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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179963
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置およびトランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20221129BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20221129BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20221129BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221129BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01F30/10 J
H01F30/10 M
H01F30/10 S
H01F30/10 E
H01F30/10 G
H01F30/10 C
H01F27/32 150
H01F41/12 D
H01F27/28 K
H01F30/10 R
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086804
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】長野 剛
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5H730
【Fターム(参考)】
5E043BA02
5E044AD07
5E044BA04
5H730BB21
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730ZZ07
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】絶縁耐力を向上することが可能であるとともに、大型化を抑制しながら温度上昇を抑制することが可能な電力変換装置およびトランスを提供する。
【解決手段】この電力変換装置100は、磁路を形成する脚部21を有するコア20と、コア20の脚部21に巻き回される巻線10と、を含むトランス2を備える。巻線10は、一次側の巻線11および二次側の巻線12を有する。そして、巻線11は、コア20の脚部21に巻き回された状態でコア20の一部と共に樹脂部材50によって封止されている。また、巻線12は、コア20の脚部21に巻き回された状態で露出している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された直流電力を交流電力に変換する電力変換部と、
前記電力変換部からの交流電力を変圧するトランスと、を備え、
前記トランスは、磁路を形成する脚部を有するコアと、前記コアの前記脚部に巻き回される巻線と、を含み、
前記巻線は、一次側の一次巻線および二次側の二次巻線のいずれかの一方である高圧側巻線と、前記一次巻線および前記二次巻線のいずれかの他方である低圧側巻線とを有し、
前記高圧側巻線は、前記コアの前記脚部に巻き回された状態で前記コアの一部と共に樹脂部材によって封止されており、
前記低圧側巻線は、前記コアの前記脚部に巻き回された状態で露出している、電力変換装置。
【請求項2】
前記トランスは、前記巻線の前記高圧側巻線を収容する高圧側巻線用筐体をさらに含み、
前記高圧側巻線は、前記高圧側巻線用筐体に収容された状態で、前記高圧側巻線用筐体の内部に充填された前記樹脂部材によって前記コアの一部と共に封止されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記コアの前記脚部に前記巻線を巻き回すために、前記巻線を保持するボビンをさらに備え、
前記高圧側巻線は、前記ボビンに保持されながら前記コアの前記脚部に巻き回された状態で、前記ボビンおよび前記コアの一部と共に前記樹脂部材によって封止されている、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記高圧側巻線および前記低圧側巻線は、前記コアの前記脚部の延びる方向において互いに分割された状態で、前記脚部に巻き回されており、
前記高圧側巻線は、前記脚部の一方側に寄せて巻き回された状態で、前記コアの一部と共に前記樹脂部材によって封止されており、
前記低圧側巻線は、前記脚部の他方側に寄せて巻き回された状態で露出している、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記高圧側巻線は、2つに分割されて前記コアの前記脚部に巻き回された第1高圧側巻線および第2高圧側巻線を有し、
前記低圧側巻線は、前記コアの前記脚部の延びる方向において、前記第1高圧側巻線と前記第2高圧側巻線とに挟まれるように前記脚部に巻き回されており、
前記第1高圧側巻線および前記第2高圧側巻線は、各々、前記低圧側巻線を挟むように前記脚部に巻き回された状態で、前記コアの一部と共に前記樹脂部材によって封止されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記トランスは、前記巻線の前記高圧側巻線を収容する高圧側巻線用筐体をさらに含み、
前記高圧側巻線用筐体は、前記脚部の一方側から前記第1高圧側巻線を収容する第1筐体と、前記第1筐体と対向するように前記脚部の他方側から前記第2高圧側巻線を収容する第2筐体とを有し、
前記第1高圧側巻線は、前記第1筐体に収容された状態で、前記第1筐体の内部に充填された前記樹脂部材によって前記コアの一部と共に封止されており、
前記第2高圧側巻線は、前記第2筐体に収容された状態で、前記第2筐体の内部に充填された前記樹脂部材によって前記コアの一部と共に封止されている、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記高圧側巻線は、複数に分割された部分高圧側巻線を有し、
前記低圧側巻線は、複数に分割された部分低圧側巻線を有し、
複数の前記部分高圧側巻線と複数の前記部分低圧側巻線とは、前記コアの前記脚部の延びる方向において交互に前記脚部に巻き回されており、
前記複数の部分高圧側巻線の各々は、前記複数の部分低圧側巻線と交互に前記コアの前記脚部に巻き回された状態で、前記コアの一部と共に前記樹脂部材によって封止されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記トランスは、前記巻線の前記高圧側巻線を収容する高圧側巻線用筐体をさらに含み、
前記高圧側巻線用筐体は、前記複数の部分高圧側巻線の各々を収容する複数の部分筐体を有し、
前記複数の部分高圧側巻線の各々は、前記複数の部分筐体の各々に収容された状態で、前記複数の部分筐体の各々の内部に充填された前記樹脂部材によって前記コアの一部と共に封止されている、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記トランスの前記低圧側巻線を冷却する送風ファンをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
磁路を形成する脚部を有するコアと、
前記コアの前記脚部に巻き回される巻線と、を備え、
前記巻線は、一次側の一次巻線および二次側の二次巻線のいずれかの一方である高圧側巻線と、前記一次巻線および前記二次巻線のいずれかの他方である低圧側巻線とを有し、
