(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179908
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】基板接続部材
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20221129BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20221129BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20221129BHJP
H01R 12/51 20110101ALI20221129BHJP
H05K 7/06 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
H01R4/48 C
H05K7/14 D
H01R4/58 C
H01R12/51
H05K7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086718
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】廣田 優貴
【テーマコード(参考)】
5E223
5E348
【Fターム(参考)】
5E223AC05
5E223BA27
5E223BA30
5E223CB22
5E223CB31
5E223CD01
5E223DA05
5E348AA02
5E348AA11
5E348AA16
5E348AA21
5E348AA32
5E348AA40
(57)【要約】
【課題】基板と相手部材との相対的な変位を防いで、振動に対して機械的保持および電気的接続のいずれも確保することが可能な基板接続部材を提供すること。
【解決手段】接続部材1は、基板2に支持され、相手部材3の板状の挿入部30が挿入されるスロット10を備える。接続部材1は、挿入部の表面領域31に対して所定の加圧向きz+に加圧可能に構成される接点ばね12と、接点ばね12と共にスロット10を形成し、加圧向きz+とは逆向きz-の法線ベクトルをなして挿入部30の背面領域32に面接触した状態で相手部材3を保持可能に構成される保持部14と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に支持され、相手部材の板状の挿入部が挿入されるスロットを備える基板接続部材であって、
前記挿入部の第1面領域に対して所定の加圧向きに加圧可能に構成される接点ばねと、
前記接点ばねと共に前記スロットを形成し、前記加圧向きとは逆向きの法線ベクトルをなして前記挿入部の第2面領域に面接触した状態で前記相手部材を保持可能に構成される保持部と、を備える、基板接続部材。
【請求項2】
前記基板に支持される支持部を備え、
前記接点ばねおよび前記保持部は、前記支持部から連続している、
請求項1に記載の基板接続部材。
【請求項3】
前記保持部は、前記支持部に対して実質的に平行に配置されている、
請求項2に記載の基板接続部材。
【請求項4】
前記支持部は、
前記基板に接合される支持部本体と、
前記支持部本体に対して屈曲した状態に起立し、前記第1面領域に対して平行に延びる起立部と、を備え、
前記保持部は、前記起立部に対して実質的に平行に配置される、
請求項2に記載の基板接続部材。
【請求項5】
前記接点ばねは、前記支持部から片持ち梁状に延出している、
請求項2から4のいずれか一項に記載の基板接続部材。
【請求項6】
前記保持部は、前記スロットへの前記相手部材の挿入向きの前方で前記支持部に連結されている、
請求項5に記載の基板接続部材。
【請求項7】
前記接点ばねと前記保持部とは、前記接点ばねが延出する方向に対して前記第1面領域の面内で直交する方向において互いに隣接している、
請求項2から6のいずれか一項に記載の基板接続部材。
【請求項8】
前記支持部は、前記基板に係止された状態で導通される導通部を含む、
請求項2から7のいずれか一項に記載の基板接続部材。
【請求項9】
前記支持部は、
前記基板の面内における第1方向に沿って形成される前記導通部としての第1導通部と、
前記面内において前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って形成される前記導通部としての第2導通部と、を含む、
請求項8に記載の基板接続部材。
【請求項10】
前記加圧向きに対して逆の向きへの前記接点ばねの過大な変位を規制可能に構成されている規制部を備える、
