(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180034
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ワイパ装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/46 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B60S1/46 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086925
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 健
(72)【発明者】
【氏名】飯野 英介
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】星野 稔
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AB01
3D225AC01
3D225AC02
3D225AD02
3D225AG57
(57)【要約】
【課題】車両が低速走行中であっても、汚れたウォッシャ液が払拭範囲に戻されること(水引現象)を、十分に抑制する。
【解決手段】コントローラは、ウォッシャ信号の入力時にDR側ワイパモータの回転数を調整して、下反転位置と上反転位置URPとの間の上反転位置URP寄りの低速領域ARLにおけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号の非入力時のDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅い移動速度にする。これにより、DR側ワイパブレード21bが遅い移動速度で移動中に、汚れたウォッシャ液Wを弱い走行風で移動させ、上反転位置URPに留まらないようにできる。また、汚れたウォッシャ液Wを自重で移動させ、上反転位置URPに留まらないようにできる。よって、綺麗になった払拭範囲11aに汚れたウォッシャ液Wが戻されることを、十分に抑制することが可能となる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下反転位置と上反転位置との間で往復移動するワイパブレードと、
前記ワイパブレードを揺動させる出力軸を有するワイパモータと、
前記ワイパモータを制御するコントローラと、
を備えたワイパ装置であって、
前記コントローラには、前記出力軸の回転角度を検出する回転角度検出部材、およびウォッシャ信号を出力するウォッシャスイッチが電気的に接続され、
前記コントローラは、前記ウォッシャ信号の入力時に前記ワイパモータの回転数を調整して、前記下反転位置と前記上反転位置との間の前記上反転位置寄りの速度可変領域における前記ワイパブレードの移動速度を、前記ウォッシャ信号の非入力時の前記ワイパブレードの移動速度よりも遅い移動速度にすることを特徴とする、
ワイパ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパ装置において、
前記コントローラは、前記ワイパモータの回転数を調整して、前記ウォッシャ信号の非入力時に前記ワイパブレードが前記下反転位置と前記上反転位置との間を移動するのに要する第1時間と、前記ウォッシャ信号の入力時に前記ワイパブレードが前記下反転位置と前記上反転位置との間を移動するのに要する第2時間とを、それぞれ同じ時間にすることを特徴とする、
ワイパ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイパ装置において、
前記ワイパブレードの移動領域を、前記下反転位置から前記上反転位置に向けて第1領域,第2領域および第3領域に分けたときに、前記コントローラは、前記ワイパモータの回転数を調整して、前記ウォッシャ信号の入力時の前記第2領域における前記ワイパブレードの移動速度を、前記ウォッシャ信号の非入力時の前記第2領域における前記ワイパブレードの移動速度よりも速い移動速度にすることを特徴とする、
ワイパ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイパ装置において、
前記コントローラは、前記ウォッシャ信号の入力時で、かつ前記ワイパブレードの往路移動時に、前記速度可変領域における前記ワイパブレードの移動速度を、前記ウォッシャ信号の非入力時の前記ワイパブレードの移動速度よりも遅い移動速度にすることを特徴とする、
ワイパ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイパ装置において、
前記コントローラには、車両の走行速度を示す車速信号が入力され、前記コントローラは、前記ウォッシャ信号の入力時で、かつ前記車速信号が所定値以上の時に、前記速度可変領域における前記ワイパブレードの移動速度を、前記ウォッシャ信号の非入力時の前記ワイパブレードの移動速度よりも遅い移動速度にすることを禁止することを特徴とする、
ワイパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭面に付着した雨水や埃等を払拭するワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、運転者や同乗者の視界を確保するワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置の駆動源には、出力軸が正逆方向に回転されるワイパモータが用いられる。よって、所定の払拭範囲においてワイパブレードが揺動し、ひいては払拭面に付着した雨水や埃等が払拭される。また、払拭面にこびりついた埃等を湿らせるウォッシャ装置も搭載されている。これにより、ワイパ装置と連携して払拭面にこびりついた埃等を洗い落とすことができる。
