(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179930
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】押出装置及びストランドダイ
(51)【国際特許分類】
B29C 48/345 20190101AFI20221129BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20221129BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20221129BHJP
【FI】
B29C48/345
B29C48/395
B29C48/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086750
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】富山 秀樹
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KL64
4F207KL92
4F207KM16
4F207KM20
(57)【要約】
【課題】ストランドの品質を向上させることができる押出装置及びストランドダイを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る押出装置1は、ストランド61の原料60が流れる流路26を有する一方向に延びた筒状のシリンダ20と、シリンダ20の一端側に配置され、シリンダ20から押し出された原料60が流入する流入口44、原料60をストランド61として吐出する吐出口45、及び、流入口44から吐出口45まで原料60が流れる流路46を有するストランドダイ40と、一方向に延びた回転軸を中心に回転することにより、原料60を吐出口45側に押し出すスクリュ30と、を備え、一方向に直交する流路26及び46の断面積を流路断面積とすると、ストランドダイ40の流路46におけるスクリュ30の先端よりも吐出口45側の流路断面積は、シリンダ20の流路46における流路断面積よりも小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストランドの原料が流れる流路を有する一方向に延びた筒状のシリンダと、
前記シリンダの一端側に配置され、前記シリンダから押し出された前記原料が流入する流入口、前記原料をストランドとして吐出する吐出口、及び、前記流入口から前記吐出口まで前記原料が流れる流路を有するストランドダイと、
前記一方向に延びた回転軸を中心に回転することにより、前記原料を吐出口側に押し出すスクリュと、
を備え、
前記一方向に直交する前記流路の断面積を流路断面積とすると、
前記ストランドダイの前記流路における前記スクリュの先端よりも前記吐出口側の前記流路断面積は、前記シリンダの前記流路における前記流路断面積よりも小さい、
押出装置。
【請求項2】
前記ストランドダイは、
前記流入口を有するダイホルダと、
前記ダイホルダよりも前記吐出口側に配置されたダイヘッドと、
前記ダイヘッドよりも前記吐出口側に配置され、前記吐出口を有するダイと、
を含み、
前記ダイの前記流路断面積は、前記ダイヘッドの前記流路断面積以下であり、
前記ダイヘッドの前記流路断面積は、前記ダイホルダの前記流路断面積以下である、
請求項1に記載の押出装置。
【請求項3】
前記吐出口は、前記一方向に直交する水平方向に複数並び、
前記ダイヘッドの前記流路における前記水平方向の幅は、前記吐出口側ほど大きく、
前記ダイヘッドの前記流路における鉛直方向の幅は、前記吐出口側ほど小さく、
前記ダイヘッドの前記流路断面積は、前記一方向において一定である、
請求項2に記載の押出装置。
【請求項4】
前記ダイホルダの前記流路における前記スクリュの先端よりも前記吐出口側の前記流路断面積は、前記吐出口側ほど小さい、
請求項2または3に記載の押出装置。
【請求項5】
前記スクリュの先端は、前記ダイホルダの前記流路の前記一方向における中点よりも前記シリンダ側に位置する、
請求項2~4のいずれか1項に記載の押出装置。
【請求項6】
