(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179917
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置、メンテナンスユニットの位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20221129BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086729
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】大橋 二紗夫
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA46
2C056JA01
2C056JA08
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】高さ調整作業が容易で、調整作業に掛る時間を短縮する液体吐出装置、メンテナンスユニットの位置調整方法を提供する。
【解決手段】液体吐出装置(印刷装置1)は、搬送ローラー23と、メンテナンスユニット60と、ノズルから液体(インク)が吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在して搬送ローラー23を支持するフレーム部材(サイドフレーム10)と、メンテナンスユニット60が取付けられる取付部(板部材50)と、板部材50の第1方向または第2方向の位置を調整可能な位置調整部70(高さ調整部72)と、を備えている。そして、板部材50には、サイドフレーム10に開けられた開口部11に挿嵌される少なくとも1つの突出部53が配設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送ローラーと、
前記媒体に液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、
前記ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットと、
前記ノズルから前記液体が吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在し、前記搬送ローラーを支持するフレーム部材と、
前記メンテナンスユニットが取付けられる取付部と、
前記取付部の前記第1方向または前記第2方向の位置を調整可能な位置調整部と、
を備え、
前記取付部には、前記フレーム部材に開けられた開口部に挿嵌される少なくとも1つの突出部が配設されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記取付部の前記メンテナンスユニットが取り付けられる部分を上部とし、前記第2方向において前記上部とは反対の部分を下部としたとき、
前記位置調整部は、
前記取付部の前記下部に当接することによって前記取付部を支持する調整ナットを有するネジ部材と、
前記調整ナットと係合する係合部と、前記第2方向からの平面視で前記取付部の縁から少なくとも一部が突出するフランジ部と、を有するネジ回し治具と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記フランジ部は、回転方向において所定間隔で設けられた複数の孔部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記取付部の前記メンテナンスユニットが取付けられる部分を上部とし、前記第2方向において前記上部とは反対の部分を下部としたとき、
前記位置調整部は、
前記第2方向と交差する方向に延在する回転軸と、
前記回転軸回りに回転自在に配設され、前記下部と当接することによって前記取付部を支持するカムと、
前記回転軸の軸方向における一端に配設され、前記回転軸を回転操作するための操作部と、
を有し、
前記軸方向における前記回転軸の寸法は、前記軸方向における前記上部の寸法以上であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出装置であって、
前記軸方向における前記回転軸の寸法は、前記軸方向における前記上部の寸法よりも大きく、
前記操作部は、前記第2方向からの平面視で、前記取付部の縁から突出することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記フレーム部材には、前記開口部の内周壁から前記第2方向における上方に向かって突出し、少なくとも1つの前記突出部に前記第2方向における下方から当接する突起が配設され、
前記突起の前記第2方向と交差する交差方向における寸法が、前記開口部の前記交差方向における寸法よりも小さいことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
少なくとも1つの前記突出部は、基部と先端部とを有し、
前記第2方向における前記先端部の寸法は、前記第2方向における前記基部の寸法よりも大きいことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
少なくとも1つの前記突出部は、第1突出部と第2突出部とを有し、
前記取付部は、前記第1突出部と前記第2突出部との間に、前記フレーム部材に対して前記取付部を固定するための固定部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
媒体を搬送方向に搬送する搬送ローラーと、
前記媒体に液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、
前記ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットと、
前記ノズルから前記液体が吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在し、前記搬送ローラーを支持するフレーム部材と、
前記メンテナンスユニットが取付けられる取付部と、
前記取付部の前記第1方向または前記第2方向の位置を調整可能な位置調整部と、
を備える液体吐出装置のメンテナンスユニットの位置調整方法において、
前記フレーム部材に開けられた開口部に、前記取付部に配設された少なくとも1つの突出部を挿嵌することと、
前記開口部に少なくとも1つの前記突出部を挿嵌させた後、前記位置調整部により前記取付部の前記第1方向または前記第2方向の位置調整を行うことと、
