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特開2022-179987乗り物用シート及び乗り物用シートのポケット構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179987
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】乗り物用シート及び乗り物用シートのポケット構造
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20221129BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20221129BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A47C7/62 A
B60N2/90
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086847
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】516303716
【氏名又は名称】アディエント・エンジニアリング・アンド・アイピー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】引頭 卓也
(72)【発明者】
【氏名】諏訪田 正人
(72)【発明者】
【氏名】山中 五月
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B084JA04
3B084JB06
3B087DE10
3B088CA03
(57)【要約】
【課題】ポケット部の開口幅が大きくでき使い勝手が良好な乗り物用シートを提供する。
【解決手段】乗り物用シート(ST)は、上部と前記上部に接続する左側部及び右側部の上部とを覆う表皮基部(61)、及び後面に配置されたポケット部(M)を有するシートバックを備え、ポケット部(M)は、後面において左右方向に延びる開口部(M5)と、開口部(M5)の内側において下方に延び底部(M3)の幅が開口部(M5)よりも狭い幅となる袋状の収容部(M6)とを有し、開口部(M5)の左端(M5L)及び右端(M5R)の位置がそれぞれ表皮基部(61)の中間位置にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部と前記上部に接続する左側部及び右側部の上部とを覆う表皮基部、及び後面に配置されたポケット部を有するシートバックを備え、
前記ポケット部は、
前記後面において左右方向に延びる開口部と、前記開口部の内側において下方に延び底部の幅が前記開口部よりも狭い幅となる袋状の収容部とを有し、
前記開口部の左端及び右端の位置がそれぞれ前記表皮基部の中間位置にある乗り物用シート。
【請求項2】
シートバックを有する乗り物用シートにおける前記シートバックの上部及び左右側部の上部を覆う表皮基部と、
前記シートバックの後面の少なくとも一部を覆い上縁及び左右の縁部が前記表皮基部と接続したポケット表皮部と、
を備え、
前記ポケット表皮部は、
左右の縁部が前記表皮基部に接続した第1表皮部材と、
前記第1表皮部材に対し下方に延びるよう接続した第1内地部材と、
上縁が前記表皮基部に接続した第2表皮部材と、
前記第2表皮部材の下縁に下方に延びるよう接続した第2内地部材と、
を有し、
前記第1表皮部材が前記第2表皮部材の外側に配置されて前記第1表皮部材と前記第2表皮部材との間が開口部となり、前記第1内地部材の縁部と前記第2内地部材の周縁部とが上方を除き縫合されて袋状の収容部とされたポケット部が形成されている、乗り物用シートのポケット構造。
【請求項3】
前記収容部の底部の幅が前記開口部の幅よりも狭くなっている請求項2記載の乗り物用シートのポケット構造。
【請求項4】
前記第1表皮部材の上端位置は、前記第2表皮部材の上端位置よりも下方にある請求項2又は請求項3記載の乗り物用シートのポケット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物用シート及び乗り物用シートのポケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、シートバックの後面にポケット部を有する乗物シートが記載されている。特許文献1に記載されたポケット部は、開口部の左右両側の表皮に開口部と略同一直線上に後上ピースと後下ピースとが縫合された縫合部を有する。
