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2022-179946評価方法、評価システム、半導体素子の製造方法、及び半導体素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179946
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】評価方法、評価システム、半導体素子の製造方法、及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
H01L21/66 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086773
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】塩島 謙次
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AB11
4M106BA05
4M106BA14
4M106CA08
4M106CA17
(57)【要約】
【課題】半導体素子における電極と半導体との界面における電界分布を精度良く評価しやすくすること。
【解決手段】評価方法は、電界印加ステップと、第1走査ステップと、第1評価ステップと、を含む。電界印加ステップでは、半導体素子2における電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する。第1走査ステップでは、電界を印加した状態において、界面5に対して、半導体3のバンドギャップよりも小さいエネルギーを有しかつ電極4の径よりも小さいビーム径を有する所定の光L1を照射しながら、界面5を少なくとも1次元的に走査する。第1評価ステップでは、第1走査ステップを行いながら、半導体素子2を流れる光電流を計測することにより、界面5における電界分布を評価する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子における電極と半導体との界面に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する電界印加ステップと、
前記電界を印加した状態において、前記界面に対して、前記半導体のバンドギャップよりも小さいエネルギーを有しかつ前記電極の径よりも小さいビーム径を有する所定の光を照射しながら、前記界面を少なくとも1次元的に走査する第1走査ステップと、
前記第1走査ステップを行いながら、前記半導体素子を流れる光電流を計測することにより、前記界面における電界分布を評価する第1評価ステップと、を含む、
評価方法。
【請求項2】
前記第1走査ステップでは、前記界面を2次元的に走査する、
請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記所定の光は、可視光よりも波長の短い光である、
請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記電界を印加しない状態において前記界面に対して可視光を照射することで、前記界面を少なくとも1次元的に走査する第2走査ステップと、
前記第2走査ステップを行いながら、前記半導体素子を流れる光電流を計測することにより、前記界面における不均一を評価する第2評価ステップと、
前記第1評価ステップによる評価と、前記第2評価ステップによる評価と、に基づいて前記界面における不均一と電界分布とを関係づけて評価する第3評価ステップと、を更に含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記第1走査ステップは、前記電界印加ステップによる前記電界の印加を、少なくとも1時間以上である所定時間継続した後に、又は継続しながら実行される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記半導体素子は、ショットキーダイオードである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項7】
半導体素子における電極と半導体との界面に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する電界印加部と、
前記電界を印加した状態において、前記界面に対して、前記半導体のバンドギャップよりも小さいエネルギーを有しかつ前記電極の径よりも小さいビーム径を有する所定の光を照射しながら、前記界面を少なくとも1次元的に走査する走査部と、
前記走査部による走査を行いながら、前記半導体素子を流れる光電流を計測することにより、前記界面における電界分布を評価する評価部と、を備える、
評価システム。
【請求項8】
半導体に電極を設けることで半導体素子を製造する半導体素子の製造方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の評価方法による評価に基づき、前記界面において所定以上の大きさの電界強度を示す箇所に、電界の集中を緩和する緩和部を設ける工程を有する、
半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記工程では、前記緩和部として、前記電極の側面から突出し、かつ、前記半導体の前記電極が設けられた一面に向かうにつれて突出長さが長くなる裾部を設ける、
請求項8に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記半導体素子は、ショットキーダイオードである、
請求項8又は9に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
半導体と、
前記半導体の一面に設けられた電極と、を備え、
