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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179988
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20221129BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01R13/629
H01R13/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086848
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】599176827
【氏名又は名称】シーラックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】内川 幸久
(72)【発明者】
【氏名】伊津 好之
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FC38
5E021HA05
5E021HA07
5E021HB03
5E021HB04
5E021HB05
5E021HB07
5E021HB09
5E021HB11
5E021JA05
(57)【要約】
【課題】 本発明はレバー式コネクタにおけるハウジング同士の篏合技術に関する。
【解決手段】 レバー式コネクタ10は、ベース側ハウジング20と、回動可能なレバー30を有するカバー部30aが設けられるコネクト側ハウジング40を備える。
ベース側ハウジング20の外周縁26にはベース側ハウジング20の側壁内面へ向かって傾斜を有するテーパ26aが設けられ、さらにベース側ハウジング20は該ベース側ハウジング20の側壁内面に本篏合時においてコネクト側ハウジング40に接触する篏合接触面28を有する。
コネクト側ハウジング40には、本篏合時において篏合接触面28と接触する位置にベース側ハウジング20およびコネクト側ハウジング40よりも柔軟性を有するハウジングシール50が設けられ、ハウジングシール50は仮篏合の状態において篏合接触面28に接触していることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベース端子が収容されるベース側ハウジングと、前記ベース端子に接続可能な複数のコネクト端子が収容されるとともに回動可能なレバーを有するカバー部が設けられるコネクト側ハウジングと、を備え、前記ベース側ハウジングにコネクト側ハウジングを装着させることで仮篏合の状態を形成し、その後に前記レバーを回動させることで該ベース側ハウジングとコネクト側ハウジングとが本篏合されて前記ベース端子とコネクト端子とを電気接続させるレバー式コネクタであって、
前記ベース側ハウジングは、前記コネクト側ハウジングが装着される方向に前記コネクト端子が挿入される略矩形状の開口を形成する外周縁を有し、該外周縁には該ベース側ハウジングの側壁内面へ向かって傾斜を有するテーパが設けられ、
さらに前記ベース側ハウジングは、該ベース側ハウジングの側壁内面に本篏合時において前記コネクト側ハウジングに接触する篏合接触面を有し、
前記コネクト側ハウジングには、本篏合時において前記篏合接触面と接触する位置に少なくともベース側ハウジングおよびコネクト側ハウジングよりも柔軟性を有するハウジングシールが設けられ、
前記ハウジングシールは、前記仮篏合の状態において少なくとも該ハウジングシールの一部が前記篏合接触面に接触していることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のレバー式コネクタであって、
前記ベース側ハウジングには、該ベース側ハウジングの長手方向略中央におけるコネクト側ハウジング方向に前記仮篏合および本篏合に利用される略円形状のボスが設けられ、
前記レバーは略門型形状を有し、前記コネクト側ハウジングの長手方向に対して略垂直に配置されて前記カバー部を挟むように設けられ、
前記レバーには当該レバーの回動操作を行うための操作部と該操作部とは反対側端部に位置する円形カム凸部が設けられ、該円形カム突部は円形状のカムに複数の凸部を有し、
前記コネクト側ハウジングの長手方向略中央位置には、前記円形カム突部が歯車のように噛み合う複数のカム溝を有する略矩形板状のボス誘導板が設けられ、該ボス誘導板はベース側ハウジングとコネクト側ハウジングとが篏合される方向に前記ボスが侵入可能なボス開口部を有するとともに前記カバー部方向へ向かって直線状に延伸された仮篏合誘導溝を有し、
