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特開2022-179868表示装置およびこれを用いた空間入力装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179868
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】表示装置およびこれを用いた空間入力装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20221129BHJP
   G09F 13/18 20060101ALI20221129BHJP
   G09F 13/00 20060101ALI20221129BHJP
   G06F 3/042 20060101ALI20221129BHJP
   G06F 3/0346 20130101ALI20221129BHJP
【FI】
G02B30/56
G09F13/18 N
G09F13/00 R
G06F3/042 473
G06F3/0346 421
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086656
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】安次嶺 勉成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
【テーマコード(参考)】
2H199
5B087
5C096
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BB12
2H199BB15
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB29
2H199BB30
2H199BB59
5B087AA07
5B087CC09
5C096AA01
5C096BA02
5C096BC12
5C096CB05
5C096CC06
5C096FA18
(57)【要約】
【課題】 視覚的に認知し易い空中像を表示可能な表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明の表示装置100は、第1の光学構造200と、第1の光学構造200に積層された第2の光学構造300とを含む。第1の光学構造200は、光源210、導光層220、反射層230、ハーフミラー240を含み、導光層220の底部224には、多重像410の意匠P1を生成するための光拡散面262が形成される。第2の光学構造300は、光源310、導光層320、再帰反射層330、ハーフミラー340を含み、導光層320の底部324には、空中像400の意匠P2を生成するための光拡散面362が形成される。ユーザーの視点Uから、空中像400と多重像410とが同時に観察され、空中像400に奥行感または立体感を与えることができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射を利用して空中像を表示可能な表示装置であって、
第1の導光層の第1の光拡散面で拡散または散乱された光により多重像を形成する第1の光学構造と、
第2の導光層の第2の光拡散面で拡散または散乱された光を再帰反射させて空中像を形成する第2の光学構造とを含み、
第1の光学構造と第2の光学構造とは積層関係にあり、かつ第1の光拡散面と第2の光拡散面とは重複しない位置に配置される、表示装置。
【請求項2】
前記第1の光学構造は、第1の導光層の上面側および底面側に形成された反射部材を含み、第1の導光層の側部から入射された光が第1の導光層の底面または底部に形成された第1の光拡散面によって拡散または散乱される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の光学構造は、第2の導光層の底面側に形成された再帰反射層を含み、第2の導光層の側部から入射された光が第2の導光層の底面または底部に形成された第2の光拡散面によって拡散または散乱される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の光学構造上に前記第2の光学構造が積層され、前記第1の光学構造は、反射層、当該反射層上に形成された第1の導光層、当該第1の導光層上に形成されたビームスプリッターを含み、前記第2の光学構造は、再帰反射層、当該再帰反射層上に形成された第2の導光層、当該第2の導光層上に形成されたビームスプリッターを含み、
前記第2の光学構造の上方から、第1の導光層の第1の光拡散面によって形成された多重像と第2の導光層の第2の光拡散面によって形成された空中像とが同時に観察可能である、請求項1ないし3いずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の光学構造上に前記第1の光学構造が積層され、前記第2の光学構造は、再帰反射層、当該再帰反射層上に形成された第2の導光層を含み、前記第1の光学構造は、反射層、当該反射層上に形成された第1の導光層、当該第1の導光層上に形成されたビームスプリッターを含み、
前記第1の光学構造の上方から、第1の導光層の第1の光拡散面によって形成された多重像と第2の導光層の第2の光拡散面によって形成された空中像とが同時に観察可能である、請求項1ないし3いずれか1つに記載の表示装置。
