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特開2022-179973光張出し無線システム、子局装置及び通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179973
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】光張出し無線システム、子局装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 92/20 20090101AFI20221129BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20221129BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20221129BHJP
【FI】
H04W92/20 110
H04B7/15
H04B10/2575
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086823
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲平
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
5K102
【Fターム(参考)】
5K067AA41
5K067EE06
5K067EE10
5K067HH22
5K067HH24
5K072AA15
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB27
5K102AA34
5K102AB13
5K102AL11
5K102PA01
5K102PB01
5K102PH31
5K102RC01
5K102RC02
(57)【要約】
【課題】 親局がカバーできるエリア数を増大させ、無線通信システム構築のコストを低減できる光張出し無線システム、子局装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】 エリア内の子局装置20として、光ケーブルに接続される1台のマスタ子局装置と光ケーブルに接続されない複数のスレーブ子局装置とを備え、子局装置20は、マスタ子局装置20aから始まって複数のスレーブ子局装置20b~20dを経て再びマスタ子局装置20aに戻るリング状の順番で無線通信を行い、スレーブ子局装置は、当該順番に従って、受信したアップリンクの信号に、配下の端末からの信号を多重化して次の子局装置に送信し、マスタ子局装置20aは、親局装置100からのダウンリンクのデータを、次の順番の子局装置20bに送信すると共に配下の端末に送信し、前の順番の子局装置20dからのアップリンクの信号を受信して、親局装置100に送信する無線システムとしている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置とエリア内の子局装置とが光ケーブルで接続される光張出し無線システムであって、
前記エリア内に、前記光ケーブルに接続される1台の主の子局装置と、前記光ケーブルに接続されない複数の従の子局装置とを備え、
前記エリア内では、前記主の子局装置から始まり、前記複数の従の子局装置を経て前記主の子局装置に戻るリング状の順番で無線通信を行い、
前記従の子局装置は、前記リング状の順番に従って前の順番の子局装置から受信した信号に、配下の端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置に送信し、
前記主の子局装置は、前記親局装置からのデータを、前記リング状の順番に従って、自局の次の順番の子局装置に送信すると共に、自局の前の順番の子局装置から受信した信号を前記親局装置に送信することを特徴とする無線システム。
【請求項2】
主の子局装置は、配下の端末からの信号を、自局の次の順番の子局装置に送信せず、親局装置に送信することを特徴とする請求項1記載の無線システム。
【請求項3】
主の子局装置は、親局装置からのダウンリンク用のデータを、自局の次の順番の子局装置向けに送信すると共に配下の端末向けに送信し、自局の前の順番の子局装置から受信した信号の内、アップリンク用の信号に前記端末からの信号を多重化して、前記多重化したアップリンク用の信号を、前記自局の次の順番の子局装置に送信せず、前記親局装置に送信することを特徴とする請求項1又は2記載の無線システム。
【請求項4】
従の子局装置は、受信した無線信号の内、ダウンリンク用の信号を、次の順番の子局装置向けに送信すると共に配下の端末向けに送信し、前記受信した無線信号の内、アップリンク用の信号に前記端末からの信号を多重化して、前記次の順番の子局装置向けに送信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の無線システム。
【請求項5】