を有することを特徴とするメンテナンスユニットの位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及びメンテナンスユニットの位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の液体吐出装置では、最初に、幅方向の同一直線上に位置する第1の位置及び第2の位置のそれぞれで高さ調整(位置調整)を行い、メンテナンスユニットを支持する板部材の高さの基準を形成する。次に、同一直線上にない第3の位置で高さ調整(位置調整)を行うことで、板部材の位置精度を出すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示す液体吐出装置では、作業者は第1の位置及び第2の位置に設置された高さ調整部で、高さの基準を形成する作業が必要となるが、この調整作業には手間と時間を要していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液体吐出装置は、媒体を搬送する搬送ローラーと、前記媒体に液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、前記ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットと、前記ノズルから前記液体が吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在し、前記搬送ローラーを支持するフレーム部材と、前記メンテナンスユニットが取付けられる取付部と、前記取付部の前記第1方向または前記第2方向の位置を調整可能な位置調整部と、を備え、前記取付部には、前記フレーム部材に開けられた開口部に挿嵌される少なくとも1つの突出部が配設されていることを特徴とする。
【0006】
メンテナンスユニットの位置調整方法は、媒体を搬送方向に搬送する搬送ローラーと、前記媒体に液体を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面を有するヘッドと、前記ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットと、前記ノズルから前記液体が吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在し、前記搬送ローラーを支持するフレーム部材と、前記メンテナンスユニットが取付けられる取付部と、前記取付部の前記第1方向または前記第2方向の位置を調整可能な位置調整部と、を備える液体吐出装置のメンテナンスユニットの位置調整方法において、前記フレーム部材に開けられた開口部に、前記取付部に配設された少なくとも1つの突出部を挿嵌することと、前記開口部に少なくとも1つの前記突出部を挿嵌させた後、前記位置調整部により前記取付部の前記第1方向または前記第2方向の位置調整を行うことと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態における印刷装置を示す構成図。
【
図6】板部材を取り除いたサイドフレームと位置調整部とを示す斜視図。
【
図7】板部材の突出部とサイドフレームの開口部とを-X軸方向から見た模式側面図。
【
図11】第2実施形態における位置調整部を示す概斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、液体吐出装置の各実施形態について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面(特に第2実施形態に係る図面)では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
以下、実施形態では、液体吐出装置として、インクジェット式プリンター(以下、単に印刷装置と称する)を例示する。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、本実施形態における印刷装置1を示す構成図である。
図2は、印刷装置1の要部を示す斜視図である。
印刷装置1は、比較的大型の媒体Mを扱う、いわゆるラージフォーマット印刷装置(LFP)である。本実施形態の媒体Mは、例えば64インチ(Inch)程度の幅を有する塩化ビニル系フィルムから形成されている。
【0010】
なお、
図1を含めて以降の各図面は、XYZ座標系を用いている。印刷装置1を水平面(X-Y平面)に載置した場合を想定する。その場合、Z軸は、X-Y平面と直交する軸である。以下、このZ軸に沿った方向を、Z軸方向、上方向、下方向、又は高さ方向という。なお、後述するヘッド31から液体としてのインクが吐出される方向を第1方向とし、第1方向とは反対の方向を第2方向とする。この場合、本実施形態では、第1方向は下方向に対応し、第2方向は上方向に対応する。
【0011】
また、X軸は、Z軸と交差(本実施形態では直交)し、本体フレーム100の長手方向に沿った軸とする。以下、このX軸に沿った方向を、X軸方向、幅方向、又は主走査方向と言う。また、Y軸は、X軸及びZ軸の双方と交差(本実施形態では直交)する軸である。以下、このY軸に沿った方向を、Y軸方向、前後方向、又は副走査方向ともいう。
【0012】
また、前後方向において、印刷装置1の装置前側又は装置正面側を+Y軸方向とし、装置後側又は装置背面側を-Y軸方向とする。また、幅方向において、印刷装置1を正面側から見た場合、装置左側を+X方向、装置右側を-X方向とする。また、Z軸方向において、装置上側、上方、上部、上面などを+Z軸方向、装置下側、下方、下部、下面などを-Z軸方向とする。なお、Y軸方向は記録部3における搬送方向Fに対応する。また、印刷用の媒体Mの搬送方向Fに沿う位置関係を上流、下流という。
【0013】
本実施形態では、インクが吐出される方向を-Z軸方向、吐出される方向に平行となる方向をZ軸方向(高さ方向)としている。しかし、これには限定されず、インクが吐出される方向と、-Z軸方向とに傾きが含まれていてもよい。そして、吐出される方向に平行となる方向(高さ方向)と、Z軸方向とにも、傾きが含まれていてもよい。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1は、ロール・ツー・ロール方式で媒体Mを搬送する搬送部2と、媒体Mに対して液体としてのインクを噴射して画像や文字等を記録する記録部3と、媒体Mを加熱する加熱部4とを有する。これら各構成部は、脚部フレーム5に支持されている。
【0015】
搬送部2は、ロール状の媒体Mを送り出すロール21と、送り出された媒体Mを巻き取るロール22とを有する。搬送部2は、ロール21,22間の搬送経路において媒体Mを搬送する搬送ローラー23を有する。また、搬送部2は、媒体Mに張力を付与するテンションローラー25を有する。テンションローラー25は、所定の回転軸を中心に揺動可能な揺動フレーム26に支持されている。
【0016】
記録部3は、搬送される媒体Mに対してインクを噴射するインクジェットヘッド(以降では、ヘッド31と称する)と、ヘッド31を搭載して幅方向(X軸方向)に往復移動自在なキャリッジ32とを有する。ヘッド31は、複数のノズル(不図示)と、ノズルが設けられたノズル面31aを備え、媒体Mとの関係で選択されて浸透乾燥や蒸発乾燥を必要とするインクを噴射可能な構成となっている。
【0017】
加熱部4は、媒体Mを加熱することにより、インクを媒体Mに速やかに乾燥定着させ、滲みやぼやけを防止して、画質を高める構成となっている。加熱部4は、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向F上流で媒体Mを予熱するプレヒーター部41と、記録部3と対向する位置で媒体Mを加熱するプラテンヒーター部42と、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向F下流で媒体Mを加熱するアフターヒーター部43とを有する。
【0018】
