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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179877
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221129BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/165
B41J2/01 301
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086669
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】千田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】藤本 潔
(72)【発明者】
【氏名】今泉 清将
(72)【発明者】
【氏名】岡本 仁成
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】森上 敬之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB06
2C056EB29
2C056EC11
2C056EC31
2C056EC37
2C056EC38
2C056EC80
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA38
2C056JA01
2C056JA13
2C056JB04
(57)【要約】
【課題】所定の条件下における安全性と利便性とをともに備えた印刷装置
【解決手段】印刷装置は、モータ34の駆動によってキャリッジを移動させるキャリッジ移動装置と、モータ34を制御するモータドライバ36と、第1電圧または第1電圧よりも高い第2電圧を選択的にモータドライバ36に印加する給電装置70と、所定の制御条件が満たされたときキャリッジの移動に係る制御信号を発信する発信装置80と、を備える。第1電圧は、モータドライバ36がモータ34を介してキャリッジを第1速度で移動させることが可能な電圧である。第2電圧は、モータドライバ36がモータ34を介してキャリッジを第1速度よりも速い第2速度で移動させることが可能な電圧である。給電装置70は、発信装置80が制御信号を発信している状態では、モータドライバ36に第1電圧を印加する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に構成されたキャリッジと、
モータを備え、前記モータの駆動によって前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動装置と、
前記モータを制御するモータドライバと、
第1電圧または前記第1電圧よりも高い第2電圧を選択的に前記モータドライバに印加する給電装置と、
所定の制御条件が満たされたとき、前記キャリッジの移動に係る制御信号を発信する発信装置と、を備え、
前記第1電圧は、前記モータドライバが前記モータを介して前記キャリッジを第1速度で移動させることが可能な電圧であり、
前記第2電圧は、前記モータドライバが前記モータを介して前記キャリッジを前記第1速度よりも速い第2速度で移動させることが可能な電圧であり、
前記給電装置は、前記発信装置が前記制御信号を発信している状態では、前記モータドライバに前記第1電圧を印加するように構成されている、印刷装置。
【請求項2】
前記キャリッジに保持されたインクヘッドと、
前記キャリッジが所定のクリーニング位置に移動された状態において前記インクヘッドをクリーニングすることが可能なクリーニング装置と、
前記クリーニング装置によって前記インクヘッドをクリーニングするクリーニングモードを含む低速モードと、印刷モードを含む高速モードとの間でモードを切り替えるモード設定部と、をさらに備え、
前記給電装置は、前記低速モード中は前記モータドライバに前記第1電圧を印加し、前記高速モード中であって前記制御信号が発信されていない状態では前記モータドライバに前記第2電圧を印加するように構成されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記キャリッジを収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、開閉可能に構成されたカバーと、をさらに備え、
前記発信装置は、前記カバーの開閉状態を検知する検知器を備え、前記カバーが開放されたことが前記検知器によって検知されると前記制御信号を発信する、
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記給電装置は、
前記第1電圧を発生させる第1電源と、
前記第2電圧を発生させる第2電源と、
励磁部を有し、前記励磁部に通電しているときには前記第2電源と前記モータドライバとを接続し、前記励磁部に通電していないときには前記第1電源と前記モータドライバとを接続するリレーと、を備え、
前記発信装置は、
前記励磁部を励磁可能な第3電源と、
前記第3電源と前記励磁部との間に介在し、前記制御条件が満たされると遮断される制御回路と、を備えている、
請求項1~3のいずれか一つに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記発信装置は、前記制御条件が満たされてから所定の遅延時間後に前記制御信号を発信する遅延部を備えている、
請求項1~4のいずれか一つに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記モータドライバに前記第2電圧が印加され前記キャリッジが移動しているときに前記制御条件が満たされた場合、前記遅延時間が経過するまでの間に前記モータドライバを制御して前記キャリッジを減速させる制動装置をさらに備えている、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記給電装置は、
