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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179894
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ウィルス感染リスク評価システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/80 20180101AFI20221129BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20221129BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221129BHJP
【FI】
G16H50/80
G06Q50/30
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086696
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕太
(72)【発明者】
【氏名】芳川 拓
(72)【発明者】
【氏名】井手野下 修
(72)【発明者】
【氏名】加茂 貴大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 文人
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC43
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】大幅なコストアップを招くことなく施設利用者のウィルス感染リスクを評価することができるシステムを提供する。
【解決手段】ゲート装置により認証媒体を読み取った時刻とゲート装置の機器識別情報とを受信し記憶する第1サーバ装置(12)と、ゲート装置により認証媒体から読み取られた媒体IDとIDを読み取った時刻とゲート装置の属性情報とを受信し記憶する第2サーバ装置(11)と、媒体IDを保有する利用者に関する外部情報を取得する外部情報取得手段(13)と、第1サーバ装置の記憶情報と第2サーバ装置の記憶情報と外部情報取得手段により取得された外部情報および時刻を収集する第3サーバ装置(15)とを備え、第3サーバ装置は、第1サーバ装置と第2サーバ装置と外部情報取得手段より収集した情報の共通性を利用して認証媒体の媒体IDと外部情報とを紐付け、認証媒体を保有する利用者のウィルス感染リスクを評価するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が保有する認証媒体を用いてゲート装置を通過して入出場する施設におけるウィルス感染リスクを評価するウィルス感染リスク評価システムであって、
前記ゲート装置により前記認証媒体に記憶されている情報を読み取った時刻の情報と、前記ゲート装置の機器識別情報とを受信し記憶する第1サーバ装置と、
前記ゲート装置により前記認証媒体から読み取られた媒体IDと、当該媒体IDを前記認証媒体から読み取った時刻の情報と、前記ゲート装置の属性情報とを受信し記憶する第2サーバ装置と、
前記媒体IDを保有する利用者に関する外部情報を取得する外部情報取得手段と、
前記第1サーバ装置に記憶されている情報と前記第2サーバ装置に記憶されている情報と前記外部情報取得手段により取得された外部情報およびその取得時刻情報を収集する第3サーバ装置と、
を備え、
前記第3サーバ装置は、前記第1サーバ装置より収集した情報と前記第2サーバ装置より収集した情報と前記外部情報取得手段より収集した情報の共通性を利用して前記認証媒体の媒体IDと前記外部情報とを紐付け、前記認証媒体を保有する利用者がウィルスに感染する可能性の程度または他の利用者がウィルスに感染させる可能性の程度を推定することを特徴とするウィルス感染リスク評価システム。
【請求項2】
前記ゲート装置の時刻情報と前記外部情報取得手段の時刻情報とを整合させる時刻整合化手段を備え、
前記第3サーバ装置は、前記時刻整合化手段により整合された時刻情報を指標として前記認証媒体の媒体IDと前記外部情報とを紐付けることを特徴とする請求項1に記載のウィルス感染リスク評価システム。
【請求項3】
前記外部情報取得手段は、前記ゲート装置が複数個配設されている領域を撮影する撮像装置であり、
