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特開2022-180025流量検出装置、および、溶接システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180025
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】流量検出装置、および、溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20221129BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20221129BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B23K9/10 Z
B23K9/32 Z
B23K31/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086905
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝典
(72)【発明者】
【氏名】西田 省吾
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082EC20
4E082FA12
(57)【要約】
【課題】熱および電圧に対する耐性が高く、かつ、消費電力の抑制に貢献できる流量検出装置を提供する。
【解決手段】流量検出装置において、流体が流れる流路に取り付けられ、かつ、流体の流れによって電力を生成する発電装置12と、発電装置12が生成した電力を検出する電力センサ13と、電力センサ13が検出した電力に応じて、流体の流量を検出する流量検出部111とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路に取り付けられ、かつ、前記流体の流れによって電力を生成する発電装置と、
前記発電装置が生成した電力を検出する電力センサと、
前記電力センサが検出した電力に応じて、前記流体の流量を検出する流量検出部と、
を備えている、
流量検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流量検出装置と、
溶接トーチと、
前記溶接トーチに電力を供給する溶接電源装置と、
前記溶接トーチに接続され、前記溶接トーチの冷却水が流れる冷却水流路と、
を備え、
前記発電装置は、前記冷却水流路に取り付けられている、
溶接システム。
【請求項3】
前記溶接電源装置は、
前記流量検出部が検出した流量に基づいて異常を検出する異常検出部と、
現在の使用率である実使用率を算出する使用率算出部と、
を備え、
前記異常検出部は、前記実使用率が、定格使用率と前記流量とに基づいて設定された上限使用率以上の場合に異常を検出する、
請求項2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記冷却水を送出するポンプをさらに備え、
前記溶接電源装置は、
前記溶接トーチに出力される溶接電流を検出する溶接電流検出部と、
前記流量が、検出された前記溶接電流に応じて設定された目標流量になるように、前記ポンプを制御するポンプ制御部と、
を備えている、
請求項2または3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記溶接電源装置には、前記発電装置が生成した電力が供給される、
請求項2ないし4のいずれかに記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量検出装置、および、当該流量検出装置を備えた溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接トーチに冷却水を循環させることで、高温になる溶接トーチを冷却する水冷式の溶接システムが開発されている。特許文献1には、水冷式の溶接システムの一例が開示されている。当該溶接システムは、冷却水循環装置によって、高温になった冷却水を冷却して、溶接トーチに循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-108438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水冷式の溶接システムにおいては、溶接トーチの焼損を防止するために、冷却水が適切に循環されていることを検出している。当該検出には、冷却水の水圧を検出する水圧検出センサ、または、冷却水が流れていることを検出するフローセンサが用いられている。これらのセンサは、冷却水が流れているか否かを検出するものであり、冷却水の流量を細かく検出することはできない。溶接トーチに流れる冷却水の流量に応じた制御を行うためには、流量を細かく検出できるセンサを、冷却水の通路の溶接トーチにできるだけ近い位置に配置する必要がある。