ストランドの原料が流れる流路を有する一方向に延びた筒状のシリンダの一端側に配置され、前記一方向に延びた回転軸を中心に回転するスクリュによって、前記シリンダから押し出された前記原料が流入する流入口、前記原料をストランドとして吐出する吐出口、及び、前記流入口から前記吐出口まで前記原料が流れる流路を有するストランドダイであって、
前記一方向に直交する前記流路の断面積を流路断面積とすると、
前記ストランドダイの前記流路における前記スクリュの先端よりも前記吐出口側の前記流路断面積は、前記流入口における前記流路断面積よりも小さい、
ストランドダイ。
【請求項7】
前記流入口を有するダイホルダと、
前記ダイホルダよりも前記吐出口側に配置されたダイヘッドと、
前記ダイヘッドよりも前記吐出口側に配置され、前記吐出口を有するダイと、
を含み、
前記ダイの前記流路断面積は、前記ダイヘッドの前記流路断面積以下であり、
前記ダイヘッドの前記流路断面積は、前記ダイホルダの前記流路断面積以下である、
請求項6に記載のストランドダイ。
【請求項8】
前記吐出口は、前記一方向に直交する水平方向に複数並び、
前記ダイヘッドの前記流路における前記水平方向の幅は、前記吐出口側ほど大きく、
前記ダイヘッドの前記流路における鉛直方向の幅は、前記吐出口側ほど小さく、
前記ダイヘッドの前記流路断面積は、前記一方向において一定である、
請求項7に記載のストランドダイ。
【請求項9】
前記ダイホルダの前記流路における前記スクリュの先端よりも前記吐出口側の前記流路断面積は、前記吐出口側ほど小さい、
請求項7または8に記載のストランドダイ。
【請求項10】
前記スクリュの先端は、前記ダイホルダの前記流路の前記一方向における中点よりも前記シリンダ側に位置する、
請求項7~9のいずれか1項に記載のストランドダイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出装置及びストランドダイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶融樹脂をストランドとして押し出すストランドダイを備えた押出装置が記載されている。特許文献1の押出装置では、樹脂の流路が吐出口に向かって拡径する逆テーパ状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出装置の先端に装着するストランドダイは、異物を濾過するために、目の細かいメッシュを含むブレーカープレートを装着する場合がある。このような場合には、濾過面積を確保するために、ブレーカープレートの面積を広くする。その結果、樹脂の流路は、吐出口に向かって拡径する部分を有する。
【0005】
一般的に、流路が拡径すると、流速(せん断速度)が低下する。非ニュートン性が強い樹脂は、せん断速度が低い場合に流動性が極端に低下し、壁面に滞留しがちである。そうすると、ヒータからの熱量(熱エネルギー)が増加し、分子量低下などの熱劣化を招き、ストランドの品質が低下する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態にかかる押出装置は、ストランドの原料が流れる流路を有する一方向に延びた筒状のシリンダと、前記シリンダの一端側に配置され、前記シリンダから押し出された前記原料が流入する流入口、前記原料をストランドとして吐出する吐出口、及び、前記流入口から前記吐出口まで前記原料が流れる流路を有するストランドダイと、前記一方向に延びた回転軸を中心に回転することにより、前記原料を吐出口側に押し出すスクリュと、を備え、前記一方向に直交する前記流路の断面積を流路断面積とすると、前記ストランドダイの前記流路における前記スクリュの先端よりも前記吐出口側の前記流路断面積は、前記シリンダの前記流路における前記流路断面積よりも小さい。
【0008】