前記第1電圧を発生させる第1電源と、
前記第2電圧を発生させる第2電源と、
励磁部を有し、前記励磁部に通電しているときには前記第2電源と前記モータドライバとを接続し、前記励磁部に通電していないときには前記第1電源と前記モータドライバとを接続するリレーと、を備え、
前記発信装置は、
前記励磁部を励磁可能な第3電源と、
前記第3電源と前記励磁部との間に介在し、前記制御条件が満たされると遮断される制御回路と、を備え、
前記遅延部は、前記制御回路が接続されているときに充電され前記制御回路が遮断されると前記励磁部に対して放電するコンデンサを備えている、
請求項5または6に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種装置において、装置を安全に停止させるインターロック動作が設定されている。印刷装置においても、インターロック動作が設定されているのが一般的である。例えば特許文献1には、印刷中に筐体のカバーを開けると、キャリッジの移動を停止させ、その後にキャリッジを移動させるモータへの通電を遮断するプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-10829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような印刷装置では、例えば筐体のカバーが開いているというような所定の条件下ではキャリッジを移動させることができない。しかしながら、そのような条件下でも、例えば、カバーを開けた状態でキャリッジの動きを目視確認したいとき等、キャリッジを移動させたい場合があり得る。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば筐体のカバーが開放されているといった所定の条件下における安全性と利便性とをともに備えた印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する印刷装置は、移動可能に構成されたキャリッジと、モータを備え前記モータの駆動によって前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動装置と、前記モータを制御するモータドライバと、第1電圧または前記第1電圧よりも高い第2電圧を選択的に前記モータドライバに印加する給電装置と、所定の制御条件が満たされたとき、前記キャリッジの移動に係る制御信号を発信する発信装置と、を備える。前記第1電圧は、前記モータドライバが前記モータを介して前記キャリッジを第1速度で移動させることが可能な電圧である。前記第2電圧は、前記モータドライバが前記モータを介して前記キャリッジを前記第1速度よりも速い第2速度で移動させることが可能な電圧である。前記給電装置は、前記発信装置が前記制御信号を発信している状態では、前記モータドライバに前記第1電圧を印加するように構成されている。
【0007】
上記印刷装置によれば、所定の制御条件が満たされ発信装置が制御信号を発信している状態でも、モータドライバに第1電圧が印加されている。そのため、第1速度でキャリッジを移動させることができる。第1速度は比較的低速であるため、キャリッジを移動させても安全上の問題はない。よって、上記印刷装置によれば、上記所定の制御条件下における安全性と利便性とをともに満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】カバーを開放した状態のプリンタの正面図である。
図3】クリーニング装置の模式的な正面図である。
図4】キャリッジモータの制御に係る回路図である。
図5】高速モード中のキャリッジの制御を示すフローチャートである。
図6】低速モード中のキャリッジの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、プリンタを正面から見たときに、プリンタから遠ざかる方を前方、プリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0010】
[プリンタの構成]
図1は、一実施形態に係る大判のプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ35(図2参照)に搭載された複数のインクヘッドH(図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷するインクジェットプリンタである。
【0011】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、記録媒体5は、布帛であってもよい。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、プリンタ本体10aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10aは、ケーシング12を備えている。キャリッジ35を含むプリンタ10の主要な構成部材は、ケーシング12内部に収容されている。ケーシング12には、第1カバー21および第2カバー22が設けられている。第1カバー21および第2カバー22は、ケーシング12内部のメンテナンス等のために設けられているものである。第1カバー21および第2カバー22は、プリンタ10の正面側に取り付けられており、上下方向に開閉可能に構成されている。ただし、カバーの位置、数量、形状、構成等は特に限定されない。
【0013】