【0005】
一般的な流量センサとして、カルマン渦式流量センサおよび熱式流量センサが知られている。カルマン渦式流量センサは、流体の中に棒状の物体(渦発生体)を配置し、その下流側に交互に発生する渦の発生周波数を検出することで、当該周波数に比例する流量を検出する。カルマン渦式流量センサは、流体内に配置された圧電素子で渦の振動を検出することで、渦の発生周波数を検出する。熱式流量センサは、流体の中に加熱したサーミスタを配置し、流体によって奪われた熱に応じて上昇するサーミスタの抵抗値を検出することで、抵抗値の上昇率に応じた流量を検出する。熱式流量センサは、安定した測定のため、流体温度や周囲温度を検出する温度センサも備えている。
【0006】
溶接システムの場合、溶接トーチには電圧が印加される。特にTIG溶接の場合、溶接開始時に溶接トーチに高電圧が印加される。冷却水に塩素成分などが含まれていると、溶接トーチに印加された電圧が冷却水を介して各センサに印加され、各センサが故障する場合がある。また、溶接トーチを冷却した後の冷却水は沸点に近い温度に上昇しているので、各センサが冷却水の熱により故障する場合がある。溶接システムにおいて冷却水の流量を検出する流量センサには、電圧および高温によって故障する可能性がある半導体素子を用いないものが望まれる。
【0007】
また、近年、省エネが求められており、溶接システムにおいても、できる限り消費電力を抑えたいという要望がある。
【0008】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、熱および電圧に対する耐性が高く、かつ、消費電力の抑制に貢献できる流量検出装置、および、当該流量検出装置を備えた溶接システムを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面によって提供される流量検出装置は、流体が流れる流路に取り付けられ、かつ、前記流体の流れによって電力を生成する発電装置と、前記発電装置が生成した電力を検出する電力センサと、前記電力センサが検出した電力に応じて、前記流体の流量を検出する流量検出部とを備えている。
【0011】
本発明の第2の側面によって提供される溶接システムは、本発明の第1の側面によって提供される流量検出装置と、溶接トーチと、前記溶接トーチに電力を供給する溶接電源装置と、前記溶接トーチに接続され、前記溶接トーチの冷却水が流れる冷却水流路とを備え、前記発電装置は、前記冷却水流路に取り付けられている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶接電源装置は、前記流量検出部が検出した流量に基づいて異常を検出する異常検出部と、現在の使用率である実使用率を算出する使用率算出部とを備え、前記異常検出部は、前記実使用率が、定格使用率と前記流量とに基づいて設定された上限使用率以上の場合に異常を検出する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記冷却水を送出するポンプをさらに備え、前記溶接電源装置は、前記溶接トーチに出力される溶接電流を検出する溶接電流検出部と、前記流量が、検出された前記溶接電流に応じて設定された目標流量になるように、前記ポンプを制御するポンプ制御部とを備えている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶接電源装置には、前記発電装置が生成した電力が供給される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、発電装置は、流体の流れによって電力を生成する。流量検出部は、発電装置が生成した電力に応じて、流体の流量を検出する。流体に接する位置に繊細な半導体素子などが配置されないので、本発明に係る流量検出装置は、熱および電圧に対する耐性が高い。また、発電装置が生成した電力は利用可能なので、本発明に係る流量検出装置は、消費電力の抑制に貢献できる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る溶接システムの全体構成を示す図である。