前記電極は、前記電極の側面から突出し、かつ、前記半導体の前記一面に接しており、電界の集中を緩和する緩和部を有する、
半導体素子。
【請求項12】
前記緩和部は、前記半導体の前記一面に向かうにつれて突出長さが長くなる裾部である、
請求項11に記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価方法、評価システム、半導体素子の製造方法、及び半導体素子に関し、特に半導体素子における電極と半導体との界面を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、界面顕微光応答法による半導体結晶成長層の界面を評価する方法が開示されている。界面顕微光応答法は、金属/半導体の界面、及び半導体/半導体の界面を非破壊で評価する方法である。界面顕微光応答法は、例えば半導体の表面に金属(ショットキー電極)を形成した試料において、金属(ショットキー電極)と半導体との界面にバンドギャップ以下のレーザ光を半導体側から照射すると、内部光電子放出効果によって金属(ショットキー電極)と半導体の裏面の電極(オーミック電極)との間に光電流が発生するという現象を利用した方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-18869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、半導体素子における電極と半導体との界面における電界分布を精度良く評価しやすい評価方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る評価方法は、電界印加ステップと、第1走査ステップと、第1評価ステップと、を含む。前記電界印加ステップでは、半導体素子における電極と半導体との界面に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する。前記第1走査ステップでは、前記電界を印加した状態において、前記界面に対して、前記半導体のバンドギャップよりも小さいエネルギーを有しかつ前記電極の径よりも小さいビーム径を有する所定の光を照射しながら、前記界面を少なくとも1次元的に走査する。前記第1評価ステップでは、前記第1走査ステップを行いながら、前記半導体素子を流れる光電流を計測することにより、前記界面における電界分布を評価する。
【0006】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る評価システムは、電界印加部と、走査部と、評価部と、を備える。前記電界印加部は、半導体素子における電極と半導体との界面に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する。前記走査部は、前記電界を印加した状態において、前記界面に対して、前記半導体のバンドギャップよりも小さいエネルギーを有しかつ前記電極の径よりも小さいビーム径を有する所定の光を照射しながら、前記界面を少なくとも1次元的に走査する。前記評価部は、前記走査部による走査を行いながら、前記半導体素子を流れる光電流を計測することにより、前記界面における電界分布を評価する。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る半導体素子の製造方法は、半導体に電極を設けることで半導体素子を製造する半導体素子の製造方法であって、前記評価方法による評価に基づき、前記界面において所定以上の大きさの電界強度を示す箇所に、電界の集中を緩和する緩和部を設ける工程を有する。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る半導体素子は、半導体と、前記半導体の一面に設けられた電極と、を備える。前記電極は、前記電極の側面から突出し、かつ、前記半導体の前記一面に接しており、電界の集中を緩和する緩和部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、半導体素子における電極と半導体との界面における電界分布を精度良く評価しやすい評価方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、高電圧印加時における電極と半導体との界面の電界分布の説明図である。
図2図2は、実施の形態に係る評価システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る評価システムを含む全体構成を示す概要図である。
図4図4は、フランツ・ケルディッシュ効果の説明図である。
図5図5は、電極と半導体との界面に赤色光を照射した場合の光電流像を示す図である。
図6図6は、電極と半導体との界面に赤色光を照射した場合のラインプロファイルを示す図である。
図7図7は、電極と半導体との界面に紫色光を照射した場合の光電流像を示す図である。
図8図8は、電極と半導体との界面に紫色光を照射した場合のラインプロファイルを示す図である。
図9図9は、実施の形態に係る評価システムの動作例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施の形態に係る評価システムの他の動作例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施の形態に係る半導体素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施の形態に係る半導体素子の要部を示す断面図である。
図13図13は、緩和部を設けた電極と半導体との界面に紫色光を照射した場合の光電流像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
まず、発明者の着眼点が、下記に説明される。
【0012】
