(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179950
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】抗菌性を持つ室内装飾体
(51)【国際特許分類】
B22F 8/00 20060101AFI20221129BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221129BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20221129BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B22F8/00
B22F1/00 L
B22F9/04 B
A61L9/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086781
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【テーマコード(参考)】
4C180
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA19
4C180CC01
4C180EA02X
4C180EA07X
4C180EA08X
4C180EA27Y
4C180MM06
4K017AA02
4K017BA05
4K017DA09
4K017EA06
4K018BA02
4K018BB08
4K018BD10
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】従来よりも安価に製造することができ、しかも抗菌・抗ウイルス作用の持続性に優れた抗菌性を持つ室内装飾体を提供する。
【解決手段】本発明の室内装飾体は、上面が開口した容器10と、この容器に充填された銅素材の削り屑20と、この削り屑の集合体の上面に配置された装飾部材30とからなることを特徴とする。銅素材の削り屑が、銅素材を旋盤またはフライス盤により切削した際に発生する螺旋状の削り屑であることが好ましい。容器10の下に、受け皿11を設けた構造とすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した容器と、この容器に充填された銅素材の削り屑と、この削り屑の集合体の上面に配置された装飾部材とからなることを特徴とする抗菌性を持つ室内装飾体。
【請求項2】
銅素材の削り屑が、銅素材を旋盤またはフライス盤により切削した際に発生する螺旋状の削り屑であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性を持つ室内装飾体。
【請求項3】
前記容器の下に、受け皿を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性を持つ室内装飾体。
【請求項4】
銅素材が、純銅または銅合金であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の抗菌性を持つ室内装飾体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した抗菌性を持つ室内装飾体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅に抗菌・抗ウイルス作用があることは、従来から広く知られている。そのメカニズムは、銅イオンがウイルスのエンベローブ膜に穴を開けたり、銅イオンによって生成されたフリーラジカルが遺伝物質を分解するためであろうと考えられている。また米国の国立衛生研究所(NHI)の研究チームによれば、新型コロナウイルスの残存時間はプラスチックやステンレスの表面では72時間、段ボールの表面では24時間であるのに対して、銅の表面では4時間であるとのことであり、銅が新型コロナウイルスに対しても抗ウイルス作用を持つことが確認されている。
【0003】
このような抗菌・抗ウイルス作用を利用した抗菌材料も従来から提案されており、特許文献1には粒子径を1nmから1μmとした非常に微細な銅合金粉末を物品の表面に分散させることが記載されている。また特許文献2には、銅合金糸を含む複合繊維を用いた抗菌性布帛が記載されている。また特許文献3には、ポルトランドセメントに銅粉末を混合した抗菌組成物が開示されている。しかしこれらの従来の抗菌・抗ウイルス材は表面積を増大させるために銅を微細な粉末または微細な繊維に加工しており、そのために多額の製造コストがかかるという問題があった。
【0004】
また特許文献3には、抗菌材を吹き付けるか抗菌材を練り込んだ樹脂や繊維で造花を作成し、室内に置くことにより消臭効果や抗菌効果とともに、室内装飾品として美的効果を発揮させることが記載されている。しかしその消臭効果や抗菌効果は時間の経過とともに次第に低下して行くことが避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-65375号公報
【特許文献2】特開2019-143272号公報
【特許文献3】実用新案登録第3135466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、従来よりも安価に製造することができ、しかも抗菌・抗ウイルス作用の持続性に優れた抗菌性を持つ室内装飾体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は銅製品の加工を業とするものであり、銅素材を旋盤やフライス盤で切削する際に発生する大量の削り屑に着目した。この削り屑はこれまで廃棄物として処分されていたのであるが、これを利用すればきわめて安価に銅の抗菌・抗ウイルス作用を利用した室内装飾体を製造できることに思い至った。
【0008】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであって、上面が開口した容器と、この容器に充填された銅素材の削り屑の集合体と、この削り屑の集合体の上面に配置された装飾部材とからなることを特徴とするものである。
【0009】
なお、銅素材の削り屑が、銅素材を旋盤またはフライス盤により切削した際に発生する螺旋状の削り屑であることが好ましい。また、前記容器の下に、受け皿を設けた構造とすることもできる。また、銅素材を純銅または銅合金とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の室内装飾体は、従来は廃棄物として処分されていた銅素材を切削した際に発生する削り屑を原料としているため、極めて安価に製造することができる。この削り屑は細かくかつ螺旋状であるため大きい表面積を持つ。しかもこの削り屑を、上面が開口した容器の内部に充填したことにより、空気との接触面積を確保しながら削り屑の飛散を防止し、室内に設置した場合にも銅の微細片が散乱することがない。
