IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱造船株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-船舶 図1
  • 特開-船舶 図2
  • 特開-船舶 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179983
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20221129BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20221129BHJP
   C01C 1/12 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B63H21/38 C
B63H21/32 Z
C01C1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086837
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(57)【要約】
【課題】アンモニアをアンモニア水として回収可能としつつ、回収アンモニアを再利用する事で回収アンモニアの船外への排出を抑え、船体の大型化を抑えることができる船舶を提供する。
【解決手段】船舶は、燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置と、アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収するアンモニア回収部と、前記アンモニア回収部で回収された回収アンモニア水を貯留する回収アンモニア水タンクと、前記燃焼装置から排出される排ガスに脱硝処理を施す脱硝装置と、前記脱硝装置の触媒としての脱硝用アンモニア水を貯留する脱硝用アンモニア水タンクと、前記回収アンモニア水タンクの前記回収アンモニア水を前記脱硝用アンモニア水タンクに供給する回収アンモニア水供給ラインと、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置と、
アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収するアンモニア回収部と、
前記アンモニア回収部で回収された回収アンモニア水を貯留する回収アンモニア水タンクと、
前記燃焼装置から排出される排ガスに脱硝処理を施す脱硝装置と、
前記脱硝装置の還元剤として用いる脱硝用アンモニア水を貯留する脱硝用アンモニア水タンクと、
前記回収アンモニア水タンクの前記回収アンモニア水を前記脱硝用アンモニア水タンクに供給する回収アンモニア水供給ラインと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記燃焼装置の燃料である燃料アンモニアが貯留されたアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクの前記燃料アンモニアを前記脱硝用アンモニア水タンクに供給する燃料アンモニア供給ラインと、
を備える請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記燃焼装置は、船体を推進する主機であり、
前記主機の燃料が流通する流通経路に不活性ガスを供給して前記流通経路に残留する前記燃料アンモニアをパージする不活性ガス供給装置を備え、
前記アンモニア回収部は、パージされた前記燃料アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収する
請求項2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶推進用の燃料や、貨物として可燃性ガスを搭載する船舶には、可燃性ガスを船外の大気中に排出するためのベントポストが設けられている。例えば、特許文献1には、可燃性ガス(ガス燃料)により駆動されるガスエンジンの配管内等に残る可燃性ガスを、窒素ガス等でパージし、ベントポストを介して大気開放する構成が開示されている。
上記船舶にあっては、ガス燃料としてアンモニアを搭載することが検討されている。アンモニアは、不活性ガスによりパージしてベントポストを介して大気に放出しても十分に拡散しない可能性が有る。このようにアンモニアが大気中に拡散し難い理由の一つとしては、アンモニアが、メタンガス、ブタンガス等の他の可燃性ガスに比較すると、空気中の水分と反応しやすく、空気中の水分と反応して霧状(液滴状)のアンモニア水となり、大気よりも比重が大きくなることが挙げられる。
【0003】
