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特開2022-179943電気化学セル、セル運転システム及びセル運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179943
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電気化学セル、セル運転システム及びセル運転方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/03 20210101AFI20221129BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20221129BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20221129BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20221129BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20221129BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20221129BHJP
   C25B 9/05 20210101ALI20221129BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20221129BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C25B11/03
C25B9/65
C25B9/23
C25B15/023
C25B1/02
C25B9/00 Z
C25B9/05
H01M8/0247
H01M4/86 M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086769
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】菅井 智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼杉 將司
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K011AA23
4K011AA30
4K011BA07
4K011DA01
4K011DA11
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC09
4K021CA03
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA13
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC03
4K021EA05
4K021EA06
5H018AS02
5H126AA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】滞留水に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率の低下が抑制された、電気化学セルを提供する。
【解決手段】電気化学セル24のアノード給電体62は、供給流路70に向かって断面積が大きくなる第1空孔80が形成された内側部74と、内側部74より外側に位置し、電解質膜60に向かって断面積が大きくなる第2空孔82が形成された外側部76と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面側に積層されるアノード給電体と、
前記電解質膜の他方の面側に積層されるカソード給電体と、
前記アノード給電体における前記電解質膜側とは逆の面側に配置され、前記アノード給電体に供給するための流体が流れる供給流路と、
を備える電気化学セルであって、
前記アノード給電体は、前記供給流路に向かって断面積が大きくなる第1空孔が形成された内側部と、前記内側部より外側に位置し、前記電解質膜に向かって断面積が大きくなる第2空孔が形成された外側部と、を有する、電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルであって、
前記電解質膜と前記アノード給電体との間に介在し、前記第1空孔と連通する第1連通孔と、前記第2空孔と連通する第2連通孔とが形成されるアノード触媒層を備え、
前記第1連通孔は、前記供給流路に向かって連続して断面積が大きくなり、
前記第2連通孔は、前記電解質膜に向かって連続して断面積が大きくなる、電気化学セル。
【請求項3】
請求項2に記載の電気化学セルであって、
前記第1空孔の内壁と前記第1連通孔の内壁とは連続し、前記第2空孔の内壁と前記第2連通孔の内壁とは連続する、電気化学セル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学セルと、
前記電気化学セルに前記流体を供給する流体供給装置と、
前記アノード給電体と前記カソード給電体との間に電圧を印加する電源装置と、
前記アノード給電体と前記カソード給電体との間の電気状態を検出するセンサと、
前記電気状態を示す値が所定の閾値を超える場合に、前記電圧の印加を停止するように前記電源装置を制御し、かつ、前記供給流路を流れる前記流体の流量が増加するように前記流体供給装置を制御する制御装置と、