一実施形態にかかるストランドダイは、ストランドの原料が流れる流路を有する一方向に延びた筒状のシリンダの一端側に配置され、前記一方向に延びた回転軸を中心に回転するスクリュによって、前記シリンダから押し出された前記原料が流入する流入口、前記原料をストランドとして吐出する吐出口、及び、前記流入口から前記吐出口まで前記原料が流れる流路を有するストランドダイであって、前記一方向に直交する前記流路の断面積を流路断面積とすると、前記ストランドダイの前記流路における前記スクリュの先端よりも前記吐出口側の前記流路断面積は、前記流入口における前記流路断面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施形態によれば、ストランドの品質を向上させることができる押出装置及びストランドダイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る押出装置の構成を例示した側面図である。
【
図2】実施形態1に係る二軸押出装置のシリンダを例示した断面図である。
【
図3】実施形態1に係るシリンダの流路断面積を例示した図である。
【
図4】実施形態1に係るストランドダイを例示した斜視図である。
【
図5】実施形態1に係るストランドダイを例示した一部断面斜視図である。
【
図6】実施形態1に係るストランドダイを例示した断面図であり、
図4のVI-VIの断面を示す。
【
図7】実施形態1に係るストランドダイを例示した断面図であり、
図4のVII-VIIの断面を示す。
【
図8】比較例に係るストランドダイを例示した一部断面斜視図である。
【
図9】比較例に係るストランドダイを例示した断面図である。
【
図10】比較例に係るストランドダイを例示した断面図である。
【
図11】比較例に係るストランドダイの流路におけるせん断速度を例示した図である。
【
図12】実施形態1に係るストランドダイの流路におけるせん断速度を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
(実施形態1)
実施形態1に係る押出装置を説明する。
図1は、実施形態1に係る押出装置の構成を例示した側面図である。
図1の一部は、断面が示されている。
図1に示すように、押出装置1は、駆動部10、減速機11、フィーダ12、液添ポンプ13、真空ポンプ14、ヒータ15、シリンダ20、ベント孔23、スクリュ30、ストランドダイ40を備えている。また、押出装置1は、シリンダ20及びストランドダイ40の温度及び圧力を測定する温度計及び圧力計を所定の位置に備えている。押出装置1は、さらに、ストランドバス50、ストランドカッタ51を備えてもよい。押出装置1は、樹脂等が溶融した原料60をストランドダイ40から押し出してストランド61を形成する。形成されたストランド61は、ストランドバス50で冷却させる。その後、ストランド61は、ストランドカッタ51によってカットされ、ペレット62となる。
【0013】
ここで、押出装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。例えば、シリンダ20が延びる一方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する2方向を、Y軸方向及びZ軸方向とする。例えば、Z軸方向は、鉛直方向であり、XY平面は、水平面である。また、+Z軸方向は、上方である。シリンダ20の+X軸方向側の端部を一端と呼び、シリンダ20の-X軸方向側の端部を他端と呼ぶ。押出装置1において溶融した原料60が押し出される方向を+X軸方向とする。以下で、各構成を説明する。
【0014】
<駆動部、減速機>
駆動部10は、シリンダ20の他端側、すなわち、シリンダ20の-X軸方向側に配置されている。駆動部10は、スクリュ30を回転させる。押出装置1が二軸押出装置の場合には、駆動部10は、スクリュ31及び32を回転させる。なお、押出装置1は、二軸押出装置に限らず、多軸押出装置でもよいし、1軸押出装置でもよい。また、スクリュ31及び32を総称してスクリュ30と呼ぶ。
【0015】
駆動部10は、例えば、モータである。減速機11は、駆動部10とスクリュ30との間に配置されている。減速機11は、駆動部10の回転を調整してスクリュ30に伝達させる。よって、スクリュ30は、減速機11で調整された駆動部10の動力源によって回転する。
【0016】
<フィーダ>