図2】上限使用率の設定方法の一例を説明するための図である。
図3】異常検出処理を説明するためのフローチャートの一例である。
図4】第2実施形態に係る溶接システムの全体構成を示す図である。
図5】第3実施形態に係る溶接システムの全体構成を示す図である。
図6】第4実施形態に係る溶接システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る流量検出装置を溶接システムの溶接電源装置に組み込んだ場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る溶接システムA1を説明するための図であり、溶接システムA1の全体構成を示す図である。溶接システムA1は、溶接電源装置1、溶接トーチ2、および冷却水循環装置3を備えている。なお、溶接システムA1は、実際には他の構成も備えているが、図への記載や説明を省略している。
【0020】
溶接システムA1は、アークによる熱で図示しない被加工物の溶接を行うシステムである。溶接電源装置1は、溶接トーチ2の電極の先端と被加工物との間にアークを発生させて、アークに電力を供給する。溶接トーチ2は水冷式であり、溶接電源装置1を介して冷却水循環装置3から送られる冷却水で冷却される。
【0021】
冷却水循環装置3は、溶接トーチ2を冷却するための冷却水を循環させる。冷却水循環装置3は、送水側ホース31および復水側ホース32を備えている。送水側ホース31および復水側ホース32は、それぞれ、溶接電源装置1の内部を通過して、冷却水循環装置3と溶接トーチ2とを接続している。送水側ホース31は、冷却水循環装置3が送出した冷却水が溶接トーチ2まで流れる流路である。復水側ホース32は、冷却水が溶接トーチ2から冷却水循環装置3まで流れる流路である。送水側ホース31および復水側ホース32は、例えばゴムなどの柔軟性を有する材料で形成されている。なお、送水側ホース31および復水側ホース32の材料は限定されない。また、冷却水循環装置3は、送水側ホース31および復水側ホース32の代わりに、パイプまたは配管などを備えてもよいし、送水側ホース31および復水側ホース32のそれぞれ一部がパイプまたは配管などであってもよい。冷却水循環装置3は、復水側ホース32を介して溶接トーチ2から送られる水温が上昇した冷却水を、図示しないラジエータで放熱させることで冷却する。また、冷却水循環装置3は、冷却された冷却水を、図示しないポンプによって、送水側ホース31を介して溶接トーチ2に送り出す。本実施形態では、送水側ホース31の溶接電源装置1の内部に位置する部分に、後述する発電装置12が取り付けられている。
【0022】
溶接電源装置1は、例えば電力系統から供給される電力を溶接に適した電力に変換して溶接トーチ2に供給し、アークを発生させる。溶接電源装置1は、制御回路11、発電装置12、および電力センサ13を備えている。溶接電源装置1は、実際には、溶接トーチ2に電力を供給するためのインバータなどの構成を備えているが、図1においては記載を省略している。
【0023】
発電装置12は、タービン式の発電装置であって、流体によって図示しないロータを回転させることで電力を生成する。本実施形態では、発電装置12は、溶接電源装置1の内部において、送水側ホース31に取り付けられている。送水側ホース31は、冷却水循環装置3側の上流部分と溶接トーチ2側の下流側部分とを有している。発電装置12は、図示しない入水口に送水側ホース31の上流側部分が接続され、図示しない出水口に送水側ホース31の下流側部分が接続されている。送水側ホース31における、発電装置12の取り付け位置は限定されないが、溶接トーチ2に実際に流れる冷却水の流量をできるだけ正確に検出するためには、溶接トーチ2により近い位置が望ましい。送水側ホース31を流れる冷却水が発電装置12の内部を流れて、発電装置12の内部に配置されたロータを回転させる。ロータの回転エネルギーが電気エネルギーに変換されて、電力が生成される。発電装置12は、生成した電力を所定電圧の直流電力に変換して、制御回路11に供給する。なお、発電装置12の具体的な構成は限定されず、流れる冷却水によってロータを回転させて、電力を生成するものであればよい。
【0024】
電力センサ13は、発電装置12により生成されて制御回路11に供給される電力を検出する。電力センサ13は、発電装置12から制御回路11に電力を供給する電力線14に配置されている。なお、電力センサ13の具体的な構成は限定されず、電力線14で供給される電力を検出できればよい。電力センサ13は、検出した電力に応じた検出信号を制御回路11に出力する。