【請求項6】
第1の導光層に入射される光の色は、第2の導光層に入射される光の色と異なる、請求項1ないし5いずれか1つに記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2の光学構造はさらに、第2の導光層と前記再帰反射層との間にλ/4板を含み、第2の導光層の上面に形成されるビームスプリッターは、偏光ビームスプリッターである、請求項3に記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1つに記載の表示装置と、
前記表示装置により表示された空中の映像への物体の近接を検出する検出手段と、
を含む空間入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射を利用して空中に像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示に立体感を得る構成として、レンズ構造またはプリズム構造を付与することによって、立体視を可能とした、立体ディスプレイが特許文献1に開示されている。また、再帰反射を用いた空中表示(Aerial Imaging by Retro-Reflection:AIRR)が知られている。例えば、特許文献2の表示装置は、空中に形成される像をより広い角度から観察可能とするため、2つの再帰反射部材を用い、その一方の再帰反射部材を光源の出射軸上に配置している。特許文献3の画像表示装置は、画像の結像位置の調整を容易にするため、ハーフミラー、再帰反射部材、および画像出力装置をそれぞれ平行に配置し、ハーフミラーまたは画像出力装置の位置を変更し結像位置を調整可能にしている。特許文献4の画像表示装置は、画像の視認性の低下を抑制するため、光が位相差部材(λ/4板)を透過する回数を低減し、かつ再帰反射部材と位相差部材との間に埃などが入り込み難くしている。特許文献5の空中映像表示装置は、装置の薄型化を図るため、ビームスプリッターに対しディスプレイおよび再帰反射部材を平行に配置し、ディスプレイ上に偏向光学素子を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-517528号公報。
【特許文献2】特開2017-107165号公報
【特許文献3】特開2018-81138号公報
【特許文献4】特開2019-66833号公報
【特許文献5】特開2019-101055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1(A)に、空中像を表示する表示装置を空間入力装置に適用した例を示す。空間入力装置10は、空中像を生成する表示装置を収容したハウジング(構造物)20と、ハウジング20の上方に生成された空中像30への物体(例えば、ユーザーの指など)40の接近を検出する3次元距離センサ50とを含んで構成される。空中像30は、例えば、図1(B)に示すように左右のスクロールキー60、62や入力を指示するためのアイコン
画像70~80を含む。
【0005】
空中像30のみを表示する場合、ユーザーは、空中像30を見てもそれが背面の構造物20に表示されていると認識してしまい、そもそも空中像30と認識しない事態が度々起こる。これは、人の認知プロセスと関係しており、空中像30を見ても、脳内で背景の物体に重畳させてしまうことに起因するものである。空中像30を非接触デバイスとして使用する場合、ユーザーにそのことを視覚で認知させる必要があり、空中像をいかに目立たせ、かつ容易に認知させることができるのかが実装上の課題となっている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決し、視覚的に認知し易い空中像を表示可能な表示装置およびこれを用いた空間入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示装置は、再帰反射を利用して空中像を表示可能なものであって、第1の導光層の第1の光拡散面で拡散または散乱された光により多重像を形成する第1の光学構造と、第2の導光層の第2の光拡散面で拡散または散乱された光を再帰反射させて空中像を形成する第2の光学構造とを含み、第1の光学構造と第2の光学構造とは積層関係にあり、かつ第1の光拡散面と第2の光拡散面とは重複しない位置に配置される。
【0008】
ある態様では、前記第1の光学構造は、第1の導光層の上面側および底面側に形成された反射部材を含み、第1の導光層の側部から入射された光が第1の導光層の底面または底部に形成された第1の光拡散面によって拡散または散乱される。ある態様では、前記第2の光学構造は、第2の導光層の底面側に形成された再帰反射層を含み、第2の導光層の側部から入射された光が第2の導光層の底面または底部に形成された第2の光拡散面によって拡散または散乱される。ある態様では、前記第1の光学構造上に前記第2の光学構造が積層され、前記第1の光学構造は、反射層、当該反射層上に形成された第1の導光層、当該第1の導光層上に形成されたビームスプリッターを含み、前記第2の光学構造は、再帰反射層、当該再帰反射層上に形成された第2の導光層、当該第2の導光層上に形成されたビームスプリッターを含み、前記第2の光学構造の上方から、第1の導光層の第1の光拡散面によって形成された多重像と第2の導光層の第2の光拡散面によって形成された空中像とが同時に観察可能である。ある態様では、前記第2の光学構造上に前記第1の光学構造が積層され、前記第2の光学構造は、再帰反射層、当該再帰反射層上に形成された第2の導光層を含み、前記第1の光学構造は、反射層、当該反射層上に形成された第1の導光層、当該第1の導光層上に形成されたビームスプリッターを含み、前記第1の光学構造の上方から、第1の導光層の第1の光拡散面によって形成された多重像と第2の導光層の第2の光拡散面によって形成された空中像とが同時に観察可能である。ある態様では、第1の導光層に入射される光の色は、第2の導光層に入射される光の色と異なる。ある態様では、前記第2の光学構造はさらに、第2の導光層と前記再帰反射層との間にλ/4板を含み、第2の導光層の上面に形成されるビームスプリッターは、偏光ビームスプリッターである。