その一方で、特許文献2には、排出ガスからアンモニアを回収する回収装置が開示されている。この特許文献2に開示された回収装置は、排出ガスを水に溶解させる溶解槽と、溶解槽で形成したアンモニア水を貯留するアンモニア水タンクと、を備えている。そして、この特許文献2の回収装置では、アンモニア水タンクに貯留されたアンモニア水を蒸留し、この蒸留により得られたアンモニアガスを除湿して液化することで高純度のアンモニアを生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-11332号公報
【特許文献2】特開2008-7378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のような回収装置を船舶に適用するには、船体内に設置スペースを別途確保しなければならず、船体の大型化につながるという課題が有る。
また、上記特許文献2の溶解装置に戻される水には、少量のアンモニアが含まれているため、このアンモニアを分離した水も、海洋汚染防止等の理由により、船外に放出できない。例えば、アンモニア水タンク内のアンモニア水量が上限を超える等した場合に、水に含まれるアンモニアを中和や希釈してから船外に排出する必要が生じ、中和や希釈用の装置が別途必要になるという課題が有る。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、アンモニアをアンモニア水として回収可能としつつ、回収アンモニアを再利用する事で回収アンモニアの船外への排出を抑え、船体の大型化を抑えることができる船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の船舶は、燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置と、アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収するアンモニア回収部と、前記アンモニア回収部で回収された回収アンモニア水を貯留する回収アンモニア水タンクと、前記燃焼装置から排出される排ガスに脱硝処理を施す脱硝装置と、前記脱硝装置の還元剤として用いる脱硝用アンモニア水を貯留する脱硝用アンモニア水タンクと、前記回収アンモニア水タンクの前記回収アンモニア水を前記脱硝用アンモニア水タンクに供給する回収アンモニア水供給ラインと、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、アンモニアをアンモニア水として回収しつつ、回収アンモニアを再利用する事で回収アンモニアの船外への排出を抑え、船体の大型化を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶の燃料パージを行う配管系統を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る脱硝装置の脱硝用アンモニア水タンク周りの配管系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
(船舶の構成)
図1に示すように、この実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニアタンク10と、配管系統20と、ベントポスト30と、アンモニア回収部60と、回収アンモニア水タンク70と、を備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種は、例えば液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。
【0010】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側5A,5Bと、船底6と、を有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側5A,5B及び船底6により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0011】
船体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を更に備えている。上部構造4は、この上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。本実施形態の船舶1では、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首3a側で且つ上甲板7よりも下方の船体2内に、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。
【0012】
燃焼装置8は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置であり、上記の船体2内に設けられている。燃焼装置8としては、船舶1を推進させるための主機に用いられる内燃機関、船内に電気を供給する発電機等に用いられる内燃機関、作動流体としての蒸気を発生させるボイラー等を例示できる。本実施形態の燃焼装置8は、燃料としてアンモニア(以下、燃料アンモニアと称する)を用いている。