主の子局装置は、配下の端末からの信号を、次の順番の子局装置に送信することを特徴とする請求項1記載の無線システム。
【請求項6】
親局装置と光ケーブルで接続される光張出し無線システムで用いられる子局装置であって、
光ケーブルに接続して親局装置と光信号の送受信を行う親子間送受信部と、
別の子局装置と無線通信を行う子局間送受信部と、
配下の端末と無線通信を行う配下端末送受信部と、
動作モードとして主又は従が設定され、主が設定された場合には主の子局装置として動作し、従が設定された場合には従の子局装置として動作するよう制御する切替制御部とを備えることを特徴とする子局装置。
【請求項7】
親局装置とエリア内の子局装置とが光ケーブルで接続される光張出し無線システムにおける通信方法であって、
前記エリア内では、前記光ケーブルに接続される1台の主の子局装置から始まり、前記光ケーブルに接続されない複数の従の子局装置を経て前記主の子局装置に戻るリング状の順番で無線通信を行うものであり、
前記主の子局装置が、前記親局装置からのデータを、前記リング状の順番に従って、自局の次の順番の従の子局装置に送信し、
前記従の子局装置が、前記リング状の順番に従って前の順番の子局装置から受信した信号に、配下の端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置に送信し、
前記主の子局装置が、自局の前の順番の従の子局装置から受信した信号を前記親局装置に送信することを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光張出し無線システムに係り、特に親局装置がカバーするエリア数を増やして、無線通信システム構築のコストを低減することができる光張出し無線システム、子局装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図5
光張出し無線装置は、親局に光回線を介して接続する子局であり、無線基地局として動作する無線装置である。光張出し無線装置は、例えば、ビル内に設けられ、無線通信圏内の子局と無線通信を行う。
システムによっては、複数の子局が同一の階(区域、エリア)に設けられることがある。
【0003】
従来の光張出し無線装置を用いた無線システム(光張出し無線システム)について図5を用いて説明する。図5は、従来の光張出し無線システムの概略構成例を示す説明図である。
図5に示すように、従来の光張出し無線システム(従来の無線システム)は、親局100と、複数の子局10(子局a(10a)、子局b(10b)、子局c(10c)、子局d(10d))とを備えている。
ここで、子局a(10a)~子局d(10d)は、ビルの同一フロア等、互いに近い区域に設けられており、当該区域をエリア(1)と称する。従来の無線システムでは、エリア(1)以外の別のエリアにも複数の子局10が設けられている。
【0004】
親局100は、上位装置に接続するための上位IFと、子局10に接続するための複数の光ポートを備えている。
そして、従来の無線システムでは、親局100の各光ポートに、光ケーブルを介して1台の子局10が接続されている。
【0005】
具体的には、ポート#0には子局a(10a)が接続され、ポート#1には子局d(10d)が接続され、ポート#2には子局c(10c)が接続され、ポート#3には子局b(10b)が接続されている。
つまり、図5に示した従来の無線システムでは、エリア(1)だけで親局100の光ポートを4つ占有していることになる。
【0006】
[関連技術]
尚、光伝送装置に関連する従来技術としては、特開平09-200149号公報「光通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、子局間をリング状の光ケーブルで接続し、親局と複数の子局との間の双方向通信を低コストにて実現する光通信システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09-200149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光張出し無線システムでは、1台の子局10に対して親局100の光ポートを1つ使用するため、親局100がカバーできるエリア数が少なくなってしまうという問題点があった。
【0009】
尚、特許文献1には、エリア内の複数の子局がリング状に片方向無線通信を行うよう、送受信の順番が決められており、当該エリア内で光ケーブルに接続するマスタ子局を1台とし、他の子局(スレーブ子局)は、マスタ子局からのデータを順番に従って順次転送し、マスタ子局がエリア内のすべての子局からのアップリンク信号を多重して、親局に送信することは記載されていない。