【0009】
本発明に係る空間入力装置は、上記記載の表示装置と、前記表示装置により表示された空中の映像への物体の近接を検出する検出手段とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空中像と多重像とを同時に形成するようにしたので、多重像によって空中像に奥行感または立体感を与え、空中像を目立たせ、これにより、空中像の誘目性を高め、空中像が認知され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の空中像を表示する表示装置を空間入力装置に適用した構成例を示す図である。
図2図2(A)は、本発明の第1の実施例に係る表示装置の概略断面図、図2(B)は、光拡散面により生成される意匠を模式的に表した斜視図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る表示装置の効果を説明する図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る第2の光学装置の変形例を示す概略断面図である。
図5図5(A)は、本発明の第2の実施例に係る表示装置の概略断面図、図5(B)は、光拡散面により生成される意匠を模式的に表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の表示装置は、特殊なメガネ等をかけなくても3次元空間内に再帰反射を用いた映像を表示する。ある態様では、本発明の表示装置は、空中に表示された映像を利用したユーザー入力インターフェースに適用される。なお、以下の実施例の説明で参照される図面は、発明の理解を容易にするために誇大した表示を含んでおり、実際の製品の形状やスケールをそのまま表したものではないことに留意すべきである。
【実施例0013】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。図2(A)は、本発明の第1の実施例に係る空中像を表示する表示装置の概略断面図、図2(B)は、導光層に形成された光拡散面の意匠を模式的に表した斜視図である。
【0014】
本実施例の表示装置は、2つの導光層を積層し、一方の導光層の光拡散面により空中像を形成し、他方の導光層の光拡散面により空中像の周囲または外側に奥行感のある多重像を形成し、これにより、空中像を目立たせ、誘目性を高め、空中像を視覚的に認知され易くする。
【0015】
表示装置100は、同図に示すように、第1の光学構造200と、第1の光学構造200の上方に配置された第2の光学構造300とを有する。第1の光学構造200は、光源210、導光層220、導光層220の下方に配置された反射層230、導光層220の上方に配置されたハーフミラー240を含んで構成される。
【0016】
光源210は、一定の出射角(または放射角)を持つ光L1をX方向に向けて出射する。出射された光L1は、透明な導光層220の側部222から内部に入射され、導光層220の内部を一様に照射する。光源210は、特に限定されないが、例えば、発光ダイオードやレーザーダイオードなどが用いられる。光源210が出射する光L1の色(波長)は特に限定されないが、例えば、第2の光源310が出射する光L2の色と同じであってもよいし、異ならせても良い。また、導光層210の側部222がY方向に一定の長さを有する場合には、導光層220の側部222のY方向に沿うように複数の光源210が配置されるようにしてもよい。さらに、導光層220の一方の側部から光L1を入射しているが、両側の側部から光を入射するようにしてもよい。
【0017】
導光層220は、平坦な上面、平坦な下面および上面と下面とを接続する側面とを備えた透明な板状またはフィルム状の光学部材である。導光層220は、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、アクリル製のプラスチック、ポリカーボネート樹脂、あるいはシクロオレフィン系樹脂などから構成される。導光層220は、光源210からの光L1を側部222から入射するためにZ方向に一定の厚さを有する。
【0018】
導光層220の底部または底面224には、入射した光L1をZ方向に拡散するための光拡散面226が形成される。光拡散面226は、例えば、導光層220の底面224をレーザー加工や印刷加工することにより形成される。光拡散面226は、空中像の周囲または外側に多重像を形成するための意匠(原画像)を生成するものであり、その意匠は、空中像との関係において任意に決定される。図の例では、光拡散面226は、リング状または環状の意匠P1を生成するように加工される。
【0019】