前記仮篏合誘導溝は、該仮篏合誘導溝に対する角度を有して前記本篏合時において前記操作部が位置する方向に向かって直線状に延伸された本篏合誘導溝に連結され、
当該レバー式コネクタは、前記ベース側ハウジングに前記コネクト側ハウジングを装着させると前記ボス開口部に前記ボスが侵入し、該ボスは前記仮篏合誘導溝の先端位置まで誘導されて仮篏合の状態を形成し、
前記ハウジングシールは、前記ボスが前記仮篏合誘導溝の先端に位置している状態において前記篏合接触面に接触していることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレバー式コネクタであって、
前記ハウジングシールは、前記ベース側ハウジングとコネクト側ハウジングとの篏合方向に対して略垂直方向に複数のリップが設けられることで略ガイシ形状を有し、
前記複数のリップのうち少なくとも1つのリップは、前記仮篏合の状態において押圧変形されていることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレバー式コネクタであって、
前記コネクト側ハウジングには、前記ハウジングシールよりも篏合方向に位置し、且つ、仮篏合時において前記篏合接触面と対抗する位置に前記外周縁とハウジングシールとの干渉を抑制するためのロック端が設けられることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のレバー式コネクタであって、
前記ベース端子がオス端子であるとともに前記コネクト端子がメス端子であることを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のレバー式コネクタであって、
前記ベース端子がメス端子であるとともに前記コネクト端子がオス端子であることを特徴とするレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタ、特にレバー式コネクタにおけるハウジング同士の篏合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から産業分野ではオス端子とメス端子とを接続するためのコネクタとしてレバー式コネクタが知られている。このレバー式コネクタを利用することで例えば車載用ハーネスと車載用機器との接続作業を作業者が現場において簡単に行うことができる。
【0003】
一般的なレバー式コネクタは、一方のハウジングには複数のオス端子が収容され、他方のハウジングには複数のメス端子が収容されている。そして、いずれか一方のハウジングに設けられたレバーを回動させることによって、両ハウジングが互いに引き寄せられてハウジング同士が篏合される。その結果、前記オス端子とメス端子とが良好に電気接続される。
【0004】
上記のとおり、両ハウジングの篏合作業(オス端子とメス端子の接続作業)は作業者が工場などの現場で行うのが一般的である。すなわち、必ずしも現場の環境がレバー式コネクタの篏合作業に適しているとは言えず、例えばレバー式コネクタを視認しにくい状況であったり、あるいはハウジング同士を装着しずらい状況である場合も考えられる。
【0005】
そのため、なるべく作業ミスを少なくするために、まずハウジング同士を接触(装着)させて仮篏合状態を形成し、その後のレバー回動操作によって両ハウジングを本篏合(オス端子とメス端子とを電気接続)するのが一般的である。
【0006】
一方で、レバーの位置やハウジング同士の位置関係が正しい位置(正規姿勢とも言う)であれば適切な篏合作業を行うことができるが、例えば仮篏合時においてハウジング同士の位置関係が正規姿勢からズレていたり傾いていたりするとハウジング同士の誤篏合(ハウジング同士の篏合が中途半端な状態、または端子同士の接続が不十分である状態や接続できていない状態等)が生じてしまう恐れがある。
【0007】
そこで特許文献1には、雄側ハウジングと雌側ハウジングを篏合するレバー式コネクタに規制突部(隙間を埋めるための凸部)を形成し、所定条件により雌側ハウジングが有する端子収容部の先端外縁部と規制突部とを当接させることで、雌側ハウジングと雄側ハウジングとの間における姿勢の傾きが規制される技術が開示されている。
【0008】
また特許文献2には、相手方コネクタに篏合可能なハウジングと、該ハウジングに装着され且つ仮係止位置から本係止位置までの移動によって相手方コネクタ及びハウジングを互いに引き寄せるレバーを備え、該レバーが備える弾性変形可能な仮係止アームを利用することで(弾性変形可能な仮係止アームをハウジングの摺動面に常に押圧接触させることで)レバーの回動軸の傾きを抑制できるレバー式コネクタに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-96094号公報
