう配置されている、請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のコイル部品と、
前記第1コイルに接続される送電回路と、
前記第2コイルに接続される通信回路と、を備えるワイヤレス電力伝送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコイル部品は、ワイヤレス電力伝送用のコイルパターンを囲むように近距離無線通信(NFC)用のコイルパターンを配置した構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品では、ワイヤレス電力伝送用のコイルパターンを楕円形とし、NFC用のコイルパターンを略矩形としていることから、電力伝送特性と通信特性の両立が困難であった。
【0005】
したがって、本開示は、機能の異なる2つのコイルに求められる特性を両立可能なコイル部品及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるコイル部品は、第1コイルと、第1コイルを囲むように配置された第2コイルとを備え、第1コイルは、第1方向に延在する第1区間と、第1方向と直交する第2方向に延在する第2区間と、第1区間と第2区間の間に位置する第3区間とを含み、コイル軸方向から見た第1コイルの第1、第2及び第3区間と第2コイルの間のギャップは、それぞれ第1、第2及び第3幅を有し、第2幅は、第1幅よりも広く、且つ、第3幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、機能の異なる2つのコイルに求められる特性の両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【
図2】
図2は、基材10の一方の表面11に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
【
図3】
図3は、基材10の他方の表面12に形成された導体パターンの形状を示す略平面図であり、基材10の一方の表面11側から見た状態、つまり、基材10を透過して見た状態を示している。
【
図4】
図4は、第1コイルパターンCP1及び第3コイルパターンCP3と第2コイルパターンCP2及び第4コイルパターンCP4を重ねた状態を基材10の一方の表面11側から見た略平面図である。
【
図5】
図5は、コイル部品1の機能を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、コイル部品1を用いたワイヤレス電力伝送デバイス90のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【0011】
図1に示すように、一実施形態によるコイル部品1は、PETフィルムなどからなる基材10と、基材10の一方の表面11に設けられた第1コイルパターンCP1及び第3コイルパターンCP3と、基材10の他方の表面12に設けられた第2コイルパターンCP2及び第4コイルパターンCP4と、磁性シート30とを備えている。第3コイルパターンCP3及び第4コイルパターンCP4は、第1コイルの一例であるワイヤレス電力伝送用の送電コイルC1を構成する。第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2は、第2コイルの一例であるNFC用のアンテナコイルC2を構成する。送電コイルC1及びアンテナコイルC2のコイル軸方向はz方向であり、基材10と磁性シート30はz方向に重なるよう配置される。
図1に示す例では、基材10の一方の表面11が磁性シート30と向かい合っているが、基材10の他方の表面12が磁性シート30と向かい合っていても構わない。
【0012】
図2は、基材10の一方の表面11に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
【0013】
図2に示すように、基材10の一方の表面11には、第1コイルパターンCP1、第3コイルパターンCP3及び第1~第4端子電極E1~E4が形成されている。第1及び第2端子電極E1,E2は、第3端子電極E3と第4端子電極E4に挟まれるよう配置されており、これにより、送電コイルC1に流れる電流による影響が第3端子電極E3と第4端子電極E4に対してほぼ均等となることから、例えば、第1~第4端子電極E1~E4をこの順に並べて配置した場合と比べ、送電コイルC1によるノイズの影響が小さくなる。また、コイル部品1を組み込む機器との接続も容易となる。
【0014】