フィーダ12は、シリンダ20の-X軸方向側の上方に配置されている。フィーダ12は、例えば、ペレット62の原料60をシリンダ20の内部に投入する。ペレット62の原料60は、例えば、樹脂等である。なお、原料60は、樹脂単体に限らず、ガラスファイバー等の繊維を含んだ樹脂でもよいし、色素を含んだ樹脂でもよい。シリンダ20の内部の原料60が流れる通路を流路26と呼ぶ。フィーダ12から流路26に供給された原料60は、回転するスクリュ30の根元部から反対側の先端に向かう方向、すなわち、+X軸方向に押し出される。原料60は、シリンダ20の内部において、シリンダ20に取付けられたヒータ15からの熱とスクリュ30の回転に伴う作用により溶融し、溶融した原料60に変化する。溶融した原料60は、シリンダ20の+X軸方向側の開口部を通って、ストランドダイ40に送られる。
【0017】
<液添ポンプ、真空ポンプ、ヒータ>
液添ポンプ13は、原料60に添加物を添加する。真空ポンプ14は、シリンダ20の内部の流路を所定の圧力に調整する。ヒータ15は、原料60を溶融させるように加熱する。
【0018】
<シリンダ>
シリンダ20は、X軸方向に延びた筒状の部材である。シリンダ20は、内部にストランドの原料60が流れる流路26を有している。シリンダ20の流路26には、スクリュ30が収容されている。押出装置1が二軸押出装置の場合には、シリンダ20は、2つのシリンダ21及びシリンダ22を含む。2つのシリンダ21及びシリンダ22は、側面が部分的に繋がった形状である。
【0019】
図2は、実施形態1に係る二軸押出装置のシリンダ20を例示した断面図である。
図2には、X軸方向から見たスクリュ31及びスクリュ32と、シリンダ20から外した1つのスクリュ30を示している。
図1及び
図2に示すように、押出装置1が二軸押出装置の場合には、シリンダ20は、X軸方向に延びた2つのシリンダ21及びシリンダ22を含んでいる。シリンダ21及びシリンダ22は、Y軸方向に並ぶように配置され、対向した側面を部分的に取り除いて合体させている。シリンダ20のX軸方向に直交する断面は、眼鏡状であり、具体的には、横に倒した「8」字状である。ただし、シリンダ21及びシリンダ22の対向した側面は取り除かれている。よって、シリンダ21の流路26とシリンダ22の流路26とは一体化している。
【0020】
シリンダ21及びシリンダ22の内径をDとする。また、シリンダ21及びシリンダ22の中心軸をC1及びC2とする。中心軸C1と中心軸C2との距離をWとする。シリンダ21及びシリンダ22は、対向した側面を部分的に取り除いて合体させているので、距離W<内径Dとなっている。シリンダ21の側面とシリンダ22の側面とは、+Z軸方向側の交線L1(断面図では、交点P1)及び-Z軸方向側の交線L2(断面図では、交点P2)で接続する。交線L1と交線L2との間の高さをHとする。高さHは、中心軸C1と中心軸C2との間の中点におけるシリンダの高さである。
【0021】
<スクリュ>
スクリュ30は、X軸方向に延びた回転軸を中心に回転する。これにより、スクリュ30は、溶融した原料60を+X軸方向側に押し出す。スクリュ30は、シリンダ20の内部に形成された流路26に配置されている。押出装置1が二軸押出装置の場合には、2つのスクリュ31及びスクリュ32が配置されている。スクリュ31は、シリンダ21の流路26に配置されている。スクリュ32は、シリンダ22の流路26に配置されている。スクリュ32は、スクリュ31に対してY軸方向に隣接した位置で、X軸方向に延びた回転軸を中心に回転する。例えば、スクリュ32は、スクリュ31の+Y軸方向側に配置されている。
【0022】
スクリュ31の回転軸は、シリンダ21の中心軸C1に位置している。スクリュ32の回転軸は、シリンダ22の中心軸C2に位置している。スクリュ31及びスクリュ32をX軸方向から見ると、長さ及び幅を有する細長い形状である。スクリュ30の長さは、各シリンダ21及び22の内径と同じDである。スクリュ30の幅をdとする。スクリュ30の長さ方向がZ軸方向に向いている場合を縦方向の位置と呼ぶ。スクリュ30の幅方向がZ軸方向に向いている場合を横方向の位置と呼ぶ。そうすると、