プレヒーター部41は、ヒーター41aを有し、媒体Mを常温から目標温度(プラテンヒーター部42における温度)に向けて徐々に昇温させることによって、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。プラテンヒーター部42は、ヒーター42aと赤外線ヒーター42bとを有し、目標温度を維持した状態でインクの着弾を媒体Mに受けさせて、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。アフターヒーター部43は、ヒーター43aを有し、媒体Mを目標温度よりも高い温度まで昇温させ、媒体Mに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを速やかに乾燥させ、少なくともロール22で巻き取る前に、着弾したインクを媒体Mに完全に乾燥定着させる構成となっている。
【0019】
図2に示すように、ヘッド31を搭載したキャリッジ32と対向する位置には、搬送される媒体Mを支持する支持面36を備える支持部材35が設けられている。支持部材35は、金属製の平板であり、媒体Mの搬送方向Fと交差する幅方向に延在して設けられている。支持部材35は、媒体Mを幅方向にわたって支持するために、媒体Mの幅よりも大きな幅、より詳しくは、64インチ幅よりも大きな幅を有する。
【0020】
ヘッド31が搭載されたキャリッジ32は、2つのガイド軸33,34に係合し、ガイド軸33,34に沿って、媒体Mの搬送方向Fと交差する幅方向に移動可能な構成となっている。2つのガイド軸33,34は、キャリッジ32の背面側で、Z軸方向で、幅方向に延在して、それぞれ設けられている。幅方向において、ガイド軸33,34の寸法は、支持部材35の寸法よりも長い。すなわち、ガイド軸33,34は、幅方向において支持部材35の両端より外側まで延在している。このため、ヘッド31は、支持面36と対向する領域以外の領域まで移動することが可能な構成となっている。2つのガイド軸33,34は、ガイドフレーム38に支持されている。
【0021】
ヘッド31の移動経路上には、ヘッド31をメンテナンスするためのメンテナンスユニット60が設けられている。メンテナンスユニット60は、支持部材35と幅方向で隣り合って配置されている。本実施形態のメンテナンスユニット60は、フラッシングボックス61やキャップ部材(図示省略)等を有する。フラッシングボックス61は、メニスカスを整えるために、ヘッド31から予備噴射等されたインクを受けるものである。
【0022】
キャップ部材は、待機中のヘッド31のノズルの保湿や、ノズルからのインク吸引によるクリーニング等を行うものである。キャップ部材は、ヘッド31に対向する上方側が開口しており、開口縁部にはシールとなるゴム部材が設けられている。キャップ部材は、ヘッド31のノズルを囲うようにノズル面31aと接触可能な構成となっている。また、このキャップ部材は、不図示の昇降装置によって、高さ方向に移動可能な構成となっている。
【0023】
上述したメンテナンスユニット60は、本体フレーム100に支持されている。本体フレーム100は、取り付け部品のベースとして機能し、幅方向に延在して設けられている。本体フレーム100は、
図1に示すように、幅方向から見て、断面が略箱形状を有し、内部には自重による撓み等を防止するために複数の補強リブ101が設けられている。本体フレーム100は、例えば、レーザービーム溶接により組み立てられている。本実施形態の本体フレーム100は、例えば複数箇所のレーザービーム溶接により組み立てられているが、スポット溶接やその他の溶接を採用することも可能である。本体フレーム100は、溶接の際の熱収縮等による、ねじりやゆがみがある。
【0024】
本実施形態の印刷装置1は、X軸方向に延在する支持部材35の両端部にフレーム部材としてのサイドフレーム10を備えている。サイドフレーム10は、ノズルからインクが吐出される第1方向とは反対方向となる第2方向に沿って延在し、搬送ローラー23を支持する。なお、サイドフレーム10は、本体フレーム100に取り付けられる。
【0025】
本実施形態では、搬送ローラー23を基準に、印刷装置1を構成するガイド軸33,34や支持部材35等の各要素が互いに組み立てられる。具体的には、搬送ローラー23が、各要素が有する公差を測定する基準(原点)として設定されている。そして、サイドフレーム10が、搬送ローラー23を他の要素と比較して最も近い位置で、直接的又は間接的に支持することにより、サイドフレーム10は、高さ方向における公差の影響が抑制される。例えば、ガイドフレーム38は、高さ方向における公差の影響が小さいサイドフレーム10に支持されている。従って、ガイド軸33,34に往復移動自在なキャリッジ32が設置されると、キャリッジ32の高さ方向における位置も所望の精度に収まりやすい。以降では、高さ方向における公差の影響が小さいサイドフレーム10を、印刷装置1を組み立てる際の基準の部材として説明する。
【0026】
本実施形態では、サイドフレーム10を基準として、キャリッジ32に搭載されるヘッド31の高さ方向の位置が決められ、サイドフレーム10に対してノズル面31aの高さ方向の位置が高精度に調整される。また、本実施形態では、位置精度を必要とするメンテナンスユニット60を取り付けるための取付部としての板部材50を、組立ての基準となるサイドフレーム10に対して、挿嵌させる。これにより、高さ方向の板部材50の位置を、高さ方向の基準位置とすることができる。その後、位置調整部70は、上述するように、サイドフレーム10に挿嵌させた板部材50の第1方向又は第2方向の位置を微調整することで、板部材の平面度を調整し、ヘッド31(ノズル面31a)に対する板部材50の位置精度を出す。
【0027】
図3は、位置調整部70を示す斜視図である。
図4は、位置調整部70を示す平面図である。
図5は、板部材50を示す斜視図である。
図6は、板部材50を取り除いたサイドフレーム10と位置調整部70とを示す斜視図である。
図7は、板部材50の突出部53とサイドフレーム10の開口部11とを-X軸方向から見た模式側面図である。
図8は、ネジ固定部55を示す斜視図である。
【0028】
本実施形態の印刷装置1は、組立ての基準であるサイドフレーム10と、メンテナンスユニット60が取付けられる板部材50と、板部材50のZ軸方向の位置を調整可能な位置調整部70と、により、板部材50の調整を行う構成とされている。なお、板部材50のZ軸方向の位置を調整することを、以降では高さ調整ともいう。
図3に示すように、本実施形態の印刷装置1は、板部材50の高さ調整を行う位置調整部70として、高さ調整部72を備えている。本実施形態では、2つの高さ調整部72が設けられ、2つの高さ調整部72が設けられる箇所と対応する2か所において板部材50の位置調整が行われる。
【0029】
板部材50は、
図3~
図5に示すように、+Z軸方向からの平面視で、略矩形状を有している。そして、矩形状を有する板部材50は、下方向に延出する側壁51を備え、板部材50の剛性を向上させている。各側壁51は、板部材50の縁である板部材50の各端部から下方向に屈曲する。また、板部材50は、様々な形状の取付け孔56が設けられている。これらの取付け孔56を利用して、
図2に示すメンテナンスユニット60(フラッシングボックス61等)が取り付けられる。
【0030】
サイドフレーム10には、
図3、
図6、