近年、例えばショットキーダイオード等の半導体素子の高耐圧化を図るべく、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)、又は酸化ガリウム(Ga)等のワイドギャップ半導体の研究開発が盛んに行われている。ここで、例えばショットキーダイオードであれば、高耐圧化を図るためには、ワイドギャップ半導体を採用するだけではなく、電極(ショットキー電極)の高耐圧化も図る必要がある。以下、電極の高耐圧化の必要性について説明する。
【0013】
図1は、高電圧印加時における電極4A(ショットキー電極41A)と半導体3Aとの界面5Aの電界分布の説明図である。図1に示す例では、半導体3Aの上面にショットキー電極41Aが形成され、半導体3Aの下面にオーミック電極42Aが形成されている。そして、図1に示す例では、ショットキー電極41A及びオーミック電極42Aには、100V程度の逆バイアスの直流電圧が印加されている。なお、図1に示す電気力線A1は、電気力の様子を視覚的に表現するための仮想線である。
【0014】
図1に示すように、ショットキー電極41Aと半導体3Aとの界面5Aの中央部では、電気力線A1が一様に分布している、つまり電界が一様に分布している。一方、界面5Aの周辺部(つまり、電極4Aの端部)では、電気力線A1が集中している、つまり電界が集中している。このため、界面5Aの周辺部に電界が集中することにより、ショットキー電極41Aが絶縁破壊するという事象が生じ得る。
【0015】
上記事象を防ぐため、つまり電極4A(ショットキー電極41A)の高耐圧化を図るためには、界面5Aの周辺部において電界の集中を緩和するための緩和構造を設けることが考えられる。緩和構造としては、例えばフィールドプレート電極、又はガードリング構造等が挙げられる。また、緩和構造としては、界面5Aの周辺部をエッチングした構造も挙げられる。
【0016】
ところで、上記のような緩和構造を設けるに当たっては、界面5Aにおいて電界が集中する箇所を把握することが肝要である。そして、一般的には、2次元電磁界シミュレーションを用いることにより、界面5Aにおける電界分布を算出していた。しかしながら、高電圧が印加された状態での界面5Aの周辺部は、基本的に凹凸等の不連続な境界条件を有している。このため、上記のようなシミュレーションにより界面5Aの電界分布を精度良く算出することは非常に難しい、という課題がある。
【0017】
以上を鑑み、発明者は本発明を創作するに至った。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、手法、構成要素、構成要素の接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0019】
[構成]
図2は、実施の形態に係る評価システム100の構成を示すブロック図である。図3は、実施の形態に係る評価システム100を含む全体構成を示す概要図である。実施の形態に係る評価システム100(評価方法)は、半導体素子2における電極4(実施の形態では、ショットキー電極41)と半導体3との界面5を評価する、特には界面5における電界分布を評価するシステム(方法)である。
【0020】
まず、評価システム100(評価方法)による評価対象である半導体素子2について説明する。半導体素子2は、半導体3の表面に電極4を設けた素子であって、電極4に電流を流す、又は電極4に電圧を印加することで機能を発揮する素子である。実施の形態では、半導体素子2は、ショットキーダイオードである。
【0021】
実施の形態では、半導体素子2のうちの半導体3は、窒化ガリウム(GaN)基板31の上面に、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長法)を用いて、シリコン(Si)をドーピングした厚さ約2μmのn-GaN層32を成長させ、かつ、n-GaN層32の上面にシリコン(Si)をドーピングした厚さ約12μmのn-GaN層33を成長させることで形成されている。
【0022】
また、実施の形態では、半導体素子2のうちの電極4は、直径約200μm、厚さ約100nmのショットキー電極41と、オーミック電極42と、を含んでいる。ショットキー電極41は、ニッケル(Ni)により構成されており、例えば電子ビーム蒸着によりn-GaN層33の上面に形成されている。オーミック電極42は、InGa(インジウム-ガリウム)合金により構成されており、例えば塗布によりn-GaN基板31の下面に形成されている。なお、オーミック電極42は、Al/Ti(アルミニウム・チタン)合金により構成されていてもよい。この場合、オーミック電極42は、例えば電子ビーム蒸着によりn-GaN基板31の下面に堆積させた後に摂氏900度程度の高温で熱処理することにより形成されてもよい。
【0023】
次に、実施の形態に係る評価システム100(評価方法)について説明する。評価システム100は、図2に示すように、電界印加部11と、走査部12と、評価部13と、を備えている。言い換えれば、評価方法は、電界印加ステップST1と、走査ステップST2と、第1評価ステップST3と、を含んでいる(図9参照)。
【0024】
電界印加部11は(電界印加ステップST1では)、半導体素子2における電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に対して、フランツ・ケルディッシュ(Franz-Keldysh)効果が発現し得る電界を印加する。
【0025】