【0025】
制御回路11は、溶接システムA1を制御する構成であり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路11は、溶接トーチ2に出力する電圧や電流を制御したり、冷却水循環装置3の稼働を制御する。また、制御回路11は、溶接システムA1の異常を検出する。制御回路11は、異常を検出した場合、異常であることを警告し、溶接を停止させる。制御回路11は、発電装置12から供給される電力を電源の一部として用いる。制御回路11は、異常を検出するための機能構成として、流量検出部111、使用率算出部112、および異常検出部113を備えている。
【0026】
流量検出部111は、電力センサ13から入力される検出信号に基づいて、送水側ホース31を流れる冷却水の流量を検出する。冷却水の流量と発電装置12が生成した電力とには相関関係がある。流量検出部111は、当該相関関係に基づいて、電力センサ13より入力される検出信号から、冷却水の流量を推定する。本実施形態では、冷却水の流量が、発電装置12が生成した電力と比例関係にあるとして、流量検出部111は、検出信号に応じた電力に所定の係数を乗算することで、冷却水の流量を検出する。なお、流量の検出方法は限定されない。例えば、流量検出部111は、あらかじめ、冷却水の流量を変化させながら検出信号を取得して相関関係を図示しない記憶部に記憶し、これを用いて流量を検出してもよい。すなわち、流量検出部111は、記憶部に記憶された相関関係に基づいて、実際に検出された検出信号から、例えば線形補間により流量を検出してもよい。流量検出部111は、検出した流量を、異常検出部113に出力する。
【0027】
使用率算出部112は、現在の使用率を算出する機能構成である。使用率は、所定の時間内(一般的には10分間)で、溶接電流が流れていた時間の割合を百分率で表したものである。例えば、10分間のうち溶接電流が流れていた時間の積算時間が6分間であった場合、使用率は60%になる。使用率算出部112は、溶接電流が流れていた使用時間を計時して積算し、別途計時した所定の時間とから、使用率を演算する。なお、使用率算出部112による使用率の算出方法は限定されない。使用率算出部112は、算出した使用率を実使用率として、異常検出部113に出力する。
【0028】
異常検出部113は、溶接システムA1の異常を検出する機能構成である。異常検出部113は、流量検出部111から入力される流量、使用率算出部112から入力される実使用率、および定格使用率に基づいて、異常の検出を行う。定格使用率は、所定の時間(一般的には10分間)に対する定格電流を出力可能な時間の割合を百分率で表したものである。例えば、定格使用率が60%の場合、10分間のうち6分間、定格電流を出力することが可能である。定格使用率は、溶接トーチ2が溶接時に発生する熱で焼損しないように規定される指標であり、溶接トーチ2の型式ごとにあらかじめ規定されている。異常検出部113は、使用される溶接トーチ2の型式を検出して、対応する定格使用率を記憶部から読み出す。なお、定格使用率は、作業者によって手入力されてもよい。
【0029】
異常検出部113は、溶接中に、実使用率が定格使用率以上になった場合に、異常を検出する。また、異常検出部113は、流量検出部111から入力される流量を考慮して、異常を検出する。異常検出部113は、流量が所定の第1流量Q1以下の場合、実使用率に関係なく、異常を検出する。第1流量Q1は、冷却水の流量不足によって溶接トーチ2が焼損する可能性が高い流量であり、実験によってあらかじめ設定されている。異常検出部113は、流量が第1流量Q1以下になった場合、すぐに異常を検出する。
【0030】
また、異常検出部113は、流量が所定の第2流量Q2未満の場合、定格使用率を流量に応じて減少させた上限使用率を設定し、実使用率との比較に用いる。第2流量Q2は、冷却水の流量が十分であると判断される流量であり、実験によってあらかじめ設定されている。流量が第2流量Q2未満の場合、実使用率が定格使用率以下であっても、溶接トーチ2の焼損が発生しやすくなる。これを防ぐため、異常検出部113は、定格使用率と流量とから設定された上限使用率を、定格使用率の代わりに、実使用率との比較に用いる。この場合、異常検出部113は、実使用率が上限使用率以上になった場合に、異常を検出する。上限使用率X1は、例えば図2に示すように、流量Qが第2流量Q2のときに定格使用率X0となり、流量Qが少ないほど線型的に減少するように設定される。流量Qが第2流量Q2以上の場合は、上限使用率X1として定格使用率X0が設定されると考えることもできる。なお、上限使用率X1の設定方法は限定されない。