前記撮像装置は、撮影した画像を処理して、前記ゲート装置を利用者が通過したことを判定する機能と、利用者が通過した前記ゲート装置を特定する機能と、利用者の状態を判定して前記外部情報を生成する機能と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のウィルス感染リスク評価システム。
【請求項4】
前記外部情報は、利用者のマスク着用の有無および/または利用者の体温であることを特徴とする請求項3に記載のウィルス感染リスク評価システム。
【請求項5】
前記施設は鉄道の駅であり、前記第1サーバ装置は駅ごとに設けられ、
前記第3サーバ装置は、複数の駅の前記第1サーバ装置から情報を収集して処理するものであり、前記外部情報と前記ゲート装置を利用者が通過した時間帯と利用者が通過した前記ゲート装置の所在地をそれぞれスコア化し、各スコアを加算して合計スコアに基づいて利用者がウィルスに感染する可能性の程度または他の利用者がウィルスに感染させる可能性の程度を推定することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のウィルス感染リスク評価システム。
【請求項6】
前記駅の構内には前記認証媒体を使用して物品の購入またはサービスの提供を受けることが可能な店舗が設けられ、前記店舗には前記認証媒体の読み取り装置が配設されており、前記第3サーバ装置は前記店舗の利用をスコア化して前記合計スコアに加算する機能を備えることを特徴とする請求項5に記載のウィルス感染リスク評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅等のゲートを備えた施設の入場者がウィルスに感染しているか推定して、施設内における利用者のウィルス感染リスクを評価するリスク評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルス感染症の流行により、人が多く集まる鉄道の駅などの公共施設におけるウィルス感染者や濃厚接触者の特定や行動の把握が重要になっている。従来、公共施設において多数の利用者の中からインフルエンザなどの感染症にかかっている感染者を発見する技術として、サーマルカメラにより同時に複数の利用者を撮影した画像を処理して発熱者を推定する方法が知られている。
一方、駅構内において特定の人物を発見する技術として、不正乗車券を使用して自動改札機を通過する不正利用者を監視カメラの画像を利用して発見する改札監視システムに関する発明がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-54355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている改札監視システムに関する発明は、監視カメラの画像から利用者の年齢、性別等の人物属性を推定し、利用者の人物属性に応じた利用条件が設けられた乗車券の情報に基づいて駅の自動改札機を通過する不正利用者を発見するというものである。そのため、人物属性とは関係のないウィルス感染者や自身がウィルスに感染していることを知らない利用者を発見することは困難である。また、特許文献1の改札監視システムでは、複数の改札機のそれぞれにカメラを設けて、利用者を撮影する構成を採っているため、改札機の改造が必要であるとともに、1つの駅に設置するカメラの台数および通信回線数も増加するので、システムのコストアップを招くという課題がある。
【0005】
一方、サーマルカメラにより撮影した画像を処理して発熱者を特定する方法は、入場を整理する係員が多く待機しているイベント施設には有効であるが、駅の自動改札機に適用した場合、画像上で感染者を特定できたとしても、改札口に待機している係員は少なくかつ短時間に多くの駅利用者が改札機を通過するとともに入場後にそれぞれ異なる方向に向って移動していくため、追跡するのが困難である。また、コロナウィルス感染症の場合、無症状でも感染力を有することがあるため、そのような利用者をサーマルカメラで発見することはできないという課題がある。
【0006】
さらに、現在、交通系ICカードを利用した列車の利用がかなり普及しており、交通系ICカードの利用情報を収集しデータベースに記憶するカード管理サーバや、各駅にある複数の改札機を利用者が通過した際の情報を収集しデータベースに記憶する改札管理サーバが存在している。一方、各駅の改札口には、不審者(不正入場者を含む)やトラブルを発見するための監視システムを構成する監視カメラが設けられている。既設の監視カメラの画像であっても、マスクの着用の有無等であれば、画像処理で比較的に容易に検出することができる。また、近年、AI(人工知能)を搭載したAIカメラが提供されるようになってきており、既設の監視カメラをAIカメラに置き替えれば、利用者の体温や体調不良(行動や顔表情)を認識することができる。