図2のスクリュ31は、横方向の位置であり、スクリュ32は、縦方向の位置である。スクリュ30の長さが各シリンダ21及び22の長さDと同じなので、スクリュ31が横方向の位置の場合に、スクリュ32は、縦方向の位置をとる。すなわち、スクリュ31の回転の位相とスクリュ32の回転の位相とは、90°ずれている。また、幅d、スクリュ31及びスクリュ32の形状を、90°ずれた位相で各シリンダ21及び22の流路26で回転できるようにする。具体的には、例えば、αをD/dと定義して、スクリュ30の溝深さ比とする。その場合に、距離W及び高さHは、以下の(1)式及び(2)式を満たすようにする。
【0023】
【0024】
図3は、実施形態1に係るシリンダ20の流路断面積を例示した図である。
図3に示すように、X軸方向に直交する流路26の断面積を流路断面積Sとすると、流路断面積Sは、以下の(3)式で求められる。
【0025】
【0026】
ここで、面積S1は、中心軸C1を中心とし、交点P1から交点P2までの扇形の面積及び中心軸C2を中心とし、交点P1から交点P2までの扇形の面積の合計である。面積S2は、中心軸C1、交点P1、中心軸C2及び交点P2で囲まれた矩形の面積である。そうすると、面積S1及び面積S2は、それぞれ以下の(4)式及び(5)式である。
【0027】
【0028】
<ベント孔、圧力・温度計>
ベント孔23は、スクリュ30の回転により混練される原料60から生じた揮発性物質及び水分等をシリンダ20の外部に排出する。
【0029】
圧力・温度計は、シリンダ20、ストランドダイ40等の所定の位置に取り付けられている。圧力・温度計は、原料60、溶融した原料60、ストランド61等の圧力及び温度を測定する。圧力・温度計は、原料60の混練により発生するガス等の圧力及び温度を測定してもよい。
【0030】
<ストランドダイ>
図1に示すように、ストランドダイ40は、シリンダ20の一端側、すなわち、シリンダ20の+X軸方向側に配置されている。ストランドダイ40は、例えば、直方体状である。ストランドダイ40は、+X軸方向側の前面47及び-X軸方向側の後面48を有する。後面48は、シリンダ20の一端に接続されている。後面48には、流入口44が形成されている。前面47には、吐出口45が形成されている。よって、ストランドダイ40は、シリンダ20から押し出された溶融した原料60が流入する流入口44、溶融した原料60をストランド61として吐出する吐出口45、及び、流入口44から吐出口45まで溶融した原料60が流れる流路46を有する。
【0031】
ここで、X軸方向に直交する流路46の断面積を流路断面積S0とする。そうすると、ストランドダイ40の流路46におけるスクリュ30の先端よりも吐出口45側の流路断面積S0は、シリンダ20の流路26における流路断面積Sよりも小さい。すなわち、下記の(6)式を満たす。
【0032】
【0033】
図4は、実施形態1に係るストランドダイ40を例示した斜視図である。
図5は、実施形態1に係るストランドダイ40を例示した一部断面斜視図である。
図6は、実施形態1に係るストランドダイ40を例示した断面図であり、
図4のVI-VIの断面を示す。
図7は、実施形態1に係るストランドダイ40を例示した断面図であり、
図4のVII-VIIの断面を示す。
図4~
図7に示すように、ストランドダイ40は、ダイホルダ41、ダイヘッド42及びダイ43を含む。なお、ダイホルダ41とダイヘッド42との間に、ブレーカープレートまたはストレートリングが配置されてもよい。
【0034】
前述のように、ストランドダイ40の流路46の流路断面積S0を総称して流路断面積S0と呼ぶ。ダイホルダ41、ダイヘッド42及びダイ43における流路断面積を、それぞれ、流路断面積S41、流路断面積S42及び流路断面積S43と呼ぶ。
【0035】
ダイホルダ41は、溶融した原料60が流入する流入口44を有する。また、ダイホルダ41は、流路46の一部を有する。ダイホルダ41の流入口44は、シリンダ20の一端に接続している。よって、流入口44には、シリンダ20から押し出された溶融した原料60が流入する。流入口44から流入した原料60は、流路46を移動する。
【0036】