【0010】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、親局がカバーできるエリア数を増大させ、無線通信システム構築のコストを低減することができる光張出し無線システム、子局装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、親局装置とエリア内の子局装置とが光ケーブルで接続される光張出し無線システムであって、エリア内に、光ケーブルに接続される1台の主の子局装置と、光ケーブルに接続されない複数の従の子局装置とを備え、エリア内では、主の子局装置から始まり、複数の従の子局装置を経て前記主の子局装置に戻るリング状の順番で無線通信を行い、従の子局装置は、リング状の順番に従って前の順番の子局装置から受信した信号に、配下の端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置に送信し、主の子局装置は、親局装置からのデータを、リング状の順番に従って、自局の次の順番の子局装置に送信すると共に、自局の前の順番の子局装置から受信した信号を親局装置に送信することを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記無線システムにおいて、主の子局装置は、配下の端末からの信号を、順番に従って自局の次の順番の子局装置に送信せず、親局装置に送信することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記無線システムにおいて、主の子局装置は、親局装置からのダウンリンク用のデータを、自局の次の順番の子局装置向けに送信すると共に配下の端末向けに送信し、自局の前の順番の子局装置から受信した信号の内、アップリンク用の信号に端末からの信号を多重化して、多重化したアップリンク用の信号を、自局の次の順番の子局装置に送信せず、親局装置に送信することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記無線システムにおいて、従の子局装置は、受信した無線信号の内、ダウンリンク用の信号を、次の順番の子局装置向けに送信すると共に配下の端末向けに送信し、受信した無線信号の内、アップリンク用の信号に端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置向けに送信することを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記無線システムにおいて、主の子局装置は、配下の端末からの信号を、順番に従って次の順番の子局装置に送信することを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、親局装置と光ケーブルで接続される光張出し無線システムで用いられる子局装置であって、光ケーブルに接続して親局装置と光信号の送受信を行う親子間送受信部と、別の子局装置と無線通信を行う子局間送受信部と、配下の端末と無線通信を行う配下端末送受信部と、動作モードとして主又は従が設定され、主が設定された場合には主の子局装置として動作し、従が設定された場合には従の子局装置として動作するよう制御する切替制御部とを備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、親局装置とエリア内の子局装置とが光ケーブルで接続される光張出し無線システムにおける通信方法であって、エリア内では、光ケーブルに接続される1台の主の子局装置から始まり、光ケーブルに接続されない複数の従の子局装置を経て主の子局装置に戻るリング状の順番で無線通信を行うものであり、主の子局装置が、親局装置からのデータを、リング状の順番に従って、自局の次の順番の従の子局装置に送信し、従の子局装置が、リング状の順番に従って前の順番の子局装置から受信した信号に、配下の端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置に送信し、主の子局装置が、自局の前の順番の従の子局装置から受信した信号を親局装置に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、親局装置とエリア内の子局装置とが光ケーブルで接続される光張出し無線システムであって、エリア内に、光ケーブルに接続される1台の主の子局装置と、光ケーブルに接続されない複数の従の子局装置とを備え、エリア内では、主の子局装置から始まり、複数の従の子局装置を経て前記主の子局装置に戻るリング状の順番で無線通信を行い、従の子局装置は、リング状の順番に従って前の順番の子局装置から受信した信号に、配下の端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置に送信し、主の子局装置は、親局装置からのデータを、リング状の順番に従って、自局の次の順番の子局装置に送信すると共に、自局の前の順番の子局装置から受信した信号を親局装置に送信する光張出し無線システムとしているので、各エリアにおいて主の子局装置1台のみを光ケーブルに接続すれば、エリア全体の無線通信サービスを実現でき、親局装置がカバーできるエリア数を増大させ、無線システム構築のコストを低減することができる効