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特開2022-179966画像生成装置、画像生成方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179966
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】画像生成装置、画像生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086809
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋日
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB06
4C601BB27
4C601DD14
4C601EE04
4C601JB34
4C601JB48
4C601JB50
4C601JC06
4C601JC17
4C601JC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】空間コンパウンド法を用いて、特定の識別対象物を含む医用画像を高画質で生成することができる画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得する画像取得部14と、入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別モデルに、取得された複数の超音波画像を入力することによって、識別モデルから出力される確信度を取得する構造物識別部17と、複数の超音波画像および確信度に基づいて、合成画像を生成する画像合成部18と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得する画像取得部と、
入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別器に、取得された前記複数の超音波画像を入力することによって、前記識別器から出力される識別結果を取得する識別結果取得部と、
前記複数の超音波画像および前記識別結果に基づいて、合成画像を生成する画像合成部と、
を備える、画像生成装置。
【請求項2】
前記識別器は、機械学習により学習された学習済み識別器であり、
前記識別結果取得部は、前記学習済み識別器に前記超音波画像を入力する、
請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記学習済み識別器は、ニューラルネットワークである、
請求項2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記合成画像を表示する表示部をさらに備え、
前記識別結果取得部は、前記表示部に表示される前記合成画像とは異なる画像を前記識別器に入力する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記識別結果取得部は、現在前記表示部に表示されている前記合成画像より過去に生成された前記合成画像、前記過去に生成された前記複数の超音波画像、前記過去に生成された前記複数の超音波画像の画素毎の画素値の平均または最大値を算出して生成された画像を前記識別器に入力する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項6】
前記画像合成部は、前記識別結果に基づいて重み付け値を算出し、前記複数の超音波画像データおよび前記重み付け値に基づいて、前記合成画像を生成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記識別結果は、前記識別対象物であることの尤もらしさを示す確信度である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記画像合成部は、前記超音波画像の画素毎の前記確信度を示している確信度画像を生成し、前記確信度画像に基づいて重み付け値を算出する、
請求項7に記載の画像生成装置。
【請求項9】
前記画像合成部は、前記確信度画像に基づいて前記画素毎の重み付け値を算出する、
請求項8に記載の画像生成装置。
【請求項10】
前記画像合成部は、複数の前記確信度画像の画素毎の画素値の平均または最大値を算出して生成された最終確信度画像に基づいて、前記重み付け値を算出する、
請求項8または9に記載の画像生成装置。
【請求項11】
前記識別対象物は、神経、筋膜、血管、または穿刺針である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項12】
前記画像合成部は、前記識別対象物の種類に基づいて、前記重み付け値の算出方法を変更する、
請求項7から11のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項13】
画像生成装置が有するコンピューターが実行する画像生成方法であって、
前記コンピューターは、
複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得し、
入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別器に、取得された前記複数の超音波画像を入力することによって、前記識別器から出力される識別結果を取得し、
前記複数の超音波画像および前記識別結果に基づいて、合成画像を生成する、
画像生成方法。
【請求項14】
コンピューターにより実行されるプログラムであって、
複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得する手順と、
入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別器に、取得された前記複数の超音波画像を入力することによって、前記識別器から出力される識別結果を取得する手順と、
前記複数の超音波画像および前記識別結果に基づいて、合成画像を生成する手順と、