【0007】
そこで、本発明者らは、カード情報データベースのデータと改札情報データベースのデータと監視カメラの画像のような外部情報とを利用して、ウィルス感染者の駅構内への入場を推定するシステムを構成することを検討した。
しかしながら、カード管理サーバまたは改札管理サーバに、外部情報を付与してウィルス感染者の駅構内への入場を推定する機能を付加しようとすると、既存のサーバの大規模な改修が必要であり、大幅なコストアップを招くとともに、カード情報と改札情報と外部情報を互いに結びつけるのが困難であるという課題があることが明らかになった。
【0008】
この発明は上記のような背景のもとになされたものでその目的とするところは、大幅なコストアップを招くことなくゲート(改札機)を通過して駅等の施設に入場した利用者のウィルスに感染している可能性あるいは他の利用者へ感染させる可能性の程度を高精度で推定することができるウィルス感染リスク評価システムを提供することにある。
この発明の他の目的は、ゲートを通過して駅等の施設に入場したウィルス感染者や濃厚接触者の行動を把握し、感染リスクに関する情報を駅利用者に提供して駅構内での感染症への感染リスクを低下させることができるウィルス感染リスク評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、
利用者が保有する認証媒体を用いてゲート装置を通過して入出場する施設におけるウィルス感染リスクを評価するウィルス感染リスク評価システムにおいて、
前記ゲート装置により前記認証媒体に記憶されている情報を読み取った時刻の情報と、前記ゲート装置の機器識別情報とを受信し記憶する第1サーバ装置と、
前記ゲート装置により前記認証媒体から読み取られた媒体IDと、当該媒体IDを前記認証媒体から読み取った時刻の情報と、前記ゲート装置の属性情報とを受信し記憶する第2サーバ装置と、
前記媒体IDを保有する利用者に関する外部情報を取得する外部情報取得手段と、
前記第1サーバ装置に記憶されている情報と前記第2サーバ装置に記憶されている情報と前記外部情報取得手段により取得された外部情報およびその取得時刻情報を収集する第3サーバ装置と、を備え、
前記第3サーバ装置は、前記第1サーバ装置より収集した情報と前記第2サーバ装置より収集した情報と前記外部情報取得手段より収集した情報の共通性を利用して前記認証媒体の媒体IDと前記外部情報とを紐付け、前記認証媒体を保有する利用者がウィルスに感染する可能性の程度または他の利用者がウィルスに感染させる可能性の程度を推定するようにしたものである。
【0010】
上記のようなシステムによれば、ゲート装置(改札機)が読み取った認証媒体(ICカード)の媒体ID(カードID)と外部情報(監視カメラの判定情報等)とを紐付けることができるため、認証媒体を保有する利用者がウィルスに感染する可能性の程度または他の利用者へウィルスを感染させる可能性の程度を推定することができる。また、既存のサーバ装置(改札管理サーバとカード管理サーバ)に何ら変更を加えることなく、ウィルス感染リスクを評価することができるため、既存のサーバの大規模な改修に伴う大幅なコストアップを回避することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記ゲート装置の時刻情報と前記外部情報取得手段の時刻情報とを整合させる時刻整合化手段を備え、
前記第3サーバ装置は、前記時刻整合化手段により整合された時刻情報を指標として前記認証媒体の媒体IDと前記外部情報とを紐付けるようにする。
かかる構成によれば、ゲート装置(改札機)保有するタイマの時刻と外部情報取得手段(監視カメラ等)が保有するタイマの時刻がずれることがあったとしても、時刻情報を指標として認証媒体の媒体IDと外部情報とを紐付けることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記外部情報取得手段は、前記ゲート装置が複数個配設されている領域を撮影する撮像装置であり、
前記撮像装置は、撮影した画像を処理して、前記ゲート装置を利用者が通過したことを判定する機能と、利用者が通過した前記ゲート装置を特定する機能と、利用者の状態を判定して前記外部情報を生成する機能と、を備えているようにする。
