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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179969
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】冷凍空調装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
F25B49/02 570D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086816
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 康敬
(72)【発明者】
【氏名】田崎 宣明
(72)【発明者】
【氏名】南条 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 一宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
(57)【要約】
【課題】異常が発生したセンサを特定することができる冷凍空調装置を提供すること。
【解決手段】冷凍空調装置は、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路と、圧縮機の吐出圧力を検知、または吐出圧力を算出するための温度を検知する第一センサと、圧縮機の吸入圧力を検知、または吸入圧力を算出するための温度を検知する第二センサと、圧縮機の吐出温度を検知する第三センサと、圧縮機の吸入温度を検知する第四センサと、吐出圧力、吸入圧力、吐出温度、および、吸入温度に基づいて算出した圧縮機の断熱効率があらかじめ設定された上限値より高い場合、あるいは、吐出温度が吐出圧力、吸入圧力、および、吸入温度に基づいて算出した吐出温度閾値よりも低い場合に、第三センサが異常であると判定する制御装置と、を備えたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、絞り装置、および、蒸発器が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路と、
前記圧縮機の吐出圧力を検知、または前記吐出圧力を算出するための温度を検知する第一センサと、
前記圧縮機の吸入圧力を検知、または前記吸入圧力を算出するための温度を検知する第二センサと、
前記圧縮機の吐出温度を検知する第三センサと、
前記圧縮機の吸入温度を検知する第四センサと、
前記吐出圧力、前記吸入圧力、前記吐出温度、および、前記吸入温度に基づいて算出した前記圧縮機の断熱効率があらかじめ設定された上限値より高い場合、あるいは、前記吐出温度が前記吐出圧力、前記吸入圧力、および、前記吸入温度に基づいて算出した吐出温度閾値よりも低い場合に、前記第三センサが異常であると判定する制御装置と、を備えた
冷凍空調装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記断熱効率があらかじめ設定された下限値より低い場合、あるいは、前記吐出圧力が前記吸入圧力、前記吐出温度、および、前記吸入温度に基づいて算出した高圧圧力閾値よりも低い場合に、前記第一センサが異常であると判定する
請求項1に記載の冷凍空調装置。
【請求項3】
圧縮機入力値を検知する第五センサと、
圧縮機周波数を取得する周波数取得手段と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出圧力、前記吸入圧力、前記吐出温度、前記吸入温度、および、前記圧縮機周波数に基づいて算出した圧縮機入力推定値と前記圧縮機入力値とが異なる値である場合に、前記第一センサ、前記第三センサ、および、前記第五センサのうちいずれかが異常であると判定する
請求項1または2に記載の冷凍空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記圧縮機入力推定値が前記圧縮機入力値よりも小さい場合に、前記第三センサまたは前記第五センサが異常であると判定する
請求項3に記載の冷凍空調装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記圧縮機入力推定値が前記圧縮機入力値よりも大きい場合に、前記第一センサまたは前記第五センサが異常であると判定する
請求項3または4に記載の冷凍空調装置。
【請求項6】
前記第一センサは、
前記圧縮機の吐出側に設けられた圧力センサ、または前記凝縮器を構成する伝熱管に設けられた温度センサである
請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍空調装置。
【請求項7】
前記第二センサは、
前記圧縮機の吸入側に設けられた圧力センサ、または前記蒸発器を構成する伝熱管に設けられた温度センサである
請求項1~6のいずれか一項に記載の冷凍空調装置。
【請求項8】
前記第四センサは、
前記圧縮機の吸入側に設けられた温度センサ、または前記蒸発器の出口側に設けられた温度センサである
請求項1~7のいずれか一項に記載の冷凍空調装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
いずれかのセンサが異常である場合、
圧縮機周波数を増速させない
請求項1~8のいずれか一項に記載の冷凍空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のセンサを備えた冷凍空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置などの冷凍空調装置に設けられたセンサの異常検知を行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、2つのセンサを備え、蒸発器に設置した一方のセンサが検知する冷媒温度に基づいて冷媒の蒸発圧力を求め、この蒸発圧力ともう一方のセンサが検知する冷媒圧力とを比較し、その演算値が所定範囲を外れるとき、それら2つのセンサのうち少なくとも一方が異常であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-313125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、2つのセンサのうち少なくとも一方が異常であると判定することができるが、どちらのセンサが異常であるかは判定できないという課題があった。