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、親局装置と光ケーブルで接続される光張出し無線システムで用いられる子局装置であって、光ケーブルに接続して親局装置と光信号の送受信を行う親子間送受信部と、別の子局装置と無線通信を行う子局間送受信部と、配下の端末と無線通信を行う配下端末送受信部と、動作モードとして主又は従が設定され、主が設定された場合には主の子局装置として動作し、従が設定された場合には従の子局装置として動作するよう制御する切替制御部とを備える子局装置としているので、主の子局装置と従の子局装置を同一構成の装置を用いて、設定によって切り替えて動作させることができ、装置コスト及びシステム構築のコストを低減することができる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、親局装置とエリア内の子局装置とが光ケーブルで接続される光張出し無線システムにおける通信方法であって、エリア内では、光ケーブルに接続される1台の主の子局装置から始まり、光ケーブルに接続されない複数の従の子局装置を経て主の子局装置に戻るリング状の順番で無線通信を行うものであり、主の子局装置が、親局装置からのデータを、リング状の順番に従って、自局の次の順番の従の子局装置に送信し、従の子局装置が、リング状の順番に従って前の順番の子局装置から受信した信号に、配下の端末からの信号を多重化して、次の順番の子局装置に送信し、主の子局装置が、自局の前の順番の従の子局装置から受信した信号を親局装置に送信する通信方法としているので、各エリアにおいて主の子局装置1台のみを光ケーブルに接続すれば、エリア全体の無線通信サービスを実現でき、親局装置がカバーできるエリア数を増大させ、無線システム構築のコストを低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本無線システムの概略構成を示す説明図である。
図2】子局装置の概略構成を示す説明図である。
図3】本無線システムの通信イメージを示す説明図である。
図4】子局装置の機能ブロックを示す説明図である。
図5】従来の光張出し無線システムの概略構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る光張出し無線システム(本無線システム)は、親局装置と子局装置とを光ケーブルで接続し、子局装置と配下の端末とが無線通信を行う無線システムであり、子局装置は、光ケーブルに接続されるマスタ子局装置又は光ケーブルに接続されないスレーブ子局装置のいずれかとして動作するよう設定され、同一エリア内の子局装置は、マスタ子局装置から始まり、複数のスレーブ子局装置を経て再びマスタ子局装置に戻るリング状の順番で片方向の無線送受信を行い、スレーブ子局装置は、当該順番に従って、受信したアップリンクの信号に、配下の端末からの信号を多重化して次の子局装置に送信し、マスタ子局装置は、親局装置からのダウンリンクのデータを、次の順番のスレーブ子局装置に送信すると共に配下の端末に送信し、前の順番のスレーブ子局装置からのアップリンクの信号を受信して、光ケーブルを介して親局装置に送信するようにしており、各エリアにおいてマスタ子局装置1台のみを光ケーブルに接続することで、エリア全体の無線通信サービスを実現でき、親局装置がカバーできるエリア数を増大させ、無線システム構築のコストを低減することができるものである。
【0023】
[実施の形態に係る光張出し無線システムの概略構成:図1
本無線システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本無線システムの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本無線システムは、親局装置(親局、図では「親」と記載)100と、複数のエリア(エリア(1)、エリア(2)、・・・)内に設けられた複数の子局装置(子局、「子」と記載)20(子局a(20a)、子局b(20b)、子局c(20c)、子局d(20d))とを備え、親局100と各エリア内の1台の子局20とを光ケーブルで接続した構成である。
【0024】
親局装置100は、従来と同様の構成であり、上位装置に接続すると共に、光ケーブルを介して複数の子局20と接続している。
ここで、本無線システムの特徴として、親局100は、各エリアについて1台の子局20と光ケーブルで接続している。
【0025】
図1の例では、エリア(1)には、子局a(20a)、子局b(20b)、子局c(20c)、子局d(20d)の4台の子局20が設けられているが、子局a(20a)のみが光ケーブルによって親局100のポート#0に接続されている。
親局100に接続される子局20をマスタ(Master)子局(主の子局装置)と称する。
マスタ子局以外の子局20は、スレーブ(Slave)子局(従の子局装置)と称する。
各子局20は、従来と同様に無線システムの基地局装置として機能し、配下の端末と無線通信を行う。