かかる構成によれば、外部情報取得手段としてゲート装置(改札機)が複数個配設されている領域を撮影する撮像装置(監視カメラ)を使用した場合に、撮像装置が撮影した画像に基づいて外部情報(判定情報)を取得した際のゲート装置を特定することができるため、ゲート装置が取得した情報と撮像装置が生成した外部情報を紐付けることができ、ゲート装置を通過した利用者のウィルス感染リスクを評価することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記外部情報は、利用者のマスク着用の有無および/または利用者の体温であるようにする。
かかる構成によれば、既存の画像処理技術を用いて飛沫が原因の感染症や発熱を伴う感染症の感染リスクを容易に評価することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記施設は鉄道の駅であり、前記第1サーバ装置は駅ごとに設けられ、
前記第3サーバ装置は、複数の駅の前記第1サーバ装置から情報を収集して処理するものであり、前記外部情報と前記ゲート装置を利用者が通過した時間帯と利用者が通過した前記ゲート装置の所在地をそれぞれスコア化し、各スコアを加算して合計スコアに基づいて利用者がウィルスに感染する可能性の程度または他の利用者がウィルスに感染させる可能性の程度を推定するようにする。
かかる構成によれば、鉄道の駅利用者がウィルスに感染する可能性の程度または他の利用者へウィルスを感染させる可能性の程度を高精度に推定することができる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記駅の構内には前記認証媒体を使用して物品の購入またはサービスの提供を受けることが可能な店舗が設けられ、前記店舗には前記認証媒体の読み取り装置が配設されており、前記第3サーバ装置は前記店舗の利用をスコア化して前記合計スコアに加算する機能を備えるようにする。
上記のような構成によれば、改札機を通過して駅構内に入場したウィルス感染者や濃厚接触者の高リスク行動を把握することができ、それによって感染リスクに関する情報を駅員や駅利用者に提供して駅構内での感染症への感染リスクを低下させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のウィルス感染リスク評価システムによれば、大幅なコストアップを招くことなく、ゲート(改札機)を通過して駅等の施設に入場した利用者のウィルスに感染している可能性あるいは他の利用者へ感染させる可能性の程度を高精度で推定することができる。また、本発明のウィルス感染リスク評価システムによれば、ゲート(改札機)を通過して駅等の施設に入場したウィルス感染者や濃厚接触者の行動を把握することができ、それによって感染リスクに関する情報を施設利用者に提供し、施設内での感染症への感染リスクを低下させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したウィルス感染リスク評価システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2】実施形態のウィルス感染リスク評価システムを構成する各サーバの記憶装置に記憶されるデータの一欄を示した図である。
図3】実施形態のウィルス感染リスク評価システムを構成する自動改札機における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】実施形態のウィルス感染リスク評価システムを構成する改札管理サーバにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態のウィルス感染リスク評価システムを構成する監視カメラ(AIカメラ)における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態のウィルス感染リスク評価システムを構成する統括サーバにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るリスク評価方法の一実施形態を、鉄道の駅において発生するリスクの評価に適用した場合を例にとって説明する。
図1は、本発明を適用したウィルス感染リスク評価システムの一実施形態を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のリスク評価システムは、駅の改札口に設けられている複数の自動改札機10A,10B,10c……から入出場に関するデータを収集し記憶する改札管理サーバ11と、自動改札機10A,10B,10c……から入出場に使用された交通系ICカード(認証媒体)に関するデータを収集し記憶するカード管理サーバ12、各改札口の複数の自動改札機における利用者の入出場を監視する監視カメラ13、上記改札管理サーバ11およびカード管理サーバ12、監視カメラ13と通信ネットワーク14を介して接続された統合サーバ15を備える。