請求項1から9のいずれか一項に記載の基板接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に取り付けられ、相手部材に対する機械的保持および電気的接続を図る基板接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、バスバー等の相手部材とを接続する技術としては、例えば特許文献1に記載されているように、基板とバスバーとを接続部材を介して接続することが知られている。かかる接続部材は、内側にばねが設けられた角筒と、角筒の一端から突出した接続部とを備えている。基板の孔に挿入された接続部を基板にはんだで固定し、角筒の内側にバスバーを受け入れて内側のばねで押圧すると、接続部材によりバスバーが保持されるとともに、接続部材を介して基板とバスバーとが導通される。
【0003】
また、特許文献2は、基板に実装されて基板とシールドケースとを接続する表面実装クリップを開示する。かかる表面実装クリップは、基板の上面にシールドケースが設けられるとすると、基板の下面にはんだで固定される支持部と、支持部から下方に延びて互いに近接する一対の押圧部とを備えている。シールドケースの下端には、下方へ延びる差込部が設けられている。差込部が、基板の孔と、クリップの支持部に形成されている孔とを貫通した状態で、クリップの一対の押圧部の間に挟まれることにより、シールドケースが基板に保持されるとともに、電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-125549号公報
【特許文献2】特開2013-077589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接続部材および特許文献2のクリップのいずれにおいても、一つの要素が、バスバー等の相手部材を保持するための荷重の受けであるとともに、相手部材と電気的に接続される接点部でもある。かかる要素は、特許文献1においては、角筒の内側のばねに相当し、特許文献2においては、クリップの押圧部に相当する。
特許文献1,2のように、荷重の受けと接点とを一つの要素が担う場合は、振動が加えられたときに、当該要素を中心として基板と相手部材との一方に対して他方が傾いたり回転変位したりし易いので、導通状態が不安定となるおそれがある。
【0006】
本発明は、基板と相手部材との相対的な変位を防いで、振動に対して機械的保持および電気的接続のいずれも確保することが可能な基板接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に支持され、相手部材の板状の挿入部が挿入されるスロットを備える基板接続部材であって、挿入部の第1面領域に対して所定の加圧向きに加圧可能に構成される接点ばねと、接点ばねと共にスロットを形成し、加圧向きとは逆向きの法線ベクトルをなして挿入部の第2面領域に面接触した状態で相手部材を保持可能に構成される保持部と、を備える。
【0008】
本発明の基板接続部材は、基板に支持される支持部を備え、接点ばねおよび保持部は、支持部から連続していることが好ましい。
【0009】
本発明の基板接続部材において、保持部は、支持部に対して実質的に平行に配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明の基板接続部材において、支持部は、基板に接合される支持部本体と、支持部本体に対して屈曲した状態に起立し、第1面領域に対して平行に延びる起立部と、を備え、保持部は、起立部に対して実質的に平行に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明の基板接続部材において、接点ばねは、支持部から片持ち梁状に延出していることが好ましい。
【0012】
本発明の基板接続部材において、保持部は、スロットへの相手部材の挿入向きの前方で支持部に連結されていることが好ましい。
【0013】
本発明の基板接続部材において、接点ばねと保持部とは、接点ばねが延出する方向に対して第1面領域の面内で直交する方向において互いに隣接していることが好ましい。
【0014】
本発明の基板接続部材において、支持部は、基板に係止された状態で導通される導通部を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の基板接続部材において、支持部は、基板の面内における第1方向に沿って形成される導通部としての第1導通部と、面内において第1方向に対して直交する第2方向に沿って形成される導通部としての第2導通部と、を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の基板接続部材において、加圧向きに対して逆の向きへの接点ばねの過大な変位を規制可能に構成されている規制部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
