(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022179989
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】放熱用フィン成形体搬送装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/22 20060101AFI20221129BHJP
B21D 53/08 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B21D43/22 Z
B21D53/08 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086850
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】390034809
【氏名又は名称】日高精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 道博
(72)【発明者】
【氏名】原沢 健
(57)【要約】
【課題】ヒッチ送り機構の復路時において送りピンが筒状起立部の基部を持ち上げようとしても、筒状起立部の変形が防止可能な放熱用フィン成形体搬送装置を提供すること。
【解決手段】冷媒管が挿入される筒状起立部TKが形成された放熱用フィン230を製造する際、金属製薄板に筒状起立部TKを形成した後に搬送方向に所定長さに切断する前の段階の放熱用フィン成形体211Aを搬送方向に搬送する放熱用フィン成形体搬送装置100であって、放熱用フィン成形体211Aの底面を保持すると共に、筒状起立部TKの平面位置において搬送方向に沿った貫通孔112が形成された下ガイド110と、貫通孔112に収容された送りピン130と、送りピン130を下ガイド110の上面から突出入させると共に搬送方向に往復移動させる送りピン駆動部140と、筒状起立部TKの上端面JTと当接可能に形成された上ガイド120と、を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒管が挿入される筒状起立部が形成されてなる放熱用フィンを製造する際に、金属製薄板に前記筒状起立部を形成した後に搬送方向において所定長さに切断する前の段階の放熱用フィン成形体を前記搬送方向に搬送する放熱用フィン成形体搬送装置であって、
前記放熱用フィン成形体の底面を保持すると共に、前記筒状起立部の平面位置において前記搬送方向に沿った貫通孔が形成された下ガイドと、
前記貫通孔に収容された送りピンと、
前記送りピンを前記下ガイドの上面から突出入させると共に前記搬送方向に往復移動させる送りピン駆動部と、
前記筒状起立部の上端面と当接可能に形成された上ガイドと、を具備することを特徴とする放熱用フィン成形体搬送装置。
【請求項2】
前記上ガイドの下面は、前記筒状起立部の上端面との離間距離が最短になる形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の放熱用フィン成形体搬送装置。
【請求項3】
前記上ガイドの前記下面は平坦面に形成されていることを特徴とする請求項2記載の放熱用フィン成形体搬送装置。
【請求項4】
前記上ガイドの下面と前記筒状起立部の上端面との最短離間距離である第1離間距離と、前記上ガイドの前記下面と前記筒状起立部の基部との最短離間距離である第2離間距離との差が正の値である場合、前記差が前記放熱用フィンの平坦度寸法公差範囲内であることを特徴とする請求項1記載の放熱用フィン成形体搬送装置。
【請求項5】
前記下ガイドと前記上ガイドとの離間距離を調整する上下ガイド離間距離調整手段をさらに具備することを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の放熱用フィン成形体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱用フィン成形体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン等に採用される熱交換器は、放熱用フィンに形成された筒状起立部に冷媒管を挿通させることにより形成されている。このような熱交換器に用いられる放熱用フィンは、金属製の薄板からなる長尺体の幅方向に複数列の放熱用フィン成形体をプレス金型によってまとめて形成し、放熱用フィン成形体の列間に列間スリットと称される切断部分を形成したうえで分割(分離)させた後、搬送方向において所定長さに切断されることにより形成されている。このような放熱用フィンの製造装置としては、例えば特許文献1(特許第5915640号公報)において開示されているような構成が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている放熱用フィンの製造装置は連続的な製造を行っており、プレス金型のプレス動作に合わせてプレス金型への材料の供給とプレス金型により成形された放熱用フィン成形体の搬送が間欠的に行われている。このような放熱用フィン成形体を間欠搬送するための放熱用フィン成形体搬送装置の一例としては、特許文献2(特許第5505911号公報)や特許文献3(特許第6523464号公報)に開示されているようなものがある。特許文献2,3に開示されている放熱用フィン成形体搬送装置は、プレス金型の成形品搬出位置から放熱用フィン成形体をカットオフ装置側に搬送する往路時に放熱用フィン成形体を保持する下ガイドから突出して筒状起立部に進入すると共に、復路時には筒状起立部から退避して下ガイドに潜り込んだ状態でプレス金型の成形品搬出位置に戻る送りピンを用いたいわゆるヒッチ送り機構が採用されている。
