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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179948
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両用制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/24 20060101AFI20221129BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20221129BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60L7/24 D
B60L9/18 P
B60T8/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086776
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA09
3D246BA08
3D246EA05
3D246EA06
3D246EA20
3D246GA14
3D246GA19
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA86A
3D246HC01
3D246JA12
3D246JB53
3D246LA13Z
3D246LA15Z
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA07
5H125BB07
5H125CA02
5H125CB02
5H125CB07
5H125CB08
5H125EE44
5H125EE52
5H125FF02
(57)【要約】
【課題】電動モータ及び電動ブレーキへの電力供給を簡素な構成で実現する車両用制動システムを提供する。
【解決手段】インバータ28は、バッテリ16の電力を変換した電力を、インホイールモータ12又は電動ブレーキ30のいずれか一方に供給可能である。配線切替部50は、インバータ28からインホイールモータ12又は電動ブレーキ30への配線を切り替える。車両ECU40は、インバータ28を操作し、且つ、配線切替部50に対し配線の切替を指令する。車両ECU40は、車両の駆動が要求されたとき、配線切替部50に対しインホイールモータ12側に配線を切り替えるように指令する。また、車両ECU40は、車両の制動が要求されたとき、要求制動トルクに応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断し、当該判断に基づき配線切替部50に対し配線の切替を指令する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給により車輪(91-94)を駆動する駆動トルクを出力し、且つ、車輪の回転により回生制動トルクを出力する電動モータ(12)と、
電力供給により車輪を制動する制動トルクを出力する電動ブレーキ(30)と、
前記電動モータ及び前記電動ブレーキに対して共通に設けられ、電源(16)の電力を変換した電力を、前記電動モータ又は前記電動ブレーキのいずれか一方に供給可能な電力変換器(28)と、
前記電力変換器から前記電動モータ又は前記電動ブレーキへの配線を切り替える配線切替部(50)と、
前記電力変換器を操作し、且つ、前記配線切替部に対し配線の切替を指令する制御部(40)と、
を備え、
前記制御部は、
車両の駆動が要求されたとき、前記配線切替部に対し前記電動モータ側に配線を切り替えるように指令し、
車両の制動が要求されたとき、要求制動トルクに応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断し、当該判断に基づき前記配線切替部に対し配線の切替を指令する車両用制動システム。
【請求項2】
前記制御部は、車速と、出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクとの関係を記憶しており、
車両の制動が要求されたとき、要求制動トルク及び車速に応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断する請求項1に記載の車両用制動システム。
【請求項3】
前記制御部は、現在の車速において出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクがいずれも要求制動トルク以上である場合、回生制動トルクを優先して用いるように判断する請求項2に記載の車両用制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪を駆動する駆動トルクを発生する電動モータ(例えばインホイールモータ)と、車輪を制動する制動トルクを発生する電動ブレーキと、を備えたシステムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示された車両用制動発生システムでは、車両の制動が要求される場合、制動トルク制御手段は、電動モータの回生に伴う回生制動トルクと、該電動モータの発生する回生電力の供給により電動ブレーキの発生する電気制動トルクと、で要求制動トルクを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-189759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシステムでは、電動モータに電力供給する第1インバータと、電動ブレーキに電力供給する第2インバータとの両方を搭載する必要があり、システムが大型化し、コストが増大するという問題がある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、電動モータ及び電動ブレーキへの電力供給を簡素な構成で実現する車両用制動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用制動システムは、電動モータ(12)と、電動ブレーキ(30)と、電力変換器(28)と、配線切替部(50)と、制御部(40)と、を備える。電動モータは、電力供給により車輪(91-94)を駆動する駆動トルクを出力し、且つ、車輪の回転により回生制動トルクを出力する。電動ブレーキは、電力供給により車輪を制動する制動トルクを出力する。
