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特開2022-179896交通行動ポイント管理システム、交通行動ポイント管理方法、および、コンピュータプログラム
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  • 特開-交通行動ポイント管理システム、交通行動ポイント管理方法、および、コンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179896
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】交通行動ポイント管理システム、交通行動ポイント管理方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20221129BHJP
【FI】
G06Q50/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086700
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小里 明男
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】 交通行動ポイント管理システムにおいて、交通事故の発生を抑制する技術を提供する。
【解決手段】 交通行動ポイント管理システムは、交通参加者の交通手段によって分類された交通参加者の属性ごとに、交通参加者の行動内容が評価され、各交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得部と、属性の異なる交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、取得部が取得した仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正部と、算出された交通行動ポイントを記憶する記録部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通参加者の行動内容に応じて前記交通参加者の各人に付与される交通行動ポイントを管理する交通行動ポイント管理システムであって、
交通手段によって分類された前記交通参加者の属性ごとに、前記交通参加者の行動内容が評価され、前記交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得部と、
属性の異なる前記交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、前記取得部が取得した仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正部と、
前記補正部によって算出された交通行動ポイントを記憶する記録部と、を備える、
交通行動ポイント管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交通行動ポイント管理システムであって、
前記補正部は、
前記属性ごとに、前記仮交通行動ポイントの平均値を算出し、
前記仮交通行動ポイントの平均値が最も高い属性以外の他の属性について、前記平均値が最も高い属性の平均値に対する前記仮交通行動ポイントの平均値の比率を算出し、
前記他の属性に属する交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントに、前記比率をかけることで、前記他の属性に属する交通参加者のそれぞれの交通行動ポイントを算出する、
交通行動ポイント管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の交通行動ポイント管理システムは、さらに、
前記交通参加者の交通行動ポイントの大きさに応じて、自身が属する属性以外の属性の交通行動ポイントの一部を前記交通参加者に還元する還元部を備える、
交通行動ポイント管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の交通行動ポイント管理システムであって、
前記還元部は、
一つの属性の交通行動ポイントの合計に対する各交通参加者の交通行動ポイントが占める割合をポイント占有率として算出し、
前記ポイント占有率を用いて算出される交通行動ポイントを、各交通参加者に還元する、
交通行動ポイント管理システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の交通行動ポイント管理システムは、さらに、
前記交通行動ポイントを表示する表示部であって、前記交通行動ポイントと、自身が属する属性以外の属性から還元された交通行動ポイントとの両方を表示する表示部を備える、
交通行動ポイント管理システム。
【請求項6】
交通参加者の行動内容に応じて前記交通参加者の各人に付与される交通行動ポイントを管理する交通行動ポイント管理方法であって、
交通手段によって分類された前記交通参加者の属性ごとに、前記交通参加者の行動内容が評価され、前記交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得工程と、
属性の異なる前記交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、前記取得工程において取得された仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正工程と、
前記補正工程において算出された交通行動ポイントを記憶する記録工程と、を備える、
交通行動ポイント管理方法。
【請求項7】
交通参加者の行動内容に応じて前記交通参加者の各人に付与される交通行動ポイントの管理を情報処理装置に実行させるコンピュータプログラムであって、
交通手段によって分類された前記交通参加者の属性ごとに、前記交通参加者の行動内容が評価され、前記交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得機能と、
属性の異なる前記交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、前記取得機能によって取得された仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正機能と、