ここで、フランツ・ケルディッシュ効果について、図4を用いて簡単に説明する。図4は、フランツ・ケルディッシュ効果の説明図である。フランツ・ケルディッシュ効果とは、半導体に比較的高い電界を外部から印加することで、バンドギャップに相当する波長(基礎吸収端)が長波側にずれる現象である。図4は、電界を印加した状態での半導体のエネルギーバンドを表している。図4に示すように、電界を印加した状態では、価電子帯及び伝導帯が電界に応じて傾くことで、半導体中の電子の波動関数がバンドギャップにしみ出し、実効的なバンドギャップEg’が、通常時(つまり電界を印加していない状態)でのバンドギャップEgよりも小さくなる。
【0026】
このため、半導体3に比較的高い電界を印加した状態で、バンドギャップEgよりも僅かに小さい光子エネルギーを有する光を界面5に対して照射すると、フランツ・ケルディッシュ効果により比較的大きな光電流が発生することが知られている(例えば、Franz-Keldysh effect in n-type GaN Schottky barrier diode under high reverse bias voltage, Applied Physics Express, Volume 9, Number 9参照)。
【0027】
詳しくは後述するが、実施の形態に係る評価システム100(評価方法)では、このフランツ・ケルディッシュ効果を利用して、界面5における電界分布を評価する。そこで、実施の形態では、電界印加部11は、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る程度の大きさの電界が印加されるように、直流電源111から数十~100V程度の逆バイアスの直流電圧を、ショットキー電極41とオーミック電極42との間に印加する。なお、当該電圧は、電極4(ショットキー電極41)を絶縁破壊に至らしめる電圧よりも小さい電圧である。
【0028】
走査部12は、図示しないが、レーザ光源と、レンズと、移動テーブルと、を有している。レーザ光源は、下方から上方に向けて(つまり、半導体3から電極4(ショットキー電極41)に向けて)レーザ光(所定の光)L1を出力する。また、レーザ光源は、出力するレーザ光L1の波長を可変するように構成されている。
【0029】
実施の形態では、走査部12は、半導体3のバンドギャップEg(ここでは、約3eV)よりも僅かに小さいエネルギー(つまり、フランツ・ケルディッシュ効果による実効的なバンドギャップEg’を超える程度のエネルギー)を有するレーザ光L1を出力可能である。具体的には、走査部12は、紫色光(波長が約403nm)、又は近紫外光(波長が約375nm)等のレーザ光L1を出力可能である。
【0030】
レンズは、レーザ光源と対向して配置され、レーザ光源が出力するレーザ光L1を界面5に向けて集光する。したがって、界面5には、電極4(ショットキー電極41)の径よりも小さいビーム径を有するレーザ光L1が集光して照射される。
【0031】
移動テーブルは、半導体素子2が載せ置かれるテーブルであって、アクチュエータにより制御されることで移動可能に構成されている。このため、半導体素子2は、移動テーブルと共にXY平面に沿って移動可能である。ここでいうXY平面とは、半導体素子2の厚さ方向(上下方向)と直交する(又は略直交する)平面である。
【0032】
実施の形態では、走査部12は、電界印加部11が電界を印加した状態で、レーザ光源を駆動することにより、焦点を界面5に合わせてレーザ光L1を照射させ、かつ、移動テーブルを駆動することにより、半導体素子2をXY平面に沿って移動させることで、界面5を走査する。
【0033】
つまり、走査部12は(第1走査ステップST2では)、電界を印加した状態において、界面5に対して、半導体3のバンドギャップEgよりも小さいエネルギーを有しかつ電極4(ショットキー電極41)よりも小さいビーム径を有する所定の光(レーザ光)L1を照射しながら、界面5を少なくとも1次元的に走査する。実施の形態では、半導体素子2をXY平面に沿って移動させることで界面5を走査しているので、走査部12は(第1走査ステップST2では)、界面5を2次元的に走査する。
【0034】
実施の形態では、第1走査ステップST2において界面5に対して照射されるレーザ光L1は、紫色光又は近紫外光等である。つまり、所定の光(レーザ光)L1は、可視光よりも波長の短い光であるか、又は可視光であるが比較的波長の短い光である。レーザ光L1の波長は、半導体3のバンドギャップEg(ここでは、3.4eV)よりも小さく、かつ実効的なバンドギャップEg’よりも大きい光子エネルギー(つまり、フランツ・ケルディッシュ効果による光電流の大きな増加が生じる程度の大きさの光子エネルギー)となるような波長であればよい。
【0035】
評価部13は、直流電源111と直列に接続された電流計131を有している。電流計131は、ショットキー電極41、半導体3、及びオーミック電極42を流れる電流を計測することにより、界面5に対するレーザ光L1の照射に伴い発生する光電流を計測する。実施の形態では、評価部13は、単位フォトン数当たりの光電流を示す光電子収率(Photoyield:Y)を計測する。
【0036】
ここで、界面5においてレーザ光L1が照射された箇所の電界強度が大きければ(つまり、電界が集中していれば)、フランツ・ケルディッシュ効果が発現することにより、レーザ光L1が吸収され、光電流が大きく増加する。一方、界面5においてレーザ光L1が照射された箇所の電界強度が小さければ(つまり、電界が集中していなければ)、逆方向電圧の印加により空乏層が伸びるため、レーザ光L1は幅が増えた分だけ吸収されるものの、フランツ・ケルディッシュ効果が発現せず、光電流は僅かにしか増加しない。このように、界面5における電界の集中の度合いと、光電流の増加とが対応しているため、界面5にレーザ光L1を照射しながら走査し、かつ、光電流を計測することにより、界面5における電界分布を計測することが可能である。
【0037】
つまり、評価部13は(第1評価ステップST3では)、走査部12による走査(第1走査ステップST2)を行いながら、半導体素子2を流れる光電流を計測することにより、界面5における電界分布を評価する。実施の形態では、評価部13は、界面5の光電流像(又はラインプロファイル)を出力することにより、界面5における電界分布を評価する。