これにより、ポケット部に加わった力が表皮の縫合部によって支持されポケット部の強度が向上するとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5251426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された乗物シートのポケット構造は、開口部の左右両側において、上下の表皮が縫合された縫合部を有する。そのため、ポケット部の開口幅を大きくしにくく、使い勝手の向上の点で改善が望まれている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ポケット部の開口幅が大きくでき使い勝手が良好な乗り物用シート及び乗り物用シートのポケット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 上部と前記上部に接続する左側部及び右側部の上部とを覆う表皮基部、及び後面に配置されたポケット部を有するシートバックを備え、
前記ポケット部は、
前記後面において左右方向に延びる開口部と、前記開口部の内側において下方に延び底部の幅が前記開口部よりも狭い幅となる袋状の収容部とを有し、
前記開口部の左端及び右端の位置がそれぞれ前記表皮基部の中間位置にある乗り物用シートである。
2) シートバックを有する乗り物用シートにおける前記シートバックの上部及び左右側部の上部を覆う表皮基部と、
前記シートバックの後面の少なくとも一部を覆い上縁及び左右の縁部が前記表皮基部と接続したポケット表皮部と、
を備え、
前記ポケット表皮部は、
左右の縁部が前記表皮基部に接続した第1表皮部材と、
前記第1表皮部材に対し下方に延びるよう接続した第1内地部材と、
上縁が前記表皮基部に接続した第2表皮部材と、
前記第2表皮部材の下縁に下方に延びるよう接続した第2内地部材と、
を有し、
前記第1表皮部材が前記第2表皮部材の外側に配置されて前記第1表皮部材と前記第2表皮部材との間が開口部となり、前記第1内地部材の縁部と前記第2内地部材の周縁部とが上方を除き縫合されて袋状の収容部とされたポケット部が形成されている、乗り物用シートのポケット構造である。
3) 前記収容部の底部の幅が前記開口部の幅よりも狭くなっている2)に記載の乗り物用シートのポケット構造である。
4) 前記第1表皮部材の上端位置は、前記第2表皮部材の上端位置よりも下方にある2)又は3)に記載の乗り物用シートのポケット構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開口幅が大きくでき使い勝手が良好である、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートのポケット構造の実施例であるポケット構造PKを搭載した乗り物用シートSTを左後斜め上方から見た斜視図である。
図2図2は、乗り物用シートSTのポケット構造PKを示す後面図である。
図3図3は、図2のポケット構造PKにおけるS3-S3位置での断面図である。
図4A図4Aは、ポケット構造PKの第1表皮部材11の平面図である。
図4B図4Bは、ポケット構造PKの第2表皮部材12の平面図である。
図4C図4Cは、ポケット構造PKの第1内地部材13の平面図である。
図4D図4Dは、ポケット構造PKの第2内地部材14の平面図である。
図5A図5Aは、ポケット構造PKの形成過程での中間縫合体である第1縫合体T1の平面図である。
図5B図5Bは、図5AにおけるS5B-S5B位置での断面図である。
図6A図6Aは、ポケット構造PKの形成過程での中間縫合体である第2縫合体T2の平面図である。
図6B図6Bは、図6AにおけるS6B-S6B位置での断面図である。
図7図7は、ポケット構造PKの形成過程を示す第1の図である。
図8A図8Aは、ポケット構造PKの形成過程を示す第2の図である。
図8B図8Bは、図8AにおけるS8B-S8B位置での断面図である。
図9図9は、ポケット構造PKの形成過程を示す第3の図である。
図10図10は、ポケット構造PKの形成過程での中間縫合体である第3縫合体T3の平面図である。
図11図11は、ポケット構造PKの形成過程での最終縫合体であるポケット表皮部1を示す正面図である。
図12図12は、ポケット表皮部1の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シートのポケット構造を、実施例のポケット構造PKによって説明する。説明における上下左右前後の各方向は、該当する図に矢印で規定する。
【0010】
まず、ポケット構造PKを搭載した乗り物用シートSTの構成の概要を図1及び図2を参照して説明する。図1は、乗り物用シートSTを左後斜め上方から見た斜視図である。図2は乗り物用シートSTのポケット構造PKを含む部分を示す後面図である。ポケット構造PKは、上方が開放された袋状であって上方から物を入れることができるポケット部Mを形成する構造である。
【0011】
図1に示されるように、乗り物用シートSTは、自動車などの乗り物に搭載されるシートであり、シートクッションST1,シートバックST2,及びヘッドレストST3を有する。シートバックST2の後面には、ポケット部Mが配置されている。
シートバックST2は、柔軟性を有するパッド(不図示)を覆う樹脂製又は皮製の表皮部材としての、表皮基部61,表皮背部62,及びポケット表皮部1を有する。