前記補正機能によって算出された交通行動ポイントを記憶する記録機能と、を前記情報処理装置に実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通行動ポイント管理システム、交通行動ポイント管理方法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交通参加者の行動内容に応じて交通参加者に付与される交通行動ポイントを管理する交通行動ポイント管理システムが知られている(例えば、特許文献1)。交通行動ポイントは、交通参加者による交通ルールの順守行動や、他の交通参加者に対する思いやりのある行動が評価されることで、その交通参加者に付与されて、保険料の割引や景品との交換などに利用することができる。これにより、交通参加者は、安全な交通行動を心掛けるように意識づけられることで、交通事故の発生抑制が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-15494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、交通参加者の交通行動が評価される方法は、交通参加者が選択する交通手段によって、交通行動ポイントの割り付け方や付与される機会などが異なる。このため、交通行動ポイントの集めやすさに差が出やすく、不平等感が生じるおそれがあった。また、交通参加者の各人が交通行動ポイントを集めることに注力する場合には、安全な交通行動を心掛けるように意識づけがされにくい問題もあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、交通行動ポイント管理システムにおいて、不平等感を小さくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、交通参加者の行動内容に応じて交通参加者の各人に付与される交通行動ポイントを管理する交通行動ポイント管理システムが提供される。この交通行動ポイント管理システムは、交通手段によって分類された前記交通参加者の属性ごとに、前記交通参加者の行動内容が評価され、前記交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得部と、属性の異なる前記交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、前記取得部が取得した仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正部と、前記補正部によって算出された交通行動ポイントを記憶する記録部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、取得部は、交通参加者の交通手段によって分類された交通参加者の属性ごとに、交通参加者の行動内容が評価された結果、各交通参加者に付与されている仮交通行動ポイントを取得する。補正部は、交通参加者各人が属する属性によって不平等になりやすい仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、仮交通行動ポイントを補正することで交通行動ポイントを算出する。記憶部は、この算出された交通行動ポイントを記憶する。これにより、複数の属性の間において、交通行動ポイントの集めやすさに差が出にくくなり、不平等感を小さくすることができる。したがって、全ての交通参加者を対象にして、交通ルールを順守する行動を促すことができるため、大きな事故低減効果が期待できる。
【0009】
(2)上記形態の交通行動ポイント管理システムにおいて、前記補正部は、前記属性ごとに、前記仮交通行動ポイントの平均値を算出し、前記仮交通行動ポイントの平均値が最も高い属性以外の他の属性について、前記平均値が最も高い属性の平均値に対する前記仮交通行動ポイントの平均値の比率を算出し、前記他の属性に属する交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントに、前記比率をかけることで、前記他の属性に属する交通参加者のそれぞれの交通行動ポイントを算出してもよい。この構成によれば、補正部は、仮交通行動ポイントの平均値が最も高い属性の平均値に対する他の属性の仮交通行動ポイントの平均値の比率を算出する。補正部は、その比率が算出された他の属性に属する交通参加者について、付与された仮交通行動ポイントに、算出された比率をかけることで交通行動ポイントを算出する。これにより、最も多く仮交通行動ポイントが付与された属性の交通参加者の交通行動ポイントと、他の属性の交通参加者の交通行動ポイントとは、同じ価値になるため、複数の属性の間での不平等感を小さくすることができる。
【0010】
(3)上記形態の交通行動ポイント管理システムは、さらに、前記交通参加者の交通行動ポイントの大きさに応じて、自身が属する属性以外の属性の交通行動ポイントの一部を前記交通参加者に還元する還元部を備えていてもよい。この構成によれば、還元部は、交通参加者に対して、自身が属する属性以外の属性の交通行動ポイントの一部を還元する。還元部は、交通参加者の交通行動ポイントの大きさに応じて、交通参加者に還元されるポイントの大きさを決定するため、交通参加者は、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。これにより、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができるため、交通参加者の行動は、他の交通参加者に対して安全面でより配慮したものとなり、大きな事故低減効果が期待できる。
【0011】
(4)上記形態の交通行動ポイント管理システムにおいて、前記還元部は、一つの属性の交通行動ポイントの合計に対する各交通参加者の交通行動ポイントが占める割合をポイント占有率として算出し、前記ポイント占有率を用いて算出される交通行動ポイントを、各交通参加者に還元してもよい。この構成によれば、還元部は、一つの属性の交通行動ポイントの合計に対する各交通参加者の交通行動ポイントが占める割合をポイント占有率として算出し、このポイント占有率を用いて、各交通参加者に還元される交通行動ポイントを算出する。すなわち、交通参加者各人の交通行動が、他の属性から還元される交通行動ポイントにも影響するため、交通参加者は、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。これにより、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができる。
【0012】