図7に示すように、板部材50を高さ調整する際の高さの基準となるように、板部材50を挿嵌する複数の開口部11を備えている。本実施形態では、3つの開口部11が備えられている。3つの開口部11に対して、+Y軸方向から順に、第1開口部111、第2開口部112、第3開口部113とする。
【0031】
図3、
図7に示すように、略矩形状を有する板部材50のサイドフレーム10側の端部には、3つの開口部11に挿嵌されるための3つの突出部53が、端部からサイドフレーム10に向かって突出している。3つの突出部53は、+Z軸方向からの平面視で略矩形状を有している。なお、第1開口部111に挿嵌される突出部53を、第1突出部531とする。また、第2開口部112に挿嵌される突出部53を、第2突出部532とする。また、第3開口部113に挿嵌される突出部53を、第3突出部533とする。
【0032】
サイドフレーム10の3つの開口部11は、
図7に示すように、-X軸方向からの側面視で矩形状に形成される内周壁11Aをそれぞれ備えている。そして、3つの開口部11は、下方の内周壁11Aから上方向(+Z軸方向)に向かって突出し、挿嵌された突出部53に対して、下方向(-Z軸方向)から当接する突起12がそれぞれ設けられている。ここで、第1開口部111に設けられる突起12を第1下突起121とする。また、第2開口部112に設けられる突起12を第2下突起122とする。また、第3開口部113に設けられる突起12を第3下突起123とする。
【0033】
また、
図7に示すように、本実施形態では、突起12に若干ずれて対向して、上方の内周壁11Aから下方向(-Z軸方向)に向かって突出し、上方向(+Z軸方向)から挿嵌された突出部53に接近する突起13がそれぞれ設けられている。ここで、第1開口部111に設けられる突起13を第1上突起131とする。また、第2開口部112に設けられる突起13を第2上突起132とする。また、第3開口部113に設けられる突起13を第3上突起133とする。
【0034】
3つの開口部11が、上述したように構成されることにより、板部材50の突出部53は、開口部11に挿入された場合、下方向の突起12と上方向の突起13とにより挟まれる状態に挿嵌される。
【0035】
ここで、
図7に示すように、開口部11において、第2方向(上方向)と交差する交差方向の一例であるY軸方向における寸法を、幅寸法Aとする。また、突起12,13において、第2方向(上方向)と交差する交差方向の一例であるY軸方向における寸法を、幅寸法Bとする。更に、突出部53において、第2方向(上方向)と交差する交差方向となるY軸方向における寸法を、幅寸法Cとする。
【0036】
本実施形態では、突出部53の幅寸法Cは、開口部11の幅寸法Aよりも小さく形成されている。また、突起12,13の幅寸法Bは、突出部53の幅寸法Cよりも小さく形成されている。
【0037】
突出部53を対応する開口部11にそれぞれ挿嵌した場合、本実施形態では、突出部53と当接する下側の突起12の面積を小さくし、線接触ではなく、近似的な点接触となるようにしている。これにより、例えば、第1突出部531に下方向から当接する第1下突起121の当接面の面積を少なくすることで、高さ調整に影響する面積の交差管理を簡略化させることができる。具体的には、第1突出部531と第1下突起121との当接面の、水平面に対する平行度が高いほど、サイドフレーム10に対する高さ方向の板部材50の位置精度が向上する。しかし、一般的に当接面の面積が大きいほど、当該当接面の公差管理は複雑化する。その理由は、当接面を構成する複数の箇所それぞれにおいて公差を管理する必要があるからであり、当接面の面積が大きいほど公差が管理されるべき箇所の数も増えるからである。これに対し、本実施形態では、突出部53と当接する下側の突起12の面積を小さくするように構成することにより、公差管理が複雑化することを抑制している。これは、第2突出部532と、下方向から当接する第2下突起122とにおいても同様となる。また、第3突出部533と、下方向から当接する第3下突起123とにおいても同様となる。
【0038】
また、
図6に示すように、サイドフレーム10は、高さ調整部72による板部材50の高さ調整後、板部材50をサイドフレーム10にネジ固定するためのネジ孔115を有している。ネジ孔115に相対して、サイドフレーム10側の板部材50の端部には、
図3図5、
図8に示すように、上方向に屈曲して延出する固定部としてのネジ固定部55を備えている。ネジ固定部55は、サイドフレーム10に対して板部材50を固定する。
【0039】
本実施形態では、2つのネジ固定部55を備えている。
図3、
図5、
図8に示すように、2つのネジ固定部55に対して、+Y軸方向から順に、第1ネジ固定部551、第2ネジ固定部552とする。2つのネジ固定部55は、第1突出部531、第2突出部532、第3突出部533のそれぞれの間に1つずつ設置されている。詳細には、
図3、
図5に示すように、第1突出部531と第2突出部532との間に、第1ネジ固定部551を設置している。また、第2突出部532と第3突出部533との間に、第2ネジ固定部552を設置している。また、それぞれのネジ固定部55は、右方向からネジSを挿通する貫通孔555を有している。
【0040】
なお、板部材50をサイドフレーム10にネジ固定する場合、ネジSを-X軸方向から貫通孔555に挿通し、対応するサイドフレーム10に有するネジ孔115にネジSを螺合させることで行う。サイドフレーム10に設けるネジ孔115は、詳細には、バーリング加工がされており、ネジSは、いわゆるタッピングネジであり、ネジ孔115へ螺合させる。
【0041】
図9は、高さ調整部72の断面構成図である。
本体フレーム100には、
図3、
図4、
図6、
図9に示すように、位置調整部70としての高さ調整部72が設けられている。本実施形態の高さ調整部72は、板部材50の-X軸方向の端部の下側に相対して、Y軸方向に並んで2つ設置される。2つの高さ調整部72は、言い換えると、搬送方向Fの上流と下流に位置している。高さ調整部72は、ネジ部材73と、ネジ回し治具75とを有している。
【0042】
詳細には、ネジ部材73は、
図9に示すように、ボルト731と、固定ナット732と、調整ナット733と、調整後固定ナット734と、を有する。ボルト731は、そのネジ先が上方に突出する向きで、本体フレーム100に設けられている。固定ナット732は、ボルト731の頭部との間で本体フレーム100を締め付け、ボルト731を本体フレーム100に対して固定するために設けられる。なお、固定ナット732の代わりに、本体フレーム100をバーリング加工してネジを形成し、ボルト731を本体フレーム100に対して固定する構成を採用してもよい。
【0043】
ここで、板部材50のメンテナンスユニット60が取り付けられる部分を上部とし、第2方向において上部とは反対の部分を下部としたとき、調整ナット733は、下部に当接することによって板部材50を支持するために設けられ、板部材50の下部となる裏側に係止可能な外形を有する。調整ナット733は、ボルト731の軸部に螺合しており、回転により高さ方向に移動可能な構成となっている。調整後固定ナット734は、調整ナット733による調整後、ボルト731のネジ先から取り付けられる。調整後固定ナット734は、調整ナット733との間で板部材50を締め付け、位置調整した板部材50を固定する構成となっている。
【0044】