【0006】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、異常が発生したセンサを特定することができる冷凍空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る冷凍空調装置は、圧縮機、凝縮器、絞り装置、および、蒸発器が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路と、前記圧縮機の吐出圧力を検知、または前記吐出圧力を算出するための温度を検知する第一センサと、前記圧縮機の吸入圧力を検知、または前記吸入圧力を算出するための温度を検知する第二センサと、前記圧縮機の吐出温度を検知する第三センサと、前記圧縮機の吸入温度を検知する第四センサと、前記吐出圧力、前記吸入圧力、前記吐出温度、および、前記吸入温度に基づいて算出した前記圧縮機の断熱効率があらかじめ設定された上限値より高い場合、あるいは、前記吐出温度が前記吐出圧力、前記吸入圧力、および、前記吸入温度に基づいて算出した吐出温度閾値よりも低い場合に、前記第三センサが異常であると判定する制御装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る冷凍空調装置によれば、断熱効率があらかじめ設定された上限値より大きい場合、あるいは、吐出温度が吐出温度閾値よりも低い場合に、第三センサが異常であると判定するため、異常が発生したセンサを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る冷凍空調装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る冷凍空調装置の圧縮機効率の算出方法を示す図である。
図3】実施の形態1に係る冷凍空調装置の圧縮機の吐出側の圧力および温度の範囲を示す図である。
図4】実施の形態1に係る冷凍空調装置の圧縮機吐出温度センサの正常値および異常値を示す図である。
図5】実施の形態1に係る冷凍空調装置の高圧圧力センサの正常値および異常値を示す図である。
図6】実施の形態1に係る冷凍空調装置のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係る冷凍空調装置の変形例によるセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図8】実施の形態2に係る冷凍空調装置の構成を示す図である。
図9】実施の形態2に係る冷凍空調装置の正常時および異常時における圧縮機の吸入側と吐出側とのエンタルピー差を示す図である。
図10】実施の形態2に係る冷凍空調装置のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の構成を示す図である。
実施の形態1では、冷凍空調装置100として、図1に示すように、1台の室外機10に対して1台の室内機20が液管41およびガス管42(以下、冷媒配管と称する)で接続され、冷房運転を行う空気調和装置を例示している。なお、図1では冷凍空調装置100が1台の室内機20を備えた構成を示しているが、複数の室内機20を備えた構成でもよく、その場合は、室外機10に対して各室内機20が冷媒配管で並列に接続される。
【0012】
室外機10は、圧縮機11と、凝縮器12と、高圧圧力センサ16と、低圧圧力センサ17と、圧縮機吐出温度センサ51と、凝縮器周囲温度センサ54と、圧縮機吸入温度センサ55とを備えている。なお、以下において、高圧圧力センサ16は第一センサとも称し、低圧圧力センサ17は第二センサとも称し、圧縮機吐出温度センサ51は第三センサとも称し、圧縮機吸入温度センサ55は第四センサとも称する。
【0013】
室内機20は、絞り装置21と、蒸発器22とを備えている。
【0014】
冷凍空調装置100は、圧縮機11、凝縮器12、絞り装置21、および、蒸発器22が冷媒配管で環状に順次接続され、冷媒が循環する冷媒回路1を備えている。冷媒回路1には、R32およびR410Aなどの共沸冷媒、あるいは疑似共沸冷媒が封入されている。なお、冷媒回路1には、四方弁などの流路切替装置が接続されている構成でもよく、そのような構成にすることで、冷房運転に加えて暖房運転を行うことが可能となる。
【0015】
また、冷凍空調装置100は、制御装置30と、報知部36と、運転モード切替部37とを備えており、制御装置30には、報知部36および運転モード切替部37がそれぞれ接続されている。なお、報知部36および運転モード切替部37は、制御装置30の一部として制御装置30に備えられていてもよい。
【0016】
圧縮機11は、低温低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機11が動作すると、冷媒回路1内を冷媒が循環する。圧縮機11は、例えば運転周波数の調整が可能なインバータ駆動式である。また、圧縮機11の動作は、制御装置30によって制御される。
【0017】
凝縮器12は、冷媒と室外空気との熱交換を行うものである。なお、凝縮器12の近傍にファン(図示せず)を設けてもよく、その場合はファンの回転数を変化させることにより風量を変化させ、室外空気への放熱量つまり熱交換量を変化させることができる。
【0018】
絞り装置21は、冷媒を断熱膨張させるものである。絞り装置21は、例えば電子式膨張弁あるいは温度式膨張弁などである。絞り装置21の開度は、蒸発器22の出口の過熱度が目標値に近づくように、制御装置30によって制御される。
【0019】
蒸発器22は、冷媒と室内空気との熱交換を行うものである。なお、蒸発器22の近傍にファン(図示せず)を設けてもよく、その場合はファンの回転数を変化させることにより風量を変化させ、室内空気からの吸熱量つまり熱交換量を変化させることができる。
【0020】
高圧圧力センサ16は、圧縮機11の吐出側に設けられており、圧縮機11の吐出側の圧力(以下、高圧圧力と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。低圧圧力センサ17は、圧縮機11の吸入側に設けられており、圧縮機11の吸入側の圧力(以下、低圧圧力と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。高圧圧力センサ16および低圧圧力センサ17は、例えば冷媒の圧力をダイヤフラムで受け、油圧を介して感圧素子で検知し、圧力に応じた電気信号に変換して出力するものである。なお、高圧圧力センサ16の代わりに凝縮器12を構成する伝熱管の中間部分に設けられ、そこを流れる冷媒の温度、つまり凝縮温度(飽和温度)を検知する凝縮温度センサを設けてもよく、この場合、凝縮温度から圧縮機11の吐出側の圧力を換算することができる。また、低圧圧力センサ17の代わりに蒸発器22を構成する伝熱管の中間部分に設けられ、そこを流れる冷媒の温度、つまり蒸発温度(飽和温度)を検知する蒸発温度センサを設けてもよく、この場合、蒸発温度から圧縮機11の吸入側の圧力を換算することができる。