前記高圧側巻線は、前記コアの前記脚部に巻き回された状態で前記コアの一部と共に樹脂部材によって封止されており、
前記低圧側巻線は、前記コアの前記脚部に巻き回された状態で露出している、トランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置およびトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1次巻線である第1のコイルと2次巻線である第2のコイルとを備えるトランスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のトランスは、コイルの磁路を形成するコアを備える。そして、1次巻線である第1のコイルと2次巻線である第2のコイルとが、コアに巻き回されるように配置されている。そして、上記特許文献1に記載のトランスでは、第1のコイルと第2のコイルとコアとの全体が、絶縁耐力を向上させるためにケースに組み込まれた状態で絶縁樹脂によって封入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-19120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のトランスでは、第1のコイル(一次巻線)および第2のコイル(二次巻線)と、コアとの全体が、絶縁耐力を向上させるために絶縁樹脂(樹脂部材)によって封入(封止)されていることに起因して、トランス全体の冷却性能が低下する。これにより、樹脂部材で封止された巻線に対して高電圧を印加する場合には、温度の上昇を抑制するために巻線およびコアを大きくする必要がある。そのため、高耐圧化(高電圧を印加)する場合には、絶縁耐力を向上させるとともに温度上昇を抑制するために、トランスが大型化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、絶縁耐力を向上することが可能であるとともに、大型化を抑制しながら温度上昇を抑制することが可能な電力変換装置およびトランスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による電力変換装置は、入力された直流電力を交流電力に変換する電力変換部と、電力変換部からの交流電力を変圧するトランスと、を備え、トランスは、磁路を形成する脚部を有するコアと、コアの脚部に巻き回される巻線と、を含み、巻線は、一次側の一次巻線および二次側の二次巻線のいずれかの一方である高圧側巻線と、一次巻線および二次巻線のいずれかの他方である低圧側巻線とを有し、高圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態でコアの一部と共に樹脂部材によって封止されており、低圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態で露出している。
【0008】
この発明の第1の局面による電力変換装置では、上記のように、高圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態でコアの一部と共に樹脂部材によって封止されている。これにより、誘電率の小さい(絶縁性能が高い)樹脂部材によって高圧側巻線およびコアの一部を封止することができるので、高圧側巻線が露出している場合に比べて高圧側巻線における絶縁耐力を向上させることができる。また、上記のように、低圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態で露出している。これにより、露出している低圧側巻線と、低圧側巻線が巻き回されているコアの一部とから、熱を放出することができる。そのため、高圧側巻線と低圧側巻線との両方がコアの全体と共に樹脂部材によって封止されている場合に比べて、トランスの温度上昇を抑制することができる。これらの結果、温度上昇を抑制するために巻線およびコアを大型化する必要がなくなるので、絶縁耐力を向上することができるとともに、大型化を抑制しながら温度上昇を抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、トランスは、巻線の高圧側巻線を収容する高圧側巻線用筐体をさらに含み、高圧側巻線は、高圧側巻線用筐体に収容された状態で、高圧側巻線用筐体の内部に充填された樹脂部材によってコアの一部と共に封止されている。このように構成すれば、コアの脚部に巻き回した高圧側巻線を、コアと共に高圧側巻線用筐体に収容した状態で、高圧側巻線用筐体の内部に樹脂材料を充填することができる。そのため、高圧側巻線をコアの一部と共に樹脂部材によって容易に封止することができる。
【0010】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、コアの脚部に巻線を巻き回すために、巻線を保持するボビンをさらに備え、高圧側巻線は、ボビンに保持されながらコアの脚部に巻き回された状態で、ボビンおよびコアの一部と共に樹脂部材によって封止されている。このように構成すれば、ボビンによって巻線を保持することによって、巻線をコアに巻き回されるように容易に配置することができる。また、高圧側巻線が、ボビンおよびコアの一部と共に樹脂部材によって封止されているので、高圧側巻線、ボビン、コアを一体的に封止することができる。そのため、たとえば、コアとボビンとの間に空気の層が存在することに起因して絶縁耐力が低下することを抑制することができる。その結果、ボビンによって巻線をコアの周りに巻き回されるように容易に配置することができるとともに、絶縁性の低下を抑制することによって高耐圧化することができる。
【0011】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、高圧側巻線および低圧側巻線は、コアの脚部の延びる方向において互いに分割された状態で、脚部に巻き回されており、高圧側巻線は、脚部の一方側に寄せて巻き回された状態で、コアの一部と共に樹脂部材によって封止されており、低圧側巻線は、脚部の他方側に寄せて巻き回された状態で露出している。このように構成すれば、高圧側巻線が脚部の一方側に寄せて巻き回されているため、脚部の一方側のみを樹脂部材によって封止することによって、他方側に寄せて巻き回された低圧側巻線を露出させながら高圧側巻線をより容易に封止することができる。そのため、低圧側巻線を露出させながら高圧側巻線を封止するための作業負担をより軽減することができる。
【0012】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、高圧側巻線は、2つに分割されてコアの脚部に巻き回された第1高圧側巻線および第2高圧側巻線を有し、低圧側巻線は、コアの脚部の延びる方向において、第1高圧側巻線と第2高圧側巻線とに挟まれるように脚部に巻き回されており、第1高圧側巻線および第2高圧側巻線は、各々、低圧側巻線を挟むように脚部に巻き回された状態で、コアの一部と共に樹脂部材によって封止されている。このように構成すれば、第1高圧側巻線および第2高圧側巻線によって低圧側巻線が挟まれるように巻き回されているため、高圧側と低圧側との巻線同士の磁気結合を向上させることができる。そのため、巻線からの漏れインダクタンス(リーケージインダクタンス)を低減させることができるので、漏れインダクタンスに起因する電気的な損失を低減することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、トランスは、巻線の高圧側巻線を収容する高圧側巻線用筐体をさらに含み、高圧側巻線用筐体は、脚部の一方側から第1高圧側巻線を収容する第1筐体と、第1筐体と対向するように脚部の他方側から第2高圧側巻線を収容する第2筐体とを有し、第1高圧側巻線は、第1筐体に収容された状態で、第1筐体の内部に充填された樹脂部材によってコアの一部と共に封止されており、第2高圧側巻線は、第2筐体に収容された状態で、第2筐体の内部に充填された樹脂部材によってコアの一部と共に封止されている。このように構成すれば、第1高圧側巻線をコアと共に第1筐体に収容した状態で、第1筐体内部に樹脂材料を充填することによって、第1高圧側巻線をコアの一部と共に容易に封止することができる。また、第2高圧側巻線をコアと共に第2筐体に収容した状態で、第2筐体内部に樹脂材料を充填することによって、第2高圧側巻線をコアの一部と共に容易に封止することができる。そのため、2つの高圧側巻線によって1つの低圧側巻線が挟まれるように配置する場合にも、2つの高圧側巻線の各々を容易に封止することができる。