【0026】
そして、本無線システムの特徴として、同一エリア(例えば、ビルの同一フロア等)内の子局20には、マスタ子局から始まって、複数のスレーブ子局を経て、再びマスタ子局に戻るよう、一方向(片方向)のリング状の無線送受信の順番が規定されている。
図1の例では、エリア(1)では、光ケーブルを介して親局100に接続するマスタの子局a(20a)からスタートして、再び子局(a)に戻るよう、子局a(20a)→子局b(20b)→子局c(20c)→子局d(20d)→子局a(20a)というリング状(ループ状)の無線送受信順が決められている。
【0027】
各子局20には、マスタ・スレーブに関わらず、自局の前の順番(前段)の子局及び自局の次の順番(後段)の子局の情報が記憶されており、子局間の無線通信において、どの子局から受信して、どの子局宛てに送信するかが決められている。
【0028】
これにより、親局100から光ケーブルで送信されるダウンリンクのデータは、マスタ子局で受信され、マスタ子局から順番に従って複数のスレーブ子局に順次転送され、スレーブ子局においてそれぞれ配下の端末に送信される。
順番が最後(リング状の順番において、マスタ子局の直前)の子局20(ここでは子局d(20d))は、ダウンリンクのデータを、マスタ子局である子局a(20a)に転送するが、子局a(20a)は、当該データを配下の端末に送信しない。
尚、マスタ子局の直前のスレーブ子局は、ダウンリンクのデータをマスタ子局に転送しないように構成してもよい。
【0029】
また、各子局20の配下の端末からのアップリンクの信号は、リング状の順番に従って順次転送されつつ、転送先の子局20で配下の端末からのアップリンクの信号が多重化されて、最終的にマスタ子局に転送され、マスタ子局が光ケーブルを介して親局100に送信する。
【0030】
つまり、エリア(1)において、子局d(20d)からのアップリンクの信号には、子局(b)20b、子局c(20c)、子局d(20d)のアップリンクの信号が多重化されており、マスタ子局である子局a(20a)は、受信したアップリンクの信号を親局100に送信する。
【0031】
その際、マスタ子局である子局a(20a)は、自局の配下の端末からのアップリンクの信号を、前の順番の子局d(20d)からのアップリンクの信号に多重化してもよいし、自局の配下からのアップリンクの信号を多重化せずに別途送信してもよい。
更に、マスタ子局は、自局の配下からのアップリンクの信号を次の順番のスレーブ子局である子局b(20b)に送信して、エリア内のスレーブ子局に順次多重化させ、リング状の順番が自局の1つ前のスレーブ子局から受信したアップリンクの信号を親局100に送信してもよい。
【0032】
各子局20は、マスタ子局として動作するか、スレーブ子局として動作するかのいずれかが設定されており、設定に従って動作を行う。
子局20の構成及び動作については後述する。
【0033】
同様に、他のエリア(2)、・・・についても、1台の子局20のみが光ケーブルに接続されている。つまり、エリア1つに対して1本の光ケーブル(1つの光ポート)を使用することになる。
これにより、本無線システムでは、図5に示した従来の無線システムに比べて、1台の親局100に接続可能なエリア数を大幅に増やすことができ、無線システム構築のコストを低減するものである。
【0034】
[子局装置20の概略構成:図2
次に、子局20の概略構成について図2を用いて説明する。図2は、子局装置の概略構成を示す説明図である。図2では、接続インタフェースを示している。
子局20は、設定に応じて、マスタ子局又はスレーブ子局のいずれかとして動作するものであり、どちらとしても動作可能な構成となっている。そして、子局20は、設定された動作モード(マスタ又はスレーブ)に従って動作を行う。
【0035】
図2に示すように、子局20は、接続インタフェースとして、子局間インタフェース(1)21と、子局間インタフェース(2)22と、親子間インタフェース23と、配下端末インタフェース24とを備えている。
子局間インタフェース(1)(図では、ANT1受信子間IFと記載)21は、受信アンテナに接続し、子局20からの無線信号を受信し、後述する受信処理部に出力する。
子局間インタフェース(2)(図では、ANT2送信子間IFと記載)22は、送信アンテナに接続し、送信処理部からの無線信号を無線送信する。
【0036】
また、親子間インタフェース(図ではSFP0送受信IFと記載)23は、光ケーブルに接続し、電気信号と光信号の相互変換を行うものであり、光ケーブルから入力されるダウンリンクの光信号を電気信号に変換し、アップリンクの電気信号を光信号に変換して光ケーブルに出力する。
【0037】
上述したように、一つのエリア内で、親子間インタフェース23を用いて親局100と光通信を行うのはマスタ子局として設定された子局20のみであり、スレーブ子局として設定された子局20は光通信を行わない。
