(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179871
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】火災予防剤
(51)【国際特許分類】
C09K 21/04 20060101AFI20221129BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C09K21/04
C09K21/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086662
(22)【出願日】2021-05-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】500412736
【氏名又は名称】有限会社リスピー二十一環境開発研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(72)【発明者】
【氏名】曽根 音重
【テーマコード(参考)】
4H028
【Fターム(参考)】
4H028AA05
4H028AA07
(57)【要約】
【課題】1回の塗布でも適優れた難燃効果を発揮する火災予防剤を提供する。
【解決手段】二酸化ケイ素含有組成物と水とリン酸アンモニウム含有組成物とケイ素含有撥水組成物と臭化アンモニウム含有組成物とを含んでおり、水は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して70~90質量部、リン酸アンモニウム含有組成物は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して135~165質量部、ケイ素含有撥水組成物は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して20~30質量部、臭化アンモニウム含有組成物は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して15~25質量部である。1回の塗布で被対象物に対して優れた難燃効果を発揮させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素含有組成物と、水と、リン酸アンモニウム含有組成物と、ケイ素含有撥水組成物と、臭化アンモニウム含有組成物と、を含んでおり、
前記水は、
前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、70~90質量部であり、
前記リン酸アンモニウム含有組成物は、
前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、135~165質量部であり、
前記ケイ素含有撥水組成物は、
前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、20~30質量部であり、
前記臭化アンモニウム含有組成物は、
前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、15~25質量部である
ことを特徴とする火災予防剤。
【請求項2】
前記二酸化ケイ素含有組成物の含有量が、
溶剤全体中において20~35質量%であり、
前記水の含有量が、
溶剤全体中において、18~25質量%であり、
前記リン酸アンモニウム含有組成物の含有量が、
溶剤全体中において、30~45質量%であり、
前記ケイ素含有撥水組成物の含有量が、
溶剤全体中において、5~10質量%であり、
前記臭化アンモニウム含有組成物の含有量が、
溶剤全体中において、3~7質量%である
ことを特徴とする請求項1記載の火災予防剤。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素含有組成物が、
シリカゾルと、シリカゲルと、を含み、
該シリカゲルは、
前記シリカゾル100質量部に対して、3~10質量部である
ことを特徴とする請求項1または2記載の火災予防剤。
【請求項4】
前記シリカゾルが日揮触媒化成株式会社製のSI-30であり、該シリカゾルを120g、
前記シリカゲルが水澤化学工業株式会社製のSNであり、該シリカゲルを6g、
前記水を96g、
前記リン酸アンモニウム含有組成物が太平化学産業株式会社製のタイエン Nであり、該リン酸アンモニウム含有組成物を180g、
前記ケイ素含有撥水組成物が大同塗料株式会社製のアクアシール 50E(アクアシール:大同塗料株式会社の登録商標)であり、該ケイ素含有撥水組成物を30g、
前記臭化アンモニウム含有組成物がマナック株式会社製の化学用臭化アンモニウムであり、該臭化アンモニウム含有組成物を25g、
それぞれ含有したものである