【0013】
アンモニアタンク10は、燃料アンモニアとして液化アンモニアを貯留している。本実施形態で例示するアンモニアタンク10は、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に設置されているが、アンモニアタンク10の配置は、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に限られない。
配管系統20は、燃焼装置8とアンモニアタンク10とを接続している。配管系統20は、アンモニアタンク10に貯留された燃料アンモニアを燃焼装置8に供給している。
【0014】
ベントポスト30は、例えば、カーゴタンクから排出されたベントガス等のガスを、上甲板7よりも上方へ導いて大気中へ放出する。本実施形態のベントポスト30は、上甲板7上に設けられ、上甲板7から上方に向かって延びている。ベントポスト30は、上下方向Dvに延びる筒状をなしており、その上部が開口している。
【0015】
アンモニア回収部60は、回収対象のアンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収する。本実施形態のアンモニア回収部60は、アンモニアタンク10よりも船尾3b側の上甲板7上に配置されている。アンモニア回収部60としては、例えば、アンモニアを含む気体に対して水を噴射することでアンモニアを水に吸収させる、いわゆるスクラバーを用いることができる。このアンモニア回収部60には、船体2内に設けられた水タンク(図示せず)に貯留された水(例えば、清水)が供給される。なお、アンモニア回収部60は、アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収できる構成であればよく、上記構成や配置に限られない。
【0016】
回収アンモニア水タンク70は、アンモニア回収部60で回収された回収アンモニア水を貯留する。本実施形態における回収アンモニア水タンク70は、アンモニア回収部60の設置された上甲板7よりも下方の船体2内に配置されている。なお、回収アンモニア水タンク70は、アンモニア回収部60で回収したアンモニアを回収アンモニア水として回収できる構成であればよく、上記配置に限られない。
【0017】
(パージに係る配管系統の構成)
図2は、本開示の実施形態に係る船舶の燃料パージを行う配管系統を示す図である。
図2に示すように、本実施形態の船舶1は、アンモニアタンク10から供給された燃料アンモニアを一時的に貯留するアンモニアバッファータンク40を備えている。アンモニアバッファータンク40は、アンモニアタンク10と燃焼装置8との間の配管系統20の途中に設置されている。配管系統20は、後述する燃料アンモニア供給ライン85(図3参照)と、供給管21と、リターン管22と、開閉弁23,24と、をそれぞれ備えている。配管系統20には、不活性ガス供給装置50と、アンモニア回収部60と、がそれぞれ接続されている。
【0018】
供給管21及びリターン管22は、それぞれ、アンモニアバッファータンク40と燃焼装置8とを接続している。供給管21は、アンモニアバッファータンク40から燃焼装置8に燃料アンモニアを供給する。リターン管22は、燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアをアンモニアバッファータンク40に戻す。なお、供給管21には、後述するアンモニア加圧ポンプ93及びアンモニア熱交換器94(図3参照)が設けられているが、図2においては図示を省略している。
【0019】
開閉弁23は、供給管21に設けられている。開閉弁24は、リターン管22に設けられている。これら開閉弁23,24は、燃焼装置8の稼働時に常時開放状態とされる。その一方で、開閉弁23,24は、燃焼装置8の停止時等に閉塞状態とされる。これら開閉弁23,24が閉塞状態にされることで、供給管21及びリターン管22の内部に形成された流路が遮断される。
【0020】
不活性ガス供給装置50は、燃焼装置8の燃料としての燃料アンモニアが流通する流通経路Rの燃料アンモニアを乾燥窒素等の不活性ガスに置き換える、いわゆるパージを行う。不活性ガス供給装置50は、不活性ガス供給部51と、不活性ガス供給管52と、不活性ガス供給弁53と、を備えている。不活性ガスとしては、例えば、不活性ガス生成装置(不図示)により船体2の内部で生成した不活性ガスや、船体2に設けられた不活性ガスタンク(不図示)に予め貯留した不活性ガスを用いることができる。なお、不活性ガスは、燃料アンモニアに接触した際に化学反応しない気体であればよい。
【0021】
不活性ガス供給部51は、不活性ガスを不活性ガス供給管52へ供給する。