配下端末インタフェース(図ではANT0送受信配下端末IFと記載)24は、無線送受信アンテナに接続し、当該子局20の無線通信圏内にいる配下の端末と無線送受信を行う。
【0038】
[本無線システムの通信イメージ:図3
次に、本無線システムの通信イメージについて図3を用いて説明する。図3は、本無線システムの通信イメージを示す説明図である。
ここでは、図1に示したエリア(1)を例として説明する。
エリア(1)には、マスタ子局(マスタ)である子局a(20a)(図では子aと記載)と、スレーブ子局である子局b(20b)、子局c(20c)、子局d(20d)が設置されている。
そして、マスタの子局a(20a)は、光ケーブルを介して親局100と接続している。
【0039】
また、子局a(20a)の通信圏内には、配下の端末として携帯端末(端末)411が存在(在圏)しており、子局b(20b)には、携帯端末412が在圏している。他の子局20にも配下の端末が在圏していることもあるが、ここでは省略する。
【0040】
まず、親局100からのダウンリンクのデータの通信について説明する。
親局100からのダウンリンク(DL)のデータは、光ケーブルを介してマスタの子局a(20a)に受信される。子局a(20a)は、当該DLのデータを配下の端末411に無線送信すると共に、予め決められた順番に従って、DLのデータを次の順番の(後段の)スレーブの子局b(20b)に無線送信する。
【0041】
子局b(20b)は、DLのデータを配下の端末412に無線送信すると共に、次の順番の子局c(20c)に無線送信する。
以下同様に、各子局20は、DLのデータを受信すると、配下の端末に送信すると共に、次の順番の子局20に無線送信する。
子局a(20a)は、前の順番の(前段の)子局d(20d)からDLのデータを受信した場合、当該データは既に受信済みであるため、配下の端末や次の子局b(20b)に送信することはない。
【0042】
次に、各子局20の配下の端末から送信されるアップリンクの信号の通信について説明する。
アップリンクの信号の処理方法は、マスタとスレーブとで異なっている。
スレーブ子局である子局b(20b)、子局c(20c)、子局d(20d)は、前の順番の子局20から無線でアップリンクの信号を受信すると、配下の端末からのアップリンクの信号を受信したアップリンクの信号に多重化して、後段の子局20に無線送信する。
【0043】
これにより、スレーブの子局(20b)、子局c(20c)、子局d(20d)の配下の端末からのアップリンクの信号は、多重化されて、最終的には子局d(20d)からマスタの子局a(20a)に送信される。
そして、マスタの子局a(20a)は、前段の子局d(20d)から受信したアップリンクの信号に、自局の配下の端末411からのアップリンクの信号を多重化して、光ケーブルを介して親局100に送信する。
【0044】
また、マスタの子局a(20a)は、スレーブ子局で多重化されたアップリンクの信号を待つことなく、配下の端末411からアップリンクの信号を受信した場合に、直ちに親局100に送信してもよい。
【0045】
更に、マスタの子局a(20a)は、次の順番のスレーブ子局である子局b(20b)に配下の端末411からアップリンクの信号を送信してもよい。
この場合には、端末411からのアップリンクの信号は、スレーブ子局に順次転送されつつ、スレーブ子局の配下の端末からのアップリンクの信号と多重化されて、最終的に子局a(20a)に受信され、子局a(20a)から親局100に送信される。
つまり、この場合には、マスタの子局a(20a)は、配下の端末からのアップリンクの信号を多重化する処理を行わない。
【0046】
[子局装置20の機能構成:図4
次に、本無線システムの子局装置20の機能構成について図4を用いて説明する。図4は、子局装置の機能ブロックを示す説明図である。
図4に示すように、子局装置20は、親子間受信処理部(図では、SFP0受信処理と記載)500と、親子間送信処理部(SFP0送信処理)501と、配下端末送信処理部(ANT0送信処理)502と、配下端末受信処理部(ANT0受信処理)503と、子局間受信処理部(ANT1受信処理)504と、子局間送信処理部(ANT2送信処理部)505と、アップリンク多重処理部(Uplink多重処理、UL多重処理)510と、TDD(Time Division Duplex:時分割多重)切替処理部(1)(TDD切替処理(1))511と、TDD切替処理部(2)(TDD切替処理(2))512と、TDD切替処理部(3)(TDD切替処理(3))513と、マスタ/スレーブ切替処理部(Master/Slave切替処理)514とを備えている。
【0047】
これらの機能ブロック部分の内、親子間受信処理部500と親子間送信処理部501は、図2に示した親子間インタフェース23に設けられ、配下端末送信処理部502と配下端末受信処理部503は、配下端末インタフェース24に設けられている。
また、子局間送信処理部504は、子局間インタフェース(2)22に設けられ、子局間受信処理部505は、子局間インタフェース(1)21に設けられている。