(5)上記形態の交通行動ポイント管理システムには、さらに、前記交通行動ポイントを表示する表示部であって、前記交通行動ポイントと、自身が属する属性以外の属性から還元された交通行動ポイントとの両方を表示する表示部を備えてもよい。この構成によれば、表示部は、自身の交通行動の評価によって付与される交通行動ポイントの他に、自身が属する属性以外の属性から還元された交通行動ポイントを表示する。これにより、交通参加者は、自身が属する属性以外の属性から交通行動ポイントが還元されていることを確認することができるため、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。したがって、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができる。
【0013】
(6)本発明の別の形態によれば、交通参加者の行動内容に応じて交通参加者の各人に付与される交通行動ポイントを管理する交通行動ポイント管理方法が提供される。この交通行動ポイント管理方法は、交通手段によって分類された前記交通参加者の属性ごとに、前記交通参加者の行動内容が評価され、前記交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得工程と、属性の異なる前記交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、前記取得工程において取得された仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正工程と、前記補正工程において算出された交通行動ポイントを記憶する記録工程と、を備える。この構成によれば、補正工程では、属性の異なる交通参加者のそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、仮交通行動ポイントを補正することで交通行動ポイントを算出し、記憶工程では、補正工程において算出された交通行動ポイントを記憶する。これにより、複数の属性の間において、不平等感を小さくすることができる。
【0014】
(7)本発明のさらに別の形態によれば、交通参加者の行動内容に応じて交通参加者の各人に付与される交通行動ポイントの管理を情報処理装置に実行させるコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、前記交通参加者の交通手段によって分類された前記交通参加者の属性ごとに、前記交通参加者の行動内容が評価され、各交通参加者に付与された仮交通行動ポイントを取得する取得機能と、属性の異なる前記交通参加者にそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、前記取得機能によって取得された仮交通行動ポイントを補正することで、交通行動ポイントを算出する補正機能と、算出された交通行動ポイントを記憶する記録機能と、を前記情報処理装置に実行させる。この構成によれば、情報処理装置において、補正機能によって、属性の異なる交通参加者のそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、仮交通行動ポイントを補正することで交通行動ポイントを算出し、記憶機能によって、補正機能によって算出された交通行動ポイントを記憶する。これにより、複数の属性の間において、不平等感を小さくすることができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、交通行動ポイント管理システムを構成する装置、交通行動ポイント管理システムの構成方法、交通行動ポイント管理システムの制御方法、交通行動ポイントの管理を実行するサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の交通行動ポイント管理システムの概略構成を示す図である。
図2】補正演算部の機能を説明する図である。
図3】還元処理部の機能を説明する図である。
図4】交通行動ポイント管理方法の第1のフローチャートである。
図5】交通行動ポイント管理方法を説明する第1の図である。
図6】交通行動ポイント管理方法の第2のフローチャートである。
図7】ポイント情報表示部に表示されるポイント情報の一例を示す図である。
図8】交通行動ポイント管理方法を説明する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の交通行動ポイント管理システムの概略構成を示す図である。本実施形態の交通行動ポイント管理システム1は、歩行者や自動車の運転者など交通参加者に対して、その交通参加者の行動内容に応じて付与される交通行動ポイントを管理する。交通行動ポイントは、交通参加者による交通ルールの順守行動や他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動などが評価されることで、その交通参加者に付与される。獲得した交通行動ポイントは、例えば、保険料の割引や景品交換などの特典、飲食割引などのサービスに利用することができる。
【0018】
交通行動ポイント管理システム1は、複数のデータベースと、補正演算部20と、還元処理部30と、ポイント情報表示部40と、を備える。交通行動ポイント管理システム1は、交通参加者の交通手段を分類した複数の属性のそれぞれについて、補正前の交通行動ポイントを記憶するデータベースと、補正後の交通行動ポイントを記憶するデータベースと、を備える。図1には、説明の便宜上、交通参加者の交通手段を「歩行」と「自動車」とに分類したときに、それぞれの属性を「歩行者」と「自動車運転者」とに設定した交通行動ポイント管理システム1の模式図を示している。図1には、データベースとして、歩行者行動仮ポイントデータベース11(以下、「歩行者仮ポイントDB11」という)と、運転者行動仮ポイントデータベース12(以下、「運転者仮ポイントDB12」という)と、歩行者行動ポイントデータベース21(以下、「歩行者ポイントDB21」という)と、運転者行動ポイントデータベース22(以下、「運転者ポイントDB22」という)と、が示されている。なお、交通行動ポイント管理システム1が備えるデータベースの数は、これに限定されず、上述したように、交通参加者の交通手段を分類した属性の数に応じて増減させることが可能である。
【0019】
交通行動ポイント管理システム1は、図示しない交通行動評価システムと電気的に接続されている。交通行動評価システムは、交通参加者について、該交通参加者の交通ルールの順守状況や、他の交通参加者に対する交通行動の良し悪しを判定する。交通行動評価システムは、交通参加者の交通手段によって分類された交通参加者の属性ごとに、交通参加者の行動内容を評価し、その評価結果に応じて、交通行動ポイントを算出し、その交通参加者に付与する。
【0020】