を前記コンピューターに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像を生成する画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の振動子を配列して備える超音波探触子を有し、生体等の被検体に対して超音波の送受信を行い、受信した超音波から得られた信号に基づいて超音波画像データを生成し、これに基づく超音波画像を画像表示装置に表示する超音波診断装置が知られている。このような装置による超音波画像診断は、超音波探触子を被検体の体表に当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動き等の様子がリアルタイムで得られ、かつ非侵襲で安全性が高いため、繰り返して実施することができる。
【0003】
しかしながら、このような超音波診断装置によって得られる画像には、被検体内の組織に関する情報以外にも、各種のノイズや、超音波探触子で受信した超音波から得られた受信信号の干渉現象により発生するスペックルが存在し、これらは被検体内の組織の境界の位置や形状を正確に把握する場合においてしばしば妨げとなっている。
【0004】
近年では、このようなノイズやスペックルを低減する処理方法として、例えば、空間コンパウンド法を用いた超音波診断装置が普及している。空間コンパウンド法は、被検体の同一部位に対して同時期に複数の異なる方向で超音波の送受信を行い、取得された複数の超音波画像データの平均的重畳を行う方法である。これにより、ノイズやスペックルは、例えば、N枚の超音波画像データが得られた場合には、これらを合成した合成画像データにおいて、Nの平方根で低減される。
【0005】
また、この空間コンパウンド法によれば、異方性部位の抽出性能を向上させることができる。異方性部位とは、超音波が当たった際の散乱、反射等の受信信号強度が角度により異なる部位であり、具体的には、例えば被検体内の骨格筋における腱や靭帯のように、繊維状で反射強度は骨表面ほど強くないが鏡面反射特性を示す軟部組織における部位である。
【0006】
このような空間コンパウンド法を用いた超音波診断装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、ターゲットをより高画質で描写するための診断検査のタイプに応じて選択された制御信号によって、複数方向からの反射信号によって得られた超音波画像の各画素値の平均値、最大値、最小値、中央値等を合成することで、より品質が高い超音波画像を生成することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004-522515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術では、例えば神経をターゲットとしたとき、神経からの受信信号を増幅するため、神経を高画質で描写することができる。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、神経以外の要素、例えばノイズや描写する必要がない他の構造物からの受信信号も増幅してしまい、結果として超音波画像全体の画質が低下することがある。
【0009】
本開示は、空間コンパウンド法を用いて、特定の識別対象物を含む医用画像を高画質で生成することができる画像生成装置、画像生成方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の画像生成装置は、複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得する画像取得部と、入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別器に、取得された前記複数の超音波画像を入力することによって、前記識別器から出力される識別結果を取得する識別結果取得部と、前記複数の超音波画像および前記識別結果に基づいて、合成画像を生成する画像合成部と、を備える。
【0011】
本開示の画像生成方法は、画像生成装置が有するコンピューターが実行する画像生成方法であって、前記コンピューターは、複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得し、入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別器に、取得された前記複数の超音波画像を入力することによって、前記識別器から出力される識別結果を取得し、前記複数の超音波画像および前記識別結果に基づいて、合成画像を生成する。
【0012】
本開示のプログラムは、コンピューターにより実行されるプログラムであって、複数の異なる送信方向で送信された送信超音波の反射超音波のそれぞれに対応する複数の受信信号に基づいて生成された複数の超音波画像を取得する手順と、入力された超音波画像に写っている識別対象物を識別する識別器に、取得された前記複数の超音波画像を入力することによって、前記識別器から出力される識別結果を取得する手順と、前記複数の超音波画像および前記識別結果に基づいて、合成画像を生成する手順と、を前記コンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空間コンパウンド法を用いて、特定の識別対象物を含む医用画像を高画質で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】超音波診断装置の構成の一例を示す図
図2】画像生成装置の構成例を示すブロック図
図3】構造物識別部の構成例を示す図
図4A】参照データの一例を示す図
図4B】参照データの一例を示す図
図5】識別モデルを訓練するための識別モデル生成処理の一例を示すフローチャート
図6】訓練用の超音波画像と第1画像との関係を示す図
図7A】教師データの生成方法について説明するための図
図7B】教師データの生成方法について説明するための図
図7C】教師データの生成方法について説明するための図
図8】画像生成装置が合成画像を生成する際の動作例を示すフローチャート
図9】構造物識別部により、確信度が取得される様子を示す模式図