不活性ガス供給管52は、不活性ガス供給部51と、流通経路Rとを接続している。より具体的には、不活性ガス供給管52は、不活性ガス供給部51と、流通経路Rのパージ対象領域20pとを接続している。本実施形態におけるパージ対象領域20pは、開閉弁23よりも燃焼装置8側の供給管21、開閉弁24よりも燃焼装置8側のリターン管22、及び、燃焼装置8内に形成される流通経路Rである。本実施形態で例示する不活性ガス供給管52は、パージ対象領域20pのうち供給管21のパージ対象領域20pに接続されている。
【0022】
不活性ガス供給弁53は、不活性ガス供給管52に設けられている。不活性ガス供給弁53は、通常時に閉塞状態とされ、不活性ガス供給部51からパージ対象領域20pへの不活性ガスの供給を遮断している。ここで、通常時とは、燃焼装置8を稼働しているとき等、燃料アンモニアを燃焼装置8に供給可能にしているときである。この通常時において、開閉弁23,24は開放状態とされ、アンモニアバッファータンク40から供給管21を通して燃焼装置8に燃料アンモニアが供給可能にされ、余剰の燃料アンモニアが燃焼装置8からアンモニアバッファータンク40に戻される。
【0023】
不活性ガス供給弁53は、燃焼装置8の燃料切り替え時や緊急停止時等に、閉塞状態から開放状態にされる。言い換えれば、パージ対象領域20pに残留する燃料アンモニアをパージする際に閉塞状態から開放状態に操作される。このようなパージを行う際には、まず開閉弁23が閉塞状態とされ、供給管21が遮断される。これにより、アンモニアバッファータンク40から燃焼装置8への燃料アンモニアの供給が停止された状態になる。次いで、不活性ガス供給弁53が閉塞状態から開放状態とされると、これにより不活性ガス供給部51からパージ対象領域20pに不活性ガスが供給可能な状態になる。そして、不活性ガス供給部51から不活性ガスが供給されると、パージ対象領域20pの管内の燃料アンモニアが不活性ガスによってアンモニアバッファータンク40側へ押し出されて、液体の燃料アンモニアがアンモニアバッファータンク40に回収される。その後、開閉弁24が閉塞状態とされ、リターン管22が遮断される。これにより、不活性ガスと流通経路R内に残留していた燃料アンモニアが、ベント管38へ導かれる状態となる。ここで、開閉弁24が閉塞状態とされるのは、残留していた燃料アンモニアの殆どがアンモニアバッファータンク40に回収された状態になったときである。このような状態になったことは、例えば、種々のセンサーやタイマー等を用いて検出することができる。なお、残留していた燃料アンモニアをアンモニアバッファータンク40に回収する場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、開閉弁23,24を同時に閉塞状態として、供給管21、リターン管22を同時に遮断してから、不活性ガス供給部51により不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0024】
ベント管38は、不活性ガス供給装置50によって供給された不活性ガスとともに、流通経路R内に残留していた燃料アンモニアを外部に導く。不活性ガスと共に燃料アンモニアがベント管38に流出することで、パージ対象領域20p(流通経路R)内の燃料アンモニアが不活性ガスに置き換えられる。
【0025】
本実施形態のベント管38は、上流側ベント管38Aと、下流側ベント管38Bと、を備えている。上流側ベント管38Aは、回収管71(流通経路R)のパージ対象領域20pとアンモニア回収部60とを接続している。本実施形態で例示する上流側ベント管38Aは、リターン管22に接続されている。下流側ベント管38Bは、アンモニア回収部60とベントポスト30とを接続している。つまり、上流側ベント管38Aには、不活性ガスと燃料アンモニアとの混合流体が流通し、下流側ベント管38Bには、アンモニア回収部60によって燃料アンモニアが回収された残りの流体が流通することとなる。
【0026】
本実施形態におけるアンモニア回収部60は、回収管71を介して回収アンモニア水タンク70に接続されている。この回収管71には、回収管開閉弁72が設けられている。アンモニア回収部60で生成されたアンモニア水は、この回収管開閉弁72が開放状態にされているときに、回収管71を介して回収アンモニア水タンク70に移動する。本実施形態では、アンモニア回収部60よりも回収アンモニア水タンク70が下方に配置されているため、アンモニア回収部60により生成されたアンモニア水は、その自重により回収アンモニア水タンク70へと流下可能となっている。
【0027】
(脱硝装置周りの構成)
図3は、本開示の実施形態に係る脱硝装置の脱硝用アンモニア水タンク周りの配管系統を示す図である。
図3に示すように、本実施形態の船舶1は、排気管80と、脱硝装置81と、脱硝用アンモニア水タンク82と、脱硝用アンモニア水供給ライン83と、回収アンモニア水供給ライン84と、燃料アンモニア供給ライン85と、を更に備えている。