【0003】
洗浄能力を向上させるには、多量のウォッシャ液を払拭面に噴射させ、払拭面にこびりついた埃等を確実に湿らせる必要がある。その一方で、ワイパブレードの往路移動後には、多量の汚れたウォッシャ液がワイパブレードの上反転位置に集められ、その直後のワイパブレードの復路移動時に所謂「水引現象」が発生し、ひいては綺麗になった払拭範囲に汚れたウォッシャ液が戻されてしまうという問題を生じ得る。
【0004】
例えば、特許文献1には、ワイパブレードの形状を工夫することにより、水引現象の発生を抑えるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたワイパブレードは、走行風を利用してダウンフォースをコントロールし、これにより水引現象を抑えるものである。よって、例えば、車両の低速走行中等、十分なダウンフォースが得られない場合には、上反転位置に集められた汚れたウォッシャ液が払拭範囲に戻されること(水引現象)を、十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、車両が低速走行中であっても、汚れたウォッシャ液が払拭範囲に戻されること(水引現象)を、十分に抑制することが可能なワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、下反転位置と上反転位置との間で往復移動するワイパブレードと、前記ワイパブレードを揺動させる出力軸を有するワイパモータと、前記ワイパモータを制御するコントローラと、を備えたワイパ装置であって、前記コントローラには、前記出力軸の回転角度を検出する回転角度検出部材、およびウォッシャ信号を出力するウォッシャスイッチが電気的に接続され、前記コントローラは、前記ウォッシャ信号の入力時に前記ワイパモータの回転数を調整して、前記下反転位置と前記上反転位置との間の前記上反転位置寄りの速度可変領域における前記ワイパブレードの移動速度を、前記ウォッシャ信号の非入力時の前記ワイパブレードの移動速度よりも遅い移動速度にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コントローラは、ウォッシャ信号の入力時にワイパモータの回転数を調整して、下反転位置と上反転位置との間の上反転位置寄りの速度可変領域におけるワイパブレードの移動速度を、ウォッシャ信号の非入力時のワイパブレードの移動速度よりも遅い移動速度にする。
【0010】
これにより、ワイパブレードが遅い移動速度で移動中に、汚れたウォッシャ液を弱い走行風で移動させ、上反転位置に留まらないようにできる。また、汚れたウォッシャ液を自重で移動させ、上反転位置に留まらないようにできる。よって、綺麗になった払拭範囲に汚れたウォッシャ液が戻されること(水引現象)を、十分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】対向払拭型のワイパ装置の車両への適用例を示す図である。
【
図4】コントローラに格納された移動速度制御マップを説明する図である。
【
図5】移動速度制御マップの選択動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】ウォッシャ払拭の時のワイパブレードの動作を説明する図である。
【
図7】実施の形態2のワイパ装置のブロック図である。
【
図8】実施の形態2の移動速度制御マップの選択動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図9】実施の形態3の移動速度制御マップの選択動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図10】タンデム型のワイパ装置の車両への適用例(実施の形態4)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は対向払拭型のワイパ装置の車両への適用例を示す図を、
図2はワイパモータの構造を説明する図を、
図3は
図1のワイパ装置のブロック図を、
図4はコントローラに格納された移動速度制御マップを説明する図を、
図5は移動速度制御マップの選択動作の流れを説明するフローチャートを、
図6はウォッシャ払拭の時のワイパブレードの動作を説明する図をそれぞれ示している。
【0014】
図1に示されるように、自動車等の車両10の前方側には、フロントガラス11が設けられている。フロントガラス11は、車両10のルーフ10aおよび車両10の左右側にそれぞれ配置された一対のフロントピラー10bによって囲まれている。そして、フロントガラス11の下方側(図中下側)には、フロントガラス11の払拭面に付着した雨水や埃等を払拭して、運転者や同乗者の視界を確保するワイパ装置12が設けられている。
【0015】
ワイパ装置12は、車両10のDR側(運転席側)に配置されるDR側ワイパモータ20と、車両10のAS側(助手席側)に配置されるAS側ワイパモータ30と、を備えている。これらのワイパモータ20,30は、それぞれ同様に形成され、車両10の左右側に対向配置されている。
【0016】
ワイパモータ20,30は、DR側ワイパ部材21およびAS側ワイパ部材31を有している。DR側ワイパ部材21は、DR側ワイパアーム21aおよびDR側ワイパブレード21bを備え、AS側ワイパ部材31は、AS側ワイパアーム31aおよびAS側ワイパブレード31bを備えている。ワイパアーム21a,31aの基端部は、ワイパモータ20,30の出力軸22,32に固定され、ワイパモータ20,30は、ワイパ部材21,31を、リンク機構等を介さずに直接揺動させる。つまり、ワイパ装置12は、対向払拭型のワイパ装置であり、かつダイレクトドライブ方式を採用する。