【0004】
この送りピンは下ガイドから上ガイド側に向けて突出するようにばね等の付勢部材により常時付勢されており、放熱用フィン成形体の下面と常時当接した状態になっている。送りピンの先端部分は放熱用フィン成形体の搬送元側から搬送先側に向けて徐々に高くなる傾斜面に形成されているので、復路時における送りピンは、放熱用フィン成形体の下面に先端部の傾斜面が当接しながら搬送元側に戻ることにより送りピンは付勢力に抗して筒状起立部から退避させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5915640号公報
【特許文献2】特許第5505911号公報
【特許文献3】特許第6523464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2および3に開示されているヒッチ送り機構は、
図8および
図9に示すように、放熱用フィン成形体211Aの底面を保持する下ガイド110と、放熱用フィン成形体211Aの上面に対向し、筒状起立部TKの平面位置に位置合わせして設けられ搬送方向に延びる凹溝124が形成された上ガイド120とを有している。凹溝124は、筒状起立部TKの上端面JTの接触を防ぐため、筒状起立部TKの起立高さよりも深く形成されている。すなわち上ガイド120の下面122は、筒状起立部TKの平面位置を除いた部分で放熱用フィン成形体211Aの上面に当接することになる。以上のようなヒッチ送り機構の構成により、筒状起立部TKの変形を防止しながら放熱用フィン成形体211Aを板厚方向および幅方向にばたつかないように搬送していた。
【0007】
しかしながら、上述のような上ガイド120を用いた場合では、筒状起立部TKは送りピン130に向けて押さえられていないため、送りピン130が筒状起立部TK(放熱用フィン成形体211A)の基部KBを持ち上げてしまう。これにより筒状起立部TKの基部KBは搬送元側が持ち上げられ、筒状起立部TKは搬送元側が高くなるように傾き、基部KBに対する上端面JTの高さ位置の相違量が製品(放熱用フィン230)の平坦度寸法公差から外れ、不良品になるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは以下のとおりである。すなわち、ヒッチ送り機構の復路時における送りピンが筒状起立部を持ち上げようとしても、筒状起立部の変形を防止または抑制することが可能で、製品歩留まりの向上が可能な放熱用フィン成形体搬送装置を提供することにある。
【0009】
上記課題を解決するために発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、冷媒管が挿入される筒状起立部が形成されてなる放熱用フィンを製造する際に、金属製薄板に前記筒状起立部を形成した後に搬送方向において所定長さに切断する前の段階の放熱用フィン成形体を前記搬送方向に搬送する放熱用フィン成形体搬送装置であって、前記放熱用フィン成形体の底面を保持すると共に、前記筒状起立部の平面位置において前記搬送方向に沿った貫通孔が形成された下ガイドと、前記貫通孔に収容された送りピンと、前記送りピンを前記下ガイドの上面から突出入させると共に前記搬送方向に往復移動させる送りピン駆動部と、前記筒状起立部の上端面と当接可能に形成された上ガイドと、を具備することを特徴とする放熱用フィン成形体搬送装置である。
【0010】
これにより、ヒッチ送り機構の復路時における送りピンが筒状起立部を持ち上げようとしても、上ガイドが筒状起立部の上端面と当接し、筒状起立部が下ガイド側に押さえつけられることで筒状起立部の変形を防止または抑制することが可能になる。これにより製品歩留まりを向上させることができる。
【0011】
また、前記上ガイドの下面は、前記筒状起立部の上端面との離間距離が最短になる形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
これにより、上ガイドが放熱用フィン成形体に当接する際には筒状起立部の上端面と当接することになるから、筒状起立部を下ガイドに向けて確実に押圧させることができ、筒状起立部の変形を確実に防止することができる。
【0013】
また、前記上ガイドの前記下面は平坦面に形成されていることがより好ましい。
【0014】
これにより、上ガイドの構成が簡素化され、上ガイドを安価に提供することができる。
【0015】
また、前記上ガイドの下面と前記筒状起立部の上端面との最短離間距離である第1離間距離と、前記上ガイドの前記下面と前記筒状起立部の基部との最短離間距離である第2離間距離との差が正の値である場合、前記差が前記放熱用フィンの平坦度寸法公差範囲内であることが好ましい。