【0011】
本発明の室内装飾体を室内に置けば、室内の空気中に浮遊する細菌やウイルスが銅素材の削り屑の表面に接触したとき、銅イオンによる抗菌・抗ウイルス作用によりその活性を低下させることができる。また銅には抗黴効果や、消臭機能もあるため、室内に発生する黴を抑制したり、室内を消臭することもできる。しかも本発明の空気浄化具はその効果が半永久的に持続し、低下することがない。さらに、本発明の空気浄化具は削り屑の集合体の上面に装飾部材を配置したものであるから、室内の装飾品としての機能も有するものであり、室内の装飾を兼ねた空気浄化具として、実用的価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態を示す外観斜視図であり、
図2はその断面図である。10は上面が開放された容器であり、その内部に銅素材の削り屑20が充填されている。
【0014】
容器10の材質は特に限定されるものではなく、樹脂、金属、陶磁器、ガラス、紙など任意の材質とすることができる。また、金属ネットやパンチングメタル、孔開き樹脂板など、空気を流通させることができる孔を備えたものであってもよい。ただし孔のサイズは、銅素材の削り屑20が飛び出さないように小さくしておくことが好ましい。
【0015】
容器10の形状も特に限定されるものではなく、図示のような鉢状とするほか、深さの浅い皿状としてもよい。さらにタンブラー状、手付きカップ状、脚付きコップ状とするなど任意の形状とすることができる。ただし何れの場合にも室内の空気と銅素材の削り屑20とが接触できるように、上面を開口させておくものとする。
【0016】
なおこの実施形態では、容器10の下部に受け皿11が配置されている。受け皿11は必須のものではないが、容器10からこぼれた銅素材の削り屑20の微細片を室内に飛散しないように受けることができるので、必要に応じて用いればよい。
【0017】
銅素材の削り屑20は、銅素材を旋盤またはフライス盤により切削した際に発生する削り屑である。これらの削り屑20は図示のように細かい螺旋状となるものが多く、その表面のみならず内部にも微細な空間が形成されるので、室内の空気との接触面積が非常に大きくなる。図示した削り屑20は銅素材をフライス切削した際に発生したものである。なお、旋盤の削り屑20はやはり螺旋状であるが、個々の長さはフライス盤から発生したものよりも長くなることが多い。両者を混ぜて使用しても差し支えない。加工条件によるが、螺旋の外径は1~10mm程度である。
【0018】
なお、銅素材は純銅であっても銅合金であってもよい。例えばアルミナ分散強化銅、銀含有銅、ベリリウム含有銅、クロムジルコニウム含有銅、コバルト含有銅など様々な銅合金の削り屑20を利用することができる。これらの銅素材は工業材料として広く用いられているものであり、その削り屑20の発生量も多いため、容易に入手できるものである。合金成分の多くは抗菌・抗ウイルス作用を持つものではないが、銅の抗菌・抗ウイルス作用を阻害することはない。
【0019】
本発明の室内装飾体は、削り屑20の集合体の上面の装飾体30を配置している。実施例では削り屑20の集合体を地面あるいは水面に見たてて、その上に装飾体30としての造花が配置されている。造花は軸31の上部に花弁32や葉33などを取り付けたものであるから、この削り屑20の集合体に軸部31を差し込み、上部を露出させた状態とする。これにより華やかな外観とし、室内装飾体とすることができる。なお、造花は適宜交換することができ、場合によっては生花を加えることも可能である。さらに、子供の居る家庭では装飾体30として、小型の人形や旗などの装飾を用いることもできる。
【0020】
このように構成された本発明の室内装飾体は、室内の空気を銅の削り屑20と接触させることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルスを銅表面で捕捉し、細菌やウイルスの活性を低下させるものである。しかも削り屑20の内部に形成される空間の形状は複雑に入り組んでいるので、マスクと同様に空気中に浮遊する細菌やウイルスを確実に銅表面で捕捉することができる。このため、空気中に浮遊する細菌やウイルスの活性を低下させる効果も大きくなる。しかもこのような削り屑20は銅粉末や銅繊維のように空中に飛散することがなく、誤って吸い込むこともない。なお銅は鍋やフライパンなどにも使用されている安全な金属であるから、誤って幼児が触ったり舐めたりしても、人体への悪影響はない。
【0021】
本発明の室内装飾体は、銅の削り屑20と室内の空気を接触させることにより、空気中に浮遊する細菌やウイルスを銅表面で捕捉し、細菌やウイルスの活性を低下させる効果が高まるため、窓際などの空気の流通場所に配置することが望ましい。更に扇風機や小型のファンをその近傍に配置して空気の接触効果を更に高めることもできる。
【0022】
なお
図3に示すように、少量の水を注ぐことも可能である。銅の削り屑20に吸水性はないが、注がれた水の一部は削り屑20の表面に付着し、残部は容器10の底部に流下する。銅イオンは水中の微生物に対しても抗菌効果を発揮するため、銅の削り屑20と接触した水は雑菌やカビが発生することなく清浄な状態に保たれる。そして徐々に蒸発して室内を加湿する効果がある。また、削り屑20の表面は乾燥状態にあるよりも濡れていた方が空中の細菌やウイルスを捕捉する効果が高まるものと期待されるので、花に水を注ぐように定期的に少量の水を注ぐことが好ましい。なお、
図3に示すように受け皿11を配置しておけば、注ぎ過ぎた水が容器10から零れたような場合にも、受け止めることができる。
【0023】
以上に説明したように、本発明の室内装飾体はこれまで廃棄物として処分されていた銅素材の削り屑20を利用したものであるから製作コストが安価であり、しかも優れた抗菌・抗ウイルス効果や抗黴、消臭効果を得ることができる。また本発明の空気浄化具は銅の持つ抗菌・抗ウイルス効果を利用しているためその効果は反永久的に持続するものである。さらに本発明の空気浄化具は上面に造花などの装飾体30を配置したことにより、室内装飾品として用いるに適したものである。
【符号の説明】
【0024】
10 容器
11 受け皿
20 削り屑
30 装飾体
31 軸部
32 花弁
33 葉