【0038】
以下、レーザ光(所定の光)L1として赤色光を界面5に対して照射した場合の評価結果と、レーザ光L1として紫色光を界面5に対して照射した場合の評価結果とを示す。
【0039】
図5は、電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に赤色光を照射した場合の光電流像を示す図である。図6は、電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に赤色光を照射した場合のラインプロファイルを示す図である。図7は、電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に紫色光を照射した場合の光電流像を示す図である。図8は、電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に紫色光を照射した場合のラインプロファイルを示す図である。
【0040】
図5及び図7における円形領域は、界面5を表している。また、図5及び図7における明暗は、光電流(光電子収率Y)の大きさと対応しており、明るければ明るい程光電流が大きく、暗ければ暗い程光電流が小さいことを表している。また、光電流(光電子収率Y)の大きさは、任意単位(arbitrary unit)により表されている。さらに、図5及び図7の各々において、(a)はショットキー電極41とオーミック電極42との間に印加する直流電圧(以下、「電極間電圧」という)が0Vの場合、(b)は電極間電圧が-41Vの場合、(c)は電極間電圧が-82Vの場合の結果を表している。
【0041】
図6及び図8は、いずれも界面5の中心を通るY方向(横方向)に沿った直線上での光電流の分布を表しており、縦軸が光電流の大きさ(単位は任意単位)、横軸が基準点(図5及び図7における左端)からの距離(単位はμm)を表している。
【0042】
図5及び図7に示すように、界面5に赤色光を照射した場合、界面5における光電流の分布は殆ど一様であり、フランツ・ケルディッシュ効果による光電流の大きな増加は殆ど見受けられなかった。つまり、この場合、光電流像及びラインプロファイルは、界面5における電界分布を表していないことが確認された。なお、ここでは一例として界面5に赤色光を照射した場合を挙げているが、界面5に緑色光、青緑色光、及び青色光を照射した場合においても、光電流像及びラインプロファイルが界面5における電界分布を表していないことが確認された。
【0043】
一方、図6及び図8に示すように、界面5に紫色光を照射した場合であって、かつ、電極間電圧が比較的大きい(つまり、比較的高い電界が界面5に印加されている)場合、界面5の中央部においてはフランツ・ケルディッシュ効果による光電流の大きな増加が殆ど見られない一方、界面5の周辺部においてはフランツ・ケルディッシュ効果による光電流の大きな増加が顕著に見受けられた。つまり、この場合、光電流像及びラインプロファイルは、界面5における電界分布を表していることが確認された。なお、ここでは一例として界面5に紫色光を照射した場合を挙げているが、界面5に近紫外光を照射した場合においても、光電流像及びラインプロファイルが界面5における電界分布を表していることが確認された。
【0044】
[動作]
以下、実施の形態に係る評価システム100の動作(評価方法)の一例について説明する。図9は、実施の形態に係る評価システム100の動作例を示すフローチャートである。まず、電界印加部11は、直流電源111から逆バイアスの直流電圧を、ショットキー電極41とオーミック電極42との間に印加する(S101)。処理S101は、評価方法における電界印加ステップST1に相当する。
【0045】
次に、走査部12は、電界印加部11が電界を印加した状態で、レーザ光源を駆動することにより、焦点を界面5に合わせてレーザ光L1を照射させ、かつ、移動テーブルを駆動することにより、半導体素子2をXY平面に沿って移動させることで、界面5を走査する(S102)。処理S102は、評価方法における第1走査ステップST2に相当する。
【0046】
そして、評価部13は、走査部12による走査を行いながら、電流計131により半導体素子2を流れる光電流を計測し、界面5の光電流像(又はラインプロファイル)を出力することにより、界面5における電界分布を評価する(S103)。処理S103は、評価方法における第1評価ステップST3に相当する。
【0047】
[利点]
上述のように、実施の形態に係る評価システム100(評価方法)では、フランツ・ケルディッシュ効果による光電流の大きな増加を利用することで、界面5における実際の電界分布を間接的に計測することが可能である。このため、2次元電磁界シミュレーションでは例えば界面5の周辺部等の電界の集中する箇所における電界強度を精度良く算出することが難しいのに対して、実施の形態に係る評価システム100(評価方法)では、界面5において電界が集中する箇所の電界強度を精度良く求めやすい、という利点がある。つまり、実施の形態に係る評価システム100(評価方法)では、半導体素子2における電極4と半導体3との界面5における電界分布を精度良く評価しやすい、という利点がある。
【0048】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の評価システム100及び評価方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0049】
上述の実施の形態において、評価システム100は(評価方法では)、界面5の不均一を更に評価してもよい。界面5の不均一は、半導体3の歪み、結晶粒界、又は結晶欠陥等により生じ得る。具体的には、走査部12が第2走査ステップST4を更に実行し、かつ、評価部13が第2評価ステップST5及び第3評価ステップST6を更に実行してもよい。