【0017】
ワイパブレード21b,31bは、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間の略90°の払拭範囲11a,11b内においてそれぞれ往復移動、つまり往復払拭動作される。ワイパモータ20,30は、出力軸22,32の回転角度を検出することで、ワイパブレード21b,31bを下反転位置LRPおよび上反転位置URPで反転動作させる。
【0018】
ワイパモータ20,30の内部には、DR側制御基板23およびAS側制御基板33が収容されている。制御基板23,33の間には、通信線13が設けられ、ワイパモータ20,30は、通信線13を介して互いに通信している。そして、通信線13を介して出力軸22,32の回転角度情報(ワイパブレード21b,31bの位置情報)を互いに通信することで、ワイパブレード21b,31bを、フロントガラス11上で衝突(干渉)させることなく往復移動可能としている。
【0019】
図1および
図3に示されるように、DR側制御基板23のコントローラ23aには、車室内(図示せず)に設けられたワイパスイッチ14が電気的に接続されている。そして、ワイパスイッチ14の操作により、ワイパモータ20,30は、それぞれ同期して高速(High),低速(Low)または間欠(Int)で回転制御される。具体的には、ワイパスイッチ14を操作することで、当該ワイパスイッチ14からコントローラ23aに向けて、高速信号High,低速信号Low,間欠信号Intおよび電源オフ信号Offが出力される。
【0020】
また、DR側制御基板23のコントローラ23aには、ワイパスイッチ14の近傍に設けられたウォッシャスイッチ15が電気的に接続されている。これにより、ウォッシャスイッチ15をオン操作することで、当該ウォッシャスイッチ15からコントローラ23aに向けて、ウォッシャ信号Wsgが出力される。
【0021】
ここで、DR側制御基板23およびAS側ワイパモータ30のAS側制御基板33のそれぞれには、車両10に搭載された車載バッテリ(電源)BTが電気的に接続されている。これにより、それぞれのワイパモータ20,30に駆動電流が供給され、それぞれのワイパモータ20,30が同期するように回転駆動される。
【0022】
さらに、
図1に示されるように、車両10の前方側には、フロントガラス11の払拭面に向けてウォッシャ液Wを噴射するウォッシャ装置16が設けられている。ウォッシャ装置16は、ウォッシャポンプおよびウォッシャタンク(何れも図示せず)を備え、ウォッシャスイッチ15の操作によりウォッシャポンプが作動する。これにより、ウォッシャタンクに貯留されたウォッシャ液Wが、一対のチューブ17および一対のウォッシャノズル18を介して、フロントガラス11の払拭面(払拭範囲11a,11b内)に向けて噴射される。
【0023】
DR側ワイパモータ20およびAS側ワイパモータ30は、何れも同様に形成されている。したがって、以下、AS側ワイパモータ30の説明を省略して、DR側ワイパモータ20を代表してその詳細構造について説明する。
【0024】
図2に示されるように、DR側ワイパモータ20は、モータ部40とギヤ部50とを備えている。モータ部40は、磁性材料からなる鋼板を深絞り加工等することで有底筒状に形成されたヨーク41を有している。ヨーク41の内側には、複数の永久磁石42が設けられている。永久磁石42の内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してアーマチュア43が回動自在に設けられている。アーマチュア43には、コイル(図示せず)が所定の巻き方および巻数で巻装されている。
【0025】
アーマチュア43の回転中心には、アーマチュア軸44が固定されている。アーマチュア軸44の基端側(図中左側)は、ラジアル軸受(図示せず)を介してヨーク41の底部に回動自在に支持されている。また、アーマチュア軸44の先端側(図中右側)は、ギヤ部50のケース51内に延出されている。
【0026】
アーマチュア軸44の先端側には、ウォーム45が一体に設けられている。ウォーム45は、ウォームホイール52の歯部52aに噛み合わされている。ウォーム45およびウォームホイール52は減速機構SDを形成し、減速機構SDは、アーマチュア軸44の回転を減速して高トルク化する。そして、高トルク化された回転は、ウォームホイール52の回転中心に固定された出力軸22を介して、DR側ワイパアーム21a(
図1参照)に出力される。
【0027】
また、アーマチュア軸44のアーマチュア43に近接する部分には、整流子46が設けられている。整流子46には、コイルの端部が電気的に接続され、かつ複数のブラシ47が摺接される。これにより、複数のブラシ47に駆動電流を供給することで、整流子46を介してコイルに駆動電流が流れて、アーマチュア43に電磁力が発生する。よって、アーマチュア軸44が正方向または逆方向に所定の回転数で回転される。
【0028】
ギヤ部50を形成するケース51には、ウォームホイール52が回転自在に収容されている。ウォームホイール52には、ウォーム45からの回転が伝達される。ウォームホイール52の回転中心には、出力軸22の基端側が固定されており、出力軸22の先端側はケース51の外部に延出されている。そして、出力軸22の先端側には、DR側ワイパアーム21aの基端部が固定されている(
図1参照)。
【0029】