【0016】
これにより、上ガイドが筒状起立部の上端面よりも先に筒状起立部の基部と当接する場合であっても、筒状起立部の上端面の全範囲を下ガイドに向けて押圧した状態にすることにより、筒状起立部に生じる変形量を許容できる範囲に抑えることができる。
【0017】
また、前記下ガイドと前記上ガイドとの離間距離を調整する上下ガイド離間距離調整手段をさらに具備することが好ましい。
【0018】
これにより、放熱用フィン成形体の筒状起立部の起立高さに合わせて上ガイドの配設位置を最適化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における放熱用フィン成形体搬送装置の構成を採用することにより、ヒッチ送り機構の復路時における送りピンが筒状起立部を持ち上げようとしても、筒状起立部の変形を防止または抑制することができ、製品歩留まりの向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置を有する放熱用フィン製造装置の概略正面図である。
【
図2】
図1に示した放熱用フィン製造装置における放熱用フィン成形体搬送装置の要部平面図である。
【
図3】第1実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置の要部構造を示す正面図である。
【
図4】第1実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置の要部構造を示す右側面図である。
【
図5】上下ガイド離間距離調整手段の概略構成を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置の要部構造を示す正面図である。
【
図7】第2実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置の要部構造を示す右側面図である。
【
図8】従来技術における放熱用フィン製造装置におけるヒッチ送り機構の要部正面図である。
【
図9】従来技術における放熱用フィン製造装置におけるヒッチ送り機構の要部右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる放熱用フィン成形体搬送装置の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態においては、
図1に示すように放熱用フィン成形体搬送装置100を有する放熱用フィン製造装置200について説明を行う。本実施形態における放熱用フィン製造装置200は、次に説明する工程で放熱用フィン230を製造する。
【0023】
すなわち、放熱用フィン230の被加工材であるアルミニウム薄板等の金属製薄板からなる長尺体210が、コイル状に巻かれたアンコイラー212からピンチロール214を経て引き出される。引き出された長尺体210は、オイル付与装置216に挿入され、加工用オイルをその表面に付着された後、プレス金型装置218に間欠的に順送される。また、プレス金型装置218は、順送金型であって、内部には上下動可能な上型ダイセット222と、静止状態にある下型ダイセット224とを有する金型装置220が設けられている。
【0024】
長尺体210がプレス金型装置218を通過すると、冷媒管(図示はせず)の挿通部としての筒状起立部TKが搬送方向(長尺体210の長手方向)に沿って一列をなす筒状起立部TKの列が幅方向に複数形成されることになる。以降、長尺体210の幅方向に複数の筒状起立部TKの列が形成されたものを金属帯状体211と称する。かかる金属帯状体211は列間スリット装置225によって搬送方向に沿って切断され、一列の筒状起立部TKを有する複数枚の幅狭の帯状体をなす(金属帯状体211を製品幅に分割した)放熱用フィン成形体211Aに形成される。この放熱用フィン成形体211Aは、カットオフ装置227により搬送方向において所要長さに切断され、短冊状の放熱用フィン230に分割される。
【0025】
カットオフ装置227は、カットオフ装置227を通過した放熱用フィン成形体211Aを所要長さで切断し、放熱用フィン230の幅方向に接離動可能なコの字型をなす一対の保持部228に放熱用フィン230を載置する。続いて一対の保持部228は互いに離反し、筒状起立部TKの真下に控えているスタックピン229Aが立設されたスタッカ229に放熱用フィン230を板厚方向に積層させた状態で収容する。
【0026】
本実施形態における放熱用フィン製造装置200において、長尺体210と放熱用フィン成形体211Aは搬送方向に連続しており、プレス金型装置218と列間スリット装置225との間に配設されたいわゆるヒッチ送り機構を具備する放熱用フィン成形体搬送装置100により間欠搬送されている。
【0027】
図2は、本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置の要部平面図であり、
図3および
