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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179949
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0606 20160101AFI20221129BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221129BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221129BHJP
【FI】
H01M8/0606
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086780
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】長田 幸輔
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE12
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】
【課題】気化器に導入される水を安定的に気化させて発電を適切に行う。
【解決手段】燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池スタックと、改質水を蒸発させて水蒸気を生成する気化器と、気化器で生成された水蒸気により原燃料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器と、燃料電池スタックからのオフガスの燃焼により気化器を加熱する燃焼部と、を備える燃料電池システムにおいて、気化器の内部には、ブロック状の多孔質セラミックス部材が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池スタックと、
改質水を蒸発させて水蒸気を生成する気化器と、
前記気化器で生成された水蒸気により原燃料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池スタックからのオフガスの燃焼により前記気化器を加熱する燃焼部と、
を備える燃料電池システムであって、
前記気化器の内部には、ブロック状の多孔質セラミックス部材が配置されている
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記多孔質セラミックス部材は、気化器の内部の形状および寸法に合わせた形状および寸法に形成されている
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池システムとしては、燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池スタックと、改質水から水蒸気を生成する気化器と、原燃料ガスと水蒸気とから燃料ガスを生成して燃料電池スタックに供給する改質器とを備えるものが提案されている。例えば、特許文献1には、熱伝導部材により燃料電池スタックの熱を気化器に伝えることで、燃料電池スタックからのオフガスを燃焼して気化器に伝熱するものに比して、気化器への伝熱量を安定させることで水の突沸を抑制している。また、特許文献2には、気化器内に水拡散部材(気化促進部材)が配置されている。水拡散部材は、耐熱性を有するステンレス等の金属網や、セラミックファイバーを積層したブランケット状の部材であり、毛細管現象で水が金属網やセラミックファイバーの繊維間を拡散しながら気化することで、気化器に導入された水の滞留を抑制して水の突沸を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5379962号公報
【特許文献2】特許第6753930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、燃料電池スタックにおける熱伝導部材の配設箇所の周囲でスタック温度が低下し、燃料電池スタックの発電効率が低下したり燃料電池スタックの劣化が促進したりするおそれがある。また、特許文献2の構成では、水拡散部材として金属網が用いられる場合、熱応力による変形で気化器の底面との間に隙間が生じて水が滞留し、突沸が生じるおそれがある。一方、水拡散部材としてブランケット状のセラミックファイバーが用いられる場合、セラミックファイバーを重ね合わせて設置したり経年劣化などにより、セラミックファイバーにつぶれが生じて気化が安定せず、突沸が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、気化器に導入される水を安定的に気化させて発電を適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の燃料電池システムは、