図2は、第1カバー21および第2カバー22を開放した状態のプリンタ10の正面図である。図2に示されるように、ケーシング12には、キャリッジ35と、キャリッジ移動装置30とが収容されている。また、詳しくは図3に図示するが、ケーシング12内には、インクヘッドHをクリーニングするクリーニング装置50が収容されている。図2に示すように、キャリッジ移動装置30は、ガイドレール31と、ベルト32と、一対のプーリ33a、33bと、キャリッジモータ34と、を備えている。キャリッジ移動装置30は、キャリッジモータ34を駆動することによってキャリッジ35を主走査方向Yに移動させる。ガイドレール31は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ35は、ガイドレール31に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。キャリッジ35には無端状のベルト32が固定されている。ベルト32は、ガイドレール31の右側に設けられたプーリ33aおよび左側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。左側のプーリ33bにはキャリッジモータ34が取り付けられている。キャリッジモータ34が駆動するとプーリ33bが回転し、ベルト32が走行する。それにより、キャリッジ35がガイドレール31に沿って主走査方向Yに移動する。
【0014】
キャリッジ35は、複数のインクヘッドHを保持している。キャリッジ35が主走査方向Yに移動することによって、インクヘッドHも主走査方向Yに移動する。複数のインクヘッドHは、キャリッジ35において、主走査方向Yに並んでいる。複数のインクヘッドHは、それぞれ副走査方向Xに並んだ複数のノズル(図示せず)を備えている。ノズルは、副走査方向Xに並んでノズル列を構成している。ノズルの個数は、1つのノズル列につき、例えば、300個である。ただし、1つのノズル列に属するノズルの数は特に限定されない。1つのインクヘッドHは、ノズル列を複数備えていてもよい。インクヘッドHにおけるノズルの配置は限定されない。インクヘッドHの内部には、圧電素子を備えたアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータが駆動することによって、インクヘッドHの各ノズルから記録媒体5に向かってインクが吐出される。ただし、アクチュエータは、圧電素子によって駆動するものには限定されない。
【0015】
複数のインクヘッドHは、それぞれ図示しないインク供給路によって、図示しない複数のインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、それぞれ1つのノズル列に接続されている。1つのノズル列のノズルからは、当該ノズル列に接続されたインクカートリッジのインクが吐出される。各インクカートリッジには、例えば、CMYK他のプロセスカラーインクや特色インクなどが貯留されている。ただし、各ノズル列のノズルから吐出されるインクの色は限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0016】
キャリッジ35の下方には、プラテン13が配置されている。プラテン13は、主走査方向Yに延びている。プラテン13には記録媒体5が載置される。プラテン13の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ41が設けられている。プラテン13には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて回転可能に形成されている。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。ピンチローラ41、グリットローラ42、およびフィードモータ43は、記録媒体5を副走査方向Xに搬送する搬送装置40を構成している。
【0017】
図3は、クリーニング装置50の模式的な正面図である。クリーニング装置50は、キャリッジ35が所定のクリーニング位置P1に移動された状態においてインクヘッドHをクリーニングすることが可能なように構成されている。図2に示すように、本実施形態では、クリーニング位置P1は、プリンタ10の右端部付近である。ただし、クリーニング位置P1の場所は特に限定されない。図3に示すように、ここでは、クリーニング装置50は、キャッピング装置51と、ワイピング装置55と、を備えている。キャッピング装置51は、インクヘッドHを保護するとともに、インクヘッドHのノズルからインクを吸引する。インク吸引は、インクヘッドHのクリーニングの1つである。図3に示すように、キャッピング装置51は、キャップ52と、キャップ移動部53と、吸引ポンプ54とを備えている。キャップ52は、インクヘッドHに装着可能に構成されている。キャップ移動部53は、キャップ52を上下方向に移動させ、インクヘッドHに装着または離反させる。吸引ポンプ54は、キャップ52がインクヘッドHに装着された状態でキャップ52内を減圧することにより、ノズル内のインクを吸引する。
【0018】
図3に示すように、ワイピング装置55は、ワイパー56とワイパー移動部57とを備えている。ワイパー56は、非ワイピング時、キャリッジ35よりも後方に配置されている。ワイパー56は、主走査方向Yおよび上下方向に延びる平板状に構成されている。ワイパー56は、例えば、ゴムで形成されている。ワイパー移動部57は、ワイパー56を副走査方向Xに移動させ、インクヘッドHのノズル面に接触させる。インクヘッドHのノズル面は、副走査方向Xに移動するワイパー56により払拭(ワイピング)される。ワイピングは、インクヘッドHのクリーニングの1つである。なお、ワイピング装置55の構成は上記に限定されない。ワイピングは、例えば、キャリッジ35が移動することにより行われてもよく、主走査方向Yに進行するように行われてもよい。また、インクヘッドHのクリーニングは、インク吸引およびワイピングに限定されるわけではない。