【0028】
排気管80は、燃焼装置8から排出される排ガスGを、船体2の外部へと導いている。この排気管80を流れる燃焼装置8から排出された直後の排ガスGには、窒素酸化物が含まれている。
脱硝装置81は、燃焼装置8から排出された排ガスGに脱硝処理を施す。この脱硝装置81は、選択触媒還元脱硝装置(SCR)であって、触媒により窒素酸化物を窒素と水とに転換する。この脱硝装置81は、排気管80の途中に設けられ、脱硝用アンモニア水を噴霧した排ガスGを、触媒(図示せず)に接触させている。なお、脱硝処理を施した排ガスGは、例えば、船体2に設けられたファンネル(図示せず)を介して大気放出される。
【0029】
脱硝用アンモニア水タンク82は、脱硝装置81で用いる脱硝用アンモニア水を貯留している。ここで、脱硝用アンモニア水は、脱硝装置81の還元剤として用いるのに必要な所定のアンモニア濃度(例えば、数十%)に調整されたアンモニア水である。本実施形態の脱硝用アンモニア水タンク82は、脱硝用アンモニア水を撹拌するための循環配管86と、撹拌ポンプ87とを備えている。更に、循環配管86には、脱硝用アンモニア水タンク82に貯留されている脱硝用アンモニア水のアンモニア濃度を測定するための濃度計88が設けられている。なお、脱硝用アンモニア水タンク82には、脱硝用アンモニア水の貯留量を測定できるように、水位計等を設けるようにしてもよい。なお、循環配管86と、撹拌ポンプ87は設けずに、脱硝用アンモニア水タンク82に別の手法の撹拌機を設けても良い。また、上記のような脱硝用アンモニア水を撹拌する構成は必要に応じて設ければよく、例えば、省略することも可能である。その場合、脱硝用アンモニア水のアンモニア濃度を測定するための濃度計88は、脱硝用アンモニア水タンク82に設けても良い。
【0030】
脱硝用アンモニア水供給ライン83は、脱硝用アンモニア水タンク82に貯留されている脱硝用アンモニア水を、脱硝装置81へ供給する流路を形成している。この脱硝用アンモニア水供給ライン83には、脱硝用アンモニア水ポンプ89が設けられている。
【0031】
回収アンモニア水供給ライン84は、回収アンモニア水タンク70の回収アンモニア水を脱硝用アンモニア水タンク82に供給する流路を形成している。この回収アンモニア水供給ライン84には、回収アンモニア水ポンプ90が設けられている。ここで、回収アンモニア水タンク70に貯留されている回収アンモニア水のアンモニア濃度は、上述した脱硝用アンモニア水のアンモニア濃度よりも低い濃度(例えば、数ppm~数%程度)となっている。
【0032】
燃料アンモニア供給ライン85は、アンモニアタンク10に貯留されている燃料アンモニアをアンモニアバッファータンク40に供給する第一ライン85Aと、アンモニアタンク10に貯留されている燃料アンモニアを脱硝用アンモニア水タンク82に供給する第二ライン85Bと、を備えている。上述した通り、燃料アンモニアは、液化アンモニアである。そのため、燃料アンモニアのアンモニア濃度は、回収アンモニア水のアンモニア濃度よりも高い。なお、本実施形態における第二ライン85Bは、第一ライン85Aに分岐接続されている場合を例示しているが、第二ライン85Bは、燃料アンモニアを脱硝用アンモニア水タンク82に供給できればよく、例えば、アンモニアタンク10と脱硝用アンモニア水タンク82とを接続するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態における第二ライン85Bには、第一ライン85Aから第二ライン85Bへ流入する燃料アンモニアの流量を調整可能な流量調整弁91が設けられている。この流量調整弁91は、全閉状態から全開状態まで漸次弁開度を調整可能とされている。流量調整弁91の弁開度は、作業員によって手動で操作するようにしてもよいが、例えば、濃度計88によるアンモニア濃度の測定結果に基づいて制御装置(図示せず)により自動的に調整するようにしてもよい。
【0034】
本実施形態における第一ライン85Aには、第二ライン85Bの分岐点P1よりもアンモニアタンク10に近い側に、燃料アンモニアを燃焼装置8に向けて送給する送給ポンプ92が設けられている。言い換えれば、本実施形態で例示する第二ライン85Bは、送給ポンプ92とアンモニアバッファータンク40との間の第一ライン85Aから分岐している。なお、第二ライン85Bに、燃料アンモニアを脱硝用アンモニア水タンク82に向けて送給するポンプを設けるようにしてもよい。
【0035】