ネジ回し治具75は、調整ナット733と回転方向で係合する係合溝751を有する。本実施形態の係合溝751は、調整ナット733と相似形の平面視で六角形状を有している。このため、ネジ回し治具75をボルト731の軸周りに回転させると、係合溝751に回転方向で係合する調整ナット733を、ネジ回し治具75と一体的に回転させることが可能となる。
【0045】
ネジ回し治具75は、
図3,
図4に示すように、第2方向となる+Z軸方向からの平面視で、板部材50の-X軸方向の端部から少なくとも一部が突出するフランジ部752を有する。本実施形態のフランジ部752は、リング形状を有しており、その一部が板部材50の端部から突出している。このため、作業者は、板部材50の端部から突出したフランジ部752を操作することで、板部材50の裏側にアクセスすることなく調整ナット733を回転させることができる。
【0046】
フランジ部752は、
図6、
図9に示すように、回転方向に所定間隔で設けられた複数の孔部753を有する。孔部753は、ボルト754が挿通可能な径を有している。ボルト754は、ネジ回し治具75を本体フレーム100に対してネジ固定するために設けられる。本実施形態では、回転軸を中心として30°間隔で計12個の孔部753が形成されている。また、孔部753には、孔部753の1つ1つに、図示省略する数字が割り当てられている。このため、作業者は、複数の孔部753をダイヤル目盛として視ることにより、調整ナット733の回転数を計測することができる。また、作業者は、複数の孔部753をダイヤル目盛として視ることにより、調整ナット733の回転角度を30°間隔で微調整することができる。
【0047】
本実施形態における高さ方向の位置調整は、組立ての基準となるサイドフレーム10を基準として、板部材50の3つの突出部53をサイドフレーム10の3つの開口部11に挿嵌すると共に、高さ調整部72を
図3、
図4、
図6に示すように2点に配置して、サイドフレーム10(ノズル面31a)に対する板部材50(メンテナンスユニット60)の高さ方向の位置を2点で調整する構成となっている。
【0048】
なお、上述したように、高さ方向の位置調整において、基準となるサイドフレーム10に、板部材50の突出部53が開口部11に挿嵌されることにより、板部材50のサイドフレーム10側(+X軸方向)の高さが調整された状態となる。この状態において、板部材50のサイドフレーム10側の端部に対向する側となる板部材50の-X軸方向の端部に相対して設置された2つの高さ調整部72のそれぞれで、板部材50の-X軸方向の端部近傍の領域における高さ方向の位置調整を行う。
【0049】
なお、メンテナンスユニット60を板部材50に取り付ける場合には、板部材50の突出部53、サイドフレーム10の開口部11、高さ調整部72によって、ノズル面31aに対して位置調整した上で、メンテナンスユニット60を取り付ける。
【0050】
図10は、位置調整方法を示すフローチャートである。詳細には、板部材50の位置調整を行う際、言い換えると、メンテナンスユニット60の位置調整を行う際のフローチャートである。
以降では、
図10を参照して、板部材50の位置調整(メンテナンスユニット60の位置調整)を行う際の、位置調整方法について説明する。
【0051】
最初に、挿嵌工程(ステップS100)を行う。
詳細には、サイドフレーム10の開口部11に板部材50の突出部53を挿嵌する。上述したように、サイドフレーム10の3つの開口部11に板部材50の3つの突出部53をそれぞれ挿嵌する。
次に、仮固定工程(ステップS101)を行う。
詳細には、サイドフレーム10の開口部11に板部材50の突出部53を挿嵌した後、板部材50のネジ固定部55を用いて、サイドフレーム10に板部材50を仮固定する。上述したように、2つのネジ固定部55の貫通孔555に、-X軸方向からネジSを挿通して、対応するサイドフレーム10に設けるネジ孔115に螺合させることで、板部材50を仮固定する。
次に、高さ調整工程(ステップS102)を行う。
詳細には、位置調整部70としての高さ調整部72を用いて、板部材50の突出部53とは反対方向となる-X軸方向の端部周辺の高さ調整を行う。
【0052】
ここで、高さ調整工程(ステップS102)の具体例を示す。
高さ調整部72を用いての板部材50の-X軸方向の端部近傍の高さ調整は、
図4に示すように、+Z軸方向からの平面視で、板部材50の-X軸方向の端部から突出したネジ回し治具75のフランジ部752を回転させることで行う。フランジ部752を回転させることで、
図9に示すように、係合溝751に係合する調整ナット733を回転させることができる。調整ナット733が回転すると、調整ナット733に支持された板部材50が第1方向又は第2方向へ移動する。このため、作業者は、板部材50の裏面側にアクセスすることなく、板部材50の高さ調整を容易に行うことができる。
【0053】
なお、+Z軸方向からの平面視で、フランジ部752を反時計回りに回転した場合、板部材50は、第2方向(上方向)へ移動する。反対に、フランジ部752を時計回りに回転した場合、板部材50は、第1方向(下方向)へ移動する。このとき、板部材50は、上方向又は下方向に完全に沿って移動しなくてもよい。例えば、板部材50は、板部材50の+X方向の端部を回転中心として回転してもよい。すなわち、高さ調整に伴う板部材50の移動は、並進移動でもよいし、回転移動でもよい。
【0054】
フランジ部752には、回転方向に所定間隔で設けられた複数の孔部753が設けられている。このため、作業者は、孔部753を目盛として、ネジ部材73の回転数や回転角度を微調整することができる。フランジ部752を操作し、所定の位置に高さ調整した場合、複数の孔部753の1つにボルト754を挿通して、本体フレーム100に対しネジ回し治具75を固定する。この一連の操作により、調整後の調整ナット733の回転を規制することができる。そして、ネジ回し治具75を固定した後、調整後固定ナット734を取り付け、板部材50を挟み込んで固定する。
【0055】
高さ調整工程(ステップS102)が終了した場合、次に、本固定工程(ステップS103)を行う。詳細には、サイドフレーム10にネジ固定部55を仮固定している状態から、サイドフレーム10にネジ固定部55を本固定する状態に移行させる。具体的には、仮固定工程(ステップS101)で、2つのネジ固定部55の貫通孔555にネジSを挿通して、サイドフレーム10のネジ孔115に螺合されて仮固定されているネジSに対し、更にネジSをネジ孔115に螺合させることで、サイドフレーム10にネジ固定部55を固定する。
【0056】
次に、メンテナンスユニット取付工程(ステップS104)を行う。詳細には、高さ調整された板部材50の上面50aに、各種の取付け孔56を利用して、メンテナンスユニット60、本実施形態では、フラッシングボックス61を取り付ける。
以上の調整方法により、板部材50の位置調整(メンテナンスユニット60の位置調整)を行うことができる。
【0057】
以上の調整方法によれば、挿嵌工程(ステップS100)を実施することにより、組立ての基準となり寸法精度も確保されているサイドフレーム10に対して、サイドフレーム10の開口部11に、板部材50の突出部53を挿嵌することにより、板部材50のサイドフレーム10側の領域において、高さ方向の基準位置とすることができる。その後、位置調整部70により、板部材50のサイドフレーム10側とは反対方向(-X軸方向)となる端部の領域の高さ方向の微調整を行うことで、板部材50の高さ及び平面度を調整することができる。よって、ノズル面31aに対するフラッシングボックス61の位置ずれを防止して、ヘッド31から予備噴射等されたインクを適切に受けることができる。