歩行者仮ポイントDB11は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などの記憶媒体で構成されている。歩行者仮ポイントDB11は、歩行者各人について、交通行動ポイントが付与されるタイミングごとに、電気的に接続している交通行動評価システムから取得し、記憶する。歩行者仮ポイントDB11では、属性「歩行者」に属する複数の交通参加者のうちの1人を特定するためのIDと、交通行動評価システムによって付与される交通行動ポイントとが紐づけされている。本実施形態では、歩行者仮ポイントDB11が記憶する歩行者各人の交通行動ポイントは、後述する交通行動ポイント管理方法での交通行動ポイントの補正が行われると、歩行者仮ポイントDB11から消去される。歩行者仮ポイントDB11は、特許請求の範囲の「取得部」に相当する。歩行者仮ポイントDB11が交通行動評価システムから取得する交通行動ポイントは、特許請求の範囲の「仮交通行動ポイント」に相当する。
【0021】
運転者仮ポイントDB12は、歩行者仮ポイントDB11と同様に、ハードディスクドライブなどの記憶媒体で構成されている。運転者仮ポイントDB12は、車両の運転者各人に付与される交通行動ポイントを、交通行動評価システムから取得し、記憶する。運転者仮ポイントDB12では、属性「自動車運転者」に属する複数の交通参加者のうちの1人を特定するためのIDと、交通行動評価システムによって付与される交通行動ポイントとが紐づけされている。本実施形態では、運転者仮ポイントDB12が記憶する車両の運転者各人の交通行動ポイントは、後述する交通行動ポイント管理方法での交通行動ポイントの補正が行われると、運転者仮ポイントDB12から消去される。運転者仮ポイントDB12は、特許請求の範囲の「取得部」に相当する。運転者仮ポイントDB12が交通行動評価システムから取得する交通行動ポイントは、特許請求の範囲の「仮交通行動ポイント」に相当する。
【0022】
補正演算部20は、歩行者仮ポイントDB11と、運転者仮ポイントDB12と、歩行者ポイントDB21と、運転者ポイントDB22とのそれぞれと電気的に接続している。補正演算部20は、図示しない記憶部に格納されているプログラムを、図示しないRAM(Random Access Memory)に展開することによって、歩行者仮ポイントDB11と、運転者仮ポイントDB12とのそれぞれに記憶されている交通参加者各人の交通行動ポイントを補正し、歩行者ポイントDB21と、運転者ポイントDB22とのそれぞれに記憶される交通行動ポイントを算出する。
【0023】
図2は、補正演算部の機能を説明する図である。図2には、歩行者仮ポイントDB11と、運転者仮ポイントDB12とのそれぞれに記憶されている交通行動ポイントの情報の一例を示している。図2に示すように、歩行者仮ポイントDB11に記憶されている交通行動ポイントの情報では、交通行動ポイントを付与された歩行者の人数(「ポイント付与人数」)は10人であり、歩行者各人に付与された交通行動ポイントの合計(「総付与ポイント」)は、300ポイント(P)となっている。運転者仮ポイントDB12に記憶されている交通行動ポイントの情報では、ポイント付与人数は20人であり、総付与ポイントは、100ポイントとなっている。補正演算部20は、このポイント付与人数と総付与ポイントから、交通参加者1人当たりの平均付与ポイントを算出する(「平均付与ポイント」の「補正前」)。補正演算部20は、この補正前の平均付与ポイントを属性ごとに比較して、平均付与ポイントが最も高い属性を除く他の属性の平均付与ポイントを、平均付与ポイントが最も高い属性の平均付与ポイントと同じになるように補正する。図2の例では、属性「自動車運転者」の5ポイントを6倍することで、「歩行者」の30ポイントと同じ値に補正する(「平均付与ポイント」の「補正後」)。この場合、補正演算部20が算出する補正係数は6となる。補正演算部20では、属性「自動車運転者」に属する交通参加者各人について、付与されている交通行動ポイントをそれぞれ6倍することで、各人の交通行動ポイントが、属性「歩行者」に属する交通参加者と同じ価値になるように補正する。
【0024】
図1に戻り、歩行者ポイントDB21は、ハードディスクドライブなどの記憶媒体で構成されている。歩行者ポイントDB21は、補正演算部20で算出された、歩行者各人の交通行動ポイントを記憶し、管理する。図2に示した例では、補正演算部20において、歩行者に付与された交通行動ポイントは補正されないため、歩行者ポイントDB21に記憶される歩行者各人の交通行動ポイントは、歩行者仮ポイントDB11が取得した交通行動ポイントと同じである。本実施形態では、歩行者ポイントDB21は、歩行者各人のIDと、補正演算部20で算出された歩行者各人の交通行動ポイントと、歩行者仮ポイントDB11が取得した交通行動ポイントをそれぞれ紐づけて記憶する。歩行者ポイントDB21は、特許請求の範囲の「記憶部」に相当する。
【0025】
運転者ポイントDB22は、歩行者ポイントDB21と同様に、ハードディスクドライブなどの記憶媒体で構成されている。運転者ポイントDB22は、補正演算部20で算出された、自動車運転者各人の交通行動ポイントを記憶し、管理する。図2に示した例では、補正演算部20において、自動車運転者に付与された交通行動ポイントは、運転者仮ポイントDB12に記憶されていた交通行動ポイントの6倍に補正されるため、運転者ポイントDB22に記憶される自動車運転者各人の交通行動ポイントは、運転者仮ポイントDB12が取得した交通行動ポイントの6倍となる。本実施形態では、運転者ポイントDB22は、自動車運転者各人のIDと、補正演算部20で算出された自動車運転者各人の交通行動ポイントと、運転者仮ポイントDB12が取得した交通行動ポイントをそれぞれ紐づけて記憶する。運転者ポイントDB22は、特許請求の範囲の「記憶部」に相当する。
【0026】
還元処理部30は、歩行者ポイントDB21と、運転者ポイントDB22とのそれぞれと電気的に接続している。還元処理部30は、図示しない記憶部に格納されているプログラムに基づいて、異なる属性の間で、交通行動ポイントの移動を行う。
【0027】
図3は、還元処理部の機能を説明する図である。図3には、歩行者ポイントDB21と、運転者ポイントDB22とのそれぞれに記憶されている交通行動ポイントの情報を示している。歩行者ポイントDB21には、歩行者各人における補正後の交通行動ポイントが記憶されており、運転者ポイントDB22には、自動車運転者各人における補正後の交通行動ポイントが記憶されている。還元処理部30は、歩行者ポイントDB21に記憶されている交通行動ポイントの合計(300ポイント)と、運転者ポイントDB22に記憶されている交通行動ポイントの合計(600ポイント)に対して、事前に設定されている還元率(0.1)をかけた値を、他の属性に還元するポイントとして算出する。図3に示す例では、他の属性に還元するポイントは、属性「歩行者」では30ポイントであり、属性「自動車運転者」では60ポイントとなる。すなわち、「他の属性から還元されるポイント」は、属性「歩行者」では、属性「自動車運転者」から還元される60ポイントであり、属性「自動車運転者」では、属性「歩行者」から還元される30ポイントとなる。なお、還元率の値は、任意に設定可能である。