図10】互いにステアリング角度が異なる複数の診断用画像を合成する様子を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示した例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能および構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0016】
<構成>
[超音波診断装置100]
図1は、超音波診断装置100の構成の一例を示す図である。超音波診断装置100は、図1に示すように、画像生成装置1と、超音波探触子2と、を有する。超音波探触子2は、被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体内で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。以下の説明では、被検体の一例として、人体等の生体を採用する。
【0017】
画像生成装置1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させる。そして、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0018】
超音波探触子2は、複数の圧電素子からなる振動子2a(図2参照)を有し、この振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。振動子2aの個数は、任意に設定することができる。
【0019】
[画像生成装置1]
図2は、画像生成装置1の構成例を示すブロック図である。画像生成装置1は、図2に示すように、例えば、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像取得部14と、画像処理部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、構造物識別部17と、画像合成部18と、表示部19と、制御部110と、を有する。
【0020】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンド、および、被検体に関する情報等のデータ等を行うための操作デバイスであり、具体的には、例えば各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等である。操作入力部11は、入力された操作に基づく操作信号を制御部110に出力する。
【0021】
送信部12は、制御部110の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給し、超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。送信部12は、例えば、図示しないクロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を有する。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束(送信ビームフォーミング)や、送信ビームの角度の設定(ステアリング)を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
【0022】
上述のように構成された送信部12は、例えば、超音波探触子2に配列された複数(例えば、百数十個~二百数十個)の振動子2aのうちの連続する一部(例えば、数十個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部12は、送信超音波を発生させる毎に駆動する振動子2aを方位方向にずらすことで走査(スキャン)を行う。また、送信部12は、送信ビームの角度を適宜変更しながら走査を行うことで、角度の異なる複数の反射信号を受信することができる。以下の説明において、適宜変更される送信ビームの角度をステアリング角度と記載する。
【0023】
受信部13は、制御部110の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を有する。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ/デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。すなわち、整相加算回路は、振動子2a毎の受信信号に対して受信ビームフォーミングを行って音線データを生成する。
【0024】
画像取得部14は、制御部110の制御に従って、受信部13から入力された音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮等を実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモードの超音波画像を生成する。Bモードの超音波画像は、受信信号の強さを輝度によって表したものである。なお、本実施の形態において、画像取得部14は、Bモード画像の他、Aモード画像(振幅画像)、Mモード画像(動き画像)、ドップラー法による超音波画像を生成できるようにしてもよい。以下では、Bモードの超音波画像を処理の対象とする場合について説明し、Bモードの超音波画像を単に超音波画像と記載する。しかしながら、本開示の画像生成装置1では、Bモードの超音波画像以外の画像も処理の対象としてもよい。
【0025】
また、画像取得部14は、超音波探触子2が角度をずらして複数の方向への走査を行った場合、角度の異なる複数の反射信号に基づいて、複数の超音波画像を生成する。このように生成された複数の超音波画像データは、走査領域の一部または全部がそれぞれ重複している。これらの複数の超音波画像データは、画像合成部18において合成される。
【0026】
画像処理部15は、画像取得部14が生成した複数の超音波画像データに対して、種々の画像処理を施す。
【0027】
DSC16は、制御部110の制御に従って、画像処理部15が出力した複数の超音波画像に対して走査周波数変換等を行い、表示部19に表示できる形式の画像信号に変換する。
【0028】