【0021】
圧縮機吐出温度センサ51は、圧縮機11の吐出側に設けられており、圧縮機11の吐出側の温度(以下、吐出温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。凝縮器周囲温度センサ54は、凝縮器12の近傍に設けられており、凝縮器12の周囲の温度(以下、外気温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。圧縮機吸入温度センサ55は、圧縮機11の吸入側に設けられており、圧縮機11の吸入側の温度(以下、吸入温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。圧縮機吐出温度センサ51、凝縮器周囲温度センサ54、および、圧縮機吸入温度センサ55は、例えば温度により抵抗値が変化するサーミスタである。なお、圧縮機吸入温度センサ55の代わりに蒸発器22の出口側に配置され、そこを流れる冷媒の温度を検知する蒸発器出口温度センサを設けてもよい。
【0022】
制御装置30は、例えば、専用のハードウェア、または後述する記憶部31に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、プロセッサともいう)で構成される。
【0023】
制御装置30が専用のハードウェアである場合、制御装置30は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御装置30が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部を一つのハードウェアで実現してもよい。
【0024】
制御装置30がCPUの場合、制御装置30が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、記憶部31に格納される。CPUは、記憶部31に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置30の各機能を実現する。
【0025】
なお、制御装置30の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0026】
制御装置30は、冷凍空調装置100に設けられた各センサからの検知信号、および、リモコンなどの操作部(図示せず)からの操作信号などに基づいて、圧縮機11および絞り装置21などを制御し、冷凍空調装置100全体の動作を制御する。なお、制御装置30は、室外機10あるいは室内機20の内部に設けられていてもよいし、室外機10および室内機20の外部に設けられていてもよい。
【0027】
制御装置30は、センサ異常判定に関わる機能ブロックとして、記憶部31と、抽出部32と、演算部33と、比較部34と、判定部35とを備えている。ここで、センサ異常判定とは、冷凍空調装置100において、圧力センサまたは温度センサに異常が発生しているかどうかを判定することである。
【0028】
記憶部31は、各種情報を記憶するものであり、例えば、フラッシュメモリ、EPROM、および、EEPROMなどの、データの書き換え可能な不揮発性の半導体メモリを備えている。なお、記憶部31は、その他に、例えばROMなどのデータの書き換え不可能な不揮発性の半導体メモリ、あるいは、RAMなどのデータの書き換え可能な揮発性の半導体メモリなどを備えていてもよい。記憶部31は、各センサのそれぞれで検知された温度データおよび圧力データを記憶する。なお、これら温度データおよび圧力データは、冷凍空調装置100の運転中に定期的に取得される。また、記憶部31は、後述する各閾値を記憶する。
【0029】
抽出部32は、記憶部31に記憶されたデータの中から、各センサの検知値などセンサ異常判定に必要となるデータを抽出するものである。ここで、センサ異常判定には、圧縮機11が運転しているときのデータが用いられる。これは、圧縮機11が運転していないときには、センサ異常が発生しているかどうかの判定を正しく行うことができないためである。
【0030】
演算部33は、抽出部32で抽出されたデータに基づき、必要な演算を行うものである。この演算部33は、各センサの検知値に基づいて、断熱効率ηなどを算出する。
【0031】
比較部34は、演算部33での演算により得られた値とあらかじめ設定された閾値などとの比較、あるいは演算部33での演算により得られた値同士の比較を行うものである。この比較部34は、断熱効率ηとあらかじめ設定されたηmaxとの比較などを行う。
【0032】
判定部35は、比較部34での比較結果に基づき、圧力センサまたは温度センサに異常が発生しているかどうかの判定を行うものである。
【0033】
報知部36は、制御装置30からの指令により、異常発生などの各種情報を報知するものである。報知部36は、表示灯あるいはモニターなどの情報を視覚的に報知する表示手段、および、スピーカーなどの情報を聴覚的に報知する音声出力手段のうち、少なくとも一方を備えている。
【0034】
運転モード切替部37は、ユーザーによる運転モードの切替操作を受け付けるものである。運転モード切替部37は、例えば上記の操作部に設けることができる。運転モード切替部37で運転モードの切替操作が行われると、運転モード切替部37から制御装置30に対して信号が出力され、制御装置30は、その信号に基づいて運転モードを切り替える。制御装置30は、運転モードとして、少なくとも通常運転モードとセンサ異常判定モードとを有している。
【0035】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の通常運転モード時の運転動作について説明する。
【0036】
圧縮機11から吐出した高温高圧のガス冷媒は、凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入したガス冷媒は、そこで室外空気と熱交換し、凝縮して高圧の液冷媒となって凝縮器12から流出する。凝縮器12から流出した液冷媒は、絞り装置21によって減圧され、低圧の二層冷媒となって蒸発器22に流入する。そして、蒸発器22に流入した二層冷媒は、そこで室内空気と熱交換し、蒸発して低温低圧のガス冷媒となって蒸発器22から流出する。蒸発器22から流出したガス冷媒は、圧縮機11に吸入され、そこで再び高温高圧のガス冷媒となって吐出される。
【0037】
次に、圧力センサおよび温度センサの異常発生要因について説明する。
【0038】
上述のように、高圧圧力センサ16などの圧力センサは、例えば冷媒の圧力をダイヤフラムで受け、油圧を介して感圧素子で検知し、検知した圧力に応じた電気信号に変換して出力するものである。そのため、圧力センサの異常発生要因としては、例えば油充填部が劣化して油が抜け、空気が侵入し、圧力センサの検知値が正常時よりも徐々に低下することが考えられる。これは、圧縮性流体である気体が油部に混入することにより圧電素子への圧力伝播が小さくなるために発生する。この異常が発生すると、圧力センサの検知値が正常値から徐々に低下するため、異常判定しにくい。