ダイホルダ41の流路46には、スクリュ30の先端部分が配置されてもよい。例えば、スクリュ30の先端は、ダイホルダ41の流路46のX軸方向における中点よりもシリンダ20側に位置してもよい。この場合には、流入口44の流路断面積S41は、シリンダ20の流路断面積Sと同じでもよい。また、流入口44の流路断面積S41の形状は、シリンダ20の流路断面積Sの形状と同様に、8字状でもよい。スクリュ30の先端が、ダイホルダ41の流路46に位置することにより、溶融した原料60の流速の低下を抑制することができる。さらに、スクリュ30の先端がダイホルダ41の流路46の中点よりもシリンダ20側に位置することにより、原料60の流速の低下を抑制しつつ、ダイホルダ41から吐出口45まで流路断面積S0が減少する変化を緩やかにすることができる。
【0037】
ダイホルダ41の流路におけるスクリュ30の先端よりも吐出口45側の流路断面積S41は、吐出口25側ほど(+X軸方向側ほど)小さいことが好ましい。すなわち、流路断面積S41は、吐出口45側に向かって徐々に小さくなることが好ましい。これにより、流路46の壁面におけるせん断速度の低下を抑制することができる。なお、ダイホルダ41において、流路断面積S41は、+X軸方向側ほど小さい部分があってもよいし、変化しない部分があってもよい。つまり、ダイホルダ41の流路46におけるX軸上の位置X1の流路断面積A1と、位置X1よりも+X軸方向側の位置X2の流路断面積A2とは、A1<A2の部分があってもよいし、A1=A2の部分があってもよい。しかしながら、A1>A2となる部分はない。
【0038】
ダイホルダ41において、流路46の断面の形状は、吐出口45側に向かって、8字状から楕円状に徐々に変化してもよい。
【0039】
ダイヘッド42は、ダイホルダ41よりも吐出口35側に配置されている。ダイヘッド42は、流路46の一部を有する。溶融した原料60は、流路46を+X軸方向に移動する。ダイヘッド42の流路46における水平方向の幅は、吐出口45側(+X軸方向側)ほど大きい。すなわち、ダイヘッド42の流路46における水平方向の幅は、+X軸方向側に向かって徐々に拡がっている。なお、ダイホルダ41とダイヘッド42との接続点において、ダイヘッド42の流路46における水平方向の幅は、ダイホルダ41の流路46における水平方向の幅と同じである。
【0040】
一方、ダイヘッド42の流路46における鉛直方向の幅は、吐出口45側(+X軸方向側ほど小さい。すなわち、ダイヘッド42の流路46における鉛直方向の幅は、+X軸方向側に向かって細くなっている。なお、ダイホルダ41とダイヘッド42との接続点において、ダイヘッド42の流路46における鉛直方向の幅は、ダイホルダ41の流路46における鉛直方向の幅と同じである。
【0041】
ダイヘッド42の流路断面積S42は、X軸方向において一定であることが好ましい。ダイヘッド42の流路46は、水平方向において拡がり、鉛直方向において細くなっているが、流路断面積S42が一定であると、流路46の壁面において、せん断速度の低下を抑制することができる。ダイヘッド42の流路断面積S42は、ダイホルダ41の流路断面積S41以下である。具体的には、ダイホルダ41とダイヘッド42との接続点において、ダイヘッド42の流路断面積S42は、ダイホルダ41の流路断面積と同じである。接続点よりも+X軸方向側において、ダイヘッド42の流路断面積S42は、ダイホルダ41の流路断面積よりも小さくてもよい。
【0042】
ダイ43は、ダイヘッド42よりも吐出口45側に配置されている。ダイ43は、溶融した原料60をストランド61として吐出する吐出口45を有する。ダイ43は、流路46の一部を有する。吐出口45は、前面47において、水平方向に複数並んでいる。ダイ43の流路断面積S43は、ダイヘッド42の流路断面積S42以下である。具体的には、ダイヘッド42とダイ43との接続点において、ダイ43の流路断面積S43は、ダイヘッド42の流路断面積と同じである。しかしながら、接続点よりも+X軸方向側において、ダイ43の流路断面積S43は、ダイヘッド42の流路断面積S42よりも小さくてもよい。
【0043】
<比較例>
次に、本実施形態の効果を説明する前に、比較例を説明する。その後、比較例と対比させて、本実施形態の効果を説明する。
図8は、比較例に係るストランドダイ140を例示した一部断面斜視図である。
図9は、比較例に係るストランドダイ140を例示した断面図である。