を備えるセル運転システム。
【請求項5】
請求項4に記載のセル運転システムであって、
電気化学反応により発生した発生流体が流れる排出流路上に設けられ、前記発生流体の圧力を調整する圧力調整弁を備え、
前記制御装置は、前記値が前記閾値を超える場合に、前記圧力調整弁の開度が小さくなるように前記圧力調整弁を制御した後、前記電源装置及び前記流体供給装置を制御する、セル運転システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のセル運転システムであって、
前記流体は、水素ガスである、セル運転システム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学セルを運転するセル運転方法であって、
前記アノード給電体と前記カソード給電体との間に電圧を印加し、前記アノード給電体と前記カソード給電体との間の電気状態を示す値が所定の閾値を超える場合に、前記電圧の印加を停止させ、かつ、前記供給流路を流れる流体の流量を増加させる、セル運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載のセル運転方法であって、
前記値が前記閾値を超える場合に、電気化学反応により発生した発生流体が流れる排出流路上に設けられた圧力調整弁の開度を小さくした後、前記電圧の印加を停止させ、かつ、前記供給流路を流れる流体の流量を増加させる、セル運転方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のセル運転方法であって、
前記流体は、水素ガスである、セル運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素イオン伝導性を有する電解質膜の両面に触媒層及び給電体が配置された構造を含む電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、燃料電池、水電解装置、或いは、電気化学式水素昇圧装置等に用いられる。電気化学式水素昇圧装置では、電気化学セルの数が一つでも燃料電池電気自動車等に必要な高圧水素を発生し得るという利点がある。また、電気化学式水素昇圧装置では、機械式水素圧縮機に比べて小型で作動音が小さいという利点がある。
【0003】
電気化学式水素昇圧装置では、電解質膜に水素の差圧が作用する。このため、電解質膜に隣接して電解質膜を支持する支持部材が電気化学式水素昇圧装置に備えられる場合がある。例えば、特許文献1には、通気孔を有する複数の金属シートを積層してアノード拡散層(支持部材)を構成する電気化学式水素昇圧装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-109221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素イオン伝導性を有する電解質膜では、水分の量が低下すると電気抵抗が増加する。そのため、電気化学セルに供給する水素に水蒸気を含ませる場合がある。
【0006】
しかし、電気化学セルの運転条件に応じて、電解質膜に水素を通じて供給される水分量が、電解質膜で消費される水分量よりも多くなる場合がある。この場合、差圧により電解質膜のカソード電極側からアノード電極側に戻る水分がアノードの表面等で凝縮した水として滞留する傾向がある。
【0007】
アノードの表面等で水分が滞留すると、水素等の処理対象と触媒層との反応面積が減少することで、水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することが問題となる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電解質膜と、前記電解質膜の一方の面側に積層されるアノード給電体と、前記電解質膜の他方の面側に積層されるカソード給電体と、前記アノード給電体における前記電解質膜側とは逆の面側に配置され、前記アノード給電体に供給するための流体が流れる供給流路と、を備える電気化学セルであって、前記アノード給電体は、前記供給流路に向かって断面積が大きくなる第1空孔が形成された内側部と、前記内側部より外側に位置し、前記電解質膜に向かって断面積が大きくなる第2空孔が形成された外側部と、を有する。
【0010】
本発明の別の一態様は、上記の電気化学セルと、前記電気化学セルに前記流体を供給する流体供給装置と、前記アノード給電体と前記カソード給電体との間に電圧を印加する電源装置と、前記アノード給電体と前記カソード給電体との間の電気状態を検出するセンサと、前記電気状態を示す値が所定の閾値を超える場合に、前記電圧の印加を停止するように前記電源装置を制御し、かつ、前記供給流路を流れる前記流体の流量が増加するように前記流体供給装置を制御する制御装置と、を備えるセル運転システムである。
【0011】
本発明の別の一態様は、上記の電気化学セルを運転するセル運転方法であって、前記アノード給電体と前記カソード給電体との間に電圧を印加し、前記アノード給電体と前記カソード給電体との間の電気状態を示す値が所定の閾値を超える場合に、前記電圧の印加を停止させ、かつ、前記供給流路を流れる流体の流量を増加させる。
【発明の効果】
【0012】