【0039】
また、圧縮機吐出温度センサ51は、圧縮機11の吐出側の温度を正確に検知するため、圧縮機11の吐出側の配管(以下、吐出側配管と称する)に密接している。さらに、圧縮機吐出温度センサ51は、外気温度の影響を受けないように、吐出側配管とともに断熱材によって断熱されている。そのため、圧縮機吐出温度センサ51の異常発生要因としては、経年劣化により断熱材が劣化して断熱性能が低下したり、断熱材が剥がれ落ちたり、あるいは圧縮機吐出温度センサ51と吐出側配管との間に隙間が生じたりすることで、外気温度の影響を受けやすくなることが考えられる。この異常が発生すると、圧縮機吐出温度センサ51の検知値が正常値から徐々に低下するため、異常判定しにくい。
【0040】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の高圧圧力センサ16および圧縮機吐出温度センサ51の異常検知方法について説明する。
【0041】
図2は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の圧縮機効率の算出方法を示す図である。図2の縦軸は圧力[MPaG]を示しており、横軸は比エンタルピー[kJ/kg]を示している。
【0042】
図2は、p-h線図上に圧縮機11の吸入側および吐出側の状態をそれぞれ示し、圧縮機効率の算出方法を図示したものである。図2の点psは圧縮機11の吸入側の状態を、点p0(P,T)は圧縮機11の吐出側の状態を、線s1は等エントロピー線をそれぞれ示している。このとき、圧縮機11の断熱効率ηは、下記の式で表すことができる。
【0043】
η=Δh(s=const)/Δh(REF)・・・・・(1)
Δh(s=const):等エントロピー変化した場合のエンタルピー差[kJ/kg]
Δh(REF):実際の圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差[kJ/kg]
【0044】
なお、各エンタルピー差Δh(s=const)、Δh(REF)は、圧力および温度をパラメータとした関数に、各センサが検知した圧力および温度を入力することで、算出することができる。具体的には、エンタルピー差Δh(s=const)は、その関数に、圧縮機11の吸入側の圧力および温度、つまり、低圧圧力センサ17および圧縮機吸入温度センサ55の検知値を入力することで算出される。また、エンタルピー差Δh(REF)は、その関数に、圧縮機11の吸入側の圧力および温度と、圧縮機11の吐出側の圧力および温度、つまり、高圧圧力センサ16、低圧圧力センサ17、圧縮機吐出温度センサ51、および、圧縮機吸入温度センサ55の検知値を入力することで算出される。なお、各エンタルピー差Δh(s=const)、Δh(REF)の関数は、記憶部31にあらかじめ記憶されている。
【0045】
断熱効率ηは、圧縮機11の仕様、運転状態、および、環境条件などにより変化するが、圧縮機11は、断熱効率ηが一定の範囲内となるように設計される。つまり、圧縮機11は、断熱効率ηが最低断熱効率ηmin以上かつ最高断熱効率ηmax以下(ηmin≦η≦ηmax)となるように設計され、この範囲が正常範囲となる。なお、最低断熱効率ηminは、例えば0.5であり、最高断熱効率ηmaxは例えば0.9である。また、圧縮機11の吸入状態および圧縮機11の吸入側と吐出側との高低圧差などにより、断熱効率ηはおおよそどの位の値になるか、推定することができる。なお、断熱効率ηの値は、実際の圧縮機11ではよくても1より小さくなる。
【0046】
図3は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の圧縮機11の吐出側の圧力および温度の範囲を示す図である。図3の縦軸は圧力[MPaG]を示しており、横軸は比エンタルピー[kJ/kg]を示している。
【0047】
図3は、p-h線図上に、最高断熱効率ηmaxと最低断熱効率ηminとをそれぞれ図示したものである。圧縮機11の仕様、運転状態、および、環境条件などから、断熱効率ηには幅が存在し、正常時であれば、断熱効率ηはそれら条件に応じて最低断熱効率ηmin以上かつ最高断熱効率ηmax以下の値となる。また、同様に、圧力および温度にもそれぞれ幅が存在し、正常時であれば、圧力は最小圧力P(ηmin)以上最大圧力P(ηmax)以下の値となり、温度は最低温度T(ηmax)以上最高温度T(ηmin)以下の値となる。
【0048】
そのため、圧力Pおよび温度Tをパラメータとしたp0(P,T)は、正常時であれば、図3に示すように、最低断熱効率ηmin、最高断熱効率ηmax、最小圧力P(ηmin)、最大圧力P(ηmax)、最低温度T(ηmax)、および、最高温度T(ηmin)で囲まれた範囲に存在することとなる。
【0049】
図4は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の圧縮機吐出温度センサ51の正常値および異常値を示す図である。図4の縦軸は圧力[MPaG]を示しており、横軸は比エンタルピー[kJ/kg]を示している。
【0050】
図4は、p-h線図上に、圧縮機吐出温度センサ51の検知値が正常なp0から乖離して、正常と異常との境界p1を経て、異常値pTabへ変化していく様子を示した図である。運転状態、環境条件、および、センサの個体差などにより、圧縮機吐出温度センサ51の検知値は変化するが、正常時は正常範囲内に収まる。しかしながら、上述のように圧縮機吐出温度センサ51に異常が発生すると、圧縮機吐出温度センサ51の検知値は、p0からp1、そしてpTabへと低下し、正常範囲から逸脱してしまう。よって、p0が正常範囲から逸脱した場合に、圧縮機吐出温度センサ51の異常を判別することができる。
【0051】
図5は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の高圧圧力センサ16の正常値および異常値を示す図である。図5の縦軸は圧力[MPaG]を示しており、横軸は比エンタルピー[kJ/kg]を示している。
【0052】
図5は、p-h線図上に、高圧圧力センサ16の検知値が正常なp0から乖離して、正常と異常との境界p3を経て、異常値pPabへ変化していく様子を示した図である。運転状態、環境条件、および、センサの個体差などにより、高圧圧力センサ16の検知値は変化するが、正常時は正常範囲内に収まる。しかしながら、上述のように高圧圧力センサ16に異常が発生すると、高圧圧力センサ16の検知値は、p0からp3、そしてpPabへと低下し、正常範囲から逸脱してしまう。よって、p0が正常範囲から逸脱した場合に、高圧圧力センサ16の異常を判別することができる。