【0014】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、高圧側巻線は、複数に分割された部分高圧側巻線を有し、低圧側巻線は、複数に分割された部分低圧側巻線を有し、複数の部分高圧側巻線と複数の部分低圧側巻線とは、コアの脚部の延びる方向において交互に脚部に巻き回されており、複数の部分高圧側巻線の各々は、複数の部分低圧側巻線と交互にコアの脚部に巻き回された状態で、コアの一部と共に樹脂部材によって封止されている。このように構成すれば、複数の部分高圧側巻線が複数の部分低圧側巻線と交互に並ぶように配置されているため、2つの高圧側巻線によって1つの低圧側巻線が挟まれるように配置されている場合に比べて、高圧側と低圧側との巻線同士の磁気結合をより向上させることができる。そのため、巻線からの漏れインダクタンス(リーケージインダクタンス)をより低減させることができるので、漏れインダクタンスに起因する電気的な損失をより低減することができる。また、高圧側巻線および低圧側巻線がそれぞれ複数に分割されているため、巻線からの発熱を分散させることができる。そのため、巻線からの発熱に起因する温度上昇をより抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、トランスは、巻線の高圧側巻線を収容する高圧側巻線用筐体をさらに含み、高圧側巻線用筐体は、複数の部分高圧側巻線の各々を収容する複数の部分筐体を有し、複数の部分高圧側巻線の各々は、複数の部分筐体の各々に収容された状態で、複数の部分筐体の各々の内部に充填された樹脂部材によってコアの一部と共に封止されている。このように構成すれば、複数の部分高圧側巻線の各々をコアと共に複数の部分筐体にそれぞれ収容した状態で、複数の部分筐体の各々の内部に樹脂材料を充填することによって、複数の部分高圧側巻線の各々をコアの一部と共に容易に封止することができる。そのため、複数の部分高圧側巻線が複数の部分低圧側巻線と交互に並ぶように配置されている場合にも、複数の部分高圧側巻線の各々を容易に封止することができる。
【0016】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、トランスの低圧側巻線を冷却する送風ファンをさらに備える。このように構成すれば、露出している低圧側巻線に対して送風ファンから冷却風を送風することによって、低圧側巻線と、コアの脚部のうちの低圧側巻線が巻き回されている部分とを効果的に冷却することができる。そのため、トランス全体の温度が上昇することを効果的に抑制することができる。
【0017】
この発明の第2の局面によるトランスは、磁路を形成する脚部を有するコアと、コアの脚部に巻き回される巻線と、を備え、巻線は、一次側の一次巻線および二次側の二次巻線のいずれかの一方である高圧側巻線と、一次巻線および二次巻線のいずれかの他方である低圧側巻線とを有し、高圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態でコアの一部と共に樹脂部材によって封止されており、低圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態で露出している。
【0018】
この発明の第2の局面によるトランスでは、上記のように、高圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態でコアの一部と共に樹脂部材によって封止されている。これにより、誘電率の小さい(絶縁性能が高い)樹脂部材によって高圧側巻線およびコアの一部を封止することができるので、高圧側巻線が露出している場合に比べて高圧側巻線における絶縁耐力を向上させることができる。また、上記のように、低圧側巻線は、コアの脚部に巻き回された状態で露出している。これにより、露出している低圧側巻線と、低圧側巻線が巻き回されているコアの一部とから、熱を放出することができる。そのため、高圧側巻線と低圧側巻線との両方がコアの全体と共に樹脂部材によって封止されている場合に比べて、トランスの温度上昇を抑制することができる。これらの結果、温度上昇を抑制するために巻線およびコアを大型化する必要がなくなるので、絶縁耐力を向上することが可能であるとともに、大型化を抑制しながら温度上昇を抑制することが可能なトランスを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、絶縁耐力を向上することが可能であるとともに、大型化を抑制しながら温度上昇を抑制することが可能な電力変換装置およびトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態による電力変換装置の全体構成を示す図である。
図2】第1実施形態によるトランスの構成を説明するための斜視図である。
図3】第1実施形態によるトランスを分解した模式図である。
図4図2の110―110線に沿った断面図である。
図5】第1実施形態による樹脂材料の充填を説明するための図である。
図6】第2実施形態による電力変換装置の全体構成を示す図である。
図7】第2実施形態によるトランスの構成を説明するための図である。
図8】第2実施形態によるトランスの組み立て方法を説明するための図である。
図9】第3実施形態による電力変換装置の全体構成を示す図である。
図10】第3実施形態によるトランスの構成を説明するための図である。
図11】第3実施形態によるトランスの組み立て方法を説明するための図である。
図12】第1~第3実施形態の変形例によるトランスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1図5を参照して、第1実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。電力変換装置100は、入力された直流電力の電圧を変換するとともに、電圧が変換された直流電力を出力するDCDCコンバータを含む。電力変換装置100は、たとえば、太陽電池などの電源101からの直流電力を変換する太陽光PCS(パワーコンディショナシステム)に用いられる。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態による電力変換装置100は、インバータ部1と、トランス2と、コンバータ部3と、送風ファン4とを備える。なお、電力変換装置100は、平滑回路などが設けられていてもよい。また、インバータ部1は、特許請求の範囲における「電力変換部」の一例である。
【0024】