【0028】
還元処理部30は、他の属性から還元されるポイントを、その属性に属する交通参加者のそれぞれに分配される。本実施形態では、還元処理部30は、交通参加者が属する属性の交通行動ポイントの合計を算出し、その交通参加者に付与された交通行動ポイントのポイント占有率を算出する。還元処理部30は、交通参加者各人について、属性内でのポイント占有率に応じて、他の属性から還元された交通行動ポイントを分配する。還元処理部30におけるポイントの還元方法の詳細については、後述する。
【0029】
図1に戻り、ポイント情報表示部40は、歩行者ポイントDB21と、運転者ポイントDB22とのそれぞれと電気的に接続している。ポイント情報表示部40は、交通参加者のそれぞれに、データベースに記憶されている自身の交通行動ポイントの明細を表示する。本実施形態では、ポイント情報表示部40は、自身の交通行動によって付与された交通行動ポイントと、還元処理部30によって還元された交通行動ポイントを表示する。ポイント情報表示部40に表示される内容の詳細は、後述する。
【0030】
次に、本実施形態の交通行動ポイント管理方法について説明する。本実施形態の交通行動ポイント管理方法では、交通行動評価システムによって、属性が異なる交通参加者各人に付与された交通行動ポイントを記録し、管理する。本実施形態では、交通行動ポイント管理システム1は、管理対象とする交通参加者の交通手段を「歩行」と「自動車」と「自転車」として、「歩行者」と「自動車運転者」と「自転車運転者」とのいずれかに属する交通参加者の交通行動ポイントを管理する。
【0031】
本実施形態では、交通行動評価システムは、歩行者に対して、例えば、特定交差点を通過するたびに交通行動を評価し、交通行動ポイントを付与する。交通行動評価システムは、自動車運転者に対して、例えば、エンジン始動からエンジン停止までの1回の運転ごとに交通行動を評価し、交通行動ポイントを付与し、自転車運転者は、例えば、一時停止が必要な場面ごとに交通行動を評価し、交通行動ポイントを付与する。このように、交通行動評価システムによって交通参加者に付与される交通行動ポイントは、属性が異なると、評価の方法や、ポイントが獲得できる機会の数が異なる。したがって、交通行動評価システムによって付与される交通行動ポイントによる恩恵は、交通手段によって不平等になりやすい。
【0032】
図4は、交通行動ポイント管理方法の第1のフローチャートである。交通行動ポイント管理方法では、最初に、交通参加者各人に付与されている交通行動ポイント(以下、単に「付与ポイント」という)Pkを取り込む(ステップS11)。ステップS11では、歩行者仮ポイントDB11は、歩行者各人に付与されている付与ポイントPkを交通行動評価システムから取り込む。運転者仮ポイントDB12は、自動車運転者各人に付与されている付与ポイントPkと、自転車運転者各人に付与されている付与ポイントPkとのそれぞれを交通行動評価システムから取り込む。
【0033】
次に、属性ごとに交通参加者各人の付与ポイントPkを保存する(ステップS12)。ステップS12では、歩行者仮ポイントDB11は、歩行者各人に付与されている付与ポイントPkを保存し、運転者仮ポイントDB12は、自動車運転者各人に付与されている付与ポイントPkと、自転車運転者各人に付与されている付与ポイントPkのそれぞれを属性ごとに保存する。
【0034】
次に、データベースによる付与ポイントPkの取り込みと保存が一定期間行われたか否かを判定する(ステップS13)。補正演算部20は、歩行者仮ポイントDB11と運転者仮ポイントDB12とのそれぞれが、交通参加者の付与ポイントPkを一定期間取り込んだか否かを判定する。ステップS13において設定されている「一定期間」は、後述する交通行動ポイントの補正と還元を一度に行う交通行動ポイントを取り込むための所定の期間であって、本実施形態では、1週間である。2つのデータベースが交通参加者の付与ポイントPkを一定期間取り込んだと判定すると、ステップS14に進む(ステップS13:YES)。2つのデータベースが交通参加者の付与ポイントPkを一定期間取り込んでいないと判定する(ステップS13:NO)と、ステップS11に戻り、2つデータベースによる交通参加者の付与ポイントPkの取り込みと保存を継続する。なお、ステップS13における「一定期間」は1週間に限定されない。
【0035】
ステップS13において、2つのデータベースが交通参加者の付与ポイントPkを一定期間取り込んだと判定すると、属性ごとの1人当たりの平均付与ポイントPkaveを算出する(ステップS14)。補正演算部20は、歩行者仮ポイントDB11と運転者仮ポイントDB12とのそれぞれに記憶された交通参加者各人の交通行動ポイントを用いて、属性ごとに付与ポイントの合計(以下、「総付与ポイント」という)を算出し、算出した総付与ポイントを属性ごとのポイント付与者数で割ることで、属性ごとの1人当たりの平均付与ポイントPkaveを算出する。
【0036】
図5は、交通行動ポイント管理方法を説明する第1の図である。図5には、本実施形態の交通行動ポイント管理方法における3つの属性のそれぞれにおける交通行動ポイントの算出結果の例を示している。図5に示す例では、属性「歩行者」では、総付与ポイント300ポイントをポイント付与者数の10人で除することで、補正前の平均付与ポイント30ポイントを算出する。属性「自動車運転者」と属性「自転車運転者」も同様に、総付与ポイントをポイント付与者数で除することで、補正前の平均付与ポイント(「自動車運転者」:5ポイント、「自転車運転者」:10ポイント)を算出する。
【0037】
次に、補正係数αを算出する(ステップS15)。補正演算部20は、ステップS14で算出された補正前の平均付与ポイントを属性間で比較し、補正前の平均付与ポイントが最も高い属性の平均付与ポイントと、他の属性の平均付与ポイントとが同じ値になるように補正するための補正係数αを算出する。図5に示す例では、3つの属性「歩行者」、「自動車運転者」、「自転車運転者」のうち、属性「歩行者」の平均付与ポイントが最も高いことから、属性「歩行者」の平均付与ポイントと属性「自動車運転者」または属性「自転車運転者」の平均付与ポイントが同じ値になるように補正係数αを算出する。図5の例では、属性「自動車運転者」の場合、補正係数αは6となり、属性「自転車運転者」の場合、補正係数αは3となる。なお、属性「歩行者」は、補正係数αは1となる。