上記の電気化学セル、セル運転システム及びセル運転方法では、第1空孔に発生する負圧によって、電気化学セルのアノード側に滞留する滞留水が供給流路に吸い出される。この結果、上記の電気化学セル、セル運転システム及びセル運転方法は、滞留水に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
また、上記の電気化学セル、セル運転システム及びセル運転方法では、第2空孔に発生する負圧によって、電気化学セルの外側部から内側部に滞留水が流れ込み、層間等における面内で水分が均一化される。この結果、上記の電気化学セル、セル運転システム及びセル運転方法は、電解質膜の乾燥に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のセル運転システムを示す模式図である。
図2図2は、セル装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、電気化学セルの構成を示す断面図である。
図4図4は、電気化学セルの積層方向から見た積層方向視図である。
図5図5は、電気化学セルでの流体の様子を示す図である。
図6図6は、制御処理の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、滞留水を除去する場合の電気化学セルでの流体の様子を示す図である。
図8図8は、滞留水を除去する場合の電気化学セルで発生流体の圧力が高められる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、実施形態のセル運転システム10を示す模式図である。セル運転システム10は、流体供給装置12と、セル装置14と、電源装置16と、制御装置18とを有する。
【0015】
流体供給装置12は、セル装置14に流体を供給する装置である。流体は、本実施形態の場合、水素(水素ガス)である。水素ガスには水蒸気が含まれる。流体供給装置12は、流体供給源20と、導入路22とを備える。導入路22は、流体供給源20から出力される流体をセル装置14に導入する。
【0016】
セル装置14は、本実施形態の場合、電力を用いて、水素の酸化還元反応により水素を圧縮する電気化学式水素昇圧装置である。セル装置14は、電気化学セル24と、導入ポート26と、第1排出ポート28と、第2排出ポート30とを備える。電気化学セル24は、電気化学反応が行い得るように構成される。電気化学セル24の構成は後述する。導入ポート26には、流体供給装置12の導入路22が接続される。導入路22を流れる流体は、導入ポート26からセル装置14に流入する。
【0017】
第1排出ポート28には、導入ポート26から流入する流体のうち、電気化学セル24で消費されなかった流体が排出される。第1排出ポート28には、返還路32を介して、流体供給装置12が接続されてもよい。これにより、流体供給装置12は、第1排出ポート28から返還路32を介して流入する流体を、再度、セル装置14に供給することができる。
【0018】
第2排出ポート30には、排出流路34が接続される。排出流路34には、電気化学セル24における電気化学反応により発生する発生流体が流れる。なお、発生流体は、本実施形態の場合、セル装置14に供給される水素ガスよりも高圧の高圧水素ガスである。
【0019】
排出流路34には、排出流路34における発生流体の圧力を調整する圧力調整弁36が設けられる。圧力調整弁36の開度は、制御装置18の制御により調整される。なお、圧力調整弁36は、一次側(弁入力側)の圧力が一定となるように発生流体の圧力を調整する背圧弁であってもよい。
【0020】
電源装置16は、セル装置14の電気化学セル24に電圧を印加する。セル装置14が複数の電気化学セル24を備える場合、電源装置16は、電気化学セル24の各々に電圧を印加する。
【0021】
制御装置18は、セル装置14に備えられる1又は複数の電気化学セル24で電気化学反応が行われるように、流体供給装置12、電源装置16及び圧力調整弁36を適宜制御する。
【0022】
図2は、セル装置14の構成を示す断面図である。なお、図2は、セル装置14が複数の電気化学セル24を備える場合の例である。セル装置14は、セル積層体38を備える。セル積層体38は、複数の電気化学セル24を備える。この複数の電気化学セル24は、積層されている。
【0023】
セル積層体38の積層方向の一端には第1端板40が配置され、セル積層体38の積層方向の他端には第2端板42が配置される。セル積層体38は、第1端板40と第2端板42とにより挟持され、所定の締め付け荷重がセル積層体38に付与される。
【0024】
第1端板40及び第2端板42は、セル積層体38より大きな平面形状に形成される。第1端板40の外周部と第2端板42との外周部とを架け渡すように、側壁44が設けられる。側壁44は、セル積層体38の外周部を囲む。第1端板40、第2端板42及び側壁44によって、セル積層体38が配置された内部空間44aが気密に仕切られる。側壁44には、導入ポート26が設けられる。導入ポート26が設けられる側壁44の部位とは反対側の側壁44の部位に、第1排出ポート28が設けられる。
【0025】
内部空間44aには、導入ポート26に連通する分配流路46が設けられる。分配流路46は、矢印に示すように、導入ポート26から導入された水素ガスを各電気化学セル24のアノード側に導く。
【0026】
また、内部空間44aには、第1排出ポート28に連通する集合流路48が設けられる。集合流路48は、矢印に示すように、各電気化学セル24で消費されなかった余分な水素ガスを第1排出ポート28に導く。