インバータ部1は、電源101から入力された直流電力を交流電力に変換する。インバータ部1は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などのスイッチング素子を有するインバータ回路を含む。インバータ部1は、図示しない制御部からの制御信号(ゲート信号)に基づいて、スイッチング素子のスイッチング動作によって、入力された直流電力を交流電力に変換する。そして、インバータ部1は、変換した交流電力をトランス2に対して出力する。
【0025】
トランス2は、インバータ部1からの交流電力を変圧する。そして、トランス2は、変圧された交流電力をコンバータ部3に対して出力する。トランス2は、高周波の交流電力を変圧する高周波トランスである。なお、トランス2の詳細については後述する。
【0026】
コンバータ部3は、トランス2からの交流電力を直流電力に変換する。コンバータ部3は、たとえば、ダイオードを有する整流回路(ダイオードブリッジ回路)を含む。そして、コンバータ部3は、変換した直流電力を出力する。なお、コンバータ部3の整流回路では、ダイオードの替わりにIGBTまたはMOSFETなどのスイッチング素子を用いてもよい。
【0027】
送風ファン4は、トランス2を冷却する。具体的には、送風ファン4は、トランス2の巻線12(図2参照)を冷却するための冷却風を送風するように構成されている。
【0028】
(トランスの構成)
図2に示すように、第1実施形態によるトランス2は、巻線10と、コア20と、ボビン30と、筐体40とを含む。
【0029】
図3に示すように、巻線10は、巻線11および巻線12を含む。巻線11は、トランス2の一次側の巻線(コイル)である。巻線12は、トランス2の二次側の巻線(コイル)である。また、トランス2では、巻線11が高圧側であり、巻線12が低圧側である。すなわち、トランス2は、入力された交流電圧の電圧を降圧する。巻線11および巻線12は、たとえば、エナメル線またはリッツ線などである。なお、巻線11は、特許請求の範囲における「一次巻線」および「高圧側巻線」の一例である。また、巻線12は、特許請求の範囲における「二次巻線」および「低圧側巻線」の一例である。
【0030】
コア20は、一対のコア部材20aおよび20bを含む。一対のコア部材20aおよび20bは、EE形状のフェライトコアを含む。コア20は、一対のコア部材20aおよび20bが組み合わされた状態で、巻線10に流れる電流によって磁路を形成する脚部21(図4参照)を有する。すなわち、コア部材20aおよび20bが組み合わされた状態で、1本の四角柱状の脚部21が形成される。巻線10(巻線11および巻線12)は、四角柱状の脚部21の周りに巻き回されるように配置される。トランス2では、一次側の巻線11に流れる電流によって、脚部21(コア20)に磁界が生じる。そして、脚部21に生じた磁界によって、二次側の巻線12に誘導起電力が発生して、巻線12に電流が流れる。
【0031】
また、コア20は、巻線10が巻き回される脚部21と、脚部21のY1方向側とY2方向側との各々において、巻線10の外側に配置される外脚部とによって、磁気回路(磁路)が形成される環状コアである。ここで、「環状コア」とは、完全に閉じた状態を意味するのみならず、一対のコア部材20aおよび20bが互いにギャップを隔てて配置されている場合をも含む概念として記載している。
【0032】
図3に示すように、ボビン30は、部材31、32、および、33を有する。ボビン30は、部材31~33が組み合わされることによって、糸巻き状の形状を有する。第1実施形態では、ボビン30は、コア20の脚部21に巻線10(巻線11および巻線12)を巻き回すために、巻線10を保持する。すなわち、巻線10は、ボビン30に保持された状態で、コア20の脚部21に巻き回されるように配置されている。また、ボビン30は、誘電率が低く、絶縁性が高い樹脂材料によって形成されている。ボビン30は、たとえば、オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂によって形成されている。
【0033】
図4に示すように、第1実施形態では、巻線11および巻線12は、コア20の脚部21の延びる方向(Z方向)において互いに分割された状態で、脚部21に巻き回されている。具体的には、巻線11は、脚部21の一方側(Z2方向側)に寄せて巻き回されている。そして、巻線12は、脚部21の他方側(Z1方向側)に寄せて巻き回されている。すなわち、巻線11は、ボビン30の下側(Z2方向側)において部材33の部分に保持された状態で、コア部材20b側の脚部21に巻き回されている。そして、巻線12は、ボビン30の上側(Z1方向側)において部材32の部分に保持された状態で、コア部材20a側の脚部21に巻き回されている。トランス2は、一次側の巻線11と二次側の巻線12とが、各々分割されている分割巻きのトランスである。なお、巻線11の端部は、X1方向側(図2参照)に引き出されている。そして、巻線12の端部は、X2方向側(図2参照)に引き出されている。
【0034】
筐体40は、巻線11を収容する。具体的には、筐体40は、巻線11と、巻線11が巻き回されている脚部21の一部を含むコア20およびボビン30の下側半分(コア部材20b側半分)とを収容する。すなわち、筐体40は、トランス2の下側(Z2方向側)の半分を内部に収容する。また、巻線12およびトランス2の上側(Z1方向側)は筐体40に収容されず露出している。
【0035】
第1実施形態では、巻線11は、ボビン30に保持されながら脚部21の一方側(Z2方向側)に寄せて巻き回された状態で、ボビン30およびコア20の一部(コア部材20b)と共に樹脂部材50によって封止されている。そして、巻線12は、コア20の脚部21の他方側(Z1方向側)に寄せて巻き回された状態で露出している。具体的には、第1実施形態では、巻線11は、筐体40に収容された状態で、筐体40の内部に充填された樹脂部材50によってボビン30およびコア20の一部であるコア部材20bと共に封止されている。
【0036】
すなわち、筐体40内部に収容されている巻線11と、巻線11が巻き回されている脚部21の一部を含むコア20およびボビン30の下側(Z2方向側)の半分とが、樹脂部材50によって気密封止されている。一方で、巻線12と、コア20の上側(Z1方向側)の半分とは、樹脂部材50に封止されずに露出している。露出しているトランス2の上側(Z1方向側)は、送風ファン4によって冷却されるように構成されている。
【0037】
また、筐体40および樹脂部材50は、ボビン30と同様の樹脂材料によって形成されている。すなわち、ボビン30、筐体40、および、樹脂部材50の熱膨張率は、互いに略等しい大きさとなる。このため、樹脂部材50は、樹脂部材50を形成するための樹脂材料の硬化時において、熱膨張による亀裂に起因したボイド(成形不良)を抑制可能に構成されている。
【0038】
(第1実施形態によるトランスの組み立て方法)
次に、図3および図5を参照して、第1実施形態によるトランス2の組み立て方法(製造方法)について説明する。
【0039】
図3に示すように、まず、ボビン30に巻線10(巻線11および巻線12)が保持させられる。具体的には、ボビン30の部材33に巻線11が保持させられる。そして、ボビン30の部材32に巻線12が保持させられる。そして、巻線10、コア20、および、ボビン30が組み合わせられる。具体的には、巻線10を保持させながら、ボビン30の部材31~33と、コア20の一対のコア部材20aおよび20bとが組み合わされる。また、巻線10、コア20、および、ボビン30は、組み合わされた状態でテープなどにより固定される。