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電する燃料電池スタックと、
改質水を蒸発させて水蒸気を生成する気化器と、
前記気化器で生成された水蒸気により原燃料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料電池スタックからのオフガスの燃焼により前記気化器を加熱する燃焼部と、
を備える燃料電池システムであって、
前記気化器の内部には、ブロック状の多孔質セラミックス部材が配置されている
ことを要旨とする。
【0008】
本発明の燃料電池システムでは、燃料電池スタックからのオフガスの燃焼により気化器を加熱するから、熱伝導部材により燃料電池スタックの熱を気化器に伝える構成のように、燃料電池スタックに局部的な温度低下が生じることがなく、燃料電池スタックの発電効率の低下や劣化を防止することができる。また、気化器の内部に配置される多孔質セラミックス部材をブロック状とすることで、設置時や経年劣化、熱応力などでつぶれなどの変形が生じるのを防止することができる。また、多孔質セラミックス部材の気孔による毛細管現象で、気化器に導入された水を3次元に拡散させることで蒸発器底部での水の滞留を防止することができる。これらのことから、水を安定的に気化させて発電を適切に行うことができる。また、セラミックス部材の気孔径や気孔密度を、燃料電池スタックの発電出力や運転条件などに応じたものとすることで、気化をより安定させることができる。
【0009】
本発明の燃料電池システムにおいて、前記多孔質セラミックス部材は、気化器の内部の形状および寸法に合わせた形状および寸法に形成されているものとしてもよい。こうすれば、多孔質セラミックス部材が気化器内でずれて隙間が生じたり、隙間に水が溜まるのを防止して、気化をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料電池システム10の構成の概略を示す構成図である。
図2】気化器30の構成の概略を示す構成図である。
図3】気化器30の内部の形状および寸法を示す断面図である。
図4】多孔質セラミックス部材35が収容された気化器30の断面図である。
図5】多孔質セラミックス部材35で水が拡散する様子を示すイメージ図である。
図6】本実施形態の気化器30への導入水量と入口温度と出口温度と内圧の時間変化の様子を示す説明図である。
図7】比較例の気化器への導入水量と入口温度と出口温度と内圧の時間変化の様子を示す説明図である。
図8】変形例の多孔質セラミックス部材35Bの断面図である。
図9】変形例の多孔質セラミックス部材35Cの断面図である。
図10】変形例の多孔質セラミックス部材35Dの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
図1は燃料電池システム10の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の燃料電池システム10は、図1に示すように、発電モジュール20と、原燃料ガス供給装置40と、エア供給装置50と、改質水供給装置60と、排熱回収装置70と、制御装置90とを備える。
【0013】
発電モジュール20は、水素を含む燃料ガス(改質ガス)と酸素を含む酸化剤ガス(エア)との供給を受けて発電する燃料電池スタック21と、改質水を蒸発させて水蒸気を生成すると共に原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)を予熱する気化器30と、原燃料ガスと水蒸気とから燃料ガス(改質ガス)を生成する改質器23とを備える。
【0014】
燃料電池スタック21は、酸素イオン伝導体からなる固体電解質と、固体電解質の一方の面に設けられたアノードと、固体電解質の他方の面に設けられたカソードとを備える燃料電池セルが複数配置された固体酸化物形燃料電池として構成されている。この燃料電池スタック21は、アノードに供給される燃料ガス中の水素とカソードに供給されるエア中の酸素とによる電気化学反応によって発電する。燃料電池スタック21の出力端子は、図示しないパワーコンディショナを介して商用電源と負荷とを接続する電力ラインに接続されている。燃料電池スタック21から出力端子に出力された直流電力は、パワーコンディショナによる電圧変換および直流/交流変換を経て商用電源からの交流電力に付加されて負荷に供給される。
【0015】