【0008】
電力変換器は、電動モータ及び電動ブレーキに対して共通に設けられ、電源(16)の電力を変換した電力を、電動モータ又は電動ブレーキのいずれか一方に供給可能である。配線切替部は、電力変換器から電動モータ又は電動ブレーキへの配線を切り替える。制御部は、電力変換器を操作し、且つ、配線切替部に対し配線の切替を指令する。なお、本明細書では、動詞の「切り替える」には送り仮名を付けて表記し、名詞の「切替」には送り仮名を付けないで表記する。
【0009】
制御部は、車両の駆動が要求されたとき、配線切替部に対し電動モータ側に配線を切り替えるように指令する。また、制御部は、車両の制動が要求されたとき、要求制動トルクに応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断し、当該判断に基づき配線切替部に対し配線の切替を指令する。これにより本発明の車両用制動システムは、電動モータ及び電動ブレーキへの電力供給を簡素な構成で実現することができる。
【0010】
好ましくは、制御部は、車速と、出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクとの関係を記憶している。車両の制動が要求されたとき、制御部は、要求制動トルク及び車速に応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断する。これにより、制御部は、車速に応じて、要求制動トルクを確実に発生させることができる。
【0011】
より好ましくは、制御部は、現在の車速において出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクがいずれも要求制動トルク以上である場合、回生制動トルクを優先して用いるように判断する。これにより、制動時に電動モータの回生エネルギーを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の車両用制動システムが適用される四輪独立駆動車両の構成図。
図2】インホイールモータ接続時における車両用制動システムの構成図。
図3】電動ブレーキ接続時における車両用制動システムの構成図。
図4】車両ECUによる配線切替処理のフローチャート。
図5】(a)配線切替マップ、(b)出力可能な回生制動トルク範囲を示すマップ、(c)出力可能な電動ブレーキ制動トルク範囲を示すマップ。
図6図5(a)の配線切替マップに基づく車速の変化及び制動の切替を示すタイムチャート。
図7】比較例のシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(一実施形態)
以下、本発明の一実施形態による車両用制動システムを図面に基づいて説明する。この車両用制動システムは、電動自動車やハイブリッド自動車の各車輪に設けられた電動モータの回生制動トルク、及び、電動ブレーキの制動トルクを用いて車輪を制動するシステムである。
【0014】
図1に、車両用制動システム60が適用される四輪独立駆動車両90の構成例を示す。四輪独立駆動車両90は、独立して制駆動可能な四つの車輪91-94、すなわち、前輪91、右前輪92、左後輪93及び右後輪94を有する。各車輪91-94には、「電動モータ」としてのインホイールモータ12、及び、電動ブレーキ30が設けられている。インホイールモータ12は、車輪91-94のホイール内側に設けられている。
【0015】
インホイールモータ12及び電動ブレーキ30は、配線切替部50を介して、「電力変換器」としてのインバータ28に共通に接続されている。図1中、インホイールモータを「IWM」、電動ブレーキを「EMB」、インバータを「INV」と記す。このように、車両用制動システム60は、対応する車輪毎に、インホイールモータ12、電動ブレーキ30、配線切替部50及びインバータ28を含むセットを四セット備えている。一セットの詳細な構成は、図2及び図3を参照して後述する。
【0016】
さらに車両用制動システム60は、「制御部」としての一つの車両ECU40を備えている。車両ECU40は、インホイールモータ12及び電動ブレーキ30による車輪91-94の制駆動を制御する。本実施形態では主に制動制御に着目し、駆動制御のみに関するアクセル信号等の図示及び説明を省略する。詳しくは後述するように、車両ECU40は、インバータ28を操作し、且つ、配線切替部50に対し配線の切替を指令する。
【0017】
特に車両の制動が要求されたときの動作において、車両ECU40は、図示しない車速センサから車速情報を取得し、また、図示しないブレーキペダルをドライバが踏むことにより発生するブレーキ信号を取得する。車両ECU40は、車速及びブレーキ信号に基づいて制御演算を行い、各インバータ28にスイッチング信号を出力し、各配線切替部50に配線切替信号を出力する。各車輪91-94に対応するインバータ28及び配線切替部50は、同一の信号に基づき同様に動作する。
【0018】
また、四輪独立駆動車両90には、「電源」としてのバッテリ16が搭載されている。バッテリ16は、充放電可能な二次電池である。図1には、一つのバッテリ16に四つのインバータ28が並列接続された構成例を示す。ただし、左右前輪91、92に対応する二つのインバータ28が一つのバッテリに並列接続され、左右後輪93、94に対応する二つのインバータ28が別のバッテリに並列接続されてもよい。或いは、四つのインバータ28がそれぞれ個別に四つのバッテリに接続されてもよい。
【0019】