【特許文献2】特開2018-186030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、特許文献1の技術を利用してレバー式コネクタに規制突部を設けることで雌側ハウジングと雄側ハウジングとの間における姿勢の傾きを抑制することはできる。しかしながら、特許文献1の技術は篏合の際に隙間(クリアランス)があることを前提としてその隙間の量を減らすもの、すなわち、少なからず隙間が残っている状態である。そのため、例えばレバーを回動させて両ハウジングを篏合する際にはレバーの回動操作により雌側ハウジングと雄側ハウジングとの位置がズレてしまう可能性があり、結果として上記の誤篏合が生じてしまう恐れがある。
【0011】
また、特許文献2のように弾性変形可能な仮係止アームを利用することでレバーの回動軸の傾きを抑制できるが、特許文献2の構成はあくまでもレバーの回転軸の傾き、すなわち回転軸の位置を固定できるものである。一方で、レバー式コネクタを利用してハウジング同士を篏合させる場合、実際にはレバーの回転軸を中心に両ハウジングがズレたり傾いたりしてしまうことが原因となり誤篏合が発生することが多い。つまり、特許文献1および特許文献2の技術だけでは誤篏合(ハウジング同士の篏合が中途半端な状態、または端子同士の接続が不十分である状態や接続できていない状態等)を防止するには十分であるとは言えず、まだまだ改良の余地がある。
【0012】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みて行われたものであって、その目的は、簡単な構成で篏合時におけるハウジング同士の傾きを防止することができ、且つ、レバーの回動操作に必要な力を低減させることがきるレバー式コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るレバー式コネクタは、
複数のベース端子が収容されるベース側ハウジングと、前記ベース端子に接続可能な複数のコネクト端子が収容されるとともに回動可能なレバーを有するカバー部が設けられるコネクト側ハウジングと、を備え、前記ベース側ハウジングにコネクト側ハウジングを装着させることで仮篏合の状態を形成し、その後に前記レバーを回動させることで該ベース側ハウジングとコネクト側ハウジングとが本篏合されて前記ベース端子とコネクト端子とを電気接続させるレバー式コネクタであって、
前記ベース側ハウジングは、前記コネクト側ハウジングが装着される方向に前記コネクト端子が挿入される略矩形状の開口を形成する外周縁を有し、該外周縁には該ベース側ハウジングの側壁内面へ向かって傾斜を有するテーパが設けられ、
さらに前記ベース側ハウジングは、該ベース側ハウジングの側壁内面に本篏合時において前記コネクト側ハウジングに接触する篏合接触面を有し、
前記コネクト側ハウジングには、本篏合時において前記篏合接触面と接触する位置に少なくともベース側ハウジングおよびコネクト側ハウジングよりも柔軟性を有するハウジングシールが設けられ、
前記ハウジングシールは、前記仮篏合の状態において少なくとも該ハウジングシールの一部が前記篏合接触面に接触していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るレバー式コネクタにおいて、
前記ベース側ハウジングには、該ベース側ハウジングの長手方向略中央におけるコネクト側ハウジング方向に前記仮篏合および本篏合に利用される略円形状のボスが設けられ、
前記レバーは略門型形状を有し、前記コネクト側ハウジングの長手方向に対して略垂直に配置されて前記カバー部を挟むように設けられ、
前記レバーには当該レバーの回動操作を行うための操作部と該操作部とは反対側端部に位置する円形カム凸部が設けられ、該円形カム突部は円形状のカムに複数の凸部を有し、
前記コネクト側ハウジングの長手方向略中央位置には、前記円形カム突部が歯車のように噛み合う複数のカム溝を有する略矩形板状のボス誘導板が設けられ、該ボス誘導板はベース側ハウジングとコネクト側ハウジングとが篏合される方向に前記ボスが侵入可能なボス開口部を有するとともに前記カバー部方向へ向かって直線状に延伸された仮篏合誘導溝を有し、
前記仮篏合誘導溝は、該仮篏合誘導溝に対する角度を有して本篏合時において前記操作部が位置する方向に向かって直線状に延伸された本篏合誘導溝に連結され、
当該レバー式コネクタは、前記ベース側ハウジングに前記コネクト側ハウジングを装着させると前記ボス開口部に前記ボスが侵入し、該ボスは前記仮篏合誘導溝の先端位置まで誘導されて仮篏合の状態を形成し、