表皮基部61は、シートバックST2における、上部、並びに、左側部及び右側部(左右側部)の上部を覆う一体的な表皮となる部材である。
表皮背部62は、シートバックST2の後面(背面)における中央から下部にかけての表皮となる部材である。
ポケット表皮部1は、シートバックST2の後面の一部を覆う上部の表皮となる部材を含んだ縫合体である。
【0012】
図1及び図2に示されるように、ポケット表皮部1は、表皮基部61に対し、上部から左部及び右部にかけて基本縫合部711で縫合され、左下部は左下縫合部712で縫合され、右下部は右下縫合部714で縫合されている。
また、ポケット表皮部1は、表皮背部62に対し、中央下縫合部713で縫合されている。
これにより、表皮基部61,表皮背部62,及びポケット表皮部1は、表皮として一体化されている。
ポケット表皮部1は、シートバックST2の外観上で、第1表皮部材11及び第2表皮部材12が視認される。
【0013】
次に、図3及び図4A図4Dを参照してポケット表皮部1の構成部材を説明する。
図3は、図2のポケット構造PKにおけるS3-S3位置での断面図であり、図4A図4Dは、それぞれポケット構造PKの第1表皮部材11~第2内地部材14の平面図である。
ポケット構造PKは、第1表皮部材11,第2表皮部材12,第1内地部材13,及び第2内地部材14を有する。
【0014】
図4Aに示されるように、第1表皮部材11は、左右対称形状で下方側が広がる概ね台形形状を呈する。第1表皮部材11は、革を模した模様を有する薄い表皮部とスポンジ状の発泡部との二層で一体形成されている。第1表皮部材11は、表皮部が表面11a側、発泡部が裏面11b(図3参照)側となっている。
第1表皮部材11は、上縁部に、第1内地部材13の位置合わせの基準となるガイド部11cを有する。ガイド部11cは、左右非対称となる位置に形成された複数の切込みの群である。
第1表皮部材11の左縁部11c1と右縁部11c2は、外方に凸となる曲線状に形成されている。左縁部11c1の上端よりも上部には、左外上方に突出した左鍔部11c3が形成されている。右縁部11c2の上端よりも上部には、右外上方に突出した右鍔部11c4が形成されている。
【0015】
図4Bに示されるように、第2表皮部材12は左右に細長く上方側がすぼまる概ね台形形状の基部121と、基部121の下縁から長手方向の長さが短い範囲で下方に突出した突出部122とを有して、概ね左右対称形状に形成されている。
第2表皮部材12の左縁部12c1及び右縁部12c2は、第2表皮部材12を第1表皮部材11に重ねたときに、その左縁部11c1及び右縁部11c2と合致する位置及び形状で形成されている。
第2表皮部材12は、革を模した模様を有する薄い表皮部とスポンジ状の発泡部との二層で一体形成されている。第2表皮部材12は、表皮部が表面12a側、発泡部が裏面12b(図3参照)側とされる。
突出部122の下縁部には、第2内地部材14の位置合わせの基準となるガイド部12cが形成されている。ガイド部12cは、左右非対称となる位置に形成された複数の切込みの群である。
【0016】
図4Cに示されるように、第1内地部材13は、左右に細長い長方形形状の基部131と、基部131の上縁から左方が斜辺とされて上方に突出した半台形形状の突出部132とを有する左右非対称形状で形成されている。
第1内地部材13はポケット部Mの裏地となる部材であり、発泡層を伴わない裏地部の単層として形成されている。
基部131の下縁部には、第1表皮部材11のガイド部11cに対応して形成されて位置合わせの基準となるガイド部13cを有する(図15A参照)。ガイド部13cは、左右非対称となる位置に形成された複数の切込みの群である。
基部131と突出部132との境界位置には、第2内地部材14との位置合わせの基準となるガイド部13dを有する。ガイド部13dは、左右非対称となる位置に形成された複数の小径孔の群である。
【0017】
図4Dに示されるように、第2内地部材14は、左右に長い長方形形状で左右非対称形状に形成されている。
上縁部には、第2表皮部材12のガイド部12cに対応して位置合わせ可能なガイド部14cが形成されている(図6A参照)。ガイド部14cは、左右非対称に形成された複数の切り込みの群である。
下縁部には、第1内地部材13のガイド部13dに対応して位置合わせ可能なガイド部14dが形成されている(図9参照)。ガイド部14dは、左右非対称に形成された複数の切込みの群である。
【0018】
図3に示されるように、シートバックST2において、ポケット表皮部1の第2表皮部材12は、上方が開放された袋状のポケット部Mの前方側の裏地となる部材である。第1表皮部材11は、ポケット部Mにおいて、第2表皮部材12の上端部を除く部位を覆う外側(後方側)の表地となる部材である。
【0019】
図3に示されるように、第2表皮部材12の上部は、表皮基部61に基本縫合部711で縫合されている。
第2表皮部材12の下端部は、下方に延びる第2内地部材14の上端部に内中央縫合部716で縫合されている。