【0040】
そして、図5に示すように、組み合わされた巻線10、コア20、および、ボビン30が、筐体40に収容される。具体的には、巻線10のうちの巻線12の部分が露出した状態で、巻線10のうちの巻線11の部分が筐体40の内部に収容される。また、巻線11の端部が筐体40の外に引き出される。
【0041】
そして、巻線11を引き出すための筐体40の孔を塞いだ後に、筐体40の内部に樹脂材料が充填される。すなわち、筐体40に収容された状態の巻線11、コア20の一部(コア部材20bの部分)、およびボビン30(ボビン30の下側半分)が、樹脂材料によって封止される。なお、樹脂材料を充填する場合に、ボイドなどの成形不良の発生を抑制するために、真空引きを行ってもよい。すなわち、真空雰囲気において筐体40内部に樹脂材料を充填するようにしてもよい。
【0042】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
第1実施形態では、上記のように、巻線11(高圧側巻線)は、コア20の脚部21に巻き回された状態でコア20の一部と共に樹脂部材50によって封止されている。これにより、誘電率の小さい(絶縁性能が高い)樹脂部材50によって巻線11およびコア20の一部を封止することができるので、巻線11が露出している場合に比べて巻線11における絶縁耐力を向上させることができる。また、上記のように、巻線12(低圧側巻線)は、コア20の脚部21に巻き回された状態で露出している。これにより、露出している巻線12と、巻線12が巻き回されているコア20の一部とから、熱を放出することができる。そのため、巻線11と巻線12との両方がコア20の全体と共に樹脂部材50によって封止されている場合に比べて、トランス2の温度上昇を抑制することができる。これらの結果、温度上昇を抑制するために巻線10(巻線11および巻線12)およびコア20を大型化する必要がなくなるので、絶縁耐力を向上することができるとともに、大型化を抑制しながら温度上昇を抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、トランス2は、巻線10の巻線11(高圧側巻線)を収容する筐体40(高圧側巻線用筐体)をさらに含み、巻線11は、筐体40に収容された状態で、筐体40の内部に充填された樹脂部材50によってコア20の一部と共に封止されている。これにより、コア20の脚部21に巻き回した巻線11を、コア20と共に筐体40に収容した状態で、筐体40の内部に樹脂材料を充填することができる。そのため、巻線11をコア20の一部と共に樹脂部材50によって容易に封止することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、コア20の脚部21に巻線10を巻き回すために、巻線10を保持するボビン30をさらに備え、巻線11(高圧側巻線)は、ボビン30に保持されながらコア20の脚部21に巻き回された状態で、ボビン30およびコア20の一部と共に樹脂部材50によって封止されている。これにより、ボビン30によって巻線10を保持することによって、巻線10をコア20に巻き回されるように容易に配置することができる。また、巻線11が、ボビン30およびコア20の一部と共に樹脂部材50によって封止されているので、巻線11、ボビン30、コア20を一体的に封止することができる。そのため、たとえば、コア20とボビン30との間に空気の層が存在することに起因して絶縁耐力が低下することを抑制することができる。その結果、ボビン30によって巻線10をコア20の周りに巻き回されるように容易に配置することができるとともに、絶縁性の低下を抑制することによって高耐圧化することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、巻線11(高圧側巻線)および巻線12(低圧側巻線)は、コア20の脚部21の延びる方向(Z方向)において互いに分割された状態で、脚部21に巻き回されており、巻線11は、脚部21の一方側(Z2方向側)に寄せて巻き回された状態で、コア20の一部と共に樹脂部材50によって封止されており、巻線12は、脚部21の他方側(Z1方向側)に寄せて巻き回された状態で露出している。これにより、巻線11が脚部21の一方側に寄せて巻き回されているため、脚部21の一方側のみを樹脂部材50によって封止することによって、他方側に寄せて巻き回された巻線12を露出させながら巻線11をより容易に封止することができる。そのため、巻線12を露出させながら巻線11を封止するための作業負担をより軽減することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、トランス2の巻線12(低圧側巻線)を冷却する送風ファン4をさらに備える。これにより、露出している巻線12に対して送風ファン4から冷却風を送風することによって、巻線12と、コア20の脚部21のうちの巻線12が巻き回されている部分とを効果的に冷却することができる。そのため、トランス2全体の温度が上昇することを効果的に抑制することができる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、図6図8を参照して、第2実施形態による電力変換装置200の構成について説明する。第2実施形態では、分割された一次側の2つの巻線211aおよび巻線211bに挟まれるように二次側の巻線212が巻き回されている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0049】
(第2実施形態による電力変換装置の構成)
図6に示すように、第2実施形態による電力変換装置200は、インバータ部1と、トランス202と、コンバータ部3と、送風ファン4とを備える。そして、電力変換装置200は、第1実施形態と同様に、入力された直流電力の電圧を変換するとともに、電圧が変換された直流電力を出力するDCDCコンバータを含む。トランス202は、第1実施形態によるトランス2と同様に、インバータ部1からの交流電力を変圧する。そして、トランス202は、変圧された交流電力をコンバータ部3に対して出力する。
【0050】
図7に示すように、第2実施形態では、トランス202は、巻線210と、コア220と、ボビン230と、筐体240aおよび筐体240bとを含む。なお、筐体240aは、特許請求の範囲における「高圧側巻線用筐体」および「第1筐体」の一例である。また、筐体240bは、特許請求の範囲における「高圧側巻線用筐体」および「第2筐体」の一例である。
【0051】
第2実施形態では、巻線210は、巻線211a、巻線211b、および巻線212を含む。巻線211aおよび211bは、トランス202の一次側の巻線(コイル)である。そして、巻線212は、トランス202の二次側の巻線(コイル)である。また、トランス202では、巻線211aおよび巻線211bが高圧側であり、巻線212が低圧側である。なお、巻線211aは、特許請求の範囲における「一次巻線」、「高圧側巻線」および「第1高圧側巻線」の一例である。また、巻線211bは、特許請求の範囲における「一次巻線」、「高圧側巻線」および「第2高圧側巻線」の一例である。また、巻線212は、特許請求の範囲における「二次巻線」および「低圧側巻線」の一例である。
【0052】