【0027】
セル積層体38の中央部には、複数の電気化学セル24の積層方向に貫通した連通孔50が形成されている。この連通孔50は、複数の電気化学セル24を貫通する。連通孔50は、各電気化学セル24のカソード側に連通する。連通孔50は、第2排出ポート30に接続されており、各電気化学セル24のカソード側と第2排出ポート30とを連通させる。
【0028】
図3は、電気化学セル24の構成を示す断面図である。電気化学セル24は、電気化学セル24の厚さ方向(積層方向)の一端側(アノード側)に配置される第1セパレータ52と、他端側(カソード側)に配置される第2セパレータ54とに挟持される。第1セパレータ52及び第2セパレータ54は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、或いは、めっき処理鋼板等で構成される。
【0029】
電気化学セル24は、電解質膜60と、アノード給電体62と、アノード触媒層64と、カソード給電体66と、カソード触媒層68とを備える。
【0030】
電解質膜60は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。電解質膜60は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。具体例として、電解質膜60は、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜であってもよい。電解質膜60は、繊維状の骨格を含む保護シート(図示せず)をアノード側に有してもよい。
【0031】
アノード給電体62は、電解質膜60の一方の面側に積層される。アノード給電体62は、具体的には、アノード触媒層64における電解質膜60側とは逆側の面上に積層される。アノード給電体62は、金属やカーボン等の導電性を有するメッシュ状のシートを複数重ね合わせて形成されてもよい。また、アノード給電体62は、金属やカーボン等の導電性を有する板状の部材で形成されてもよい。
【0032】
本実施形態の場合、アノード給電体62は、給電層62Aと、支持層62Bとの2層構造である。給電層62Aは、電解質膜60側に配置される。給電層62Aは、導電性を有するメッシュ状のシートを複数重ね合わせて形成される。支持層62Bは、電解質膜60側の給電層62Aの面とは逆側の給電層62Aの面上に配置される。支持層62Bは、導電性を有する板状の部材で形成される。
【0033】
アノード触媒層64は、電解質膜60とアノード給電体62との間に配置される。アノード触媒層64は、電解質膜60の一方の面に接合される。アノード触媒層64は、例えば、白金等の触媒粒子を担持したカーボン多孔質体で構成される。
【0034】
カソード給電体66は、電解質膜60の他方の面側に積層される。カソード給電体66は、具体的には、カソード触媒層68における電解質膜60側とは逆側の面上に積層される。カソード給電体66は、金属やカーボン等の導電性を有するメッシュ状のシートを複数重ね合わせて形成されてもよい。また、カソード給電体66は、金属やカーボン等の導電性を有する板状の部材で形成されてもよい。図3では、導電性を有するメッシュ状のシートを複数重ね合わせて形成されるカソード給電体66が示される。
【0035】
カソード触媒層68は、電解質膜60とカソード給電体66との間に配置される。カソード触媒層68は、電解質膜60の他方の面に接合される。カソード触媒層68は、例えば、白金等の触媒粒子を担持したカーボン多孔質体で構成される。
【0036】
電気化学セル24には、アノード給電体62の支持層62Bと第1セパレータ52との間に、供給流路70が備えられる。供給流路70は、分配流路46(図2)及び集合流路48(図2)と連通する。供給流路70は、第1セパレータ52に向く支持層62Bの面、又は、支持層62Bに向く第1セパレータ52の面に形成される溝であってもよい。なお、支持層62Bには第1セパレータ52と接触する接触部位がある。この接触部位を介して電気化学セル24が第1セパレータ52に支持される。
【0037】
電気化学セル24には、カソード給電体66と第2セパレータ54との間に、排出流路部72が備えられる。排出流路部72は、連通孔50と連通する。排出流路部72は、第2セパレータ54に向くカソード給電体66の面、又は、カソード給電体66に向く第2セパレータ54の面に形成される溝であってもよい。なお、カソード給電体66には第2セパレータ54と接触する接触部位がある。
【0038】
図4は、電気化学セル24の積層方向から見た積層方向視図である。電気化学セル24は、内側部74と、外側部76とを有する。外側部76は、内側部74より外側に位置する。
【0039】
内側部74には、連通孔50が形成される。内側部74のアノード給電体62には、図3に示すように、第1空孔80が形成される。第1空孔80は、供給流路70に向かって断面積が大きくなる。一方、外側部76のアノード給電体62には、図3に示すように、第2空孔82が形成される。第2空孔82は、電解質膜60に向かって断面積が大きくなる。第1空孔80及び第2空孔82は、1つの部材を貫通するように形成されもよい。また、第1空孔80及び第2空孔82は、孔の大きさが異なる複数のシートを重ね合わせて形成されてもよい。
【0040】