相手部材の第2面領域に対して保持部を面接触させつつ、接点ばねが相手部材を保持部に対して加圧することで、基板と相手部材とが電気的に接続されるとともに、相手部材が基板に機械的に保持される。保持部と第2面領域とが面接触していることで、両者の摩擦により相手部材と基板との相対変位が抑制され、かつ、保持部と相手部材とが接触している面に沿って基板接続部材と相手部材との姿勢が決まる。加振された際に、相手部材と、基板接続部材および基板とが一体化された状態で振動するため、基板および基板接続部材と相手部材との相対的な変位を防ぐことができる。その結果、相手部材と基板との共振を発生させずに、振動に対して機械的保持および電気的接続のいずれも確保することができる。
【0018】
また、本発明の基板接続部材は、相手部材の第2面領域を面接触した状態に保持する保持部を、第1面領域への加圧により接触荷重を発生させる接点ばねとは別に備えている。保持部は、第2面領域への面接触により安定して荷重を受ける。接点ばねにより、接点に与えられる規定の荷重である接触荷重を得ている。
そうすると、相手部材に対して必要な接圧で電気的に接続する役割は接点ばねにより担い、荷重を受ける役割は保持部により担うことによって電気的接続および機械的保持のそれぞれの機能を十分に満足させることができるとともに、クリップのように相手部材に対し両側から押圧する構造とは異なり、加振された際の相手部材と基板との相対変位を防いで共振を避けることができる。本発明の基板接続部材によれば、基板と相手部材との接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、実施形態に係る基板接続部材により基板とバスバーとが接続されている状態を示す正面図である。(b)は、
図1の部分拡大斜視図である。
【
図2】(a)は、実施形態に係る基板接続部材の斜視図である。(b)は、変形例に係る基板接続部材の斜視図である。
【
図3】(a)は、
図2(a)に示す基板接続部材の正面図である。(b)は、(a)のIIIb矢視側面図である。
【
図4】(a)は、
図1(b)のIVa矢視平面図である。(b)は、(a)のIVb線断面図である。
【
図5】基板接続部材のスロットにバスバーが挿入される過程を示す
【
図6】(a)は、比較例に係る基板接続クリップを示す斜視図である。(b)は、(a)に示す基板接続クリップによりバスバーが挟まれている状態を示す側面図である。
【
図7】(a)は、変形例に係る基板接続部材を示す側面図である。(b)は、他の変形例に係る基板接続部材を示す側面図である。
【
図8】(a)は、基板接続部材が、
図4(a),(b)に示すバスバーとは異なる形状のバスバーに適用された状態を示す平面図である。(b)は、(a)に示すバスバーおよびその周辺の構造の斜視図である。
【
図9】(a)は、変形例に係る基板接続部材の斜視図である。(b)は、(a)のIXb矢視側面図であり、基板接続部材によりバスバーを保持した状態を示している。
【
図10】(a)は、別の変形例に係る基板接続部材の斜視図である。(b)は、(a)のXb矢視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔全体構成の概略〕
図1(a)には、基板接続部材としての接続部材1を含む基板2(回路基板)と、相手部材の一例としてのバスバー3との接続構造が示されている。かかる構造は、例えば、車両に搭載されるPCU(Power Control Unit)等の機器に含まれている。
接続部材1は、基板2に取り付けられており、基板2とバスバー3との機械的保持および電気的接続を図る。典型的には、2以上の接続部材1が同一の基板2に設けられる。接続部材1は、バスバー3の位置に対応する基板2上の所定の位置にはんだ等を用いて接合される。基板2は、例えば、機器の図示しないケースに設けられている複数のボス等にそれぞれ、ねじで固定することができる。
【0021】
各図においては、バスバー3が破断され、バスバー3の一部のみが示されている。
図1(b)に示すように、接続部材1により、バスバー3の表面領域31(第1面領域)が基板2上の図示しないパターンと電気的に接続されるとともに、バスバー3の背面領域32(第2面領域)が保持される。背面領域32の面内方向をx方向およびy方向により示す。xy面に対して直交する方向をz方向により示す。背面領域32に対して表面領域31は平行である。