ウォームホイール52の表側面52bには、略円盤状に形成されたセンサマグネット53が装着されている。センサマグネット53は、ウォームホイール52の回転中心寄りの部分に固定され、ウォームホイール52と一緒に回転する。センサマグネット53の径方向一側はN極に着磁され、センサマグネット53の径方向他側はS極に着磁されている。すなわち、センサマグネット53は、その周方向に向けて180°間隔でN極およびS極の2極に着磁されている。
【0030】
ケース51の開口部分(
図2の手前側)は、カバー部材(図示せず)によって閉塞されている。カバー部材の内側には、ウォームホイール52の表側面52bと対向するDR側制御基板23が装着されている。つまり、DR側制御基板23は、ギヤ部50の内部に収容されている。
【0031】
DR側制御基板23は、モータ部40の回転状態を制御、具体的には、アーマチュア軸44の回転数や回転方向を制御するものである。DR側制御基板23には、トランジスタや抵抗等の複数の電子部品(図示せず)が実装されている。また、DR側制御基板23には、RAMやROM等を備えたCPUからなるコントローラ23aが実装されている。さらに、出力軸22の軸方向においてDR側制御基板23のセンサマグネット53と対向する部分には、エンコーダ23bが実装されている。ここで、エンコーダ23bには、MRセンサ等の磁気抵抗素子が用いられる。
【0032】
図3に示されるように、エンコーダ23bは、自身を横切る磁束の向きに応じて大きさの異なる電気信号(抵抗値の変化量)Rを出力する。そして、センサマグネット53の相対回転により発生するエンコーダ23bからの電気信号Rは、コントローラ23aに送出される。つまり、エンコーダ23bは、コントローラ23aに電気的に接続されている。
【0033】
エンコーダ23bは、本発明における回転角度検出部材に相当するもので、コントローラ23aは、エンコーダ23bからの電気信号Rの大きさに基づき、ウォームホイール52(出力軸22)のケース51に対する回転角度[rad]、すなわち、フロントガラス11に対するDR側ワイパブレード21b(
図1参照)の位置を検出する。これにより、DR側ワイパブレード21bを、下反転位置LRPおよび上反転位置URPにおいて反転動作させることができる。
【0034】
また、コントローラ23aは、アーマチュア軸44の回転状態をパルス制御法(PWM制御)により制御する。具体的には、duty比を大きく調整する(例えば、50%以上にする)ことで、アーマチュア軸44は高速で回転する。これに対し、duty比を小さく調整する(例えば、50%未満にする)ことで、アーマチュア軸44は低速で回転する。言い換えれば、コントローラ23aは、アーマチュア軸44を介して、DR側ワイパモータ20の出力軸22の回転を制御するようになっている。
【0035】
このように、アーマチュア軸44の回転状態をPWM制御により制御することで、アーマチュア軸44の回転数をきめ細かく制御可能とし、かつDR側制御基板23に実装された電子部品の過熱を抑えられるようにしている。
【0036】
図3に示されるように、コントローラ23aには、マップ格納部23cが設けられている。マップ格納部23cには、
図4に示されるように、予めチューニングされた2つの移動速度制御マップMa,Mbが格納されている。移動速度制御マップMa,Mbは、DR側ワイパブレード21bが払拭範囲11a(
図1参照)を往路移動および復路移動する際の、出力軸22の回転角度[rad](DR側ワイパブレード21bの位置)と、アーマチュア軸44の回転数[rpm](DR側ワイパモータ20の回転数)と、の関係を示すマップとなっている。
【0037】
図4の破線で示される移動速度制御マップMaは、ウォッシャ装置16(
図1参照)の非作動時、つまり、コントローラ23aに対するウォッシャ信号Wsgの非入力時において、DR側ワイパブレード21bを通常払拭させる時に選択される通常払拭用のマップ(基準マップ)である。そして、
図4に示されるように、DR側ワイパブレード21bの移動領域を、下反転位置LRPから上反転位置URPに向けて第1領域AR1,第2領域AR2および第3領域AR3(略3等分)に分けたときに、移動速度制御マップMaの選択時(ウォッシャ信号Wsgの非入力時)には、コントローラ23aは、第1領域AR1において、アーマチュア軸44の回転数をゼロから所定の加速度a1で増加させる。次いで、第2領域AR2において、アーマチュア軸44の回転数をN1で保持する。その後、第3領域AR3において、アーマチュア軸44の回転数をN1から所定の減速度d1で減少させてゼロにする。
【0038】
また、
図4の実線で示される移動速度制御マップMbは、ウォッシャ装置16の作動時、つまり、コントローラ23aに対するウォッシャ信号Wsgの入力時において、DR側ワイパブレード21bをウォッシャ払拭させる時に選択されるウォッシャ払拭用のマップである。具体的には、
図4に示されるように、移動速度制御マップMbの選択時(ウォッシャ信号Wsgの入力時)には、コントローラ23aは、第1領域AR1において、アーマチュア軸44の回転数をゼロから所定の加速度a2で増加させる(a2>a1)。次いで、第2領域AR2において、アーマチュア軸44の回転数をN2で保持する(N2>N1)。
【0039】
その後、第3領域AR3の前段の領域(下反転位置LRP寄りの略2/3の領域)において、アーマチュア軸44の回転数をN2から所定の減速度d2で減少させる(d2>d1)。次いで、第3領域AR3の後段の領域(上反転位置URP寄りの略1/3の領域)において、アーマチュア軸44の回転数を徐々に減少させてゼロにする。具体的には、第3領域AR3の後段の部分を低速領域ARLとしたときに、当該低速領域ARLでは、減速度d1,d2よりも小さい減速度d3で徐々に減速される(d3<d1<d2)。
【0040】