【0038】
次に、補正係数αを用いて交通参加者各人の補正後の交通行動ポイントを算出する(ステップS16)。補正演算部20は、ステップS15において算出した、属性ごとの補正係数αを用いて、補正後の交通行動ポイント(以下、「補正付与ポイントPa」という)を算出する。具体的には、歩行者w1の付与ポイントPkを45ポイントとする場合、属性「歩行者」の補正係数αは1であるため、歩行者w1の補正付与ポイントPaは、45ポイントであり、付与ポイントPkと同じになる。自動車運転者a1の付与ポイントPkを3ポイントとする場合、属性「自動車運転者」の補正係数αは6であるため、自動車運転者a1の補正付与ポイントPaは、18ポイントとなる。自転車運転者b1の付与ポイントPkを14ポイントとする場合、属性「自転車運転者」の補正係数αは3であるため、自転車運転者b1の補正付与ポイントPaは、42Pとなる。これにより、補正付与ポイントPaは、同じ価値を有することとなる。ステップS16では、歩行者ポイントDB21と運転者ポイントDB22は、補正演算部20が算出した交通参加者各人の補正付与ポイントPaを記録する。交通行動ポイント管理システム1は、このようにして、異なる属性に属する交通参加者の間で価値が異なるポイントを同じ価値にすることで、全ての交通参加者を交通行動評価システムの対象とすることができる。これにより、全ての交通参加者に対して交通ルールを順守する行動を促すことができる。本実施形態では、歩行者ポイントDB21と運転者ポイントDB22は、交通参加者各人の付与ポイントPkも補正付与ポイントPaと複数の交通参加者のうちの1人を特定するためのIDに紐づけて記憶する。
【0039】
図6は、交通行動ポイント管理方法の第2のフローチャートである。次に、交通行動ポイント管理システム1が管理している補正付与ポイントPaの総合計と事前に設定されている還元率とから、交通参加者各人が他の属性に還元するポイントPxを算出する(ステップS17)。還元処理部30は、歩行者ポイントDB21と運転者ポイントDB22とに記憶されている交通参加者各人の補正付与ポイントPaの総合計ΣPaを算出する。還元処理部30は、総合計ΣPaに、事前に設定されている還元率をかけた値を、交通参加者の人数で割ることで、ポイントPxを算出する。図5に示す例では、3つの属性について、補正付与ポイントPaとポイント付与者数とから、補正付与ポイントPaの総合計ΣPa(1050ポイント)が算出される。還元処理部30は、補正付与ポイントPaの合計ΣPaに、事前に設定されている還元率(0.1)をかけた値を、ポイント付与者数(35人)で除することで、ポイントPx(3ポイント)を算出する。
【0040】
次に、補正付与ポイントPaの属性ごとの合計と還元率から属性ごとに還元されるポイントPgを算出する(ステップS18)。還元処理部30は、最初に、補正付与ポイントPaの属性ごとの合計を算出し、算出した属性ごとの合計に還元率をかけることで、3つの属性のそれぞれが他の属性に譲るポイントPgを算出する。図5に示す例では、属性「歩行者」は、他の属性に、補正付与ポイントPaの属性ごとの合計である300ポイントに還元率(0.1)をかけた30ポイントを他の属性に還元する。属性「自動車運転者」と属性「自転車運転者」も同様に、補正付与ポイントPaの属性ごとの合計(600ポイント、150ポイント)に還元率を掛けた値(60ポイント、15ポイント)を他の属性に還元する(図5参照)。
【0041】
ステップS18では、還元処理部30は、3つの属性のそれぞれが他の属性に還元するポイントを算出したのち、3つの属性のそれぞれに還元されるポイントPgを決定する。本実施形態では、1つの属性が他の2つの属性にポイントを還元するため、1つの属性が他の属性に還元するポイントを2つに割った値が、2つの属性のそれぞれに均等に還元される。具体的には、図5に示す例では、属性「歩行者」が他の属性に還元する30ポイントは、属性「自動車運転者」と属性「自転車運転者」のそれぞれに15ポイントずつ還元される。属性「自動車運転者」と属性「自転車運転者」も同様である。これにより、図5に示す例では、属性「歩行者」に還元されるポイントPgは、属性「自動車運転者」から還元される30ポイントと、属性「自転車運転者」から還元される7.5ポイントとを足した37.5ポイントとなる。属性「自動車運転者」に還元されるポイントPgは、属性「歩行者」から還元される15ポイントと、属性「自転車運転者」から還元される7.5ポイントとを足した22.5ポイントとなる。属性「自転車運転者」に還元されるポイントPgは、属性「歩行者」から還元される15ポイントと、属性「自動車運転者」から還元される30ポイントとを足した45ポイントとなる。
【0042】
次に、他の属性から還元されるポイントPgと属性内での各人のポイント占有率Opとから、各人に還元されるポイントPbを算出する(ステップS19)。還元処理部30は、最初に、1つの属性において、属性ごとの補正付与ポイントPaの合計のうちの各人の補正付与ポイントが占める割合を算出する。例えば、上述の歩行者w1では、補正付与ポイントPaは、45ポイントであり、属性「歩行者」の補正付与ポイントPaの合計は、300ポイントであることから、歩行者w1のポイント占有率Opは、0.15となる。そこで、歩行者w1には、属性「自動車運転者」から還元される30ポイントの0.15にあたる4.5ポイントと、属性「自転車運転者」から還元される7.5ポイントの0.15にあたる1.125ポイントが還元されることとなる。したがって、歩行者w1に還元されるポイントPbは、5.625ポイントとなる。ステップS19では、交通行動ポイント管理システム1によって交通行動ポイントが管理されている全ての交通参加者に対して、上述のポイント占有率Opを算出し、還元されるポイントPbを算出する。交通行動ポイント管理システム1は、このようにして、交通参加者各人に、他の属性からポイントPbを還元することで、還元を受けた他の属性に属する交通参加者に対して、思いやりのある交通行動を行うようになる。これにより、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができる。
【0043】
次に、今回の期間で付与された最終的なポイントPcと、現時点で付与されているポイントPt(n)を、交通参加者各人について算出する(ステップS20)。還元処理部30は、今回の期間で付与された最終的なポイント(以下、「最終付与ポイント」という)Pcを下記の式(1)にしたがって算出する。
Pc=Pa-Px+Pb ・・・(1)