バスバー3には、接続部材1の一部が挿入される切欠33が形成されている。切欠33は、正面視において矩形状に形成されている。
【0022】
〔接続部材の構成〕
図2~
図5を参照し、接続部材1の構成の一例を説明する。接続部材1は、基板2に支持され、バスバー3の所定の範囲である板状の挿入部30が挿入されるスロット10を備えている。本実施形態の接続部材1は、
図4(a)および(b)に示すように、基板2と、基板2に対して平行に配置されるバスバー3との間に介在して両者を接続させる。
ここで、基板2とバスバー3とは、厳密に平行に配置されている必要はなく、略平行に配置されていれば足りる。
【0023】
接続部材1は、
図2(a)、
図3(a)および(b)に示すように、基板2に接合される支持部11と、互いの間にスロット10を形成している接点ばね12および保持部14とを備えている。接続部材1は、例えば、銅合金、アルミニウム合金等の金属材料から形成された板材の打ち抜き加工および曲げ加工により一体に形成することができる。接点ばね12および保持部14は、支持部11により基板2に支持される。
【0024】
支持部11は、基板2の表面21に配置される平坦な板状の基体110と、基体110に設けられて基板2に係止された状態で導通される第1導通部111および第2導通部112とを備えている。
基体110は、接点ばね12の支持端に相当する支持端部110Aと、接点ばね12に並行してy方向に延出し、先端側に連結部13を介して保持部14が設けられる並行部110Bとを含んでいる。接点ばね12に対し、並行部110Bは、スリット110Cを挟んでx方向のx+側に隣接している。
【0025】
第1導通部111および第2導通部112のいずれも、基体110に対してz-の向きに突出して形成され、基板2に厚さ方向に貫通するスルーホール22(
図1(b))に挿入されることで基板2に係止される。第1導通部111および第2導通部112は、基板2に接続部材1が安定して支持されるように、支持部11においてx方向にもy方向にも離間した適宜な位置を選んで設けられている。
【0026】
第1導通部111は、支持部11におけるy方向の一端側(y-側)で支持端部110Aから連続する突片をy方向(第1方向)に沿って、z-の向きに折り曲げて形成されている。
第2導通部112は、支持部11におけるy方向の他端側(y+側)かつx方向の一端側(x+側)で並行部110Bの先端側(y+側)から連続する突片のy+側をx方向(第2方向)に沿って、z-の向きに折り曲げて形成されている。
【0027】
第1導通部111は、y方向に長い開口を有したスルーホール22に挿入される。第2導通部112は、x方向に長い開口を有したスルーホール22に挿入される。第1導通部111および第2導通部112がそれぞれスルーホール22に挿入されると、基板2に対する接続部材1のx方向の変位が第1導通部111により規制され、基板2に対する接続部材1のy方向の変位が第2導通部112により規制されるので、振動、衝撃等の外力が加えられた際に接続部材1が基板2に対してずれることを防ぐことができる。それぞれスルーホール22に挿入されている第1導通部111および第2導通部112は、基板2に係止された状態で、図示しないはんだにより基板2の図示しないパターンと安定して導通される。
【0028】
基板2への支持部11の接合は、はんだを用いてスルーホール22の位置で基板2に支持部11を接合することに限られない。例えば、リフローはんだ、プレスフィット、締結等の適宜な方法で基板2に支持部11を接合することができる。
【0029】
接点部12Aを含む接点ばね12は、弾性力F1により挿入部30の表面領域31を保持部14に対して加圧向きz+に加圧し、接点部12Aと表面領域31との間に所定の接触荷重を発生させることで、基板2とバスバー3との間の電気的接続を担う。加圧向きz+は、挿入部30の板厚方向に相当する。
本実施形態の接点ばね12は、支持端部110Aからy+の向きに片持ち梁状に延出しており、支持端12Bから自由端12Cに向かうにつれ、z+の向きに変位している。接点ばね12の自由端12C側には、z+の向きに膨らんだ接点部12Aが形成されている。
【0030】
保持部14は、並行部110Bおよび接点ばね12に対してz+の向きに離間し、接点ばね12と共にスロット10を形成している。スロット10は、保持部14と接点ばね12との間の空間に相当し、バスバー3が挿入されるy-側が開放されている。
保持部14は、バスバー3に対して接点ばね12により加えられる荷重を受ける役割を担う。保持部14は、