【0020】
自動改札機10で使用される認証媒体には、同一機能を実現するモバイルSuica(登録商標)のようなアプリケーションが搭載されているモバイル端末が含まれる。改札管理サーバ11は改札口ごとに設けられていても良いし、1つの駅の複数の改札口に対応して駅単位で設けられていても良い。
カード管理サーバ12は複数の駅の自動改札機10からのデータを収集し処理するように構成されている。改札管理サーバ11も、複数の駅の自動改札機10からのデータを収集し処理するように構成しても良い。統合サーバ15は、通信ネットワーク14を介して接続された複数の駅の改札管理サーバ11およびカード管理サーバ12からデータを収集し処理するように構成されていている。
【0021】
自動改札機10が改札管理サーバ11へ送信するデータは、入場または出場、通過した時刻(ICカードをカードリーダにかざした時刻)、改札機番号である。自動改札機10がカード管理サーバ12へ送信するデータは、入場または出場、通過した時刻、自改札機が設置されている駅名(駅ID)、読み取ったICカードの情報(カードID等)である。駅名(駅ID)は、自動改札機10と通信ネットワーク14との間に中継装置を設けて、その中継装置で付加して送信するようにしても良い。また、自動改札機10から改札管理サーバ11およびカード管理サーバ12へのデータ送信は、同一のケーブルを使用して時分割方式で行うように構成することで、ケーブル本数を減らすことができる。
【0022】
監視カメラ13には、AI(人工知能)を搭載したAIカメラを使用するのが望ましく、少なくとも自動改札機を通過する利用者のマスク着用の有無や体温を判定しその情報を統合サーバ15へ送信する機能を有している。AIに教師データを与えて利用者の病的な行動(ふらつき等)や顔表情(疲れ顔等)を認識することができるようにしても良い。
サーバ11,12,15は、マイクロプロセッサ(CPU)のような演算処理装置、RAMやROM、ハードディスクドライバのような記憶装置などを備えた通常のコンピュータシステムと同様な構成を有しており、各サーバの記憶装置にはデータベースが設けられ、収集したデータが記憶される。
【0023】
図2には、各サーバの記憶装置(データベース)に記憶されるデータの一欄が示されている。図2において、(A)は改札管理サーバ11のデータ群、(B)はカード管理サーバ12のデータ群、(C)は監視カメラ13のデータ群、(D)は統合サーバ15のデータ群である。
なお、改札管理サーバ11の記憶装置には、図2(A)のように、自動改札機10から収集した入場または出場、通過した時刻、改札機番号が履歴情報として蓄積される他、固定データとして設置されている駅名(駅コード)が記憶されており、統括サーバ15へデータを送信する際には、駅コードが付加される。
【0024】
カード管理サーバ12の記憶装置には、図2(B)のように、自動改札機10から収集したカードID、改札機を通過した時刻、乗車駅または降車駅が履歴情報として蓄積される。なお、カード管理サーバ12は、自動改札機10から入場または出場と駅名を受信すると、その情報が乗車駅、降車駅として記憶される。また、利用者が駅構内店舗やコインロッカーなどでカードを使用した場合には、その情報が履歴情報として蓄積される。
ここで、図2(A)の時刻と図2(B)の時刻は共に自動改札機10から送られてきた時刻情報であるので同一である。
【0025】
監視カメラ13の記憶装置には、図2(C)のように、画像処理により異常を検知した利用者の入場時の時刻、改札機番号、外部情報としてマスク着用有無、体温等が記憶される。このうち入場時刻は、監視カメラ13が有するタイマ(時計)の時刻であり、図2(A),(B)の改札機時刻とは異なる。また、「改札機番号」は、撮影した画像をマトリックス状に分割し、予め各分割エリアと改札機番号との関係を示すリストを記憶しておいて、マスク着用無しや体温異常が検出された利用者を検知した場合に、当該利用者の画像内のエリアを判定し、そのエリアから上記リストを参照して特定することができる。
【0026】
なお、図1に示されているシステムにおいては、監視カメラ13は改札内に設置されているが、上記監視カメラ13とは別個に、改札外にも監視カメラを設置して出場する利用者を撮影し、上記と同様にして、出場時刻と改札機番号、外部情報も記憶し、統括サーバ15へ送信するように構成しても良い。また、監視カメラ13が記憶する外部情報には、異常を検知した利用者の顔や体の画像を切り抜いた画像情報が含まれていても良い。これにより、駅構内の各所に配設されている監視カメラによる駅構内での特定利用者の追跡が可能となる。