すなわち、コントローラ23aは、ウォッシャ信号Wsgの入力時に、DR側ワイパモータ20(アーマチュア軸44)の回転数を調整して、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間の上反転位置URP寄りの低速領域ARLにおけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号Wsgの非入力時のDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅い移動速度にする。低速領域ARLの部分を見ると、当該部分において、移動速度制御マップMbは、移動速度制御マップMaよりも下方にあり、移動速度制御マップMbの選択時におけるDR側ワイパブレード21bの移動速度の方が、移動速度制御マップMaの選択時におけるDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅いことが判る。なお、低速領域ARLは、本発明における速度可変領域に相当する。
【0041】
これにより、移動速度制御マップMbの選択時には、コントローラ23aは、DR側ワイパブレード21bを、上反転位置URP寄りの低速領域ARLにおいてゆっくりと移動させる。具体的には、移動速度制御マップMbの選択時で、かつDR側ワイパブレード21bが低速領域ARLにある場合には、
図6の矢印M1に示されるように、往路移動および復路移動の双方において、通常払拭の場合に比してゆっくりと移動(Slow)される。
【0042】
これにより、ウォッシャ払拭の時には、運転席側のフロントピラー10bの近傍に集められる汚れたウォッシャ液W(
図6の網掛部分)を、
図6の実線矢印M2に示されるように、車両10が低速走行(例えば、30km/h)をしており、比較的弱い走行風(白抜矢印参照)であっても、車両10のルーフ10a側に追いやることが可能となる。また、車両10が極低速走行(例えば、5km/h)をしている場合には、
図6の破線矢印M3に示されるように、ウォッシャ液Wは、その自重により重力方向(破線の白抜矢印参照)に移動して、地面(図示せず)に流れ落ちる。よって、ウォッシャ払拭の時には、上反転位置URPに集められるウォッシャ液Wの量を減らすことができ、ひいては綺麗になった払拭範囲11aに戻される水引現象の発生が抑えられる。
【0043】
なお、
図4に示されるように、第2領域AR2において、移動速度制御マップMaの選択時は、コントローラ23aはアーマチュア軸44の回転数をN1に調整し、移動速度制御マップMbの選択時は、コントローラ23aはアーマチュア軸44の回転数をN1よりも速いN2に調整する。すなわち、コントローラ23aは、DR側ワイパモータ20(アーマチュア軸44)の回転数を調整して、ウォッシャ払拭の時(ウォッシャ信号Wsgの入力時)における第2領域AR2でのDR側ワイパブレード21bの移動速度を、通常払拭の時(ウォッシャ信号Wsgの非入力時)における第2領域AR2でのDR側ワイパブレード21bの移動速度Sp1よりも速い移動速度Sp2とする(Sp2>Sp1)。
【0044】
これは、通常払拭の時とウォッシャ払拭の時とで、DR側ワイパブレード21bの払拭サイクルを同じ時間にするためである。言い換えれば、コントローラ23aは、アーマチュア軸44の回転数を調整することで、通常払拭の時のDR側ワイパブレード21bが下反転位置LRPと上反転位置URPとの間を移動するのに要する第1時間h1と、ウォッシャ払拭の時のDR側ワイパブレード21bが下反転位置LRPと上反転位置URPとの間を移動するのに要する第2時間h2とを、それぞれ同じ時間とする(h1=h2)。
【0045】
これにより、DR側ワイパブレード21bの払拭サイクルが、通常払拭の時とウォッシャ払拭の時とで同じ時間となり、ひいては運転者等に与える違和感を無くすことが可能となっている。
【0046】
次に、以上のように形成されたワイパ装置12の動作のうちの、特に、コントローラ23aによる移動速度制御マップMa,Mbの選択動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
まず、ワイパスイッチ14が操作されてワイパ装置12が作動すると、
図5のステップS1において、コントローラ23aによる移動速度制御マップMa,Mbの選択動作がスタートする。
【0048】
ステップS2では、コントローラ23aが、ウォッシャスイッチ15からのウォッシャ信号Wsgの入力または非入力に基づいて、DR側ワイパブレード21bがウォッシャ払拭中であるか否かを判定する。ステップS2でウォッシャ信号Wsgが入力されたと判定(yesと判定)した場合には、ステップS3に進み、ステップS2でウォッシャ信号Wsgが入力されていない(非入力である)と判定(noと判定)した場合には、ステップS4に進む。
【0049】
ステップS3では、コントローラ23aは、汚れたウォッシャ液Wが上反転位置URPに多量に集められるのを防止すべく、移動速度制御マップMb(ウォッシャ払拭用)を選択する。これに対し、ステップS4では、コントローラ23aは、払拭面(払拭範囲11a)に多量のウォッシャ液Wが無い(ウォッシャ装置16が作動していない)として、移動速度制御マップMa(通常払拭用)を選択する。
【0050】
その後、ステップS5に進み、コントローラ23aは、ワイパスイッチ14がオフ操作されたか否か(電源オフ信号Offが入力されたか否か)を判定する。ステップS5でワイパスイッチ14がオフ操作されたと判定(yesと判定)した場合には、ステップS6に進み、移動速度制御マップMa,Mbの選択動作が終了する。これに対し、ステップS5でワイパスイッチ14がオフ操作されていないと判定(noと判定)した場合には、上流のステップS2に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