内側部74のアノード触媒層64には、図3に示すように、第1空孔80と連通する第1連通孔84が形成される。第1連通孔84は、第1空孔80と連続してアノード触媒層64に形成されてもよい。また、第1連通孔84は、第1空孔80とは非連続でアノード触媒層64に形成されてもよい。第1連通孔84が第1空孔80と連続してアノード触媒層64に形成される場合、第1連通孔84は、供給流路70に向かって断面積が大きくなる。この場合、第1空孔80の内壁と第1連通孔84の内壁とは連続することが好ましい。図3では、第1空孔80の内壁と第1連通孔84の内壁とが連続する場合が示される。
【0041】
一方、外側部76のアノード触媒層64には、図3に示すように、第2空孔82と連通する第2連通孔86が形成される。第2連通孔86は、第2空孔82と連続してアノード触媒層64に形成されてもよい。また、第2連通孔86は、第2空孔82とは非連続でアノード触媒層64に形成されてもよい。第2連通孔86が第2空孔82と連続してアノード触媒層64に形成される場合、第2連通孔86は、電解質膜60に向かって断面積が大きくなる。この場合、第2空孔82の内壁と第2連通孔86の内壁とは連続することが好ましい。図3では、第2空孔82の内壁と第2連通孔86の内壁とが連続する場合が示される。
【0042】
次に、電気化学セル24を運転するセル運転方法に関して説明する。セル運転方法は、制御装置18によって実行される。制御装置18は、電気化学セル24を運転させて高圧水素ガスを発生させる。すなわち、制御装置18は、電源装置16を制御して、セル装置14のアノード給電体62とカソード給電体66との間に電圧を印加させる。また、制御装置18は、流体供給装置12を制御して、セル装置14に水素ガスを供給させる。さらに、制御装置18は、排出流路34に対する圧力調整弁36の開度を調整する。
【0043】
流体供給装置12からセル装置14に供給された水素ガスは、導入ポート26(図2)からセル装置14内部の分配流路46(図2)に流入する。分配流路46に流入した水素ガスは、電気化学セル24の供給流路70(図3)を流れる。
【0044】
図5は、電気化学セル24での流体の様子を示す図である。矢印で示すように、供給流路70を流れる水素ガスの一部は、第2空孔82及び第2連通孔86を通って、アノード触媒層64に至る。また、矢印で示すように、供給流路70を流れる水素ガスの他の一部は、第1空孔80及び第1連通孔84を通って、アノード触媒層64に至る。アノード触媒層64に至った水素ガスは、アノード触媒層64の触媒作用によりプロトン(H+イオン)に変換される。
【0045】
プロトンは、アノード給電体62とカソード給電体66との間に印加される電圧に基づいて、電解質膜60を通じてカソード触媒層68に輸送される。カソード触媒層68に輸送されたプロトンは、カソード触媒層68の触媒作用を受けて電気化学反応により高圧水素ガスに変換される。変換された高圧水素ガスは、カソード給電体66を通じて、排出流路部72に放出される。排出流路部72に放出された高圧水素ガスは、連通孔50(図2)を通じて、第2排出ポート30から排出流路34(図1)に流出する。
【0046】
水素ガスに含まれる水蒸気の一部は、電解質膜60の加湿に用いられる。電解質膜60の余剰な水分は、圧力勾配によってアノード側に戻る。アノード側に戻った水分は、電解質膜60とアノード触媒層64との層間、或いは、アノード触媒層64とアノード給電体62との層間等に滞留する傾向がある。層間等に滞留する滞留水が発生すると、水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下する。
【0047】
そこで、本実施形態の制御装置18では、滞留水を除去するための制御処理が備えられる。この制御処理は、高圧水素ガスを生成するように電気化学セル24を運転している運転時に実行される。図6は、制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0048】
ステップS1において、制御装置18は、センサ88(図1)を用いて、アノード給電体62とカソード給電体66との間の電気状態を時系列に計測する。センサ88は、アノード給電体62とカソード給電体66との間の電気状態を検出する。
【0049】
なお、セル装置14に電気化学セル24が複数備えられる場合、センサ88は、複数の電気化学セル24の各々に対して1つずつ備えられる。この場合、制御装置18は、各センサ88を用いて、各電気化学セル24のアノード給電体62とカソード給電体66との間の電気状態を計測する。
【0050】
センサ88は、アノード給電体62とカソード給電体66との間の電気状態を検出するセンサである。具体的には、電圧センサ又は電流センサが挙げられる。制御装置18が計測する電気状態は、アノード給電体62とカソード給電体66との間に印加される電圧値Vであってもよい。また、制御装置18が計測する電気状態は、アノード給電体62とカソード給電体66との間を流れる電流値Iであってもよい。本実施形態の場合、制御装置18は、アノード給電体62とカソード給電体66との間に印加される電圧値Vを計測する。なお、センサ88が電流センサであっても、制御装置18は、電流センサから出力される信号に基づいて、アノード給電体62とカソード給電体66との間に印加される電圧値Vを計測し得る。
【0051】
ステップS2において、制御装置18は、計測した電圧値Vを所定の閾値と比較する。ここで、電圧値Vが閾値以下である場合、制御装置18は、ステップS1に戻る。一方、電圧値Vが所定の閾値を超える場合、制御装置18は、ステップS3に進む。