コア220は、第1実施形態と同様に、一対のE形状のコア部材220aおよび220bを組み合わせたEE型フェライトコアである。コア220は、第1実施形態のコア20と同様に、一対のコア部材220aおよび220bが組み合わされた状態において、巻線210に流れる電流によって磁路を形成する脚部221を有する。巻線211a、211bおよび巻線212は、四角柱状の脚部221の周りに巻き回されるように配置される。なお、図7では、コア220の巻線210の外側に配置される外脚部の図示を省略している。
【0053】
ボビン230は、第1実施形態のボビン30と同様に、コア220の脚部221に巻線210を巻き回すために、巻線210(巻線211a、211b、および、巻線212)を保持する。
【0054】
第2実施形態では、巻線211aおよび巻線211bは、2つに分割されてコア220の脚部221に巻き回される。そして、巻線212は、コア220の脚部221の延びる方向(Z方向)において、巻線211aと巻線211bとに挟まれるように脚部221に巻き回されている。具体的には、巻線211aは、ボビン230の上側(Z1方向側)において、ボビン230に保持された状態で脚部221に巻き回されている。そして、巻線211bは、ボビン230の下側(Z2方向側)において、ボビン230に保持された状態で脚部221に巻き回されている。そして、巻線212は、Z方向における中央において、ボビン230に保持された状態で脚部221に巻き回されている。
【0055】
また、第2実施形態では、筐体240aは、脚部221の一方側(Z1方向側)から巻線211aを収容する。そして、筐体240bは、筐体240aと対向するように脚部221の他方側(Z2方向側)から巻線211bを収容する。具体的には、筐体240aは、巻線211aと、巻線211aが巻き回されている脚部221の一部を含むコア220およびボビン230の部分とを収容する。そして、筐体240bは、巻線211bと、巻線211bが巻き回されている脚部221の一部を含むコア220およびボビン230の部分とを収容する。
【0056】
そして、第2実施形態では、巻線211aおよび211bは、各々、巻線212を挟むように脚部221に巻き回された状態で、コア220の一部と共に、樹脂部材250によって封止されている。具体的には、巻線211aは、筐体240aに収容された状態で、筐体240aの内部に充填された樹脂部材250によってコア220の一部と共に封止されている。そして、巻線211bは、筐体240bに収容された状態で、筐体240bの内部に充填された樹脂部材250によってコア220の一部と共に封止されている。
【0057】
すなわち、巻線211aと、ボビン230のうちの巻線211aを保持している部分と、巻線211aが巻き回されているコア220の一部(Z1方向側の部分)とが、筐体240aの内部に配置された状態で一体的に樹脂部材250によって封止されている。そして、巻線211bと、ボビン230のうちの巻線211bを保持している部分と、巻線211bが巻き回されているコア220の一部(Z2方向側の部分)とが、筐体240bの内部に配置された状態で一体的に樹脂部材250によって封止されている。なお、巻線212は、筐体240aおよび240bには収容されずに、露出した状態である。すなわち、巻線212は、樹脂部材250によって封止されず露出している。
【0058】
また、第2実施形態によるその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0059】
(第2実施形態によるトランスの組み立て方法)
次に、図8を参照して、第2実施形態によるトランス202の組み立て方法(製造方法)について説明する。
【0060】
図8に示すように、第2実施形態では、まず、一次側のコイルである巻線211aおよび巻線211bがボビン230と共にコア220に巻き回されるように配置される。たとえば、下側(Z2方向側)の巻線211bは、ボビン230の一部と、コア部材220bとともに、筐体240bに収容される。そして、内部に巻線211b、ボビン230、および、コア部材220bが収容された状態の筐体240bに対して樹脂材料が充填される。巻線211aについても、巻線211bと同様に、ボビン230およびコア部材220aとともに筐体240aに収容される。そして、内部に巻線211a、ボビン230の一部、および、コア部材220aが収容された状態の筐体240aに対して樹脂材料が充填される。
【0061】
そして、一次側の巻線211aおよび211bを、それぞれ樹脂部材250によって封止した後に、2つの一次側の巻線211aおよび211bの間に二次側の巻線212が挟まれるように組み合わされる。
【0062】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
第2実施形態では、上記のように、電力変換装置200は、2つに分割されてコア220の脚部221に巻き回された巻線211a(第1高圧側巻線)および巻線211b(第2高圧側巻線)を有し、巻線212(低圧側巻線)は、コア220の脚部221の延びる方向(Z方向)において、巻線211aと巻線211bとに挟まれるように脚部221に巻き回されており、巻線211aおよび巻線211bは、各々、巻線212を挟むように脚部221に巻き回された状態で、コア220の一部と共に樹脂部材250によって封止されている。これにより、巻線211aおよび巻線211bによって巻線212が挟まれるように巻き回されているため、高圧側と低圧側との巻線同士の磁気結合を向上させることができる。そのため、巻線210からの漏れインダクタンス(リーケージインダクタンス)を低減させることができるので、漏れインダクタンスに起因する電気的な損失を低減することができる。
【0064】
また、第2実施形態では、上記のように、トランス202は、脚部221の一方側(Z1方向側)から巻線211a(第1高圧側巻線)を収容する筐体240a(第1筐体)と、筐体240aと対向するように脚部221の他方側(Z2方向側)から巻線211b(第2高圧側巻線)を収容する筐体240b(第2筐体)とを有し、巻線211aは、筐体240aに収容された状態で、筐体240aの内部に充填された樹脂部材250によってコア220の一部と共に封止されており、巻線211bは、筐体240bに収容された状態で、筐体240bの内部に充填された樹脂部材250によってコア220の一部と共に封止されている。これにより、巻線211aをコア220と共に筐体240aに収容した状態で、筐体240a内部に樹脂材料を充填することによって、巻線211aをコア220の一部と共に容易に封止することができる。また、巻線211bをコア220と共に筐体240bに収容した状態で、筐体240b内部に樹脂材料を充填することによって、巻線211bをコア220の一部と共に容易に封止することができる。そのため、2つの巻線211aおよび巻線211bによって1つの巻線212(低圧側巻線)が挟まれるように配置する場合にも、2つの巻線211aおよび巻線211bの各々を容易に封止することができる。
【0065】
また、第2実施形態によるその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0066】
[第3実施形態]
次に、図9図11を参照して、第3実施形態による電力変換装置300の構成について説明する。第3実施形態では、一次側の複数の巻線311a~311cと、二次側の複数の巻線312a~312cとを、コア320の脚部321の延びる方向において交互に配置する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0067】
(第3実施形態による電力変換装置の構成)