次に本実施形態のシステム構成について詳細に説明する前に、比較例について図7を参照する。この比較例は、特許文献1(特開2011-189759号公報)に開示された従来技術に基づくシステム構成に相当し、特許文献1の構成要素の符号を援用して記す。比較例の車両用制動システム10は、一つの車輪あたり、第1インバータ22及び第2インバータ34を備える。第1インバータ22はバッテリ16の電力を変換してインホイールモータ12に供給可能である。第2インバータ34はバッテリ16の電力を変換して電動ブレーキ30に供給可能である。車両ECU40は、車速及びブレーキ信号に基づいて生成したスイッチング信号を第1インバータ22及び第2インバータ34に出力する。
【0020】
比較例のシステム構成では、一つの車輪あたり二つのインバータ22、34を搭載する必要があり、システムが大型化し、コストが増大するという問題がある。そこで本実施形態の車両用制動システム60は、インホイールモータ12及び電動ブレーキ30への電力供給を簡素な構成で実現することを目的とする。
【0021】
続いて図2及び図3を参照し、本実施形態の車両用制動システム60において、一つの車輪に対応するシステム構成について説明する。本実施形態の構成要素の符号のうちインホイールモータ12、電動ブレーキ30、バッテリ16及び車両ECU40は、特許文献1に依拠する比較例の符号を援用する。また、本実施形態に特有の構成である「配線切替可能なインバータ28」及び「配線切替部50」は、特許文献1で使用されていない符号を用いる。また、以下の説明では、車輪91-94の符号の記載を適宜省略する。
【0022】
インホイールモータ12は、電力供給により車輪を駆動する駆動トルクを出力し、且つ、車輪の回転により回生制動トルクを出力する。本実施形態のインホイールモータ12は、インバータ28からの三相交流電力の供給により動作する三相ブラシレスモータで構成されている。
【0023】
電動ブレーキ30は、電力供給により車輪を制動する制動トルクを出力する。電動ブレーキ30は、ブレーキモータのトルクによりブレーキパッドをブレーキディスクに押し当てて車輪を制動する。本実施形態の電動ブレーキ30は、インバータ28からの三相交流電力の電力供給によりブレーキモータが動作する。
【0024】
インバータ28は、配線切替部50を介してインホイールモータ12及び電動ブレーキ30に対して共通に設けられている。インバータ28は、三相上下アームのスイッチング素子がブリッジ接続された周知の構成であり、PWM信号等のスイッチング信号により動作することで所望の電圧を生成する。
【0025】
配線切替部50は、インホイールモータ12側への三相電力線に設けられたモータ側スイッチ51と、電動ブレーキ30側への三相電力線に設けられたブレーキ側スイッチ52とを含む。モータ側スイッチ51及びブレーキ側スイッチ52は、例えば半導体スイッチや機械式スイッチ等により構成されている。
【0026】
モータ側スイッチ51及びブレーキ側スイッチ52は、一方がオン(接続)のとき他方がオフ(遮断)するように切り替えられる。厳密には、切替時に両方が同時にオンしないように、一旦両方がオフの期間を経て切り替えられることが好ましい。このように配線切替部50は、インバータ28からインホイールモータ12又は電動ブレーキ30への配線を切り替える。図2に、インホイールモータ12への接続時の配線状態を示し、図3に、電動ブレーキ30への接続時の配線状態を示す。
【0027】
インバータ28は、バッテリ16の直流電力を変換した三相交流電力を、インホイールモータ12又は電動ブレーキ30のいずれか一方に供給可能である。言い換えれば、インバータ28は、インホイールモータ12又は電動ブレーキ30の両方に同時に電力供給することはできない。また、インホイールモータ12への接続時、インバータ28の回生動作により、インホイールモータ12からバッテリ16へ電力を回生可能である。
【0028】
上述の通り車両ECU40は、インバータ28を操作し、且つ、配線切替部50に対し配線の切替を指令する。車両の駆動が要求されたとき、車両ECU40は、配線切替部50に対しインホイールモータ12側に配線を切り替えるように(すなわち図2の状態にするように)指令する。
【0029】
車両の制動が要求されたとき、車両ECU40は、要求制動トルクに応じて、インホイールモータ12の回生制動トルク、又は、電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断し、当該判断に基づき配線切替部50に対し配線の切替を指令する。
【0030】
以上のように、本実施形態の車両用制動システム60では、一つの車輪あたりに一つのインバータ28が搭載されればよいため、インホイールモータ12及び電動ブレーキ30への電力供給を簡素な構成で実現することができる。よって、システムの大型化やコストの増大を回避することができる。
【0031】
次に図4のフローチャート、図5の車速-制動トルクマップ、及び、図6のタイムチャートを参照し、車両ECU40による配線切替処理について説明する。本実施形態の車両ECU40は、車速と、出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクとの関係をマップに記憶している。車両の制動が要求されたとき、車両ECU40は、要求制動トルク及び車速に応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断する。
【0032】
フローチャートにおいて記号「S」はステップを意味する。フローチャートの初期にはインバータ28はインホイールモータ12に接続されており、車輪は駆動状態である。S1では、駆動状態からブレーキ信号による制動要求が発生する。車両ECU40は、S2で要求制動トルクを算出し、S3で車速を取得する。S4で車両ECU40は、要求制動トルクが出力可能な回生制動トルクの範囲内であるか判断する。
【0033】