ことを特徴とする請求項3記載の火災予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災予防剤に関する。さらに詳しくは、被対象物に塗布することにより難燃性を付与する火災予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの建築用部材は、加工性の観点から木製のものが多く採用されている。しかし、このような木製の建築用部材は、火に弱いという欠点がある。
そこで、火災が発生した場合でも、このような建築用部材を燃えにくくするための様々な技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、このような耐火性が低い建築用部材に対して、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、ハロゲン化合物などの難燃性を有する難燃化合物を含有した難燃剤を塗布したり、含浸するといった技術が開示されている。建築用部材に対して特許文献1の難燃剤を塗布等することによって、建築用部材の耐火性を向上させることができるので、火災が生じても燃えにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の難燃剤は、十分な効果を発揮させるためには複数回の塗布などが要求されているというのが実情であり、定期的な塗布等を行えないような状況や、コスト等の問題もあることから、1回の塗布で適切な効果を発揮する防炎剤などの開発が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、1回の塗布でも適優れた難燃効果を発揮する火災予防剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の火災予防剤は、二酸化ケイ素含有組成物と、水と、リン酸アンモニウム含有組成物と、ケイ素含有撥水組成物と、臭化アンモニウム含有組成物と、を含んでおり、前記水は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、70~90質量部であり、前記リン酸アンモニウム含有組成物は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、135~165質量部であり、前記ケイ素含有撥水組成物は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、20~30質量部であり、前記臭化アンモニウム含有組成物は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、15~25質量部であることを特徴とする。
第2発明の火災予防剤は、第1発明において、前記二酸化ケイ素含有組成物の含有量が、溶剤全体中において20~35質量%であり、前記水の含有量が、溶剤全体中において、18~25質量%であり、前記リン酸アンモニウム含有組成物の含有量が、溶剤全体中において、30~45質量%であり、前記ケイ素含有撥水組成物の含有量が、溶剤全体中において、5~10質量%であり、前記臭化アンモニウム含有組成物の含有量が、溶剤全体中において、3~7質量%であることを特徴とする。
第3発明の火災予防剤は、第1発明または第2発明において、前記二酸化ケイ素含有組成物が、シリカゾルと、シリカゲルと、を含み、該シリカゲルは、前記シリカゾル100質量部に対して、3~10質量部であることを特徴とする。
第4発明の火災予防剤は、第3発明において、前記シリカゾルが日揮触媒化成株式会社製のSI-30であり、該シリカゾルを120g、前記シリカゲルが水澤化学工業株式会社製のSNであり、該シリカゲルを6g、前記水を96g、前記リン酸アンモニウム含有組成物が太平化学産業株式会社製のタイエン Nであり、該リン酸アンモニウム含有組成物を180g、前記ケイ素含有撥水組成物が大同塗料株式会社製のアクアシール 50E(アクアシール:大同塗料株式会社の登録商標)であり、該ケイ素含有撥水組成物を30g、前記臭化アンモニウム含有組成物がマナック株式会社製の化学用臭化アンモニウムであり、該臭化アンモニウム含有組成物を25g、それぞれ含有したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明の火災予防剤を被対象物に対して付着させれば、優れた難燃効果を発揮させることができる。また、無機系非ハロゲン系難燃剤を用いているので、安心して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の火災予防剤(以下、単に火災予防剤という)は、被対象物に塗布することにより、難燃機能と防炎機能を発揮することができるようにしたことに特徴を有している。
【0011】