図9に示すように、第3実施形態による電力変換装置300は、インバータ部1と、トランス302と、コンバータ部3と、送風ファン4とを備える。そして、電力変換装置300は、第1実施形態と同様に、入力された直流電力の電圧を変換するとともに、電圧が変換された直流電力を出力するDCDCコンバータを含む。トランス302は、第1実施形態によるトランス2と同様に、インバータ部1からの交流電力を変圧する。そして、トランス302は、変圧された交流電力をコンバータ部3に対して出力する。
【0068】
図10に示すように、第3実施形態では、トランス302は、巻線310と、コア320と、ボビン330a、330b、および、330cと、筐体340a、340b、および、340cとを含む。なお、筐体340a~340cは、特許請求の範囲における「高圧側巻線用筐体」および「複数の部分筐体」の一例である。
【0069】
第3実施形態では、巻線310は、トランス302の複数に分割された一次側の巻線(コイル)である巻線311a、巻線311b、および、巻線311cを含む。また、巻線310は、トランス302の複数に分割された二次側の巻線(コイル)である巻線312a、巻線312b、および、巻線312cを含む。また、トランス302では、一次側の巻線311a~311cが高圧側であり、二次側の巻線312a~312cが低圧側である。なお、巻線311a~311cは、特許請求の範囲における「一次巻線」、「高圧側巻線」および「複数の部分高圧側巻線」の一例である。また、巻線312a~312cは、特許請求の範囲における「二次巻線」、「低圧側巻線」および「複数の部分低圧側巻線」の一例である。
【0070】
コア320は、E形状のコア部材320aとI形状のコア部材320bとを組み合わせたEI型フェライトコアである。コア320は、第1実施形態のコア20と同様に、2つのコア部材320aおよび320bが組み合わされた状態において巻線310に流れる電流によって磁路を形成する脚部321を有する。巻線311a~311cおよび巻線312a~312cは、四角柱状の脚部321の周りに巻き回されるように配置される。なお、図10では、コア320の巻線310の外側に配置される外脚部の図示を省略している。
【0071】
ボビン330a~330cは、第1実施形態のボビン30と同様に、コア320の脚部321に巻線310を巻き回すために、巻線310を保持する。具体的には、ボビン330aは、巻線311aおよび巻線311bを保持する。ボビン330bは、巻線311bおよび巻線312bを保持する。そして、ボビン330cは、巻線311cおよび巻線312cを保持する。
【0072】
第3実施形態では、複数の巻線311a~311cと複数の巻線312a~312cとは、コア320の脚部321の延びる方向(Z方向)において交互に脚部321に巻き回されている。具体的には、脚部321のZ2方向側から、巻線311a、巻線312a、巻線311b、巻線312b、巻線311c、および、巻線312c、がこの順に脚部321の延びる方向(Z方向)に沿うように並んで配置されている。
【0073】
また、第3実施形態では、筐体340a~340cは、複数の巻線311a~311cの各々を収容する。具体的には、筐体340aは、巻線311a、ボビン330aの一部、および、コア320(コア部材320a)の一部を収容する。同様に、筐体340bは、巻線311b、ボビン330bの一部、および、コア320(コア部材320a)の一部を収容する。そして、筐体340cは、巻線311c、ボビン330cの一部、および、コア320(コア部材320a)の一部を収容する。なお、筐体340aのZ方向における長さ(厚さ)は、筐体340bおよび筐体340cのZ方向における長さ(厚さ)よりも大きい。
【0074】
そして、第3実施形態では、巻線311a~311cの各々は、巻線312a~312cと交互にコア320の脚部321に巻き回された状態で、コア320の一部と共に樹脂部材350(図11参照)によって封止されている。具体的には、巻線311a~311cの各々は、筐体340a~340cの各々に収容された状態で、筐体340a~340cの各々の内部に充填された樹脂部材350によってコア320の一部と共に封止されている。
【0075】
すなわち、巻線311aと、ボビン330aのうちの巻線311aを保持している部分と、巻線311aが巻き回されているコア320の一部とが、筐体340aの内部に配置された状態で一体的に樹脂部材350によって封止されている。同様に、巻線311bと、ボビン330bのうちの巻線311bを保持している部分と、巻線311bが巻き回されているコア320の一部とが、筐体340bの内部に配置された状態で一体的に樹脂部材350によって封止されている。そして、巻線311cと、ボビン330cのうちの巻線311cを保持している部分と、巻線311cが巻き回されているコア320の一部とが、筐体340cの内部に配置された状態で一体的に樹脂部材350によって封止されている。
【0076】
また、第3実施形態によるその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0077】
(第3実施形態によるトランスの組み立て方法)
次に、図11を参照して、第3実施形態によるトランス302の組み立て方法(製造方法)について説明する。
【0078】
図11に示すように、第3実施形態では、まず、ボビン330aに保持された状態の巻線311aおよび巻線312aが、コア320(コア部材320a)の脚部321に巻き回されるように配置される。そして、巻線311aおよびコア320(コア部材320a)の一部が筐体340aに収容される。
【0079】
そして、内部に巻線311a、ボビン330a、および、コア部材320aが収容された状態の筐体340aに対して樹脂材料が充填される。
【0080】
次に、巻線311aおよび巻線312aに重なるように、ボビン330bに保持された状態の巻線311bおよび巻線312bが、コア320(コア部材320a)の脚部321に巻き回されるように配置される。ここで、巻線311bおよびコア320の一部は、筐体340bに収容されるように配置される。そして、内部に巻線311b、ボビン330b、および、コア部材320aが収容された状態の筐体340bに対して樹脂材料が充填される。
【0081】
そして、巻線311bおよび巻線312bに重なるように、ボビン330cに保持された状態の巻線311cおよび巻線312cが、コア320(コア部材320a)の脚部321に巻き回されるように配置される。巻線311bと同様に、巻線311cおよびコア320の一部は、筐体340cに収容されるように配置される。そして、内部に巻線311c、ボビン330c、および、コア部材320aが収容された状態の筐体340cに対して樹脂材料が充填される。そして、I形状のコア部材320bを組み合わせることによって、コア部材320aおよびコア部材320bによって、コア320の磁路が形成される。
【0082】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
第3実施形態では、上記のように、トランス302は、複数に分割された巻線311a~311c(部分高圧側巻線)と、複数に分割された巻線312a~312c(部分低圧側巻線)を有し、複数の巻線311a~311cと複数の巻線312a~312cとは、コア320の脚部321の延びる方向において交互に脚部321に巻き回されており、複数の巻線311a~311cの各々は、複数の巻線312a~312cと交互にコア320の脚部321に巻き回された状態で、コア320の一部と共に樹脂部材350によって封止されている。これにより、複数の巻線311a~311cが複数の巻線312a~312cと交互に並ぶように配置されているため、2つの巻線によって1つの巻線が挟まれるように配置されている場合に比べて、高圧側と低圧側との巻線同士の磁気結合をより向上させることができる。そのため、巻線310からの漏れインダクタンス(リーケージインダクタンス)をより低減させることができるので、漏れインダクタンスに起因する電気的な損失をより低減することができる。また、巻線311a~311cおよび巻線312a~312cがそれぞれ複数に分割されているため、巻線310からの発熱を分散させることができる。そのため、巻線310からの発熱に起因する温度上昇をより抑制することができる。