【0052】
なお、セル装置14に備えられる電気化学セル24が複数備えられる場合、電圧値Vが閾値を超える電気化学セル24が、規定数を超えた場合に、制御装置18は、ステップS3に進む。
【0053】
ステップS3において、制御装置18は、圧力調整弁36の開度が小さくなる(圧力調整弁36の開度を絞る)ように圧力調整弁36を制御し、ステップS4に進む。圧力調整弁36の開度が小さくなることで、カソード触媒層68で発生する高圧水素ガスの圧力(アノード側に電気化学セル24を押さえ付ける力)が増加する。
【0054】
ステップS4において、制御装置18は、アノード給電体62とカソード給電体66との間に印加される電圧の印加を停止するように電源装置16を制御し、ステップS5に進む。
【0055】
ステップS5において、制御装置18は、供給流路70を流れる水素ガスの流量が増加するように流体供給装置12を制御する。例えば、制御装置18は、導入路22上に備えられる流体供給装置12の導入弁(図示せず)の開度を大きくすることで、供給流路70を流れる水素ガスの流量を増加させ得る。制御装置18は、供給流路70を流れる水素ガスの流量を増加させると、ステップS6に進む。
【0056】
ステップS6において、制御装置18は、電圧の停止時間を計時するためのタイマーのカウント値Tを「0」に設定し、ステップS7に進む。
【0057】
ステップS7において、制御装置18は、タイマーのカウント値Tを所定のカウント閾値と比較する。ここで、タイマーのカウント値Tがカウント閾値以下である場合、制御装置18は、ステップS8に進み、タイマーのカウント値Tを「1」だけインクリメントした後、ステップS7に戻る。一方、タイマーのカウント値Tがカウント閾値を超えた場合、制御装置18は、ステップS9に進む。
【0058】
ステップS9において、制御装置18は、供給流路70を流れる水素ガスの流量が減少するように流体供給装置12を制御する。例えば、制御装置18は、流体供給装置12の導入弁(図示せず)の開度を元の開度(ステップS5において導入弁の開度を大きくする直前の開度)に戻す。これにより、供給流路70を流れる水素ガスの流量が減少する。制御装置18は、供給流路70を流れる水素ガスの流量を減少させると、ステップS10に進む。
【0059】
ステップS10において、制御装置18は、圧力調整弁36の開度を元の開度(ステップS3において圧力調整弁36の開度を小さくする直前の開度)に戻し、ステップS11に進む。
【0060】
ステップS11において、制御装置18は、アノード給電体62とカソード給電体66との間に電圧を印加するように電源装置16を制御した後、制御処理を終了する。
【0061】
なお、ステップS11において、制御装置18は、アノード給電体62とカソード給電体66との間に電圧を印加するように電源装置16を制御した後、ステップS1に戻ってもよい。また、上記の制御処理の順序は変更されてもよい。例えば、ステップS3とステップS4との先後が入れ替わってもよく、ステップS4とステップS5との先後が入れ替わってもよい。或いは、ステップS9とステップS10との先後が入れ替わってもよく、ステップS10とステップS11との先後が入れ替わってもよい。
【0062】
図7は、滞留水を除去する場合の電気化学セル24での流体の様子を示す図である。白抜き矢印で示すように、上記の制御処理によって供給流路70を流れる水素ガスの流量が増加されると、アノード給電体62に形成される第1空孔80及び第2空孔82には負圧が発生する。
【0063】
アノード給電体62に形成される第1空孔80は、供給流路70に向かって断面積が大きくなる。このため、第1空孔80に負圧が発生すると、層間等に滞留する滞留水が、破線矢印で示すように、第1空孔80を通じて、供給流路70に吸い出される。この結果、滞留水に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することが抑制される。
【0064】
なお、第1連通孔84の断面積が供給流路70に向かって大きくなり、第1連通孔84の内壁が第1空孔80の内壁と連続する場合、供給流路70を流れる水素ガスの流量の増加に応じて第1連通孔84にも負圧が発生し易くなる。このため、
第1空孔80及び第1連通孔84を通じて、層間等に滞留する滞留水を供給流路70に吸い出す力が高められる。したがって、滞留水の除去効率が高められる。
【0065】
一方、アノード給電体62に形成される第2空孔82は、電解質膜60に向かって断面積が大きくなる。このため、第2空孔82に負圧が発生しても、第2空孔82を通じて供給流路70に滞留水が吸い出されることが制限される。したがって、2点鎖線矢印で示すように、層間等に滞留する滞留水が、電気化学セル24の外側部76から内側部74に流れ込み、層間等における面内で水分が均一化される。この結果、乾燥に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することが抑制される。
【0066】
なお、第2連通孔86の断面積が電解質膜60に向かって大きくなり、第2連通孔86の内壁が第2空孔82の内壁と連続する場合、層間等に滞留する滞留水が、電気化学セル24の外側部76から内側部74に流れ込み易くなる。したがって、層間等における面内の水分の均一化が高められる。
【0067】