火災予防剤の塗布対象となる被対象物とは、火災から防ぎたいものを対象となる。例えば、建物の骨組みに使用される木材、壁材などの内装部材、壁紙、襖などの内装用クロス、カーテン類のほか、単なるタオルなどの布部材や、書類等も挙げることができる。カーテン類とは、窓などに取り付けて外部の光をある程度遮光する機能を有するものの他、部屋の間仕切りに使用するようなものも含む概念である。
例えば、カーテンやロールカーテン、間仕切り布などを挙げることができる。また、カーテン類の素材もとくに限定されず、例えば、布製、紙製、木製、樹脂製等のものを挙げることができる。つまり、家屋や神社、仏閣などの木造建築物はもちろん、内装品、紙製の重要書類なども被対象物とすることができる。
【0012】
火災予防剤は、被対象物に対して火災予防剤を付着させた状態で使用される。
被対象物に火災予防剤を「付着」させるとは、被対象物の表面に火災予防剤の層を形成させることや、被対象物の表面から内部に火災予防剤を含浸させるようなことも含む概念である。例えば、漆塗りの柱などに火災予防剤をスプレー等を用いて吹き付けるようにして塗布することにより、かかる柱表面に火災予防剤の塗膜層を形成してもよいし、吸水性の被対象物(例えば、木材や布製のカーテン、壁紙など)に火災予防剤を塗布することにより、カーテンなどに火災予防剤を含浸させたりして使用することができる。もちろん、後者の被対象物に対してスプレー等を用いて塗布するようにして火災予防剤を付着させてもよい。例えば、はけ塗り、ローラー塗り、吹付塗装、エアスプレー、ロールコーター、等を挙げることができる。また、浸漬塗り、加圧含浸法等といった方法を用いれば、火災予防剤を布製の被対象物の内部にまで含浸させることもできる。
【0013】
なお、火災予防剤は、被対象物に付着することができれば、その態様はとくに限定されず、被対象物に応じて適宜調整することができる。
例えば、液体状のものの他、固体状、ペースト状、粉末状など被対象物に応じて適宜選択することができる。例えば、吹き付け用として用いる場合には、粘性が低くなるように調整すればよいし、刷毛を用いて塗布する場合には、増粘剤などを加えて用いることができる。
【0014】
火災予防剤は、少なくとも、二酸化ケイ素含有組成物と、リン酸アンモニウム含有組成物と、ケイ素含有撥水組成物と、臭化アンモニウム含有組成物と、を水に溶解または分散させたものである。
【0015】
火災予防剤が含有する各組成物の概略を以下説明する。
火災予防剤の二酸化ケイ素含有組成物は、二酸化ケイ素を含有する組成物であり、周囲の大気中の存在するガス状の物質を吸着する機能を有している。
火災予防剤のリン酸アンモニウム含有組成物は、リン酸アンモニウムを含有する組成物であり、難燃性を発揮する機能を有している。一方、このリン酸アンモニウム含有組成物は、潮解性を有する組成物でもある。そこで、火災予防剤は、ケイ素含有撥水組成物を含有している。このケイ素含有撥水組成物は、ケイ素系の組成物であり、乾燥させることにより、撥水性を発揮する機能を有している。
火災予防剤の臭化アンモニウム含有組成物は、臭化アンモニウムを含有する組成物であり、リン酸アンモニウム含有組成物と同様に難燃性を発揮する機能を有している。しかも、この臭化アンモニウム含有組成物は、リン酸アンモニウム含有組成物よりも耐熱が高い組成物である。そして、火災予防剤において、リン酸アンモニウム含有組成物とともに存在させることにより、リン酸アンモニウム含有組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0016】
以上のごとき機能を有する複数の組成物を含有しているので、火災等が生じた際に、火災予防剤を付着した被対象物に対して難燃性を付与することができるので、火災等から被対象物を保護することができる。
【0017】
とくに、火災予防剤は、難燃性を有する組成物として、臭化アンモニウム含有組成物とリン酸アンモニウム含有組成物を含有することにより、両者の耐熱性の温度を向上させることができる。そして、臭化アンモニウム含有組成物がリン酸アンモニウム含有組成物よりも高い耐熱性を有しているので、火災時において、臭化アンモニウム含有組成物を、リン酸アンモニウム含有組成物の安定剤としても機能させることができる。
このため、周囲の高い温度になった場合でもリン酸アンモニウム含有組成物が有する難燃機能を適切に発揮させることができる。
【0018】
例えば、一般的な火災の温度が800℃~850℃程度といわれている。通常、難燃効果を有する化合物(火災予防剤に含まれるリン酸アンモニウム含有組成物に相当する化合物)は、単独の場合、一般的な火災の温度(800℃程度)で分解してしまい、難燃性が失活することが知られている。