【0053】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定処理時の制御の流れについて説明する。
【0054】
図6は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置30は、所定の時間間隔毎に通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。または、制御装置30は、運転モード切替部37からユーザーによる異常検知モードへの切替操作を受け付けたら、通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。
【0055】
(ステップS101)
制御装置30は、圧縮機11が運転中であるかどうかを判定する。制御装置30が、圧縮機11が運転中であると判定した場合(YES)、処理はステップS102に進む。一方、制御装置30が、圧縮機11が運転中ではないと判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、圧縮機11が運転中ではない場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、圧縮機11の運転中以外にセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0056】
(ステップS102)
制御装置30は、過渡状態でないかどうかを判定する。ここで、過渡状態とは、例えば圧縮機11の起動時、または、絞り装置21の開度が大きく変動して高圧側に貯留されている液冷媒量が変動する場合、などの運転動作が安定していない状態である。制御装置30が、過渡状態ではないと判定した場合(YES)、処理はステップS103に進む。一方、制御装置30が、過渡状態であると判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、過渡状態である場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、過渡状態のときにセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0057】
(ステップS103)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、低圧圧力センサ17、圧縮機吐出温度センサ51、および、圧縮機吸入温度センサ55から検知値をそれぞれ取得する。その後、処理はステップS104Aに進む。なお、ステップS103の処理は、ステップS102の後に限定されず、ステップS101の前あるいはステップS102の前に行ってもよい。
【0058】
(ステップS104A)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、低圧圧力センサ17、圧縮機吐出温度センサ51、および、圧縮機吸入温度センサ55の検知値に基づいて、断熱効率ηを算出する。なお、断熱効率ηの算出は、上記の式(1)を用いて行われる。その後、処理はステップS105Aに進む。
【0059】
(ステップS105A)
制御装置30は、断熱効率ηがあらかじめ設定された最高断熱効率ηmaxよりも高いかどうかを判定する。制御装置30が、断熱効率ηが最高断熱効率ηmaxよりも高いと判定した場合(YES)、処理はステップS106に進む。一方、制御装置30が、断熱効率ηが最高断熱効率ηmaxよりも高くないと判定した場合(NO)、処理はステップS107Aに進む。
【0060】
(ステップS106)
制御装置30は、圧縮機吐出温度センサ51が異常であると判定し、報知部36により、圧縮機吐出温度センサ51が異常である旨を報知する。その後、センサ異常判定処理は終了する。
【0061】
(ステップS107A)
制御装置30は、断熱効率ηがあらかじめ設定された最低断熱効率ηminよりも低いかどうかを判定する。制御装置30が、断熱効率ηが最低断熱効率ηminよりも低いと判定した場合(YES)、処理はステップS108に進む。一方、制御装置30が、断熱効率ηが最低断熱効率ηminよりも低くないと判定した場合(NO)、処理はステップS109に進む。
【0062】
(ステップS108)
制御装置30は、高圧圧力センサ16が異常であると判定し、報知部36により、高圧圧力センサ16が異常である旨を報知する。その後、センサ異常判定処理は終了する。
【0063】
(ステップS109)
制御装置30は、各センサが正常であると判定し、センサ異常判定処理は終了する。
【0064】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100のセンサ異常検知後の処理について説明する。
従来では、圧縮機吐出温度センサ51に異常が発生して検知値が低くなった場合、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、圧縮機吐出温度センサ51および高圧圧力センサ16のうち一方のみが異常の場合でも圧縮機11を停止させていた。しかし、実施の形態1では、異常センサの特定ができ、圧縮機吐出温度センサ51が異常の場合、その異常センサを用いなくても圧縮機11の吐出状態を推定することができる。よって、実施の形態1では、センサ異常検知後でも圧縮機11を停止させることなく運転させることが可能となる。
【0065】
ただし、センサ異常の発生時に圧縮機11を増速させると冷媒が高圧側に貯留されて高圧圧力が高くなり、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、センサ異常の発生を検知したら、圧縮機周波数を増速させないようにする。また、センサ異常の発生時に絞り装置21を閉めすぎると冷媒が高圧側に貯留されて高圧圧力が高くなり、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、センサ異常の発生を検知したら、絞り装置21を閉めないようにする。
【0066】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の変形例について説明する。
【0067】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100では、センサ異常判定モードにおいて、断熱効率ηを用いてセンサ異常判定処理を行っているが、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の変形例では、吐出温度閾値Td_s_thおよび高圧圧力閾値Pd_s_thを用いてセンサ異常判定処理を行う。