構造物識別部17は、DSC16、制御部110、または画像合成部18から入力された超音波画像の内部において、特定の構造物(ターゲット)を識別する。構造物識別部17は、本開示の識別結果取得部の一例である。ターゲットとは、超音波診断装置100を用いた診断の際、超音波診断装置100のユーザーが明瞭に視認すべき対象の構造物であり、本開示の識別対象物の一例である。
【0029】
ターゲットの例としては、神経、筋膜、血管、穿刺針等、複数種類の構造物が挙げられる。穿刺針とは、生体に刺して組織を採集したり、生体に対して薬液を注入したりするための針である。ターゲットは、操作入力部11を介したユーザーの操作により、ターゲットとなりうる複数種類の構造物の中から適宜設定できるようにしてもよいし、あらかじめいずれかの構造物がターゲットとして定められていてもよい。構造物識別部17が識別するターゲットは1つでもよいし、複数でもよい。具体的には、神経のみをターゲットとして設定してもよいし、神経と穿刺針とをターゲットとして設定してもよい。
【0030】
構造物識別部17は、ターゲットを識別するためにあらかじめ機械学習がなされた学習モデルである識別モデルを有する。識別モデルは、本開示の識別器、および学習済み識別器の一例である。識別モデルは、例えば、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズム(いわゆるディープラーニング)を利用して、超音波画像の特徴量(例えば、輝度配列)とターゲットの確信度に関する情報との関係を教師データとして訓練する教師あり機械学習により構築される。ターゲットとなりうる構造物が複数ある場合、識別モデルはターゲット毎に生成されてもよいし、1つの識別器が複数の構造物を識別してもよい。構造物識別部17が有する識別モデルは、本開示の学習済み識別器の一例である。
【0031】
確信度とは、超音波画像内のある領域がターゲットであることの尤もらしさを示す指標であり、本開示の識別結果の一例である。ターゲットおよびその周辺の領域は確信度が大きく、ターゲットおよびその周辺以外(非ターゲット)の領域は確信度が小さくなる。確信度は、例えば超音波画像の画素毎に生成される。
【0032】
構造物識別部17は、識別モデルの出力に基づいて、入力された超音波画像に対応する確信度画像を生成する。確信度画像とは、確信度を超音波画像の各画素にプロットし、超音波画像全体に対する確信度の分布を示したものである。構造物識別部17の詳細については、後述する。
【0033】
画像合成部18は、画像取得部14において生成された複数の超音波画像を合成し、合成画像を生成する。特に画像合成部18は、複数のステアリング角度で送信された送信ビームにより受信された複数の反射信号に基づいて生成された複数の超音波画像のうち、互いに重畳する部分を合成した空間コンパウンド画像を生成する。以下の説明において、複数のステアリング角度で送信された送信ビームにより受信された複数の反射信号に基づいて生成された複数の超音波画像を、ステアリング角度が異なる複数の超音波画像と記載する。
【0034】
画像合成部18は、ステアリング角度が異なる複数の超音波画像を互いに合成するとき、構造物識別部17から入力された確信度画像に基づいて、それぞれの超音波画像に対する重み付けを行う。これにより、画像合成部18は、ターゲットが強調された空間コンパウンド画像を出力することができる。画像合成部18による複数の超音波画像の合成処理の詳細は、後述する。
【0035】
表示部19は、LED(Light-Emitting Diode)、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、およびプラズマディスプレイ等の表示装置である。表示部19は、制御部110の制御に従って、画像合成部18から出力された合成画像の表示を行う。また、表示部19は、構造物識別部17から出力された最終確信度画像(詳細は後述)の表示を行ってもよい。
【0036】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を集中制御する。
【0037】
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム、およびシステムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブル等の各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラムおよびこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0038】
[構造物識別部17]
以下では、構造物識別部17について詳細に説明する。図3は、構造物識別部17の構成例を示す図である。図3に示すように、構造物識別部17は、教師データ生成部171、識別モデル訓練部172、識別モデル実行部173、確信度画像生成部174、および記憶部175を有する。記憶部175には、識別モデル40、参照データ50、教師データ60、および訓練履歴データ70が記憶されている。
【0039】
教師データ生成部171は、教師データ生成用の第1画像と、予め用意された参照データ50とに基づいて、識別モデル40を訓練するための教師データ60を生成する。第1画像は、例えば、訓練用の超音波画像から抽出される。教師データ60は、第1画像から抽出される第2画像の特徴量(例えば、輝度配列)と、ターゲットの確信度に関する情報(例えば、第2画像の中央の画素ブロックに対応するターゲットの確信度)と、が対応付けられたデータセットである。なお、画素ブロックは、画像を複数領域に分割したときのそれぞれの分割領域であり、複数の画素からなる画素群で構成されてもよいし、一つの画素で構成されてもよい。
【0040】
識別モデル訓練部172は、教師データ生成部171によって生成された教師データ60を用いた機械学習により、識別モデル40を訓練する。具体的には、識別モデル訓練部172は、教師データ60の例題(第2画像の特徴量)を識別モデル40に入力したときに、教師データ60の答え(ターゲットの確信度に関する情報)が出力されるように、識別モデル40を修正する。
【0041】