ここで図5(a)~図5(c)を参照する。まず図5(b)に示すように、出力可能な回生制動トルク範囲は車速に応じて変化する。低速域(例えば時速約10km/h以下)では、車速が0km/hから増加するにつれ、出力可能な回生制動トルクは急激に立ち上がる。出力可能な回生制動トルクは、中速域で最大となり、中速域から高速域にかけて次第に低下し、上限速度以上の領域(例えば時速100km/h超)では0となる。
【0034】
一方、図5(c)に示すように、出力可能な電動ブレーキ制動トルク範囲は、車速にかかわらず十分に大きい値にまで至っている。この電動ブレーキ制動トルク範囲は、中速域における出力可能な回生制動トルクの最大値を上回っている。つまり、車速にかかわらず電動ブレーキ30は、インホイールモータ12の回生制動トルクを上回る電動ブレーキ制動トルクを出力可能である。
【0035】
図5(a)に示す配線切替マップは、図5(b)と図5(c)とを組み合わせたものである。太破線は、ドライバのブレーキ操作によって発生する要求制動トルクを表す。制動により、車速はV0からV1、V2、V3を経て0まで低下する。V1は要求制動トルクの立ち上がりが完了したときの車速である。V2、V3は、出力可能な回生制動トルク範囲の最大ラインと要求制動トルクとが交わる車速である。したがって、フローチャートのS4の判断は、制動中の車速の変化に応じて次のように場合分けされる。
【0036】
[1] 「車速>V2」のとき、NO
[2] 「V2≧車速≧V3」のとき、YES
[3] 「V3>車速≧0」のとき、NO
【0037】
フローチャートに戻り、S4でNOの場合、S5で車両ECU40は、配線切替部50に対し電動ブレーキ30側に配線を切り替えるように指令する。S4でYESの場合、S6で車両ECU40は、配線切替部50に対しインホイールモータ12側に配線を切り替えるように指令する。指令された側に既に接続されている場合、現在の接続状態が維持される。この配線切替処理は、車両が停止し、S7の制動完了判断ステップでYESと判断されるまで繰り返される。
【0038】
「車速>V2」のとき、及び、「V3>車速≧0」のとき、出力可能な回生制動トルクが要求制動トルクに達しないため、必然的に電動ブレーキ制動トルクを用いるしかない。一方、「V2≧車速≧V3」のとき、出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクはいずれも要求制動トルク以上である。つまり、要求制動トルクを出力する目的からは、回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクのいずれも使用可能である。
【0039】
ここで、本実施形態の車両ECU40は、出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクがいずれも要求制動トルク以上である場合、回生制動トルクを優先して用いるように判断する。したがって、「V2≧車速≧V3」のとき、S4でYESと判断され、配線切替部50にてインホイールモータ12側に配線が切り替えられる。
【0040】
図6のタイムチャートに、図5(a)の配線切替マップに基づく車速の変化及び制動の切替を示す。時刻t0にドライバがブレーキペダルを踏み、電動ブレーキ制動による制動トルクが増加し始める。車速がV1となる時刻t1に電動ブレーキ制動トルクが一定値に達する。車速がV2となる時刻t2に電動ブレーキ制動トルクから回生制動トルクに切り替えられる。その後、車速がV3となる時刻t3に回生制動トルクから再び電動ブレーキ制動トルクに切り替えられる。時刻t4に車両停止し制動完了する。
【0041】
このように、本実施形態の車両ECU40は、車両の制動が要求されたとき、要求制動トルク及び車速に応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断する。これにより、車両ECU40は、車速に応じて、要求制動トルクを確実に発生させることができる。
【0042】
また、本実施形態の車両ECU40は、現在の車速において出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクがいずれも要求制動トルク以上である場合、回生制動トルクを優先して用いるように判断する。これにより、制動時にインホイールモータ12の回生エネルギーを有効に利用することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
(a)各車輪91-94に駆動トルク及び回生制動トルクを出力可能な電動モータは、車輪91-94のホイール内側に設けられたインホイールモータに限らず、車体側に設けられ、出力軸が車輪91-94に結合されたモータであってもよい。
【0044】
(b)電動モータ及び電動ブレーキは、三相交流電力の供給により動作するものに限らず、直流電力の供給により動作するものであってもよい。その場合、電力変換器として、インバータに代えてHブリッジ回路が用いられてもよい。
【0045】
(c)電力変換器に電力を供給する電源は、バッテリに限らず、キャパシタや燃料電池で構成されてもよい。また、直流電源の電力に代えて、交流電源の出力が整流された電力が電力変換器に供給されてもよい。
【0046】
(d)現在の車速において出力可能な回生制動トルク及び電動ブレーキ制動トルクがいずれも要求制動トルク以上である場合、車両ECU40は、常に回生制動トルクを優先して用いるのでなく、別の条件により、いずれの制動トルクを用いるかを判断してもよい。例えば、バッテリ16のSOCが上限閾値を超えており積極的に放電させたい場合、電動ブレーキ制動トルクを優先して用いるようにしてもよい。
【0047】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
12・・・インホイールモータ(電動モータ)、
16・・・バッテリ(電源)、
28・・・インバータ(電力変換器)、
30・・・電動ブレーキ、
40・・・車両ECU(制御部)、
50・・・配線切替部、
60・・・車両用制動システム、
91-94・・・車輪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7