【0019】
図2に示すように、ケーシング12の内部には、第1カバー21および第2カバー22の開閉状態をそれぞれ検知する第1スイッチ61および第2スイッチ62が設けられている。第1カバー21の開閉状態は、第1スイッチ61が検知している。第2カバー22の開閉状態は、第2スイッチ62が検知している。第1スイッチ61は、例えば、機械式のリミットスイッチである。第1スイッチ61の内部には機械式の接点61a(図4参照)が設けられており、第1スイッチ61の可動部分が押下されると接点61aが接続されるように構成されている。第1スイッチ61の可動部分は、第1カバー21が閉じられたとき、第1カバー21によって押下される。以下では、このような第1スイッチ61の接点61aが閉じた状態を適宜、「ON」と呼ぶ。逆に、第1スイッチ61の接点61aが開いた状態を「OFF」と呼ぶ。第2スイッチ62も、ここでは、同様の機械式スイッチである。第1スイッチ61と同様、第2スイッチ62は第2カバー22が閉じられたときにONする。なお、第1スイッチ61および第2スイッチ62は、それぞれ第1カバー21および第2カバー22が開放されたときにONし、第1カバー21および第2カバー22が閉じられたときにOFFするように構成されていてもよい。また、第1スイッチ61および第2スイッチ62の構成は、第1カバー21および第2カバー22の開閉状態をそれぞれ検知できる限りにおいて限定されない。第1スイッチ61および第2スイッチ62は、例えば、光学式のスイッチであってもよい。
【0020】
図4は、キャリッジモータ34の制御に係る回路図である。図4に示すように、キャリッジモータ34は、モータドライバ36に接続され、モータドライバ36によって制御されている。キャリッジモータ34の制御は、モータドライバ36を介して行われる。図4に示すように、キャリッジモータ34の制御に係る回路は、モータドライバ36の他に、モータドライバ36に電力を供給する給電回路70と、給電回路70を介してモータドライバ36を制御するインターロック回路80と、キャリッジモータ34を含むプリンタ10の各部の動作を制御する制御装置100と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、制御装置100は、ケーシング12の内部に収容されている。制御装置100は、モータドライバ36、フィードモータ43、インクヘッドHの各アクチュエータ、キャッピング装置51のキャップ移動部53および吸引ポンプ54、ワイピング装置55のワイパー移動部57とそれぞれ電気的に接続されており(ただし、モータドライバ36との接続を除いて図示は省略)、それらを制御可能に構成されている。図4に示すように、制御装置100は、信号線84によって第1スイッチ61および第2スイッチ62とも接続されている。
【0022】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置100のハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ本体10aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0023】
図4に示すように、制御装置100は、移動制御部101と、クリーニング制御部102と、モード設定部103と、を備えている。移動制御部101は、モータドライバ36を介してキャリッジモータ34の駆動を制御する。移動制御部101は、所定のインターロック時にモータドライバ36を制御してキャリッジ35を減速させる制動制御部101Aを備えている。インターロック条件、および、その際のキャリッジ35の動作については後述する。クリーニング制御部102は、ここでは、キャッピング装置51のキャップ移動部53および吸引ポンプ54を制御してインク吸引を行い、ワイピング装置55のワイパー移動部57を制御してワイピングを行う。モード設定部103では、プリンタ10の動作に係る各種モードを切り替えることができる。モード設定部103は、ここでは、印刷モードとクリーニングモードとを含む複数のモードにプリンタ10のモードを切り替えることができるように構成されている。印刷モードは、キャリッジモータ34、フィードモータ43、およびインクヘッドHを制御して記録媒体5に印刷を行うモードである。クリーニングモードは、クリーニング装置50を制御して(ここでは、クリーニング装置50のキャップ移動部53、吸引ポンプ54、およびワイパー移動部57を制御して)インクヘッドHをクリーニングするモードである。なお、制御装置100は、他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
【0024】
詳しい制御については後述するが、キャリッジ35は、印刷モードでは高速で移動され、クリーニングモードでは低速で移動される。以下、キャリッジ35を高速で移動可能に設定されたモードを「高速モード」と、キャリッジ35を低速でしか移動できないように(言い換えると、キャリッジ35を高速で移動させることが不能なように)設定されたモードを「低速モード」と呼ぶ。高速モードは、印刷モードを含んでいる。低速モードは、クリーニングモードを含んでいる。低速モードは、クリーニングモードの他にも、例えば、印刷開始前に記録媒体5の主走査方向Yの幅を計測するためにキャリッジ35を移動させる動作を含んでいてもよい。その場合、キャリッジ35には、記録媒体5の端部を識別可能なカメラ等が搭載されていてもよい。低速モードに含まれる動作、および高速モードに含まれる動作は、いずれも特に限定されない。モード設定部103は、高速モードと低速モードとの間でモードを切り替え可能に構成されている。