【0051】
このように、コントローラ23aは、移動速度制御マップMa(通常払拭用)または移動速度制御マップMb(ウォッシャ払拭用)の何れかを選択して、選択された移動速度制御マップMaまたは移動速度制御マップMbに基づいて、DR側ワイパモータ20の回転状態を制御する。なお、AS側ワイパモータ30(
図1および
図3参照)においても、上述のようなDR側ワイパモータ20の動作に合わせて同期動作する。よって、AS側(助手席側)の上反転位置URPに集められるウォッシャ液Wの量も減らすことができ、ひいてはAS側の払拭範囲11b(
図1参照)に戻される水引現象の発生も抑えることができる。
【0052】
また、移動速度制御マップMa,Mbの切り替わりのタイミングは、DR側ワイパブレード21bが反転動作をするタイミングとなっている。これにより、往路移動または復路移動の途中(払拭動作中)において、DR側ワイパブレード21bの移動速度が急に変化することが無く、ひいては運転者等に与える違和感を無くすことを可能としている。
【0053】
以上詳述したように、実施の形態1に係るワイパ装置12によれば、コントローラ23aは、ウォッシャ信号Wsgの入力時にDR側ワイパモータ20(アーマチュア軸44)の回転数を調整して、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間の上反転位置URP寄りの低速領域ARLにおけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号Wsgの非入力時のDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅い移動速度にする。
【0054】
これにより、DR側ワイパブレード21bが遅い移動速度で移動中に、汚れたウォッシャ液Wを弱い走行風で移動させ、上反転位置URPに留まらないようにできる。また、汚れたウォッシャ液Wを自重で移動させ、上反転位置URPに留まらないようにできる。よって、綺麗になった払拭範囲11aに汚れたウォッシャ液Wが戻されること(水引現象)を、十分に抑制することが可能となる。
【0055】
また、実施の形態1に係るワイパ装置12によれば、コントローラ23aは、DR側ワイパモータ20(アーマチュア軸44)の回転数を調整して、ウォッシャ信号Wsgの非入力時にDR側ワイパブレード21bが下反転位置LRPと上反転位置URPとの間を移動するのに要する第1時間h1と、ウォッシャ信号Wsgの入力時にDR側ワイパブレード21bが下反転位置LRPと上反転位置URPとの間を移動するのに要する第2時間h2とを、それぞれ同じ時間にする(h1=h2)。
【0056】
これにより、通常払拭の時とウォッシャ払拭の時とで、DR側ワイパブレード21bの払拭サイクル(移動時間)が異なることに伴う運転者等に与える違和感を無くすことが可能となる。
【0057】
さらに、実施の形態1に係るワイパ装置12によれば、DR側ワイパブレード21bの移動領域を、下反転位置LRPから上反転位置URPに向けて第1領域AR1,第2領域AR2および第3領域AR3に分けたときに、コントローラ23aは、DR側ワイパモータ20(アーマチュア軸44)の回転数を調整して、ウォッシャ信号Wsgの入力時の第2領域AR2におけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号Wsgの非入力時の第2領域AR2におけるDR側ワイパブレード21bの移動速度Sp1よりも速い移動速度Sp2にする(Sp2>Sp1)。
【0058】
これにより、通常払拭の時とウォッシャ払拭の時とで、DR側ワイパブレード21bの払拭サイクル(移動時間)を、互いに同じ時間にすることが可能となる。
【0059】
次に、本発明の実施の形態2について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分には同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図7は実施の形態2のワイパ装置のブロック図を、
図8は実施の形態2の移動速度制御マップの選択動作の流れを説明するフローチャートをそれぞれ示している。
【0061】
図7に示されるように、実施の形態2においては、DR側制御基板23のコントローラ23aに、車両10に設けられた車速センサ10cが電気的に接続されている。つまり、コントローラ23aには、車両10の走行速度を示す車速信号vが入力される。また、コントローラ23aには、車速しきい値Th(例えば、60km/h)が格納されている。そして、コントローラ23aは、入力された車速信号vと車速しきい値Thとを比較する比較処理を実行する。
【0062】
このように実施の形態2では、上述した実施の形態1に比して、コントローラ23aが車両10の車速情報(車速信号v)を利用し、これに基づき移動速度制御マップMa,Mbを選択する処理を実行する点が異なっている。ここで、車両10の走行速度が高速である場合(60km/h以上)には、上反転位置URPに集められるウォッシャ液Wは、比較的強い走行風により車両10のルーフ10aに向けて直ぐに移動する。言い換えれば、比較的強い走行風によりウォッシャ液Wをルーフ10aに向けて移動させることができる車速領域では、移動速度制御マップMbを用いた制御(水引現象を抑制するための制御)をする必要が無い。よって、実施の形態2では、車両10の走行速度が高速である場合において、移動速度制御マップMbを用いた制御をしないように(禁止するように)している。
【0063】
具体的には、実施の形態2では、
図8に示されるような移動速度制御マップMa,Mbの選択動作を実行する。