【0058】
また、搬送方向Fの上流に設置される1つの高さ調整部72及び第3突出部533の位置は、フラッシングボックス61よりも搬送方向において上流に配置されている。このため、フラッシングボックス61の搬送方向上流を基準として高さ調整を行うことができる。更に、搬送方向Fの下流に設置される1つの高さ調整部72及び第1突出部531の位置は、フラッシングボックス61よりも搬送方向において下流に配置されている。このため、フラッシングボックス61の搬送方向、上流及び下流を基準として高さ調整を行うことができる。
【0059】
なお、板部材50の+Z軸方向からの平面視で、突出部53及び2つの高さ調整部72に囲まれる板部材50の領域は、ヘッド31を搭載したキャリッジ32の真下を含むため、メンテナンスユニット60の必要な位置を精度良く調整することができる。
【0060】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態の印刷装置1は、媒体Mを搬送する搬送ローラー23と、媒体Mに液体(インク)を吐出する複数のノズルが設けられたノズル面31aを有するヘッド31と、メンテナンスユニット60とを備える。また、印刷装置1は、ノズルからインクが吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在して搬送ローラー23を支持するフレーム部材(サイドフレーム10)と、メンテナンスユニット60が取付けられる取付部(板部材50)と、板部材50の第1方向又は第2方向の位置を調整可能な位置調整部70(高さ調整部72)とを備える。そして、板部材50には、サイドフレーム10に開けられた開口部11に挿嵌される突出部53が配設されている。
この構成により、ノズル面31aは、装置組み立ての際の基準となるサイドフレーム10を基準に位置決めされる。サイドフレーム10は、搬送ローラー23を支持しており、板部材50は、突出部53がサイドフレーム10の開口部11に挿嵌されることで位置決めされる。つまり、ノズル面31aも板部材50も、同じサイドフレーム10を基準にして位置決めされる。従って、サイドフレーム10の開口部11は、位置調整が不要な程度にノズル面31aに対する位置精度が確保されており、開口部11に板部材50の突出部53を挿嵌することにより、高さの基準を形成することができる。これにより、作業者は、板部材50の高さ調整作業が簡略化されて容易となり、調整作業に掛る時間を短縮することができる。
【0062】
本実施形態の印刷装置1において、板部材50のメンテナンスユニット60が取り付けられる部分を上部とし、第2方向において上部とは反対の部分を下部としたとき、位置調整部70(高さ調整部72)は、板部材50の下部に当接することによって板部材50を支持する調整ナット733を有するネジ部材73を有している。また、高さ調整部72は、調整ナット733と係合する係合部(係合溝751)と、第2方向からの平面視で板部材50の縁(端部)から一部が突出するフランジ部752と、を有するネジ回し治具75を有している。
この構成により、作業者は、板部材50の端部から突出したフランジ部752を操作することで、板部材50の下部となる裏側にアクセスすることなく調整ナット733を回転させることができるため、メンテナンスユニット60の高さ調整を容易に行うことができる。
【0063】
本実施形態の印刷装置1において、フランジ部752は、回転方向において、所定間隔で設けられた複数の孔部753を有している。
この構成により、作業者は、複数の孔部753をダイヤル目盛として視ることができ、調整ナット733の回転数を計測したり、調整ナット733の回転角度を微調整したりすることができる。また、調整後には、複数の孔部753の1つを用いて、任意の位置でネジ回し治具75を固定し、ネジ部材73の回転を規制することができる。
【0064】
本実施形態の印刷装置1において、サイドフレーム10には、開口部11の内周壁11Aから第2方向における上方に向かって突出し、突出部53に第2方向における下方から当接する突起12が配設されている。そして、突起12の第2方向と交差する交差方向における寸法(幅寸法B)が、突出部53の交差方向における寸法(幅寸法C)よりも小さく形成されている。
この構成によれば、突出部53の幅寸法Cよりも小さい、幅寸法Bの突起12を設けることで、突出部53と接触する突起12の面積が小さくなることで、公差の管理が容易となるため、板部材50の平面性を確保することが容易となる。
【0065】
本実施形態の印刷装置1において、突出部53は、第1突出部531と第2突出部532とを有している。そして、板部材50は、第1突出部531と第2突出部532との間に、サイドフレーム10に対して板部材50を固定するための固定部としてのネジ固定部55(第1ネジ固定部551)を有している。また、本実施形態では、突出部53は、第3突出部533も有しており、第2突出部532と第3突出部533との間に、第2ネジ固定部552を有している。
この構成によれば、第1突出部531と第2突出部532との間に、ネジ固定部55(第1ネジ固定部551)を配置することで、第1ネジ固定部551をネジ止めする際、板部材50が回転してしまうことを抑制でき、板部材50の位置の変動を抑制することができる。また、第2突出部532と第3突出部533との間にも、第2ネジ固定部552を配置することで、更に、板部材50が回転してしまうことを抑制できる。これにより、第1ネジ固定部551がネジ止めされた後に、第2ネジ固定部552をネジ止めするためにネジSを回す場合に、板部材50がネジSの回転方向と同じ方向に回転することによって、板部材50が変形することを抑制できる。
【0066】
本実施形態のメンテナンスユニット60の位置調整方法において、印刷装置1は、搬送ローラー23と、ノズル面31aを有するヘッド31と、メンテナンスユニット60と、ノズルから液体が吐出される第1方向とは反対の第2方向に沿って延在し、搬送ローラー23を支持するサイドフレーム10とを備えている。また、印刷装置1は、板部材50と、板部材50の第1方向又は第2方向の位置を調整可能な高さ調整部72とを備えている。そして、位置調整方法は、サイドフレーム10に開けられた開口部11に、板部材50に配設された突出部53を挿嵌させる工程(挿嵌工程:ステップS100)と、開口部11に突出部53を挿嵌させた後、高さ調整部72により板部材の第1方向又は第2方向の位置調整を行う工程(高さ調整工程:ステップS102)と、を有する。
この調整方法によれば、最初に、挿嵌工程(ステップS100)により、位置調整が不要な程度にノズル面31aに対する位置精度が確保されているサイドフレーム10の開口部11に、板部材50の突出部53を挿嵌することにより、高さの基準を形成する。次に、高さ調整工程(ステップS102)により、高さ調整部72を用いて板部材50の第1方向又は第2方向の位置調整を行う。このような位置調整方法により、作業者は調整作業が容易となり、調整作業に掛る時間を短縮することができる。
【0067】
2.第2実施形態
図11は、第2実施形態における位置調整部90を示す概斜視図である。