【0027】
統括サーバ15の記憶装置には、改札管理サーバ11とカード管理サーバ12と監視カメラ13から受信したデータを統合して、図2(D)のように、カードID、時刻、乗車駅/降車駅、改札機番号、外部情報が記憶される。
この際、改札管理サーバ11の時刻情報およびカード管理サーバ12の時刻情報と監視カメラ13の時刻情報は、一致していないので、改札管理サーバ11とカード管理サーバ12と監視カメラ13の受信データを適切に紐付けて統合しないと、利用者(カードID)と外部情報との正確なマッチングが行えない。そこで、本発明のリスク評価方法においては、以下に説明するようなデータ間の紐付け処理を行うこととした。
【0028】
具体的には、改札管理サーバ11のデータとカード管理サーバ12のデータは、共に改札機からの情報であるため、時刻情報で容易に紐付けることができる。一方、改札管理サーバ11のデータと監視カメラ13のデータは、共に改札機番号を含んでいるので、時刻情報が異なっていても、改札機番号で紐付けることができる。従って、監視カメラ13の「外部情報」とカード管理サーバ12の「カードID」とを紐付けるには、先ず改札機番号を用いて改札管理サーバ11のデータと監視カメラ13のデータを紐付け、次に時刻情報を用いて改札管理サーバ11のデータとカード管理サーバ12のデータを紐付けることで可能となる。
【0029】
なお、改札管理サーバ11のデータと監視カメラ13のデータを紐付けるには、監視カメラ13の画像から改札機番号を特定することができるので、改札機番号が同じで監視カメラ13が外部情報に相当する異常を検知したカメラ時刻に最も近い改札機時刻のデータ群を対応させることが考えられる。ただし、このような手法は、カメラ時刻と改札機時刻が大きくずれていない場合には有効であるが、時刻が大きくずれていたり短時間に多くの利用者が改札機を通過していたりすると、誤った紐付けが行われるおそれがある。また、2段階の紐付け処理が必要であるため、統括サーバ15の負担が大きくなるという課題がある。そこで、本実施形態のリスク評価システム(図1)においては、カメラ時刻と改札機時刻を同期させる、もしくは時刻差を把握しておくことで、時刻情報を指標してデータ間の紐付けを行うこととした。
【0030】
次に、上記データ間の紐付け手法を利用したリスク評価方法の処理手順の具体例について、図3図6のフローチャートを用いて説明する。このうち、図3は自動改札機10の処理、図4は改札管理サーバ11の処理、図5は監視カメラ13の処理、図6は統括サーバ15の処理を示す。なお、以下に説明する処理手順は一例であって、これに限定されるものではない。
【0031】
図3の自動改札機10の処理においては、先ず内蔵するカードリーダに対応する所定部位へのICカードの接近(翳し)の有無を判定し(ステップS1)、ICカードの接近があったと判定すると、カードに記憶されているIDを読み込む(ステップS2)。続いて、自動改札機10は、読み込んだカードIDと入場か出場かを示す情報および時刻情報を自身の記憶装置に記憶する(ステップS3)。自動改札機10には、入場専用と出場専用と入出場兼用のものがあり、入出場兼用の自動改札機10には2つのカードリーダが設けられていて、入場か出場かを判別することができる。
【0032】
次に、自動改札機10は、ステップS2で読み込んだカードIDが指定(手配)されたIDであるか否か判定する(ステップS4)。そして、指定(手配)されたIDでない(No)と判定すると、ステップS5へ進み、改札管理サーバ11およびカード管理サーバ12へ、ステップS3で記憶したデータのうち所定のものを送信する。また、このとき、カード管理サーバ12へは、自機が設置されている駅コード(駅名)を送信する。その後、ステップS1へ戻って、上記一連の処理を繰り返す。
一方、ステップS4で、指定(手配)されたIDである(Yes)と判定した場合の処理については後に説明する。
【0033】
図4の改札管理サーバ11の処理においては、先ず、自動改札機10からのデータを受信したか否か判定し(ステップS11)、データを受信した(Yes)と判定すると、ステップS12へ進み、受信したデータをデータベース(DB)に記憶する。次に、統括サーバ15よりデータ送信要求があったか否か判定し(ステップS13)、データ送信要求があった(Yes)と判定すると、ステップS14へ進み、ステップS12で記憶したデータに駅名を付加して統括サーバ15へ送信する。その後、ステップS11へ戻って、上記一連の処理を繰り返す。