図4(b)に示すように、接点ばね12の弾性力F1による加圧向きz+とは逆向きz-の法線ベクトル(破線の矢印参照)をなして、バスバー3の背面領域32に面接触した状態でバスバー3を保持する。このとき、接点ばね12は、バスバー3の片側のみから(z+側から)保持部14に対してバスバー3を加圧する。
【0031】
保持部14と接点ばね12とは、
図4(a)に示すように、接点ばね12が延びているy方向に対して表面領域31のxy面内で直交するx方向において互いに隣接している。本実施形態の保持部14は、弾性力F1のベクトルの向きにおける接点ばね12の前方には位置していない。そのため、保持部14により背面領域32を保持し、接点ばね12による荷重を受けつつも、接点部12Aと表面領域31との接触荷重に相応の接点ばね12の弾性変形量を十分に確保することができる。
【0032】
本実施形態の接点ばね12は、y-側から連結部13を超える位置まで、y+の向きに延びている。接点部12Aの位置P1(
図4(b))は、保持部14の位置P2(
図4(b))よりもy+側に位置している。
図1に示すように、位置P1,P2がy方向にシフトしている複数の接続部材1を、基板2においてx方向およびy方向に分布させて配置することが好ましい。そうすることで、基板2に設けられた複数の接続部材1によりバスバー3をより安定して支持することができる。
図1に示されている2つの接続部材1のそれぞれの位置は、x方向においてシフトし、かつy方向においてもシフトしている。それに加えて接点部12Aの位置P1と保持部14の位置P2とがy方向にシフトしていることにより、基板2全体として支持位置の離散度を高めて支持の安定性を向上させることができる。
【0033】
接点ばね12の延出長さは、所望の接触荷重、スロット10へのバスバー3の挿入に必要な力、接点ばね12の厚さ・材料等に応じた剛性等から適宜に定めることができるから、例えば
図7(a)に示すように、接点ばね12の延出長さが本実施形態(
図4(b))に対してy方向に短い場合もありうる。
図7(a)に示す例では、y方向における接点部12Aの位置と保持部14の位置とが近接している、あるいは、ほぼ同様である。比較的狭い領域における基板2とバスバー3との支持に一つの接続部材1が供される場合は、
図7(a)に示すように、接点部12Aの位置P1と保持部14の位置P2とをy方向に近づけ、荷重が発生する箇所を集中させることで、支持の安定に寄与することができる。
【0034】
本実施形態の保持部14は、並行部110Bに対してz+の向きに折り曲げられてなる連結部13からさらにy-の向きに折り曲げられてなる。保持部14は、スロット10にバスバー3が挿入される向き(y+)の前方で連結部13を介して支持部11に連結されている。保持部14は、連結部13のz方向の長さの分、並行部110Bから離間した状態で、並行部110Bに対向している。
また、保持部14は、正面視において矩形の板状に形成されており、xy方向に延在する基体110に対して平行に配置されている。なお、接続部材1の寸法形状公差に鑑み、保持部14と基体110とが厳密に平行に配置されている必要はなく、実質的に平行に配置されていれば足りる。
【0035】
保持部14は、接点ばね12による荷重を安定して受けながら背面領域32を保持するため、必要な剛性、およびx方向およびy方向のそれぞれの寸法が与えられている。背面領域32に面接触する保持部14の内側の面14Aは、必ずしも平滑でなくてもよく、面14Aには、凹凸を含む適切な表面状態を与えることができる。
【0036】
スロット10にバスバー3が挿入されると、バスバー3のy+側の端縁34からy-の向きに窪んでいる切欠33の内側に連結部13が挿入され、背面領域32よりもz+側に保持部14が露出する。このとき接点ばね12の接点部12Aは、切欠33よりもx-側でバスバー3の表面領域31に所定の接圧にて押し付けられる。
【0037】
本実施形態の接点ばね12および保持部14は、いずれも支持部11から連続し、一体に構成されているが、例えば
図2(b)に示すように、スリット110C(
図2(a))の位置で二体に分割されていてもよい。
図2(b)に示す接続部材1-0は、電気的接続を担う接点ばね12と、荷重の受けを担う保持部14との二体から構成されている。そのため、保持部14を樹脂材料等の非導体材料から形成することができる。
【0038】
〔接続部材とバスバーとの組み付け〕
図5は、基板2に接合された状態の接続部材1の保持部14と接点ばね12との間のスロット10に、y-側からバスバー3の挿入部30が挿入される過程を示している。保持部14はバスバー3の挿入向き(y+)の前方で連結部13に接続されているので、バスバー3が接点ばね12の弾性力F1により押されると、