図8は、滞留水を除去する場合の電気化学セル24で発生流体の圧力が高められる様子を示す図である。上記の制御処理では、供給流路70を流れる水素ガスの流量が増加された状態で、圧力調整弁36の開度が絞られる。このため、黒塗り潰し矢印で示すように、電気化学反応により排出流路34に放出される高圧水素ガスの圧力が高まり、電気化学セル24がアノード側に押さえ付けられる。したがって、層間等に滞留する滞留水が、第1空孔80又は第1連通孔84に押し出される。この結果、供給流路70に吸い出す水量が多くなり、滞留水の除去効率が高められる。
【0068】
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。
【0069】
例えば、セル装置14は、水を電気分解して水素(水素ガス)を発生流体として生成する水分解装置であってもよい。セル装置14が水分解装置である場合、流体供給装置12は、セル装置14に水を供給する。この場合、セル装置14に備えられる電気化学セル24におけるアノード給電体62の支持層62Bは省かれてもよい。
【0070】
セル装置14が水分解装置であっても、電気化学セル24の運転条件によって、電気化学セル24のアノード側に滞留水が滞留する場合がある。このため、セル装置14が水分解装置であっても、セル装置14が電気化学式水素昇圧装置である場合と同様に、水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することが抑制され得る。
【0071】
以上の実施形態の記載から把握し得る本発明として、第1の発明、第2の発明及び第3の発明が挙げられる。
【0072】
第1の発明は、電解質膜(60)と、電解質膜(60)の一方の面側に積層されるアノード給電体(62)と、電解質膜(60)の他方の面側に積層されるカソード給電体(66)と、アノード給電体(62)における電解質膜(60)側とは逆の面側に配置され、アノード給電体(62)に供給するための流体が流れる供給流路(70)と、備える電気化学セル(24)である。
電気化学セル(24)は、アノード給電体(62)は、供給流路(70)に向かって断面積が大きくなる第1空孔(80)が形成された内側部(74)と、内側部(74)より外側に位置し、電解質膜(60)に向かって断面積が大きくなる第2空孔(82)が形成された外側部(76)と、を有する。
【0073】
この電気化学セル(24)では、供給流路(70)を流れる流体の流量が増加した場合、第1空孔(80)及び第2空孔(82)には負圧が発生し、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水が、第1空孔(80)を通じて供給流路(70)に吸い出される。この結果、電気化学セル(24)は、滞留水に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
一方、第2空孔(82)に負圧が発生しても、第2空孔(82)及び第2連通孔(86)を通じて供給流路(70)に滞留水が吸い出されることが制限される。このため、滞留水は、電気化学セル(24)の外側部(76)から内側部(74)に流れ込む。したがって、層間等における面内で水分が均一化され、電解質膜(60)の乾燥が抑制される。この結果、電気化学セル(24)は、乾燥に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
【0074】
電気化学セル(24)は、電解質膜(60)とアノード給電体(62)との間に介在し、第1空孔(80)と連通する第1連通孔(84)と、第2空孔(82)と連通する第2連通孔(86)とが形成されるアノード触媒層(64)を備え、第1連通孔(84)は、供給流路(70)に向かって連続して断面積が大きくなり、第2連通孔(86)は、電解質膜(60)に向かって連続して断面積が大きくなってもよい。
これにより、電気化学セル(24)では、供給流路(70)を流れる流体の流量の増加に応じて第1連通孔(84)にも負圧が発生し易くなる。このため、第1空孔(80)及び第1連通孔(84)を通じて、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水を供給流路(70)に吸い出す力が高められる。したがって、滞留水の除去効率が高められる。
また、電気化学セル(24)では、滞留水が、電気化学セル(24)の外側部(76)から内側部(74)に流れ込み易くなる。したがって、層間等における面内の水分の均一化が高められる。
【0075】
第1空孔(80)の内壁と第1連通孔(84)の内壁とは連続し、第2空孔(82)の内壁と第2連通孔(86)の内壁とは連続してもよい。
これにより、電気化学セル(24)では、第1空孔(80)及び第1連通孔(84)を通じて、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水を供給流路(70)に吸い出す力が高められる。したがって、滞留水の除去効率が高められる。
また、電気化学セル(24)では、滞留水が、電気化学セル(24)の外側部(76)から内側部(74)に流れ込み易くなる。したがって、層間等における面内の水分の均一化が高められる。
【0076】
第2の発明は、セル運転システム(10)である。セル運転システム(10)は、上記の電気化学セル(24)と、電気化学セル(24)に流体を供給する流体供給装置(12)と、アノード給電体(62)とカソード給電体(66)との間に電圧を印加する電源装置(16)と、アノード給電体(62)とカソード給電体(66)との間の電気状態を検出するセンサ(88)と、電気状態を示す値が所定の閾値を超える場合に、電圧の印加を停止するように電源装置(16)を制御し、かつ、供給流路(70)を流れる流体の流量が増加するように流体供給装置(12)を制御する制御装置(18)と、を備える。