前記ハウジングシールは、前記ボスが前記仮篏合誘導溝の先端に位置している状態において前記篏合接触面に接触していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るレバー式コネクタにおいて、
前記ハウジングシールは、前記ベース側ハウジングとコネクト側ハウジングとの篏合方向に対して略垂直方向に複数のリップが設けられることで略ガイシ形状を有し、
前記複数のリップのうち少なくとも1つのリップは、前記仮篏合の状態において押圧変形されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るレバー式コネクタにおいて、
前記コネクト側ハウジングには、前記ハウジングシールよりも篏合方向に位置し、且つ、仮篏合時において前記篏合接触面と対抗する位置に前記外周縁とハウジングシールとの干渉を抑制するためのロック端が設けられることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るレバー式コネクタにおいて、
前記ベース端子がオス端子であるとともに前記コネクト端子がメス端子であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るレバー式コネクタにおいて、
前記ベース端子がメス端子であるとともに前記コネクト端子がオス端子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コネクト側ハウジングに少なくともベース側ハウジングおよびコネクト側ハウジングよりも柔軟性を有するハウジングシールを設け、仮篏合の状態においてベース側ハウジングの篏合接触面(側壁内面)にコネクト側ハウジングに設けられたハウジングシールを接触させることで、簡単な構成で本篏合時におけるハウジング同士の傾き(ガタツキ)を防止することができ、且つ、レバーの回動操作に必要な力を低減させるレバー式コネクタを実現することができる。
【0020】
その結果、本発明に係るレバー式コネクタによれば、誤篏合(ハウジング同士の篏合が中途半端な状態、または端子同士の接続が不十分である状態や接続できていない状態等)を防止できるとともに現場における作業性の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るレバー式コネクタの概略構成図を示す。
図2】本発明の実施形態に係るレバー式コネクタにおける篏合作業の概略説明図を示す。
図3】本発明の実施形態に係るレバー式コネクタにおいてコネクト側ハウジングを省略した概略イメージ図を示す。
図4】本実施形態におけるベース側ハウジングとハウジングシールとの位置関係をあらわした概略図を示す。
図5】本発明の実施形態に係るハウジングシールの概略図を示す。
図6】本発明の実施形態において篏合時の干渉を抑制するためのロック端の概略イメージ図を示す。
図7】本実施形態のレバー式コネクタにおけるボス誘導板とボスとの位置関係をあらわした概略イメージ図を示す。
図8】本実施形態に係るレバー式コネクタにおけるCPA機能付きカバー部の概略構成図を示す。
図9】レバーを回動操作してCPA機能を利用した状態におけるCPA機能付きカバー部の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のレバー式コネクタについて図面を用いて説明するが、本発明の趣旨を超えない限り何ら以下の例に限定されるものではない。
【0023】
図1に本発明の実施形態に係るレバー式コネクタの概略構成図を示す。同図に示すレバー式コネクタ10は、複数のオス端子(ベース端子とも呼ぶ)が収容されるベース側ハウジング20と、前記オス端子に接続可能な複数のメス端子(コネクト端子とも呼ぶ)が収容されるとともに回動可能なレバー30を有するカバー部30aが設けられたコネクト側ハウジング40と、を備えている。
【0024】
ベース側ハウジング20の内部には篏合方向に対して略垂直に端子接続板22が設けられており、該端子接続板22の上方(図1を正面から見た場合における上方)には複数のオス端子が収容される。この複数のオス端子は、前記端子接続板22の上面に接続されている。
【0025】
そしてベース側ハウジング20は、該ベース側ハウジング20の下方(下端)に位置する開口からユニット側コネクタ(車載用機器からの配線)が挿入され、端子接続板22の下面に接続される。つまり、複数のオス端子とユニット側コネクタとは端子接続板22を介して電気接続される。また、ベース側ハウジング20の長手方向略中央における上方位置(図1のコネクト側ハウジング40方向)には、コネクト側ハウジング40との段階的な篏合に利用される略円形状のボス24が設けられている。