図4は、本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置の要部構造を示す正面図および右側面図である。
図3は、放熱用フィン成形体211Aの送り出し方向に沿った切断面において放熱用フィン成形体211Aの搬送方向における右側から放熱用フィン成形体211Aを臨んだ状態を示したものである。
図4は放熱用フィン成形体211Aの搬送方向においてカットオフ装置227から列間スリット装置225に臨んだ状態を示したものである。本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100は、下ガイド110、上ガイド120、送りピン130、送りピン駆動部140および上下ガイド離間距離調整手段150を具備している。なお、上下ガイド離間距離調整手段150の配設は省略することもできる。
【0028】
下ガイド110は、定盤状に形成されたベース105に載置されている。下ガイド110は放熱用フィン成形体211Aの底面を保持し、放熱用フィン成形体211Aを列間スリット装置225からカットオフ装置227までの間の搬送をガイドするものである。下ガイド110には放熱用フィン成形体211Aに形成された筒状起立部TKの平面位置に位置合わせされ、放熱用フィン成形体211Aの搬送方向に沿って長孔に形成された貫通孔112が設けられている。貫通孔112には筒状起立部TKの内側空間に進退可能であって、上端部が列間スリット装置225側(搬送元側)からカットオフ装置227側(搬送先側)に向かって徐々に高くなる傾斜面に形成された送りピン130が収容されている。送りピン130は、付勢部材(図示はせず)により常時上側に付勢されており、送りピン駆動部140により下ガイド110の上面から突出入可能な状態で放熱用フィン成形体211Aの搬送方向に往復動可能に設けられている。
【0029】
送りピン駆動部140による送りピン130の往復移動機構および下ガイド110からの突出入機構は、出願人による特開2006―21876号公報等において説明されている公知の構成(ヒッチフィーダ)を採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施形態においては、下ガイド110の上面に載置された放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの上端面JTに上ガイド120の下面122が当接する高さ位置が維持された状態で上ガイド120が保持されている。なお、下ガイド110と上ガイド120との離間距離の調整は、下ガイド110と上ガイド120の側方位置においてベース105の上面に設けられた上下ガイド離間距離調整手段150により調整可能である。なお、上下ガイド離間距離調整手段150の詳細については後述する。
【0031】
従来技術における放熱用フィン成形体搬送装置100の上ガイド120は、送りピン130により放熱用フィン成形体211Aが下ガイド110から持ち上げられても筒状起立部TKが変形しないようにしていた。すなわち、上ガイド120の下面122に筒状起立部TKの上端面JTを接触させないようにするといった設計思想が採用されていた。これに対し本実施形態形における放熱用フィン成形体搬送装置100の上ガイド120は、筒状起立部TKの上端面JTの全体を下ガイド110に向けて押圧することで筒状起立部TKの変形を防止する思想を採用した点が特徴的である。
【0032】
すなわち、本実施形態における上ガイド120の下面122が平坦面に形成され、筒状起立部TKの上端面JTに当接させた状態にしている。したがって、送りピン130が搬送元側に戻る際において筒状起立部TKの基部KBを持ち上げようとしても、上ガイド120の下面122が筒所起立部TKの上端面JTに当接しているので筒状起立部KBの持ち上がりを規制することができる。これにより、放熱用フィン成形体211Aは下ガイド110から持ち上げられることはない。よって、送りピン130による筒状起立部TKの変形(筒状起立部TKの起立方向の傾き)を抑えることができ、放熱用フィン230の製造歩留まりを大幅に向上させることが可能になる。
【0033】
なお、本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100は、放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの上端面JTに上ガイド120の下面122を当接させた形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの上端面JTとこれに対向する上ガイド120の下面122との間に隙間を有する形態を採用することもできる。この場合、隙間の寸法は放熱用フィン成形体211Aまたは放熱用フィン230の平坦度(筒状起立部TKの傾きによる基部KBに対する上端面JTの高さ位置の相違量)における寸法公差以下(平坦度寸法公差範囲内)であることがより好ましい。
【0034】