【0025】
給電回路70は、モータドライバ36に印加する電圧を切り替えるように構成されている。本実施形態では、給電回路70がモータドライバ36に印加する電圧は、低速用の第1電圧と、高速用の第2電圧の2種類である。給電回路70は、第1電圧、または第1電圧よりも高い第2電圧を選択的にモータドライバ36に印加する。ただし、給電回路70は、少なくとも第1電圧と第2電圧とをモータドライバ36に印加できればよく、例えば、モータドライバ36に第3の電圧を印加できてもよい。第1電圧は特に限定されないが、例えば、5V~15Vである。モータドライバ36に第1電圧が印加されることによりキャリッジ35が走行可能な速度を、以下では、「第1速度」とも言う。第1電圧は、モータドライバ36がキャリッジモータ34を介してキャリッジ35を第1速度で移動させることが可能な電圧である。第1速度も特に限定されないが、例えば、0.1m/秒~0.5m/秒である。
【0026】
同様に、モータドライバ36に第2電圧が印加されることによりキャリッジ35が走行可能な速度を、以下では、「第2速度」とも言う。第2電圧は、モータドライバ36がキャリッジモータ34を介してキャリッジ35を第2速度で移動させることが可能な電圧である。第2速度も特に限定されないが、例えば、1m/秒~2m/秒である。第2電圧も特に限定されないが、例えば、30V~50Vである。
【0027】
図4に示すように、給電回路70は、第1電源71と、第2電源72と、モータドライバ36に第1電源71または第2電源72を選択に接続するリレー73と、を備えている。第1電源71は、第1電圧を発生させるように構成されている。第2電源72は、第2電圧を発生させるように構成されている。第1電源71および第2電源72は、ここでは、商用の交流電源を所要の電圧の直流に変換できるスイッチング電源である。ただし、第1電源71および第2電源72は、スイッチング電源に限定されるわけではない。
【0028】
図4に示すように、リレー73は、コイル73aと接点73bとを備えている。リレー73は、コイル73aに通電しているときには第2電源72とモータドライバ36とを接続し、コイル73aに通電していないときには第1電源71とモータドライバ36とを接続するように構成されている。言い換えると、コイル73aに通電しているとき、モータドライバ36には、高速用の第2電圧が印加される。このときには、キャリッジ35を高速の第1速度で移動させることが可能である。コイル73aに通電していないときには、モータドライバ36には、低速用の第1電圧が印加される。このときには、キャリッジ35の移動速度は、低速の第2速度までに規制される。コイル73aに通電され、コイル73aが励磁されると、接点73bが動いて第2電源72とモータドライバ36とを接続する。これにより、第1電源71とモータドライバ36とは、第1電源71とモータドライバ36との間に設けられたダイオードにより実質的に切断される。ただし、リレー73の構成はかかるものに限定されない。リレー73は、例えば、コイルへの通電の有無に応じて接点が第1電源71または第2電源72に接続される2接点リレーであってもよい。
【0029】
インターロック回路80は、所定のインターロック条件が満たされたとき、キャリッジ35の移動に係る制御信号を発信するように構成されている。詳しくは、インターロック回路80は、インターロック条件が満たされると、コイル73aへの通電を遮断し、キャリッジ35を低速移動に規制された状態にする。本実施形態では、インターロック回路80が発信する、キャリッジ35の移動に係る制御信号は、コイル73aへの通電停止である。キャリッジ35の移動に係る「制御信号の発信」には、信号発信の逆動作、すなわち、「信号の停止」も含まれる。ただし、例えば、給電回路70の構成が本実施形態と逆動作を行うものである場合には、キャリッジ35の移動に係る制御信号は、リレー73のコイル73aへの通電開始であってもよい。
【0030】
インターロック回路80は、図4に示すように、第3電源81と、第3電源81とコイル73aとの間に介在する制御回路82と、制御回路82に設けられた遅延回路83と、を有している。第3電源81は、コイル73aを励磁可能に構成された制御電源である。第3電源81は、ここでは、制御用のDC24Vの電圧を発生させる。ただし、第3電源81が発生させる電圧は特に限定されるわけではない。制御回路82は、第3電源81とコイル73aとを接続している。図4に示すように、制御回路82には、第1スイッチ61の接点61aおよび第2スイッチ62の接点62aが直列に配置されている。
【0031】
制御回路82は、インターロック条件が満たされると遮断される回路である。図4に示すように、本実施形態では、インターロック条件は、第1スイッチ61の接点61aおよび第2スイッチ62の接点62aのうちの少なくとも1つが開放されることである。言い換えると、第1カバー21および第2カバー22のうちの1つ以上が開放され、第1スイッチ61および第2スイッチ62のうちの1つ以上がOFFすると、インターロック条件に該当する。インターロック回路80は、第1カバー21および第2カバー22の開閉状態をそれぞれ検知する第1スイッチ61および第2スイッチ62を備え、第1カバー21および第2カバー22のうちの少なくとも一方が開放されたことが第1スイッチ61および第2スイッチ62によって検知されると遮断される(制御信号を発信する)。これにより、コイル73aへの通電が停止し、モータドライバ36と第1電源71とが接続される。給電回路70は、少なくともインターロック回路80が遮断された(インターロック回路80が制御信号を発信している)状態では、モータドライバ36に低速用の第1電圧を印加するように構成されている。給電回路70は、インターロック条件が満たされていない状態でもモータドライバ36に第1電圧を印加する場合があるが、これについては後述する。