【0026】
ここで、詳細は後述するが本実施形態に係るレバー式コネクタ10は段階的な篏合、すなわち、仮篏合の状態を経てその後に本篏合の状態(オス端子とメス端子とを電気接続した状態)となるものである。また、本明細書において篏合と表現する場合には仮篏合および本篏合の両方を含む意味である。
【0027】
ベース側ハウジング20には、該ベース側ハウジング20へコネクト側ハウジング40が装着される方向に前記メス端子が挿入される開口(入口)を形成する略矩形状の外周縁26が設けられている。そして、外周縁26には該ベース側ハウジング20の側壁内面へ向かって傾斜を有するテーパ26aが設けられている。
【0028】
このテーパ26aは、篏合時においてオス端子とメス端子とを適切に電気接続するための位置調整(コネクタ同士(20と40)のアラインメント用)のために設けられている。本実施形態においてテーパ26aはコネクト側ハウジング40の内部に設けられたハウジングシール(詳細は後述)を誘導する役割も果たしている。また、ベース側ハウジング20の側壁内面には本篏合時において前記コネクト側ハウジング40に接触する篏合接触面28を有している(ベース側ハウジング20の側壁内面における上方位置は篏合接触面28として機能する)。
【0029】
コネクト側ハウジング40には前記ベース側ハウジング20と同様に端子接続板(図示を省略)が設けられており、該端子接続板の下方には複数のメス端子が収容される。この複数のメス端子は、端子接続板の下面に接続されている。
【0030】
レバー30は略門型形状を有しており、コネクト側ハウジング40の長手方向に対して略垂直に配置されて該コネクト側ハウジング40の上方(図1を正面から見た場合の上方)に位置するカバー部30aを挟むように設けられている。カバー部30aは、ハーネスコネクタ(車載用ハーネス)の導入口および保護カバーとしての役割を果たしている。
【0031】
具体的には図1を正面から見た場合、カバー部30aにおける右側の開口からハーネスコネクタが挿入される。ハーネスコネクタはコネクト側ハウジング40に設けられた端子接続板の上面に接続される。つまり、複数のメス端子とハーネスコネクタとは端子接続板を介して電気接続される。
【0032】
次にベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40との篏合作業について説明する。図2には本発明の実施形態に係るレバー式コネクタにおける篏合作業の概略説明図を示す。本明細書における篏合作業とは、作業者が現場においてレバー式コネクタを篏合する作業、すなわち、オス端子とメス端子とを電気接続する作業のことである。また図2では、篏合作業の概略について分かりやすく説明するために、レバー式コネクタ10の細かい構造等(例えばそれぞれのハウジングにおける凹凸構造や湾曲構造等)についての説明は省略する。
【0033】
まず作業者は、図2(a)に示すようにベース側ハウジング20の上方位置(図2(a)を正面から見た場合における上方位置)にコネクト側ハウジング40を近づける。この時、ベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40とは非接触の状態である。そして図2(b)に示すようにベース側ハウジング20にコネクト側ハウジング40を装着させて、仮篏合の状態を形成する。
【0034】
具体的には、レバー30には図2(b)において上端に位置する操作部32と該操作部32の反対側端部(図2(b)のレバー30における下端)に円形カム突部34が設けられている。本実施形態における円形カム突部34は、円形状のカムに4つの凸部を有して構成されている。
【0035】
なお、本実施形態における円形カム突部34は4つの凸部を有しているが、特に凸部の数は限定されるものではなく、例えば円形カム突部34は円形状のカムに2つの凸部、3つの凸部、および5つ以上の凸部を有して構成されていてもよい。
【0036】
コネクト側ハウジング40の長手方向略中央には、前記円形カム突部34が歯車のように噛み合うカム溝42を有する略矩形板状のボス誘導板44が設けられている。また、ボス誘導板44は篏合方向にボス24が侵入可能なボス開口部44aを有するとともに上方へ向かって直線状に延伸された仮篏合誘導溝44bを有している。
【0037】
仮篏合誘導溝44bはさらに右斜め上方(図2を正面から見た場合の右斜め上方)に向かって直線状に延伸された本篏合誘導溝44cに連結されている。本実施形態における仮篏合誘導溝44bは右斜め上方に向かって延伸する本篏合誘導溝44cに連結されているが、実際には仮篏合誘導溝44bは該仮篏合誘導溝44bに対する角度を有して本篏合時において操作部32が位置する方向に向かって直線状に延伸された本篏合誘導溝44cに連結されていれば良い。