更に、TDD切替処理部(1)511、TDD切替処理部(2)512、TDD切替処理部(3)513は、DL/UL切替処理部(図示せず)に設けられている。
【0048】
各機能ブロックについて説明する。
親子間受信処理部500は、DL入力ポートからのDLのデータを入力し、復調等の受信処理を行う。
親子間送信処理部501は、UL信号に変調等の送信処理を行って、UL出力ポートに出力する。
【0049】
配下端末送信処理部502は、親局100若しくは前段の子局20から受信したDLデータに送信用の信号処理を行い、自局の配下の端末宛てに送信する。
配下端末受信処理部503は、配下の端末からのULの信号を受信して受信処理を行い、UL多重処理部510に出力する。
【0050】
子局間受信処理部504は、前の順番の子局20から無線信号(DL,UL)を受信して、受信処理を行い、出力する。
子局間送信処理部505は、DLのデータ及びULの信号に対して送信処理を行って、次の順番の子局20に対して無線送信する。
【0051】
TDD切替処理部(1)511は、TDD切替タイミングに基づいて、受信信号をDL信号とUL信号に分離し、DL信号をマスタ/スレーブ切替処理部514に出力し、UL信号をUL多重処理部510に出力する。
【0052】
UL多重処理510は、TDD切替処理部(1)511からのUL信号に、配下端末受信処理部503からのUL信号を多重する。そして、スレーブ子局においては、多重化された信号をTDD切替処理部(2)512に出力し、マスタ子局においては、親子間送信処理部501に出力する。
つまり、UL多重処理部510は、多重化された信号の出力先を、後述するマスタ/スレーブ切替処理部514に設定された動作モードに応じて切り替えるものである。
【0053】
TDD切替処理部(2)512は、TDD切替タイミングに基づいて、マスタ/スレーブ切替処理部514からのDL信号とUL多重処理部510からのUL信号を切り替えて子局間送信処理部505に出力する。
【0054】
TDD切替処理部(3)513は、TDD切替タイミングに基づいて、配下端末へのDL信号と、配下端末からのUL信号を切り替えて、DL信号を配下端末宛てに無線送信し、UL信号を配下端末受信処理部503に出力する。
【0055】
マスタ/スレーブ切替処理部514は、当該子局装置の動作モードとしてマスタ又はスレーブが設定されており、動作モードに応じて当該子局装置全体をマスタ子局又はスレーブ子局として動作するよう制御する。マスタ/スレーブ切替処理部514は、請求項に記載した切替制御部に相当する。
【0056】
また、マスタ/スレーブ切替処理部514は、動作モードに応じてDLのデータを選択して出力する。
具体的には、マスタが設定されている場合、マスタ/スレーブ切替処理部514には、親子間受信処理部500からのDLデータと、TDD切替処理部(1)511からのDLデータの両方が入力されるが、マスタ子局のマスタ/スレーブ切替処理部514は、親子間受信処理部500からのDLデータを選択して出力する。
これにより、マスタ子局の配下の端末や、次の順番の子局には親局100から受信したDLのデータが送信される。
【0057】
また、マスタ/スレーブ切替処理部514にスレーブが設定されている場合、TDD切替処理部(1)511からのDLデータのみが入力され、マスタ/スレーブ切替処理部514は、このDLデータを出力する。マスタ/スレーブ切替処理部514にスレーブが設定されている場合、通常、当該子局20は光ケーブルに接続されておらず、親子間受信処理部500からのDLデータは入力されない。
【0058】
[子局20の動作:図4
次に、子局20の動作について図4を用いて説明する。
[スレーブ子局の動作]
まず、スレーブ子局の動作について説明する。
スレーブ子局は、マスタ/スレーブ切り替え処理部514に動作モードとしてスレーブが設定されている状態であり、配下の端末との無線送受信を行い、リング状の順番に従って、前の順番(前段)の子局20からの無線信号を受信し、次の順番(後段)の子局20に無線信号を送信する。
【0059】
図4に示すように、スレーブ子局は、前段の子局20からのDL及びULの無線信号を受信し、子局間受信処理部504で信号処理する。
そして、TDD切替処理部(1)511において、TDD切替タイミングに基づいてDLとULのデータを分離する。
【0060】
分離されたDLのデータは、マスタ/スレーブ切替処理部514に入力され、そのまま出力されて、配下端末送信処理部502から配下の端末に送信されると共に、TDD切替処理部(2)512に入力され、TDD切替タイミングに従って後段の子局20への送信用の信号として出力される。
【0061】
また、TDD切替処理部(1)511で分離されたULの信号は、UL多重処理部510に入力される。この信号は、リング状の順番で転送され、配下の端末からのUL信号が多重された信号であり、UL多重処理部503において、当該スレーブ子局の配下の端末から送信されたUL信号が多重される。
