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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179885
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 43/04 20060101AFI20221129BHJP
   F16B 37/14 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B62D43/04 Z
F16B37/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086684
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】梅田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】奥野 倫子
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋司
(57)【要約】
【課題】ボルト頭部を回転操作するための貫通孔に装着するキャップに、ボルトの回転を制限する機能を付与した車両構造の提供。
【解決手段】ロアバックトリム4に、ボルト頭部2を回転操作可能に露出させる貫通孔5を形成する。キャップ6に、フロアキャップ7及び嵌合キャップ8を備える。嵌合キャップ8をフロアキャップ7の裏面側で回転可能に保持する。嵌合キャップ8に、ストッパ部10に当接して回転範囲を制限する回転禁止アーム11を形成する。ストッパ部10をフロアキャップ7の裏面側に形成する。貫通孔5にキャップ6を装着する。フロアキャップ7が貫通孔5を覆いつつ回転不能に係止される。嵌合キャップ8がボルト頭部2に嵌合する。回転禁止アーム11がストッパ部10に当接して、嵌合キャップ8が嵌合したボルトの回転範囲を制限する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部材の裏面側にスペアタイヤキャリアが配置され、前記車両部材にスペアタイヤキャリアのボルト頭部を回転操作可能に表面側に露出させる貫通孔が形成されると共に、該貫通孔にキャップが装着された車両構造において、
前記キャップは、貫通孔を覆いつつ回転不能に係止されるフロアキャップと、該フロアキャップの裏面側に回転可能かつキャップ径方向に変位可能に保持されてボルト頭部を嵌合させる嵌合キャップとを備え、
前記嵌合キャップに、ストッパ部に当接して回転範囲を制限する回転禁止アームが形成され、前記ストッパ部が、フロアキャップの裏面側に形成されたことを特徴とする車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部材にスペアタイヤキャリアのボルト頭部を回転操作可能に表面側に露出させる貫通孔が形成されると共に、この貫通孔にキャップが装着された車両構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の床下等にスペアタイヤを保持するスペアタイヤキャリアは、吊りボルト及びフックを介して、スペアタイヤを載せたキャリア本体を床板等で支持する構造とされる。吊りボルトは、その頭部を床板等の上側に配置し、フックに形成された雌ねじに対して締め付けることにより、フックを上昇させてスペアタイヤを自動車の床板等に固定するようになっている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1のスペアタイヤキャリアの構造では、吊りボルトの頭部に対して嵌合キャップを回転不能に被せ、この嵌合キャップから突出する突起部を床板の爪部材に当接させることにより、吊りボルトが一定角度以上に回転するのを禁止し、フックが下降してキャリア本体から外れることがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-224096号公報(段落0002、0003、0007、0008、0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のスペアタイヤキャリアは、吊りボルトの回転を制限するための構造として、吊りボルトの頭部に嵌合キャップを被せる一方、嵌合キャップの突起部を当接させる爪部材を床板に固定しておくものであり、嵌合キャップ及び爪部材を別々に装備する必要がある分、その構造が複雑になりやすく、コストの増加、重量の増大、及び生産性の低下を生じさせるおそれがある。
【0006】