【0038】
本篏合誘導溝44cの先端は半円形状であり、さらにこの先端の下方位置(半円形状の下方位置)には本篏合時にボス24が固定されるように(ボス24が動かないように)ボス固定凹部44dが設けられている。また、コネクト側ハウジング40の内部上方位置には、本篏合時において当該レバー式コネクタ10(オス端子およびメス端子)の防水を確保するとともにハウジング同士の良好な固定を実現する略矩形状のハウジングシール50が設けられている。
【0039】
ベース側ハウジング20にコネクト側ハウジング40を装着させると、コネクト側ハウジング40のボス開口部44aにベース側ハウジング20のボス24が侵入し、該ボス24は仮篏合誘導溝44bの上端位置(先端位置)まで誘導される。これが本実施形態に係るレバー式コネクタ10における仮篏合の状態である。
【0040】
この時、例えばベース側ハウジング20における側壁とコネクト側ハウジング40における側壁のうちのいずれか一方に仮篏合凸部を設けるとともにいずれか他方には仮篏合凹部を設け、仮篏合の状態になると仮篏合凸部と仮篏合凹部とが篏合される構造とすることで仮篏合の状態をしっかりと維持できる構成にしても良い。
【0041】
そして図2(c)に示すように仮篏合の状態において操作部32に力を加えてレバー30を回動させると、円形カム突部34はカム溝42に沿って誘導されるとともに仮篏合誘導溝44bの先端に位置していたボス24が本篏合誘導溝44cに沿って右斜め上方へ誘導され、ベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40とが引き寄せられる。
【0042】
すなわち、ベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40とが引き寄せられて本篏合されると同時にベース側ハウジング20に収容されているオス端子とコネクト側ハウジング40に収容されているメス端子とが電気接続される。これがレバー式コネクタ10における本篏合の状態である。
【0043】
このように本実施形態に係るレバー式コネクタ10は、はじめに仮篏合の状態を形成し、その後のレバー30の回動操作によってベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40とを本篏合することでオス端子とメス端子とが電気接続される。本実施形態に係るレバー式コネクタ10の篏合作業は概略以上のような流れで行われる。
【0044】
ここで、仮篏合の状態(図2(b)の状態)においてレバー30を回動させようとすると、実際にはボス24を支点としてハウジング同士(ベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40)に傾き(グラツキ)が生じてしまう。具体的には、ボス24を支点としてコネクト側ハウジング40がベースハウジング20に対して傾いてしまったり、あるいはこの傾きに起因してさらに位置ズレが生じてしまう。
【0045】
この傾きやハウジング同士の位置ズレが原因となり上述した誤篏合等が生じてしまうこととなる。また、ハウジング同士が傾いた状態でレバー30を回動させると該ハウジング同士が傾いた状態のまま篏合されていくため詰まりが発生し、通常よりも大きな挿入力(またはレバー30を回動させる力)が必要となる。
【0046】
そこで本実施形態では、このレバー30の回動操作によるハウジング同士の傾きを防止すべく、特徴的な構成を有するレバー式コネクタ10を実現している。以下、本発明の特徴的な構成について詳しく説明する。
【0047】
図3には本実施形態に係るレバー式コネクタにおいてコネクト側ハウジング40本体(ハウジングの側壁等)を省略した概略イメージ図を示す(コネクト側ハウジング40本体に設けられたカバー部30a等はそのまま表示している)。また、図4には本実施形態におけるベース側ハウジング20とハウジングシール50との位置関係をあらわした概略図を示す。ここでは、図3図4を対応させながら本発明の特徴について説明する。本発明において特徴的なことは、コネクト側ハウジング40に設けられたハウジングシール50は、本篏合時のみならず仮篏合の状態においてベース側ハウジング20の篏合接触面28(ベース側ハウジング20の側壁内面)に接触していることである。
【0048】
図3(a)に示すようにハウジングシール50は、コネクト側ハウジング40の内部に位置してメス端子が収容されるコネクタケース40aの上方(カバー部30a側)に位置している。図3(a)ではハウジングシール50がコネクタケース40aに載置されているように見えるが、実際にはハウジングシール50はコネクト側ハウジング40本体に固定されている(カバー部30aが浮いているようにも見えるが、実際にはコネクト側ハウジング40上方位置に固定されている)。