導光層220の底面224に接するように反射層230が配置される。反射層230は、例えば、導光層220の底面224と同形状の板状、フィルム状、または薄膜状の部材であり、その材料は特に限定されない。反射層230は、導光層220内に入射された光L1を全反射する。
【0020】
導光層220の上面に接するようにハーフミラー240が配置される。ハーフミラー240は、例えば、導光層220の上面と同形状を有し、入射光を反射光と透過光に分離する透明な光学部材である。ハーフミラー240は、例えば、平板状のガラスまたはプラスチック等の基板の表面や裏面に誘電体多層膜や反射防止膜などを形成して構成される。ここでは、反射光量と透過光量とが等しいハーフミラー240を例示するが、光源210の輝度や空中像の輝度に応じて反射光量と透過光量との比を異なるビームスプリッターを用いてもよい。
【0021】
導光層220の側部222から入射した光L1は、X方向に進行し、光拡散面226でZ方向に拡散または散乱され、光拡散面226で拡散または散乱した光は、反射層230とハーフミラー240との間で多重反射を繰り返す。ユーザーがZ方向の視点Uから観察したとき、合わせ鏡の効果により意匠P1の多重の虚像が第1の光学構造200の背面に生成される。
【0022】
第2の光学構造300は、光源310、導光層320、導光層320の下方に配置された再帰反射層330、導光層320の上方に配置されたハーフミラー340を含んで構成される。
【0023】
光源310は、一定の出射角(または放射角)を持つ光L2をX方向に向けて出射する。出射された光L2は、透明な導光層320の側部322から内部に入射され、導光層320の内部を一様に照射する。光源310は、光源210と同様に、例えば、1つまたは複数の発光ダイオードやレーザーダイオードを含んで構成される。なお、光源310の光L2と光源210の光L1とが同じ色の場合には、単一の光源から出射する光をビームスプリッター等により2つに分割し、分割された光を導光層220、320にそれぞれ出射するようにしてもよい。
【0024】
導光層320は、平坦な上面、平坦な下面および上面と下面とを接続する側面とを備えた透明な板状またはフィルム状の光学部材であり、導光層220と同様の部材から構成される。導光層320は、光源310の光L2を側部322から入射するためにZ方向に一定の厚さを有する。
【0025】
導光層320の底部または底面324には、入射した光をZ方向に拡散するための光拡散面326が形成される。光拡散面326は、例えば、導光層320の底面324をレーザー加工や印刷加工することにより形成される。光拡散面326は、空中像を形成するための意匠(原画像)を生成するものであり、その意匠は任意に決定される。図の例では、光拡散面326は、光拡散面226よりも内側または内周に位置し、中央に開口が形成された三角形状の意匠P2を生成するように加工される。
【0026】
導光層320の底面に接するように再帰反射層330が形成される。再帰反射層330は、入射光と同じ方向に光を反射する光学部材であり、その構成は特に限定されないが、例えば、三角錐型再帰反射素子、フルキューブコーナー型再帰反射素子などのプリズム型再帰反射素子やビーズ型再帰反射素子によって構成される。再帰反射層330は、光拡散面226と干渉しない位置であって、つまり光拡散面226よりも内側の位置であって、かつ光拡散面326と概ね重なるように(ここでは、意匠P2が中央に開口を有するので、当該開口を遮蔽するように)に配置される。
【0027】
導光層320の上面に接するようにハーフミラー340が配置される。ハーフミラー340は、例えば、導光層320の上面と同形状を有し、ハーフミラー240と同様に構成される。ここでは、反射光量と透過光量とが等しいハーフミラー340を例示するが、光源310の輝度や空中像の輝度に応じて反射光量と透過光量との比を異なるビームスプリッターを用いてもよい。
【0028】
導光層320の側部322から入射した光L2は、X方向に進行し、光拡散面326でX方向に拡散または散乱され、この拡散または散乱した光は、ハーフミラー340で一部が反射され、その反射光が再帰反射層330に入射される。再帰反射層330に入射した光は、入射した光と同じ方向に反射され、その一部がハーフミラー340を透過し再び結像する。ユーザーのZ方向の視点Uからは、第2の光学構造300から浮かび上がった意匠P2の空中像400が観察される。また、空中像400と同時に、空中像400の外周に生成された意匠P1の多重像410も観察される。
【0029】
図3は、意匠P1の多重像410と意匠P2の空中像400との関係を模式的に示した斜視図である。第1の光学構造200は、合わせ鏡効果により意匠P1の多重反射を生じさせ現物の厚み以上の奥行き感のある多重虚像410を演出する。第2の光学構造300は、意匠P2の空中像400を多重虚像410の内側または内周に形成する。空中像400の周辺に多重虚像410を表現することで、奥行き感のある映像の中心に空中映像が浮かぶ演出を、小型/薄型の積層構造の表示装置100で実現することが可能となる。
【0030】
このように、2層を複合化させた薄型空中映像素子内に第1の層の意匠P1と第2の層の意匠P2が同時に見えるように光学配置することで、空中像400の立体感が強調され、誘目性が高くなり、初見でも空中表示と認知される確率を高めることができる。また、光源210の色を光源310の色と異ならせることによって、空中像400をより目立たせることも可能である。