【0050】
図10は、実施の形態に係る評価システム100の他の動作例を示すフローチャートである。図10に示す評価システム100の動作(評価方法)の一例は、上記の界面5の不均一を更に評価する場合の動作例である。なお、図10に示す例では、処理S201,S202を実行した後に処理S203~S205を実行しているが、処理の順番は逆であってもよい。
【0051】
まず、評価システム100は(評価方法では)、第2走査ステップST4を実行しながら(S201)、第2評価ステップST5を実行する(S202)。第2走査ステップST4では、走査部12は、電界印加部11が電界を印加していない状態で、レーザ光源を駆動することにより、焦点を界面5に合わせて可視光であるレーザ光L1を照射させ、かつ、移動テーブルを駆動することにより、半導体素子2をXY平面に沿って移動させることで、界面5を走査する。つまり、第2走査ステップST4では、電界を印加しない状態において界面5に対して可視光を照射することで、界面5を少なくとも1次元的に走査する。ここでは、走査部12は、第1走査ステップST2と同様に、界面5を2次元的に走査する。
【0052】
第2評価ステップST5では、評価部13は、走査部12による走査(第2走査ステップST4)を行いながら、電流計131により半導体素子2を流れる光電流を計測する。計測された光電流のばらつきは、界面5における不均一に対応する。つまり、第2評価ステップST5では、第2走査ステップST4を行いながら、半導体素子2を流れる光電流を計測することにより、界面5における不均一を評価する。ここでは、評価部13は、界面5の光電流像(又はラインプロファイル)を出力することにより、界面5における不均一を評価する。
【0053】
次に、評価システム100は(評価方法では)、電圧印加ステップST1を実行しながら(S203)、第1走査ステップST2(S204)及び第1評価ステップST3(S205)を実行する。電圧印加ステップST1、第1走査ステップST2、及び第1評価ステップST3については既に説明しているので、ここでは説明を省略する。
【0054】
そして、評価システム100は(評価方法では)、第3評価ステップST6を実行する(S206)。第3評価ステップST6では、評価部13は、第2評価ステップST5で得られた光電流像(又はラインプロファイル)と、第1評価ステップST3で得られた光電流像(又はラインプロファイル)との差分を算出することにより、界面5における不均一を排除した界面5における電界分布を評価する。つまり、第3評価ステップST6では、第1評価ステップST3による評価と、第2評価ステップST5による評価と、に基づいて界面5における不均一と電界分布とを関係づけて評価する。
【0055】
上述の態様では、界面5における不均一を除外して、界面5における電界分布を更に精度良く求めやすい、という利点がある。
【0056】
また、上述の実施の形態において、評価システム100は(評価方法では)、半導体素子2の劣化試験を行ってもよい。具体的には、第1走査ステップST2が、電界印加ステップST1による電界の印加を、少なくとも1時間以上である所定時間継続した後に、又は継続しながら実行されることで、半導体素子2の劣化試験を行うことが可能である。所定時間は、半導体素子2の使用に耐え得る期間を精度良く推定する観点からすれば、例えば数十時間以上であることが好ましい。
【0057】
上述の態様では、電圧が長時間印加されることによる半導体素子2の劣化を試験することができ、半導体素子2の脆弱な部分を特定しやすくなる、という利点がある。
【0058】
[半導体素子の製造方法]
また、上述の実施の形態に係る評価システム100(評価方法)による界面5の電界分布の評価(第1評価ステップST3による評価、又は第3評価ステップST6による評価)を用いれば、例えば界面5の周辺部において電界の集中を緩和するための緩和部6(図12参照)を設けた半導体素子2を設計しやすくなることが期待できる。すなわち、半導体素子2の製造方法は、半導体3に電極4を設けることで半導体素子2を製造する方法であって、実施の形態に係る評価方法による評価に基づき、界面5において所定以上の大きさの電界強度を示す箇所に、電界の集中を緩和する緩和部6を設ける工程を有していてもよい。上記界面5の電界分布の評価を用いれば、例えばショットキー電極41等の半導体素子2における電極4の高耐圧化を図る研究開発に大いに貢献し得る。
【0059】
図11は、実施の形態に係る半導体素子2の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、図11では省略しているが、半導体素子2の製造方法には、電極4(オーミック電極42)を形成する工程も含まれている。また、図11に示す例では、第1評価(第1評価ステップST3による評価)に基づいて、緩和部6を有する電極4(ショットキー電極41)を形成しているが、第3評価(第3評価ステップST6による評価)に基づいて、緩和部6を有する電極4(ショットキー電極41)を形成してもよい。
【0060】
まず、半導体3を作成する(S301)。工程S301においては、GaN基板31の上面に、例えばMOCVDを用いて、シリコン(Si)をドーピングした厚さ約2μmのn-GaN層32を成長させ、かつ、n-GaN層32の上面にシリコン(Si)をドーピングした厚さ約12μmのn-GaN層33を成長させることで、半導体3を作成する。
【0061】
次に、第1評価に基づき、緩和部6を有する電極4(ショットキー電極41)を形成する(S302)。工程S302においては、例えば電子ビーム蒸着によりn-GaN層33の上面に電極4(ショットキー電極41)を形成する。そして、工程S302においては、第1評価を参照することで、電極4(ショットキー電極41)において電界が集中する箇所に緩和部6を設ける。緩和部6は、例えばフィールドプレート電極、又はガードリング構造等であってもよい。