【0032】
なお、本実施形態の説明では「インターロック条件」という用語を使用しているが、これはキャリッジ35の移動速度を第1速度に規制する制御条件を意味しており、単に予め定められた条件(ここでは、第1スイッチ61および第2スイッチ62のうちの少なくとも一方がOFFすること)を意味している。「インターロック回路」、「インターロック動作」等の用語についても同様である。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、インターロック回路80は、インターロック条件が満たされてから所定の遅延時間後に制御信号を発信する(ここでは、コイル73aへの給電を停止する)遅延回路83を備えている。そのため、インターロック条件となる前にモータドライバ36に印加されていた電圧が第2電圧であった場合には、モータドライバ36に印加される電圧は、インターロック条件が満たされてから所定の遅延時間後に、第2電圧から第1電圧に切り替わる。
【0034】
図4に示すように、遅延回路83は、制御回路82が接続されているときには充電され、制御回路82が遮断されるとコイル73aに対して放電するコンデンサ83aを備えている。第1スイッチ61および第2スイッチ62の両方がONし、コイル73aに第3電源81からの電力が供給されているとき、コンデンサ83aにも第3電源81が発生させる電圧が印加されている。そこで、そのときコンデンサ83aには、静電容量に応じた電荷が充電される。コンデンサ83aに充電された状態で第1スイッチ61および第2スイッチ62のうちの少なくとも一方がOFFすると、コンデンサ83aは放電を開始する。この放電の間、コイル73aにはコンデンサ83aの放電による電流が流れる。その際の電圧がリレー73の動作電圧以上である間、リレー73はONし続ける。これにより、モータドライバ36に印加される電圧の切り替わりが遅延する。コンデンサ83aは、ここでは、例えば1000μF程度の静電容量を持つ大容量のコンデンサである。
【0035】
第1スイッチ61および第2スイッチ62のうちの1つ以上がOFFした場合、そのことは制御装置100にも伝達される。図4に示すように、キャリッジモータ34の制御に係る回路には、第1スイッチ61および第2スイッチ62のうちの少なくとも一方がOFFした場合に制御装置100に信号を送信する信号線84が設けられている。制御装置100の制動制御部101Aは、モータドライバ36に第2電圧が印加されキャリッジ35が移動しているときにインターロック条件が満たされた場合、上記した遅延時間が経過するまでの間にモータドライバ36を制御して、キャリッジ35を減速させる。ここでは、制動制御部101Aは、遅延時間が経過するまでの間にモータドライバ36を制御して、キャリッジ35を停止させる。
【0036】
キャリッジモータ34の制御にかかる回路は、制御装置100がリレー73をON/OFFするための駆動線85を有している。駆動線85は、制御装置100とリレー73のコイル73aとを接続している。キャリッジモータ34の制御にかかる回路は、駆動線85が遮断された状態では、制御回路82が繋がっていても、リレー73に給電が行われないように構成されている。制御装置100は、駆動線85を介してリレー73の動作を制御することにより、モータドライバ36に印加される電圧を制御している。詳しくは、制御装置100は、リレー73の動作を制御することにより、低速モード中および制御信号が発信されているとき、モータドライバ36と第1電源71とを接続する。また、制御装置100は、高速モード中(制御信号が発信されているときを除く)、リレー73の動作を制御することにより、モータドライバ36と第2電源72とを接続する。その結果、給電回路70は、低速モード中および制御信号が発信されている状態ではモータドライバ36に第1電圧を印加し、高速モード中であってインターロック信号が発信されていない状態ではモータドライバ36に第2電圧を印加する。なお、本実施形態では、いったん制御信号が発信されると、第1カバー21および第2カバー22が閉じられた後も、制御装置100で所定の確認作業が終了するまでインターロック状態が継続される。制御装置100は、インターロック状態が継続している間は駆動線85を遮断している。制御装置100は、インターロック状態が解除され、かつ、モードが高速モードである場合には、駆動線85を再接続する。
【0037】
なお、図4に示した回路の構成は一例であって、それに限定されない。インターロック回路80は、基本的にはハードウェアで構成されていることが好ましいが、一部ソフトウェアで構成されていてもよい。使用される機器の種類も、機械式スイッチや有接点リレーなどに限定されない。
【0038】
[高速モードにおける制御]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10の動作について説明する。図5は、高速モード中のキャリッジ35の制御を示すフローチャートである。図5では、高速モード中、さらに詳しくは印刷モード中のプリンタ10の動作の一例を説明する。図5に示すように、印刷を実行するためには、まずステップS01において、モードが印刷モードに設定される。なお、印刷を開始するための他のステップについては図示および説明を省略する。ステップS02では、モータドライバ36に第2電源72が接続され、高速用の第2電圧が印加される。続くステップS03では、印刷が開始され、キャリッジモータ34の駆動によりキャリッジ35が主走査方向Yに移動する。このとき、キャリッジ35は、第1速度で移動することが可能である。
【0039】