このセル運転システム(10)は、第1空孔(80)に負圧を発生させて、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水を、第1空孔(80)を通じて供給流路(70)に吸い出すことができる。この結果、セル運転システム(10)は、滞留水に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
また、セル運転システム(10)は、第2空孔(82)に負圧を発生させて、滞留水を、電気化学セル(24)の外側部(76)から内側部(74)に流れ込ませ、層間等における面内で水分を均一化させることができる。この結果、セル運転システム(10)は、電解質膜(60)の乾燥に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
【0077】
セル運転システム(10)は、電気化学反応により発生した発生流体が流れる排出流路(34)上に設けられ、発生流体の圧力を調整する圧力調整弁(36)を備え、制御装置(18)は、値が閾値を超える場合に、圧力調整弁(36)の開度が小さくなるように圧力調整弁(36)を制御した後、電源装置(16)及び流体供給装置(12)を制御してもよい。
これにより、排出流路(34)での発生流体の圧力が高まり、電気化学セル(24)がアノード側に押さえ付けられる。したがって、セル運転システム(10)は、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水を押し出して供給流路(70)に排出させることができ、この結果、滞留水の除去効率を高めることができる。
【0078】
流体は、水素ガスであってもよい。流体が水素ガスである場合、セル運転システム(10)は、高圧水素ガスを発生流体として生成することができる。
【0079】
第3の発明は、上記の電気化学セル(24)を運転するセル運転方法である。セル運転方法は、アノード給電体(62)とカソード給電体(66)との間に電圧を印加し、アノード給電体(62)とカソード給電体(66)との間の電気状態を示す値が所定の閾値を超える場合に、電圧の印加を停止させ、かつ、供給流路(70)を流れる流体の流量を増加させる。
このセル運転方法は、第1空孔(80)に負圧を発生させて、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水を、第1空孔(80)を通じて供給流路(70)に吸い出すことができる。この結果、セル運転方法は、滞留水に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
また、セル運転方法は、第2空孔(82)に負圧を発生させて、滞留水を、電気化学セル(24)の外側部(76)から内側部(74)に流れ込ませ、層間等における面内で水分を均一化させることができる。この結果、セル運転方法は、電解質膜(60)の乾燥に起因する水素の輸送性能及びエネルギー効率が低下することを抑制することができる。
【0080】
セル運転方法は、値が閾値を超える場合に、電気化学反応により発生した発生流体が流れる排出流路(34)上に設けられた圧力調整弁(36)の開度を小さくした後、電圧の印加を停止させ、かつ、供給流路(70)を流れる流体の流量を増加させてもよい。
これにより、排出流路(34)での発生流体の圧力が高まり、電気化学セル(24)がアノード側に押さえ付けられる。したがって、セル運転方法は、電気化学セル(24)のアノード側に滞留する滞留水を押し出して供給流路(70)に排出させることができ、この結果、滞留水の除去効率を高めることができる。
【0081】
流体は、水素ガスであってもよい。流体が水素ガスである場合、セル運転方法は、高圧水素ガスを発生流体として生成することができる。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0083】
10:セル運転システム 12:流体供給装置
14:セル装置 16電源装置
18:制御装置 24:電気化学セル
34:排出流路 36:圧力調整弁
52:第1セパレータ 54:第2セパレータ
60:電解質膜 62:アノード給電体
64:アノード触媒層 66:カソード給電体
68:カソード触媒層 70:供給流路
72:排出流路部 74:内側部
76:外側部 80:第1空孔
82:第2空孔 84:第1連通孔
86:第2連通孔 88:センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
電解質膜と、
前記電解質膜の一方の面側に積層されるアノード給電体と、
前記電解質膜の他方の面側に積層されるカソード給電体と、
前記アノード給電体における前記電解質膜側とは逆の面側に配置され、前記アノード給電体に供給するための流体が流れる供給流路と、
を備える電気化学セルであって、
前記アノード給電体は、前記供給流路に向かって断面積が大きくなる第1空孔が形成された内側部と、前記内側部より外側に位置し、前記電解質膜に向かって断面積が大きくなる第2空孔が形成された外側部と、を有し、
前記内側部には、前記第2空孔が形成されず、前記外側部には、前記第1空孔が形成されない、電気化学セル。