本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100のように上下ガイド離間距離調整手段150を有していれば、放熱用フィン成形体211Aにおける筒状起立部TKの起立高さに応じて下ガイド110と上ガイド120との離間距離が調整できる。本実施形態における上下ガイド離間距離調整手段150は、
図5に示すように、下ガイド110を載置しているベース105の上面において下ガイド110および上ガイド120の側方位置に配設されている。本実施形態における上下ガイド離間距離調整手段150は、第1テーパーブロック151、第2テーパーブロック152、シャフト153、固定ブロック154およびガイドクランパ155および上ガイドレベルインジゲータ156を有している。
【0035】
第1テーパーブロック151は側面視台形形状に形成されており、第1テーパーブロック151の側面視において台形の第1脚部151Aは上底および下底に直交する直交面をなし、第2脚部151Bは傾斜面をなしている。上ガイド120の側面121には直方体形状の切欠部123が形成されており、第1テーパーブロック151の第2脚部151Bを下ガイド110の上面に対向させた状態で配設されている。このように配設した第1テーパーブロック151により上ガイド120の側面121から切欠部123の奥側に進むにつれて第2脚部151Bと下ガイド110との離間距離は徐々に減少する傾斜面を形成することができる。
【0036】
第2テーパーブロック152は側面視台形形状に形成されており、第2テーパーブロック152の側面視において台形の第1脚部152Aは上底および下底に直交する直交面をなし、第2脚部152Bは傾斜面をなしている。第2テーパーブロック152の第2脚部152Bの傾斜角度は第1テーパーブロック151の第2脚部151Bと同一角度に形成されている。第2テーパーブロック152には、ねじ穴152Cが形成されていて、シャフト153の先端に形成されたねじ部153Aが螺合している。第2テーパーブロック152は、第1脚部152Aを下ガイド110の上面においてスライド移動可能に載置されている。シャフト153は、ベース105の上面に配設された固定ブロック154により回転可能に保持されている。
【0037】
使用者は固定ブロック154により保持されたシャフト153を回転させることで、シャフト153の先端のねじ部153Aと第2テーパーブロック152のねじ穴152Cのかみ合い長さを変更することができる。これにより第2テーパーブロック152が切欠部123の奥行方向にスライド移動し、下ガイド110と上ガイド120との離間距離を任意に調整することができる。これにより放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの起立高さが変更しても、簡単な操作で放熱用フィン成形体搬送装置100の状態を上ガイド120の下面122を筒状起立部TKの上端面JTに当接させた状態に変更することができる。そして本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100は、下ガイド110に対する上ガイド120の保持位置が位置決めされた状態を維持するためのガイドクランパ155を追加的に備えている。
【0038】
本実施形態におけるガイドクランパ155は、ベース105、下ガイド110および上ガイド120を貫通する段差付貫通孔155A、ボルト155B、ボルト固定ブロック155Cおよびボルト付勢部材としてのコイルばね155Dを有している。ベース105の底面側から段差付貫通孔155Aにコイルばね155Dに挿通させたボルト155Bが挿入され、段差付貫通孔155Aの上ガイド側の開口部に配設されたボルト固定ブロック155Cにボルト155Bの先端が螺合している。段差付貫通孔155Aの段差部とボルト155Bの頭部との間にはコイルばね155Dによる付勢力が付与されている。シャフト153を回転させることで、シャフト153とボルト固定ブロック155Cとのかみ合い長さを変更することができ、これにより、下ガイド110に対する上ガイド120の保持位置が容易に調整することができる。また、調整後における上ガイド120の保持位置を適切に維持することもできる。
【0039】
本実施形態における上ガイドレベルインジゲータ156は下ガイド110に対する上ガイド120の保持高さ位置を表示するためのものである。上ガイドレベルインジゲータ156には、いわゆるディジタルインジゲータと称される公知の構成を採用することができる。ディジタルインジゲータの構造に関する詳細な説明は省略する。上ガイドレベルインジゲータ156により、使用者は現在製造している放熱用フィン成形体211Aにおける筒状起立部TKの起立高さに対する上ガイド120の保持高さ位置が適切であるか否かを容易に判断することができる点で好都合である。上ガイドレベルインジゲータ156の構成は省略することもできる。
【0040】