【0031】
異常検出部113は、異常を検出した場合、作業者に異常を警告し、また、溶接トーチ2への溶接電力の供給を停止させて、溶接を停止させる。なお、異常検出部113は、異常の警告または溶接電力の供給停止のいずれか一方のみを行ってもよい。
【0032】
なお、定格使用率X0は定格電流を出力可能な時間に基づく指標なので、設定電流が定格電流未満の場合、実使用率Xが定格使用率X0より大きくなっても、溶接トーチ2の焼損を防止できる。したがって、設定電流が定格電流未満の場合、異常検出部113は、定格使用率X0、定格電流、および設定電流に基づいて許容使用率を算出し、定格使用率X0の代わりに許容使用率を用いてもよい。許容使用率は、例えば、設定電流に対する定格電流の比の2乗を定格使用率X0に乗算することで算出される。なお、許容使用率の算出方法は限定されない。溶接電源装置1の内部に組み込まれた発電装置12および電力センサ13と、制御回路11の一部(流量検出部111)とを合わせたものが、本発明の「流量検出装置」に相当する。
【0033】
図3は、制御回路11が行う異常検出処理を説明するためのフローチャートの一例である。図3に示す異常検出処理は、溶接が開始されたときに開始される。
【0034】
まず、定格使用率X0が取得される(S1)。具体的には、異常検出部113が、溶接トーチ2の型式に対応する定格使用率X0を記憶部から読み出す。次に、実使用率Xが検出される(S2)。具体的には、使用率算出部112が、実使用率Xを算出する。次に、発電装置12が生成した電力が検出される(S3)。具体的には、電力センサ13から検出信号が入力される。次に、送水側ホース31を流れる冷却水の流量Qが検出される(S4)。具体的には、流量検出部111が、電力センサ13から入力される検出信号に基づいて流量Qを検出する。
【0035】
次に、流量Qが第1流量Q1以下であるか否かが判別される(S5)。流量Qが第1流量Q1以下である場合(S5:YES)、異常が報知され(S6)、溶接が停止されて(S7)、異常検出処理は終了する。
【0036】
ステップS5において、流量Qが第1流量Q1より大きい場合(S5:NO)、流量Qが第2流量Q2以上であるか否かが判別される(S8)。流量Qが第2流量Q2以上である場合(S8:YES)、実使用率Xが定格使用率X0以上であるか否かが判別される(S9)。実使用率Xが定格使用率X0以上である場合(S9:YES)、異常が報知され(S6)、溶接が停止されて(S7)、異常検出処理は終了する。一方、実使用率Xが定格使用率X0未満である場合(S9:NO)、ステップS2に戻る。
【0037】
ステップS8において、流量Qが第2流量Q2より小さい場合(S8:NO)、上限使用率X1が設定される(S10)。具体的には、異常検出部113が、定格使用率X0と流量Qとに基づいて、上限使用率X1を設定する。次に、実使用率Xが上限使用率X1以上であるか否かが判別される(S11)。実使用率Xが上限使用率X1以上である場合(S11:YES)、異常が報知され(S6)、溶接が停止されて(S7)、異常検出処理は終了する。一方、実使用率Xが上限使用率X1未満である場合(S11:NO)、ステップS2に戻る。
【0038】
なお、図3のフローチャートに示す処理は一例であって、制御回路11が行う異常検出処理は上述したものに限定されない。
【0039】
次に、溶接システムA1の作用効果について説明する。
【0040】
本実施形態によると、発電装置12は、送水側ホース31に取り付けられ、送水側ホース31を流れる冷却水によって電力を生成する。電力センサ13は、発電装置12により生成された電力を検出する。流量検出部111は、電力センサ13から入力される検出信号に基づいて、送水側ホース31を流れる冷却水の流量Qを検出する。冷却水に接する位置に繊細な半導体素子などが配置されないので、熱および電圧による故障が発生することなく、溶接電源装置1は、冷却水の流量Qを検出できる。また、制御回路11は、発電装置12から供給される電力を電源の一部として用いる。これにより、溶接電源装置1での消費電力は抑制される。
【0041】