図10は、比較例に係るストランドダイ140を例示した断面図である。
図8~
図10に示すように、ストランドダイ140は、ダイホルダ141、ダイヘッド142及びダイ143を含む。ダイホルダ141とダイヘッド142との間に、ブレーカープレート149が配置されてもよい。
【0044】
比較例のストランドダイ140における流入口144、吐出口145、流路146、前面147及び後面148は、実施形態1のストランドダイ40における流入口44、吐出口45、流路46、前面47及び後面48に対応する。
【0045】
比較例においては、ストランドダイ140の流路146におけるスクリュ30の先端よりも吐出口145側の流路断面積S140は、シリンダ20の流路における流路断面積Sよりも大きい部分がある。例えば、ダイホルダ141の流路146における一部の流路断面積S141は、シリンダ20の流路断面積Sよりも大きい。また、ダイヘッド142の流路146における一部の流路断面積S142は、シリンダ20の流路断面積Sよりも大きい。
【0046】
具体的には、例えば、溶融した原料60に混入した異物を濾過するために、ダイホルダ141とダイヘッド142との間にブレーカープレート149が配置されている。ブレーカープレート149は、目の細かいメッシュを含んでいる。比較例では、ブレーカープレート149による濾過面積を確保するために、ブレーカープレート149、ブレーカープレート149の前後における流路断面積S141及びS142を大きくしている。したがって、ストランドダイ140の流路断面積S140は、シリンダ20の流路断面積Sよりも大きい部分を有している。
【0047】
ストランドダイ140の流路断面積S140がシリンダ20の流路断面積Sよりも大きい場合には、ストランドダイ140の流路146における流速(せん断速度)が低下する。これにより、原料60の流動性が極端に低下し、流路146の壁面に滞留するようになる。そうすると、原料60の熱劣化を招き、ストランド61の品質低下が生じる。
【0048】
次に、本実施形態の効果を説明する。一般的に、シリンダ20とスクリュ30で構成される押出装置1内では、スクリュ30が回転することで、樹脂等の溶融した原料60を軸方向へ搬送させる。シリンダ20内では、スクリュ30の回転から生じる高いせん断速度によって、原料60が滞留することはほとんど無く、樹脂の熱劣化は比較的生じにくい。
【0049】
一方で、ストランドダイ40は、シリンダ20及びスクリュ30の先端に装着される。このため、ストランドダイ40におけるスクリュ30の先端より先の部分は、スクリュ30の回転による高せん断速度の作用は生じない。よって、ストランドダイ40には、純粋に軸方向へ流動する圧力流のみが生じる。そのため、比較例のように、ストランドダイ140の流路断面積S140が拡がるほど、せん断速度は低下する。低い流動性を示す樹脂流体は、流路146の壁面に滞留しやすく、ストランドダイ140に装着されているヒータによる熱エネルギーを吸収し、熱劣化(分子量低下、変色などによる品質低下)を引き起こす。
【0050】
これに対して、本実施形態では、ストランドダイ40の流路46におけるスクリュ30の先端よりも吐出口45側の流路断面積S0は、シリンダ20の流路26における流路断面積Sよりも小さい。すなわち、スクリュ30の先端よりも吐出口45側の流路断面積S0は、どの位置においても、流路断面積Sよりも小さい。よって、流路46における原料60の流速(せん断速度)が低下しない。このようにして、本実施形態では、ストランドダイ40の流路46におけるせん断速度を高めることができる。したがって、原料60が流路46の壁面に停滞することを抑制することができる。これにより、原料60の熱劣化を抑制し、ストランド61の品質を向上させることができる。なお、この場合には、ブレーカープレートの濾過面積が狭くなるため圧力損失が大きくなる場合がある。しかしながら、原料60の異物混入管理などを十分に行うことで、ストレートリングを採用し、メッシュを含むブレーカープレートを用いないことも選択肢として有している。
【0051】
【0052】