さらに、本実施形態の供給管21には、図2において図示省略した、アンモニア加圧ポンプ93と、アンモニア熱交換器94とが設けられている。アンモニア加圧ポンプ93は、アンモニアバッファータンク40から燃焼装置8へ供給される燃料アンモニアを加圧する。アンモニア熱交換器94は、このアンモニア加圧ポンプ93により加圧された燃料アンモニアの温度を調節する。なお、本実施形態のアンモニアバッファータンク40とアンモニア回収部60とは、バッファータンク用ベント管95により接続され、アンモニアバッファータンク40のベントガスをアンモニア回収部60に供給可能に構成されている。これにより、アンモニアバッファータンク40のベントガスに含まれるアンモニアもアンモニア回収部60において回収可能となっている。
【0036】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1は、燃料を燃焼させることで排ガスGを排出する燃焼装置8と、アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収するアンモニア回収部60と、アンモニア回収部60で回収された回収アンモニア水を貯留する回収アンモニア水タンク70と、燃焼装置8から排出される排ガスGに脱硝処理を施す脱硝装置81と、脱硝装置81の還元剤として用いる脱硝用アンモニア水を貯留する脱硝用アンモニア水タンク82と、回収アンモニア水タンク70の回収アンモニア水を脱硝用アンモニア水タンク82に供給する回収アンモニア水供給ライン84と、を備えている。
【0037】
このような船舶1によれば、アンモニア回収部60により回収された回収アンモニア水を、回収アンモニア水供給ライン84により脱硝用アンモニア水タンク82へ供給することができる。そのため、脱硝用アンモニア水タンク82において回収アンモニア水を用いて脱硝用アンモニア水を生成し、この脱硝用アンモニア水タンク82の脱硝用アンモニア水を脱硝装置81の還元剤として用いることができる。これにより、回収アンモニア水を有効利用することができるため、回収アンモニア水を処理するための設備が不要となり、アンモニアをアンモニア水として回収可能としつつ船体2の大型化を抑えることが可能となる。
【0038】
上記実施形態の船舶1は、更に、燃焼装置8の燃料である燃料アンモニアが貯留されたアンモニアタンク10と、アンモニアタンク10の燃料アンモニアを脱硝用アンモニア水タンク82に供給する燃料アンモニア供給ライン85と、を備えている。
したがって、脱硝用アンモニア水タンク82に供給された回収アンモニア水に対して、脱硝用アンモニア水よりもアンモニア濃度の高い燃料アンモニアを混ぜて、回収アンモニア水よりもアンモニア濃度の高い脱硝用アンモニア水を生成することができる。
【0039】
上記実施形態の船舶1の燃焼装置8は、船体2を推進する主機であり、上記船舶1は、主機の燃料が流通する流通経路に不活性ガスを供給して流通経路に残留する燃料アンモニアをパージする不活性ガス供給装置50を備えている。そして、アンモニア回収部60は、パージされた燃料アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収している。
つまり、船舶1がアンモニアを燃料として航行するいわゆるアンモニア燃料船である場合に、流通経路Rに残留する燃料アンモニアをパージしてアンモニア回収部60によって回収アンモニア水として回収することができる。そして、この回収アンモニア水を主機の排ガスGに脱硝処理を施すための脱硝用アンモニア水の一部として用いているため、パージした主機用の燃料アンモニアを、主機用の脱硝装置81の還元剤として有効利用することが可能となる。したがって、脱硝用アンモニア水を生成するためのアンモニアを別途用意する場合と比較して、脱硝用アンモニア水を生成するコストを低減できる。
【0040】
また、上記船舶1では、回収アンモニア水により燃料アンモニアを希釈することができるため、脱硝用アンモニア水を生成する際に、船体2に設けられた清水タンク内の水の使用量を低減できるので、清水使用量を備えることが可能となる。したがって、清水タンクの容積や、造水装置の容量を抑えることが可能となり、船体2の大型化を抑えることが可能となる。
【0041】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態においては、アンモニア回収部60により回収するアンモニアが、燃焼装置8の流通経路Rからパージされた燃料アンモニアである場合について説明した。しかし、アンモニア回収部60により回収するアンモニアは、流通経路Rからパージされた燃料アンモニアに限られない。アンモニア回収部60によって回収されるアンモニアは、船舶1で利用されているアンモニアであればよい。
【0042】
上記実施形態においては、燃焼装置8がアンモニアを燃料とする主機である場合について説明した。しかし、燃焼装置8は、燃料を燃焼させて排ガスGを排出する装置であれば良く、例えば、アンモニア以外の燃料を燃焼させて排ガスGを排出する燃焼装置や、アンモニアと、アンモニア以外の燃料とを切り替え可能な燃焼装置であってもよい。
【0043】