原燃料ガス供給装置40は、原燃料ガスを供給するガス供給源1と気化器30とを接続する原燃料ガス供給管41と、原燃料ガス供給管41にガス供給源1側から順に設けられる原燃料ガス供給弁42(2連弁),原燃料ガスポンプ43および脱硫器44とを備える。原燃料ガス供給装置40は、原燃料ガス供給弁42を開弁した状態で原燃料ガスポンプ43を作動させることにより、ガス供給源1からの原燃料ガスを脱硫器44を介して気化器30へ供給する。脱硫器44は、原燃料ガスに含まれる硫黄分を除去するものであり、例えば、硫黄化合物をゼオライトなどの吸着剤に吸着させて除去する常温脱硫方式などを採用することができる。気化器30へ供給された原燃料ガスは、気化器30で予熱された後、改質器23へ供給され、燃料ガスへと改質される。そして、改質された燃料ガスは、マニホールド25を介して燃料電池スタック21のアノードへ供給される。
【0016】
エア供給装置50は、外気と連通するフィルタ51と燃料電池スタック21とを接続するエア供給管52と、エア供給管52に設けられるエアブロワ53とを備える。エア供給装置50は、エアブロワ53を作動することにより、フィルタ51を介して吸入したエアを燃料電池スタック21のカソードへ供給する。
【0017】
改質水供給装置60は、改質水を貯留する改質水タンク61と、改質水タンク61と気化器30とを接続する改質水供給管62と、改質水供給管62に設けられる改質水ポンプ63とを備える。改質水供給装置60は、改質水ポンプ63を作動させることにより、改質水タンク61の改質水を気化器30へ供給する。気化器30へ供給された改質水は、気化器30で水蒸気とされ、改質器23における水蒸気改質反応に利用される。
【0018】
燃料電池スタック21と気化器30と改質器23とは、断熱材料により形成された箱型のモジュールケース27に収容されている。モジュールケース27内には、燃料電池スタック21の起動や、気化器30における水蒸気の生成、改質器23における水蒸気改質反応に必要な熱を供給するための燃焼部24が設けられている。燃焼部24には燃料電池スタック21を通過した燃料オフガス(アノードオフガス)と酸化剤オフガス(カソードオフガス)とが供給される。燃焼部24は、これらの混合ガスを点火装置28の放電により点火して燃焼させることにより、燃焼熱を燃料電池スタック21や気化器30、改質器23に供給して、水蒸気の生成(気化)や水蒸気改質反応などに適した温度とする。また、燃料オフガスおよび酸化剤オフガスの燃焼により生成される燃焼排ガスは、燃焼触媒26を介して熱交換器75へ供給される。燃焼触媒26は、燃焼部24で燃え残ったオフガスを触媒によって再燃焼させる酸化触媒である。
【0019】
排熱回収装置70は、貯湯水を貯留する貯湯タンク71と、熱交換器75と、貯湯タンク71と熱交換器75とを接続して貯湯水の循環路を形成する循環配管72と、循環配管72に設けられた循環ポンプ73とを備える。排熱回収装置70は、循環ポンプ73を作動させて貯湯水を循環させることにより、貯湯タンク71の下部から貯湯水を取り出して熱交換器75にて燃焼排ガスとの熱交換により加温し、加温した貯湯水を貯湯タンク71の上部へ戻す。熱交換器75は凝縮水供給管76を介して改質水タンク61に接続されると共に排気配管77を介して外気と連通されている。熱交換器75に供給された燃焼排ガスは、貯湯水との熱交換によって冷却され、水蒸気成分が凝縮されて凝縮水供給管76と図示しない水精製器とを介して改質水タンク61に回収される。また、残りの排気ガスは、排気配管77を介して外気へ排出される。
【0020】
制御装置90は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、ROMやRAM、入出力ポートを備える。制御装置90には、原燃料ガス供給管41を流れる原燃料ガスの単位時間当たりの流量を検出するガス流量センサやエア供給管52を流れるエアの単位時間当たりの流量を検出するエア流量センサ、改質水タンク61の水位センサからの検出信号などが入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置90からは、点火装置28や原燃料ガス供給弁42、原燃料ガスポンプ43、エアブロワ53、改質水ポンプ63、循環ポンプ73などへの駆動信号が出力ポートを介して出力されている。
【0021】
また、制御装置90は、所定の起動条件が成立している状態でシステムの起動が要求されると、システム起動処理を実行する。システム起動処理は、例えば、対応する補機類を順次制御し、脱硫器44に燃料成分を吸着させて混合ガスの空燃比ずれを抑制する燃料吸着処理、燃焼部24のパージ処理、点火装置28による燃焼部24内のオフガスの着火処理、水蒸気改質処理などを順次実行することにより行う。また、制御装置90は、システムの起動が完了すると、発電処理を実行する。発電処理では、システム要求出力に基づいて設定した目標ガス流量により原燃料ガスが供給されるよう原燃料ガスポンプ43を制御する原燃料ガス供給制御と、目標ガス流量に対して所定の空燃比となるように設定した目標エア流量によりエアが供給されるようエアブロワ53を制御するエア供給制御と、システム要求出力に基づいて設定した目標水量により改質水が供給されるよう改質水ポンプ63を制御する改質水供給制御とが実行される。なお、発電中の負荷変動に伴う要求出力の変化によっては、大きな目標水量が設定されて気化器30に短時間に多量の改質水が導入されることがある。