図12は、位置調整部90を示す概断面図である。なお、
図12は、
図11に図示する回転軸921を軸中心にY-Z平面で切断した状態の断面図である。
図13は、カム922による高さ調整を示す概断面図である。なお、
図13は、カム922をX-Z平面で切断した状態の断面図であり、調整する場合の板部材50AのZ軸方向における最低位置と最高位置との状態を示している。板部材50Aは、メンテナンスユニット60を固定する第1実施形態での板部材50と略同様に構成されて同様の機能を有する。
【0068】
本実施形態の位置調整部90は、詳細には、高さ調整部92と固定フレーム200とを備えている。高さ調整部92は、回転軸921、カム922、操作部923を有している。また、高さ調整部92は、固定ナット924と調整後固定ナット925とを有している。
【0069】
ここで、板部材50Aのメンテナンスユニット60が取付けられる部分を上部とし、第2方向において上部とは反対の部分を下部とする。回転軸921は、第2方向と交差する方向に延在する。詳細には、回転軸921は、Y軸方向に延在し、Y軸方向回りに回転可能である。カム922は、回転軸921と共に回転自在に配設され、下部と当接することによって板部材50Aを支持する。操作部923は、回転軸921の軸方向における一端を覆うように配設され、回転軸921を回転操作するために設けられる。
【0070】
固定フレーム200は、高さ調整部92を回転可能に保持する板状部材である。固定フレーム200は、幅方向に延びて、-X軸方向からの側面視でL字形状を成している。本実施形態では、一対の固定フレーム200が設けられている。一対の固定フレーム200は、板部材50Aを、+Y軸方向及び-Y軸方向から挟むように設置されている。なお、固定フレーム200は、本体フレーム100に固定される。
【0071】
固定フレーム200の+X軸方向の縁となる端部からは、第1実施形態の突出部53と同様に形成されて同様の機能を有する突出部210が+X軸方向に2つ突出している。また、固定フレーム200の+X軸方向の端部からは、第1実施形態のネジ固定部55と同様に形成されて同様の機能を有するネジ固定部211が、2つ突出部210の間から、+X軸方向に1つ形成されている。
【0072】
なお、本実施形態では、第1実施形態のサイドフレーム10と略同様に構成されて、同様の機能を有するサイドフレーム10Aを備えている。サイドフレーム10Aには、第1実施形態での開口部11に加えて、+Y軸方向と-Y軸方向とに2つの開口部15をそれぞれ有している。Y軸方向に設置される2つの固定フレーム200は、それぞれ突出部210をこの開口部15に挿嵌して組立てる。これにより、高さ調整部92の基準位置が決まる。また、ネジ固定部211の貫通孔212にネジSを挿通してサイドフレーム10に板部材50Aを固定する。
【0073】
なお、固定フレーム200が、位置精度が確保されるサイドフレーム10Aと接続されることにより、高さ調整部92の位置精度も所望の範囲内に収まりやすい。そのため、第1実施形態での高さ調整部72のように個々の調整ではなく、一括で調整する本実施形態の高さ調整部92でも、板部材50Aの平面度が所望の範囲内に収まりやすい。
【0074】
一対の固定フレーム200のそれぞれには、回転軸921を回転自在に軸支する挿通孔220が形成されている。一対の固定フレーム200の一方に形成された挿通孔220は、他方に形成された挿通孔220と相対する。これにより、回転軸921は、例えば、Y軸方向回りに回転可能となる。挿通孔220は、板部材50Aの下方向に位置している。
【0075】
カム922は、板部材50Aの下方向で、回転軸921の概両端側に1つずつ配設されている。カム922は、回転軸921が貫通している。カム922は、回転軸921の回転に連動して回転軸921を中心にして回転する。カム922は、回転軸921回りに回転自在に配設され、板部材50Aの下部と当接することによって、板部材50Aを支持する。
【0076】
なお、回転軸921は、2つの固定フレーム200の内側に設置される2つの固定ナット924により、Y軸方向の移動が規制されて、回転自在に軸支される。また、回転軸921の軸方向における一端(本実施形態では、+Y軸方向の端部)には、回転軸921を回転操作するための操作部923が、円板状に配設されている。
【0077】
この構成により、軸方向における回転軸921の寸法は、軸方向における上部の寸法以上である。言い換えると、回転軸921の長さは、回転軸921の軸方向に対応する板部材50Aの長さ以上である。そして、操作部923は、第2方向(+Z軸方向)からの平面視で、板部材50Aの縁(端部)から突出している。なお、回転軸921には、操作部923と固定フレーム200との間に、回転軸方向に移動可能な調整後固定ナット925が、回転軸921に螺合されている。
【0078】
ここで、高さ調整部92による高さ調整について、カム922の動作を中心に説明する。
カム922は、偏心カムである。カム922は、回転角度と変位量とが線形性を有する。カム922は、回転角度にその変位量が比例する。また、2つのカム922は、いずれも回転軸921に対して同じ姿勢となるように配設されている。
【0079】
作業者は、操作部923を把持して、回転軸921を回転させて高さ調整を行う。作業者が、回転軸921を回転させた場合、カム922は、
図13に示すように、板部材50Aの下面50bに当接して回転することで、板部材50Aを鉛直方向に移動させる。しかし、板部材50Aは、第1実施形態の板部材50と同様に、突出部53を組立の基準となるサイドフレーム10Aの開口部11に挿嵌することにより、+X軸方向の端部側の領域は初期的に位置調整される。従って、詳細には、カム922が回転することで、+X軸方向の端部を基準として、カム922が設置される-X軸方向に対応する板部材50Aの端部領域を、上面50aが平面度を維持した状態で鉛直方向に移動(回転)させる。
【0080】
カム922の回転による板部材50Aの高さ調整を行う場合、
図13に示すように、板部材50Aの位置が、Z軸方向において、最低位置の状態を、実線で図示している。また、板部材50Aの位置が、Z軸方向において、最高位置の状態を、二点鎖線で図示している。この調整により、ヘッド31のノズル面31aに対する板部材50Aの高さが調整される。
【0081】
そして、作業者は、高さ調整を行った後、回転軸921に螺合されている調整後固定ナット925を固定フレーム200側に移動させて、固定ナット924との間で固定フレーム200を締め付けることで、回転軸921を固定フレーム200に固定する。なお、本実施形態では、カム922は、2つ設けられているが、これには限られず、1つ設けられてもよいし、3つ以上設けられてもよい。また、カム922は、回転軸921と一体に成形されていてもよい。
【0082】
ここで、位置調整方法を、
図10に示すフローチャートと対応させて説明する。
板部材50Aとサイドフレーム10Aとによる、挿嵌工程(ステップS100)と仮固定工程(ステップS101)とは、第1実施形態と同様になる。詳細には、サイドフレーム10Aの開口部11に、板部材50Aの突出部53を挿嵌することが、挿嵌工程(ステップS100)に対応する。また、板部材50Aのネジ固定部55(
図11では図示省略している)を用いて、サイドフレーム10AにネジSで板部材50Aを仮固定することが、仮固定工程(ステップS101)に対応する。