識別モデル実行部173は、訓練された識別モデル40を実行して、診断用の超音波画像におけるターゲットを識別するためのデータを生成する。なお、診断用の超音波画像(以下、診断用画像)とは、訓練用の超音波画像ではなく、ユーザーが超音波診断装置100を用いて診断を行う場合に、画像取得部14により生成され、画像処理部15およびDSC16を介して構造物識別部17に入力される画像である。
【0042】
識別モデル実行部173は、例えば、診断用画像から識別用画像を抽出し、識別用画像を入力として識別モデル40を実行することにより、出力として、当識別用画像におけるターゲットの確信度に関する情報を取得する。
【0043】
なお、訓練用の超音波画像、および識別用画像は、例えば、その時点で表示部19に表示されている合成画像よりも過去に生成された合成画像、複数の診断用画像、複数の診断用画像の画素毎の画素値の平均を算出して生成された平均値画像、または過去の複数の診断用画像における画素毎の画素値の最大値に基づいて生成された最大値画像の少なくともいずれかである。訓練用の超音波画像は、記憶部175等に記憶されている。
【0044】
確信度画像生成部174は、識別モデル実行部173からの出力に基づいて、診断用画像の全体又は一部(例えば、ROI枠で囲まれた領域)に対応する確信度画像を生成する。このとき、確信度画像生成部174は、時間的に連続する超音波画像から得られる確信度に関する情報の時間的な変化に基づいて、確信度画像に含まれるノイズを除去してもよい。具体的には、時間軸方向において、移動平均フィルター処理やメディアンフィルター処理を適用することで、確信度画像に含まれるノイズを除去することができる。また、確信度に関する情報の変化(急峻度)が予め設定されたしきい値を超える領域をノイズ領域として検出し、このノイズ領域についてのみ、ノイズ除去処理を行うようにしてもよい。
【0045】
記憶部175は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)等で構成される。記憶部175は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc(「Blu-ray」は登録商標))等の光ディスク、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気ディスクを駆動して情報を読み書きするディスクドライブであってもよい。
【0046】
記憶部175は、上述したように、識別モデル40、参照データ50、教師データ60、および訓練履歴データ70を記憶する。識別モデル40の訓練に用いられた教師データ60は、教師データ生成部171によって新たに教師データ60が生成された場合に、適宜上書きされてもよい。訓練履歴データ70は、例えば、訓練に用いた教師データ60の数や訓練日時等の情報を含む。
【0047】
図4Aおよび図4Bは、参照データ50の一例を示す図である。図4Aおよび図4Bに示すように、参照データ50は、第1画像(教師データ生成用の超音波画像)にターゲットが含まれる場合に参照される第1参照データ51と、第1画像にターゲットが含まれない場合に参照される第2参照データ52とを有する。
【0048】
図4Aに示す第1参照データ51は、第1画像の中央に、ターゲットが描出されている場合に参照されるものであり、例えば、ターゲットの確信度が0.0~1.0の範囲で円形ガウス分布にしたがって設定されている。
【0049】
第2参照データ52は、第1画像にターゲットがない場合(第1画像が非ターゲットで構成されている場合)の確信度分布を示す。図4Bに示す第2参照データ52では、全領域に対応するターゲットの確信度が0に設定されている。なお、第1参照データ51及び第2参照データ52は、必要に応じて複数用意されてもよい。例えば、第1参照データ51として、第1画像に神経の縦断面が描出されている場合に参照されるデータが用意されてもよい。また、ターゲットが複数ある場合、第2参照データ52として、他のターゲット用の第2参照データが用意されてもよい。
【0050】
<動作>
以下では、画像生成装置1の動作例について説明する。まず、構造物識別部17による識別モデルの生成処理について詳細に説明する。
【0051】
[識別モデル生成処理]
図5は、識別モデル40を訓練するための識別モデル生成処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば操作入力部11におけるモード選択により、訓練モードが選択された場合に行われる。
【0052】
ステップS101において、教師データ生成部171は、制御部110の制御に従って、訓練用の超音波画像の指定を受け付ける。訓練用の超音波画像は、例えば、訓練用に予め取得して記憶部175に記憶されており、操作入力部11を用いたユーザーの入力操作に基づいて読み出される。また例えば、訓練用の超音波画像には、過去の診断時に取得された超音波画像を適用してもよい。
【0053】
ステップS102において、教師データ生成部171は、制御部110の制御に従って、ラベルの指定を受け付ける。ラベルは、訓練対象がターゲットである場合に指定される第1ラベルと、訓練対象が非ターゲットである場合に指定される第2ラベルとを有し、操作入力部11を介したユーザーの入力操作に基づいて、いずれかのラベルが選択される。第1ラベルが指定された場合には、第1参照データ51を用いて教師データ60が生成され、第2ラベルが指定された場合には、第2参照データ52を用いて教師データ60が生成される。
【0054】
ステップS103において、教師データ生成部171は、制御部110の制御に従って、訓練用の超音波画像内において第1画像(教師データ生成用の超音波画像)を設定する。図6は、訓練用の超音波画像80と第1画像81との関係を示す図である。図6に示す例では、第1画像81には、ターゲットを訓練対象とする場合に設定される第1画像811と、非ターゲットを訓練対象とする場合に設定される第1画像812とが含まれる。
【0055】