【0084】
また、第3実施形態では、トランス302は、複数の巻線311a~311cの各々を収容する複数の筐体340a~340c(部分筐体)を有し、複数の巻線311a~311cの各々は、複数の筐体340a~340cの各々に収容された状態で、複数の筐体340a~340cの各々の内部に充填された樹脂部材350によってコア320の一部と共に封止されている。これにより、複数の巻線311a~311cの各々をコア320と共に複数の筐体340a~340cにそれぞれ収容した状態で、複数の筐体340a~340cの各々の内部に樹脂材料を充填することによって、複数の巻線311a~311cの各々をコア320の一部と共に容易に封止することができる。そのため、複数の巻線311a~311cが複数の巻線312a~312cと交互に並ぶように配置されている場合にも、複数の巻線311a~311cの各々を容易に封止することができる。
【0085】
また、第3実施形態によるその他の効果は、第1および第2実施形態と同様である。
【0086】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0087】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、一対のコア部材20aおよび20b(220aおよび220b、320aおよび320b)によってコア20(220、320)が構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図12に示す変形例によるトランス402および502のように、一対に限らず、3つ以上の複数のコアを連結させるように構成してもよい。
【0088】
また、上記第1および第2実施形態では、コア20(220)は、EE形状を有し、上記第3実施形態では、コア320は、EI形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コアは、EER形状、PQ形状、UU形状、または、UI形状などの形状を有していてもよい。
【0089】
また、上記第1~第3実施形態では、高圧側の巻線11(211aおよび211b、311a~311c)は、筐体40(240aおよび240b、340a~340c)に収容された状態で、筐体40(240aおよび240b、340a~340c)の内部に充填された樹脂部材50(250、350)によってコア20(220、320)の一部と共に封止されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、トランスに筐体を設けずに、巻線11(211aおよび211b、311a~311c)とコア20(220、320)の一部とを一体的に樹脂部材50(250、350)によって封止するようにしてもよい。
【0090】
また、上記第1~第3実施形態では、コア20(220、320)の脚部21(221、321)に巻線10(210、320)を巻き回すために、巻線10(210、320)を保持するボビン30(230、330a~330c)を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ボビンではなく板状の絶縁部材などによって、巻線同士、または、巻線とコアとの間を絶縁するようにしてもよい。その場合に、高圧側の巻線と、絶縁部材と、コアの一部とを、一体的に樹脂材料によって封止するようにしてもよい。
【0091】
また、上記第2実施形態では、巻線211aおよび211b(高圧側巻線)は、各々、巻線212(低圧側巻線)を挟むように脚部221に巻き回された状態で、コア220の一部と共に樹脂部材250によって封止されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つに分割された低圧側の巻線が、1つの高圧側の巻線を挟み込むように配置されていてもよい。
【0092】
また、上記第3実施形態では、一次側の巻線311a~311cと、二次側の巻線312a~312cとが、それぞれ3分割されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、一次側の巻線と二次側の巻線とを4つ以上に分割するようにしてもよい。また、一次側の分割の個数と二次側の分割の個数とを、異なる個数となるように構成してもよい。
【0093】
また、上記第1~第3実施形態では、巻線12(212、312a~312c)を冷却する送風ファン4を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、送風ファン4による空冷式の冷却ではなく、水冷式の冷却が行われるようにしてもよい。また、フィンなどの放熱部材をコア20(220、320)の露出している部分などに設けるようにしてもよい。
【0094】
また、上記第1~第3実施形態では、一次側の巻線11(211aおよび211b、311a~311c)が、高圧側であり、二次側の巻線12(212、312a~312c)が低圧側である例を示したが本発明はこれに限られない。たとえば、一次側が低圧であり、二次側が高圧であるように構成してもよい。その場合には、高圧側である二次側の巻線をコアの一部と共に樹脂部材によって封止するとともに、低圧側である一次側の巻線を露出させるように構成する。
【0095】
また、上記第1~第3実施形態では、巻線10(210、310)が、円形状のエナメル線またはリッツ線などである例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、巻線10(210、310)は、平角線または偏素線などの平板型(エッジワイズ)の巻線であってもよい。また、トランス2(202、302)は、巻線10(210、310)をプリント基板によって構成したプレーナトランスであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 インバータ部(電力変換部)
2、202、302、402、502 トランス
4 送風ファン
10、210、310 巻線
11 巻線(一次巻線、高圧側巻線)
12、212 巻線(二次巻線、低圧側巻線)
20、220、320 コア
21、221、321 脚部
30、230、330a、330b、330c ボビン
40 筐体(高圧側巻線用筐体)
50、250、350 樹脂部材
100、200、300 電力変換装置
211a 巻線(一次巻線、高圧側巻線、第1高圧側巻線)
211b 巻線(一次巻線、高圧側巻線、第2高圧側巻線)
240a 筐体(高圧側巻線用筐体、第1筐体)
240b 筐体(高圧側巻線用筐体、第2筐体)
311a、311b、311c 巻線(一次巻線、高圧側巻線、部分高圧側巻線)
312a、312b、312c 巻線(二次巻線、低圧側巻線、部分低圧側巻線)
340a、340b、340c 筐体(高圧側巻線用筐体、部分筐体)
図1
図2
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図12