また、本実施形態によると、異常検出部113は、使用率算出部112から入力される実使用率Xが、定格使用率X0と流量Qとに基づいて設定された上限使用率X1以上の場合に異常を検出する。異常検出部113は、上限使用率X1を流量Qに応じて減少させて設定する。したがって、冷却水の流量Qが少ない場合でも、溶接トーチ2の焼損の発生を抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態においては、発電装置12が、送水側ホース31に取り付けられた場合について説明したが、これに限られない。発電装置12は、復水側ホース32に取り付けられてもよい。また、本実施形態では、発電装置12が溶接電源装置1の内部に配置された場合について説明したが、これに限られない。発電装置12は、溶接電源装置1の外部に配置されてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、溶接システムA1が冷却水循環装置3を備える場合について説明したが、これに限られない。溶接システムA1は、冷却水循環装置3の代わりに、冷却機能がなく、冷却水を循環させるだけのポンプを備えてもよい。また、溶接システムA1は、送水側ホース31を介して、例えば水道水を冷却水として溶接トーチ2に供給し、溶接トーチ2を通過した冷却水を循環させることなく、そのまま排出する構成であってもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、制御回路11が発電装置12から供給される電力を電源の一部として用いる場合について説明したが、これに限られない。制御回路11は、発電装置12から供給される電力だけを用いてもよい。この場合、制御回路11のための電源を備える必要がないので、溶接電源装置1を小型軽量化できる。
【0045】
また、本実施形態においては、発電装置12は、生成した電力を制御回路11に供給する場合について説明したが、これに限られない。発電装置12は、生成した電力を、他の回路に供給してもよい。例えば、溶接システムA1がTIG溶接システムの場合、発電装置12が生成した電力は、溶接開始時に溶接トーチに高電圧を印加するためのコンデンサに充電されてもよい。また、溶接システムA1が溶接トーチに極性が切り替わる電力を出力する場合、発電装置12が生成した電力は、極性切り替え時の最点弧用のコンデンサに充電されてもよい
【0046】
図4図6は、本開示の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0047】
〔第2実施形態〕
図4は、本開示の第2実施形態に係る溶接システムA2を説明するための図であり、溶接システムA2の全体構成を示す図である。本実施形態に係る溶接システムA2は、制御回路11が冷却水の流量を制御する点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態では、制御回路11が冷却水循環装置3のポンプ33を制御する。ポンプ33は、冷却水循環装置3に備えられており、ラジエータでの放熱により冷却された冷却水を、送水側ホース31を介して溶接トーチ2に送出する。ポンプ33は、出力が調整可能であり、制御回路11からの指令により出力を調整することで、冷却水の流量を変化させる。
【0049】
また、本実施形態では、制御回路11は、溶接電流検出部114およびポンプ制御部115をさらに備えている。溶接電流検出部114は、溶接電源装置1が溶接トーチ2に出力する溶接電流を検出する電流センサを有し、検出した溶接電流の電流値をポンプ制御部115に出力する。流量検出部111は、検出した流量をポンプ制御部115に出力する。
【0050】
ポンプ制御部115は、ポンプ33を制御するための機能構成である。ポンプ制御部115は、溶接電流検出部114から入力される溶接電流の電流値に応じた、冷却水の適切な流量である目標流量を設定する。溶接電流の電流値が大きいほど、溶接トーチ2の温度が高くなるので、目標流量は大きくなるように設定される。ポンプ制御部115は、例えば、電流値に比例した目標流量を設定する。なお、目標流量の設定方法は限定されない。ポンプ制御部115は、冷却水の流量が目標流量になるように、フィードバック制御を行う。すなわち、ポンプ制御部115は、流量検出部111から入力された流量と目標流量との偏差を小さくするように、ポンプ33の出力を調整するための指令を出力する。
【0051】