【0062】
ここで、本願の発明者は、上述のフィールドプレート電極又はガードリング構造とは異なる緩和構造を見い出した。図12は、実施の形態に係る半導体素子2の要部を示す断面図である。図12に示す例では、緩和構造としての緩和部6は、裾部61である。
【0063】
裾部61は、平面視で(つまり、半導体素子2の上方から見て)円環状である。裾部61は、電極4(ショットキー電極41)の側面400において、側面400と交差する方向に突出しており、かつ、突出した部位が半導体3の電極4(ショットキー電極41)が設けられた一面300に接している。また、裾部61は、側面400における上下方向の中間部から突出し始め、半導体3の一面300に向かうにつれて突出長さd1が徐々に長くなる形状を有している。ここでは、裾部61の突出長さd1は、約10nm以下である。また、裾部61の厚みは、約数nmである。
【0064】
以下、裾部61による電界の集中を緩和する効果について、レーザ光(所定の光)L1として紫色光を界面5に対して照射した場合の評価結果を用いて説明する。図13は、緩和部6(裾部61)を設けた電極4(ショットキー電極41)と半導体3との界面5に紫色光を照射した場合の光電流像を示す図である。
【0065】
図13における円形領域は、界面5を表している。また、図13における明暗は、光電流(光電子収率Y)の大きさと対応しており、明るければ明るい程光電流が大きく、暗ければ暗い程光電流が小さいことを表している。また、光電流(光電子収率Y)の大きさは、任意単位(arbitrary unit)により表されている。さらに、図13において、(a)は電極間電圧が0Vの場合、(b)は電極間電圧が-45Vの場合の結果を表している。
【0066】
既に述べた図6に示す評価結果、つまり緩和部6を設けていない電極4と半導体3との界面5における電界分布では、界面5の周辺部において電界が集中することが確認されていた。これに対して、図13に示す評価結果、つまり緩和部6を設けた電極4と半導体3との界面5における電界分布では、電極間電圧が比較的大きい(つまり、比較的高い電界が界面5に印加されている)場合でも、フランツ・ケルディッシュ効果による光電流の大きな増加が殆ど見受けられなかった。このように、緩和部6により界面5における電界の集中が緩和されたことが確認された。
【0067】
したがって、半導体素子2の製造方法において、工程S302では、緩和部6として、電極4(ショットキー電極41)の側面400から突出し、かつ、半導体3の電極4(ショットキー電極41)が設けられた一面300に向かうにつれて突出長さd1が長くなる裾部61を設けるのが好ましい。
【0068】
[半導体素子]
以下、上述の半導体素子2の製造方法を用いて製造される半導体素子2について簡単に説明する。
【0069】
半導体素子2は、半導体3と、半導体3の一面300に設けられた電極4(ショットキー電極41)と、を備える。電極4(ショットキー電極41)は、電極4(ショットキー電極41)の側面400から突出し、かつ、半導体3の一面300に接しており、電界の集中を緩和する緩和部6を有する。
【0070】
特に、緩和部6は、半導体3の一面300に向かうにつれて突出長さd1が長くなる裾部61であるのが好ましい。
【0071】
このような半導体素子2によれば、例えばフィールドプレート電極、又はガードリング構造等の複雑な構造を有する電極4を有しなくても、電極4と半導体3との界面5における電界の集中を避けやすい、という利点がある。
【0072】
(まとめ)
以上のように、実施の形態に係る評価方法は、電界印加ステップST1と、第1走査ステップST2と、第1評価ステップST3と、を含む。電界印加ステップST1では、半導体素子2における電極4と半導体3との界面5に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する。第1走査ステップST2では、電界を印加した状態において、界面5に対して、半導体3のバンドギャップEgよりも小さいエネルギーを有しかつ電極4の径よりも小さいビーム径を有する所定の光L1を照射しながら、界面5を少なくとも1次元的に走査する。第1評価ステップST3では、第1走査ステップST2を行いながら、半導体素子2を流れる光電流を計測することにより、界面5における電界分布を評価する。
【0073】
このような評価方法によれば、2次元電磁界シミュレーションでは例えば界面5の周辺部等の電界の集中する箇所における電界強度を精度良く算出することが難しいのに対して、界面5において電界が集中する箇所の電界強度を精度良く求めやすい、という利点がある。つまり、半導体素子2における電極4と半導体3との界面5における電界分布を精度良く評価しやすい、という利点がある。
【0074】
また、例えば、評価方法では、第1走査ステップST2では、界面5を2次元的に走査する。
【0075】
このような評価方法によれば、界面5における電界分布を2次元的に求めることができる、という利点がある。
【0076】
また、例えば、評価方法では、所定の光L1は、可視光よりも波長の短い光である。
【0077】
このような評価方法によれば、所定の光L1が可視光である場合と比較して、フランツ・ケルディッシュ効果により光電流が大きく増加しやすい、という利点がある。
【0078】
また、例えば、評価方法は、第2走査ステップST4と、第2評価ステップST5と、第3評価ステップST6と、を更に含む。第2走査ステップST4では、電界を印加しない状態において界面5に対して可視光を照射することで、界面5を少なくとも1次元的に走査する。第2評価ステップST5では、第2走査ステップST4を行いながら、半導体素子2を流れる光電流を計測することにより、界面5における不均一を評価する。第3評価ステップST6では、第1評価ステップST3による評価と、第2評価ステップST5による評価と、に基づいて界面5における不均一と電界分布とを関係づけて評価する。