図5に湾曲した矢印で示すように、保持部14と連結部13との接続位置Aを中心とした保持部14の回転変位が許容される。そのため、保持部14と接点部12Aとの間にバスバー3をスムーズに挿入することができる。
【0039】
連結部13が切欠33の内側の壁331(
図1(b)、
図4(a))に突き当てられるまでバスバー3が挿入されると、
図4(b)に示すように、z-の向きに撓んだ接点ばね12の弾性力F1による荷重が、z-の向きの法線ベクトルをなしてバスバー3に面接触する保持部14により受けられる。このとき、背面領域32に対し、保持部14の内側の面14Aが全域または略全域に亘り接触している。接点ばね12による荷重が、背面領域32に面接触する保持部14により安定して受けられることで、表面領域31と接点部12Aとの接触荷重を安定させることができる。
【0040】
切欠33に連結部13が挿入されることにより、x方向においてバスバー3と接続部材1および基板2とを位置決めすることができる。この位置決めが必要でない場合は、切欠33がバスバー3に形成されていなくてもよい。
【0041】
接続部材1により基板2とバスバー3とが組み付けられたならば、部材の固定や絶縁等の必要に応じて、バスバー3や基板2等の周りに樹脂材料をモールドすることができる。
【0042】
〔本実施形態の接続部材による作用効果〕
図4(b)に示すように、バスバー3の背面領域32に対して保持部14を面接触させつつ、接点ばね12がバスバー3を保持部14に対して加圧することで、基板2とバスバー3とが電気的に接続されるとともに、バスバー3が基板2に機械的に保持される。面接触による保持部14と背面領域32との摩擦は、バスバー3と基板2との相対変位の防止に寄与する。保持部14と背面領域32とが面接触していることで、保持部14とバスバー3とが接触しているxy面に沿って接続部材1とバスバー3との姿勢が決まる。車両の走行による振動やエンジンの振動等により基板2およびバスバー3を含む構造が加振されると、バスバー3と、接続部材1および基板2とが一体化された状態で振動するため、基板2および接続部材1とバスバー3との相対的な変位を防ぐことができる。
その結果、バスバー3と基板2との共振を発生させずに、振動に対して機械的保持および電気的接続のいずれも確保することができる。
【0043】
図6(a)および(b)に示す比較例に係る接続クリップ4は、弾性力F2によりバスバー3の両面の領域(31,32)に接触する。接続クリップ4は、バスバー3を間に挟んで対向する一対のクリップ要素41と、バスバー3がクリップ要素41の内側に挿入される向き(y+)の前方で一対のクリップ要素41を連結する連結部42とを備えている。接続クリップ4は、バスバー3を挟んで機械的に保持する。バスバー3は図示しない基板等に対して、クリップ4とは別の部材により電気的に接続される。
【0044】
一対のクリップ要素41にはそれぞれ、互いの間の距離が最小の押圧部41Aが設定されている。押圧部41Aの間を押し広げながら連結部42に向けてバスバー3が挿入されると、一対のクリップ要素41の押圧部41Aが、
図6(a)に示す一点鎖線に沿ってバスバー3に線接触した状態で、バスバー3を厚さ方向(z方向)の両側から保持する。こうした接続クリップ4においては、バスバー3に接触する要素としてはバスバー3を両側から挟む押圧部41Aの他にはない。押圧部41Aは、バスバー3を保持するための荷重の受けでもあり接点でもある。そうすると、加振時には、
図6(b)に示すように、
図6(a)の一点鎖線の軸回り方向にクリップ要素41がバスバー3に対して揺動変位するので、バスバー3とクリップ4との電気的接続の状態が不安定となるおそれがあり、共振も起こりうる。
【0045】
本実施形態の接続部材1は、バスバー3において背面領域32を面接触した状態に保持する保持部14を、表面領域31への加圧により接触荷重を発生させる接点ばね12とは別に備えている。保持部14は、背面領域32への面接触により安定して荷重を受ける。接点ばね12により、接点部12Aに与えられる規定の荷重である接触荷重を得ている。
そうすると、バスバー3や、適宜な導体等である相手部材に対して必要な接圧で電気的に接続する役割は接点ばね12により担い、荷重を受ける役割は保持部14により担うことによって、電気的接続および機械的保持のそれぞれの機能を十分に満足させることができるとともに、接続クリップ4のように相手部材に対し両側から線接触で押圧する構造とは異なり、加振された際の相手部材と基板2との相対変位を防いで共振を避けることができる。本実施形態の接続部材1によれば、基板2とバスバー3等の相手部材との接続信頼性を向上させることができる。
【0046】
〔変形例〕