第3コイルパターンCP3は、ターン110,120,130,140,150,160からなる6ターン構成であり、ターン110が最外周に位置し、ターン160が最内周に位置する。このうち、ターン110,120,130,140,150は、スパイラル状の3本のスリットによって径方向に4分割されている。一方、ターン160は、スパイラル状の1本のスリットによって径方向に2分割されている。これにより、ターン110はライン111~114に4分割され、ターン120はライン121~124に4分割され、ターン130はライン131~134に4分割され、ターン140はライン141~144に4分割され、ターン150はライン151~154に4分割され、ターン160はライン161,162に2分割される。
【0015】
ライン111,121,131,141,151,161は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最外周に位置する。ライン112,122,132,142,152,162は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に外周に位置する。ライン113,123,133,143,153は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に内周に位置する。ライン114,124,134,144,154は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最内周に位置する。
【0016】
ライン111~114の外周端は、第1端子電極E1に共通に接続される。一方、ライン161,162,153,154の内周端は、基材10を貫通するスルーホール導体301~304にそれぞれ接続される。
【0017】
第3コイルパターンCP3は、第1方向であるy方向に延在する第1区間S1と、第2方向であるx方向に延在する第2区間S2と、第1区間S1と第2区間S2の間に位置する第3区間S3とを含む。ここで、端子電極E1~E4が配置された位置を時計の6時方向とした場合、第1区間S1は3時方向及び9時方向に位置し、第2区間S2は12時方向に位置する。
【0018】
第1コイルパターンCP1は、第3コイルパターンCP3を囲むよう第3コイルパターンCP3の外側に配置された導体パターン41と、導体パターン41とは別個に第3コイルパターンCP3の外側に配置された導体パターン42とを含む。このうち、導体パターン41は約1ターン巻回された連続的なラインであり、その開口領域(内径領域)に第3コイルパターンCP3が配置される。導体パターン41の一端は第3端子電極E3に接続され、導体パターン41の他端は基材10を貫通するスルーホール導体43に接続されている。また、導体パターン42の一端は第4端子電極E4に接続され、導体パターン42の他端は基材10を貫通するスルーホール導体44に接続されている。
【0019】
第1コイルパターンCP1は、y方向に延在する第4区間S4と、x方向に延在する第5区間S5と、第4区間S4と第5区間S5の間に位置する第6区間S6とを含む。ここで、端子電極E1~E4が配置された位置を時計の6時方向とした場合、第4区間S4は3時方向及び9時方向に位置し、第5区間S5は12時方向に位置する。
【0020】
図3は、基材10の他方の表面12に形成された導体パターンの形状を示す略平面図であり、基材10の一方の表面11側から見た状態、つまり、基材10を透過して見た状態を示している。
【0021】
図3に示すように、基材10の他方の表面12には、第2コイルパターンCP2及び第4コイルパターンCP4が形成されている。
【0022】
第4コイルパターンCP4のパターン形状は、第3コイルパターンCP3のパターン形状と同一である。第4コイルパターンCP4は、ターン210,220,230,240,250,260からなる6ターン構成であり、ターン210が最外周に位置し、ターン260が最内周に位置する。このうち、ターン210,220,230,240,250は、スパイラル状の3本のスリットによって径方向に4分割されている。一方、ターン260は、スパイラル状の1本のスリットによって径方向に2分割されている。これにより、ターン210はライン211~214に4分割され、ターン220はライン221~224に4分割され、ターン230はライン231~234に4分割され、ターン240はライン241~244に4分割され、ターン250はライン251~254に4分割され、ターン260はライン261,262に2分割される。
【0023】
ライン211,221,231,241,251,261は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最外周に位置する。ライン212,222,232,242,252,262は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に外周に位置する。ライン213,223,233,243,253は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に内周に位置する。ライン214,224,234,244,254は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最内周に位置する。