【0083】
そして、高さ調整工程(ステップS102)は、操作部923を操作(回転)して、カム922を回転させることに対応している。なお、調整した後、調整後固定ナット925により回転軸921を固定フレーム200に固定することも含まれる。その後、第1実施形態と同様に、ネジ固定部55をサイドフレーム10Aに本固定することが、本固定工程(ステップS103)に対応する。メンテナンスユニット取付工程(ステップS104)は、第1実施形態と同様である。
【0084】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する以外に、以下の効果を得ることができる。
【0085】
本実施形態の印刷装置1において、位置調整部90(高さ調整部92)は、回転軸921とカム922と操作部923とを有する。ここで、板部材50Aのメンテナンスユニット60が取付けられる部分を上部とし、第2方向において上部とは反対の部分を下部とする。その場合、カム922は、回転軸回りに回転自在に配設され、板部材50Aの下部と当接することによって板部材50Aを支持する。操作部923は、回転軸921の軸方向における一端に配設され、回転軸921を回転操作する。そして、軸方向における回転軸921の寸法は、軸方向における上部の寸法以上である。
この構成により、カム922の回転角度によって、板部材50Aの第1方向及び第2方向の位置調整を行うことができる。また、例えば、ヘッド31の大型化に伴うメンテナンスユニット60、及び、板部材50Aのサイズの大型化に対しても、位置調整部90の数を増やすことなく、メンテナンスユニット60の高さ調整を行うことができる。
【0086】
本実施形態の印刷装置1において、軸方向における回転軸921の寸法は、軸方向における板部材50Aの上部の寸法よりも大きく構成されている。そして、操作部923は、第2方向(+Z軸方向)からの平面視で、板部材50Aの縁(端部)から突出している。
この構成により、作業者は、板部材50Aの端部から突出した操作部923を操作することで、板部材50Aの裏側(下面50b)にアクセスすることなく回転軸921を回転させることができるため、メンテナンスユニット60の高さ調整を容易に行うことができる。
【0087】
3.変形例1
図14は、変形例1を説明する断面図である。詳細には、
図14は、開口部11に挿嵌した突出部53の状態を示す断面図である。
【0088】
第1実施形態では、サイドフレーム10の開口部11に、板部材50の突出部53を挿嵌している。ここで、
図14に示すように、突出部53は、基部53Aと先端部53Bとを備えるとする。先端部53Bは、突出部53の突出方向において、基部53Aに対して板部材50(50A)の反対側に位置する。突出部53の突出方向は、例えばX軸方向である。その場合、先端部53Bを、
図14に示すように、下方向に屈曲させることにより、先端部53Bの第2方向における寸法Dを、基部53Aの第2方向における寸法(この場合、基部53Aの厚さE)よりも大きく構成してもよい。
【0089】
このように、先端部53Bの寸法Dが、基部53Aの寸法(厚さE)よりも大きく構成されることにより、突出部53が開口部11から抜け落ちてしまうことを防止することができる。一方、先端部53Bの寸法Dは、開口部11の内周壁11Aに形成されて上方向に突出する突起12と、下方向に突出する突起13との隙間寸法以上あればよい。
【0090】
本変形例では、先端部53Bは、板状の突出部53の先端部のみを言う概念ではなく、例えば、キャップ等の部材を板状の突出部53の先端部に装着した状態も含む概念である。従って、キャップ等の部材を、X軸方向に延びる板状の突出部53の先端部に装着することにより、先端部の寸法が、基部53Aの寸法(厚さE)よりも大きく構成されることでもよい。
【0091】
4.変形例2
第1実施形態のフランジ部752を有するネジ回し治具75は、板部材50の端部から一部が突出しているが、板部材50の端部形状によっては、複数個所が突出する構成でもよい。
【0092】
5.変形例3
本実施形態では、3つの突出部53に対して、第2方向における下方から当接する突起12がそれぞれ配設されている。しかし、少なくとも1つの突出部53に、第2方向における下方から当接する突起12が配設されていればよい。
【0093】
6.変形例4
本実施形態の突出部53は、第1突出部531、第2突出部532、第3突出部533の3つの突出部53を備えているが、2つの突出部53(第1突出部531、第2突出部532)を備え、その2つの突出部53の間に、ネジ固定部55を有する構造でもよい。
【0094】
7.変形例5
本実施形態の突出部53は、第1突出部531、第2突出部532、第3突出部533の3つの突出部53を備えて、挿嵌工程を行っている。しかし、突出部53は、1つの突出部53、2つの突出部53、又は4つ以上の突出部53を備えて、挿嵌工程を行うことでよい。
【0095】
8.変形例6
本実施形態の突出部53は、板部材50(50A)と一体形成されている。しかし、突出部53が、板部材50(50A)の別体であってもよい。例えば、板部材50(50A)をSUSなどのステンレスで構成する一方、突出部53をアルミニウムで構成し、突出部53を板部材50(50A)に溶接したりネジ止めしたりしてもよい。
【0096】
9.変形例7
本実施形態の開口部11は、第1開口部111、第2開口部112、第3開口部113の3つの開口部11を備えているが、1つの開口部11を備えて、そこに3つの突出部53が挿嵌されてもよい。この場合、1つの開口部11の内周壁11Aから上方向(+Z軸方向)に向かって突出し、挿嵌された3つの突出部53に対して、下方向(-Z軸方向)から当接する突起12がそれぞれ設けられていることが好ましい。このように構成されている場合であっても、サイドフレーム10に対する高さ方向の板部材50の位置精度は所望の範囲内に収まりやすい。
【0097】
10.変形例8
本実施形態では、板部材50に、開口部11に挿嵌される3つの突出部53が設けられているが、板部材50に、別の突出部が設けられ、別の突出部に3つの突出部53が設けられていてもよい。このように構成されている場合であっても、サイドフレーム10に対する高さ方向の板部材50の位置精度は所望の範囲内に収まりやすい。
【符号の説明】
【0098】
1…印刷装置、10,10A…フレーム部材を構成するサイドフレーム、11…開口部、11A…内周壁、12,13…突起、23…搬送ローラー、31…ヘッド、31a…ノズル面、50,50A…取付部を構成する板部材、50a…上面、53…突出部、53A…基部、53B…先端部、55…固定部を構成するネジ固定部、60…メンテナンスユニット、70…位置調整部、72…高さ調整部、73…ネジ部材、75…ネジ回し治具、90…位置調整部、92…高さ調整部、121…第1下突起、122…第2下突起、531…第1突出部、532…第2突出部、551…第1ネジ固定部、731…ボルト、732…固定ナット、733…調整ナット、734…調整後固定ナット、751…係合溝、752…フランジ部、753…孔部、754…ボルト、921…回転軸、922…カム、923…操作部、924…固定ナット、925…調整後固定ナット、A…開口部の幅寸法、B…突起の幅寸法、C…突出部の幅寸法、D…先端部の寸法、E…基部の厚さ、M…媒体、S…ネジ。