【0049】
ハウジングシール50は、少なくともベース側ハウジング20およびコネクト側ハウジング40よりも柔軟性を有している。図3(a)の篏合前状態においては、ベース側ハウジング20とハウジングシール50とは非接触の状態である(図4(a))。
【0050】
そして図3(b)に示すように、ボス24が仮篏合誘導溝44bの先端に位置しているとき、すなわち、仮篏合の状態においてハウジングシール50は篏合接触面28(ベース側ハウジング20の側壁内面)に接触している(図4(b))。この時、ハウジングシール50はテーパ26a(図1および図4(a)を参照)によってベース側ハウジング20の篏合接触面28へと誘導されている。その後、図3(c)に示すようにレバー30の回動操作により本篏合の状態を形成し、この本篏合の状態において、ハウジングシール50はベース側ハウジング20の内部まで誘導される(図4(c))。
【0051】
また、図5に示すようにハウジングシール50は篏合方向に対して略垂直方向に複数のリップ52(52a、52b、52c)が設けられ、このリップ52が設けられることで全体として略ガイシ形状を有している。本実施形態に係るハウジングシール50は、柔軟性の観点から例えばシリコン材料を含んで構成されていることが好ましい。
【0052】
さらに本実施形態では、ハウジングシール50に設けられた複数のリップ52のうち少なくとも1つのリップ52が仮篏合の状態において押圧変形されていることが好ましい。本明細書における押圧変形とは、押圧される方向を限定せず、いずれの方向からの力であっても該当箇所(リップ52)が何らかの変形状態になっていることを意味する。
【0053】
リップ52が押圧変形されることで、ハウジング同士の位置ズレや傾きをさらに確実に防止することができる。仮篏合時においてリップ52が押圧変形されていることで、レバー30の急な回動操作により通常よりも大きな力が加わった場合にも対応することができる。この押圧変形は、例えば10N~20N程度の力が加えられることで実現することができる。
【0054】
本実施形態では、ハウジングシール50をベース側ハウジング20へスムーズに誘導するためにコネクタケース40a(図3(a)を参照)の上方位置にロック端40bを設けることもできる。例えば図6(a)に示すようにロック端40bを設けていない構造では篏合時においてベース側ハウジング20の側壁先端(外周縁26)とハウジングシール50とが干渉してしまうおそれがある(コジリ篏合状態)。
【0055】
そこで本実施形態では図6(b)に示すようにコネクタケース40aの上方位置にロック端40bを設けることでひさしを形成し、ベース側ハウジング20の先端による干渉やコジリ(コジリ篏合状態)を抑制することができる。
【0056】
例えば、本実施形態に係るコネクト側ハウジング40には、ハウジングシール50よりも篏合方向に位置し、且つ、仮篏合時において篏合接触面28と対抗する位置に外周縁26とハウジングシール50との干渉を抑制するためのロック端40bを設けることができる。
【0057】
ここで、仮篏合時におけるベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40との位置関係について説明する。本実施形態に係るレバー式コネクタ10では、主としてボス誘導板44に対するボス24の位置により、ベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40との位置関係が決まるものである。
【0058】
図7には本実施形態のレバー式コネクタにおけるボス誘導板とボスとの位置関係をあらわした概略イメージ図を示す。例えば図7(a)に示した一般的なボス誘導板144では、ボス124が仮篏合誘導溝144bの上端(先端)に位置していても実際にはハウジングシールと篏合接触面とは非接触の状態である。
【0059】
これに対し、本実施形態に係るボス誘導板44では図7(b)に示すように仮篏合誘導溝44bにおける誘導溝の長さを一般的なボス誘導板144における誘導溝の長さに比べて長く形成しているため(先端位置を高い位置に設けているため)、すなわち、ボス誘導板44(仮篏合誘導溝44b)の形状を工夫することで仮篏合状態から本篏合状態になるまでの距離を短くしている。
【0060】
したがって、本実施形態では従来よりも仮篏合時のベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40との篏合方向距離を近づけることができるので、仮篏合の状態においてハウジングシール50と篏合接触面28とが接触しているのである。