【0024】
ライン211~214の外周端は、スルーホール導体を介して、第2端子電極E2に共通に接続される。一方、ライン261,262,253,254の内周端は、スルーホール導体304,303,302,301にそれぞれ接続される。これにより、第1端子電極E1と第2端子電極E2の間には、11ターンのラインが4本並列に接続された構成を有する送電コイルC1が接続されることになる。
【0025】
第3コイルパターンCP3と同様、第4コイルパターンCP4は、y方向に延在する第1区間S1と、x方向に延在する第2区間S2と、第1区間S1と第2区間S2の間に位置する第3区間S3とを含む。
【0026】
第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン45は、約1ターン巻回された連続的なラインであり、第4コイルパターンCP4を囲むよう第4コイルパターンCP4の外側に配置される。つまり、第4コイルパターンCP4は、第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン45の開口領域(内径領域)に配置される。導体パターン45の一端及び他端はそれぞれスルーホール導体43,44に接続される。これにより、第1コイルパターンCP1及び第2コイルパターンCP2からなるアンテナコイルC2は、合計で約2ターンとなる。
【0027】
第1コイルパターンCP1と同様、第2コイルパターンCP2は、y方向に延在する第4区間S4と、x方向に延在する第5区間S5と、第4区間S4と第5区間S5の間に位置する第6区間S6とを含む。
【0028】
図4は、第1コイルパターンCP1及び第3コイルパターンCP3と第2コイルパターンCP2及び第4コイルパターンCP4を重ねた状態を基材10の一方の表面11側から見た略平面図である。
【0029】
図4に示すように、アンテナコイルC2を構成する第1コイルパターンCP1と第2コイルパターンCP2は、第4区間S4同士がz方向に重なり、且つ、第5区間S5同士がz方向に重なる一方、第6区間S6同士はz方向に重ならない。特に限定されるものではないが、第6区間S6においては、第1コイルパターンCP1を構成する導体パターン41よりも第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン45の方が外周側に位置している。このように、第1コイルパターンCP1と第2コイルパターンCP2が部分的に重なる構成とすることにより、第1コイルパターンCP1と第2コイルパターンCP2の間に生じる浮遊容量を低減しつつ、アンテナコイルC2のサイズを小型化することができる。特に、直線的に延在する区間S4,S5が重なることから、パターン設計も容易である。
【0030】
また、第6区間S6は、第4区間S4側に位置し、第4区間S4から第5区間S5に向かって延在方向がy方向からx方向に徐々に変化する湾曲部S6aと、第5区間S5側に位置し、第5区間S5のy方向における位置を基材10の面内方向における外側に広げる遷移部S6bとを有している。これにより、アンテナコイルC2の開口領域は、x方向における中央部においてy方向における幅が拡大されることから、通信対象であるアンテナコイルとのy方向における相対位置がずれた場合であっても、正しく通信を行うことが可能となる。
【0031】
さらに、送電コイルC1の第1区間S1とアンテナコイルC2の第4区間S4の間のギャップの第1幅をW1とし、送電コイルC1の第2区間S2とアンテナコイルC2の第5区間S5の間のギャップの第2幅をW2とし、送電コイルC1の第3区間S3とアンテナコイルC2の第6区間S6の間のギャップの第3幅をW3とした場合、
W1<W2<W3
を満たしている。つまり、第2幅W2は、第1幅W1よりも広く、且つ、第3幅W3よりも狭い。これにより、送電コイルC1のx方向における幅が十分に確保されることから、送電コイルC1と受電コイルのx方向における相対位置にズレが生じた場合であっても、正しく給電することができるとともに、第1幅W1よりも第2幅W2及び第3幅W3の方が広いことから、この部分において送電コイルC1とアンテナコイルC2の結合が弱められ、その結果、良好な通信特性を得ることが可能となる。特に、第3幅W3については、第2幅W2よりも拡大されていることから、アンテナコイルC2によって生じる磁束が第3幅W3を通過しやすくなり、通信特性がより向上する。送電コイルC1とアンテナコイルC2の間のギャップが第3幅W3となるのは、1時方向、2時方向、10時方向及び11時方向だけでなく、4時方向、5時方向、7時方向及び8時方向においても同様である。つまり、アンテナコイルC2の4時方向、5時方向、7時方向及び8時方向は、1時方向、2時方向、10時方向及び11時方向に位置する第6区間と同様のパターン形状を有しており、上述した湾曲部S6a遷移部S6bを有している。なお、本実施形態では、送電コイルC1及びアンテナコイルC2はx方向における幅寸法がy方向における幅寸法よりも大きい。