第1画像81は、例えば、操作入力部11を用いたユーザーによるターゲット指定に関する操作に基づいて設定される。例えば、ユーザーが、超音波画像80上で、ターゲット(又は非ターゲット)が描出されている領域を選択すると、当該領域を中心とする所定サイズの領域が第1画像81として設定される。また例えば、ユーザーの操作に基づいて、第1画像81として設定する領域(図6における白抜きの矩形枠)の大きさを指定できるようにしてもよい。
【0056】
以下では、ステップS102で第1ラベルが指定され、ターゲットを含む第1画像811が設定された場合について具体的に説明する。
【0057】
ステップS104において、教師データ生成部171は、制御部110の制御に従って、第1画像811から第2画像82を抽出する。図7A図7B、および図7Cは、教師データの生成方法について説明するための図である。図7Aは、第2画像82について説明するための図である。第2画像82は、第1画像811に含まれ、教師データの入力(例題)となる画像である。例えば、M×Mの画素ブロックで構成される第1画像81から、N×N(N<M)の画素ブロックで構成される第2画像82が抽出される。
【0058】
ステップS105において、教師データ生成部171は、制御部110の制御に従って、第2画像82の特徴量を取得する。第2画像82の特徴量は、例えば、第2画像82の画素(または画素ブロック)毎の輝度値からなる輝度配列である。
【0059】
ステップS106において、教師データ生成部171は、制御部110の制御に従って、参照データ50に基づいて、第2画像82の特徴量とターゲットの確信度を対応付ける。
【0060】
具体的には、教師データ生成部171は、図7Aおよび図7Bに示すように、第2画像82と第1参照データ51とを比較して、第2画像82の中央の画素ブロックに対応するターゲットの確信度Vを第1参照データ51から特定して、第2画像82の特徴量と対応付ける。図7Bは、第1参照データ51からターゲットの確信度Vを特定する様子を示す図である。このとき、第1参照データ51は、第1画像81のサイズに応じて適宜調整される。
【0061】
ステップS106の処理により、第2画像82の特徴量と、当該第2画像82の中央の画素ブロックに対応するターゲットの確信度Vが対応付けられた、1セットの教師データ60が生成される。第1画像81において第2画像82の抽出領域をスライドさせながらステップS104~S106の処理を行うことにより、複数セットの教師データ60が生成される。例えば、参照データ50がK×Kの画素ブロックで構成される場合、(K×K)個の第2画像82の特徴量に対して、ターゲットの確信度を割り当てることができる。すなわち、第1画像81を一回指定するだけで、(K×K)個の教師データを生成することができる。
【0062】
教師データ生成部171によって実行される以上の工程により、教師データ60が生成される。
【0063】
ステップS107において、識別モデル訓練部172は、制御部110の制御に従って、生成された教師データ60を用いた機械学習により識別モデル40を訓練する。具体的には、図7Cに示すように、識別モデル訓練部172は、教師データ60の例題(第2画像82の特徴量)を識別モデル40に入力したときに、教師データ60の答え(第2画像82の中央の画素ブロックに対応するターゲットの確信度V)が出力されるように、識別モデル40を修正する。図7Cは、第2画像82に基づき識別モデル40が修正される様子を示す図である。訓練結果に基づいて、記憶部175に記憶されている識別モデル40及び訓練履歴データ70が更新される。
【0064】
識別モデル40の訓練が行われる場合は、識別モデル40の訓練履歴(例えば、訓練に用いられた教師データの数)が表示部19に表示されるのが好ましい。これにより、ユーザーは、識別モデル40の訓練程度を把握することができ、識別モデル40を用いたターゲット識別において十分な精度を得るために、今後、どれくらいの訓練が必要かを知得することができる。
【0065】
なお、上記の説明では、構造物識別部17が教師データ生成部171、識別モデル訓練部172、識別モデル実行部173、確信度画像生成部174、および記憶部175を有し、これらの構成により識別モデルが訓練される態様について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0066】
上記説明した識別モデル生成処理は、本開示の画像生成装置1によって行われなくてもよい。例えば、構造物識別部17が識別モデル訓練部、識別モデル実行部、および確信度画像生成部を有していなくてもよい。この場合、構造物識別部17は、画像生成装置1の外部の装置から、当該装置によって生成された識別モデルを取得する。なお、外部の装置が識別モデルを生成する方法については、上記説明した方法と同様の方法が採用されればよい。この場合、構造物識別部17は、画像生成装置1の外部から取得した識別モデルを、記憶部175に記憶させ、以下説明する合成画像の生成処理において、記憶部175に記憶した識別モデルを読み出して使用する。
【0067】
[合成画像の生成処理]
以上のように生成した識別モデル、または画像生成装置1の外部の装置によって生成された識別モデルを用いて、画像生成装置1は、合成画像を生成する。以下では、合成画像の生成処理について詳細に説明する。
【0068】
図8は、画像生成装置1が合成画像を生成する際の動作例を示すフローチャートである。
【0069】
ステップS201において、制御部110は、互いにステアリング角度が異なる、複数の診断用画像を取得する。より詳細には、制御部110は、送信部12を制御して、超音波探触子2から所定のステアリング角度を与えて超音波を送信するとともに、受信部13を制御して、超音波探触子2で受信した反射超音波(超音波エコー)に応じた受信信号を取得する。そして、制御部110は、画像取得部14を制御して、受信信号に基づくBモードの超音波画像を生成する。この工程を、ステアリング角度を変えて複数回行うことで、制御部110は、互いにステアリング角度が異なる、複数の診断用画像を取得する。
【0070】
ステップS202において、構造物識別部17は、制御部110の制御に従って、複数の診断用画像に基づき、最終確信度画像を生成する。最終確信度画像とは、ステップS203の重み付け値の算出に用いられる確信度画像である。複数の診断用画像に基づき最終確信度画像を生成する方法としては、少なくとも以下の2通りの方法が採用されうる。