その他の変形例を説明する。
図7(b)に示す接続部材1-2は、バスバー3等の相手部材を保持可能に構成されている保持部14-2を備えている。接続部材1-2は、本実施形態の接続部材1とは異なり、並行部110Bにおけるx+側の端縁からz+方向に立ち上がる連結部13-2と、連結部13-2に対して屈曲してx-側へ延びる保持部14-2と、並行部110Bの先端側に対してz+の向きに折り曲げられてなる突出部15とを備えている。
本実施形態の保持部14と同様に、保持部14-2も、基体110に対して実質的に平行に配置されている。
【0047】
保持部14-2と接点ばね12とがなすスロット10に挿入されるバスバー3を突出部15に突き当たるまで挿入すると、保持部14-2が背面領域32に面接触した状態で、接点部12Aが表面領域31に加圧される。
【0048】
相手部材としてのバスバーの形状は、特に限定されず、
図8(a)および(b)に示すように、z+方向を向いた第1部分301と、y+方向を向いた第2部分302とを備えたバスバー300に対して接続部材1を組み付けることもできる。例えば、第1部分301の切欠303(
図8(b))に、基板2に接合された接続部材1の保持部14を引っ掛けつつ、接点ばね12と保持部14との間に第1部分301を挿入する。そうすると、保持部14が背面領域32に面接触した状態で、接点部12Aが表面領域31に加圧される。バスバー300は、モールド成形による樹脂部材5により支持されていてもよい。
【0049】
図9(a)および(b)に示す接続部材1-3は、xz面に沿って配置される基板2と、xy面に沿って配置されるバスバー3との間に介在して両者を接続させる。接続部材1-3は、支持部本体161および起立部162を含む支持部16と、接点ばね12と、保持部14とを備えている。
支持部本体161は、基板2に係止された状態で導通される導通部113,114を含んでいる。導通部113,114は、はんだにより基板2に接合される。
起立部162は、支持部本体161に対して屈曲した状態に起立し、バスバー3の表面領域31に対して平行に延びている。
保持部14は、起立部162に対して平行に配置されている。
接続部材1-3もまた、上記実施形態の接続部材1と同様に、保持部14をバスバー3の背面領域32に面接触させた状態で接点ばね12による荷重を保持部14により受けることができる。
【0050】
図10(a)および(b)に示すように、接続部材1-4は、加圧向きz+に対して逆の向き(z-)への接点ばね12の過大な変位を規制する規制突起17(規制部)を備えていてもよい。規制突起17は、接点ばね12に隣接して支持部11に設けられ、加圧向きz+へ突出している。
図10(a)および(b)に示す例では、接点ばね12の延びているy方向に並ぶ2つの規制突起17が、支持部11の曲げ加工により形成されている。2つの規制突起17のそれぞれのz方向の高さは異なっていてもよい。
規制突起17は、例えば組み立て作業に用いられる工具等が接点ばね12に当たるのを防ぎ、z-の向きへの接点ばね12の弾性域を超えた過大変位を規制することで、接点ばね12を損傷から保護する。2つの規制突起17のそれぞれの先端17Aの位置は、自由端12Cおよび接点部12Aの位置をz+側へ超えていないので、これら規制突起17のいずれも、バスバー3(
図4)への接点部12Aの加圧には影響を与えない。
規制突起17の形状や数は、接点ばね12の形状等に応じて適宜に決めることができる。例えば、2つの規制突起17のうち、自由端12Cに近い一つの規制突起17のみが設けられていてもよい。
規制突起17は、
図7(b)に示す接続部材1-2や
図9に示す接続部材1-3にも設けることができる。
【0051】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,1-2,1-3 接続部材(基板接続部材)
2 基板
3 バスバー(相手部材)
4 接続クリップ
5 樹脂部材
10 スロット
11 支持部
12 接点ばね
12A 接点部
12B 支持端
12C 自由端
13 連結部
14 保持部
14A 面
15 突出部
16 支持部
17 規制突起(規制部)
17A 先端
21 表面
22 スルーホール
30 挿入部
31 表面領域(第1面領域)
32 背面領域(第2面領域)
33 切欠
34 端縁
41 クリップ要素
41A 押圧部
42 連結部
110 基体
110A 支持端部
110B 並行部
110C スリット
111~114 導通部
161 支持部本体
162 起立部
300 バスバー
301 第1部分
302 第2部分
303 切欠
331 壁
A 接続位置
F1,F2 弾性力
P1,P2 位置