【0068】
ここで、吐出温度Tdは、下記の式(2)のように、Pd、Ps、Ts、および、ηを引数とした関数fTdとして表すことができる。また、高圧圧力Pdは、下記の式(3)のように、Ps、Td、Ts、および、ηを引数とした関数fPdとして表すことができる。
【0069】
Td=fTd(Pd、Ps、Ts、η)・・・・・(2)
Pd:吐出圧力[MPaG]
Ps:吸入圧力[MPaG]
Ts:吸入温度[℃]
η:断熱効率[―]
【0070】
Pd=fPd(Ps、Td、Ts、η)・・・・・(3)
Ps:吸入圧力[MPaG]
Td:吐出温度[℃]
Ts:吸入温度[℃]
η:断熱効率[―]
【0071】
そして、吐出温度閾値Td_s_thは、式(2)のηにあらかじめ設定された値であるηmaxを入力した関数fTdで表すことができ、高圧圧力閾値Pd_s_thは、式(3)のηにあらかじめ設定された値であるηminを入力した関数fPdで表すことができる。つまり、吐出温度閾値Td_s_thは、下記の式(2)’のように、Pd、Ps、Ts、および、ηmaxを引数とした関数fTdとして表すことができる。また、高圧圧力閾値Pd_s_thは、下記の式(3)’のように、Ps、Td、Ts、および、ηminを引数とした関数fPdとして表すことができる。
【0072】
Td_s_th=fTd(Pd、Ps、Ts、ηmax)・・・・・(2)’
【0073】
Pd_s_th=fPd(Ps、Td、Ts、ηmin)・・・・・(3)’
【0074】
図7は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の変形例によるセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【0075】
なお、図7のステップS101~S103、S106、S108~S109についてはすでに説明したものと同じ処理のため、それらの説明を省略する。ただし、図7のステップS103では、上記のステップS103の説明において、「処理はステップS104Aに進む。」を「処理はステップS104Bに進む。」に読み替えるものとする。
【0076】
(ステップS104B)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、低圧圧力センサ17、圧縮機吐出温度センサ51、および、圧縮機吸入温度センサ55の検知値に基づいて、吐出温度閾値Td_s_thおよび高圧圧力閾値Pd_s_thを算出する。なお、吐出温度閾値Td_s_thおよび高圧圧力閾値Pd_s_thの算出は、上記の式(2)’および式(3)’を用いて行われる。その後、処理はステップS105Bに進む。
【0077】
(ステップS105B)
制御装置30は、圧縮機吐出温度センサ51の検知値である吐出温度Tdが吐出温度閾値Td_s_thよりも低いかどうかを判定する。制御装置30が、吐出温度Tdが吐出温度閾値Td_s_thよりも低いと判定した場合(YES)、処理はステップS106に進む。一方、制御装置30が、吐出温度Tdが吐出温度閾値Td_s_thよりも低くないと判定した場合(NO)、処理はステップS107Bに進む。
【0078】
(ステップS107B)
制御装置30は、高圧圧力センサ16の検知値である高圧圧力Pdが高圧圧力閾値Pd_s_thよりも低いかどうかを判定する。制御装置30が、高圧圧力Pdが高圧圧力閾値Pd_s_thよりも低いと判定した場合(YES)、処理はステップS108に進む。一方、制御装置30が、高圧圧力Pdが高圧圧力閾値Pd_s_thよりも低くないと判定した場合(NO)、処理はステップS109に進む。
【0079】
以上、実施の形態1に係る冷凍空調装置100は、圧縮機11、凝縮器12、絞り装置21、および、蒸発器22が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路1を備えている。また、冷凍空調装置100は、圧縮機11の吐出圧力を検知、または吐出圧力を算出するための温度を検知する第一センサと、圧縮機11の吸入圧力を検知、または吸入圧力を算出するための温度を検知する第二センサと、圧縮機11の吐出温度を検知する第三センサと、圧縮機11の吸入温度を検知する第四センサと、を備えている。また、冷凍空調装置100は、吐出圧力、吸入圧力、吐出温度、および、吸入温度に基づいて算出した圧縮機11の断熱効率があらかじめ設定された上限値より高い場合、あるいは、吐出温度が吐出圧力、吸入圧力、および、吸入温度に基づいて算出した吐出温度閾値よりも低い場合に、第三センサが異常であると判定する制御装置30と、を備えたものである。
【0080】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、断熱効率があらかじめ設定された上限値より大きい場合、あるいは、吐出温度が吐出温度閾値よりも低い場合に、第三センサが異常であると判定する。そのため、異常が発生したセンサを特定することができ、特に第三センサの異常を特定することができる。また、異常が発生したセンサを特定することができるため、異常要因の特定ができ、異常箇所を早期に復旧させることができる。その結果、冷凍空調装置100の異常期間を短縮することができるとともに、異常状態で運転させる時間を短縮することができる。
【0081】
なお、圧力センサが異常の場合には、正常時よりも検知値が低くなるため、結果的に正常時と比べて冷凍空調装置100がより高い圧力で制御されることになる。そして、冷凍空調装置100がより高い圧力で制御されることになると、圧縮機11の消費電力が高くなるため、エネルギー効率が悪くなり、環境に悪い運転を行うことになってしまう。そこで、実施の形態1に記載のセンサ異常判定を行うことで、異常状態で運転させる時間を短縮することができるため、冷凍空調装置100の寿命が低下するのを抑制でき、環境負荷およびライフサイクルコストを低減することができる。
【0082】
また、実施の形態1に係る冷凍空調装置100において、制御装置30は、断熱効率があらかじめ設定された下限値より低い場合、あるいは、吐出圧力が高圧圧力閾値よりも低い場合に、第一センサが異常であると判定する。
【0083】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、第一センサの異常を特定することができる。
【0084】
また、実施の形態1に係る冷凍空調装置100において、制御装置30は、いずれかのセンサが異常である場合、圧縮機周波数を増速させない。
【0085】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、冷凍空調装置100が故障するのを回避することができる。
【0086】
実施の形態2.