上記実施形態においては、アンモニアタンク10の燃料アンモニアを脱硝用アンモニア水タンク82へ供給する場合について説明した。しかし、脱硝用アンモニア水タンク82には、アンモニアタンク10とは別に設けられたタンクから液化アンモニアを供給するようにしてもよい。
【0044】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0045】
(1)第1の態様に係る船舶1は、燃料を燃焼させることで排ガスGを排出する燃焼装置8と、アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収するアンモニア回収部60と、前記アンモニア回収部60で回収された回収アンモニア水を貯留する回収アンモニア水タンク70と、前記燃焼装置8から排出される排ガスGに脱硝処理を施す脱硝装置81と、前記脱硝装置81の還元剤として用いる脱硝用アンモニア水を貯留する脱硝用アンモニア水タンク82と、前記回収アンモニア水タンク70の前記回収アンモニア水を前記脱硝用アンモニア水タンク82に供給する回収アンモニア水供給ライン84と、を備える。
燃焼装置8としては、例えば、主機及び発電機にそれぞれ用いられる内燃機関、ボイラーが挙げられる。
【0046】
このように構成することで、アンモニア回収部60により回収された回収アンモニア水を、回収アンモニア水供給ライン84により脱硝用アンモニア水タンク82へ供給することができる。そのため、脱硝用アンモニア水タンク82において回収アンモニア水を用いて脱硝用アンモニア水を生成し、この脱硝用アンモニア水タンク82の脱硝用アンモニア水を脱硝装置81の還元剤として用いることができる。これにより、回収アンモニア水を有効利用することができるため、回収アンモニア水を処理するための設備が不要となり、アンモニアをアンモニア水として回収可能としつつ船体2の大型化を抑えることが可能となる。
【0047】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記燃焼装置8の燃料である燃料アンモニアが貯留されたアンモニアタンク10と、前記アンモニアタンク10の前記燃料アンモニアを前記脱硝用アンモニア水タンク82に供給する燃料アンモニア供給ライン85と、を備える。
【0048】
このように構成することで、脱硝用アンモニア水タンク82に供給された回収アンモニア水に対して、脱硝用アンモニア水よりもアンモニア濃度の高い燃料アンモニアを混ぜて、回収アンモニア水よりもアンモニア濃度の高い脱硝用アンモニア水を生成することができる。
【0049】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)又は(2)の船舶1であって、前記燃焼装置8は、船体2を推進する主機であり、前記主機の燃料が流通する流通経路Rに不活性ガスを供給して前記流通経路Rに残留する前記燃料アンモニアをパージする不活性ガス供給装置50を備え、前記アンモニア回収部60は、パージされた前記燃料アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収する。
【0050】
これにより、船舶1がアンモニアを燃料として航行するいわゆるアンモニア燃料船である場合に、流通経路Rに残留する燃料アンモニアをパージしてアンモニア回収部60によって回収アンモニア水として回収することができる。そして、この回収アンモニア水を主機の排ガスGに脱硝処理を施すための脱硝用アンモニア水の一部として用いているため、パージした主機用の燃料アンモニアを、主機用の脱硝装置81の還元剤として有効利用することが可能となる。したがって、脱硝用アンモニア水を生成するためのアンモニアを別途用意する場合と比較して、脱硝用アンモニア水を生成するコストを低減できる。
【符号の説明】
【0051】
1…船舶 2…船体 4…上部構造 5A,5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…燃焼装置 10…アンモニアタンク 20…配管系統 20p…パージ対象領域 21…供給管 22…リターン管 23,24…開閉弁 30…ベントポスト 38…ベント管 38A…上流側ベント管 38B…下流側ベント管 40…アンモニアバッファータンク 50…不活性ガス供給装置 51…不活性ガス供給部 52…不活性ガス供給管 53…不活性ガス供給弁 60…アンモニア回収部 70…回収アンモニア水タンク 71…回収管 72…回収管開閉弁 80…排気管 81…脱硝装置 82…脱硝用アンモニア水タンク 83…脱硝用アンモニア水供給ライン 84…回収アンモニア水供給ライン 85…燃料アンモニア供給ライン 85A…第一ライン 85B…第二ライン 86…循環配管 87…撹拌ポンプ 88…濃度計 89…脱硝用アンモニア水ポンプ 90…回収アンモニア水ポンプ 91…流量調整弁 92…送給ポンプ 93…アンモニア加圧ポンプ 94…アンモニア熱交換器 95…バッファータンク用ベント管 G…排ガス R…流通経路
図1
図2
図3