還元処理部30は、さらに、交通参加者各人について、今回の補正と還元を行う対象の交通行動ポイントが付与される前までに付与されていたポイントPt(n-1)に、式(1)で求めた最終付与ポイントPcを足して、現時点で付与されているポイントP(n)を算出する。すなわち、下記の式(2)で表される。
P(n)=Pt(n-1)+Pc ・・・(2)
【0044】
次に、交通参加者各人のポイントPb、Pc、Pt(n)のそれぞれを2つのデータベース21、22のいずれかに保存する(ステップS21)。還元処理部30は、ステップS19で算出される還元されるポイントPbと、ステップS20で算出される最終付与ポイントPcおよび現時点で付与されているポイントPt(n)のそれぞれを、2つのデータベース21、22のいずれかに出力する。歩行者ポイントDB21と運転者ポイントDB22では、これらの情報を、複数の交通参加者のうちの1人を特定するためのIDに紐づけて保存する。
【0045】
次に、交通参加者各人のポイントPb、Pc、Pt(n)のそれぞれを表示する(ステップS21)。ポイント情報表示部40は、交通参加者各人のポイントPb、Pc、Pt(n)のそれぞれを表示する。
【0046】
図7は、ポイント情報表示部に表示されるポイント情報の一例を示す図である。図7には、例えば、歩行者である交通参加者の1人が保有する情報端末などに表示される表示画面50を示している。本実施形態では、表示画面50に、最終付与ポイントPcを示す数字51が示されており、その下に、自身の交通行動によって付与されたポイント(Pa-Px)を示す数字52と、他の属性からの還元によって付与されたポイントPbを示す数字53を示されている。さらに、表示画面50には、現時点で付与されているポイントPt(n)を示す数字54が示されている。表示画面50を見た交通参加者は、自身の交通行動によって付与されたポイントや還元によって得られたポイントを確認することで、より法令を順守したり、他の交通参加者に対しての思いやりのある行動を行ったりするように、意識づけされる。なお、表示画面50は、交通参加者からの要求によって送信されてもよいし、交通行動ポイント管理システム1からのプッシュ通知によって送信されてもよい。
【0047】
図8は、交通行動ポイント管理方法を説明する第2の図である。図8には、本実施形態の交通行動ポイント管理方法で用いられる情報のリストの一例をしている。図8に示すリストは、図5で示した3つの属性のいずれかに属する交通参加者のリストでもある。本実施形態の交通行動ポイント管理方法では、交通参加者各人のそれぞれについて、上述した方法によって、付与ポイントPkを補正することで補正付与ポイントPaを算出するとともに、他の属性から還元されるポイントPbを算出し、最終付与ポイントPcを算出する。本実施形態の交通行動ポイント管理方法は、このようにして、複数の属性の間において、交通参加者に付与される交通行動ポイントの補正を行うことで、各人の付与ポイントの価値を同じにして属性間で不平等感を小さくし、複数の属性間で互いにポイント還元し合うことで、他の交通参加者に対する思いやりのある行動を助長する。
【0048】
以上説明した、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1によれば、歩行者仮ポイントDB11および運転者仮ポイントDB12は、交通参加者の交通手段によって分類された交通参加者の属性ごとに、交通参加者の行動内容が評価された結果、各交通参加者に付与されている付与ポイントPkを取得する。補正演算部20は、交通参加者各人が属する属性によって不平等になりやすい、付与ポイントPkが同じ価値になるように、付与ポイントPkを補正した補正付与ポイントPaを算出する。算出された補正付与ポイントPaは、歩行者ポイントDB21と運転者ポイントDB22に記憶される。これにより、複数の属性の間において、交通行動ポイントの集めやすさに差が出にくくなり、交通参加者の間での不平等感を小さくすることができる。
【0049】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1によれば、交通参加者の間での不平等感を小さくすることができるため、全ての交通参加者を対象に一元化して、交通行動ポイントの付与につながることとなる。これにより、全ての交通参加者を対象にして、交通ルールを順守する行動を促すことができるため、大きな事故低減効果が期待できる。したがって、交通事故の発生を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1によれば、補正演算部20は、付与ポイントPkの平均値が最も高い属性(「歩行者」)の平均値に対する他の属性(「自動車運転者」と「自転車運転者」)の付与ポイントPkの平均値の比率を補正係数αとして算出する。補正演算部20は、その補正係数αが算出された属性に属する交通参加者に付与ポイントPkに、補正係数αをかけることで、補正付与ポイントPaを算出する。これにより、最も多く交通行動ポイントが付与された属性の交通参加者の交通行動ポイントと、他の属性の交通参加者の交通行動ポイントとは、同じ価値になるため、複数の属性の間での不平等感を小さくすることができる。
【0051】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1によれば、還元処理部30は、交通参加者に対して、自身が属する属性以外の属性の補正付与ポイントPaの一部を還元する。還元処理部30は、交通参加者の補正付与ポイントPaの大きさに応じて、交通参加者に還元される補正付与ポイントPaの大きさを決定するため、交通参加者は、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。これにより、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができるため、他の交通参加者に対して安全面でより配慮した行動となり、大きな事故低減効果が期待できる。
【0052】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1によれば、還元処理部30は、一つの属性の補正付与ポイントPaの合計に対する各交通参加者の補正付与ポイントPaが占める割合をポイント占有率Opとして算出し、このポイント占有率Opを用いて、各交通参加者に還元されるポイントPbを算出する。すなわち、交通参加者各人の交通行動は、他の属性から還元されるポイントPbの大きさにも影響するため、交通参加者は、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。これにより、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができる。