【0034】
図5の監視カメラ13の処理においては、先ず、撮影した画像を処理して改札機および利用者の認識処理(ステップS21)を行い、監視対象の複数の改札機のうちいずれかの改札機を利用者が通過したか否か判定し(ステップS22)、利用者が通過した(Yes)と判定すると、ステップS23へ進み、マスクの着用の有無および体温の判定処理を行う。次に、利用者に異常すなわちマスクを着用していないとか体温が37度以上あるか否か判定する(ステップS24)。そして、利用者に異常がある(Yes)と判定すると、ステップS25へ進み、エリア分割処理でその利用者が通過した改札機の位置を見つけ改札機の位置からリストを参照して改札機番号を取得する。
【0035】
それから、異常ありと判定したときの判定結果を外部情報として、カメラが画像を撮影した時刻情報、改札機番号とともに記憶装置に記憶する(ステップS26)。また、ステップS24で利用者に異常がない(No)と判定すると、ステップS25,S26をスキップしてステップS27へ進む。そして、統括サーバ15よりデータの送信要求があったか否か判定し(ステップS27)、データの送信要求があった(Yes)と判定すると、ステップS28へ進み、ステップS26で記憶したデータを統括サーバ15へ送信する。その後、ステップS11へ戻って、上記一連の処理を繰り返す。
【0036】
図6の統括サーバ15の処理においては、先ず、時刻の同期化処理(ステップS31)を実行する。具体的には、例えば毎日のシステム起動時に、改札機10や監視カメラ13、改札管理サーバ11が、別個独立して存在している所定の時刻管理サーバから時刻情報を取得して定期的に同期させる。あるいは、システム起動後の最初の利用者が各改札機を通過した際の改札機の時刻とその通過を監視カメラ13が画像処理で検知した時刻との差分をとって、時刻同期化のための補正値としメモリに記憶する処理を改札機ごとに実行するようにしてもよい。
【0037】
次に、改札管理サーバ11とカード管理サーバ12と監視カメラ13よりデータを収集(ステップS32)した後、収集したデータの紐付け処理(ステップS33)を行う。具体的には、ステップS32で記憶した補正値を用いて、受信したデータに含まれている監視カメラの時刻または改札機の時刻を補正し、補正後時刻を指標して時刻が同一のデータをグループ化する。なお、ステップS31の同期化処理において、改札機10と監視カメラ13がそれぞれ共通のサーバから時刻情報を取得することで同期させた場合にはこのステップS33の処理において時刻補正は不要であり、補正しない時刻を指標して時刻が同一のデータをグループ化して紐付ける。
【0038】
その後、ステップS34へ進んで、ステップS33でグループ化したデータ群ごとに監視カメラ13より受信した「外部情報」に対応するカードIDを取得する。そして、取得したカードIDに対応して設けられた「リスクスコア」に、「外部情報」が「マスク無し」か「体温異常」かに応じて予め設定された所定のパーソナルスコア値を加算する(ステップS35)。パーソナルスコア値は、「マスク無し」よりも「体温異常」の方が大きくなるように設定される。「体温異常」のある利用者の方がウィルスに感染している可能性が高いためである。
【0039】
次に、カードIDから乗車駅または降車駅が混雑度の高い駅であるか否か判定し(ステップS36)、混雑度の高い駅ある(Yes)と判定すると、ステップS37へ進み、当該カードIDの「リスクスコア」に、駅毎に予め設定された所定のフィールドスコア値を加算する。フィールドスコア値は、混雑度の高い駅ほど大きくなるように設定される。利用者がウィルス感染者であった場合、混雑度の高い駅ほど他の利用者へ感染させる可能性が高くなるためである。
上記のように、カードIDごとに「リスクスコア」を算出することによって、「リスクスコア」が高いほど、ウィルスに感染していて他人に感染させるリスクが高い、またはウィルス感染者からウィルスに感染させられるリスクが高いことを数値で示すことができる。
【0040】
ステップS37の後、スコア更新処理(ステップS38~S41)を実行する。具体的には、先ず統括サーバ15が収集したデータ内に改札機を通過した時刻が、通勤時間帯のような混雑が予想される時間帯に入っているか否か判定し(ステップS38)、時間帯に入っている(Yes)と判定すると、ステップS39へ進み、「リスクスコア」に予め設定されたタイムスコア値を加算する。