本実施形態においても、発電装置12が送水側ホース31を流れる冷却水によって電力を生成し、流量検出部111が発電装置12の発電電力に基づいて、冷却水の流量を検出する。したがって、第1実施形態と同様、熱および電圧による故障が発生することなく、溶接電源装置1は、冷却水の流量を検出できる。また、制御回路11が発電装置12から供給される電力を電源の一部として用いるので、溶接電源装置1での消費電力は抑制される。また、溶接システムA2は、溶接システムA1と共通する構成により、溶接システムA1と同等の効果を奏する。さらに、本実施形態によると、ポンプ制御部115は、溶接電流の電流値に応じた目標流量を設定し、冷却水の流量が目標流量になるように、ポンプ33の出力を調整するための指令を出力する。これにより、ポンプ33は、溶接電流に応じた適切な流量となるように、出力が調整される。したがって、溶接システムA2は、ポンプ33の無駄な消費電力を低減でき、さらなる消費電力の抑制が可能である。
【0052】
なお、本実施形態においては、ポンプ制御部115が、検出された溶接電流の電流値に応じて目標流量を設定する場合について説明したが、これに限られない。ポンプ制御部115は、例えば、溶接電流の設定値に応じて目標流量を設定してもよい。また、本実施形態では、冷却水の流量が適切に制御されるので、異常検出部113は、一部の機能を備えなくてもよい。
【0053】
〔第3実施形態〕
図5は、本開示の第3実施形態に係る溶接システムA3を説明するための図であり、溶接システムA3の全体構成を示す図である。本実施形態に係る溶接システムA3は、シールドガスの流量を検出する点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態では、溶接システムA3は、ガスボンベ4およびガス配管41を備えている。また、本実施形態に係る溶接電源装置1は、発電装置15および電力センサ16を備えている。なお、第1実施形態および第2実施形態においては言及しなかったが、溶接システムA1,A2も、ガスボンベ4およびガス配管41を備えてもよい。また、溶接システムA3は、冷却水循環装置3などの記載を省略しているが、これらを備えてもよいし、備えなくてもよい。
【0055】
ガスボンベ4は、溶接トーチ2から放出するためのシールドガスを供給する。ガス配管41は、溶接電源装置1の内部を通過して、ガスボンベ4と溶接トーチ2とに接続している。ガス配管41は、ガスボンベ4が送出したシールドガスが溶接トーチ2まで流れる流路である。ガス配管41の材料は限定されない。本実施形態では、ガス配管41の溶接電源装置1の内部に位置する部分に、発電装置15が取り付けられている。
【0056】
発電装置15は、発電装置12と同様の構成であり、溶接電源装置1の内部において、ガス配管41に取り付けられている。ガス配管41は、ガスボンベ4側の上流部分と溶接トーチ2側の下流側部分とを有している。発電装置15は、図示しない入口にガス配管41の上流側部分が接続され、図示しない出口にガス配管41の下流側部分が接続されている。ガス配管41における、発電装置15の取り付け位置は限定されない。ガス配管41を流れるシールドガスが発電装置15の内部を流れて、発電装置15の内部に配置されたロータを回転させる。ロータの回転エネルギーが電気エネルギーに変換されて、電力が生成される。発電装置15は、生成した電力を所定電圧の直流電力に変換して、制御回路11に供給する。なお、発電装置15の具体的な構成は限定されず、流れるシールドガスによってロータを回転させて、電力を生成するものであればよい。
【0057】
電力センサ16は、発電装置15により生成されて制御回路11に供給される電力を検出する。電力センサ16は、発電装置15から制御回路11に電力を供給する電力線17に配置されている。なお、電力センサ16の具体的な構成は限定されず、電力線17で供給される電力を検出できればよい。電力センサ16は、検出した電力に応じた検出信号を制御回路11に出力する。
【0058】
本実施形態に係る制御回路11は、発電装置15から供給される電力を電源の一部として用いる。また、制御回路11は、流量検出部116を備えている。流量検出部116は、流量検出部111と同様の構成であり、電力センサ16から入力される検出信号に基づいて、ガス配管41を流れるシールドガスの流量を検出する。制御回路11は、流量検出部116が検出したシールドガスの流量に基づいて制御を行う。本実施形態では、溶接電源装置1の内部に組み込まれた発電装置15および電力センサ16と、制御回路11の一部(流量検出部116)とを合わせたものが、本発明の「流量検出装置」に相当する。
【0059】