【0071】
第1の方法は、複数の診断用画像のそれぞれに基づき、複数の確信度画像を生成した後、複数の確信度画像を合成して最終確信度画像を生成する方法である。また、第2の方法は、複数の診断用画像の最大値画像または平均値画像を生成し、最大値画像または平均値画像に基づいて直接最終確信度画像を生成する方法である。最大値画像とは、複数の診断用画像の同一画素毎に、最大の画素値を抽出してそれぞれの画素値とすることで1枚の画像としたものである。平均値画像とは、画素毎に複数の診断用画像の画素値の平均値を算出してそれぞれの画素値とすることで1枚の画像としたものである。第2の方法では、複数の確信度画像を生成しないため、少ない処理回数で最終確信度画像を取得することができる。
【0072】
第1の方法において、複数の診断用画像のそれぞれに基づき、複数の確信度画像を生成する処理の詳細は、例えば以下のとおりである。構造物識別部17の識別モデル実行部173は、各診断用画像から識別用画像を抽出し、識別用画像の特徴量(例えば、輝度配列)を識別モデル40に入力する。そして、識別モデル実行部173は、識別モデル40から、出力として、識別用画像の中央の画素ブロックに対応する確信度を取得する。さらに、確信度画像生成部174は、診断用画像の全体に対して確信度を取得することにより、確信度画像を生成する。
【0073】
図9は、構造物識別部17により、確信度が取得される様子を示す模式図である。図9には、診断用画像91の内部に設定した識別用画像92が設定され、識別用画像92の中央部の画素ブロックの輝度配列B(x,y)に対応する確信度V(x,y)が取得される様子が模式的に示されている。制御部110は、構造物識別部17の確信度画像生成部174を制御して、この工程を繰り返し、診断用画像91の全体における確信度を取得することにより、診断用画像91の全体に対応する確信度画像93を生成する。なお、確信度画像は、診断用画像の一部に対応するように生成されてもよい。
【0074】
そして、確信度画像生成部174は、複数の確信度画像に基づいて、最終確信度画像を生成する。複数の確信度画像に基づいて、最終確信度画像を生成する方法としては、複数の確信度画像の画素毎の最大値、平均値、または最小値を抽出または算出して、抽出された値を画素値とする最終確信度画像を生成する方法が挙げられる。なお、複数の確信度画像の画素毎の最大値、平均値、または最小値のいずれを用いるかは、操作入力部11を用いたユーザーの操作により選択が可能である。
【0075】
第1の方法において最終確信度画像を生成するとき、複数の確信度画像の画素毎の最大値、平均値、または最小値のいずれを用いるかによって、最終確信度画像が有する特性が異なる。最大値を用いた場合、感度、すなわちターゲットである領域を検出できる度合いが比較的高く、偽陽性度、すなわちターゲットではない領域がターゲットであるとして検出されてしまう度合いも比較的高くなる。最小値を用いた場合、感度および偽陽性度は比較的低くなり、平均値を用いた場合、感度および偽陽性度は、最大値を用いた場合より低く、最小値を用いた場合より高くなる。
【0076】
第2の方法においては、確信度画像生成部174は、構造物識別部17の識別モデル実行部173を制御して、複数の診断用画像に基づいて生成された最大値画像または平均値画像から識別用画像を抽出し、識別用画像の特徴量(例えば、輝度配列)を識別モデル40に入力し、出力として確信度を取得する。さらに、確信度画像生成部174は、最大値画像または平均値画像の全体に対して確信度を取得することにより、最終確信度画像を生成する。
【0077】
なお、第2の方法において、最大値画像と平均値画像のいずれを用いるかは、例えば操作入力部11を用いたユーザーの操作により選択が可能である。
【0078】
第2の方法において最大値画像と平均値画像のいずれを用いるかによって、最終確信度画像が有する特性が異なる。最大値画像を用いた場合、感度は比較的高く、偽陽性度は比較的高くなる。平均値を用いた場合、感度および偽陽性度は、最大値を用いた場合より低くなる。
【0079】
なお、ステップS202にて最終確信度画像を生成する際に、以上説明した第1の方法と第2の方法のいずれを採用するかは、例えば操作入力部11を用いたユーザーの操作により選択が可能である。
【0080】
また、ステップS202において、第1の方法を採用した場合に複数の確信度画像の画素毎の最大値、平均値、最小値のいずれを用いるかの選択、および、第2の方法を採用した場合に最大値画像と平均値画像のいずれを用いるかの選択は、診断の目的に応じて行われることが好ましい。
【0081】
具体例を挙げて説明する。例えば、ユーザーが、画像生成装置1が表示する合成画像を見ながら被検体に穿刺針を刺し、麻酔液を神経領域付近に注入する場合、合成画像における神経以外の領域での偽陽性度が低くなることが好ましい。この場合、第1の方法では平均値を用いることが好ましく、第2の方法では平均値画像を用いることが好ましい。
【0082】
また、例えば、ユーザーが、画像生成装置1が表示する合成画像を見ながら被検体に穿刺針を刺し、薬液を血管領域に注入する場合、穿刺してはいけない神経領域を確実に検出できるように感度が高くなることが好ましい。この場合、第1の方法では、最大値を用いることが好ましく、第2の方法では、最大値画像を用いることが好ましい。
【0083】
なお、ターゲットが複数ある場合、ステップS202において最終確信度画像が生成されるとき、ターゲット毎に異なる識別モデルを用いて、ターゲット毎の最終確信度画像が生成される。ここで、最終確信度画像を生成する際に第1の方法と第2の方法のいずれを用いるかを、ターゲット毎に設定できるようにしてもよい。また、第1の方法が用いられる場合、複数の確信度画像の画素毎の最大値、平均値、または最小値のいずれを用いるかを、ターゲット毎に設定できるようにしてもよい。さらに、第2の方法が用いられる場合、最大値画像と平均値画像のいずれを用いるかを、ターゲット毎に設定できるようにしてもよい。これにより、ターゲット毎に合成画像における強調のされ方を異ならせることができ、診断の目的に応じた合成画像とすることができる。