以下、実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0087】
図8は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の構成を示す図である。
実施の形態2に係る室外機10は、実施の形態1の構成に加え、圧縮機入力センサ56と、圧縮機周波数センサ57とを備えている。なお、以下において、圧縮機入力センサ56は第五センサとも称し、圧縮機周波数センサ57は周波数取得手段とも称する。
【0088】
圧縮機入力センサ56は、圧縮機11に設けられており、圧縮機入力値を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。圧縮機入力センサ56は、例えばワットメーターである。圧縮機周波数センサ57は、圧縮機11に設けられており、冷媒回路1の冷媒循環量を算出するための圧縮機周波数を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。圧縮機周波数センサ57は、例えば振動センサあるいは加速度センサである。なお、冷媒循環量の算出には、圧縮機周波数センサ57の検知値の代わりに圧縮機11への指示周波数を用いてもよい。
【0089】
図9は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の正常時および異常時における圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差を示す図である。図9の縦軸は圧力[MPaG]を示しており、横軸は比エンタルピー[kJ/kg]を示している。
【0090】
図9は、p-h線図上に、高圧圧力センサ16および圧縮機吐出温度センサ51の正常値p0、高圧圧力センサ16の異常値pPab、圧縮機吐出温度センサ51の異常値pTab、および、その際の圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差Δh(REF)、Δh(Pab)、Δh(Tab)をそれぞれ示したものである。
【0091】
なお、上述のとおり、図9に示すp-h線図から圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差Δhを求めることができるが、下記の式によって算出することもできる。
【0092】
Δh(w)=W(w)/Gr・・・・・(4)
W(w):圧縮機入力値[W]
Gr:冷媒循環量[kg/s]
【0093】
また、冷媒循環量Grは、下記の式によって算出することができる。
【0094】
Gr=F×v×ηv×ρs・・・・・(5)
F:圧縮機周波数[Hz]
v:圧縮機押しのけ量[m
ηv:圧縮機体積効率[―]
ρs:圧縮機吸入密度[kg/m
なお、v、ηvは、冷凍空調装置100に用いられる圧縮機11の設計仕様から定まる一定値であり、ρsは、圧縮機11の吸入温度と吸入圧力とから求められる冷媒物性値である。
【0095】
また、p-h線図から求めた圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差Δh(REF)に、冷媒循環量Grを積算することで、圧縮機入力推定値W(REF)を算出することもできる。つまり、圧縮機入力推定値W(REF)は下記の式によって算出することもできる。
【0096】
W(REF)=Δh(REF)×Gr・・・・・(6)
Δh(REF):実際の圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差
Gr:冷媒循環量[kg/s]
【0097】
そして、圧縮機入力推定値W(REF)と、圧縮機入力センサ56の検知値である圧縮機入力値W(w)とを比較することで、下記のように高圧圧力センサ16および圧縮機吐出温度センサ51の異常検知を行うことができる。
【0098】
W(REF)=W(w):正常
W(REF)<W(w):圧縮機吐出温度センサ51異常、もしくは圧縮機入力センサ56異常
W(w)<W(REF):高圧圧力センサ16異常、もしくは圧縮機入力センサ56異常
【0099】
また、実際の圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差Δh(REF)と、圧縮機入力センサ56の検知値である圧縮機入力値W(w)を冷媒循環量Grで割って算出した圧縮機11の吸入側と吐出側とのエンタルピー差Δh(w)とを比較する。そうすることで、下記のように高圧圧力センサ16および圧縮機吐出温度センサ51の異常検知を行うことができる。
【0100】
Δh(REF)=Δh(w):正常
Δh(REF)<Δh(w):圧縮機吐出温度センサ51異常、もしくは圧縮機入力センサ56異常
Δh(w)<Δh(REF):高圧圧力センサ16異常、もしくは圧縮機入力センサ56異常
【0101】
次に、実施の形態2に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定処理時の制御の流れについて説明する。
【0102】
図10は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置30は、所定の時間間隔毎に通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。または、制御装置30は、運転モード切替部37からユーザーによる異常検知モードへの切替操作を受け付けたら、通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。
【0103】
(ステップS201)
制御装置30は、圧縮機11が運転中であるかどうかを判定する。制御装置30が、圧縮機11が運転中であると判定した場合(YES)、処理はステップS202に進む。一方、制御装置30が、圧縮機11が運転中ではないと判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、圧縮機11が運転中ではない場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、圧縮機11の運転中以外にセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0104】
(ステップS202)