次に、カードIDから統括サーバ15が収集したデータ内に駅構内の店舗(あるいは待合室)の利用情報があるか否か判定し(ステップS40)、利用情報がある(Yes)と判定すると、ステップS41へ進み、予め設定されたフィールドスコア値を「リスクスコア」に加算する。フィールドスコア値は、例えば平均滞在時間の長い店舗ほど大きくなるように設定される。滞在時間が長いほど、利用者がウィルス感染者であった場合に他の利用者へ感染させる可能性が高く、店舗にウィルス感染者がいた場合に他の利用者がウィルスに感染するリスクが高くなるためである。
【0041】
その後、ステップS35~S41で算出された「リスクスコア」が予め設定されたしきい値を超えているか否か判定する(ステップS42)。そして、「リスクスコア」がしきい値を超えている(Yes)と判定すると、ステップS43へ進み、システムに含まれるすべての改札機へ、しきい値を超えた「リスクスコア」に対応するカードIDを送信する。
すると、このカードIDを受信した改札機は、当該カードIDを有するICカードが通過した際に、図3のステップS6において、入場か出場か判定し、入場の場合には当該改札機のゲートを遮断あるいは駅員が保有する携帯端末や駅構内にある店舗等の端末へコロナ感染リスクが高い利用者が入場したことを知らせる情報を送信する(ステップS7)。また、ステップS6で出場と判定すると、ステップS8へ進み、医師の診察を受けることを勧めるメッセージ等を改札機の表面に設けられている表示部へ表示させる。
【0042】
上述したように、上記実施形態のリスク評価方法によれば、改札機を通過する利用者が有するウィルス感染リスクの大小をカードIDごとに評価することができる。
また、ウィルス感染リスクの高い利用者を把握し、そのような利用者が駅構内に入場するのを制限するなどの対策を行うことができ、それによって駅構内におけるウィルス感染の拡大を抑制することができる。なお、図6のフローチャートにおいては、ステップS40、S41を省略しても良い。また、ウィルス感染リスクの高い利用者がコインロッカー等の設備を利用した場合には、その情報を駅員へ連絡して、消毒などの処置を実施させるようにしても良い。
【0043】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば前記実施例では、外部情報取得手段として改札口に配設されたAIカメラのような映像カメラを使用しているが、外部情報はカメラの画像に限定されず、統括サーバ15が、カード管理サーバ12により収集したカードIDを用いて個人情報を取得し、取得した個人情報を用いて例えば病床履歴またはウィルス感染者への濃厚接触有無情報等を記憶している外部のデータベース等にアクセスして、当該利用者が他の利用者へウィルスを感染させる可能性の程度を推定するようにしても良い。
【0044】
また、前記実施形態のシステムでは、統括サーバ15が監視カメラ13から外部情報としてマスク着用の有無と体温を取得してウィルス感染リスクを評価しているが、監視カメラ13からマスクの着用有無または体温情報を取得した際の利用者の画像を取得し、改札口以外の駅構内に配設されているカメラの画像と比較することで、当該利用者の行動を追跡し、ウィルス感染リスクの評価の精度を高めるように構成しても良い。さらに、監視カメラ13の代わりもしくは監視カメラとは別にサーモカメラを併設して、サーモカメラの画像から改札機を通過する利用者の体温を計測して時刻情報と共に統括サーバ15へ送信するようにしても良い。
【0045】
また、前記実施形態では、本発明を鉄道の駅構内でのウィルスへの感染リスクを評価する場合に適用したものについて説明したが、本発明は、鉄道以外の例えばバス(水上バスを含む)やフェリー、飛行機などを運行する交通事業における入出場施設(空港ビル等)や各種スポーツ会場、イベント会場、テーマパーク、アミューズメント施設等のチケットを使用して入場する施設内におけるウィルス感染リスクを評価する場合にも適用することができる。
さらに、本発明は、鉄道駅構内におけるコロナウィルスへの感染リスクの評価に適用した場合について説明したが、本発明はコロナウィルス以外のウィルスや細菌などの感染症への感染リスクの評価にも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 自動改札機
11 改札管理サーバ(第1サーバ装置)
12 カード管理サーバ(第2サーバ装置)
13 AIカメラ(外部情報取得手段、撮像装置)
14 通信ネットワーク
15 統括サーバ(第3サーバ装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6