【0022】
ここで、気化器30の構成について説明する。図2は、気化器30の構成の概略を示す構成図であり、図3は、気化器30の内部の形状および寸法を示す断面図であり、図4は、多孔質セラミックス部材35が収容された気化器30の断面図である。図示するように、気化器30は、気化器本体31と、第1導入管32と、第2導入管33と、導出管34と、多孔質セラミックス部材35とを備える。
【0023】
気化器本体31は、例えば直方体状(箱状)の部材として形成され、長手方向(図2の左右方向)の一端(左端)に第1導入管32と第2導入管33とが設けられると共に、他端(右端)に導出管34が設けられている。第1導入管32と第2導入管33とは、例えば第2導入管33を内管とすると共に第1導入管32を外管とする二重管構造として設けられている。第1導入管32は、原燃料ガス供給管41に接続されており、第2導入管33(外周面)との間から気化器本体31内に原燃料ガスを導入する。また、第2導入管33は、改質水供給管62に接続されており、気化器本体31内に改質水を導入する。
【0024】
多孔質セラミックス部材35は、例えばアルミナやコージェライト、フォルステライトなどのセラミックス材料を用いてブロック状に形成され、複数(多数)の気孔を有する。この多孔質セラミックス部材35は、気化器本体31の長手方向の略中央に配置されている。また、多孔質セラミックス部材35は、断面矩形状の直方体状に形成されており、縦横の寸法がそれぞれ気化器30内の縦H、横W(図3参照)より若干小さくなっている。即ち、多孔質セラミックス部材35は、気化器30の内部の形状(断面形状)および寸法に合わせた形状および寸法に形成されている。このため、図4に示すように、多孔質セラミックス部材35は、気化器30内に縦横方向に隙間無く収容される。また、複数の気孔は、その気孔径や気孔密度を、燃料電池スタック21の発電出力や温度などの各種運転条件などの仕様に合わせて形成されたものとなっている。即ち、多孔質セラミックス部材35は、燃料電池スタック21の仕様に合わせた気孔径や気孔密度となるように調整された製造条件で製造されている。例えば気孔径は1mm~数mm程度のうち燃料電池スタック21の仕様に応じた径の割合が多くなっている。また、多孔質セラミックス部材35は、ブロック状であるため形状を保持することができるから、自重によって気孔がつぶれたり、配置時の取り扱いや使用中の経年劣化などで変形するのを防止することができる。
【0025】
こうして構成された気化器30における気化について説明する。図5は、多孔質セラミックス部材35で水(改質水)が拡散する様子を示すイメージ図である。図示するように、気化器30内に導入された改質水は、気化器本体31の底面を流れて多孔質セラミックス部材35に到達し、複数の気孔Pで拡散されながら気化される(図3の矢印参照)。即ち、多孔質セラミックス部材35は、気化器30内に導入された改質水を複数の気孔Pによる毛細管現象により水平方向および鉛直方向に空間的に拡散させて気化を促すのである。このため、例えば短時間に生じる水量変化に対し、水を滞留させずに拡散させて安定した気化を実現することができる。気化された水蒸気は、原燃料ガスと共に気化器本体31の導出管34から導出されて改質器23に導入されるから、改質ガスを安定的に生成して燃料電池スタック21による発電を適切に行うことができる。
【0026】
また、図6は、本実施形態の気化器30への導入水量と入口温度と出口温度と内圧の時間変化の様子を示す説明図であり、図7は、比較例の気化器への導入水量と入口温度と出口温度と内圧の時間変化の様子を示す説明図である。図6図7では、燃料電池スタック21の要求出力の変化に伴って多量の水が導入された場合の様子を示す。
【0027】
比較例の気化器は、図示は省略するが、多孔質セラミックス部材35に代えて、気化器内に球状のセラミックビーズを充填したものである。セラミックビーズ同士の隙間は、多孔質セラミックス部材35の気孔径よりも大きくなっている。このため、比較例では、毛細管現象が発生せず、導入された水が拡散されずに滞留し易くなる。これにより、突沸が誘発され易くなるため、図7に示すように、導入水量が増加した時刻t1以降に、内圧が顕著に高くなる箇所が頻発するなど、気化器の内圧の変化が大きくなっている。また、上昇した出口温度が、入口温度に近い温度に収束するまでに比較的時間がかかっている。これに対して本実施形態では、図6に示すように、導入水量が増加した時刻t0以降でも気化器30の内圧が大きく変わらず、内圧が顕著に高くなる箇所は発生していない。また、一旦上昇した出口温度も比較的速やかに収束している。このように、多孔質セラミックス部材35を備える本実施形態では、突沸の発生を防止して過度な温度上昇を抑えることで、安定的に気化させることができる。