しかしながら、火災予防剤は、このような状況においても、臭化アンモニウム含有組成物とリン酸アンモニウム含有組成物を併存させることにより、火災予防剤を塗布した被対象物の周囲が一般的な火災温度以上(例えば、800℃以上~950℃程度)になった場合でも、両者の相互作用により、火災予防剤に含まれるリン酸アンモニウム含有組成物が有する難燃性を失活させることなく、上記のような高温でも難燃効果を適切に発揮できるようになっている。とくに、火災予防剤がケイ素含有撥水組成物を含有することにより、被対象物の周囲が一般的な火災温度以上(例えば、800℃以上~950℃程度)になった場合でも、より適切に難燃性効果を発揮させることができる。
【0019】
また、火災予防剤はケイ素含有撥水組成物を含有しているので、被対象物に火災予防剤を付着し乾燥すれば、その表面に撥水性の膜を形成させることができる。
このため、火災予防剤を被対象物に対して塗布等により付着させた状態で乾燥させれば、長期間にわたって火災予防剤が潮解することなく付着させた状態を維持させることができる。
【0020】
従来の防炎剤などの場合、含有する難燃化合物による潮解の影響により防炎機能が低下するため、防炎機能を適切に発揮するために定期的な塗布が要求されている。
しかし、本実施形態の火災予防剤であれば、上記のごとく1回の塗布などで従来の防炎剤(一般的に数年に1回の塗布が必要と言われている)と比べてより長い期間(例えば、5年~10年)、優れた難燃効果を維持させることができるので、塗布などの作業回数を減らすことができ、経済的である。
しかも、屋内での作業の場合、作業時間を長くなることから、定期的な塗布作業等を怠りがちになることがあるが、本実施形態の火災予防剤であれば、1回の塗布等で従来の防炎剤と比べて長期間にわたって難燃効果を発揮させることができるので、上記のようなことを抑制できるという利点もある。
【0021】
さらに、火災予防剤は二酸化ケイ素含有組成物を含有しているので、周囲の有害なガス状の物質を火災予防剤に吸収・吸着させることができるようになっている。この吸収・吸着機能は、被対象物に火災予防剤を付着させた状態から発揮させることができるので、火災時に発生する有毒なガス(例えば、一酸化炭素など)を吸着し除去することはもちろん、平常時にあればシックハウス症候群などの原因物質(例えば、ホルムアルデヒドなど)はもちろん、有機ガス(例えば、アルコールや、エーテル、ベンゼン、ガソリンなど)なども吸収・吸着し周囲の大気中からこれらの物質を除去することができる。
【0022】
SDGs(持続可能な開発目標)が掲げられている現代において、火災予防剤は、国際的条件をクリアし、人命を救い人々の健康や地球環境にやさしく対応できる非ハロゲン系難燃剤となっている。
【0023】
火災予防剤が含有する各組成物の含有率は、上記のごとき各組成物の機能を適切に発揮させる上では、以下のように調整するのが好ましい。
【0024】
(リン酸アンモニウム含有組成物の含有量)
火災予防剤のリン酸アンモニウム含有組成物の含有量は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、135~165質量部であり、より好ましくは140~160質量部であり、さらに好ましくは140~150質量部であり、さらにより好ましくは140~145質量部である。
例えば、リン酸アンモニウム含有組成物は、二酸化ケイ素含有組成物を126gとした場合、180g(つまり、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して143質量部)となるように調整することができる。
【0025】
また、火災予防剤のリン酸アンモニウム含有組成物の含有量は、溶剤全体中の含有量としても表すことができる。
例えば、二酸化ケイ素含有組成物の含有量が、溶剤全体中において30~45質量%であり、好ましくは35~40質量%であり、さらに好ましくは39質量%となるように調整することができる。
【0026】
なお、火災予防剤のリン酸アンモニウム含有組成物は、リン酸アンモニウムを含有する組成物であり、難燃性を発揮する機能を有していれば、とくに限定されない。例えば、太平化学産業株式会社製のタイエン Nや、米山化学産業株式会社製のリン酸アンモニウムなどを挙げることができる。
【0027】
(臭化アンモニウム含有組成物の含有量)
火災予防剤の臭化アンモニウム含有組成物の含有量は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、15~25質量部であり、より好ましくは17~23質量部である。
例えば、臭化アンモニウム含有組成物は、二酸化ケイ素含有組成物を126gとした場合、25g(つまり、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して20質量部)となるように調整することができる。
【0028】
また、火災予防剤の臭化アンモニウム含有組成物の含有量は、溶剤全体中の含有量としても表すことができる。
例えば、溶剤全体中において、3~7質量%であり、好ましくは5質量%となるように調整することができる。