ステップS04では、第1カバー21および第2カバー22が閉じているかどうかが確認される(実際には、第1カバー21および第2カバー22のうちの少なくとも一方が開放されたときに応答すればよいが、図5では便宜上、確認のステップとして示す)。第1カバー21および第2カバー22が閉じている場合(ステップS04の結果がNOの場合)、キャリッジ35の移動が継続される。第1カバー21および第2カバー22のうちの少なくとも一方が開放されている場合(ステップS04の結果がYESの場合)、ステップS05において、制御回路82が遮断されるとともに、信号線84を通じて制御装置100にそのことが伝達される。
【0040】
ステップS06では、遅延回路83のコンデンサ83aがリレー73への放電を開始する。これにより、遅延時間が開始する。続くステップS07では、制御装置100の制動制御部101Aの指令により、キャリッジモータ34が制動停止される。このとき、遅延回路83による遅延により、モータドライバ36にはまだ高速用の第2電圧が印加されている。そのため、モータドライバ36は、より強い制動力でキャリッジモータ34をブレーキングすることができる。その後、ステップS08において遅延時間が終了し、モータドライバ36に第1電源71が接続される。これにより、モータドライバ36に第1電圧が印加される。
【0041】
上記のように、本実施形態では、キャリッジ35が高速モードで移動中にインターロック条件となると、キャリッジ35が制動停止されるとともに、モータドライバ36に印加される電圧が低速用の第1電圧に切り替わる。これは、本実施形態では低速モードが基本のモードであるためである。本実施形態では、印刷など、キャリッジ35を高速移動させる必要がある場合を除き、モードは低速モードに設定される。ただし、より短時間でキャリッジ35を制動停止するため、遅延時間の間はモータドライバ36に印加される電圧が高速用の第2電圧に維持され、第2電圧の制動力でキャリッジモータ34が制動停止される。
【0042】
[低速モードにおける制御]
次に、低速モードにおけるキャリッジ35の制御について説明する。図6は、低速モード中のキャリッジ35の制御を示すフローチャートである。図6では、低速モード中、さらに詳しくはクリーニングモード中のプリンタ10の動作の一例を説明する。図6に示すように、インクヘッドHのクリーニングを実行するためには、まずステップS11において、モードがクリーニングモードに設定される。ステップS12では、モータドライバ36に第1電源71が接続され、低速用の第1電圧が印加される。続くステップS13では、クリーニングが開始され、キャリッジモータ34の駆動によりキャリッジ35がクリーニング位置P1(図2参照)に移動する。このとき、キャリッジ35は、第2速度で移動することが可能である。
【0043】
詳細な図示は省略するが、インクヘッドHのクリーニングでは、キャッピング装置51によるインク吸引と、ワイピング装置55によるワイピングとが行われる。キャリッジ35は、インク吸引とワイピングとの間で主走査方向Yに移動する必要がある。また、クリーニング終了後、インクヘッドHには、保護のためにキャップ52が装着される。このとき、キャリッジ35をキャッピング装置51の真上に移動させる必要がある。
【0044】
ステップS14では、第1カバー21および第2カバー22の開閉状態が確認される。図6に示すように、低速モードの場合には、第1カバー21および第2カバー22が閉じているかどうかにかかわらず(ステップS14の結果がYESの場合、NOの場合いずれであっても)、ステップS15においてクリーニング(キャリッジ35の移動)が継続される。低速モードでは、ステップS14の第1カバー21および第2カバー22の開閉確認は行われなくてもよい。
【0045】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態に係るプリンタ10は、キャリッジ35の低速移動用の第1電圧、または、高速移動用の第2電圧を選択的にモータドライバ36に印加する給電回路70と、所定のインターロック条件が満たされたときキャリッジ35の移動に係る制御信号を発信するインターロック回路80と、を備えている。給電回路70は、インターロック回路80が制御信号を発信している状態では、モータドライバ36に低速用の第1電圧を印加する。かかる構成によれば、インターロック条件が満たされインターロック回路80が制御信号を発信している状態でも、モータドライバ36には第1電圧が印加されている。そのため、低速の第1速度でキャリッジ35を移動させることができる。
【0046】
従来のプリンタでは、例えば、ケーシングのカバーが開放された状態では、ユーザーの安全のためにキャリッジを移動させることはできなかった。しかしながら、そのような条件下でも、例えば、カバーを開けた状態でキャリッジを移動させたい場合があり得る。そのような場合は、例えば、カバーを開けた状態でキャリッジの動きを目視確認したいとき等である。そのような場合、本実施形態に係るプリンタ10によれば、例えば図6に示したように、低速モードであれば、キャリッジ35を移動させることができる。低速モードにおけるキャリッジ35の速度である第1速度は比較的低速であるため、キャリッジ35を移動させても安全上の問題はない。よって、プリンタ10によれば、インターロック条件下における安全性と利便性とをともに満足することができる。
【0047】
例えば、本実施形態では、給電回路70は、低速モード中およびインターロック信号が発信されている状態ではモータドライバ36に第1電圧を印加し、高速モード中であってインターロック信号が発信されていない状態ではモータドライバ36に第2電圧を印加するように構成されている。そして、低速モードにはクリーニングモードが含まれており、高速モードには印刷モードが含まれている。かかる構成によれば、例えば、プリンタ10を使用していないとき(例えば夜間など)に行うクリーニングにおいて、第1カバー21または第2カバー22が意図せず開いていたとしても、クリーニングを行うことができる。また、第1カバー21または第2カバー22を開けてクリーニングの様子を確認することも可能である。なお、印刷モードは高速モードに含まれており、印刷は、キャリッジ35を第2速度で移動させながら行うことができる。