図8に示されるように、実施の形態2においては、実施の形態1(
図5参照)に比して、コントローラ23aによるウォッシャ払拭中であるか否かの判定ステップ(ステップS2)と、移動速度制御マップMbを選択するステップ(ステップS3)との間に、車速信号vと車速しきい値Thとを比較する比較ステップ(ステップS10)を追加して設けている。
【0064】
そして、ステップS10では、コントローラ23aが、車速信号vが車速しきい値Th以上であるか否かを判定し、yesと判定した場合(60km/h以上)には、ステップS4に進んで移動速度制御マップMa(通常払拭用)を選択する。これに対し、ステップS10でnoと判定した場合(60km/h未満)にはステップS3に進み、コントローラ23aは移動速度制御マップMb(ウォッシャ払拭用)を選択する。ここで、車速しきい値Thは、本発明における所定値に相当する。
【0065】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、車両10の走行速度が比較的速い60km/h(高速走行)以上で、かつウォッシャ信号Wsgの入力時(ウォッシャ払拭時)に、コントローラ23aは、移動速度制御マップMbの選択を禁止、すなわち低速領域ARL(
図4参照)におけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号Wsgの非入力時(通常払拭時)のDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅い移動速度にすることを禁止する。
【0066】
これにより、DR側ワイパブレード21bの移動速度が、上反転位置URPの近傍(低速領域ARLの部分)において、ゆっくりと作動(低速で移動)する頻度を低くして、運転者等に与える違和感をより無くすことが可能となる。
【0067】
次に、本発明の実施の形態3について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分には同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0068】
図9は実施の形態3の移動速度制御マップの選択動作の流れを説明するフローチャートを示している。
【0069】
実施の形態3では、
図9に示されるような移動速度制御マップMa,Mbの選択動作を実行する。
図9に示されるように、実施の形態3においては、実施の形態1(
図5参照)に比して、コントローラ23aによるウォッシャ払拭中であるか否かの判定ステップ(ステップS2)と、移動速度制御マップMbを選択するステップ(ステップS3)との間に、DR側ワイパブレード21bが往路移動中であるか否かを判定する判定ステップ(ステップS20)を追加して設けている。具体的には、ステップS20では、コントローラ23aは、エンコーダ23bから入力される電気信号Rに基づいて、DR側ワイパブレード21bの移動方向を検出する。
【0070】
そして、ステップS20では、コントローラ23aにより、DR側ワイパブレード21bが往路移動中であるか否かを判定し、yesと判定した場合(往路移動)には、ステップS3に進んで移動速度制御マップMb(ウォッシャ払拭用)を選択する。これに対し、ステップS20でnoと判定した場合(復路移動)にはステップS4に進み、コントローラ23aは移動速度制御マップMa(通常払拭用)を選択する。
【0071】
このように、実施の形態3では、DR側ワイパブレード21bの往路移動時にのみ、低速領域ARL(
図4参照)におけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号Wsgの非入力時(通常払拭時)のDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅い移動速度にする。これは、低速領域ARLにおいて、水引現象とは関係のないDR側ワイパブレード21bの往路移動時に、上反転位置URPに向かう汚れたウォッシャ液Wの量を、走行風等により十分に減らせることに基づいている。
【0072】
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態3では、コントローラ23aは、ウォッシャ信号Wsgの入力時(ウォッシャ払拭時)で、かつDR側ワイパブレード21bの往路移動時に、低速領域ARLにおけるDR側ワイパブレード21bの移動速度を、ウォッシャ信号Wsgの非入力時のDR側ワイパブレード21bの移動速度よりも遅い移動速度にする。
【0073】
よって、実施の形態2と同様に、DR側ワイパブレード21bの移動速度が、上反転位置URPの近傍(低速領域ARLの部分)において、ゆっくりと作動(低速で移動)する頻度を低くして、運転者等に与える違和感を無くすことが可能となる。ただし、実施の形態3の制御ロジック(
図9参照)に、実施の形態2と同様の車速信号vを利用したロジック(
図8のステップS10)を組み込んでも良い。この場合、運転者等に与える違和感をより無くすことが可能となる。
【0074】
次に、本発明の実施の形態4について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分には同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
図10はタンデム型のワイパ装置の車両への適用例(実施の形態4)を示す図を示している。
【0076】
図10に示されるように、実施の形態4においては、実施の形態1のワイパ装置12(