本発明は、ボルト頭部を回転操作するための貫通孔に装着するキャップに、ボルトの回転を制限する機能を付与した車両構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両構造は、車両部材の裏面側にスペアタイヤキャリアが配置され、前記車両部材にスペアタイヤキャリアのボルト頭部を回転操作可能に表面側に露出させる貫通孔が形成されると共に、該貫通孔にキャップが装着されたものであり、前記キャップは、貫通孔を覆いつつ回転不能に係止されるフロアキャップと、該フロアキャップの裏面側に回転可能かつキャップ径方向に変位可能に保持されてボルト頭部を嵌合させる嵌合キャップとを備え、前記嵌合キャップに、ストッパ部に当接して回転範囲を制限する回転禁止アームが形成され、前記ストッパ部が、フロアキャップの裏面側に形成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のとおり、本発明によると、車両部材の貫通孔からボルト頭部を露出させて回転操作可能とし、さらに、その貫通孔を覆うフロアキャップが保持する嵌合キャップをボルト頭部に嵌合させ、嵌合キャップに形成した回転禁止アームをフロアキャップに形成したストッパ部に当接させて、嵌合キャップを嵌合させたボルトの回転範囲を制限するようにしている。
【0009】
このように、キャップを構成するフロアキャップ及び嵌合キャップに、それぞれストッパ部及び回転禁止アームを形成するので、貫通孔に装着するキャップに、単独でボルトの回転を制限する機能を付与することができる。これにより、ボルトの回転を制限するための部品を車両部材と嵌合キャップとに分けて別々に装備する必要がなく、その構造を簡単にして、コスト及び重量を抑えて生産性の向上を図ると共に、他車種へのキャップの転用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両構造を示す斜視図で、(a)はキャップの装着位置を示す図、(b)はキャップを取り外した状態を示す拡大図
図2】キャップを裏面側から見た斜視図
図3】キャップを裏面側から見た分解斜視図
図4図2のA-A断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両構造を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1図4に示すように、本発明に係る車両構造1は、自動車の後部床下に図示しないスペアタイヤを保持するスペアタイヤキャリアを配置して、ボルト頭部2を上側に向けたボルトをボデー3の後端部に通してスペアタイヤキャリアを吊り固定し、ボデー3の後端部を覆うロアバックトリム4に、ボルト頭部2を回転操作可能に露出させる貫通孔5を形成すると共に、この貫通孔5にキャップ6を装着したものである。
【0013】
さらに、貫通孔5に装着するキャップ6は、貫通孔5を覆いつつ回転不能に係止されるフロアキャップ7と、このフロアキャップ7の裏面側に保持されてボルト頭部2に嵌合する嵌合キャップ8と、フロアキャップ7の裏面側に装着されて嵌合キャップ8を回転可能かつキャップ径方向に変位可能に保持する保持リング9と、を備えた3部材構成とされ、その嵌合キャップ8に、フロアキャップ7の裏面側に形成されたストッパ部10に当接してボルトの回転範囲を制限し、ボルトの緩みによるスペアタイヤキャリアの外れを防止する回転禁止アーム11を形成したものである。
【0014】
貫通孔5は、ロアバックトリム4に形成されたボルト頭部2よりも大径の円穴とされ、その周縁を下方に折曲して補強用の筒部12が形成されると共に、左右の二箇所に筒部12の下端から径方向内向きに突出して嵌合キャップ8の回転禁止アーム11を載置する鍔部13が形成されている。貫通孔5のうちの前部には、フロアキャップ7の着脱操作用の係止片14を配置するための切欠15が形成され、切欠15を挟んで両側に切欠15を補強する突片16が形成されている。
【0015】
フロアキャップ7は、貫通孔5よりも大径で、前部に切欠17が形成された円板とされ、その切欠17の底部からフロアキャップ7の外縁に至る範囲に着脱操作用の係止片14が延設されている。係止片14は、フロアキャップ7の裏面側に突出して先端を変位可能な自由端とするU形片とされ、その先端に操作爪18が形成されると共に、操作爪18に隣接して貫通孔5の切欠15に係止される係止爪19が形成されている。この係止片14は、貫通孔5の切欠15に嵌合して、フロアキャップ7の回転移動を阻止する。
【0016】
フロアキャップ7の後部の裏面側には、フロアキャップ7の中心からの距離を係止片14と合わせた位置に係止片20が突設され、この係止片20の先端に、筒部12の下端に係止される係止爪21が形成されている。
【0017】