【0061】
例えば既存のレバー式コネクタに本実施形態のボス誘導板44を設けることで(例えばレバーやボス等の他の構成は変更しないでボス誘導板を変更するだけで)、本発明の効果を得ることもできる。
【0062】
このような構成とすることで、篏合時においてボス24を支点とするハウジング同士(ベース側ハウジング20とコネクト側ハウジング40)の傾きを抑制し、誤篏合を防止することができる。また、例えば仮篏合時においてハウジングシール50の一部が篏合接触面28の一部に押圧接触された状態でも本発明の効果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態に係るレバー式コネクタ10は一般的なレバー式コネクタと比較して本篏合時におけるボス24のスライド距離が短くなり(一般的な構成であれば仮篏合状態ではまだハウジングシールと篏合接触面とが触れていないため、その距離分だけスライド距離が長い)、さらに本篏合誘導溝44cが有する角度が緩やかであるため、結果としてレバーの回動操作に必要な力を低減させることがきる。
【0064】
このように本発明に係るレバー式コネクタ10では仮篏合時においてハウジングシール50と篏合接触面28(側壁内面)とを接触させる構成とすることで、簡単な構成で本篏合時におけるハウジング同士の傾き(ガタツキ)を防止することができ、且つ、レバー30の回動操作に必要な力を低減させることができる。その結果、本発明に係るレバー式コネクタ10によれば、誤篏合(ハウジング同士の篏合が中途半端な状態、または端子同士の接続が不十分である状態や接続できていない状態等)を防止できるとともに現場における作業性の向上も期待できる。
【0065】
また、本実施形態に係るレバー式コネクタ10は、本篏合時におけるCPA機能(コネクタの位置保証機能)を設けることもできる。ここで、本明細書におけるCPA機能とは、本篏合されているレバー式コネクタが意図せずに外れてしまうのを防ぐロック機構のことである。
【0066】
本実施形態におけるカバー部30aを例えば図8に示されるCPA機能付きカバー部30bに変更することでレバー式コネクタ10のCPA機能を実現することがでる。図8ではCPA機能の概略を分かりやすく説明するため、CPA機能付きカバー部30bの細かい構造等(凹凸構造や湾曲構造等)についての説明は省略する。
【0067】
CPA機能付きカバー部30bにはCPA凸部30cが設けられている。このCPA凸部30cはCPA機能付きカバー部30bの上面を所定範囲で、すなわち本篏合時に当該CPA凸部30cと操作部32に設けられたCPA凹部30dとが篏合される位置まで移動可能に設けられている。
【0068】
作業者はレバー式コネクタ10が本篏合の状態になったことを確認した後に、このCPA凸部30cを水平移動させて該CPA凸部30cとCPA凹部30dとを篏合させる(図9)。このようにレバー式コネクタ10にCPA機能を設けることで、より確実で永続的な電気接続を実現することができる。
【0069】
また、本実施形態では車載用ハーネスと車載用機器とを接続するためのレバー式コネクタについて説明したが、他の分野におけるレバー式コネクタについても同様の効果を得ることが出来る。さらに、本実施形態ではベース側ハウジングにはオス端子が収容されコネクト側ハウジングにはメス端子が収容されていたが、例えばベース側ハウジングにメス端子が収容されコネクト側ハウジングにオス端子が収容されていても同様の効果を得ることが出来る。当然ながら本発明に係るレバー式コネクタ10は、オス端子およびメス端子以外の他の端子においても同様の効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0070】
10 レバー式コネクタ
20 ベース側ハウジング
22 端子接続板
24 ボス
26 外周縁
26a テーパ
28 篏合接触面
30 レバー
30a カバー部
30b CPA機能付きカバー部
30c CPA凸部
30d CPA凹部
32 操作部
34 円形カム突部
40 コネクト側ハウジング
40a コネクタケース
40b ロック端
42 カム溝
44 ボス誘導板
44a ボス開口部
44b 仮篏合誘導溝
44c 本篏合誘導溝
44d ボス固定凹部
50 ハウジングシール
52 リップ
124 一般的なレバー式コネクタに係るボス
144 一般的なレバー式コネクタに係るボス誘導板
144b 一般的なレバー式コネクタに係る仮篏合誘導溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9