表1は、比較例及び実施形態1に係るストランドダイ140及び40を用いてストランド61を形成した場合の樹脂の黄変(Yellow Index、YI)を例示した表である。例えば、シリンダ20の径D=69[mm]の二軸押出装置の一端に、比較例及び実施形態1に示したストランドダイ140及び40を装着し、原料60として、ポリアミド6を300[kg/h]で押し出したテストを実施した。吐出されたストランド61の温度は、約280[℃]、ストランドダイ140及び40のヒータ15による温度設定を280[℃]とした。また、敢えて樹脂の酸化劣化を促進させるために、二軸押出装置へ樹脂の原料60を供給すると同時に酸素を吹き込み、二軸押出装置内の酸素濃度を高める条件とした。
【0053】
表1に示すように、比較例のストランドダイ140を用いて、ストランド61を形成した場合において、運転時間が60、120、180、240及び300[min]の時には、YIは、それぞれ、2.6、3.3、6.1、8.5及び12.6である。比較例のストランドダイ140では、押出を開始した当初は、透明かつ異物の混入も見られない樹脂が吐出される。しかしながら、時間の経過とともに黄変が確認される。YIを分析したところ、3時間を経た後に数値が上昇し、その後、徐々に増加する。このように、比較例の場合には、運転時間が長くなるほど、YIが大きくなる。実験終了後にストランドダイ140を分解したところ、流路146の広い壁面で黄褐色に変色した樹脂の堆積が確認された。
【0054】
一方、実施形態1のストランドダイ40を用いて、ストランド61を形成した場合において、運転時間が60、120、180、240及び300[min]の時には、YIは、それぞれ、2.2、3.4、3.2、4.0及び3.9である。実施形態1のストランドダイ40では実験開始から終了までの5時間で黄変した樹脂の吐出は認められない。このように、実施形態1の場合には、運転時間が長くなっても、YIはほとんど変化しない。実験終了後にストランドダイ40を分解して流路46の確認を行ったところ、黄変した樹脂の堆積は確認されず、ストランドダイ40内でもスムーズな樹脂流動がなされたことが確認できた。
【0055】
次に、比較例及び実施形態1に係るストランドダイ140及び40を用いた流動解析の結果を説明する。
図11は、比較例に係るストランドダイ140の流路146におけるせん断速度を例示した図である。
図12は、実施形態1に係るストランドダイ40の流路46におけるせん断速度を例示した図である。
図11及び
図12において、黒くなるほど、せん断速度が小さいことを示す。
【0056】
図11に示すように、比較例のストランドダイ140を用いて、300[kg/h]の押出条件で、流路146内の3次元流動解析を行った結果では、ブレーカープレート149での濾過面積を稼ぐために流路が拡がっていることから、流路146の壁面のせん断速度が1[1/sec]以下となる部分が見られる。これは、ブレーカープレート149をストレートリングへ変更した解析を行っても同様の壁面せん断速度を示しており、結果的に拡大した流路46の部位で樹脂が滞留しやすいことを示唆している。
【0057】
一方、
図12に示すように、実施形態1のストランドダイを用いて、比較例と同様の押出条件で、流路46内の3次元流動解析を行った結果では、流路46の壁面のせん断速度が全領域で、5[1/sec]以上を確保する。そのため、壁面での原料60の滞留を抑制することができ、過大な熱量の付与による樹脂劣化を抑制することができる。
【0058】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 押出装置
10 駆動部
11 減速機
12 フィーダ
13 液添ポンプ
14 真空ポンプ
15 ヒータ
20、21、22 シリンダ
23 ベント孔
26 流路
30、31、32 スクリュ
40 ストランドダイ
41 ダイホルダ
42 ダイヘッド
43 ダイ
44 流入口
45 吐出口
46 流路
47 前面
48 後面
50 ストランドバス
51 ストランドカッタ
60 原料
61 ストランド
62 ペレット
140 ストランドダイ
141 ダイホルダ
142 ダイヘッド
143 ダイ
144 流入口
145 吐出口
146 流路
147 前面
148 後面
149 ブレーカープレート