【0032】
また、z方向から見たアンテナコイルC2の第6区間S6と磁性シート30のコーナー部の距離をW4とした場合、
W3<W4
を満たしている。つまり、z方向から見た送電コイルC1の第3区間S3とアンテナコイルC2の第6区間S6の距離よりも、z方向から見たアンテナコイルC2の第6区間S6と磁性シート30のコーナー部の距離の方が大きい。これにより、磁性シート30の背面に金属部材が存在している場合であっても、z方向から見てアンテナコイルC2の外側に位置する磁性シート30の面積が十分に確保されることから、金属部材が発する反磁界の影響が低減される。
【0033】
さらに、
図1に示すように、アンテナコイルC2と磁性シート30のz方向における距離をW0とした場合、
W0<W4
を満たしている。つまり、アンテナコイルC2と磁性シート30のz方向における距離よりも、アンテナコイルC2と磁性シート30の端縁の基材10の面内方向における距離よりの方が大きい。これにより、アンテナコイルC2と磁性シート30のz方向における距離が近くなることから、磁性シート30の背面に金属部材が存在している場合であっても、金属部材が発する反磁界の影響が低減される。
【0034】
また、第1コイルパターンCP1を構成する導体パターン41のうち、スルーホール導体43の近傍に位置する部分は、第4コイルパターンCP4の外周端の近傍、つまり、第4コイルパターンCP4の外周端と最外周ターンの間を横切るよう、第4コイルパターンCP4とz方向に重なる。同様に、第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン45のうち、スルーホール導体43の近傍に位置する部分は、第3コイルパターンCP3の外周端の近傍、つまり、第3コイルパターンCP3の外周端と最外周ターンの間を横切るよう、第3コイルパターンCP3とz方向に重なる。これにより、送電コイルC1とアンテナコイルC2の重なりが最小限に抑えられることから、両者間の浮遊容量に起因する通信特性の劣化を防止することができる。
【0035】
図5は、コイル部品1の機能を説明するための模式図である。
【0036】
図5に示すように、本実施形態によるコイル部品1と通信対象である相手側機器2を、空間3を介して対向させると、送電コイルC1によって生じる磁束φ1は、相手側機器2に含まれる受電コイルC3と鎖交し、これによりワイヤレスによる電力伝送が実現される。また、アンテナコイルC2によって生じる磁束φ2は、相手側機器2に含まれるアンテナコイルC4と鎖交し、これによってNFCによる無線通信が実現される。
【0037】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、基材10の表面に形成した導体パターンによって、ワイヤレス電力伝送用の送電コイルC1とNFC用のアンテナコイルC2の両方を構成していることから、部品点数を削減することが可能となる。
【0038】
図6は、本実施形態によるコイル部品1を用いたワイヤレス電力伝送デバイス90のブロック図である。
【0039】
図6に示すワイヤレス電力伝送デバイス90は、送電コイルC1及びアンテナコイルC2を有するコイル部品1と、送電コイルC1に接続された送電回路91と、アンテナコイルC2に接続された通信回路92とを備えている。送電回路91及び通信回路92は、制御回路93に接続されている。これにより、通信ライン94を介して送受信されるデータは、NFC用のアンテナコイルC2を介して通信することができるとともに、電源95によって供給される電力は、ワイヤレス電力伝送用の送電コイルC1を介してワイヤレスで送電することができる。
【0040】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0041】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本開示によるコイル部品は、第1コイルと、第1コイルを囲むように配置された第2コイルとを備え、第1コイルは、第1方向に延在する第1区間と、第1方向と直交する第2方向に延在する第2区間と、第1区間と第2区間の間に位置する第3区間とを含み、コイル軸方向から見た第1コイルの第1、第2及び第3区間と第2コイルの間のギャップは、それぞれ第1、第2及び第3幅を有し、第2幅は、第1幅よりも広く、且つ、第3幅よりも狭い。これによれば、第1コイルを送電コイルとして用い、第2コイルをアンテナコイルとして用いた場合に、電力伝送特性と通信特性の両立が可能となる。
【0043】