係止片14及び係止片20の各両側には、貫通孔5にキャップ6を差し込む際のガイドとなる円弧状の壁部22、23が延設され、この壁部22、23を貫通孔5に差し込んで係止片14及び係止片20を係止させることにより、キャップ6に組み込まれたフロアキャップ7を貫通孔5に係止するようになっている。
【0018】
壁部22、23は、その内側の中央に保持リング9を周方向に位置決めする位置決め突起24が形成されると共に、その両側に係止穴25が形成され、嵌合キャップ8を介在させつつ保持リング9を内側に係止して、キャップ6を組み立てるようになっている。
【0019】
壁部22、23の両端が、嵌合キャップ8の回転禁止アーム11の先端部を当接させるストッパ部10とされ、壁部22、23のストッパ部10が所定の間隔に設定されている。これにより、キャップ6に組み込まれた嵌合キャップ8が嵌合するボルトの回転範囲が制限されつつ、貫通孔5にキャップ6を装着する際には、ボルト頭部2に合わせて嵌合キャップ8が回転可能とされる。
【0020】
嵌合キャップ8は、下面側にボルト頭部2を嵌合する凹部26を有するリング状とされ、その凹部26の内周面が6角形のボルト頭部2を回転不能に嵌合可能な略正12角形に設定されると共に、その下部に、ボルト頭部2をスムーズに嵌合するためのテーパー27が形成されている。
【0021】
嵌合キャップ8の外径は、保持リング9の内径よりも小さく設定され、キャップ6に組み込まれた嵌合キャップ8がボルト頭部2に嵌合する際、嵌合キャップ8と保持リング9との隙間28により、ボルト頭部2の位置に合わせて、嵌合キャップ8がフロアキャップ7及び保持リング9に対して径方向に移動する。
【0022】
嵌合キャップ8に形成される回転禁止アーム11は、嵌合キャップ8の外周面の左右から径方向外向きに突出し、一対の回転禁止アーム11の先端部がフロアキャップ7の壁部22、23の両側のストッパ部10の間に侵入するようになっている。
【0023】
一対の回転禁止アーム11は、その先端同士の間隔を貫通孔5及びフロアキャップ7の直径よりも小さくする長さに設定され、嵌合キャップ8がボルト頭部2に嵌合する際、貫通孔5の筒部12と回転禁止アーム11の先端との間の隙間29により、フロアキャップ7及び保持リング9に対する径方向への移動が許容される。一対の回転禁止アーム11の厚さは、フロアキャップ7と貫通孔5の鍔部13との間隔と同程度に設定され、貫通孔5にキャップ6を装着した状態では、フロアキャップ7と鍔部13とで回転禁止アーム11を挟んで、嵌合キャップ8の変位を規制する。
【0024】
保持リング9は、嵌合キャップ8よりも大径で、壁部22、23の内側に嵌る大きさのリング状とされ、その前後部に、フロアキャップ7の位置決め突起24に嵌って位置決めする位置決め溝30を有する位置決め片31が形成されている。位置決め片31の両側には、フロアキャップ7の係止穴25に係止される係止片32が形成され、保持リング9が、その内側に嵌合キャップ8を保持しつつフロアキャップ7に取り付けられる。
【0025】
位置決め片31は、他の部位よりも突出し、フロアキャップ7と保持リング9との間に隙間33をあけつつ回転禁止アーム11を配置して、キャップ6を装着する際に、フロアキャップ7と保持リング9とで挟み付けることなく、ボルト頭部2に合わせて嵌合キャップ8を回転可能とするためのスペーサーとしても機能する。
【0026】
上記構成によれば、キャップ6をフロアキャップ7、嵌合キャップ8及び保持リング9の3部材構成にするので、ストッパ部10をボデー3やバックトリム4ではなくキャップ6内に設けて、キャップ6だけでボルトの回転を制限し、ボルトの緩みによるスペアタイヤキャリアの外れを防止することができる。
【0027】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、上記形態では、バックドア開口部下方のロアバックトリム4に貫通孔5を形成する態様について説明したが、同様の構成であれば、バックドア開口部下方に限らず、どの部位に設定してもよい。また、ロアバックトリム4に貫通孔5を形成するだけでなく、ボデー3を構成する剥き出しの板金パネルの貫通孔にキャップ6を直接係合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 車両構造
2 ボルト頭部
3 ボデー
4 ロアバックトリム
5 貫通孔
6 キャップ
7 フロアキャップ
8 嵌合キャップ
9 保持リング
10 ストッパ部
11 回転禁止アーム
12 筒部
13 鍔部
14 係止片
15 切欠
16 突片
17 切欠
18 操作爪
19 係止爪
20 係止片
21 係止爪
22、23 壁部
24 位置決め突起
25 係止穴
26 凹部
27 テーパー
28、29 隙間
30 位置決め溝
31 位置決め片
32 係止片
33 隙間
図1
図2
図3
図4