図1参照)、つまり対向払拭型のダイレクトドライブワイパ装置に対して、タンデム型のワイパ装置60とした点が異なっている。タンデム型のワイパ装置60は、1つのワイパモータ61で動力伝達機構(リンク機構)62を駆動し、これによりDR側ワイパ部材63およびAS側ワイパ部材64は、車両10のフロントガラス11上で同期して揺動される。
【0077】
ワイパ装置60は、実施の形態1のDR側ワイパモータ20(
図2参照)と同じ構造のワイパモータ61を備えている。動力伝達機構62は、ワイパモータ61の揺動運動を、DR側ピボット軸65およびAS側ピボット軸66に伝達する。ピボット軸65,66には、ワイパ部材63,64の基端部がそれぞれ固定され、ピボット軸65,66の揺動運動に伴い、ワイパ部材63,64の先端側がそれぞれフロントガラス11上で揺動する。
【0078】
ワイパ部材63,64は、DR側ワイパアーム63aおよびAS側ワイパアーム64aと、これらのワイパアーム63a,64aにそれぞれ装着されたDR側ワイパブレード63bおよびAS側ワイパブレード64bとから構成される。そして、実施の形態1と同様に、ワイパモータ61を駆動することで、ワイパモータ61の揺動運動が動力伝達機構62を介してピボット軸65,66に伝達され、これによりピボット軸65,66が揺動される。よって、実施の形態1と同様に、ワイパブレード63b,64bは、払拭範囲11a,11b内に付着した雨水や埃等が払拭する。
【0079】
ここで、
図10に示される車両10においても、実施の形態1と同様に、ウォッシャ装置(図示せず)が設けられている。
【0080】
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態4では、1つのワイパモータ61のみを制御すれば良いので、実施の形態1に比して制御ロジックを簡素化することができる。ただし、実施の形態4の制御ロジックに、実施の形態2の制御ロジック(車速信号vを利用)や、実施の形態3と同様の制御ロジック(往路移動時にのみDR側ワイパブレード21bの移動速度を遅くする)を組み込んでも良い。
【0081】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態1ないし実施の形態3においては、DR側ワイパモータ20およびAS側ワイパモータ30を互いに同期動作させたものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、DR側ワイパ部材21およびAS側ワイパ部材31(
図1参照)を互いに衝突(干渉)しないようにできるのであれば、DR側ワイパモータ20のみを、ウォッシャ払拭用の移動速度制御マップMbで動作させ、AS側ワイパモータ30を、常に通常払拭用の移動速度制御マップMaで動作(独立制御)させることもできる。
【0082】
また、上記各実施の形態においては、モータ部のアーマチュア軸が正方向または逆方向に回転するワイパモータを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、実施の形態4で示したリンク機構を有するタンデム型のワイパ装置においては、モータ部のアーマチュア軸が一方向のみに回転するワイパモータを用いることもできる。この場合、制御ロジックをより簡素化することが可能となる。
【0083】
さらに、上記各実施の形態においては、モータ部がブラシ付きモータである場合を示したが、本発明はこれに限らず、モータ部がブラシレスモータであっても良い。この場合、ブラシおよび整流子が不要になるため、両者の摺接に起因した電気ノイズの発生が抑えられ、ひいてはコントローラの誤動作を確実に防止することが可能となる。
【0084】
また、上記各実施の形態においては、車両10のフロントガラス11を払拭するワイパ装置12,60であるものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10のリヤガラスを払拭するワイパ装置や、鉄道車両や建設機械等のワイパ装置にも適用することができる。
【0085】
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0086】
10:車両,10a:ルーフ,10b:フロントピラー,10c:車速センサ,11:フロントガラス,11a,11b:払拭範囲,12:ワイパ装置,13:通信線,14:ワイパスイッチ,15:ウォッシャスイッチ,16:ウォッシャ装置,17:チューブ,18:ウォッシャノズル,20:DR側ワイパモータ,21:DR側ワイパ部材,21a:DR側ワイパアーム,21b:DR側ワイパブレード,22:出力軸,23:DR側制御基板,23a:コントローラ,23b:エンコーダ(回転角度検出部材),23c:マップ格納部,30:AS側ワイパモータ,31:AS側ワイパ部材,31a:AS側ワイパアーム,31b:AS側ワイパブレード,32:出力軸,33:AS側制御基板,40:モータ部,41:ヨーク,42:永久磁石,43:アーマチュア,44:アーマチュア軸,45:ウォーム,46:整流子,47:ブラシ,50:ギヤ部,51:ケース,52:ウォームホイール,52a:歯部,52b:表側面,53:センサマグネット,60:ワイパ装置,61:ワイパモータ,62:動力伝達機構,63:DR側ワイパ部材,63a:DR側ワイパアーム,63b:DR側ワイパブレード,64:AS側ワイパ部材,64a:AS側ワイパアーム,64b:AS側ワイパブレード,65:DR側ピボット軸,66:AS側ピボット軸,a1,a2:加速度,AR1:第1領域,AR2:第2領域,AR3:第3領域,ARL:低速領域(速度可変領域),BT:車載バッテリ,d1~d3:減速度,h1:第1時間,h2:第2時間,LRP:下反転位置,Ma,Mb:移動速度制御マップ,SD:減速機構,Sp1,Sp2:移動速度,Th:車速しきい値(所定値),URP:上反転位置,W:ウォッシャ液