【0029】
なお、火災予防剤の臭化アンモニウム含有組成物は、臭化アンモニウムを含有する組成物であり、難燃性を発揮する機能を有していれば、とくに限定されない。例えば、マナック株式会社製の化学用臭化アンモニウムなどを挙げることができる。
【0030】
(ケイ素含有撥水組成物の含有量)
火災予防剤のケイ素含有撥水組成物の含有量は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、20~30質量部であり、より好ましくは22~26質量部である。
例えば、ケイ素含有撥水組成物は、二酸化ケイ素含有組成物を126gとした場合、30g(つまり、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して24質量部)となるように調整することができる。
【0031】
また、火災予防剤のケイ素含有撥水組成物の含有量は、溶剤全体中の含有量としても表すことができる。
例えば、溶剤全体中において、5~10質量%。好ましくは7質量%となるように調整することができる。
【0032】
なお、火災予防剤のケイ素含有撥水組成物は、ケイ素系の組成物であり、乾燥させることにより、撥水性を発揮する機能を有していれば、とくに限定されない。例えば、大同塗料株式会社製のアクアシール 50E(アクアシール:大同塗料株式会社の登録商標)などを挙げることができる。
【0033】
(水の含有量)
火災予防剤は、上記組成物を水に溶解または分散して調整される。このときの水の含有量は、上記組成物を分散等することができれば、とくに限定されない。例えば、火災予防剤の水の含有量は、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、70~90質量部であり、より好ましくは74~78質量部となるように調整することができる。
例えば、上記水は、二酸化ケイ素含有組成物を126gとした場合、96g(つまり、二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して76質量部)となるように調整することができる。
【0034】
また、火災予防剤の水の含有量は、溶剤全体中の含有量としても表すことができる。
例えば、溶剤全体中において、18~25質量%、好ましくは21質量%となるように調整することができる。
【0035】
(二酸化ケイ素含有組成物の含有量)
また、火災予防剤の二酸化ケイ素含有組成物の含有量は、とくに限定されない。
例えば、二酸化ケイ素含有組成物の含有量は、溶剤全体中において、20~35質量%、好ましくは25質量%~35質量%、より好ましくは25質量%~30質量%となるように調整することができる。なお、製造時の作業性の観点において、二酸化ケイ素含有組成物の含有量があまり多くなりすぎると粘性が増加して作業性が低下する傾向にある。
したがって、二酸化ケイ素含有組成物の火災予防剤中の含有量は、上記範囲内となるように調整するのが好ましい。
【0036】
火災予防剤の二酸化ケイ素含有組成物は、周囲の大気中の存在するガス状の物質を吸着する機能を有していれば、とくに限定されない。
例えば、シリカ系のケイ酸化合物を含有する組成物であればよい。とくに、シリカゾルと、シリカゲルと、を含むように調整されているのが好ましい。
【0037】
(二酸化ケイ素含有組成物中のシリカゾルとシリカゲルの含有量)
二酸化ケイ素含有組成物がシリカゾルとシリカゲルとを含む場合、シリカゲルの含有量は、シリカゾル100質量部に対して、3~10質量部であり、好ましくは3~7質量部である。
例えば、シリカゲルは、シリカゾルを120gとした場合、6g(つまり、シリカゾル100質量部に対して5質量部)となるように調整することができる。
【0038】
なお、二酸化ケイ素含有組成物に含まれるシリカゾルとしては、例えば、日揮触媒化成株式会社製のSI-30を採用することができる。
また、シリカゲルとしては、例えば、水澤化学工業株式会社製のSNを採用することができる。
【0039】
なお、火災予防剤は、上記組成物以外の成分(例えば、pH調整剤など)を含有してもよい。
【0040】
<火災予防剤の製造方法>
火災予防剤は、上記組成物が上記含有割合となるように調整されていれば、とくに限定されない。例えば、以下のようにして調製することができるが、かかる方法に限定されないはいうまでもない。
まず、容器に水を入れ、この容器に上記各組成物を入れて混合する。そしてこの容器を湯煎しながら撹拌しながら、各組成物を溶解または分散させる。所定時間撹拌した後、布などで濾過すれば、火災予防剤を得ることができる。
【実施例0041】
本発明の火災予防剤の有効性を確認した。
【0042】
実験では、水(96g)を入れた容器に以下の組成物を入れて混合水を調製した。混合水の全量は457gであった。