【0053】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1によれば、ポイント情報表示部40は、自身の交通行動によって付与された交通行動ポイントを補正することで算出された交通行動ポイント(Pa-Pc)の他に、他の属性から還元された交通行動ポイントPbを表示する。これにより、交通参加者は、自身が属する属性以外の属性から還元されるポイントPbが還元されていることを確認することができるため、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。したがって、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができる。
【0054】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理方法によれば、ステップS14からステップS16において、属性の異なる交通参加者のそれぞれ付与された交通行動ポイントが同じ価値になるように、付与ポイントPkを補正することで補正付与ポイントPaを算出する。これにより、複数の属性の間において、不平等感を小さくすることができるため、全ての交通参加者を対象にして、交通ルールを順守する行動を促すことができる。したがって、交通事故の発生を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の交通行動ポイント管理方法によれば、ステップS17からステップS19において、交通参加者に対して、自身が属する属性以外の属性の補正付与ポイントPaの一部を還元する。交通参加者に還元される補正付与ポイントPaの大きさは、交通参加者の補正付与ポイントPaの大きさに応じて決定されるため、交通参加者は、交通行動ポイントが付与されるように、交通ルールの順守行動だけでなく、他の交通参加者に対する思いやりのある交通行動も行うようになる。これにより、互いに相手の交通参加者を思いやる行動を助長することができるため、他の交通参加者に対して安全面でより配慮した行動となり、大きな事故低減効果が期待できる。
【0056】
また、本実施形態のコンピュータプログラムによれば、本実施形態の交通行動ポイント管理システム1は、属性の異なる交通参加者のそれぞれ付与された仮交通行動ポイントが同じ価値になるように、付与ポイントPkを補正することで補正付与ポイントPaを算出させ、算出された補正付与ポイントPaを記憶させることで、複数の属性の間において、不平等感を小さくすることができる。これにより、全ての交通参加者を対象にして、交通ルールを順守する行動を促すことができる。さらに、交通行動ポイント管理システム1では、交通参加者に対して、自身が属する属性以外の属性の補正付与ポイントPaの一部を還元する。このように、複数の属性間で互いにポイントを還元し合うことで、他の交通参加者に対する思いやりのある行動を助長することができる。したがって、交通事故の発生を抑制することができる。
【0057】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
[変形例1]
上述の実施形態では、交通行動ポイント管理システム1は、複数のデータベースと、補正演算部20と、還元処理部30と、ポイント情報表示部40と、を備えるとしたが、交通行動ポイント管理システムの構成はこれに限定されない。還元処理部やポイント情報表示部はなくてもよい。また、交通行動評価システムと一体に構成されていてもよいし、交通行動評価システムとは別々に構成されていてもよい。また、補正前の交通行動ポイントを記憶するデータベースと、補正後の交通行動ポイントを記憶するデータベースとは、同じデータベースであってもよい。
【0059】
[変形例2]
上述の実施形態では、交通行動ポイント管理システム1の管理対象の交通手段を「歩行」と、「自動車」と、「自転車」としたが、交通手段はこれらに限定されないし、さらに「自動車」を、例えば、「乗用車」と「トラック」とのように、細分化されていてもよい。また、交通行動を評価するタイミングとして、歩行者については、特定交差点を通過するたびとし、自動車運転者については、エンジン始動からエンジン停止までの1回の運転ごととし、自転車運転者については、一時停止が必要な場面ごととした。しかしながら、交通行動を評価するタイミングは、これらに限定されない。
【0060】
[変形例3]
上述の実施形態では、算出した補正係数αを用いて、付与された交通行動ポイントを補正するとした。しかしながら、付与された交通行動ポイントの補正の方法は、これに限定されない。属性の異なる交通参加者にそれぞれ付与された交通行動ポイントが同じ価値になるように補正されればよい。
【0061】
[変形例4]
上述の実施形態では、属性におけるポイント占有率を用いて、交通参加者各人に還元されるポイントを算出するとしたが、交通参加者各人に還元されるポイントを算出する方法は、これに限定されない。例えば、1つの属性において均等に分配してもよいし、1つの属性において、ポイント占有率が高い交通参加者ほど、還元されるポイントが多くなってもよい。
【0062】
[変形例5]
上述の実施形態では、ポイント情報表示部40には、最終付与ポイントPcと、自身の交通行動によって付与されたポイント(Pa-Px)と、他の属性からの還元によって付与されたポイントPbと、現時点で付与されているポイントPt(n)が示されるとした。しかしながら、ポイント情報表示部40に表示されるポイント情報は、これらに限定されない。現時点で付与されているポイントPt(n)だけであってもよい。
【0063】
[変形例6]
上述の実施形態では、交通参加者各人に還元される交通行動ポイントは、その交通参加者が属する属性とは異なる属性の交通行動ポイントであるとした。例えば、還元される交通行動ポイントは、交通行動管理システムを運用するプロバイダから還元されてもよい。
【0064】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…交通行動ポイント管理システム
11…歩行者行動仮ポイントデータベース
12…運転者行動仮ポイントデータベース
20…補正演算部
21…歩行者行動ポイントデータベース
22…運転者行動ポイントデータベース
30…還元処理部
40…ポイント情報表示部
Op…ポイント占有率
Pk…付与ポイント
Pa…補正付与ポイント
Pkave…平均付与ポイント
α…補正係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8