【0028】
以上説明した実施形態の燃料電池システム10では、オフガスの燃焼熱により気化器30を加熱するから、熱伝導部材などで伝熱する構成のように、燃料電池スタック21に局部的な温度低下が生じることがなく、燃料電池スタック21の発電効率の低下や劣化を防止することができる。また、多孔質セラミックス部材35を、ブロック状とするから、つぶれなどの変形を防止すると共に複数の気孔による毛細管現象で水を拡散させて滞留するのを防止することができる。これらのことから、気化器30における突沸の発生を防止し、改質水を安定的に気化させて、発電を適切に行うことができる。
【0029】
また、多孔質セラミックス部材35は、気化器30の内部の形状および寸法に合わせた形状および寸法に形成されているため、気化器30内でずれたり隙間が生じるのを防止することができる。このため、水の滞留やそれにより誘発される突沸を抑えて、より安定的に気化させることができる。また、多孔質セラミックス部材35の気孔径や密度を、燃料電池スタック21の仕様に応じたものとすることで、気化をより安定させることができる。また、多孔質セラミックス部材35は、ブロック状の1つの部材としたから、複数の部材を配置する構成のように部材同士の隙間などが生じることがなく、安定的な気化を維持することができる。
【0030】
上述した実施形態では、断面矩形状の多孔質セラミックス部材35を例示したが、これに限られない。多孔質セラミックス部材35の形状は、気化器30の内部の形状および寸法に合わせた形状であればよく、気化器30は如何なる形状としてもよい。図8図10は、変形例の多孔質セラミックス部材35B,35C,35Dの断面図である。図8の多孔質セラミックス部材35Bは、円筒状の気化器に合わせて、断面円筒状に形成したものである。また、図9の多孔質セラミックス部材35Cは、円環状の気化器に合わせて、断面円環状に形成したものである。また、図10の多孔質セラミックス部材35Dは、楕円状の気化器に合わせて、断面楕円状に形成したものである。なお、図9の円環状の気化器としては、例えば中心孔36にガス導入管が貫通するように配置し、周囲の円環部に改質水を導入して気化する構造であり、原燃料ガスと水蒸気とをそれぞれ別々に流通させて改質器23に導入する。このため、気化に必要な分の多孔質セラミックス部材35を配置すればよい。また、原燃料ガス量や水蒸気量の供給制御の自由度を高めて狙い通りの供給量を確保し易くするから、必要な改質ガスを適切に生成することができる。
【0031】
上述した実施形態では、多孔質セラミックス部材35が気化器30の内部の形状および寸法に合わせた形状および寸法に形成されたが、これに限られず、気化器30内の一部に隙間が生じるような形状および寸法に形成されてもよい。例えば、多孔質セラミックス部材35の高さが、気化器30内の高さHよりも低く、上部に隙間ができてもよい。なお、導入された水は、気化器本体31内の底面を流れるから、水の拡散を促すために気化器30内の下部に隙間が生じないような形状および寸法が好ましい。また、多孔質セラミックス部材35としては、1つの部材に限られず、複数の部材で構成されてもよい。
【0032】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池スタック21が「燃料電池スタック」に相当し、気化器30が「気化器」に相当し、改質器23が「改質器」に相当し、燃焼部24が「燃焼部」に相当し、多孔質セラミックス部材35が「多孔質セラミックス部材」に相当する。
【0033】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 ガス供給源、10 燃料電池システム、20 発電モジュール、21 燃料電池スタック、23 改質器、24 燃焼部、25 マニホールド、26 燃焼触媒、27 モジュールケース、28 点火装置、30 気化器、31 気化器本体、32 第1導入管、33 第2導入管、34 導出管、35,35B,35C,35D 多孔質セラミックス部材、36 中心孔、40 原燃料ガス供給装置、41 原燃料ガス供給管、42 原燃料ガス供給弁、43 原燃料ガスポンプ、44 脱硫器、50 エア供給装置、51 フィルタ、52 エア供給管、53 エアブロワ、60 改質水供給装置、61 改質水タンク、62 改質水供給管、63 改質水ポンプ、70 排熱回収装置、71 貯湯タンク、72 循環配管、73 循環ポンプ、75 熱交換器、76 凝縮水供給管、77 排気配管、90 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10