本開示によるコイル部品は、第1コイル及び第2コイルが形成された基材をさらに備え、第2コイルは、基材の一方の表面に設けられた第1コイルパターンと、基材の他方の表面に設けられた第2コイルパターンを含み、第1コイルパターンと第2コイルパターンは、コイル軸方向に重なる区間と重ならない区間を有していても構わない。これによれば、第1コイルパターンと第2コイルパターンの間に生じる浮遊容量を低減しつつ、第2コイルのサイズを小型化することができる。
【0044】
また、第1及び第2コイルパターンは、第1方向に延在する第4区間と、第2方向に延在する第5区間と、第4区間と第5区間の間に位置する第6区間とを含み、第1コイルパターンの第4区間は第2コイルパターンの第4区間と重なり、第1コイルパターンの第5区間は第2コイルパターンの第5区間と重なり、第1コイルパターンの第6区間は第2コイルパターンの第6区間と重ならなくても構わない。これによれば、第2コイルのサイズをより小型化することができる。
【0045】
また、第1及び第2コイルパターンの第6区間は、第4区間側に位置し、第4区間から第5区間に向かって延在方向が第1方向から第2方向に徐々に変化する湾曲部と、第5区間側に位置し、第5区間の第1方向における位置を基材の面内方向における外側に広げる遷移部とを含んでいても構わない。これによれば、第2コイルをアンテナコイルとして用いた場合に、通信対象である相手方のアンテナコイルとの第1方向における相対位置がずれた場合であっても、正しく通信を行うことが可能となる。
【0046】
本開示によるコイル部品は、第1コイル及び第2コイルとコイル軸方向に重なる磁性シートをさらに備え、コイル軸方向から見た第1コイルの第3区間と第2コイルの第6区間の距離よりも、コイル軸方向から見た第2コイルの第6区間と磁性シートのコーナー部の距離の方が大きくても構わない。これによれば、磁性シートの背面に金属部材が存在している場合であっても、金属部材が発する反磁界の影響が低減される。
【0047】
また、第2コイルと磁性シートのコイル軸方向における距離よりも、第2コイルと磁性シートの端縁の基材の面内方向における距離よりの方が大きくても構わない。これによれば、磁性シートの背面に金属部材が存在している場合であっても、金属部材が発する反磁界の影響が低減される。
【0048】
また、第1コイルは、基材の一方の表面に設けられた第3コイルパターンと、基材の他方の表面に設けられた第4コイルパターンを含み、第3コイルパターンの内周端は、基材を貫通して設けられたスルーホール導体を介して第4コイルパターンの内周端に接続され、第3コイルパターンの外周端は第1端子電極に接続され、第4コイルパターンの外周端は第2端子電極に接続され、第1コイルパターンの一部は、コイル軸方向から見て第4コイルパターンの外周端と第4コイルパターンの最外周ターンの間を横切るよう第4コイルパターンと重なり、第2コイルパターンの一部は、コイル軸方向から見て第3コイルパターンの外周端と第3コイルパターンの最外周ターンの間を横切るよう第3コイルパターンと重なっても構わない。これによれば、第2コイルをアンテナコイルとして用いた場合に、第1コイルと第2コイルの間の浮遊容量に起因する通信特性の劣化を防止することができる。
【0049】
また、第2コイルの一端は第3端子電極に接続され、第2コイルの他端は第4端子電極に接続され、第1及び第2端子電極は、第3端子電極と第4端子電極に挟まれるよう配置されていても構わない。これによれば、第1コイルによるノイズの影響が小さくなるとともに、コイル部品を組み込む機器との接続も容易となる。
【0050】
また、本開示によるワイヤレス電力伝送デバイスは、上記コイル部品と、第1コイルに接続される送電回路と、第2コイルに接続される通信回路とを備える。これによれば、ワイヤレスによる電力伝送とNFCによる通信を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 コイル部品
2 相手側機器
3 空間
10 基材
11 基材の一方の表面
12 基材の他方の表面
30 磁性シート
41,42,45 導体パターン
43,44 スルーホール導体
90 ワイヤレス電力伝送デバイス
91 送電回路
92 通信回路
93 制御回路
94 通信ライン
95 電源
110,120,130,140,150,160,210,220,230,240,250,260 ターン
111~114,121~124,131~134,141~144,151~154,161,162,211~214,221~224,231~234,241~244,251~254,261,262 ライン
301~304 スルーホール導体
C1 送電コイル
C2 アンテナコイル
C3 受電コイル
C4 アンテナコイル
E1~E4 端子電極
S1 第1区間
S2 第2区間
S3 第3区間
S4 第4区間
S5 第5区間
S6 第6区間
S6a 湾曲部
S6b 遷移部
φ1,φ2 磁束