さらに本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100は、上下ガイド離間距離調整手段150による上ガイド120の高さ方向における移動をガイドするためのガイドピン160を追加的に備えている。ガイドピン160は、ベース105の底面から上ガイド120の上面にわたる範囲に形成された段付ガイドピン孔162に挿通され、段付ガイドピン孔162の細径部分における段差側所要範囲において圧入により固定されている。これにより、上下ガイド離間距離調整手段150を用いて上ガイド120を高さ方向に移動させる際は、ガイドピン160により上ガイド120の移動方向がガイドされ、下ガイド110に載置された放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの平面位置に対し適切な位置を維持した状態で昇降移動させることができる。
【0041】
(第2実施形態)
図6および
図7は本実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100の要部構造を示す正面図および右側面図である。本実施形態における上ガイド120は、従来技術における上ガイド120と同様に、放熱用フィン成形体211Aの搬送方向における筒状起立部TKの平面位置に沿って凹溝124が配設されている。しかしながら本実施形態における凹溝124の深さ寸法は、放熱用フィン成形体211Aにおける筒状起立部TKの起立高さ寸法よりもわずかに短く形成されている。すなわち、上ガイド120の下面122(凹溝124の内底面)と筒状起立部TKの上端面JTとの最短離間距離である第1離間距離(本実施形態においては接触しているためゼロ)は上ガイド120の下面122(凹溝124の平面位置以外における下面122)と筒状起立部TKの基部KBとの最短離間距離である第2離間距離よりも短くなっている。
【0042】
これにより、放熱用フィン成形体211Aが下ガイド110から持ち上げられたとしても、筒状起立部TKの上端面JTが最初に凹溝124の内底面(下面122に相当)に当接することになる。よって、本実施形態においても第1実施形態と同様に、放熱用フィン成形体211Aの下ガイド110からの持ち上がりを規制することができる。
【0043】
これとは反対に、第1離間距離と第2離間距離との差が正の値である(凹溝124が筒状起立部TKの起立高さより深く形成されている)場合には、第1離間距離と第2離間距離との差を所定範囲内にすればよい。具体的には第1離間距離と第2離間距離との差を、放熱用フィン成形体211Aまたは放熱用フィン230の平坦度寸法公差範囲内にすることが好ましい。これにより、送りピン130が搬送元側に戻る際に放熱用フィン成形体211Aを持ち上げると筒状起立部TKの上端面JTよりも先に筒状起立部TKの基部KBが上ガイド120の下面122に当接することになる。しかしながら、筒状起立部TKの変形量(持ち上がり量)が放熱用フィン230の平坦度寸法公差範囲で上端部JTが上ガイド120の下面122に当接することになり、それ以上の筒状起立部TKの変形を規制することができる。
【0044】
これにより、送りピン130の戻り動作により生じる筒状起立部TKの傾きによる基部KBから上端面JTまでの起立高さ寸法の相違量を不良品と判断されない範囲内に収めることができる。このとき、筒状起立部TKと対向する部分以外の上ガイド120の下面122の形状は、
図7に示すように放熱用フィン成形体211Aの表面形状に倣った形状に形成されていることが好ましい。以上のことから、本実施形態の放熱用フィン成形体搬送装置100においても従来技術に比較して放熱用フィン230の製造歩留まりを向上させることは可能である。
【0045】
第2実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100を用いた場合、放熱用フィン成形体211Aの搬送時には筒状起立部TKが凹溝124に入り込んだ状態にすることができる。これにより、搬送時において搬送方向と水平面内で直交する方向への放熱用フィン成形体211Aのばたつきを押さえることができる点で好都合である。
【0046】
以上に本発明について実施形態に基づいて詳細に説明をしたが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上に説明した実施形態における放熱用フィン成形体搬送装置100は、
図1に示すようにプレス金型装置218と列間スリット装置225との間に配設されているが、列間スリット装置225とカットオフ装置227との間に配置することもできる。この場合、金属帯状体211を製品幅に分割したものが放熱用フィン成形体211Aに該当することになる。
【0047】
また、第1実施形態においては、上ガイド120の下面122を平坦面にすることで筒状起立部TKの上端面JTに常時または放熱用フィン成形体211Aが持ち上がった際に最初に当接させているが、この形態に限定されるものではない。放熱用フィン成形体211Aが搬送される際における筒状起立部TKの平面位置に沿って上ガイド120の下面122に凸部(図示はせず)を設けた形態を採用することもできる。この形態によっても放熱用フィン成形体211Aが下ガイド110から持ち上げられても、上ガイド120による放熱用フィン成形体211Aの持ち上がりを規制することができる。このとき凸部の幅寸法は筒状起立部TKの上端面JTにおける幅寸法と同寸法または幅広寸法に形成されていることが好ましい。また、放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの上端面JTと当接する部分を上ガイド120の下面122から突出させることにより、放熱用フィン成形体211Aとの摩擦による上ガイド120の摩耗対策にもなる点においても好都合である。