二酸化ケイ素含有組成物のシリカゾル:日揮触媒化成株式会社製のSI-30(120g)
二酸化ケイ素含有組成物のシリカゲル:水澤化学工業株式会社製のSN(6g)
リン酸アンモニウム含有組成物:太平化学産業株式会社製のタイエン N(180g)
ケイ素含有撥水組成物:大同塗料株式会社製のアクアシール 50E(アクアシール:大同塗料株式会社の登録商標)(30g)
臭化アンモニウム含有組成物:マナック株式会社製の化学用臭化アンモニウム(25g)
【0043】
上記混合水が入った容器を、沸騰した水で湯煎しながら、混合水を5~10分撹拌した。撹拌後、混合水を濾過した。濾過には、布を用いた。得られた濾液が、本発明の火災予防剤である。
【0044】
調製した火災予防剤を刷毛で画用紙に塗布した後、乾燥させた。
なお、火災予防剤を塗布していない同様の画用紙を比較例とした。
【0045】
(実験1)
実験1では、火災予防剤の難燃効果について確認した。
【0046】
火災予防剤を塗布した画用紙の表面から近距離(約5~7cm)の位置からガスバーナー(新富士バーナー パワーガス RZ-760)を用いて画用紙の表面に向かって炎を約2~3秒あてた。
【0047】
(結果)
比較例の画用紙は、約5~6秒で灰になった。
一方、
図1に示すように、本発明の火災予防剤を塗布した画用紙は、ガスバーナーの炎が当たった箇所は黒く変化したものの、画用紙の表裏を貫通することなく、画用紙の形状を保持していた。
【0048】
したがって、本発明の火災予防剤を用いれば、被対象物に対して優れた難燃性を付与させることができることが確認できた。
【0049】
(実験2)
実験2では、火災予防剤を塗布することにより、火災時に発生する有害物質である一酸化炭素を適切に吸収できることを確認した。
【0050】
実験1と同様に調製した火災予防剤を刷毛で画用紙に塗布した後、乾燥させた。
この画用紙を実験1と同様にガスバーナーを用いて炎をあてた。
このガスバーナーで炎をあてている際に発生したガスを検知管式気体測定器(株式会社ガステック社製、GV100S)を用いて測定した。
使用した検知管:一酸化炭素を検出することができる検知管(ガステック社製、No.1LL)
なお、測定方法は、株式会社ガステック社のGV100S付属の取扱説明書のとおり行った。
【0051】
結果を
図2に示す。
図2に示すように、検知管の目盛りは5~20が黒変色、30~50が薄変色した。よって、読み取り値は、40とした。
使用時の温度が約20℃であったことから、温度補正を行った測定値(40×1.00)は、40ppmであった。この値は、人が吸引しても健康上、影響がでない値である。一般的に、一酸化炭素は、100ppmで中毒症状を発症することが知られている。
したがって、火災予防剤を塗布することにより、火災時に発生する有害物質である一酸化炭素の濃度を低く抑えることができることが確認できた。
本発明の火災予防剤は、木材、壁材などの内装部材、壁紙、襖などの内装用クロス、カーテン類、布部材などの内装部材に難燃性および防炎性を付与することができるものとして適している。
第1発明の火災予防剤は、二酸化ケイ素含有組成物と、水と、リン酸アンモニウム含有組成物と、ケイ素含有撥水組成物と、臭化アンモニウム含有組成物と、を含んでおり、前記水は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、70~90質量部であり、前記リン酸アンモニウム含有組成物は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、135~165質量部であり、前記ケイ素含有撥水組成物は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、20~30質量部であり、前記臭化アンモニウム含有組成物は、前記二酸化ケイ素含有組成物100質量部に対して、15~25質量部であることを特徴とする。
第2発明の火災予防剤は、第1発明において、前記二酸化ケイ素含有組成物が、シリカゾルと、シリカゲルと、を含み、該シリカゲルは、前記シリカゾル100質量部に対して、3~10質量部であることを特徴とする。
第3発明の火災予防剤は、第2発明において、前記シリカゾルが日揮触媒化成株式会社製のSI-30であり、該シリカゾルを120g、前記シリカゲルが水澤化学工業株式会社製のSNであり、該シリカゲルを6g、前記水を96g、前記リン酸アンモニウム含有組成物が太平化学産業株式会社製のタイエン Nであり、該リン酸アンモニウム含有組成物を180g、前記ケイ素含有撥水組成物が大同塗料株式会社製のアクアシール 50E(アクアシール:大同塗料株式会社の登録商標)であり、該ケイ素含有撥水組成物を30g、前記臭化アンモニウム含有組成物がマナック株式会社製の化学用臭化アンモニウムであり、該臭化アンモニウム含有組成物を25g、それぞれ含有したものであることを特徴とする。