第1表皮部材11は、上端側がポケット開口縁部M1で内側に折り返され、下向きとなった先端部に、下方に延びる第1内地部材13の上端部が内上部縫合部718で縫合されている。
第1内地部材13の下部には、第2内地部材14の下端部が内底縫合部717で縫合され、第1内地部材13の下端部は、第1表皮部材11の下部に下縫合部719で縫合されている。
第1表皮部材11の下端部は、表皮背部62の上端部に中央下縫合部713で縫合されている。
【0020】
ポケット表皮部1において、左右方向の端部については、図2に示されるように、第1表皮部材11の左端部が表皮基部61に基本縫合部711の左端部及び左下縫合部712で縫合され、右端部が表皮基部61に基本縫合部711の右端部及び右下縫合部714で縫合されている。
【0021】
上述の、ポケット部Mを有するポケット表皮部1は、次に図5A図12を参照して説明する方法によって形成される。
ポケット部Mは、第1表皮部材11の上縁のすべての範囲が、ポケット開口縁部M1としてポケット部Mの開口部分となる。
ポケット部Mは、奥に向かうに従ってポケット左側部M2及びポケット右側部M4によって幅方向(左右方向)に狭まり、中央下縫合部713の少し上方に位置するポケット底部M3で底となる袋状に形成される。
【0022】
図4C及び図4Dにそれぞれ示される第1内地部材13及び第2内地部材14は、模様などの表面状態において表裏の違いはないが、非対称形状であるので、便宜的に各図に示された紙面手前側の面を表面13a,14aとし、反対面を裏面13b,14b(図3参照)とする。
【0023】
図5Aと、図5AのS5B-S5B位置での断面図である図5Bとに示されるように、第1表皮部材11の表面11aの上端部に、第1内地部材13を、図4Cの姿勢のまま下端部を奥側に折り返して宛がう。そして、ガイド部11cとガイド部13cとが合致するように位置合わせをして内上部縫合部718(太破線)で縫合して一体化する。
第1表皮部材11と第1内地部材13とを内上部縫合部718の縫合で一体化したものを第1縫合体T1とする。
【0024】
図6Aと、図6AのS6B-S6B位置での断面図である図6Bとに示されるように、第2表皮部材12の表面12aの下端部に、第2内地部材14を、図4Dに示される姿勢で上端部を奥側に折り返して宛がう。そして、ガイド部12cとガイド部14cとが合致するように位置合わせをして内中央縫合部716(太破線)で縫合して一体化する。
第2表皮部材12と第2内地部材14とを内中央縫合部716の縫合で一体化したものを第2縫合体T2とする。
【0025】
第1縫合体T1は、図7に示されるように、まず左縁部11c1と左鍔部11c3との境界位置と、右縁部11c2と右鍔部11c4との境界の位置とを繋ぐ線を折り曲げ線LN1とし、折り曲げ線LN1の上下方向の位置を折り曲げ位置P1とする。そして、折り曲げ位置P1よりも上方の部位を、折り曲げ線LN1が山折りとなるように図7における裏側へ折り曲げる(矢印DR1参照)。
【0026】
さらに、折り曲げた状態の上端付近を先端縫合部715(太破線)で縫合し図8Aに示される第3縫合体T3とする。図8Bは、図8AにおけるS8B-S8B位置である第3縫合体T3の上端部を含む部分断面図である。
第3縫合体T3の上端部は、ポケット開口縁部M1である。ポケット開口縁部M1は、折り返されて縫合されているので外観品位が良好で丈夫である。
次いで、裏側へ折り返されていた部分を戻して上方に延ばす(矢印DR2参照)。
【0027】
その状態で、図6Aに示される第2縫合体T2の表裏を反転して図9に示されるように裏面12b,14bを表側とする。そして、矢印DR4のように、第2縫合体T2を、ガイド部14dが第1内地部材13のガイド部13dと合致するように位置決めして第3縫合体T3の上に重ねる。
【0028】
第3縫合体T3に対し第2縫合体T2を位置決めしたら、図10に示されるように、第2縫合体T2の上縁部と第3縫合体T3とを、ポケット底縫合部720として縫合する。また、第2縫合体T2の左端部を、第3縫合体T3に対し逆L字状でポケット左縫合部721として縫合し、右端部を、第3縫合体T3に対しL字状にポケット右縫合部722として縫合する。
これにより、第3縫合体T3と第2縫合体T2とが一体的に縫合された第4縫合体T4が形成される。
第4縫合体T4において、ポケット底縫合部720はポケット部Mのポケット底部M3を形成し、ポケット左縫合部721はポケット部Mのポケット左側部M2を形成し、ポケット右縫合部722はポケット部Mのポケット右側部M4を形成する。すなわち、ポケット底縫合部720,ポケット左縫合部721,及びポケット右縫合部722によって、第1内地部材13の周縁と第2内地部材14の周縁部とが上方を除き縫合され、ポケット部Mの袋状の収容部M6が形成される。
【0029】
次に、第4縫合体T4における第2縫合体T2の部分を、折り曲げ位置P1近傍で山折りとして図10の裏側へ折り返し、図11に示される状態とする。この状態で左鍔部11c3は、左縁部11c1と重なり、右鍔部11c4は、右縁部11c2と重なる。