【0084】
上記ステップS202の説明において、構造物識別部17は、制御部110の制御に従って、複数の診断用画像に基づき、最終確信度画像を生成するとした。構造物識別部17が最終確信度画像を生成するために用いる複数の診断用画像は、例えばDSC16によって信号形式の変換が行われる前の画像であってもよいし、DSC16によって変換が行われた後の画像であってもよい。DSC16によって形式変換される前の画像を用いる場合、構造物識別部17は、生成した確信度画像をDSC16に出力し、DSC16によって形式変換が行われた後の画像を用いて、最終確信度画像を生成すればよい。
【0085】
ステップS203において、画像合成部18は、制御部110の制御に従って、最終確信度画像に基づいて、複数の診断用画像を合成する際の重み付け値を算出する。重み付け値は、0から1までの値であって、診断用画像の画素毎に設定される。重み付け値は、診断用画像の各画素に対応する、最終確信度画像の各画素における確信度に設定される。なお、本実施の形態では、最終確信度画像の各画素の値が当該画素における重み付け値であるとしたが、例えば重み付け値は、所定の算出方法を用いて、最終確信度画像の各画素の値に基づいて算出されてもよい。
【0086】
ステップS204において、画像合成部18は、制御部110の制御に従って、互いにステアリング角度が異なる複数の診断用画像と、重み付け値とに基づいて、合成画像を生成する。合成画像は、複数の診断用画像の画素毎の最大値を抽出して各画素値とすることで得られる最大値画像と、複数の診断用画像の画素毎の平均値を算出して各画素値とすることで得られる平均値画像とを、重み付け値を用いてαブレンドすることで生成される。
【0087】
図10を用いて、合成画像の生成について詳細に説明する。図10は、互いにステアリング角度が異なる複数の診断用画像を合成する様子を模式的に示す図である。図10では、互いにステアリング角度が異なる5つの診断用画像A,B,C,D,Eが示されている。
【0088】
この場合、画像合成部18は、同一画素における診断用画像A,B,C,D,Eの画素値のうちの最大値Max(A,B,C,D,E)と、同一画素における診断用画像A、B,C,D,Eの画素値の平均値Mean(A,B,C,D,E)と、をそれぞれ算出する。そして、画像合成部18は、最終確信度画像の当該画素の画素値に相当する重み付け値αを用いて、αブレンド処理を行う。従って、画像合成部18により得られる合成画像の各画素値Dataは、以下の式(1)で示される。
【0089】
【数1】
【0090】
他の合成方法として、画像合成部18は、以下の式(2)のように、同一画素における診断用画像A,B,C,D,Eの画素値のそれぞれに重みを付与したのち全体を加算して合成画像の各画素値Dataを算出してもよい。
【0091】
【数2】
【0092】
式(2)を用いる場合、最終確信度画像の生成は不要であり、複数の診断用画像のそれぞれに基づいて生成された複数の確信度画像に基づいて、それぞれの重み付け値α1、α2、α3、α4、α5が決定されればよい。
【0093】
全画素においてこのような処理が行われることで、合成画像が生成される。このようにして空間コンパウンド法による合成画像を生成することで、ノイズ、特にスペックルノイズを低減できるとともに、送信超音波に対して異方性を有する構造物を精度よく検出できる。さらに、合成画像の生成に確信度画像に基づく重み付け値を用いることにより、ターゲットとして設定された構造物を精度よく検出でき、ターゲット以外のノイズ、または構造物が誤って強調されてしまう事態を回避できる。
【0094】
なお、重み付け値の算出方法は、上述した算出方法(最終確信度画像を用いる方法)には限定されず、異なる方法で算出されてもよい。重み付け値が異なる方法でも算出される場合、上述した算出方法で算出された重み付け値と、異なる方法で算出された重み付け値とのうち、例えば値が大きい方を採用すればよい。
【0095】
なお、上記説明した合成画像の生成処理はフレーム毎に行われており、表示部19において合成画像がフレーム毎に更新されて表示されることにより、ユーザーは構造物の動きを滑らかに示す超音波画像の動画像に基づく診断を行うことができるようになる。
【0096】
<効果>
以上、本開示の画像生成装置1の構成および動作について説明した。本開示の画像生成装置1では、確信度画像に基づく重み付け値を用いて合成画像を生成するため、ターゲットの確信度が高い画素を強調することができ、合成画像が表示部19に表示されたときのターゲットの視認性が向上する。さらに、ターゲット以外のノイズ、または構造物が誤って強調されてしまう事態を回避できる。
【0097】
本開示の画像生成装置1において、合成画像の生成の際に用いられる確信度画像は、過去の合成画像、過去の診断用画像、または過去の診断用画像に基づき生成された最大値画像もしくは平均値画像等、表示部19に現在表示されている合成画像とは異なる画像に基づいて生成される。このため、表示部19に現在表示されている合成画像を用いて確信度画像を生成し、生成した確信度画像に基づいて現在の複数の診断用画像を合成する場合と比較して、短時間で新たな合成画像を生成することができる。これにより、ターゲットの検出に時間を要する場合でも、ユーザーがターゲットを視認しやすい合成画像を速やかに生成できる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、複数の超音波画像を合成する画像生成装置に好適である。
【符号の説明】
【0099】
100 超音波診断装置
1 画像生成装置
2 超音波探触子
2a 振動子
3 ケーブル
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 画像取得部
15 画像処理部
16 DSC
17 構造物識別部
171 教師データ生成部
172 識別モデル訓練部
173 識別モデル実行部
174 確信度画像生成部
175 記憶部
18 画像合成部
19 表示部
110 制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10