本実施形態によると、発電装置15がガス配管41を流れるシールドガスによって電力を生成し、流量検出部116が発電装置15の発電電力に基づいて、シールドガスの流量を検出する。したがって、第1実施形態と同様、熱および電圧による故障が発生することなく、溶接電源装置1は、シールドガスの流量を検出できる。また、制御回路11が発電装置15から供給される電力を電源の一部として用いるので、溶接電源装置1での消費電力は抑制される。また、溶接システムA3は、溶接システムA1と共通する構成により、溶接システムA1と同等の効果を奏する。
【0060】
〔第4実施形態〕
図6は、本開示の第4実施形態に係る溶接システムA4を説明するための図であり、溶接システムA4の全体構成を示す図である。本実施形態に係る溶接システムA4は、溶接電源装置1の外部に、流量検出装置5が配置されている点で、第1実施形態に係る溶接システムA1と異なる。本実施形態の他の部分の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態では、溶接電源装置1の制御回路11が流量検出部111を備えておらず、溶接システムA4は、溶接電源装置1の外部に配置された流量検出装置5を備えている。流量検出装置5は、本実施形態では、溶接電源装置1と溶接トーチ2との間で、送水側ホース31に配置されている。
【0062】
流量検出装置5は、発電装置51、電力センサ52、および制御回路53を備えている。発電装置51は、発電装置12と同様の構成であり、溶接電源装置1と溶接トーチ2との間で、送水側ホース31に取り付けられている。発電装置51は、生成した電力を所定電圧の直流電力に変換して、制御回路53に供給する。電力センサ52は、電力センサ16と同様の構成であり、発電装置51により生成されて制御回路53に供給される電力を検出する。電力センサ52は、発電装置51から制御回路53に電力を供給する電力線54に配置されている。電力センサ52は、検出した電力に応じた検出信号を制御回路53に出力する。
【0063】
制御回路53は、流量を検出する構成であり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路53は、流量検出部111と同様の機能を有し、電力センサ52から入力される検出信号に基づいて、送水側ホース31を流れる冷却水の流量を検出する。制御回路53は、検出した流量を、溶接電源装置1の制御回路11に出力する。また、制御回路53は、発電装置51から供給される電力を電源の一部として用いる。
【0064】
本実施形態によると、発電装置51が送水側ホース31を流れる冷却水によって電力を生成し、制御回路53が発電装置51の発電電力に基づいて、冷却水の流量を検出する。したがって、熱および電圧による故障が発生することなく、流量検出装置5は、冷却水の流量を検出できる。また、制御回路53が発電装置51から供給される電力を電源の一部として用いるので、流量検出装置5での消費電力は抑制される。また、溶接システムA4は、溶接システムA1と共通する構成により、溶接システムA1と同等の効果を奏する。
【0065】
なお、本実施形態においては、発電装置51は、生成した電力を制御回路53に供給する場合について説明したが、これに限られない。発電装置51は、生成した電力を、流量検出装置5の他の回路に供給してもよいし、流量検出装置5の外部、例えば溶接電源装置1に供給してもよい。
【0066】
なお、上記第1~4実施形態においては、本発明に係る流量検出装置が溶接システムに用いられた場合について説明したが、これに限られない。本発明に係る流量検出装置は、溶接システム以外のシステムに用いることもでき、各種流体の流量を検出することができる。
【0067】
本発明に係る流量検出装置および溶接システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る流量検出装置および溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0068】
A1~A4:溶接システム、1:溶接電源装置、11:制御回路、111,116:流量検出部、112:使用率算出部、113:異常検出部、114:溶接電流検出部、115:ポンプ制御部、12,15:発電装置、13,16:電力センサ、14,17:電力線、2:溶接トーチ、3:冷却水循環装置、31:送水側ホース、32:復水側ホース、33:ポンプ、41:ガス配管、5:流量検出装置、51:発電装置、52:電力センサ、53:制御回路、54:電力線
図1
図2
図3
図4
図5
図6