【0031】
なお、空中像を生成する第2の光学構造は、図2の構成に限らず、例えば、図4に示すような構成であってもよい。第2の光学構造300Aは、導光板320の上部に、ハーフミラー340に代えて偏光ビームスプリッター350を配置し、導光層320と再帰反射層330との間にλ/4板360を配置する。
【0032】
偏光ビームスプリッター350は、入射光をp偏光成分とs偏光成分とに分割することができる偏光分離素子であり、ある特定の方向に直線偏光された光成分を透過することができる。仮に、光源310から入射された光L2が種々の偏光成分を含む無偏光の光であるとき、光拡散面326で反射された光の一部が偏光ビームスプリッター350を透過し、それ以外の光が偏光ビームスプリッター350によって反射される。もし、光源310から入射された光L2が直線偏光である場合には、偏光ビームスプリッター350が透過する直線偏光の方向を、入射光L2の直線偏光の方向と異なるように設定し、光L2の大部分が偏光ビームスプリッター350で反射されるようにする。
【0033】
λ/4板360は、導光層320から入射された光に位相差π/2(90度)を与えて透過させる。例えば、直線偏光の光が入射されれば、これは円偏光(または楕円偏光)に変換され、円偏光(または楕円偏光)が入射されれば、直線偏光に変換される。
【0034】
再帰反射層330は、λ/4板360を透過した光を入射光と同じ方向に反射する。再帰反射層330で反射された光は、再びλ/4板360を透過するとき、位相差π/2を与えられる。このため、λ/4板360を透過した光は、λ/4板36に入射したときの光と位相差πを有する。例えば、λ/4板360に入射した光が直線偏光であれば、λ/4板360を透過したとき円偏光(または楕円偏光)となり、この円偏光は、再帰反射層330で奇数回再帰反射されたとき、逆方向の円偏光となり、この逆方向の円偏光がλ/4板360を透過したとき、元の直線偏光とは180度異なる方向の直線偏光となる。こうして、λ/4板360を透過した光が偏光ビームスプリッター350に入射されると、反射した光の大部分が偏光ビームスプリッター350を透過し、透過した光が結像し、空中像が形成される。
【0035】
次に、本発明の第2の実施例に係る表示装置100Aを図5に示す。本実施例の表示装置100Aは、第1の実施例のときと積層方向を反転し、第2の光学構造300の上方に第1の光学構造200を積層する。第2の光学構造300の導光層320の底面324に光拡散面326が形成される。光拡散面326は、三角形状の意匠P2を形成するように加工される。再帰反射層330は、意匠P2の空中像400を生成するように導光層320の底面に配置される。
【0036】
一方、第1の光学構造200の導光層220の底面224の外周部分に光拡散面226が形成される。光拡散面226は、リング状の意匠P1を形成するように加工される。意匠P1は、意匠P2と重複しない位置に形成される。光拡散面226の下方には、リング状の反射層230が形成される。反射層230の中央の開口232は、空中像400が遮蔽されないように光拡散面326および再帰反射層330を露出させる大きさを有する。すなわち、光拡散面326でZ方向に拡散または散乱した光は、開口232を介して第1の光学構造200のハーフミラー240で一部が反射され、その反射光が再帰反射層330に入射され、この入射した光が再帰反射層330によって同一方向に反射され、この反射光の一部がハーフミラー240を透過し、空中像400を生成する。
【0037】
こうして、ユーザーの視点Uから見た映像には、第2の光学構造300により生成された意匠P2の空中像400の周囲に、第1の光学構造200により生成された意匠P1の多重虚像410が映しだされ、空中像400に奥行感が与えられ、空中像の認知が容易になる。また、本実施例では、第2の光学構造300を第1の光学構造200の下方に配置することで、空中像400が浮かび上がる距離Dを第1の実施例のときよりも大きくすることができ、より立体感のある空中像を表示させることができる。
【0038】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、第1または第2の実施例の表示装置をユーザー入力インターフェースに適用した空間入力装置に関する。空間入力装置は、図1で説明したように、本実施例の表示装置100、100Aにより空中像400を表示させ、空中像400への物体(例えば、ユーザーの指など)の近接を検出するセンサとを含んで構成される。センサは、特に構成を限定されないが、例えば、3次元距離センサで物体の近接を検知したり、撮像カメラで撮像した画像データを解析して物体の近接を検知する。
【0039】
本実施例の空間入力装置は、あらゆるユーザー入力に適用することができ、例えば、コンピュータ装置、車載用電子機器、銀行等のATM、駅等のチケットの購入機、エレベータの入力ボタンなどに適用することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
100:表示装置 200:第1の光学構造
210:光源 220:導光層
222:側部 224:底部
226:光拡散面 230:反射層
240:ハーフミラー 300:第2の光学構造
310:光源 320:導光層
322:側部 324:底部
326:光拡散面 330:再帰反射層
340:ハーフミラー
図1
図2
図3
図4
図5