制御装置30は、過渡状態でないかどうかを判定する。ここで、過渡状態とは、例えば圧縮機11の起動時、または、絞り装置21の開度が大きく変動して高圧側に貯留されている液冷媒量が変動する場合、などの運転動作が安定していない状態である。制御装置30が、過渡状態ではないと判定した場合(YES)、処理はステップS203に進む。一方、制御装置30が、過渡状態であると判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、過渡状態である場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、過渡状態のときにセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0105】
(ステップS203)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、低圧圧力センサ17、圧縮機吐出温度センサ51、圧縮機吸入温度センサ55、圧縮機入力センサ56、および、圧縮機周波数センサ57から検知値をそれぞれ取得する。その後、処理はステップS204に進む。なお、ステップS203の処理は、ステップS202の後に限定されず、ステップS201の前あるいはステップS202の前に行ってもよい。
【0106】
(ステップS204)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、低圧圧力センサ17、圧縮機吐出温度センサ51、圧縮機吸入温度センサ55、および、圧縮機周波数センサ57の検知値に基づいて、圧縮機入力推定値W(REF)を算出する。なお、圧縮機入力推定値W(REF)の算出は、上記の式(6)を用いて行われる。その後、処理はステップS205に進む。
【0107】
(ステップS205)
制御装置30は、圧縮機入力推定値W(REF)が圧縮機入力センサ56の検知値である圧縮機入力値W(w)よりも小さいかどうかを判定する。制御装置30が、圧縮機入力推定値W(REF)が圧縮機入力値W(w)よりも小さいと判定した場合(YES)、処理はステップS206に進む。一方、制御装置30が、圧縮機入力推定値W(REF)が圧縮機入力値W(w)よりも小さくないと判定した場合(NO)、処理はステップS207に進む。
【0108】
(ステップS206)
制御装置30は、圧縮機吐出温度センサ51または圧縮機入力センサ56が異常であると判定し、報知部36により、圧縮機吐出温度センサ51または圧縮機入力センサ56が異常である旨を報知する。その後、センサ異常判定処理は終了する。
【0109】
(ステップS207)
制御装置30は、圧縮機入力推定値W(REF)が圧縮機入力値W(w)よりも大きいかどうかを判定する。制御装置30が、圧縮機入力推定値W(REF)が圧縮機入力値W(w)よりも大きいと判定した場合(YES)、処理はステップS208に進む。一方、制御装置30が、圧縮機入力推定値W(REF)が圧縮機入力値W(w)よりも大きくないと判定した場合(NO)、処理はステップS209に進む。
【0110】
(ステップS208)
制御装置30は、高圧圧力センサ16または圧縮機入力センサ56が異常であると判定し、報知部36により、高圧圧力センサ16または圧縮機入力センサ56が異常である旨を報知する。その後、センサ異常判定処理は終了する。
【0111】
(ステップS209)
制御装置30は、各センサが正常であると判定し、センサ異常判定処理は終了する。
【0112】
なお、上記のセンサ異常判定処理に関して、ステップS206およびS208の処理では異常センサの特定ができていないが、実施の形態1で説明したセンサ異常判定処理を合わせて行うことで、異常センサの特定を行うことができる。例えば、ステップS206の処理を行った後、実施の形態1で説明したセンサ異常判定処理を行い、ステップS106の処理に進んだら圧縮機吐出温度センサ51が異常、ステップS108の処理に進んだら圧縮機入力センサ56が異常であると判定できる。
【0113】
次に、実施の形態2に係る冷凍空調装置100のセンサ異常検知後の処理について説明する。
従来では、圧縮機吐出温度センサ51に異常が発生して検知値が低くなった場合、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、圧縮機吐出温度センサ51および高圧圧力センサ16のうち一方のみが異常の場合でも圧縮機11を停止させていた。しかし、実施の形態2では、異常センサの特定ができ、圧縮機吐出温度センサ51が異常の場合、その異常センサを用いなくても圧縮機11の吐出状態を推定することができる。よって、実施の形態2では、センサ異常検知後でも圧縮機11を停止させることなく運転させることが可能となる。
【0114】
ただし、センサ異常の発生時に圧縮機11を増速させると冷媒が高圧側に貯留されて高圧圧力が高くなり、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、センサ異常の発生を検知したら、圧縮機周波数を増速させないようにする。また、センサ異常の発生時に絞り装置21を閉めすぎると冷媒が高圧側に貯留されて高圧圧力が高くなり、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、センサ異常の発生を検知したら、絞り装置21を閉めないようにする。
【0115】
以上、実施の形態2に係る冷凍空調装置100は、圧縮機入力値を検知する第五センサと、圧縮機周波数を取得する周波数取得手段と、を備えている。そして、制御装置30は、吐出圧力、吸入圧力、吐出温度、吸入温度、および、圧縮機周波数に基づいて算出した圧縮機入力推定値と圧縮機入力値とが異なる値である場合に、第一センサ、第三センサ、および、第五センサのうちいずれかが異常であると判定する。
【0116】
また、制御装置30は、圧縮機入力推定値が圧縮機入力値よりも小さい場合に、第三センサまたは第五センサが異常であると判定する。
【0117】
また、制御装置30は、圧縮機入力推定値が圧縮機入力値よりも大きい場合に、第一センサまたは第五センサが異常であると判定する。
【0118】
実施の形態2に係る冷凍空調装置100によれば、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【符号の説明】
【0119】
1 冷媒回路、10 室外機、11 圧縮機、12 凝縮器、16 高圧圧力センサ、17 低圧圧力センサ、20 室内機、21 絞り装置、22 蒸発器、30 制御装置、31 記憶部、32 抽出部、33 演算部、34 比較部、35 判定部、36 報知部、37 運転モード切替部、41 液管、42 ガス管、51 圧縮機吐出温度センサ、54 凝縮器周囲温度センサ、55 圧縮機吸入温度センサ、56 圧縮機入力センサ、57 圧縮機周波数センサ、100 冷凍空調装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10