そして、図11に示された状態を裏側から見た図である図12に示されるように、この状態で、第2縫合体T2の先端となる第1内地部材13と第1縫合体T1の第1表皮部材11とを半折り縫合部723で縫合して、ポケット表皮部1が形成される。
【0030】
上述のように、ポケット構造PKは、ポケット部Mのポケット開口縁部M1により形成される開口部M5の左端M5L及び右端M5Rは表皮基部61の端部ではなく中間位置に接続されている。そのため、ポケット開口縁部M1の左側及び右側には縫合部が形成されない。
これにより、ポケット構造PKは、ポケット部Mの開口部M5の開口幅Mw(図2参照)をより大きくすることができ、収容する物を入れやすく長尺物も収容可能で、使い勝手が良好である。
【0031】
ポケット構造PKは、ポケット部Mの収容部M6が、開口部のポケット開口縁部M1からポケットの奥底となるポケット底部M3に向かうに従って幅が狭くなっている。
これにより、ポケット構造PKは、小物を収容部M6に入れた際にも、小物が奥底の左右の隅部に入り込んで取りにくくなることがなく、使い勝手が良好である。
【0032】
ポケット構造PKは、表皮基部61に縫合され、ポケット部Mの内部の前方側の地を含む第2表皮部材12の上端位置よりも下方に第1表皮部材11の上端となるポケット開口縁部M1が位置している。すなわち、第2表皮部材12において、ポケット開口縁部M1と対向する位置に縫合部が設けられていない。
そのため、ポケット構造PKは、使用者がポケット部Mに物を入れる際に、その物を第2表皮部材12の上部の部位に当てながら下方に滑らせることで、第2表皮部材12とポケット開口縁部M1との間に縫合部で引っ掛かることなくすべらかに入れることができる。
これにより、ポケット構造PKは、ポケット部Mに物を入れやすく使い勝手が良好である。
【0033】
ポケット構造PKは、ポケット部Mの内部の左側及び右側の部位が、それぞれポケット左縫合部721及びポケット右縫合部722で、表皮基部61ではない第2表皮部材12,第1内地部材13,及び第2内地部材14の3つの部材間で縫合されている。そのため、ポケット部Mの強度が向上しており、ポケット部Mに重量物を入れるなどして大きな力が付与されても、表皮基部61などとの縫合に影響は及ばない。
これにより、ポケット構造PKは寿命が長く使い勝手が良好である。
【0034】
本発明は、以上説明した実施形態及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0035】
シートバックST2の後面における、ポケット表皮部1の上下方向の取り付け位置は、上述のように上部に限定されるものではなく、中央部或いは中央部よりも下方であってもよい。
ポケット開口縁部M1からポケット底部M3までの距離であるポケット部Mの深さMd(図2及び図3参照)は任意に設定できる。深さMdは、主として第2表皮部材12,第1内地部材13,及び第2内地部材14それぞれの幅と、中央下縫合部713の上下方向の位置によって設定できる。
また、ポケット部Mの奥底の幅Wdw(図2参照)は、第1内地部材13及び第2内地部材14の長さによって任意の幅に設定することができる。
ポケット構造PKにおける各縫合部は、縫い合わせではない他の方法で二つの表皮を接続する部分であってもよい。例えば、溶着で二つの表皮を接続する部分であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ポケット表皮部
11 第1表皮部材
11a 表面
11b 裏面
11c ガイド部
11c1 左縁部
11c2 右縁部
11c3 左鍔部
11c4 右鍔部
12 第2表皮部材
12c ガイド部
121 基部
122 突出部
13 第1内地部材
13a 表面
13b 裏面
13c,13d ガイド部
131 基部
132 突出部
14 第2内地部材
14a 表面
14b 裏面
14c,14d ガイド部
61 表皮基部
62 表皮背部
711 基本縫合部
712 左下縫合部
713 中央下縫合部
714 右下縫合部
715 先端縫合部
716 内中央縫合部
717 内底縫合部
718 内上部縫合部
719 下縫合部
720 ポケット底縫合部
721 ポケット左縫合部
722 ポケット右縫合部
723 半折り縫合部
LN1 折り曲げ線
M ポケット部
Md 深さ
Mw 開口幅
M1 ポケット開口縁部
M2 ポケット左側部
M3 ポケット底部
M4 ポケット右側部
M5 開口部
M5L 左端
M5R 右端
M6 収容部
P1 折り曲げ位置
PK ポケット構造
ST 乗り物用シート
ST1 シートクッション
ST2 シートバック
ST3 ヘッドレスト
T1 第1縫合体
T2 第2縫合体
T3 第3縫合体
T4 第4縫合体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12