【0079】
このような評価方法によれば、例えば界面5における不均一を除外して、界面5における電界分布を更に精度良く求めやすい、という利点がある。
【0080】
また、例えば、評価方法では、第1走査ステップST2は、電界印加ステップST1による電界の印加を、少なくとも1時間以上である所定時間継続した後に、又は継続しながら実行される。
【0081】
このような評価方法によれば、電圧が長時間印加されることによる半導体素子2の劣化を試験することができ、半導体素子2の脆弱な部分を特定しやすくなる、という利点がある。
【0082】
また、例えば、評価方法では、半導体素子2は、ショットキーダイオードである。
【0083】
このような評価方法によれば、2次元電磁界シミュレーションにより解析する場合と比較して、例えばショットキー電極41と半導体3との界面5の周辺部等、界面5において電界が集中する箇所を精度良く求めやすい、という利点がある。
【0084】
また、実施の形態に係る評価システム100は、電界印加部11と、走査部12と、評価部13と、を備える。電界印加部11は、半導体素子2における電極4と半導体3との界面5に対して、フランツ・ケルディッシュ効果が発現し得る電界を印加する。走査部12は、電界を印加した状態において、界面5に対して、半導体3のバンドギャップEgよりも小さいエネルギーを有しかつ電極4の径よりも小さいビーム径を有する所定の光L1を照射しながら、界面5を少なくとも1次元的に走査する。評価部13は、走査部12による走査を行いながら、半導体素子2を流れる光電流を計測することにより、界面5における電界分布を評価する。
【0085】
このような評価システム100によれば、2次元電磁界シミュレーションでは例えば界面5の周辺部等の電界の集中する箇所における電界強度を精度良く算出することが難しいのに対して、界面5において電界が集中する箇所の電界強度を精度良く求めやすい、という利点がある。つまり、半導体素子2における電極4と半導体3との界面5における電界分布を精度良く評価しやすい、という利点がある。
【0086】
また、実施の形態に係る半導体素子2の製造方法は、半導体3に電極4を設けることで半導体素子2を製造する方法であって、上記の評価方法による評価に基づき、界面5において所定以上の大きさの電界強度を示す箇所に、電界の集中を緩和する緩和部6を設ける工程S302を有する。
【0087】
このような半導体素子2の製造方法によれば、電極4と半導体3との界面5において電界が集中しにくい半導体素子2を製造しやすくなり、半導体素子2の高耐圧化を図りやすい、という利点がある。
【0088】
また、例えば、半導体素子2の製造方法では、上記工程S302では、緩和部6として、電極4の側面400から突出し、かつ、半導体3の電極4が設けられた一面300に向かうにつれて突出長さd1が長くなる裾部61を設ける。
【0089】
このような半導体素子2の製造方法によれば、例えばフィールドプレート電極、又はガードリング構造等の複雑な構造を有する電極4を形成せずとも、電極4と半導体3との界面5における電界の集中を避けやすい半導体素子2を製造することができる、という利点がある。
【0090】
また、例えば、半導体素子2の製造方法では、半導体素子2は、ショットキーダイオードである。
【0091】
このような半導体素子2の製造方法によれば、電極4と半導体3との界面5において電界が集中しにくいショットキーダイオードを製造しやすくなり、ショットキーダイオードの高耐圧化を図りやすい、という利点がある。
【0092】
また、実施の形態に係る半導体素子2は、半導体3と、半導体3の一面300に設けられた電極4と、を備える。電極4は、電極4の側面400から突出し、かつ、半導体3の一面300に接しており、電界の集中を緩和する緩和部6を有する。
【0093】
このような半導体素子2によれば、例えばフィールドプレート電極、又はガードリング構造等の複雑な構造を有する電極4を有しなくても、電極4と半導体3との界面5における電界の集中を避けやすい、という利点がある。
【0094】
また、例えば、半導体素子2は、緩和部6は、半導体3の一面300に向かうにつれて突出長さd1が長くなる裾部61である。
【0095】
このような半導体素子2によれば、例えばフィールドプレート電極、又はガードリング構造等の複雑な構造を有する電極4を有しなくても、電極4と半導体3との界面5における電界の集中を避けやすい、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、例えばショットキーダイオード等の半導体素子における電極と半導体との界面を評価する方法として利用できる。
【符号の説明】
【0097】
100 評価システム
11 電界印加部
111 直流電源
12 走査部
13 評価部
131 電流計
2 半導体素子
3,3A 半導体
31 GaN基板
32,33 n-GaN層
300 一面
4,4A 電極
41,41A ショットキー電極
42,42A オーミック電極
400 側面
5 界面
6 緩和部
61 裾部
A1 電気力線
d1 突出長さ
Eg バンドギャップ
Eg’ 実効的なバンドギャップ
L1 レーザ光(所定の光)
S101~S103,S201~S206 処理
S301,S302 工程
ST1 電界印加ステップ
ST2 第1走査ステップ
ST3 第1評価ステップ
ST4 第2走査ステップ
ST5 第2評価ステップ
ST6 第3評価ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13