【0048】
また、第1実施形態においては、下ガイド110に対する上ガイド120の保持位置がガイドクランパ155により維持された形態について説明しているがこの形態に限定されるものではない。上ガイド120は、上ガイド120に固定された第1テーパーブロック151の下面(第2脚部151B)が下ガイド110の上面に載置された第2テーパーブロック152の上面(第2脚部152B)と密着した状態になっている。これにより、上ガイド120は、ガイドクランパ155の構成を省略しても、自重および上下ガイド離間距離調整手段150により下ガイド110に対する離間距離を維持することが可能である。また、ガイドクランパ155の構成に替えて流体シリンダやボールねじ構造等により下ガイド110に対する上ガイド120の保持位置を維持させることもできる。
【0049】
また、第2実施形態においては、上ガイド120の下面122に形成した凹溝124の深さ寸法と放熱用フィン成形体211Aの筒状起立部TKの起立高さ寸法とを等しくすることもできる。この形態を採用することにより、送りピン130の戻り動作によって下ガイド110から放熱用フィン成形体211Aが持ち上げられた際に放熱用フィン成形体211Aの変形を防止すると共に、搬送時における搬送方向と水平面内において直交する方向における放熱用フィン成形体211Aのばたつきを押さえることができる。
【0050】
また、以上に説明した実施形態における各種変形例どうしを適宜組み合わせた構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
100 放熱用フィン成形体搬送装置
105 ベース
110 下ガイド,112 貫通孔
120 上ガイド,121 側面,122 下面,123 切欠部,124 凹溝
130 送りピン
140 送りピン駆動部
150 上下ガイド離間距離調整手段
151 第1テーパーブロック,151A 第1脚部,151B 第2脚部
152 第2テーパーブロック,152A 第1脚部,152B 第2脚部,
152C ねじ穴
153 シャフト,153A ねじ部
154 固定ブロック
155 ガイドクランパ,155A 段差付貫通孔,155B ボルト,
155C ボルト固定ブロック
156 上ガイドレベルインジゲータ
160 ガイドピン,162 段付ガイドピン孔
211A 放熱用フィン成形体
TK 筒状起立部
JT 上端面
KB 基部
200 放熱用フィン製造装置
210 長尺体
212 アンコイラー
214 ピンチロール
216 オイル付与装置
218 プレス金型装置
220 金型装置
224 下型ダイセット
222 上型ダイセット
211 金属帯状体
225 列間スリット装置
227 カットオフ装置
228 保持体
229 スタッカ
229A スタックピン
230 放熱用フィン
【手続補正書】
【提出日】2022-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
冷媒管が挿入される筒状起立部が形成されてなる放熱用フィンを製造する際に、金属製薄板に前記筒状起立部を形成した後に搬送方向において所定長さに切断する前の段階の放熱用フィン成形体を前記搬送方向に搬送する放熱用フィン成形体搬送装置であって、
前記放熱用フィン成形体の底面を保持すると共に、前記筒状起立部の平面位置において前記搬送方向に沿った貫通孔が形成された下ガイドと、
前記貫通孔に収容された送りピンと、
前記送りピンを前記下ガイドの上面から突出入させると共に前記搬送方向に往復移動させる送りピン駆動部と、
前記送りピンが前記下ガイドの上面から突出した際における前記筒状起立部の基部の持ち上がりを規制すべく前記筒状起立部の上端面と当接可能に形成された上ガイドと、を具備することを特徴とする放熱用フィン成形体搬送装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するために発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、冷媒管が挿入される筒状起立部が形成されてなる放熱用フィンを製造する際に、金属製薄板に前記筒状起立部を形成した後に搬送方向において所定長さに切断する前の段階の放熱用フィン成形体を前記搬送方向に搬送する放熱用フィン成形体搬送装置であって、前記放熱用フィン成形体の底面を保持すると共に、前記筒状起立部の平面位置において前記搬送方向に沿った貫通孔が形成された下ガイドと、前記貫通孔に収容された送りピンと、前記送りピンを前記下ガイドの上面から突出入させると共に前記搬送方向に往復移動させる送りピン駆動部と、前記送りピンが前記下ガイドの上面から突出した際における前記筒状起立部の基部の持ち上がりを規制すべく前記筒状起立部の上端面と当接可能に形成された上ガイドと、を具備することを特徴とする放熱用フィン成形体搬送装置である。