【0062】
動作モードとしてスレーブが設定されているスレーブ子局では、UL多重処理部510で多重化したUL信号がTDD切替処理部(2)512に出力され、TDD切替処理部(2)512からTDD切替タイミングに応じて後段の子局20への送信用の信号として出力される。
そして、子局間送信処理部505では、時分割で入力されるDLとULの信号から送信フレームを生成し、次の順番の子局宛に送信出力する。
このようにしてスレーブ子局の動作が行われる。
【0063】
[マスタ子局の動作]
次に、マスタ子局の動作について説明する。マスタ子局は、マスタ/スレーブ切り替え処理部514に動作モードとしてマスタが設定されている状態であり、スレーブ子局と同様に配下の端末との送受信や、リング状の順番に従って、次の順番(後段)のスレーブ子局に無線信号を送信し、前の順番(前段)のスレーブ子局からの無線信号を受信する。
更に、マスタ子局は、光ケーブルに接続して親局100との送受信を行う。
【0064】
マスタ子局の動作について、スレーブ子局と異なる点を中心に説明する。
マスタ子局では、光ケーブルを介して受信したDLデータが、親子間受信処理部500で処理されて、マスタ/スレーブ切替処理部514に入力される。
また、スレーブ子局と同様に、子局間受信処理部504では、前段のスレーブ子局から送信されたDL及びULのデータが多重された信号が受信され、DLとULが分離されて、DLのデータがマスタ/スレーブ切替処理部514に入力される。
【0065】
上述したように、マスタ子局のマスタ/スレーブ切替処理部514では、親子間受信処理部500からのDLデータが選択されて、配下の端末に送信されると共に、後段のスレーブ子局に送信される。つまり、親局100から送信されたDLデータを配下の端末及び後段のスレーブ子局に送信する。
【0066】
また、マスタ子局のUL多重処理部510は、TDD切替処理部(1)511からのUL信号に、自局配下の端末からのUL信号を多重して、多重化されたUL信号を親子間送信処理部501に出力する。
つまり、マスタ子局では、複数のスレーブ子局によって多重化され、転送されてきたUL信号に、配下の端末からのUL信号を多重化しし、当該多重化した信号を、後段のスレーブ子局に送信せず、親局100に送信する。
このようにして、マスタ子局の動作が行われる。
【0067】
[実施の形態の効果]
本無線システムによれば、親局装置100と子局装置20とを光ケーブルで接続し、子局装置20と配下の端末とが無線通信を行う無線システムにおいて、子局装置20は、光ケーブルに接続されるマスタ子局装置又は光ケーブルに接続されないスレーブ子局装置のいずれかとして動作するよう設定され、同一エリア内の全ての子局装置20には、マスタ子局装置20aから始まって複数のスレーブ子局装置20b~20dを経て再びマスタ子局装置20aに戻るリング状の無線送受信の順番が決められており、スレーブ子局装置は、当該順番に従って、受信したアップリンクの信号に、配下の端末からの信号を多重化して次の子局装置に送信し、マスタ子局装置20aは、親局装置100からのダウンリンクのデータを、次の順番のスレーブ子局装置20bに送信すると共に配下の端末に送信し、前の順番のスレーブ子局装置20dからのアップリンクの信号を受信して、光ケーブルを介して親局装置100に送信するようにしているので、各エリアにおいて1台のマスタ子局装置のみを光ケーブルに接続することで、エリア全体の無線通信サービスを実現でき、1つのエリアを1本の光ファーバーでカバーして、エリア親局装置100がカバーできるエリア数を増大させ、無線システム構築のコストを低減することができる効果がある。
【0068】
また、本無線システムによれば、子局装置20は、マスタ/スレーブ切替処理部514に設定された動作モードに基づいて、マスタが設定された場合にはマスタ子局として動作し、スレーブが設定された場合にはスレーブ子局として動作するようにしているので、マスタ子局とスレーブ子局を同一構成の装置として無線システムを構築することができ、装置コストを低減することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、親局装置がカバーするエリア数を増やして、無線通信システム構築のコストを低減することができる光張出し無線システムに適している。
【符号の説明】
【0070】
20…子局装置(子局)、 21…子局間インタフェース(1)、 22…子局間インタフェース(2)、 23…親子間インタフェース、 24…配下端末インタフェース、 100…親局装置(親局)、 500…親子間受信処理部、 501…親子間送信処理部、 502…配下端末送信処理部、 503…配下端末受信処理部、 504…子局間受信処理部、 505…子局間送信処理部、 510…アップリンク多重処理部、 511…TDD切替処理部(1)、 512…TDD切替処理部(2)、 513…TDD切替処理部(3)、 514…マスタ/スレーブ切替処理部
図1
図2
図3
図4
図5