【0048】
本実施形態では、給電回路70は、第1電圧を発生させる第1電源71と、第2電圧を発生させる第2電源72と、コイル73aを有しコイル73aに通電しているときには第2電源72とモータドライバ36とを接続し、コイル73aに通電していないときには第1電源71とモータドライバ36とを接続するリレー73と、を備えている。かかる構成によれば、万一プリンタ10の故障等によってリレー73への通電が止まっても、モータドライバ36には第1電源71が接続される。そのため、その場合には、キャリッジモータ34の移動速度は第2速度に規制される。よって、プリンタ10の安全性をより高めることができる。
【0049】
本実施形態では、インターロック回路80は、インターロック条件が満たされてから所定の遅延時間後に制御信号を発信する遅延回路83を備えている。制御装置100の制動制御部101Aは、モータドライバ36に第2電圧が印加されキャリッジ35が移動しているときにインターロック条件が満たされた場合には、遅延時間が経過するまでの間にモータドライバ36を制御してキャリッジ35を減速させる。かかる構成によれば、遅延時間中はモータドライバ36に高速用の第2電圧が印加されているため、より強い制動力でキャリッジ35を減速させることができる。そのため、より短時間でキャリッジ35を停止させることができる。これにより、キャリッジ35の高速移動中における安全性をより向上させることができる。
【0050】
遅延回路83は、制御回路82が接続されているときに充電され、制御回路82が遮断されるとリレー73のコイル73aに対して放電するコンデンサ83aを備えている。かかるコンデンサ83aを備えることにより、遅延回路83は、モータドライバ36への印加電圧の切り替えの遅延を容易かつ確実に行うことができる。
【0051】
本実施形態では、インターロック回路80は、第1カバー21および第2カバー22の開閉状態をそれぞれ検知する第1スイッチ61および第2スイッチ62を備え、第1カバー21および第2カバー22のうちの少なくとも一方が開放されたことが検知されると制御信号を発信するように構成されている。かかる構成によれば、第1カバー21または第2カバー22を開放したときには、少なくともキャリッジ35の速度が第2速度に規制される(状況によっては、キャリッジ35が停止する)。そのため、プリンタ10の安全性を確保することができる。
【0052】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0053】
例えば、上記した実施形態では、制御信号が発信される条件は第1カバー21および第2カバー22のうちの少なくとも1つが開いていることであったが、それ以外の条件を含んでいてもよい。制御信号が発信される条件は、例えば、非常停止ボタンの押下等のユーザー操作を含んでもよいし、プリンタ10のいずれかの箇所の異常検知を含んでいてもよい。
【0054】
上記した実施形態では、キャリッジ35が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ35と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ35が主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能なように構成されていてもよい。また、プリンタ10は、例えば、キャリッジ35および記録媒体5のいずれもが主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能なように構成されていてもよい。
【0055】
本発明に係るインク吐出方式は、限定されない。本発明に係るプリンタのインク吐出方式は、例えば、圧電素子を利用したピエゾ方式の他、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式であってもよい。
【0056】
ここに開示される技術は様々なタイプのプリンタに適用することができる。ここに開示される技術は、上記実施形態で示したいわゆるロール・トゥー・ロールタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、ここに開示される技術は、プリンタと他の装置とを組み合わせた装置に適用されてもよい。例えば、ここに開示される技術は、カッティングヘッド付きプリンタやシートカッター付きのプリンタに適用されてもよい。さらに、ここに開示される技術は、キャリッジを備えた三次元プリンタやカッティング装置などに適用されてもよい。その場合、高速モード中の動作には、カッティング、シートカット、硬化液の吐出などが含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 プリンタ
12 ケーシング(筐体)
21 第1カバー(カバー)
22 第2カバー(カバー)
30 キャリッジ移動装置
34 キャリッジモータ(モータ)
35 キャリッジ
36 モータドライバ
50 クリーニング装置
61 第1スイッチ(検知器)
62 第2スイッチ(検知器)
70 給電回路(給電装置)
71 第1電源
72 第2電源
73 リレー
73a コイル(励磁部)
80 インターロック回路(発信装置)
81 第3電源
82 制御回路
83 遅延回路(遅延部)
83a コンデンサ
100 制御装置
101A 制動制御部(制動装置)
103 モード設定部
H インクヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6